原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。
原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。
最初に制度の骨格と、会社が制限できる場面を確認します。
次の重要ポイントは、副業制度を就業規則に入れるときの三層構造を表しています。重要なのは、単に禁止を外すのではなく、従業員の自由と会社のリスク管理を同じ制度に入れることです。左から順に、基本方針、制限できる場面、継続管理の役割を読み取ってください。
労働者の私生活の自由を出発点にし、制度の入口を閉じない設計にします。
会社の不安ではなく、具体的な支障や正当な利益の侵害を基準にします。
届出様式、審査基準、健康管理、台帳、違反対応まで整備します。
副業制度を就業規則に書くときの基本は、次の三層構造である。
第一に、勤務時間外の時間の使い方は、基本的には労働者の自由であるという出発点を明確にする。厚生労働省の副業・兼業ガイドラインおよびモデル就業規則は、裁判例を踏まえ、副業・兼業を原則として認める方向を示している。モデル就業規則でも「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という構造が採用されている。
第二に、会社が制限できる場合を客観的に列挙する。典型的には、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、会社の名誉・信用の毀損または信頼関係の破壊、競業による会社利益の侵害である。これらは厚生労働省のモデル就業規則と裁判例の整理に沿うものであり、抽象的な「会社が不適当と認めた場合」だけで広く制限する設計は避けるべきである。
第三に、届出・確認・変更報告・健康管理・労働時間管理・秘密保持・競業管理を、継続的な運用手順に落とし込む。副業制度で失敗する会社は、就業規則の条文だけを作り、届出様式、審査基準、回答期限、記録台帳、定期確認、撤回基準、個人情報管理、懲戒判断の手順を整備していないことが多い。副業を「認める」ことは、何もしないことではない。むしろ、許容範囲を透明化し、従業員が安心して相談でき、会社も労務・情報・競業リスクを管理できる制度にすることが中核である。
副業、兼業、届出制、許可制、労働時間通算、管理モデルの違いを整理します。
この記事では、副業・兼業を、労働者が自社での勤務時間外に、他社での雇用、業務委託、請負、準委任、個人事業、会社役員、顧問、講師、執筆、配信、販売、アプリ開発、家業手伝いその他の形で、継続的または反復的に対価を得て業務を行うこと、と定義する。
ただし、就業規則上は、どこまでを届出対象にするかを明確に分ける必要がある。例えば、次のように整理すると実務上扱いやすい。
次の比較表は、副業を認める就業規則で使う用語の定義で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 区分 | 例 | 届出対象にするか |
|---|---|---|
| 他社雇用型 | アルバイト、パート、契約社員、派遣就労 | 原則届出対象 |
| 業務委託・個人事業型 | Web制作、ライター、コンサル、講師、配信、物販 | 原則届出対象 |
| 役員・経営関与型 | 他社取締役、合同会社代表、家族会社役員 | 原則届出対象。競業・利益相反を重点確認 |
| 投資型 | 上場株式、投資信託、暗号資産、通常の資産運用 | 原則届出対象外。ただし勤務時間中の取引、インサイダー、会社資産利用は別問題 |
| 単発・軽微型 | 一回限りの講演謝礼、短期の本文料 | 金額・性質・競業性に応じて届出または事後報告 |
| 無償活動 | ボランティア、地域活動、趣味活動 | 原則届出対象外。ただし長時間・安全配慮・会社信用リスクがある場合は相談対象 |
副業を広く定義しすぎると、従業員の私生活を過度に監視する制度になる。一方で、届出対象を狭くしすぎると、労働時間、競業、営業秘密、会社信用のリスクを把握できない。したがって、就業規則本文では基本的な定義を置き、詳細は「副業・兼業取扱規程」または「届出要領」で補足するのが望ましい。
届出制とは、従業員が副業の内容を会社に申告し、会社は制限事由に該当するかを確認する制度である。原則は副業可能であり、会社は例外的なリスクがあるときに禁止・制限・条件付承認を行う。
許可制とは、会社の許可がなければ副業をしてはならないとする制度である。許可制自体が常に違法というわけではないが、許否判断が恣意的であってはならない。裁判例でも、兼業を許可制にする場合には、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した合理的運用が問題となる。厚生労働省の整理でも、許可等の手続違反が形式的にあっても、職場秩序や労務提供に実質的支障がない場合には懲戒を慎重に判断すべきとされている。
