2σ Guide

副業を認める就業規則の
書き方と管理方法

原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。

3層 原則容認・例外制限・届出管理
30日 既存副業の経過措置例
年1回 定期確認の目安
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副業を認める就業規則の 書き方と管理方法

原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。

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副業を認める就業規則の 書き方と管理方法
原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。
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  • 副業を認める就業規則の 書き方と管理方法
  • 原則容認、例外制限、届出管理を軸に、条文例、審査基準、労働時間、健康、情報管理、懲戒対応まで整理します。

POINT 1

  • 副業を認める就業規則は原則容認・例外制限・届出管理で設計する
  • 最初に制度の骨格と、会社が制限できる場面を確認します。
  • 勤務時間外の副業・兼業は原則容認
  • 労務提供・秘密保持・競業・信用リスクは制限
  • 届出・確認・記録・定期見直しで運用

POINT 2

  • 副業を認める就業規則で使う用語の定義
  • 副業、兼業、届出制、許可制、労働時間通算、管理モデルの違いを整理します。
  • 2.1 副業・兼業とは何か
  • 2.2 届出制と許可制の違い
  • 2.3 労働時間通算とは何か

POINT 3

  • 副業を認める就業規則が全面禁止を避ける理由
  • 私生活の自由、企業秩序、付随義務、就業規則変更手続を確認します。
  • 3.1 私生活の自由と企業秩序の調整
  • 3.2 労働契約上の付随義務
  • 3.3 就業規則の作成・変更手続

POINT 4

  • 副業制限を判断する裁判例の枠組み
  • 実際の支障、競業、秘密保持、無届副業への懲戒判断を整理します。
  • 4.1 全面禁止の合理性は限定的
  • 4.2 労務提供上の支障がある場合
  • 4.3 秘密保持・競業が問題となる場合

POINT 5

  • 副業を認める就業規則に書くべき全体構造
  • 本文に置く基本原則
  • 原則容認、届出義務、禁止・制限事由、秘密保持、健康管理、不利益取扱い禁止などを明記します。
  • 別規程で具体化する事項
  • 届出対象、審査基準、回答期限、定期確認、台帳、変更報告、条件付承認の運用を定めます。

POINT 6

  • 副業を認める就業規則の標準条文例
  • 原則可能、届出、制限事由、健康管理、秘密保持、違反時対応を条文として確認します。
  • 以下は、一般的な企業で採用しやすい標準型の規定例である。

POINT 7

  • 副業・兼業取扱規程で管理方法を具体化する
  • 届出対象、確認、回答、労働時間、健康、秘密保持を別規程として整理します。
  • 就業規則本文だけでは、運用が不十分になりやすい。
  • 以下は、別規程として置く場合の骨子例である。

POINT 8

  • 副業届出様式で聞くことと聞きすぎないこと
  • 必要情報と過剰取得を分け、個人情報として管理する視点を確認します。
  • 8.1 届出フォーム例
  • 8.2 審査結果通知例
  • ただし、会社は何でも聞いてよいわけではない。

まとめ

  • 副業を認める就業規則の 書き方と管理方法
  • 副業を認める就業規則は原則容認・例外制限・届出管理で設計する:最初に制度の骨格と、会社が制限できる場面を確認します。
  • 副業を認める就業規則で使う用語の定義:副業、兼業、届出制、許可制、労働時間通算、管理モデルの違いを整理します。
  • 副業を認める就業規則が全面禁止を避ける理由:私生活の自由、企業秩序、付随義務、就業規則変更手続を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

副業を認める就業規則は原則容認・例外制限・届出管理で設計する

最初に制度の骨格と、会社が制限できる場面を確認します。

次の重要ポイントは、副業制度を就業規則に入れるときの三層構造を表しています。重要なのは、単に禁止を外すのではなく、従業員の自由と会社のリスク管理を同じ制度に入れることです。左から順に、基本方針、制限できる場面、継続管理の役割を読み取ってください。

原則

勤務時間外の副業・兼業は原則容認

労働者の私生活の自由を出発点にし、制度の入口を閉じない設計にします。

例外

労務提供・秘密保持・競業・信用リスクは制限

会社の不安ではなく、具体的な支障や正当な利益の侵害を基準にします。

管理

届出・確認・記録・定期見直しで運用

届出様式、審査基準、健康管理、台帳、違反対応まで整備します。

副業制度を就業規則に書くときの基本は、次の三層構造である。

第一に、勤務時間外の時間の使い方は、基本的には労働者の自由であるという出発点を明確にする。厚生労働省の副業・兼業ガイドラインおよびモデル就業規則は、裁判例を踏まえ、副業・兼業を原則として認める方向を示している。モデル就業規則でも「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という構造が採用されている。

第二に、会社が制限できる場合を客観的に列挙する。典型的には、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、会社の名誉・信用の毀損または信頼関係の破壊、競業による会社利益の侵害である。これらは厚生労働省のモデル就業規則と裁判例の整理に沿うものであり、抽象的な「会社が不適当と認めた場合」だけで広く制限する設計は避けるべきである。

第三に、届出・確認・変更報告・健康管理・労働時間管理・秘密保持・競業管理を、継続的な運用手順に落とし込む。副業制度で失敗する会社は、就業規則の条文だけを作り、届出様式、審査基準、回答期限、記録台帳、定期確認、撤回基準、個人情報管理、懲戒判断の手順を整備していないことが多い。副業を「認める」ことは、何もしないことではない。むしろ、許容範囲を透明化し、従業員が安心して相談でき、会社も労務・情報・競業リスクを管理できる制度にすることが中核である。

Section 01

副業を認める就業規則で使う用語の定義

副業、兼業、届出制、許可制、労働時間通算、管理モデルの違いを整理します。

2.1 副業・兼業とは何か

この記事では、副業・兼業を、労働者が自社での勤務時間外に、他社での雇用、業務委託、請負、準委任、個人事業、会社役員、顧問、講師、執筆、配信、販売、アプリ開発、家業手伝いその他の形で、継続的または反復的に対価を得て業務を行うこと、と定義する。

ただし、就業規則上は、どこまでを届出対象にするかを明確に分ける必要がある。例えば、次のように整理すると実務上扱いやすい。

次の比較表は、副業を認める就業規則で使う用語の定義で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

区分届出対象にするか
他社雇用型アルバイト、パート、契約社員、派遣就労原則届出対象
業務委託・個人事業型Web制作、ライター、コンサル、講師、配信、物販原則届出対象
役員・経営関与型他社取締役、合同会社代表、家族会社役員原則届出対象。競業・利益相反を重点確認
投資型上場株式、投資信託、暗号資産、通常の資産運用原則届出対象外。ただし勤務時間中の取引、インサイダー、会社資産利用は別問題
単発・軽微型一回限りの講演謝礼、短期の本文料金額・性質・競業性に応じて届出または事後報告
無償活動ボランティア、地域活動、趣味活動原則届出対象外。ただし長時間・安全配慮・会社信用リスクがある場合は相談対象

