2σ Guide

歩行者と車の事故の
過失割合の典型パターン

横断歩道、信号、横断歩道外、歩道上、後退車、駐車場事故まで、民事交通実務で確認される基本割合と修正要素を整理します。

0対100 信号機のない横断歩道上の基本型
57.7% 令和7年歩行中死者の法令違反等あり
10% 高額損害では大きな差になる単位
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歩行者と車の事故の 過失割合の典型パターン

横断歩道、信号、横断歩道外、歩道上、後退車、駐車場事故まで、民事交通実務で確認される基本割合と修正要素を整理します。

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歩行者と車の事故の 過失割合の典型パターン
横断歩道、信号、横断歩道外、歩道上、後退車、駐車場事故まで、民事交通実務で確認される基本割合と修正要素を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 歩行者と車の事故の 過失割合の典型パターン
  • 横断歩道、信号、横断歩道外、歩道上、後退車、駐車場事故まで、民事交通実務で確認される基本割合と修正要素を整理します。

POINT 1

  • 歩行者と車の事故の過失割合の全体像
  • 1. 事故類型を特定:横断歩道上か、交差点か、道路横断か、歩道上かを分けます。
  • 2. 信号と進行方向を確認:横断開始時と衝突時、直進か右左折かを分けます。
  • 3. 基本割合を置く:裁判実務上の基準に近い類型を選びます。
  • 4. 修正要素を検討:歩行者側と車側の事情を同じ表に並べます。
  • 5. 証拠で裏付ける:映像、写真、記録で主張を確認して損害額に反映します。

POINT 2

  • 1. 「過失割合」とは何か
  • 制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。
  • 1-1. 過失割合の定義
  • 1-2. 過失相殺とは何か
  • 1-3. 人身事故では自賠法3条も重要

POINT 3

  • 2. 過失割合はどのように決まるか
  • 制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。
  • 2-1. 法律そのものに「歩行者20 ― 車80」と書いてあるわけではない
  • 2-2. 基本過失割合と修正要素
  • 2-3. 警察の事故処理と民事の過失割合は別問題

POINT 4

  • 歩行者と車の事故の過失割合で見る 道路交通法上の基本ルール
  • 制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。
  • 3-1. 横断歩道は歩行者優先
  • 3-2. 横断歩道のない交差点でも歩行者優先の場面がある
  • 3-3. 歩行者にも横断方法のルールがある

POINT 5

  • 歩行者と車の事故の過失割合で見る 典型パターン一覧― 数値を見る前の注意
  • 基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 基本割合は出発点です。
  • 信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • たとえば「20対80」は、歩行者20%、車80%です。

POINT 6

  • 歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン3 ― 信号機のない横断歩道上の事故
  • 基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 基本割合は出発点です。
  • 信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 信号機のない横断歩道上で、歩行者が横断中または横断しようとしている場合、基本的には 歩行者0 ― 車100です。

POINT 7

  • 歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン8 ― 歩車道の区別がない道路での事故
  • 基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 基本割合は出発点です。
  • 信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 生活道路、狭い道路、路地などでは、歩道と車道の明確な区別がないことがあります。

POINT 8

  • 13. パターン9 ― 同一方向・対向方向に進行中の歩行者と車の事故
  • 基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 基本割合は出発点です。
  • 信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。
  • 歩行者が道路を横断していたのではなく、道路上を同一方向または対向方向に歩いていたところ、車が接触する類型です。

まとめ

  • 歩行者と車の事故の 過失割合の典型パターン
  • 歩行者と車の事故の過失割合の全体像:横断歩道、信号、道路横断、歩道上、後退車まで、典型類型と証拠の見方を整理します。
  • 1. 「過失割合」とは何か:制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。
  • 2. 過失割合はどのように決まるか:制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

歩行者と車の事故の過失割合の全体像

横断歩道、信号、道路横断、歩道上、後退車まで、典型類型と証拠の見方を整理します。

次の重要ポイントは、このページ全体で扱う結論、統計、検討順序をまとめたものです。最初に全体像をつかむことで、個別の割合だけでなく、その割合がなぜ変わるのかを読み取れます。

過失割合は「典型類型」と「修正要素」と「証拠」で変わります

横断歩道上では歩行者が強く保護される一方、赤信号横断、横断歩道外横断、夜間、直前直後横断などがあると、歩行者側の過失が問題になります。

次の三つのポイント一覧は、歩行者事故で検討の柱になる要素を整理したものです。どの柱が争点になっているかを見分けると、保険会社の提示を確認する順番が分かります。

TYPE

事故類型

横断歩道上、横断歩道直近、交差点、道路横断、歩道上、後退車、駐車場など、まず最も近い類型を選びます。

ADJUST

修正要素

信号、夜間、道路幅、歩行者の属性、車側の速度違反や脇見などを、類型ごとに加減します。

PROOF

証拠

映像、実況見分、現場写真、診療録、信号サイクルなどで、主張と実際の事故状況を結び付けます。

次の判断の流れは、示談前に過失割合を検討する順番を表しています。上から順に確認すると、基本割合だけで結論を急がず、証拠に基づいて修正後の割合を見る姿勢が身につきます。