実務上は、届出制を基本にしつつ、危険物取扱、運転、医療・介護、金融、情報セキュリティ、研究開発、役員・管理職、営業秘密・個人情報を大量に扱う職種などでは、届出後の審査を厳格化する設計が妥当である。表現としては「会社の承認を得なければならない」よりも、「届出に基づき、会社は本規則所定の制限事由の有無を確認し、必要な範囲で禁止、制限または条件付承認を行うことができる」とする方が、原則容認の考え方に合いやすい。
労働時間通算とは、労働者が複数の事業場で労働する場合に、労働基準法上の労働時間規制の適用において、それぞれの労働時間を合算して扱うことをいう。厚生労働省の解説では、事業主を異にする複数の事業場で、労働基準法の労働時間規制が適用される労働者として働く場合、労働時間を通算して管理する必要があると整理されている。
重要なのは、すべての副業時間が自動的に労働基準法上通算されるわけではない点である。例えば、従業員が副業先でも雇用契約に基づく労働者として働く場合には通算が問題となる。一方、個人事業主、請負、委任、会社役員など、労働基準法の労働時間規制が適用されない働き方であれば、労働時間通算の対象にならない場合がある。ただし、法的に通算しないからといって健康管理上無視してよいわけではない。長時間の副業が睡眠不足、疲労、集中力低下、事故、メンタルヘルス不調につながる場合、会社は安全配慮の観点から必要な対応を検討すべきである。
管理モデルとは、副業・兼業時の労働時間通算に関する簡便な管理方法である。厚生労働省は、副業・兼業の労働時間管理における労使双方の手続負担を軽減する方法として管理モデルを示している。概要としては、副業・兼業の開始前に、先に労働契約を締結していた使用者の法定外労働時間と、後から労働契約を締結する使用者の労働時間について、時間外労働の上限規制の範囲内で上限を設定し、それぞれの使用者が自社で発生する割増賃金を支払う方式である。
管理モデルは便利だが、万能ではない。労働者、先契約使用者、後契約使用者の理解と合意が必要であり、制度導入時の通知、上限設定、変更時の再確認、虚偽申告時の取扱い、健康状態悪化時の対応を規程化しておく必要がある。
私生活の自由、企業秩序、付随義務、就業規則変更手続を確認します。
労働者は勤務時間中、労働契約に基づき労務を提供する義務を負う。しかし、勤務時間外の生活まで会社が全面的に支配することはできない。副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には自由であるという考え方が示されてきた。厚生労働省もこの裁判例の整理を踏まえ、原則として副業・兼業を認める方向が適当であると説明している。
もっとも、労働者の自由は無制限ではない。副業が本業の勤務に重大な支障を生じさせる、会社の営業秘密を漏えいさせる、競業により会社の正当な利益を害する、会社の名誉信用を毀損する、といった場合には、会社は必要な範囲で副業を禁止または制限できる。ここで重要なのは、会社の不安や感情ではなく、具体的リスクの有無と程度で判断することである。
副業制度では、次の付随義務が問題となる。
次の比較表は、副業を認める就業規則が全面禁止を避ける理由で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 義務 | 意味 | 副業で問題となる典型例 |
|---|---|---|
| 安全配慮義務 | 使用者が労働者の生命・身体等の安全に必要な配慮を行う義務 | 本業と副業の長時間労働、睡眠不足、運転業務、危険作業、メンタル不調 |
| 秘密保持義務 | 業務上知り得た秘密を漏らさない義務 | 顧客情報、営業資料、価格情報、設計情報、ソースコード、未公開企画の流用 |
| 競業避止義務 | 在職中に会社の正当な利益を不当に侵害する競業をしない義務 | 同一顧客への営業、競合サービス開発、競合企業役員就任 |
| 誠実義務 | 信義に従い誠実に行動する義務 | 会社名を使った信用誤認、SNS炎上、反社会的・違法業務への関与 |
厚生労働省の解説でも、副業・兼業の場合には、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務に留意する必要があるとされている。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働者代表等の意見書を添えて、所轄労働基準監督署長に届け出る必要がある。変更の場合も同様である。副業規程を新設・改定する場合も、就業規則本体または付属規程として就業規則の一部を構成するのであれば、意見聴取、届出、周知の手続を踏む必要がある。