副業を広く定義しすぎると、従業員の私生活を過度に監視する制度になる。一方で、届出対象を狭くしすぎると、労働時間、競業、営業秘密、会社信用のリスクを把握できない。したがって、就業規則本文では基本的な定義を置き、詳細は「副業・兼業取扱規程」または「届出要領」で補足するのが望ましい。

2.2 届出制と許可制の違い

届出制とは、従業員が副業の内容を会社に申告し、会社は制限事由に該当するかを確認する制度である。原則は副業可能であり、会社は例外的なリスクがあるときに禁止・制限・条件付承認を行う。

許可制とは、会社の許可がなければ副業をしてはならないとする制度である。許可制自体が常に違法というわけではないが、許否判断が恣意的であってはならない。裁判例でも、兼業を許可制にする場合には、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した合理的運用が問題となる。厚生労働省の整理でも、許可等の手続違反が形式的にあっても、職場秩序や労務提供に実質的支障がない場合には懲戒を慎重に判断すべきとされている。

実務上は、届出制を基本にしつつ、危険物取扱、運転、医療・介護、金融、情報セキュリティ、研究開発、役員・管理職、営業秘密・個人情報を大量に扱う職種などでは、届出後の審査を厳格化する設計が妥当である。表現としては「会社の承認を得なければならない」よりも、「届出に基づき、会社は本規則所定の制限事由の有無を確認し、必要な範囲で禁止、制限または条件付承認を行うことができる」とする方が、原則容認の考え方に合いやすい。

2.3 労働時間通算とは何か

労働時間通算とは、労働者が複数の事業場で労働する場合に、労働基準法上の労働時間規制の適用において、それぞれの労働時間を合算して扱うことをいう。厚生労働省の解説では、事業主を異にする複数の事業場で、労働基準法の労働時間規制が適用される労働者として働く場合、労働時間を通算して管理する必要があると整理されている。

重要なのは、すべての副業時間が自動的に労働基準法上通算されるわけではない点である。例えば、従業員が副業先でも雇用契約に基づく労働者として働く場合には通算が問題となる。一方、個人事業主、請負、委任、会社役員など、労働基準法の労働時間規制が適用されない働き方であれば、労働時間通算の対象にならない場合がある。ただし、法的に通算しないからといって健康管理上無視してよいわけではない。長時間の副業が睡眠不足、疲労、集中力低下、事故、メンタルヘルス不調につながる場合、会社は安全配慮の観点から必要な対応を検討すべきである。

2.4 管理モデルとは何か

管理モデルとは、副業・兼業時の労働時間通算に関する簡便な管理方法である。厚生労働省は、副業・兼業の労働時間管理における労使双方の手続負担を軽減する方法として管理モデルを示している。概要としては、副業・兼業の開始前に、先に労働契約を締結していた使用者の法定外労働時間と、後から労働契約を締結する使用者の労働時間について、時間外労働の上限規制の範囲内で上限を設定し、それぞれの使用者が自社で発生する割増賃金を支払う方式である。

管理モデルは便利だが、万能ではない。労働者、先契約使用者、後契約使用者の理解と合意が必要であり、制度導入時の通知、上限設定、変更時の再確認、虚偽申告時の取扱い、健康状態悪化時の対応を規程化しておく必要がある。

Section 03

副業制限を判断する裁判例の枠組み

実際の支障、競業、秘密保持、無届副業への懲戒判断を整理します。

副業・兼業の裁判例は、就業規則の文言だけでなく、実際の支障の有無、企業秩序への影響、職種の危険性、競業性、秘密保持上の地位、会社の黙認、懲戒処分の重さを総合的に見る傾向がある。

4.1 全面禁止の合理性は限定的

小川建設事件では、就業規則で兼業を全面的に禁止することは特別な場合を除き合理性を欠くとしつつ、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮して会社の承諾にかからせる規定は不当とはいえないとされた。

この枠組みからすれば、会社は「副業は禁止」とだけ書くのではなく、「原則可能。ただし、次の具体的事情がある場合には禁止・制限できる」と書くべきである。

4.2 労務提供上の支障がある場合

運転業務、危険作業、夜勤、医療・介護、保安、警備、工場勤務などでは、睡眠不足や過労が重大事故に直結する。裁判例でも、タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が求められることを理由に、非番日のアルバイトが禁止される兼業に該当すると判断された事例が紹介されている。

就業規則では、「労務提供上の支障」を抽象的に置くだけでなく、次のように具体化することが望ましい。

  • 本業の始業時刻に遅刻、欠勤、居眠り、集中力低下が生じている場合
  • 本業の所定労働時間、時間外労働、休日労働への対応が困難になる場合
  • 本業が安全上の注意力を要する業務で、副業により休息時間が著しく不足する場合
  • 労働時間通算により法令上の上限規制を遵守できないおそれがある場合
  • 健康診断、面接指導、産業医意見、本人申告等から健康障害リスクが認められる場合

4.3 秘密保持・競業が問題となる場合

橋元運輸事件や東京メデカル・サービス・大幸商事事件など、秘密の漏えい、競業会社への関与、管理職の忠実義務が問題になった裁判例が紹介されている。 競業禁止は、同業種だから当然に禁止、という単純な判断では足りない。従業員の担当業務、アクセスできる情報、顧客接点、副業先での役割、営業地域、取引先の重複、役員・経営関与の有無を具体的に見るべきである。

例えば、同じIT業界でも、社内の勤怠システム保守担当者が休日に全く別分野のWeb制作を行う場合と、自社の未公開プロダクトと競合するサービスを副業で開発・販売する場合では、リスクが異なる。就業規則では「競業会社への勤務を一律禁止」と書くよりも、「会社の正当な利益を害する競業行為」を制限対象にし、判断要素を内規で示す方がよい。

4.4 形式的な無届だけで重い懲戒をしない

厚生労働省の解説では、副業・兼業が形式的に就業規則の規定に抵触していても、職場秩序に影響せず、労務提供に支障を生じさせない程度・態様のものは、懲戒処分を慎重に判断すべきとされている。

無届副業があった場合、直ちに懲戒解雇へ進むのではなく、少なくとも次の事項を確認すべきである。

次の比較表は、副業制限を判断する裁判例の枠組みで確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

確認事項見るべきポイント
副業の性質雇用か、業務委託か、役員か、単発か、継続か
実際の支障遅刻、欠勤、成績低下、事故、疲労、苦情があるか
競業性競合企業、同一顧客、同一商品、未公開情報の利用があるか
秘密漏えい顧客情報、営業秘密、個人情報、社内資料の持出しがあるか
会社の認識上司が黙認していたか、過去に同様の運用があったか
悪質性虚偽申告、隠蔽、会社資産利用、勤務時間中の副業があるか
処分均衡他事例との均衡、注意指導で足りるか、再発防止が可能か
Section 04

副業を認める就業規則に書くべき全体構造

本文に置く基本原則と、別規程や様式に分ける運用項目を整理します。

次の一覧は、就業規則本文に置く事項と、別規程や様式で運用する事項を分けて示します。重要なのは、変更頻度の高い細部をすべて本文に詰め込まないことです。項目ごとに、社内で固定すべきルールと運用で調整する部分を読み取ってください。