歩行者事故で過失割合を確認する順番

事故類型を特定

横断歩道上か、交差点か、道路横断か、歩道上かを分けます。

信号と進行方向を確認

横断開始時と衝突時、直進か右左折かを分けます。

基本割合を置く

裁判実務上の基準に近い類型を選びます。

修正要素を検討

歩行者側と車側の事情を同じ表に並べます。

証拠で裏付ける

映像、写真、記録で主張を確認して損害額に反映します。

歩行者と車の事故では、車側に強い注意義務が課されるため、歩行者が被害者となる事故の多くで車側の過失が大きく評価されます。特に、横断歩道上の事故では、道路交通法上、車両に減速義務・一時停止義務・横断歩行者等の通行妨害禁止義務が課されているため、歩行者の過失は原則として小さくなります。警察庁も、横断歩道は歩行者優先であり、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務があると説明しています。

もっとも、歩行者側にも、信号無視、横断歩道外横断、横断禁止場所での横断、車両の直前直後横断、夜間の無理な横断、路上横臥などがある場合には、過失相殺により賠償額が減額されることがあります。警察庁の資料では、令和7年の歩行中死者について、法令違反等があった者が57.7%と整理されています。

「歩行者と車の事故の過失割合の典型パターン」を理解する上で重要なのは、最初から「何対何」と断定することではありません。実務では、①事故類型の特定、②基本過失割合の選択、③修正要素の加減、④証拠による裏付け、⑤損害額への反映、という順に検討します。

Section 01

1. 「過失割合」とは何か

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

1-1. 過失割合の定義

過失割合とは、交通事故の発生について、当事者それぞれにどの程度の不注意・注意義務違反があったかを百分率で表したものです。たとえば「歩行者20 ― 車80」とは、事故発生に対する法的評価として、歩行者側に20%、車側に80%の過失があるという意味です。

ここでいう「過失」は、日常語の「うっかり」と同じではありません。民事交通事故では、道路交通法上の義務、道路状況、交通弱者保護、予見可能性、回避可能性、信号規制、速度、視界、被害者の属性などを総合して、損害賠償額を調整するために評価されます。

1-2. 過失相殺とは何か

過失相殺とは、被害者にも事故発生や損害拡大について過失がある場合に、その過失を考慮して損害賠償額を減額する制度です。民法709条は不法行為に基づく損害賠償責任を定め、民法722条2項は、被害者に過失があるときは裁判所がこれを考慮して損害賠償額を定めることができるとしています。

例として、総損害額が1,000万円、歩行者の過失割合が20%、車側の過失割合が80%であれば、単純化すると歩行者が車側へ請求できる額は800万円が基礎になります。ただし、実際には自賠責保険、人身傷害保険、労災、既払金、既往症、素因減額、治療費の相当性などが絡むため、単純な掛け算だけで最終受領額が決まるわけではありません。

1-3. 人身事故では自賠法3条も重要

歩行者が死傷した事故では、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任が重要です。同条は、自動車を自己のために運行の用に供する者が、その運行により他人の生命または身体を害した場合に損害賠償責任を負うことを定めています。免責されるには、運行供用者・運転者が注意を怠らなかったこと、被害者または第三者に故意・過失があったこと、自動車に構造上の欠陥・機能障害がなかったことを証明する必要があります。

この制度趣旨は、交通事故被害者の救済です。そのため、歩行者と車の人身事故では、車側が「歩行者が飛び出した」と主張するだけで直ちに責任を免れるわけではありません。事故態様、視認可能性、速度、回避可能性などを丁寧に検討する必要があります。

Section 02

2. 過失割合はどのように決まるか

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

2-1. 法律そのものに「歩行者20 ― 車80」と書いてあるわけではない

道路交通法や民法には、交通事故ごとの具体的な過失割合表は規定されていません。実務では、過去の裁判例を集積した過失相殺基準が参照されます。東京弁護士会も、交通事故の発生状況はそれぞれ異なるが、裁判例の積み重ねにより裁判所や弁護士会では過失相殺基準表を公表していると説明しています。

現在の民事交通実務で特に参照される代表的資料として、東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]別冊判例タイムズ38号』があります。同書は「歩行者と四輪車・単車との事故」「横断歩行者の事故」「対向又は同一方向進行歩行者の事故」「路上横臥者等の事故」「後退車による事故」などを扱っています。

また、日弁連交通事故相談センターは、過失割合の具体的基準として、別冊判例タイムズ38号や同センター東京支部発行の「赤い本」に掲載された過失相殺基準が参考にされていると説明しています。

2-2. 基本過失割合と修正要素

実務上の検討は、次の二段階で行われます。

まず、事故類型に最も近い基本過失割合を選びます。たとえば「信号のない横断歩道上で、横断中の歩行者に車が衝突した」という類型であれば、歩行者0 ― 車100が基本になります。

次に、修正要素を加減します。修正要素とは、基本類型だけでは表しきれない事情です。たとえば、歩行者が児童・高齢者であった、車が著しい速度違反をしていた、夜間であった、幹線道路であった、歩行者が車両の直前直後を横断した、横断禁止場所だった、といった事情です。修正要素は事故類型によって適用の有無や幅が異なるため、「夜間だから常に歩行者に5%加算」といった機械的処理は危険です。

2-3. 警察の事故処理と民事の過失割合は別問題

警察は、事故状況を捜査・記録し、道路交通法違反や自動車運転死傷処罰法上の責任を問題にします。しかし、民事上の過失割合を最終的に決定する機関ではありません。民事の過失割合は、当事者間の示談、ADR、調停、訴訟などで、証拠と裁判実務上の基準を踏まえて決まります。