実務で見落とされやすいのは、「就業規則を作った」だけでは足りず、周知が必要である点である。副業規程を社内ポータル、規程集、入社時説明、制度説明会、FAQ、申請フォーム等で周知しなければ、従業員が制度を理解できず、無届副業や過度な萎縮を招く。
実際の支障、競業、秘密保持、無届副業への懲戒判断を整理します。
副業・兼業の裁判例は、就業規則の文言だけでなく、実際の支障の有無、企業秩序への影響、職種の危険性、競業性、秘密保持上の地位、会社の黙認、懲戒処分の重さを総合的に見る傾向がある。
小川建設事件では、就業規則で兼業を全面的に禁止することは特別な場合を除き合理性を欠くとしつつ、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮して会社の承諾にかからせる規定は不当とはいえないとされた。
この枠組みからすれば、会社は「副業は禁止」とだけ書くのではなく、「原則可能。ただし、次の具体的事情がある場合には禁止・制限できる」と書くべきである。
運転業務、危険作業、夜勤、医療・介護、保安、警備、工場勤務などでは、睡眠不足や過労が重大事故に直結する。裁判例でも、タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が求められることを理由に、非番日のアルバイトが禁止される兼業に該当すると判断された事例が紹介されている。
就業規則では、「労務提供上の支障」を抽象的に置くだけでなく、次のように具体化することが望ましい。
橋元運輸事件や東京メデカル・サービス・大幸商事事件など、秘密の漏えい、競業会社への関与、管理職の忠実義務が問題になった裁判例が紹介されている。 競業禁止は、同業種だから当然に禁止、という単純な判断では足りない。従業員の担当業務、アクセスできる情報、顧客接点、副業先での役割、営業地域、取引先の重複、役員・経営関与の有無を具体的に見るべきである。
例えば、同じIT業界でも、社内の勤怠システム保守担当者が休日に全く別分野のWeb制作を行う場合と、自社の未公開プロダクトと競合するサービスを副業で開発・販売する場合では、リスクが異なる。就業規則では「競業会社への勤務を一律禁止」と書くよりも、「会社の正当な利益を害する競業行為」を制限対象にし、判断要素を内規で示す方がよい。
厚生労働省の解説では、副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触していても、職場秩序に影響せず、労務提供に支障を生じさせない程度・態様のものは、懲戒処分を慎重に判断すべきとされている。
無届副業があった場合、直ちに懲戒解雇へ進むのではなく、少なくとも次の事項を確認すべきである。
次の比較表は、副業制限を判断する裁判例の枠組みで確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 確認事項 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 副業の性質 | 雇用か、業務委託か、役員か、単発か、継続か |
| 実際の支障 | 遅刻、欠勤、成績低下、事故、疲労、苦情があるか |
| 競業性 | 競合企業、同一顧客、同一商品、未公開情報の利用があるか |
| 秘密漏えい | 顧客情報、営業秘密、個人情報、社内資料の持出しがあるか |
| 会社の認識 | 上司が黙認していたか、過去に同様の運用があったか |
| 悪質性 | 虚偽申告、隠蔽、会社資産利用、勤務時間中の副業があるか |
| 処分均衡 | 他事例との均衡、注意指導で足りるか、再発防止が可能か |
本文に置く基本原則と、別規程や様式に分ける運用項目を整理します。
次の一覧は、就業規則本文に置く事項と、別規程や様式で運用する事項を分けて示します。重要なのは、変更頻度の高い細部をすべて本文に詰め込まないことです。項目ごとに、社内で固定すべきルールと運用で調整する部分を読み取ってください。
原則容認、届出義務、禁止・制限事由、秘密保持、健康管理、不利益取扱い禁止などを明記します。
届出対象、審査基準、回答期限、定期確認、台帳、変更報告、条件付承認の運用を定めます。
届出書、確認結果通知、社内FAQ、相談窓口、健康面談の質問事項を整備します。
副業を認める就業規則は、少なくとも次の要素を含めるべきである。
就業規則本文にすべてを細かく書きすぎると、軽微な運用変更のたびに就業規則変更手続が必要になる。したがって、本文には基本原則と重要な義務を置き、審査基準、様式、手順、台帳、FAQは「副業・兼業取扱規程」「副業・兼業運用要領」「申請フォーム」に分けるのが実務的である。
原則可能、届出、制限事由、健康管理、秘密保持、違反時対応を条文として確認します。