本文に置く基本原則

原則容認、届出義務、禁止・制限事由、秘密保持、健康管理、不利益取扱い禁止などを明記します。

別規程で具体化する事項

届出対象、審査基準、回答期限、定期確認、台帳、変更報告、条件付承認の運用を定めます。

様式とFAQで支える事項

届出書、確認結果通知、社内FAQ、相談窓口、健康面談の質問事項を整備します。

副業を認める就業規則は、少なくとも次の要素を含めるべきである。

  1. 副業・兼業を原則認める基本方針
  2. 副業・兼業の定義
  3. 事前届出の義務
  4. 届出事項
  5. 禁止・制限・条件付承認の事由
  6. 労働時間・健康管理に関する報告義務
  7. 秘密保持、競業避止、会社資産利用禁止
  8. 変更・終了・定期確認
  9. 相談・不利益取扱い禁止
  10. 虚偽申告・違反時の対応
  11. 個人情報の取扱い
  12. 詳細を別規程・様式に委任する規定

就業規則本文にすべてを細かく書きすぎると、軽微な運用変更のたびに就業規則変更手続が必要になる。したがって、本文には基本原則と重要な義務を置き、審査基準、様式、手順、台帳、FAQは「副業・兼業取扱規程」「副業・兼業運用要領」「申請フォーム」に分けるのが実務的である。

Section 05

副業を認める就業規則の標準条文例

原則可能、届出、制限事由、健康管理、秘密保持、違反時対応を条文として確認します。

以下は、一般的な企業で採用しやすい標準型の規定例である。実際に導入する場合は、既存の就業規則、懲戒規定、秘密保持規定、情報セキュリティ規程、個人情報保護規程、職務発明規程、SNS規程、労働時間制度との整合を確認する必要がある。

規定例第○条(副業・兼業)

1 従業員は、勤務時間外において、会社以外の者のために業務に従事し、または自ら事業を営むことができる。

2 従業員は、前項の副業・兼業を開始しようとするときは、会社所定の方法により、事前に会社へ届け出なければならない。ただし、会社が別に定める軽微なものについては、この限りでない。

3 会社は、前項の届出に基づき、副業・兼業の内容を確認し、当該副業・兼業が次の各号のいずれかに該当し、または該当するおそれがあると合理的に認められる場合には、必要な範囲で、当該副業・兼業を禁止し、制限し、または条件を付すことができる。
 (1) 会社に対する労務提供に支障を生じさせる場合
 (2) 長時間労働、休息不足その他従業員の安全または健康に支障を生じさせる場合
 (3) 会社または取引先の秘密情報、個人情報、営業上または技術上の情報が漏えいし、または不正に利用されるおそれがある場合
 (4) 競業により会社の正当な利益を害する場合
 (5) 会社の名誉、信用を損ない、または会社との信頼関係を破壊する場合
 (6) 法令、公序良俗、会社規程または取引先との契約上の義務に違反する場合
 (7) 会社の施設、設備、情報システム、アカウント、備品、資料、名刺、職名その他会社の資産または信用を不正に利用する場合

4 従業員は、副業・兼業の内容、就業日、就業時間、業務内容、契約形態その他届出事項に重要な変更が生じたとき、または副業・兼業を終了したときは、速やかに会社へ報告しなければならない。

5 従業員は、副業・兼業を行うにあたり、会社の秘密情報および個人情報を漏えいし、または会社の業務上取得した情報を副業・兼業に利用してはならない。

6 従業員は、副業・兼業により疲労、睡眠不足、心身の不調その他会社の業務遂行に支障を生じるおそれがある場合には、速やかに会社へ申し出なければならない。会社は、必要に応じ、労働時間の調整、副業・兼業の制限、産業医等への相談その他健康確保のための措置を講じることがある。

7 会社は、副業・兼業に関する相談、届出または申告を行ったことのみを理由として、従業員に不利益な取扱いをしない。

8 従業員が、本条に基づく届出をせず、虚偽の届出をし、会社の禁止・制限に反して副業・兼業を行い、または副業・兼業に関連して会社に損害を与えた場合には、会社は、就業規則の懲戒規定その他関係規定に基づき、必要な措置を講じることがある。

この規定例のポイントは、会社が副業を「任意に許す」のではなく、原則として可能であることを明示し、その上で会社が関与できる場面を具体的に限定している点である。

Section 06

副業・兼業取扱規程で管理方法を具体化する

届出対象、確認、回答、労働時間、健康、秘密保持を別規程として整理します。

就業規則本文だけでは、運用が不十分になりやすい。以下は、別規程として置く場合の骨子例である。

規定例副業・兼業取扱規程

第1条(目的)
本規程は、従業員の多様な働き方、能力開発および社外経験の機会を尊重しつつ、会社の労務管理、安全衛生、秘密情報管理、競業管理および企業秩序を適切に維持するため、副業・兼業の届出、確認、制限および管理に関する事項を定める。

第2条(定義)
本規程において副業・兼業とは、従業員が会社の勤務時間外に、雇用、業務委託、請負、準委任、顧問、役員、個人事業その他名称を問わず、継続的または反復的に対価を得て業務を行うことをいう。

第3条(届出対象)
次の各号のいずれかに該当する副業・兼業は、事前届出の対象とする。
(1) 他の事業者との雇用契約に基づく就労
(2) 業務委託、請負、準委任その他の契約に基づく継続的業務
(3) 他法人または団体の役員、顧問、アドバイザーへの就任
(4) 会社と同種または関連する商品・サービスに関する業務
(5) 会社の取引先、競業先またはその関係者に関する業務
(6) 週○時間以上または月○時間以上の業務
(7) その他会社が労務管理、安全衛生、秘密保持、競業管理上確認を必要とする業務

第4条(届出事項)
従業員は、会社所定の届出書により、次の事項を届け出る。
(1) 副業・兼業先の名称、所在地、事業内容
(2) 契約形態
(3) 業務内容
(4) 契約開始日、契約期間、更新の有無
(5) 所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
(6) 所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
(7) 会社の業務、取引先、秘密情報、競業関係との関連性
(8) 会社の施設、設備、情報システム、資料、名称、職位を使用しないことの確認
(9) 健康状態および休息確保に関する自己確認
(10) その他会社が合理的に必要と認める事項

第5条(確認および回答)
会社は、届出を受けた場合、原則として○営業日以内に確認結果を通知する。ただし、追加確認を要する場合はこの限りでない。会社は、必要に応じて、従業員に追加資料の提出または面談を求めることができる。

第6条(禁止・制限・条件)
会社は、副業・兼業が就業規則第○条第3項各号の事由に該当する場合、必要最小限度の範囲で、禁止、時間制限、業務内容の変更要請、担当業務からの除外、秘密保持措置、定期報告、健康確認その他の条件を付すことができる。