したがって、警察官から「あなたも悪い」と言われた、実況見分で不利な言い方をされた、保険会社から一方的に割合を示された、というだけで民事上の結論が確定するわけではありません。

Section 03

歩行者と車の事故の過失割合で見る 道路交通法上の基本ルール

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

3-1. 横断歩道は歩行者優先

道路交通法38条は、車両が横断歩道等に接近する場合、横断しようとする歩行者等がないことが明らかな場合を除き、横断歩道等の直前で停止できる速度で進行しなければならないとします。また、横断中または横断しようとする歩行者等がいる場合には、一時停止し、通行を妨げないようにしなければなりません。警察庁の説明でも、横断歩道に近づく車には、歩行者等がいないことが明らかな場合を除く減速義務と、歩行者等がいる場合の一時停止義務が示されています。

これが、横断歩道上の歩行者事故で車側の過失が大きくなる根拠です。

3-2. 横断歩道のない交差点でも歩行者優先の場面がある

道路交通法38条の2は、横断歩道のない交差点またはその直近で歩行者が道路を横断しているとき、車両はその歩行者の通行を妨げてはならないと定めています。 したがって、「横断歩道がなかったから歩行者が全面的に悪い」とはなりません。横断場所が交差点またはその直近か、車両が直進か右左折か、道路幅、交通量、見通しなどにより、基本割合が変わります。

3-3. 歩行者にも横断方法のルールがある

道路交通法12条は、横断歩道が近くにある場合には、歩行者はその横断歩道によって横断しなければならないとします。また、道路交通法13条は、車両等の直前直後横断を原則として禁止し、横断禁止場所での横断も禁止しています。

したがって、歩行者であっても、赤信号横断、横断歩道外横断、横断禁止場所横断、直前直後横断などがあれば、過失割合上不利に評価されることがあります。

Section 04

歩行者と車の事故の過失割合で見る 典型パターン一覧 ― 数値を見る前の注意

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

以下の表では、原則として歩行者対車の順で表示します。たとえば「20対80」は、歩行者20%、車80%です。

ただし、ここで示す数値は、典型類型の理解のための目安です。実際には、次の事情により変わります。

  • 車が四輪車か単車か
  • 車が直進か右左折か後退か
  • 歩行者が横断歩道上か、横断歩道直近か、横断歩道から離れた場所か
  • 歩行者用信号と車両用信号の色
  • 横断開始時と衝突時の信号変化
  • 安全地帯の有無
  • 道路幅、幹線道路性、見通し、照明
  • 歩行者が児童・幼児・高齢者・身体障害者等か
  • 車側の速度違反、前方不注視、酒気帯び、ながら運転など
  • ドライブレコーダー、防犯カメラ、目撃者、実況見分調書の内容
Section 05

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン1 ― 信号機のある横断歩道上で、直進車と衝突した場合

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

信号機のある横断歩道では、信号の色が最重要です。横断歩道上であっても、歩行者が赤信号で横断を開始した場合は、歩行者側の過失が大きくなります。

5-1. 横断中に信号変更がない基本型

次の比較表は、5. パターン1 ― 信号機のある横断歩道上で、直進車と衝突した場合に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の横断開始信号車の進入信号基本的な過失割合(歩行者対車)実務上の意味
0対100歩行者に原則過失なし。車の赤信号進入が重い。
黄・青点滅10対90歩行者にも横断開始を控えるべき義務があるが、車の赤信号違反が中心。
20対80双方赤信号でも、車側の危険性が大きく評価される。
50対50歩行者の赤信号横断と車の黄信号進入が対立する。
70対30歩行者の赤信号横断が重大。もっとも歩行者保護の観点から車にも一定の過失が残る。

この類型では、「横断歩道上だから常に歩行者0」とは言えません。青信号で横断を開始した歩行者は強く保護されますが、赤信号で横断を開始した歩行者は、事故原因の大きな部分を作ったと評価されます。

5-2. 横断中に信号が変わった場合

横断開始時は青でも、横断中に赤へ変わることがあります。特に幅員の広い道路、高齢者、障害のある歩行者、信号サイクルが短い交差点では問題になりやすい類型です。

次の比較表は、5. パターン1 ― 信号機のある横断歩道上で、直進車と衝突した場合に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

典型例基本的な過失割合(歩行者対車)ポイント
青で横断開始し、途中で赤になり、車も赤で進入0対100車の赤信号進入が決定的。
青で横断開始し、途中で赤になり、車が青で進行20対80歩行者にも横断継続上の注意が問題となる。
黄・青点滅で横断開始し、途中で赤になり、車が青で進行30対70歩行者の横断開始時点の問題が加重される。
安全地帯付近で赤に変わったのに横断を続けた30対70または40対60程度が問題となり得る安全地帯で待機できたかが争点になる。

「横断開始時に青だった」という事実は重要ですが、それだけで常に歩行者0になるわけではありません。道路幅、安全地帯、横断速度、信号サイクル、歩行者の年齢・身体状況などが争点になります。

Section 06

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン2 ― 信号機のある横断歩道上で、右左折車と衝突した場合