以下は、一般的な企業で採用しやすい標準型の規定例である。実際に導入する場合は、既存の就業規則、懲戒規定、秘密保持規定、情報セキュリティ規程、個人情報保護規程、職務発明規程、SNS規程、労働時間制度との整合を確認する必要がある。
この規定例のポイントは、会社が副業を「任意に許す」のではなく、原則として可能であることを明示し、その上で会社が関与できる場面を具体的に限定している点である。
届出対象、確認、回答、労働時間、健康、秘密保持を別規程として整理します。
就業規則本文だけでは、運用が不十分になりやすい。以下は、別規程として置く場合の骨子例である。
必要情報と過剰取得を分け、個人情報として管理する視点を確認します。
厚生労働省のモデル就業規則の解説では、副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、長時間労働の有無等を確認するため、事前届出により副業・兼業を把握することが規定されている。特に、自社と副業先の双方で雇用される場合には、他の使用者の事業内容、従事業務、労働契約の締結日・期間、所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻、所定外労働の有無・見込み・最大時間数、実労働時間等の報告手続、確認頻度などを確認することが考えられる。
ただし、会社は何でも聞いてよいわけではない。副業先の報酬額、家族構成、借金、思想信条、疾病名など、制度運用に不要または過剰な情報を求めるべきではない。個人情報保護法上も、事業者は利用目的を特定し、その範囲内で利用し、安全管理を行う必要がある。
労働時間、健康、競業、秘密情報、会社信用などを低・中・高リスクで整理します。
次の判断の流れは、副業届を受けた後に確認する順番を表しています。重要なのは、担当者の好みではなく、具体的リスクと必要最小限の条件で判断することです。上から順に、情報不足、制限事由、条件付承認、禁止の分岐を読み取ってください。
契約形態、業務内容、予定時間、競業性、会社資産利用の有無を確認します。
労働時間、健康、安全、秘密情報、会社信用、利益相反を低・中・高で見ます。
時間制限、業務範囲の限定、定期報告、秘密保持措置で足りるか検討します。
実施可、条件付可、追加確認、一部制限、禁止を理由付きで通知します。
副業審査は、担当者の好みで判断してはならない。審査基準を明文化し、類似事案で判断の一貫性を保つ必要がある。
次の比較表は、副業を認めるか制限するかの審査基準で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 評価領域 | 低リスク | 中リスク | 高リスク |
|---|---|---|---|
| 労働時間 | 月10時間程度、深夜なし | 週10〜15時間、繁忙期あり | 週20時間超、深夜・早朝・連続勤務 |
| 健康・安全 | デスクワーク、単発 | 夜間作業、移動多い | 運転、危険作業、夜勤、医療・介護、警備 |
| 競業 | 異業種、顧客重複なし | 関連業種、間接競合 | 同一市場、同一顧客、競合役員・営業 |
| 秘密情報 | 自社情報と無関係 | 関連知識を使う可能性 | 営業秘密、個人情報、未公開情報の流用懸念 |
| 会社信用 | 個人名義で限定活動 | SNS・発信あり | 会社名・職位利用、炎上リスク、違法性 |
| 契約形態 | 個人事業・単発 | 業務委託継続 | 他社雇用で労働時間通算、役員就任 |
| 本業影響 | 勤務成績良好 | 繁忙期調整必要 | 遅刻、欠勤、居眠り、成績低下が発生 |
次の比較表は、副業を認めるか制限するかの審査基準で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 類型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 実施可 | 制限事由なし | 休日に月数時間の異業種講師 |
| 条件付可 | リスクはあるが条件で管理可能 | 競合しない範囲に限定、月○時間まで、深夜禁止 |
| 追加確認 | 事実不足 | 契約先不明、業務内容不明、労働時間不明 |
| 一部制限 | 業務の一部が危険 | 同一顧客への営業は禁止、一般講義は可 |
| 禁止 | 具体的支障が大きい | 競合企業の営業担当、会社秘密の利用が前提、過労リスク重大 |
禁止・制限は、具体的な事実に基づき、必要最小限度にとどめるべきである。例えば、同業種の副業であっても、会社の正当な利益が害されない場合には認めるべき場合がある。厚生労働省の解説でも、競業避止義務は使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務であり、同一業種・職種でも副業を認めるべき場合があるとされている。
