2σ Guide

学校でのいじめ損害賠償を
請求する想定事例

子どもの安全を最優先にしながら、いじめ行為、損害、因果関係、請求相手、重大事態調査、時効を証拠に基づいて整理するための一般的な解説です。

7類型想定事例
3年/5年時効の起点
3か月以上重大事態の目安
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学校でのいじめ損害賠償を 請求する想定事例

子どもの安全を最優先にしながら、いじめ行為、損害、因果関係、請求相手、重大事態調査、時効を証拠に基づいて整理するための一般的な解説です。

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学校でのいじめ損害賠償を 請求する想定事例
子どもの安全を最優先にしながら、いじめ行為、損害、因果関係、請求相手、重大事態調査、時効を証拠に基づいて整理するための一般的な解説です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 学校でのいじめ損害賠償を 請求する想定事例
  • 子どもの安全を最優先にしながら、いじめ行為、損害、因果関係、請求相手、重大事態調査、時効を証拠に基づいて整理するための一般的な解説です。

POINT 1

  • 学校でのいじめ損害賠償の全体像
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 誰に請求するかを分ける
  • 精神的苦痛と実費を分ける
  • 請求より先に守る

POINT 2

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 基本となる法制度
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 2-1. いじめ防止対策推進法
  • 2-2. 民法上の不法行為責任
  • 2-3. 未成年者本人と保護者の責任

POINT 3

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 請求相手をどう考えるか
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 3-1. 加害児童生徒本人
  • 3-2. 加害児童生徒の保護者
  • 3-3. 公立学校の設置者・自治体

POINT 4

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例1 ― 身体的暴力により治療が必要になった場合
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 4-1. 事案設定
  • 4-2. 請求できる可能性のある損害
  • 4-3. 請求相手

POINT 5

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例2 ― 暴言・無視・排除により不登校になった場合
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 5-1. 事案設定
  • 5-2. 不法行為性の検討
  • 5-3. 損害項目

POINT 6

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例3 ― SNSで写真や悪口を拡散された場合
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 6-1. 事案設定
  • 6-2. 法的問題
  • 6-3. 初動対応

POINT 7

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例4 ― 部活動内のいじめと指導者の放置
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 7-1. 事案設定
  • 7-2. 争点
  • 7-3. 損害賠償請求の組み立て

POINT 8

  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例5 ― 学校が重大事態として扱わなかった場合
  • いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 8-1. 事案設定
  • 8-2. 重大事態調査と損害賠償の関係
  • 8-3. 学校側対応の違法性

まとめ

  • 学校でのいじめ損害賠償を 請求する想定事例
  • 学校でのいじめ損害賠償の全体像:いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 基本となる法制度:いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 学校でのいじめ損害賠償 ― 請求相手をどう考えるか:いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

学校でのいじめ損害賠償の全体像

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

次のポイント一覧は、学校でのいじめ損害賠償で最初に分けるべき視点を表します。読者にとって重要なのは、被害の回復、学校対応、証拠化を同時に考え、どこから着手するかを読み取ることです。

相手方

誰に請求するかを分ける

加害児童生徒本人、保護者、学校設置者、自治体、学校法人、SNS投稿者など、法的構成ごとに相手方を整理します。

損害

精神的苦痛と実費を分ける

治療費、通院交通費、転校費用、学習支援費、慰謝料、弁護士費用相当額などを証拠と結びつけます。

安全

請求より先に守る

接触回避、別室登校、医療・心理支援、警察相談など、子どもの安全を優先して対応します。

このページは、学校でのいじめ被害に対し損害賠償を請求する想定事例について、一般の読者が弁護士へ相談する前に理解しておきたい論点を、法曹実務・教育行政・学校安全・心理福祉・情報法・危機対応の観点から整理するものである。

結論からいえば、学校でのいじめ被害は、単に「子ども同士のトラブル」として片づけられるものではない。暴力、脅迫、名誉毀損、侮辱、物の損壊、SNSでの晒し、不登校を余儀なくする継続的な排除などは、民事上の不法行為となり得る。加害児童生徒本人、加害児童生徒の保護者、学校設置者、自治体、学校法人などが、事案に応じて損害賠償請求の相手方となり得る。