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

右左折車は、交差点内で進路を変えながら横断歩道に接近します。そのため、直進車よりも横断歩道上の歩行者を確認すべき場面が多く、歩行者保護が強く働く類型です。

次の比較表は、6. パターン2 ― 信号機のある横断歩道上で、右左折車と衝突した場合に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の横断開始信号車の進入・右左折信号基本的な過失割合(歩行者対車)解説
青で右左折0対100歩行者は信号に従って横断。右左折車が横断歩道上の歩行者を確認すべき場面。
黄・青点滅青で右左折30対70歩行者も横断開始を控えるべきだが、右左折車の注意義務も重い。
青で右左折50対50歩行者の赤信号横断が重いが、右左折車にも大きな注意義務がある。
黄・青点滅黄で右左折20対80双方の信号状況と右左折時の注意義務を考慮。
黄で右左折30対70歩行者は赤信号、車も黄信号進入で双方問題あり。
赤で右左折20対80双方赤でも車の危険性が大きい。

直進車との事故では、歩行者赤・車青なら歩行者70 ― 車30が典型になりますが、右左折車との事故では、同じ歩行者赤・車青でも歩行者50 ― 車50となる類型があります。これは、右左折車が交差点内で横断歩道を横切る以上、歩行者の存在をより注意深く確認すべきと評価されるためです。

Section 07

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン3 ― 信号機のない横断歩道上の事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

信号機のない横断歩道上で、歩行者が横断中または横断しようとしている場合、基本的には歩行者0 ― 車100です。

この類型は、歩行者と車の事故の過失割合の典型パターンの中でも、最も車側の責任が重く評価されやすい場面です。道路交通法38条により、車は横断歩道に接近する際、横断歩行者等がいないことが明らかな場合を除き、停止できる速度で進行しなければなりません。さらに、横断中または横断しようとする歩行者がいる場合には、一時停止して通行を妨げてはならないからです。

ただし、実務上は次のような事情が争点になります。

  • 歩行者が本当に横断歩道上にいたか
  • 横断歩道の手前か、横断歩道から少し外れていたか
  • 歩行者が車の直前に飛び出したといえるか
  • 車側から歩行者を視認できたか
  • 渋滞車両、駐停車車両、大型車両の陰から出てきたか
  • 車の速度、ブレーキ反応、衝突位置
  • 夜間、雨天、照明、服装、反射材の有無

保険会社が「飛び出しだから歩行者にも20%」などと主張しても、信号機のない横断歩道上では、まず道路交通法38条を出発点に検討する必要があります。

Section 08

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン4 ― 信号機のある横断歩道のすぐ近くを、横断歩道外で横断した場合

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

横断歩道のすぐ近くにいる歩行者は、横断歩道を利用すべきです。道路交通法12条の趣旨から、横断歩道付近であえて横断歩道外を渡った場合、横断歩道上よりも歩行者側の過失が重くなります。

8-1. 車が横断歩道を通過した後に、歩行者と衝突した場合

次の比較表は、8. パターン4 ― 信号機のある横断歩道のすぐ近くを、横断歩道外で横断した場合に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の信号車の信号・進行基本的な過失割合(歩行者対車)
車が赤で直進5対95
黄・青点滅車が赤で直進15対85
車が赤で直進25対75
車が黄で直進50対50
車が青で直進70対30
車が青で右左折10対90
黄・青点滅車が青で右左折40対60
車が青で右左折70対30

横断歩道の直近では、歩行者が横断歩道を使わなかったことが不利に評価されます。特に、歩行者赤・車青で直進車と衝突した場合は、歩行者70 ― 車30が典型です。

8-2. 車が横断歩道の手前で、横断歩道外横断中の歩行者と衝突した場合

次の比較表は、8. パターン4 ― 信号機のある横断歩道のすぐ近くを、横断歩道外で横断した場合に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の信号車の信号基本的な過失割合(歩行者対車)
10対90
黄・青点滅20対80
30対70
50対50
70対30

「横断歩道の手前」か「通過後」かは、車から見た歩行者の現れ方や予見可能性に関係します。衝突地点の特定が重要であり、実況見分調書、車両損傷位置、衣服の接触痕、ドライブレコーダー映像などが証拠になります。

Section 09

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン5 ― 横断歩道のない交差点またはその直近での横断事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

道路交通法38条の2により、横断歩道のない交差点やその直近で歩行者が横断しているとき、車両はその通行を妨げてはなりません。 そのため、横断歩道がないからといって、歩行者の過失が大きくなるとは限りません。

次の比較表は、9. パターン5 ― 横断歩道のない交差点またはその直近での横断事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

事故現場・車の進行基本的な過失割合(歩行者対車)解説
幹線道路または広い道路を歩行者が横断し、直進車と衝突20対80幹線道路横断の危険性があり、歩行者にも一定過失。
幹線道路または広い道路で、右左折車と衝突10対90右左折車の注意義務が重く、歩行者過失は軽くなる。
狭い道路を横断中に車と衝突10対90狭路では車側が歩行者を予見すべき度合いが高い。
優先関係のない交差点で横断中に車と衝突15対85道路幅などに明確な優劣がない中間型。

この類型で重要なのは、横断場所が「交差点またはその直近」といえるかです。交差点から離れた単なる道路横断であれば、後述する「横断歩道も交差点も近くにない場所」の類型に近づきます。