第7条(労働時間管理)
副業・兼業先において雇用契約に基づき労働する場合、従業員は、会社の求めに応じ、副業・兼業先における労働時間、所定外労働の見込み、実労働時間その他労働時間通算に必要な情報を報告する。会社は、労働基準法その他関係法令に従い、必要な労働時間管理を行う。

第8条(健康管理)
会社は、従業員の安全および健康を確保するため、必要に応じて、副業・兼業の時間短縮、中止、休養確保、面談、産業医相談、労働時間の調整その他の措置を講じることができる。

第9条(秘密保持および競業管理)
従業員は、副業・兼業において、会社または取引先の秘密情報、個人情報、営業上または技術上の情報を利用し、開示し、または第三者に漏えいしてはならない。従業員は、競業により会社の正当な利益を害してはならない。

第10条(変更・終了報告)
従業員は、届出事項に重要な変更が生じた場合または副業・兼業を終了した場合、速やかに会社へ報告する。

第11条(定期確認)
会社は、届出済みの副業・兼業について、少なくとも年1回、内容、労働時間、健康状態、競業・秘密保持上のリスクを確認する。

第12条(個人情報の取扱い)
会社は、副業・兼業に関して取得した従業員の個人情報を、副業・兼業の確認、労務管理、安全衛生、労働時間管理、秘密保持、競業管理、法令遵守および紛争対応に必要な範囲で利用し、関係法令および社内規程に従って適切に管理する。

第13条(不利益取扱いの禁止)
会社は、従業員が副業・兼業に関する相談、届出、申告または報告を行ったことのみを理由として、不利益な取扱いをしない。

第14条(違反時の措置)
従業員が本規程に違反した場合、会社は、事実関係、違反の程度、会社への影響、本人の故意または過失、過去の注意指導歴その他の事情を考慮し、就業規則に基づき必要な措置を講じる。
Section 07

副業届出様式で聞くことと聞きすぎないこと

必要情報と過剰取得を分け、個人情報として管理する視点を確認します。

厚生労働省のモデル就業規則の解説では、副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障、企業秘密の漏えい、長時間労働の有無等を確認するため、事前届出により副業・兼業を把握することが規定されている。特に、自社と副業先の双方で雇用される場合には、他の使用者の事業内容、従事業務、労働契約の締結日・期間、所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻、所定外労働の有無・見込み・最大時間数、実労働時間等の報告手続、確認頻度などを確認することが考えられる。

ただし、会社は何でも聞いてよいわけではない。副業先の報酬額、家族構成、借金、思想信条、疾病名など、制度運用に不要または過剰な情報を求めるべきではない。個人情報保護法上も、事業者は利用目的を特定し、その範囲内で利用し、安全管理を行う必要がある。

8.1 届出フォーム例

規定例副業・兼業届出書

1. 従業員情報
- 氏名 ―
- 所属 ―
- 職位 ―
- 連絡先 ―

2. 副業・兼業先
- 名称または屋号 ―
- 所在地または活動地域 ―
- 事業内容 ―
- 自社の競合、取引先、委託先、顧客との関係 ― 有・無・不明
- 反社会的勢力、違法行為、公序良俗違反に関する懸念 ― 有・無

3. 契約形態
- 雇用契約・業務委託・請負・準委任・役員・顧問・個人事業・その他
- 契約開始日 ―
- 契約期間 ―
- 更新予定 ― 有・無

4. 業務内容
- 担当業務の概要 ―
- 自社業務との関連 ―
- 自社で知り得た情報、顧客、技術、資料を利用する可能性 ― 有・無
- 自社の施設、設備、PC、メール、アカウント、名刺、職名を利用する予定 ― 有・無

5. 就業日・就業時間
- 予定就業曜日 ―
- 予定就業時間帯 ―
- 週あたり予定時間 ―
- 月あたり予定時間 ―
- 所定外労働の有無 ―
- 最大見込み時間 ―
- 深夜時間帯の有無 ―
- 運転、危険作業、夜勤、警備、医療・介護等の高リスク業務の有無 ―

6. 健康・休息
- 本業の勤務に支障を生じさせない休息時間を確保できるか ―
- 睡眠不足、疲労、体調不良がある場合に速やかに相談することへの同意 ― 有・無
- 必要に応じて労働時間の報告、面談、産業医相談を行うことへの同意 ― 有・無

7. 確認事項
- 会社の秘密情報・個人情報を利用または漏えいしないこと
- 会社の信用を害する表示、投稿、営業をしないこと
- 会社の勤務時間中に副業を行わないこと
- 届出内容に変更がある場合は速やかに報告すること
- 虚偽申告または重要事項の不申告があった場合、就業規則に基づく措置の対象となり得ること

申請日 ―
署名 ―

8.2 審査結果通知例

規定例副業・兼業届出に関する確認結果通知

○○様

提出された副業・兼業届出について、会社は以下のとおり確認しました。

1. 確認結果
□ 届出内容の範囲で実施可
□ 条件付きで実施可
□ 追加確認が必要
□ 現時点では実施を認めない

2. 条件または理由
- 条件 ―
- 理由 ―
- 労働時間・健康管理に関する報告頻度 ―
- 秘密保持・競業管理に関する注意事項 ―

3. 変更・終了時の報告
届出内容に変更が生じた場合、または副業・兼業を終了した場合は、速やかに会社へ報告してください。

4. 相談窓口
副業・兼業に伴う健康不安、労働時間、秘密保持、競業、税務・社会保険に関する疑問がある場合は、○○部○○へ相談してください。

通知日 ―
会社名 ―
担当部署 ―
Section 08

副業を認めるか制限するかの審査基準

労働時間、健康、競業、秘密情報、会社信用などを低・中・高リスクで整理します。

次の判断の流れは、副業届を受けた後に確認する順番を表しています。重要なのは、担当者の好みではなく、具体的リスクと必要最小限の条件で判断することです。上から順に、情報不足、制限事由、条件付承認、禁止の分岐を読み取ってください。

副業届を確認する順番

届出内容を確認

契約形態、業務内容、予定時間、競業性、会社資産利用の有無を確認します。

具体的リスクを評価

労働時間、健康、安全、秘密情報、会社信用、利益相反を低・中・高で見ます。

条件で管理できるか

時間制限、業務範囲の限定、定期報告、秘密保持措置で足りるか検討します。

結果を記録して通知

実施可、条件付可、追加確認、一部制限、禁止を理由付きで通知します。

副業審査は、担当者の好みで判断してはならない。審査基準を明文化し、類似事案で判断の一貫性を保つ必要がある。

9.1 リスク評価表

次の比較表は、副業を認めるか制限するかの審査基準で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

評価領域低リスク中リスク高リスク
労働時間月10時間程度、深夜なし週10〜15時間、繁忙期あり週20時間超、深夜・早朝・連続勤務
健康・安全デスクワーク、単発夜間作業、移動多い運転、危険作業、夜勤、医療・介護、警備
競業異業種、顧客重複なし関連業種、間接競合同一市場、同一顧客、競合役員・営業
秘密情報自社情報と無関係関連知識を使う可能性営業秘密、個人情報、未公開情報の流用懸念
会社信用個人名義で限定活動SNS・発信あり会社名・職位利用、炎上リスク、違法性
契約形態個人事業・単発業務委託継続他社雇用で労働時間通算、役員就任
本業影響勤務成績良好繁忙期調整必要遅刻、欠勤、居眠り、成績低下が発生