もっとも、損害賠償請求は「いじめがあった」と主張するだけでは足りない。原則として、誰が、いつ、どこで、何をしたか、その行為が違法と評価できるか、被害者にどのような損害が発生したか、その損害といじめ行為との間に因果関係があるかを、証拠によって組み立てる必要がある。学校や教育委員会による重大事態調査は重要な資料になり得るが、損害賠償請求の成否を自動的に決めるものではない。

このページでは、架空の想定事例を用いながら、請求相手、損害項目、証拠、時効、重大事態調査、弁護士相談の準備、交渉・調停・訴訟の流れを解説する。

注意点 このページは、2026年6月3日時点の公開情報に基づく一般的な解説である。個別事案では、学校の種類、公立・私立の別、被害の内容、加害児童生徒の年齢・発達段階、学校側の認識、診療記録、時効の起算点などにより結論が変わる。実際に請求を検討する場合は、弁護士等の専門家に相談することが望ましい。

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Section 01

学校でのいじめ損害賠償 ― このページで扱う「損害賠償請求」とは何か

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

1-1. 損害賠償請求の意味

損害賠償請求とは、他人の違法な行為によって損害を受けた人が、その損害を金銭などで補填するよう求めることをいう。学校でのいじめ被害の場合、代表的には次のような損害が問題になる。

  • けがの治療費
  • 通院交通費
  • カウンセリング費用
  • 破損された物品の修理費・買替費
  • 転校・別室登校・フリースクール等に関連する追加費用
  • 不登校や精神的苦痛に対する慰謝料
  • 後遺障害が残った場合の損害
  • 被害者が死亡した場合の死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費等
  • 相当因果関係が認められる範囲での弁護士費用相当額

ここで重要なのは、損害賠償は「相手を罰する制度」ではなく、「被害によって生じた損害を法的に回復する制度」であるという点である。加害者に謝罪させたい、学校に再発防止を求めたい、第三者委員会で事実を明らかにしたいという目的は、損害賠償請求と重なる部分もあるが、完全には一致しない。

1-2. 「いじめ」と「不法行為」は同じではない

いじめ防止対策推進法上の「いじめ」は、児童生徒が一定の人的関係にある他の児童生徒から心理的・物理的な影響を受け、その対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じている行為を広く含む。インターネットを通じて行われるものも含まれる。

この定義は、学校が早期に認知し、支援や調査につなげるため、比較的広く設計されている。したがって、学校が「いじめ」と認知したからといって、ただちに損害賠償責任が成立するわけではない。他方で、学校が「いじめではない」と説明していても、民事裁判では不法行為や安全配慮義務違反が認められることがある。

民事上の損害賠償請求では、主に次の構造で検討する。

検討項目意味いじめ事案での例
行為加害行為があったか殴る、蹴る、物を隠す、SNSに投稿する、集団で無視する
違法性法的に許されない侵害か身体、名誉、人格、財産、学習環境の侵害
故意・過失わざと、または注意義務違反があるか暴言を繰り返す、止めるべき立場で放置する
損害何が失われたか治療費、慰謝料、不登校による費用、物損
因果関係行為と損害が結びつくかいじめ後に診断、欠席、転校、治療が必要になった
責任主体誰に請求できるか加害児童生徒、保護者、学校法人、自治体等

この区別を押さえないまま請求を始めると、学校調査ではいじめ認定があるのに裁判では損害や因果関係の立証が不十分とされる、あるいは逆に学校が否定していても裁判上は違法行為として評価される、というズレが起こり得る。

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Section 02

学校でのいじめ損害賠償 ― 基本となる法制度

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

2-1. いじめ防止対策推進法

いじめ防止対策推進法は、いじめが児童生徒の教育を受ける権利や心身の健全な成長に重大な影響を与え得ることを前提に、国、地方公共団体、学校設置者、学校、保護者等の責務を定める法律である。