Section 10

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン6 ― 横断歩道も交差点も近くにない道路を横断した場合

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

横断歩道も交差点も近くにない道路を歩行者が横断し、直進車と衝突した場合、典型的には歩行者20 ― 車80が出発点になります。

この割合は、歩行者側にも「車両の通行を確認して安全に横断すべき注意義務」がある一方、自動車側にも前方注視義務・安全速度義務・歩行者発見時の回避義務があるという評価です。

ただし、次の事情があると歩行者側の過失が加算されやすくなります。

  • 夜間で、車から見えにくかった
  • 幹線道路で、車両の流れが速い
  • 横断禁止場所だった
  • 車両の直前直後を横断した
  • 横断途中で立ち止まった、後退した、ふらついた
  • ガードレール等を乗り越えた
  • 酒に酔っていた、周囲を見ずに横断した

逆に、次の事情があると歩行者側の過失が減算される可能性があります。

  • 住宅地・商店街で、歩行者の横断が予見される道路だった
  • 歩行者が児童、高齢者、幼児、身体障害者等だった
  • 集団登校など集団横断だった
  • 車が速度超過、脇見、スマートフォン使用、飲酒運転などをしていた
  • 車が横断歩行者に気付ける時間的・距離的余裕があった
Section 11

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン7 ― 歩道上・路側帯上・歩車道区別のある道路での事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

歩行者が歩道を歩いていたところ、車が歩道に進入して衝突した場合は、典型的には歩行者0 ― 車100です。 歩道は歩行者の通行空間であり、車が進入する場合には極めて高度の注意が求められるからです。

一方、歩車道の区別がある道路で、歩行者が車道にいた場合は、車道通行の必要性や位置によって変わります。

次の比較表は、11. パターン7 ― 歩道上・路側帯上・歩車道区別のある道路での事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の位置・状況基本的な過失割合(歩行者対車)解説
歩道上0対100車の歩道進入が原則全面的に問題。
歩行者用道路0対100歩行者保護が最も強い類型の一つ。
車道通行が許される事情がある10対90工事、障害物、歩道不備などが問題となる。
車道側端を歩行していたが、車道通行が許されない20対80歩行者にも通行位置の問題がある。
車道側端以外を歩行していた30対70歩行者側の危険性が大きくなる。

歩行者が車道にいたからといって、直ちに歩行者が主たる加害者になるわけではありません。車側には依然として前方注視義務と安全運転義務があります。

Section 12

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン8 ― 歩車道の区別がない道路での事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

生活道路、狭い道路、路地などでは、歩道と車道の明確な区別がないことがあります。この場合、歩行者の通行位置が重要です。

次の比較表は、12. パターン8 ― 歩車道の区別がない道路での事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

歩行者の位置基本的な過失割合(歩行者対車)解説
道路の右側端を通行0対100歩行者は原則として右側端通行が基本であり、車側の責任が重い。
道路の左側端を通行5対95通行方向の問題がわずかに考慮される。
幅員8m以上の道路中央部分を通行20対80中央部通行の危険性が歩行者側に評価される。
上記以外の側端以外を通行10対90生活道路では車側の注意義務も大きい。

この類型では、道路幅、路側帯の有無、白線、交通量、住宅地性、通学路性、制限速度、見通しが特に重要です。

Section 13

13. パターン9 ― 同一方向・対向方向に進行中の歩行者と車の事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

歩行者が道路を横断していたのではなく、道路上を同一方向または対向方向に歩いていたところ、車が接触する類型です。典型的には、夜間の路肩歩行、歩道のない道路、路側帯歩行、車道上歩行などで問題になります。

歩道上・歩行者用道路上なら歩行者0が基本です。車道上の場合は、歩行者がなぜ車道にいたのか、側端を歩いていたのか、車道中央寄りだったのか、車側が発見できたかが争点になります。

実務上は、車側が「歩行者が車道に出ていた」と主張する場合でも、次の点を確認すべきです。

  • 歩道は実際に通行可能だったか
  • 工事、積雪、駐車車両、障害物はなかったか
  • 歩行者は右側端・左側端のどちらを歩いていたか
  • 夜間照明や反射材の有無
  • 車の前照灯、速度、脇見、スマートフォン使用
  • 衝突部位が車両の正面か側面か
Section 14

歩行者と車の事故の過失割合で見る パターン10 ― 路上横臥者と車の事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

路上横臥者とは、道路上に横たわっていた人をいいます。典型的には、酩酊、体調不良、転倒、ひき逃げ後の二次事故、夜間の道路横臥などです。

次の比較表は、14. パターン10 ― 路上横臥者と車の事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

時間帯基本的な過失割合(歩行者側・横臥者対車)解説
昼間30対70車側から発見しやすい一方、道路上に横たわる危険性も大きい。
夜間50対50車からの発見困難性が増し、横臥者側の過失が重くなりやすい。

路上横臥事故では、単純に「寝ていた歩行者が悪い」とは言い切れません。車側が制限速度を守っていたか、前照灯を適切に使用していたか、道路照明があったか、横臥者をいつ発見できたか、ブレーキ痕やドライブレコーダー映像から回避可能性があるかを検討します。