9.2 判断結果の類型

次の比較表は、副業を認めるか制限するかの審査基準で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

類型内容
実施可制限事由なし休日に月数時間の異業種講師
条件付可リスクはあるが条件で管理可能競合しない範囲に限定、月○時間まで、深夜禁止
追加確認事実不足契約先不明、業務内容不明、労働時間不明
一部制限業務の一部が危険同一顧客への営業は禁止、一般講義は可
禁止具体的支障が大きい競合企業の営業担当、会社秘密の利用が前提、過労リスク重大

9.3 「会社が不安だから禁止」は避ける

禁止・制限は、具体的な事実に基づき、必要最小限度にとどめるべきである。例えば、同業種の副業であっても、会社の正当な利益が害されない場合には認めるべき場合がある。厚生労働省の解説でも、競業避止義務は使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務であり、同一業種・職種でも副業を認めるべき場合があるとされている。

Section 09

副業を認める就業規則での労働時間管理

雇用型副業の通算、割増賃金、フリーランス型副業の健康管理を確認します。

10.1 雇用型副業は労働時間通算が問題になる

従業員が副業先でも雇用される場合、労働基準法上の労働時間通算が問題になる。厚生労働省の解説では、労働者が事業主を異にする複数の事業場において労働基準法の労働時間規制が適用される労働者に該当する場合、労働時間が通算されるとされている。

具体的には、次のような確認が必要になる。

次の比較表は、副業を認める就業規則での労働時間管理で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

確認事項理由
副業先での契約形態労働時間通算対象かを判断するため
労働契約締結日先契約・後契約の関係を把握するため
所定労働日・時間開始前の通算判断に必要
所定外労働の見込み開始後の時間外労働管理に必要
実労働時間の報告方法割増賃金、上限規制、健康管理に必要
報告頻度月次、週次、繁忙期等の運用を決めるため

10.2 割増賃金の基本

労働時間を通算した結果、法定労働時間を超える時間外労働が発生する場合、自社で労働させた時間のうち時間外労働となる部分について、割増賃金を支払う必要がある。厚生労働省の解説でも、労働時間通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間について割増賃金を支払う必要があるとされている。

実務上の混乱を避けるため、次のような社内ルールを置くとよい。

  • 副業先でも雇用される場合は、開始前に所定労働時間を申告してもらう
  • 自社の所定外労働を命じる前に、副業先の予定を確認する
  • 所定外労働の事前申請フォームに「副業先勤務予定」の確認欄を追加する
  • 月次で自己申告を受け、著しい乖離があれば面談する
  • 虚偽申告があった場合の取扱いを規程化する
  • 管理モデルを導入する場合は、労働者・副業先との確認記録を残す

10.3 フリーランス型副業は通算対象外でも健康管理対象

業務委託、請負、準委任、個人事業など、労働基準法上の労働時間規制が適用されない働き方であれば、労働時間通算の対象外となる場合がある。しかし、会社が把握した副業時間が過重で、本人の健康状態に問題がある場合には、放置すべきではない。

例えば、平日は本業で8時間勤務し、深夜に個人事業として毎日4時間作業し、休日も休まず働いている従業員がいる場合、労働基準法上の通算対象外であっても、過労、睡眠不足、メンタルヘルス不調、本業中の事故リスクが現実化し得る。就業規則では、法定通算とは別に、健康確保の観点から報告、相談、制限ができる規定を置く必要がある。

Section 10

副業制度の健康管理と安全配慮

長時間労働、睡眠不足、面談、産業医相談につなげる運用を整理します。

厚生労働省の解説では、使用者は健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック等を実施しなければならず、使用者が副業・兼業を認めている場合には、健康保持のため自己管理を行うよう指示し、心身の不調があれば相談を受けることを伝えることなどが適当とされている。

11.1 健康管理の規程例

規定例第○条(副業・兼業に関する健康管理)

1 従業員は、副業・兼業により、睡眠不足、疲労、心身の不調その他会社の業務遂行に支障を生じるおそれがある場合には、速やかに会社へ申し出なければならない。

2 会社は、副業・兼業の状況、勤務実績、健康診断結果、ストレスチェック結果、本人申告、上司の観察、産業医等の意見その他の事情を踏まえ、従業員の安全および健康を確保するため必要があると認める場合には、副業・兼業の時間短縮、中止、休養確保、勤務軽減、面談、産業医相談その他必要な措置を求めることができる。

3 従業員は、前項の措置に合理的な理由なく従わず、会社の業務に支障を生じさせ、または健康障害の危険を著しく高めてはならない。

11.2 健康リスクの早期発見指標

会社は、次の兆候がある場合、副業との関係を確認するべきである。

  • 遅刻・欠勤・早退の増加
  • 会議中の居眠り、集中力低下
  • ミス、事故、ヒヤリハットの増加
  • 業務成績の急低下
  • 長時間のPCログ、深夜メール、休日稼働
  • 体調不良の訴え
  • 産業医面談、ストレスチェックでの高ストレス
  • 上司・同僚からの疲労懸念
  • 本人からの副業時間増加の申告

11.3 面談で聞くべき事項

健康面談では、労働者の私生活に過度に踏み込まないようにしながら、業務遂行と健康確保に必要な範囲で確認する。

次の比較表は、副業制度の健康管理と安全配慮で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

項目質問例
睡眠平均睡眠時間はどの程度か
休息週に完全な休養日があるか
副業時間直近1か月の副業時間はどの程度か
深夜作業深夜・早朝の作業があるか
本業影響本業中の疲労や集中力低下を感じるか
医療医師・産業医への相談希望があるか
調整可能性副業時間の削減や一時中止は可能か
Section 11

副業を認める就業規則の秘密保持と情報管理

会社情報、副業先情報、生成AI、クラウド、会社資産利用を整理します。

副業制度における情報管理は、単なる秘密保持誓約だけでは不十分である。実務上は、会社情報、副業先情報、顧客情報、個人情報、生成AI、クラウドストレージ、私物PC、SNS、職務著作、職務発明が交差する。

12.1 規程に入れるべき禁止事項

規定例従業員は、副業・兼業に関連して、次の行為をしてはならない。
(1) 会社または取引先の秘密情報、個人情報、営業情報、技術情報、ソースコード、研究データ、価格情報、顧客情報、未公開情報を利用、開示、漏えいすること
(2) 会社のPC、スマートフォン、メール、チャット、クラウド、アカウント、ソフトウェア、備品、会議室その他の資産を副業・兼業に利用すること
(3) 会社の勤務時間中に副業・兼業を行うこと
(4) 会社の名称、ロゴ、職名、肩書、名刺、メールアドレスを、会社の承認なく副業・兼業に利用すること
(5) 副業・兼業先の秘密情報を会社業務に持ち込むこと
(6) 会社の情報システムに副業・兼業先のデータを保存すること
(7) 会社の信用を害する投稿、表示、広告、勧誘を行うこと