同法の実務上の重要点は、少なくとも次の五つである。

第一に、いじめの定義が広い。暴力のような物理的行為だけでなく、心理的影響を与える行為、インターネット上の行為も含まれる。

第二に、学校はいじめ防止等の対策のための組織を置く必要がある。担任だけで抱えるのではなく、複数の教職員や心理・福祉等の関係者が関与する体制を前提としている。

第三に、学校はいじめが疑われる場合、速やかに事実確認を行い、学校設置者へ報告し、被害児童生徒と保護者への支援、加害児童生徒への指導・助言を継続的に行うことが求められる。

第四に、生命・身体・財産に重大な被害が生じるおそれがある場合や、犯罪行為として扱うべき場合には、所轄警察署と連携し、重大な被害のおそれがあるときは直ちに通報し援助を求めることが求められる。

第五に、重大事態が発生した場合、学校設置者または学校は、事実関係を明確にするための調査を行い、被害児童生徒と保護者に必要な情報を提供することが求められる。

2-2. 民法上の不法行為責任

いじめ被害に対する損害賠償請求の中心になるのは、民法709条の不法行為責任である。民法709条は、故意または過失により他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。

学校でのいじめでは、次のような利益の侵害が問題となる。

  • 身体の安全
  • 精神的平穏
  • 名誉・信用
  • プライバシー
  • 財産権
  • 学校生活を平穏に送る利益
  • 人格的利益

また、民法710条により、財産的損害だけでなく精神的苦痛に対する慰謝料も請求対象となり得る。死亡事案では、民法711条により一定の近親者の慰謝料も問題となる。

2-3. 未成年者本人と保護者の責任

加害児童生徒が未成年である場合、常に本人が責任を負うとは限らない。民法712条は、未成年者が自己の行為の責任を理解できるだけの知能を備えていなかった場合には、その行為について賠償責任を負わないと定める。

この「責任能力」は、年齢だけで機械的に決まるものではない。一般に、小学校低学年では争点になりやすく、中学生・高校生では責任能力が肯定されやすいと考えられるが、個別の発達状況や行為内容により判断される。

加害児童生徒本人に責任能力がない場合、民法714条により、法定の監督義務者、典型的には親権者が責任を負うことがある。ただし、監督義務者が監督義務を怠らなかった場合や、怠らなくても損害が生じた場合には免責され得る。

加害児童生徒本人に責任能力がある場合でも、保護者が全く責任を負わないとは限らない。保護者が、子どもの危険な言動を把握していたのに放置した、学校から注意を受けていたのに対応しなかった、家庭内で暴力や差別的言動を助長していたなどの事情があれば、保護者自身の過失責任が問題となり得る。

2-4. 学校・学校設置者の責任

学校側の責任は、公立学校か私立学校かで法的構成が変わる。

公立学校の場合、教職員は公務員として職務を行うため、学校側の対応不備については国家賠償法1条に基づき、国または公共団体、実務上は自治体等への請求が問題となる。教員個人に直接請求するかどうかは、国家賠償法の構造や判例法理との関係で慎重な検討が必要であり、通常は設置者である自治体等を相手方に据えることが中心となる。

私立学校の場合は、学校法人に対し、在学契約上の安全配慮義務違反、民法715条の使用者責任、または学校法人自身の不法行為責任を主張する構成が考えられる。

いずれの場合も、学校に求められるのは「いじめを絶対にゼロにする結果責任」ではない。問題は、学校が具体的な危険を予見できたか、予見できたにもかかわらず相当な対応をしなかったか、被害拡大を防ぐための合理的措置を講じたかである。

2-5. 学校保健安全法と学校安全

文部科学省は、学校安全について、学校は子どもたちが集い人格形成がなされる場であり、そこで安全が確保されることが重要であると説明している。学校保健安全法は、学校安全計画、危険等発生時対処要領、地域関係機関との連携などを定める。

いじめは、狭義の事故とは異なるが、学校生活の安全を脅かす出来事である。暴力、脅迫、性的からかい、SNSでの拡散、不登校化などがある場合、学校安全、生活安全、危機管理、心理的支援の複合問題として扱う必要がある。

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Section 03

学校でのいじめ損害賠償 ― 請求相手をどう考えるか

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

学校でのいじめ被害に対し損害賠償を請求する想定事例では、「誰に請求するのか」が非常に重要である。相手方の選択を誤ると、交渉が進まないだけでなく、時効や証拠収集にも影響する。