雇用型副業の通算、割増賃金、フリーランス型副業の健康管理を確認します。
従業員が副業先でも雇用される場合、労働基準法上の労働時間通算が問題になる。厚生労働省の解説では、労働者が事業主を異にする複数の事業場において労働基準法の労働時間規制が適用される労働者に該当する場合、労働時間が通算されるとされている。
具体的には、次のような確認が必要になる。
次の比較表は、副業を認める就業規則での労働時間管理で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 確認事項 | 理由 |
|---|---|
| 副業先での契約形態 | 労働時間通算対象かを判断するため |
| 労働契約締結日 | 先契約・後契約の関係を把握するため |
| 所定労働日・時間 | 開始前の通算判断に必要 |
| 所定外労働の見込み | 開始後の時間外労働管理に必要 |
| 実労働時間の報告方法 | 割増賃金、上限規制、健康管理に必要 |
| 報告頻度 | 月次、週次、繁忙期等の運用を決めるため |
労働時間を通算した結果、法定労働時間を超える時間外労働が発生する場合、自社で労働させた時間のうち時間外労働となる部分について、割増賃金を支払う必要がある。厚生労働省の解説でも、労働時間通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について割増賃金を支払う必要があるとされている。
実務上の混乱を避けるため、次のような社内ルールを置くとよい。
業務委託、請負、準委任、個人事業など、労働基準法上の労働時間規制が適用されない働き方であれば、労働時間通算の対象外となる場合がある。しかし、会社が把握した副業時間が過重で、本人の健康状態に問題がある場合には、放置すべきではない。
例えば、平日は本業で8時間勤務し、深夜に個人事業として毎日4時間作業し、休日も休まず働いている従業員がいる場合、労働基準法上の通算対象外であっても、過労、睡眠不足、メンタルヘルス不調、本業中の事故リスクが現実化し得る。就業規則では、法定通算とは別に、健康確保の観点から報告、相談、制限ができる規定を置く必要がある。
長時間労働、睡眠不足、面談、産業医相談につなげる運用を整理します。
厚生労働省の解説では、使用者は健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック等を実施しなければならず、使用者が副業・兼業を認めている場合には、健康保持のため自己管理を行うよう指示し、心身の不調があれば相談を受けることを伝えることなどが適当とされている。
会社は、次の兆候がある場合、副業との関係を確認するべきである。
健康面談では、労働者の私生活に過度に踏み込まないようにしながら、業務遂行と健康確保に必要な範囲で確認する。
次の比較表は、副業制度の健康管理と安全配慮で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 項目 | 質問例 |
|---|---|
| 睡眠 | 平均睡眠時間はどの程度か |
| 休息 | 週に完全な休養日があるか |
| 副業時間 | 直近1か月の副業時間はどの程度か |
| 深夜作業 | 深夜・早朝の作業があるか |
| 本業影響 | 本業中の疲労や集中力低下を感じるか |
| 医療 | 医師・産業医への相談希望があるか |
| 調整可能性 | 副業時間の削減や一時中止は可能か |
会社情報、副業先情報、生成AI、クラウド、会社資産利用を整理します。
副業制度における情報管理は、単なる秘密保持誓約だけでは不十分である。実務上は、会社情報、副業先情報、顧客情報、個人情報、生成AI、クラウドストレージ、私物PC、SNS、職務著作、職務発明が交差する。
会社が副業届で取得する情報は、従業員の個人情報に該当し得る。副業先の名称、勤務時間、業務内容、健康状態に関する申告、社会保険手続に関する情報は、適切に保管・アクセス制限する必要がある。個人情報保護委員会の説明でも、個人情報取扱事業者には、利用目的の特定・通知または公表、安全管理、第三者提供時の本人同意等が求められる。
副業情報は、人事部門、法務部門、上長、産業保健スタッフ等のうち、必要な者だけが閲覧できるようにすべきである。全社共有フォルダや部署内の誰でも見られるExcelで管理することは避ける。
近年は、副業として、生成AIを用いたライティング、画像制作、コード生成、コンサルティング、データ分析を行うケースがある。規程上は、次の点を明記するとよい。
一律禁止ではなく、顧客重複や未公開情報利用など具体的リスクを確認します。