12.2 副業先情報の取扱い

会社が副業届で取得する情報は、従業員の個人情報に該当し得る。副業先の名称、勤務時間、業務内容、健康状態に関する申告、社会保険手続に関する情報は、適切に保管・アクセス制限する必要がある。個人情報保護委員会の説明でも、個人情報取扱事業者には、利用目的の特定・通知または公表、安全管理、第三者提供時の本人同意等が求められる。

副業情報は、人事部門、法務部門、上長、産業保健スタッフ等のうち、必要な者だけが閲覧できるようにすべきである。全社共有フォルダや部署内の誰でも見られるExcelで管理することは避ける。

12.3 生成AI・クラウド副業への対応

近年は、副業として、生成AIを用いたライティング、画像制作、コード生成、コンサルティング、データ分析を行うケースがある。規程上は、次の点を明記するとよい。

  • 会社の非公開情報を生成AI、外部クラウド、副業先ツールに入力しない
  • 会社の業務成果物を副業成果物として再利用しない
  • 副業で作成した成果物を会社業務に無断で持ち込まない
  • 副業先から得た秘密情報を会社で利用しない
  • 会社のアカウント、API、ライセンス、SaaSを副業で使わない
Section 12

副業の競業・利益相反を管理する方法

一律禁止ではなく、顧客重複や未公開情報利用など具体的リスクを確認します。

13.1 競業を一律禁止しない

競業管理では、会社の正当な利益を守ることと、労働者の職業選択・能力開発を尊重することのバランスが必要である。厚生労働省の解説でも、競業避止義務は使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とするものであり、自社の正当な利益が侵害されない場合には、同一業種・職種であっても副業を認めるべき場合があるとされている。

13.2 利益相反チェックリスト

次の比較表は、副業の競業・利益相反を管理する方法で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

チェック項目問題となる例
顧客重複自社顧客へ副業として営業する
取引先関係自社の委託先から個人で業務を受ける
競合関係競合企業の営業・開発・マーケティングに従事する
価格・戦略情報自社の未公開価格、提案情報を利用する
役員就任競合会社や取引先の役員になる
調達・購買自分の副業会社を自社の取引先にする
審査・監査自社で監査・評価する相手方から副業収入を得る
公的職務公務・研究・大学・医療等の利益相反規程に抵触する

13.3 条件付承認の例

競業リスクが中程度の場合、全面禁止ではなく条件付承認で対応できることがある。

規定例条件例 ―
1. 自社の既存顧客および商談中顧客に対する営業を行わないこと
2. 自社の未公開情報、提案資料、価格情報、顧客情報を利用しないこと
3. 副業先で自社競合サービスの企画、開発、営業、価格設定に関与しないこと
4. 会社名、所属、職位を副業の広告、プロフィール、SNSに表示しないこと
5. 業務内容に変更がある場合は、事前に再届出を行うこと
Section 13

フリーランス型副業と業務委託管理

従業員が受注者になる場合と会社が発注者になる場合を分けて整理します。

従業員が副業としてフリーランス業務を行う場合、本人は発注を受ける側になる。一方、会社が副業人材や個人事業主に業務委託する場合は、会社が発注事業者になる。フリーランス・事業者間取引適正化等法は2024年11月1日に施行され、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、取引条件の明示、原則60日以内の報酬支払、ハラスメント対策の体制整備等を義務付けている。

副業制度の観点では、次の二つを分けて考える必要がある。

第一に、従業員が外部から業務委託を受ける場合、会社は「従業員の副業内容」として、健康、競業、秘密保持の観点で確認する。会社がその外部発注者の法令遵守を直接管理するわけではないが、違法・反社会的・公序良俗違反の業務に従事する場合は、会社信用や安全配慮上の問題となり得る。

第二に、会社が外部の副業人材・フリーランスに発注する場合、会社自身がフリーランス法上の義務を負う可能性がある。自社従業員の副業制度とは別に、業務委託契約書、発注書、支払期日、募集表示、ハラスメント相談窓口、中途解除の事前予告等を整備する必要がある。

また、形式上は業務委託でも、実態として労働者に該当する場合には、労働基準関係法令が適用され得る。厚生労働省も、契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して労働者性が判断されると説明している。 副業を「業務委託だから労働時間管理不要」と機械的に扱うのは危険である。

Section 14

副業を認める場合の社会保険・労災・税務

二以上事業所勤務、マルチジョブホルダー、複数事業労働者、確定申告を確認します。

15.1 社会保険 ― 二以上事業所勤務

従業員が副業先でも健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たす場合、二以上事業所勤務の手続が必要になることがある。日本年金機構は、事実発生から10日以内に、被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があると説明している。

会社は、従業員の副業を把握した場合、社会保険加入要件に該当するかを必要な範囲で確認し、該当可能性があれば本人に手続を案内する。会社が全ての副業収入を把握しようとするのではなく、加入要件と手続に必要な情報を確認することが重要である。

15.2 雇用保険 ― 65歳以上のマルチジョブホルダー制度

雇用保険は、従来、主たる事業所で週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等を満たす場合に適用される。これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、一定要件を満たす場合、本人からハローワークへ申出を行うことで特例的に被保険者となる制度である。

副業制度の社内FAQには、高年齢労働者向けにこの制度の概要と相談窓口を記載しておくとよい。

15.3 労災保険 ― 複数事業労働者

労災保険については、複数の会社等に雇用される労働者への保険給付に関する制度改正がある。厚生労働省は、2020年9月1日施行の改正に関する資料を掲載し、複数の会社等で働く人への労災保険給付を説明している。

会社は、副業中に事故が起きた場合、自社業務との関係、副業先業務との関係、通勤経路、複数業務要因災害の可能性を整理する必要がある。特に、過重労働や精神障害では、複数の就業先における業務上の負荷が問題となる可能性がある。

15.4 税務 ― 副収入と確定申告

国税庁は、年末調整済みの給与所得者であっても、給与所得以外の副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、一定の場合を除き確定申告が必要と説明している。

会社は、従業員の税務申告を代行する立場ではない。しかし、副業制度の説明資料では、次のように案内するとよい。

  • 副業収入の所得税・住民税申告は本人が責任を持って行う
  • 副業所得が20万円以下でも、住民税申告等が必要となる場合がある
  • 副業先が給与を支払う場合、源泉徴収票や年末調整の扱いに注意する
  • 税務判断に迷う場合は税務署または税理士に相談する
Section 15

副業管理台帳と個人情報保護

利用目的、台帳項目、アクセス制限、保存期限を整理します。

副業届には、従業員の勤務外活動、就業時間、健康状態、場合によっては副業先名や契約関係が含まれる。これはセンシティブな労務情報であり、慎重に扱う必要がある。

16.1 利用目的の例

規定例副業・兼業に関する個人情報の利用目的

会社は、副業・兼業に関して取得した個人情報を、以下の目的で利用します。
1. 副業・兼業の届出内容の確認
2. 労務提供上の支障、競業、秘密保持、会社信用リスクの確認
3. 労働時間管理、健康管理、安全配慮
4. 社会保険、雇用保険、労災保険その他法令上必要な手続の確認
5. 社内規程違反または紛争が生じた場合の事実確認
6. 副業・兼業制度の運用改善