また、横臥前に別の車が先に衝突していた場合、共同不法行為、寄与度、先行事故との因果関係が問題になることがあります。

Section 15

15. パターン11 ― 後退車と歩行者の事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

駐車場、店舗前、住宅の車庫出入口、路外施設からの後退、配送車のバックなどで多い類型です。

次の比較表は、15. パターン11 ― 後退車と歩行者の事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

事故態様基本的な過失割合(歩行者対後退車)解説
歩行者が後退車の直後を横断20対80歩行者にも後退可能性への注意がある。
上記以外の後退車事故5対95後退車には後方確認義務が強く課される。

後退車事故では、車側に後方確認義務が強く課されます。バックモニター、ミラー、警告音、誘導員の有無、駐車場内の歩行者動線、歩行者の位置、後退開始から衝突までの時間が重要です。

特に小児・高齢者が被害者の場合、運転者は通常以上に慎重な後退確認を求められることがあります。

Section 16

16. パターン12 ― 駐車場内での歩行者事故

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

駐車場は、車と歩行者が混在する空間です。大型商業施設、コンビニ、病院、マンション、月極駐車場、コインパーキングなどで事故が発生します。

次の比較表は、16. パターン12 ― 駐車場内での歩行者事故に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

事故場所基本的な過失割合(歩行者対車)解説
駐車区画内10対90車の発進・後退・切返しに高度の注意が必要。
駐車場通路上10対90歩行者も車両動線を確認すべきだが、車側の注意義務が重い。

駐車場では、道路交通法上の「道路」に当たるか否かが問題となることもありますが、民事上の注意義務は別に評価されます。歩行者がいることが通常想定される空間であるため、車側の過失が重くなりやすい類型です。

争点としては、通路幅、見通し、駐車車両による死角、歩行者動線の表示、停止線・一方通行表示、車の速度、後退か前進か、警備員・誘導員の配置、施設管理者の安全配慮などが挙げられます。

Section 17

歩行者と車の事故の過失割合で見る 典型的な修正要素

歩行者側と車側の事情を分けて、どの要素が加算・減算に働くか確認します。

次の要素一覧は、歩行者側に不利に働きやすい事情と、有利に働きやすい事情を分けたものです。どちらか一方だけを見ると評価が偏るため、左右の要素を同時に確認することが重要です。

歩行者側に加算されやすい事情

夜間、幹線道路、横断禁止場所、直前直後横断、斜め横断、ふらつき、酩酊、スマートフォン注視などが問題になります。

車側の責任を重くしやすい事情

速度超過、脇見、酒気帯び、無灯火、スマートフォン使用、住宅地や通学路での不注意などが重要です。

歩行者保護を強める属性

児童、幼児、高齢者、身体障害者、集団横断などは、車側により慎重な注意義務を求める方向で評価されます。

17-1. 歩行者側の過失を重くしやすい要素

次の事情は、歩行者側の過失を重く評価する方向に働くことがあります。

次の比較表は、17. 典型的な修正要素に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

修正要素典型的な評価
夜間車のライトにより歩行者が車を認識しやすい一方、車から歩行者を発見しにくいとして、歩行者側に加算されることがある。
幹線道路交通量・速度が大きく、横断危険性が高いため、歩行者側に加算されることがある。
横断禁止場所道路標識等で横断が禁止されている場所での横断は歩行者側に不利。
直前直後横断車が対応できないタイミングでの横断は歩行者側に不利。
斜め横断横断距離・時間が長くなり、危険性が増す。
立ち止まり・後退・ふらつき車側の予測を困難にする行動として問題になる。
酩酊・スマートフォン注視安全確認を怠った事情として主張されることがある。

ただし、修正は事故類型ごとに異なります。たとえば、信号のない横断歩道上では歩行者が強く保護されるため、横断歩道外横断と同じようには扱えません。

17-2. 歩行者側の過失を軽くしやすい要素

次の事情は、歩行者側の過失を軽く評価する方向に働くことがあります。

次の比較表は、17. 典型的な修正要素に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

修正要素典型的な評価
児童おおむね6歳以上13歳未満の児童は危険判断能力が十分でないため、歩行者側過失が減算されることがある。
幼児6歳未満の幼児はさらに保護される。もっとも監督者側の過失が問題になることがある。
高齢者おおむね65歳以上は反応速度・歩行速度等を考慮し、歩行者側に有利に修正されることがある。
身体障害者等白杖、車いす、盲導犬、歩行困難などが認識可能な場合、車側の注意義務が重くなる。
集団横断車側から発見しやすく、予見可能性が高い。
住宅地・商店街歩行者の通行・横断が通常予測される。
通学路・学校周辺児童の飛び出し等を予測すべき場面がある。
車側の著しい過失・重過失速度超過、脇見、酒気帯び、無灯火、スマートフォン使用などは車側過失を重くする。

歩行者が幼児の場合、幼児本人の過失というより、親など監督者の不注意が「被害者側の過失」として考慮されることがあります。東京弁護士会も、幼児の場合、被害者と身分上・生活関係上一体をなす者の過失が「被害者側の過失」として考慮され得ると説明しています。

Section 18

歩行者と車の事故の過失割合で見る 事故後に収集すべき証拠

過失割合を動かすには、事故類型と修正要素を裏付ける資料が重要です。

歩行者と車の事故では、過失割合が10%変わるだけで、受け取れる賠償金が大きく変わることがあります。死亡事故、重度後遺障害、長期休業、高次脳機能障害脊髄損傷、骨折後の可動域制限などでは、数百万円から数千万円の差になることもあります。