競業管理では、会社の正当な利益を守ることと、労働者の職業選択・能力開発を尊重することのバランスが必要である。厚生労働省の解説でも、競業避止義務は使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とするものであり、自社の正当な利益が侵害されない場合には、同一業種・職種であっても副業を認めるべき場合があるとされている。
次の比較表は、副業の競業・利益相反を管理する方法で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| チェック項目 | 問題となる例 |
|---|---|
| 顧客重複 | 自社顧客へ副業として営業する |
| 取引先関係 | 自社の委託先から個人で業務を受ける |
| 競合関係 | 競合企業の営業・開発・マーケティングに従事する |
| 価格・戦略情報 | 自社の未公開価格、提案情報を利用する |
| 役員就任 | 競合会社や取引先の役員になる |
| 調達・購買 | 自分の副業会社を自社の取引先にする |
| 審査・監査 | 自社で監査・評価する相手方から副業収入を得る |
| 公的職務 | 公務・研究・大学・医療等の利益相反規程に抵触する |
競業リスクが中程度の場合、全面禁止ではなく条件付承認で対応できることがある。
従業員が受注者になる場合と会社が発注者になる場合を分けて整理します。
従業員が副業としてフリーランス業務を行う場合、本人は発注を受ける側になる。一方、会社が副業人材や個人事業主に業務委託する場合は、会社が発注事業者になる。フリーランス・事業者間取引適正化等法は2024年11月1日に施行され、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、取引条件の明示、原則60日以内の報酬支払、ハラスメント対策の体制整備等を義務付けている。
副業制度の観点では、次の二つを分けて考える必要がある。
第一に、従業員が外部から業務委託を受ける場合、会社は「従業員の副業内容」として、健康、競業、秘密保持の観点で確認する。会社がその外部発注者の法令遵守を直接管理するわけではないが、違法・反社会的・公序良俗違反の業務に従事する場合は、会社信用や安全配慮上の問題となり得る。
第二に、会社が外部の副業人材・フリーランスに発注する場合、会社自身がフリーランス法上の義務を負う可能性がある。自社従業員の副業制度とは別に、業務委託契約書、発注書、支払期日、募集表示、ハラスメント相談窓口、中途解除の事前予告等を整備する必要がある。
また、形式上は業務委託でも、実態として労働者に該当する場合には、労働基準関係法令が適用され得る。厚生労働省も、契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して労働者性が判断されると説明している。 副業を「業務委託だから労働時間管理不要」と機械的に扱うのは危険である。
二以上事業所勤務、マルチジョブホルダー、複数事業労働者、確定申告を確認します。
従業員が副業先でも健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たす場合、二以上事業所勤務の手続が必要になることがある。日本年金機構は、事実発生から10日以内に、被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があると説明している。
会社は、従業員の副業を把握した場合、社会保険加入要件に該当するかを必要な範囲で確認し、該当可能性があれば本人に手続を案内する。会社が全ての副業収入を把握しようとするのではなく、加入要件と手続に必要な情報を確認することが重要である。
雇用保険は、従来、主たる事業所で週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等を満たす場合に適用される。これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、一定要件を満たす場合、本人からハローワークへ申出を行うことで特例的に被保険者となる制度である。
副業制度の社内FAQには、高年齢労働者向けにこの制度の概要と相談窓口を記載しておくとよい。
労災保険については、複数の会社等に雇用される労働者への保険給付に関する制度改正がある。厚生労働省は、2020年9月1日施行の改正に関する資料を掲載し、複数の会社等で働く人への労災保険給付を説明している。
会社は、副業中に事故が起きた場合、自社業務との関係、副業先業務との関係、通勤経路、複数業務要因災害の可能性を整理する必要がある。特に、過重労働や精神障害では、複数の就業先における業務上の負荷が問題となる可能性がある。