16.2 管理台帳の項目例

次の比較表は、副業管理台帳と個人情報保護で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

項目内容
管理番号個人名を直接表示しない番号
氏名・所属必要最小限
副業区分雇用、業務委託、役員等
副業先業種詳細すぎない分類
開始日・終了日更新管理
週・月の予定時間労働時間・健康管理
リスク評価労働時間、競業、秘密、信用
審査結果可、条件付可、追加確認、不可
条件内容時間制限、業務制限等
定期確認日年1回等
健康面談要否必要な範囲
閲覧権限人事、法務、上長等
保存期限終了後○年など

16.3 アクセス制限

副業台帳は、人事労務担当者であれば誰でも見られる、という設計にしない方がよい。閲覧者を限定し、アクセスログを残し、保存期限を定める。副業情報が職場で噂になると、従業員は届出を避けるようになり、制度が機能しなくなる。

Section 16

無届副業や違反への段階的対応

事実確認、証拠保全、本人弁明、処分均衡、再発防止を確認します。

次の判断の流れは、無届副業や虚偽申告が見つかったときの対応順序を表します。重要なのは、うわさや形式違反だけで重い処分に進まず、証拠と処分均衡を確認することです。上から順に、事実確認から再発防止までの順番を読み取ってください。

違反対応の順番

事実確認

副業内容、時間、契約、会社への影響、本人の認識を確認します。

証拠保全と弁明

勤怠、PCログ、届出書、面談記録を整理し、本人の説明機会を設けます。

処分相当性を判断

悪質性、実害、過去事例、是正可能性、処分均衡を確認します。

再発防止

制度周知、申請フォーム、上司教育、相談導線を改善します。

17.1 典型的な違反類型

次の比較表は、無届副業や違反への段階的対応で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

類型初動対応
無届副業届出せずアルバイト事実確認、届出促し、支障確認
虚偽申告実際は週30時間なのに週5時間と申告証拠確認、面談、健康・労働時間確認
勤務時間中の副業本業中に副業チャット・納品業務ログ確認、注意指導、懲戒検討
会社資産利用会社PC、メール、資料を副業利用情報漏えい調査、利用停止、懲戒検討
競業自社顧客に副業で営業顧客影響確認、差止め、損害確認
秘密漏えい顧客データを副業に流用緊急調査、情報封じ込め、法的措置
健康悪化過労で本業に支障面談、時間制限、産業医相談

17.2 違反対応の手順

  1. 事実確認 うわさやSNS断片だけで処分しない。副業内容、時間、契約、会社への影響、本人の認識を確認する。
  2. 証拠保全 勤怠記録、PCログ、メール、チャット、届出書、面談記録、顧客苦情、成果物、SNS投稿等を適法・適切に保全する。
  3. 本人弁明 本人に説明機会を与える。無届理由、誤解、上司の黙認、健康状態、是正意思を確認する。
  4. 是正可能性の検討 軽微な無届で実害がなければ、注意指導・再届出・条件付承認で足りる場合がある。
  5. 懲戒相当性の判断 懲戒規定、過去事例、処分の均衡、悪質性、損害、再発可能性を検討する。
  6. 再発防止 規程の周知不足、申請フォームの使いにくさ、上司の理解不足が原因であれば制度改善する。

17.3 懲戒規定との接続

副業規定違反を懲戒対象にする場合、懲戒事由と明確に接続させる必要がある。

規定例懲戒事由例 ―
従業員が、正当な理由なく副業・兼業に関する届出を怠り、虚偽の届出をし、会社の禁止または制限に違反し、会社の秘密情報を漏えいし、競業により会社の正当な利益を害し、または会社の名誉信用を毀損したとき。

ただし、懲戒事由に該当し得るとしても、実際の処分は個別事情に応じて慎重に判断すべきである。

Section 17

副業制度導入プロジェクトの進め方

経営、人事、法務、情報システム、産業保健、現場を含めた体制を確認します。

次の時系列は、副業制度を導入するときの社内作業の順番を示しています。重要なのは、規程案だけを作って終わらせず、届出受付後の検証まで続けることです。左の期間表示と各段階の作業から、誰が何を準備するかを読み取ってください。

現状調査

既存規程と実態を確認

禁止規定、無届副業、職種別リスク、過去トラブルを調べます。

方針決定

原則と例外を決める

届出制、許可制の例外、高リスク職種、禁止業務を定めます。

規程整備

本文・別規程・様式を作る

就業規則、届出書、同意書、FAQ、管理台帳を整えます。

30日例

既存副業の経過措置

施行後30日以内の届出など、移行時の扱いを明確にします。

半年後以降

運用レビュー

申請件数、却下理由、健康問題、無届事案、現場負担を検証します。

副業制度は、人事だけで作ると情報管理が弱くなり、法務だけで作ると運用が硬くなり、経営だけで作ると現場負担が見落とされやすい。次の体制で進めると実効性が高い。

次の比較表は、副業制度導入プロジェクトの進め方で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

役割主な担当
経営制度方針、リスク許容度、社内メッセージ
人事労務就業規則、届出、労働時間、健康管理
法務競業、秘密保持、契約、懲戒、紛争対応
情報システム会社資産利用禁止、ログ、アクセス管理
産業医・保健師健康リスク、面談、過重労働対応
現場管理職業務支障の把握、相談対応
広報社内外メッセージ、SNS・信用リスク
社労士・弁護士等規程確認、手続、紛争予防

18.1 導入ステップ

  1. 現状調査 既存の副業禁止規定、無届副業の実態、職種別リスク、過去トラブルを確認する。
  2. 方針決定 原則容認、届出制、許可制の例外、高リスク職種、禁止業務を定める。
  3. 規程案作成 就業規則、別規程、届出書、同意書、FAQ、管理台帳を作る。
  4. 労使協議・意見聴取 従業員代表、労働組合、現場管理職から意見を聴く。
  5. 届出・周知 必要に応じて労働基準監督署へ届出し、従業員へ説明する。
  6. 申請受付開始 既存副業の経過措置期間を設ける。例えば「施行後30日以内に届出」とする。
  7. 定期レビュー 半年後、1年後に、申請件数、却下理由、健康問題、無届事案、現場負担を検証する。

18.2 経過措置の規定例

規定例本規程施行日時点で副業・兼業を行っている従業員は、施行日から30日以内に会社所定の届出を行わなければならない。会社は、届出内容を確認し、必要に応じて条件を付し、または制限を行うことがある。
Section 18

副業制度の社内FAQ

従業員に伝えるべき基本ルールを一般情報として整理します。

Q1. 副業は自由にできますか。

勤務時間外に副業を行うことは原則として可能です。ただし、本業に支障が出る場合、長時間労働や健康障害の恐れがある場合、会社の秘密情報が漏れる恐れがある場合、競業により会社の正当な利益を害する場合、会社の名誉信用を損なう場合などは、会社が必要な範囲で禁止・制限・条件付承認を行うことがあります。