事故後は、次の資料を可能な範囲で確保します。

次の比較表は、18. 事故後に収集すべき証拠に関する項目、数値、実務上の意味を整理したものです。列ごとの違いを確認すると、どの事情が結論や準備の優先順位に影響しやすいかを読み取れます。

証拠確認すべき内容
交通事故証明書発生日時、場所、当事者、事故類型の基礎。
実況見分調書・物件事故報告書衝突地点、ブレーキ、見通し、信号、道路幅、歩行者位置。
ドライブレコーダー信号、速度、発見可能性、ブレーキ、歩行者の動き。
防犯カメラ店舗、マンション、交差点、駐車場の映像。保存期間が短いことが多い。
目撃者情報信号の色、横断開始位置、車速、運転者の様子。
車両損傷写真衝突位置・歩行者の姿勢・速度推定の手掛かり。
現場写真横断歩道、信号、停止線、標識、横断禁止、照明、見通し。
診断書・診療録受傷機転、傷害部位、後遺障害との整合性。
スマートフォン位置情報歩行経路、時刻、移動速度の補助資料になることがある。
信号サイクル資料信号変化が争点となる事故で重要。

特に、防犯カメラ映像は短期間で上書きされます。事故から時間が経つほど、過失割合を争う証拠は失われやすくなります。

Section 19

19. 保険会社から提示された過失割合を検討する視点

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

保険会社の提示は、示談交渉の出発点にすぎません。次の点を確認しましょう。

19-1. 事故類型の選択が正しいか

最も多い争点は、保険会社が選んだ事故類型そのものが正しいかです。

たとえば、歩行者が横断歩道上にいたのに、保険会社が「横断歩道外横断」として扱っていないか。横断歩道の直近なのに、交差点から離れた道路横断として扱っていないか。右左折車との事故なのに直進車類型で扱っていないか。こうした類型選択の誤りは、過失割合を大きく変えます。

19-2. 修正要素が一方的に適用されていないか

保険会社は、歩行者側に不利な修正要素を強調し、車側に不利な修正要素を十分に考慮していないことがあります。たとえば、夜間を理由に歩行者過失を加算する一方で、車の速度超過、ハイビーム不使用、前方不注視、スマートフォン使用を考慮していない場合です。

19-3. 証拠と主張が一致しているか

「飛び出し」と言われても、映像を確認すると歩行者が数秒前から横断していた、車が高速度で接近していた、停止可能距離があった、ということがあります。過失割合は印象で決めるものではなく、証拠で検討します。

19-4. 損害額の基準も同時に確認する

過失割合だけでなく、慰謝料、休業損害、逸失利益、後遺障害等級、将来介護費、装具費、近親者慰謝料などの損害項目も確認が必要です。過失割合が有利でも、損害額の基礎が低ければ総額は適正になりません。

Section 20

歩行者と車の事故の過失割合で見る 弁護士に相談すべき典型場面

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

歩行者と車の事故では、次のような場合に弁護士相談の必要性が高くなります。

  1. 保険会社から提示された過失割合に納得できない
  2. 「飛び出し」「赤信号」「横断歩道外」と強く主張されている
  3. ドライブレコーダーや防犯カメラの有無が争点になっている
  4. 死亡事故、重傷事故、後遺障害が疑われる
  5. 治療費打切り、休業損害、慰謝料、逸失利益でも争いがある
  6. 被害者が児童、高齢者、障害者である
  7. 加害者が任意保険に入っていない、または対応が不誠実
  8. 自賠責の後遺障害等級に納得できない
  9. 人身傷害保険・労災・健康保険・自賠責・任意保険の調整が必要
  10. 示談書に署名する前に妥当性を確認したい

日弁連交通事故相談センターは、弁護士が直接無料で交通事故相談を受け、電話相談・面接相談・示談あっせん・審査を行っていると説明しています。 また、同センターは、同一事案につき原則5回まで無料面接相談を利用できることや、示談あっせん手続の費用が無料であることも案内しています。

交通事故紛争処理センターも、自動車事故の損害賠償をめぐる紛争について、法律相談、和解あっせん、審査を無料で行っている公益財団法人です。 また、自動車保険などに弁護士費用特約が付いている場合、弁護士への相談・依頼費用が保険で支払われることがあります。日弁連は、弁護士費用保険について、事故被害に遭い弁護士へ法律相談や交渉等を依頼した場合、その費用が保険金として支払われる保険であり、自動車保険の特約として販売される例が多いと説明しています。

Section 21

歩行者と車の事故の過失割合で見る 実務上の検討流れ

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

次の判断の流れは、個別事故を過失割合へ当てはめる実務上の順番を表しています。順番を飛ばすと、横断歩道上かどうか、信号がいつ変わったか、損害額へどう反映するかを取り違えやすくなります。