国税庁は、年末調整済みの給与所得者であっても、給与所得以外の副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、一定の場合を除き確定申告が必要と説明している。
会社は、従業員の税務申告を代行する立場ではない。しかし、副業制度の説明資料では、次のように案内するとよい。
利用目的、台帳項目、アクセス制限、保存期限を整理します。
副業届には、従業員の勤務外活動、就業時間、健康状態、場合によっては副業先名や契約関係が含まれる。これはセンシティブな労務情報であり、慎重に扱う必要がある。
次の比較表は、副業管理台帳と個人情報保護で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管理番号 | 個人名を直接表示しない番号 |
| 氏名・所属 | 必要最小限 |
| 副業区分 | 雇用、業務委託、役員等 |
| 副業先業種 | 詳細すぎない分類 |
| 開始日・終了日 | 更新管理 |
| 週・月の予定時間 | 労働時間・健康管理 |
| リスク評価 | 労働時間、競業、秘密、信用 |
| 審査結果 | 可、条件付可、追加確認、不可 |
| 条件内容 | 時間制限、業務制限等 |
| 定期確認日 | 年1回等 |
| 健康面談要否 | 必要な範囲 |
| 閲覧権限 | 人事、法務、上長等 |
| 保存期限 | 終了後○年など |
副業台帳は、人事労務担当者であれば誰でも見られる、という設計にしない方がよい。閲覧者を限定し、アクセスログを残し、保存期限を定める。副業情報が職場で噂になると、従業員は届出を避けるようになり、制度が機能しなくなる。
事実確認、証拠保全、本人弁明、処分均衡、再発防止を確認します。
次の判断の流れは、無届副業や虚偽申告が見つかったときの対応順序を表します。重要なのは、うわさや形式違反だけで重い処分に進まず、証拠と処分均衡を確認することです。上から順に、事実確認から再発防止までの順番を読み取ってください。
副業内容、時間、契約、会社への影響、本人の認識を確認します。
勤怠、PCログ、届出書、面談記録を整理し、本人の説明機会を設けます。
悪質性、実害、過去事例、是正可能性、処分均衡を確認します。
制度周知、申請フォーム、上司教育、相談導線を改善します。
次の比較表は、無届副業や違反への段階的対応で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 類型 | 例 | 初動対応 |
|---|---|---|
| 無届副業 | 届出せずアルバイト | 事実確認、届出促し、支障確認 |
| 虚偽申告 | 実際は週30時間なのに週5時間と申告 | 証拠確認、面談、健康・労働時間確認 |
| 勤務時間中の副業 | 本業中に副業チャット・納品 | 業務ログ確認、注意指導、懲戒検討 |
| 会社資産利用 | 会社PC、メール、資料を副業利用 | 情報漏えい調査、利用停止、懲戒検討 |
| 競業 | 自社顧客に副業で営業 | 顧客影響確認、差止め、損害確認 |
| 秘密漏えい | 顧客データを副業に流用 | 緊急調査、情報封じ込め、法的措置 |
| 健康悪化 | 過労で本業に支障 | 面談、時間制限、産業医相談 |
副業規定違反を懲戒対象にする場合、懲戒事由と明確に接続させる必要がある。
ただし、懲戒事由に該当し得るとしても、実際の処分は個別事情に応じて慎重に判断すべきである。
経営、人事、法務、情報システム、産業保健、現場を含めた体制を確認します。
次の時系列は、副業制度を導入するときの社内作業の順番を示しています。重要なのは、規程案だけを作って終わらせず、届出受付後の検証まで続けることです。左の期間表示と各段階の作業から、誰が何を準備するかを読み取ってください。
禁止規定、無届副業、職種別リスク、過去トラブルを調べます。
届出制、許可制の例外、高リスク職種、禁止業務を定めます。
就業規則、届出書、同意書、FAQ、管理台帳を整えます。
施行後30日以内の届出など、移行時の扱いを明確にします。
申請件数、却下理由、健康問題、無届事案、現場負担を検証します。
副業制度は、人事だけで作ると情報管理が弱くなり、法務だけで作ると運用が硬くなり、経営だけで作ると現場負担が見落とされやすい。次の体制で進めると実効性が高い。
次の比較表は、副業制度導入プロジェクトの進め方で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 役割 | 主な担当 |
|---|---|
| 経営 | 制度方針、リスク許容度、社内メッセージ |
| 人事労務 | 就業規則、届出、労働時間、健康管理 |
| 法務 | 競業、秘密保持、契約、懲戒、紛争対応 |