Q2. なぜ届出が必要なのですか。

会社が副業を監視するためではなく、本業への支障、労働時間、健康、秘密保持、競業、会社信用のリスクを確認するためです。副業の相談・届出をしたことのみを理由に不利益な取扱いをすることはありません。

Q3. 投資や趣味活動も届出が必要ですか。

通常の資産運用や趣味活動は原則として届出不要です。ただし、継続的に対価を得る活動、会社の競業になり得る活動、会社名・職位を使う活動、勤務時間や健康に大きく影響する活動は届出または相談の対象になります。

Q4. 副業先の収入を会社に伝える必要がありますか。

原則として、会社は副業収入額そのものを確認しません。ただし、社会保険や税務に関して本人が必要な手続を行う必要があります。会社が確認するのは、主に業務内容、契約形態、労働時間、競業・秘密保持・健康管理上必要な情報です。

Q5. 副業が会社に知られると評価に影響しますか。

副業の相談・届出をしたことのみを理由に不利益な取扱いをすることはありません。ただし、副業により本業の成果、勤務態度、健康、安全、秘密保持、競業に具体的な問題が生じた場合は、業務上必要な対応を行います。

Q6. 副業先でも雇用される場合、何が違いますか。

副業先でも労働者として雇用される場合、労働時間通算、割増賃金、時間外労働の上限、健康管理が問題になります。会社所定の届出で、所定労働時間、所定外労働の見込み、実労働時間の報告方法を確認します。

Q7. フリーランス副業なら労働時間を報告しなくてよいですか。

労働基準法上の通算対象にならない場合でも、健康管理や本業への支障確認のため、予定時間や作業時間の目安を確認することがあります。

Q8. 会社のPCやメールを副業に使ってよいですか。

使えません。会社のPC、スマートフォン、メール、チャット、クラウド、アカウント、ソフトウェア、備品、資料、会議室などを副業に利用することは禁止です。

Q9. 会社名や肩書をプロフィールに書けますか。

会社の承認なく、会社名、ロゴ、職位、肩書、名刺、メールアドレスを副業の広告、営業、SNS、プロフィールに利用してはいけません。個人としての活動であることを明確にしてください。

Q10. 副業について弁護士に相談すべき場合はありますか。

あります。競業、秘密保持、会社からの副業禁止、懲戒、退職勧奨、損害賠償、営業秘密、著作権・職務発明、労災、長時間労働、ハラスメント、フリーランス契約トラブルがある場合は、弁護士等の専門家への相談が有益です。労働時間・社会保険・就業規則手続については社会保険労務士への相談も重要です。

Section 19

副業制度で専門家に相談すべき場面

規程改定、競業、懲戒、労災、情報漏えいなどの相談先を整理します。

副業制度は、平時は人事労務の制度運用で処理できる。しかし、次の場面では、法律専門家への相談を強く推奨する。

次の比較表は、副業制度で専門家に相談すべき場面で確認すべき項目を列ごとに整理したものです。重要なのは、左から順に項目、内容、注意点を照合し、制度設計や判断でどこを確認すべきかを読み取ることです。

場面主な相談先
就業規則の全面改定社労士、弁護士
副業禁止・制限の妥当性判断弁護士、社労士
競業・営業秘密・顧客奪取弁護士
懲戒処分・解雇弁護士、社労士
長時間労働・過労・労災社労士、弁護士、産業医
個人情報漏えい弁護士、情報セキュリティ専門家
役員・管理職の利益相反弁護士、公認会計士等
フリーランスへの業務委託制度弁護士、社労士
税務・副業所得税理士
社会保険二以上勤務社労士、年金事務所

特に、懲戒解雇、競業差止め、損害賠償、営業秘密侵害、SNS炎上、重大な情報漏えい、過労による健康障害は、初動を誤ると紛争が拡大する。証拠保全、本人弁明、処分相当性、対外説明、再発防止策をセットで検討すべきである。

Section 20

副業制度は信頼を前提にリスクを記録で管理する

条文だけでなく、届出、審査、健康、情報、懲戒、相談窓口を一体で整備します。

副業を認める就業規則の書き方で最も重要なのは、会社が副業を恩恵的に許すという発想から離れることである。勤務時間外の活動は、基本的には労働者の自由である。しかし、会社には、労務提供、安全配慮、秘密保持、競業管理、企業秩序維持の責任がある。したがって、副業制度は、自由と責任を接続する制度として設計する必要がある。

実務上の最適解は、次の形である。

  • 原則として副業・兼業を認める
  • 届出制により必要な情報を把握する
  • 禁止・制限事由を客観的に列挙する
  • 労働時間通算と健康管理を区別して管理する
  • 秘密保持、競業、会社信用、会社資産利用を明確に禁止する
  • 副業情報を個人情報として厳格に管理する
  • 無届・虚偽申告への対応は、実害・悪質性・処分均衡を踏まえて段階的に行う
  • 制度導入後も、定期確認と運用改善を続ける

副業を認めることは、単に「禁止規定を削除する」ことではない。就業規則、別規程、届出様式、審査基準、健康管理、労働時間管理、情報管理、懲戒判断、相談窓口を一体として整備することで、従業員のキャリア形成と会社のリスク管理を両立できる。

Reference

この記事の参考資料

  • 厚生労働省「副業・兼業」。副業・兼業の促進に関するガイドライン、パンフレット、リーフレット、労働時間通算資料、管理モデル資料、Q&A、解釈通達、各種様式例を掲載
  • 厚生労働省「モデル就業規則について」。常時10人以上の従業員を使用する使用者の就業規則作成・届出義務およびモデル就業規則を掲載
  • 厚生労働省 栃木労働局「就業規則の作成・変更・届出の義務(第89条、第90条、第92条)」
  • 厚生労働省「副業・兼業と労働条件|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」
  • 同上。副業・兼業に関する基本的考え方、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務、禁止・制限の考え方に関する解説
  • 同上。副業・兼業時の労働時間通算、割増賃金、管理モデル、健康管理に関する解説
  • 同上。副業・兼業時の健康管理に関する解説
  • 同上。小川建設事件、橋元運輸事件、東京メデカル・サービス・大幸商事事件、日通名古屋製鉄作業事件、ジャムコ立川工場事件、十和田運輸事件、マンナ運輸事件等の紹介
  • 同上。都タクシー事件等、労務提供上の支障に関する裁判例の紹介
  • 厚生労働省「副業・兼業と労働条件」中のモデル就業規則第70条の説明事項。届出時の確認事項、労働時間通算、禁止・制限事由等の解説
  • 厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」。フリーランス・事業者間取引適正化等法、フリーランスガイドライン、労働者性に関する情報を掲載
  • 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
  • 厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
  • 厚生労働省「労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~」
  • 国税庁「No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
  • 個人情報保護委員会「個人情報保護法では、個人情報取扱事業者としてどのようなことに取り組むことが定められていますか。」