実務で確認する六つの段階

1 事故場所

横断歩道、交差点、歩道、駐車場などを確定します。

2 信号と車の動き

歩行者用信号、車両用信号、直進・右左折・後退を確認します。

3 基本割合

最も近い類型を選びます。

4 修正要素

歩行者側と車側の事情を洗い出します。

5 証拠

映像、写真、実況見分、信号サイクルで裏付けます。

6 損害額へ反映

慰謝料、休業損害、逸失利益などに割合を反映します。

歩行者と車の事故の過失割合の典型パターンを、個別事故に当てはめる際は、次の順で整理します。

21-1. 第1段階 ― 事故類型を確定する

まず、事故場所を確定します。

  • 横断歩道上か
  • 横断歩道直近か
  • 横断歩道のない交差点か
  • 交差点から離れた道路横断か
  • 歩道上か
  • 車道上か
  • 駐車場内か
  • 後退車か
  • 路上横臥か

この段階で誤ると、後の検討はすべてずれます。

21-2. 第2段階 ― 信号・進行方向を確定する

次に、信号と車の動きを確定します。

  • 歩行者用信号は青・青点滅・赤のどれか
  • 車両用信号は青・黄・赤のどれか
  • 横断開始時か衝突時か
  • 車は直進か右折か左折か後退か
  • 信号変更があった場合、安全地帯はあったか

信号事故では、横断開始時の信号と衝突時の信号を分けて考える必要があります。

21-3. 第3段階 ― 基本過失割合を置く

裁判実務上の基準に照らし、最も近い基本類型を選びます。この時点で、保険会社の提示と異なる基本類型が見つかることがあります。

21-4. 第4段階 ― 修正要素を検討する

歩行者側・車側双方について、修正要素を洗い出します。重要なのは、歩行者側に不利な事情だけでなく、車側に不利な事情も同時に検討することです。

21-5. 第5段階 ― 証拠で裏付ける

主張だけでは足りません。映像、写真、実況見分、診療録、目撃者、信号サイクル、道路構造などで裏付けます。

21-6. 第6段階 ― 損害額に反映する

最後に、過失割合を損害額に反映します。後遺障害がある場合は、逸失利益や後遺障害慰謝料が高額になり、過失割合の影響も大きくなります。

Section 22

歩行者と車の事故の過失割合で見る よくある誤解

制度の考え方と実務上の確認点を、示談前に使える形で整理します。

誤解1 ― 「歩行者だから絶対に過失はない」

歩行者は交通弱者として強く保護されますが、信号無視、横断禁止場所横断、直前直後横断、路上横臥などがあれば過失が認められます。

誤解2 ― 「横断歩道がなければ歩行者が悪い」

横断歩道のない交差点または直近では、道路交通法38条の2により歩行者保護が働きます。交差点から離れた道路横断でも、車側の前方注視義務・安全運転義務は残ります。

誤解3 ― 「警察が言った割合で決まる」

警察は民事の過失割合を決定しません。警察資料は重要証拠ですが、民事上の過失割合は示談・ADR・訴訟で決まります。

誤解4 ― 「保険会社の提示は中立的な結論である」

保険会社は当事者側の保険者として交渉に参加します。提示された過失割合が裁判実務上妥当かは、別途検討が必要です。

誤解5 ― 「10%くらいなら争っても意味がない」

死亡事故、後遺障害、長期休業では、10%の違いが数百万円以上の差になることがあります。少なくとも示談前に検討する価値があります。

Section 23

23. まとめ ― 歩行者と車の事故の過失割合の典型パターンをどう使うか

基本割合は出発点です。信号、進行方向、道路構造、歩行者属性で結論が変わります。

「歩行者と車の事故の過失割合の典型パターン」は、示談交渉を有利に進めるための暗記表ではありません。事故を法的に分解するための分析枠組みです。

最も重要なポイントは、次の5つです。

  1. 横断歩道上、特に信号機のない横断歩道では、歩行者は強く保護される。
  2. 信号機のある横断歩道では、歩行者・車それぞれの信号の色が決定的に重要である。
  3. 横断歩道外でも、交差点直近、道路幅、車の進行方向により過失割合は大きく変わる。
  4. 夜間、幹線道路、直前直後横断、横断禁止場所などは歩行者側に不利になり得るが、児童・高齢者・障害者、住宅地、車側の著しい過失・重過失は歩行者側に有利になり得る。
  5. 最終的な過失割合は、基本割合ではなく、証拠に基づく修正後の割合で決まる。

保険会社から提示された割合に疑問がある場合、または死亡・重傷・後遺障害が関係する場合は、示談書に署名する前に、交通事故を扱う弁護士、日弁連交通事故相談センター、交通事故紛争処理センターなどの専門的相談窓口を利用することが望ましいといえます。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関、裁判所、法令、交通事故・医療紛争に関する中立的資料を中心に整理しています。

参考資料

  • Japanese Law Translation Database System, Civil Code Article 709
  • Japanese Law Translation Database System, Civil Code Article 722
  • Japanese Law Translation Database System, Act on Securing Compensation for Automobile Accidents Article 3
  • 警察庁「横断歩道は歩行者優先です」
  • 警察庁交通局「令和7年における交通事故の発生状況について」
  • 東京弁護士会「過失割合」
  • 判例タイムズ社『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]別冊判例タイムズ38号』
  • 日弁連交通事故相談センター「過失割合はどのようにして決まるのですか」
  • 日弁連交通事故相談センター公式サイト
  • 公益財団法人交通事故紛争処理センター「ご利用について」
  • 日本弁護士連合会「弁護士費用保険(権利保護保険)について」
  • 法律実務解説(歩行者と車の基本過失割合)
  • 法律実務解説(横断歩道のない道路での横断事故)