| 情報システム | 会社資産利用禁止、ログ、アクセス管理 |
| 産業医・保健師 | 健康リスク、面談、過重労働対応 |
| 現場管理職 | 業務支障の把握、相談対応 |
| 広報 | 社内外メッセージ、SNS・信用リスク |
| 社労士・弁護士等 | 規程確認、手続、紛争予防 |
従業員に伝えるべき基本ルールを一般情報として整理します。
勤務時間外に副業を行うことは原則として可能です。ただし、本業に支障が出る場合、長時間労働や健康障害の恐れがある場合、会社の秘密情報が漏れる恐れがある場合、競業により会社の正当な利益を害する場合、会社の名誉信用を損なう場合などは、会社が必要な範囲で禁止・制限・条件付承認を行うことがあります。
会社が副業を監視するためではなく、本業への支障、労働時間、健康、秘密保持、競業、会社信用のリスクを確認するためです。副業の相談・届出をしたことのみを理由に不利益な取扱いをすることはありません。
通常の資産運用や趣味活動は原則として届出不要です。ただし、継続的に対価を得る活動、会社の競業になり得る活動、会社名・職位を使う活動、勤務時間や健康に大きく影響する活動は届出または相談の対象になります。
原則として、会社は副業収入額そのものを確認しません。ただし、社会保険や税務に関して本人が必要な手続を行う必要があります。会社が確認するのは、主に業務内容、契約形態、労働時間、競業・秘密保持・健康管理上必要な情報です。
副業の相談・届出をしたことのみを理由に不利益な取扱いをすることはありません。ただし、副業により本業の成果、勤務態度、健康、安全、秘密保持、競業に具体的な問題が生じた場合は、業務上必要な対応を行います。
副業先でも労働者として雇用される場合、労働時間通算、割増賃金、時間外労働の上限、健康管理が問題になります。会社所定の届出で、所定労働時間、所定外労働の見込み、実労働時間の報告方法を確認します。
労働基準法上の通算対象にならない場合でも、健康管理や本業への支障確認のため、予定時間や作業時間の目安を確認することがあります。
使えません。会社のPC、スマートフォン、メール、チャット、クラウド、アカウント、ソフトウェア、備品、資料、会議室などを副業に利用することは禁止です。
会社の承認なく、会社名、ロゴ、職位、肩書、名刺、メールアドレスを副業の広告、営業、SNS、プロフィールに利用してはいけません。個人としての活動であることを明確にしてください。
あります。競業、秘密保持、会社からの副業禁止、懲戒、退職勧奨、損害賠償、営業秘密、著作権・職務発明、労災、長時間労働、ハラスメント、フリーランス契約トラブルがある場合は、弁護士等の専門家への相談が有益です。労働時間・社会保険・就業規則手続については社会保険労務士への相談も重要です。
規程改定、競業、懲戒、労災、情報漏えいなどの相談先を整理します。
副業制度は、平時は人事労務の制度運用で処理できる。しかし、次の場面では、法律専門家への相談を強く推奨する。
次の比較表は、副業制度で専門家に相談すべき場面で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。
| 場面 | 主な相談先 |
|---|---|
| 就業規則の全面改定 | 社労士、弁護士 |
| 副業禁止・制限の妥当性判断 | 弁護士、社労士 |
| 競業・営業秘密・顧客奪取 | 弁護士 |
| 懲戒処分・解雇 | 弁護士、社労士 |
| 長時間労働・過労・労災 | 社労士、弁護士、産業医 |
| 個人情報漏えい | 弁護士、情報セキュリティ専門家 |
| 役員・管理職の利益相反 | 弁護士、公認会計士等 |
| フリーランスへの業務委託制度 | 弁護士、社労士 |
| 税務・副業所得 | 税理士 |
| 社会保険二以上勤務 | 社労士、年金事務所 |
特に、懲戒解雇、競業差止め、損害賠償、営業秘密侵害、SNS炎上、重大な情報漏えい、過労による健康障害は、初動を誤ると紛争が拡大する。証拠保全、本人弁明、処分相当性、対外説明、再発防止策をセットで検討すべきである。
条文だけでなく、届出、審査、健康、情報、懲戒、相談窓口を一体で整備します。
副業を認める就業規則の書き方で最も重要なのは、会社が副業を恩恵的に許すという発想から離れることである。勤務時間外の活動は、基本的には労働者の自由である。しかし、会社には、労務提供、安全配慮、秘密保持、競業管理、企業秩序維持の責任がある。したがって、副業制度は、自由と責任を接続する制度として設計する必要がある。
実務上の最適解は、次の形である。
副業を認めることは、単に「禁止規定を削除する」ことではない。就業規則、別規程、届出様式、審査基準、健康管理、労働時間管理、情報管理、懲戒判断、相談窓口を一体として整備することで、従業員のキャリア形成と会社のリスク管理を両立できる。