3-1. 加害児童生徒本人

加害児童生徒本人が責任能力を有し、暴力、暴言、SNS投稿、物損などの違法行為をした場合、本人に対する不法行為責任が問題となる。

ただし、未成年本人に資力がないことは少なくない。そのため、実務上は保護者や学校設置者も含めて責任主体を検討することが多い。

3-2. 加害児童生徒の保護者

保護者の責任は二つの角度から検討される。

一つは、加害児童生徒に責任能力がない場合の監督義務者責任である。もう一つは、加害児童生徒に責任能力がある場合でも、保護者自身の監督・指導上の過失を理由とする不法行為責任である。

保護者責任を主張する場合には、単に「親だから責任がある」という主張では弱い。次のような事情の立証が重要になる。

  • 学校から過去に注意や連絡を受けていた
  • 同種行為を繰り返していた
  • 保護者が被害者側との接触を知っていた
  • 家庭で指導すべき具体的状況があった
  • 保護者が証拠隠しや口裏合わせに関与した疑いがある
  • SNS投稿や端末管理について保護者が放置していた

3-3. 公立学校の設置者・自治体

公立学校では、学校や教職員の対応が問題になる場合、自治体に対する国家賠償請求が中心となる。

たとえば、次のような事情があると、学校側の過失が争点になり得る。

  • 被害者や保護者が繰り返し相談していた
  • けが、欠席、保健室利用、成績低下、表情の変化などのサインがあった
  • 教職員が現場を目撃していた
  • アンケートや面談にいじめを示す記載があった
  • いじめ防止対策組織に情報共有されていなかった
  • 加害児童生徒を被害者から分離しなかった
  • 被害者に登校継続を迫り、二次被害を拡大させた
  • 重大事態に該当し得るのに調査・報告を怠った

3-4. 私立学校・学校法人

私立学校では、学校法人との在学契約関係があるため、契約上の安全配慮義務違反が問題になり得る。また、教職員の職務上の不適切対応について民法715条の使用者責任を主張する構成も考えられる。

私立学校の場合、学校独自の生徒指導規程、いじめ防止基本方針、危機管理マニュアル、懲戒規程、保護者説明文書などが重要な証拠になることがある。

3-5. SNS・掲示板・通信関係者

ネット上のいじめでは、投稿者の特定、投稿削除、ログ保存が重要になる。2025年4月1日に、旧プロバイダ責任制限法を改正する形で、情報流通プラットフォーム対処法が施行され、発信者情報開示や削除対応の制度環境が変化している。

ただし、未成年者のSNSトラブルでは、学校内の人間関係、端末管理、家庭内の監督、プラットフォーム手続、警察対応が絡み合う。投稿者が匿名の場合は、証拠保全と発信者情報開示のタイミングが重要である。ログ保存期間が短いサービスもあるため、ネットいじめでは早期相談の必要性が高い。

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Section 04

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例1 ― 身体的暴力により治療が必要になった場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

4-1. 事案設定

中学1年生Aは、同じクラスのB、Cから、休み時間や部活動後に肩を強く叩かれる、足を引っかけられる、ロッカーに押し込まれるなどの行為を受けていた。Aは担任に「やめてほしい」と相談したが、担任は「男子同士のじゃれ合い」として口頭注意にとどめた。

ある日、Aは階段付近でBに背中を押され、転倒して手首を骨折した。Aの保護者は病院で診断書を取得し、学校に事実確認を求めた。学校は当初「事故」と説明したが、複数の生徒が、以前からBとCがAをからかい、押す行為をしていたと証言した。

4-2. 請求できる可能性のある損害

この事例では、次の損害が検討対象になる。

  • 骨折の治療費
  • 通院交通費
  • 装具・サポーター等の費用
  • 通学や生活上の付添費用
  • けがによる精神的苦痛の慰謝料
  • 部活動・学校行事に参加できなかったことによる慰謝料増額事情
  • 破損した制服、眼鏡、学用品等があればその費用
  • 弁護士費用相当額

日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度により、学校の管理下でのけがについて医療費等の給付を受けられる場合がある。ただし、これは損害賠償請求そのものではない。給付の有無、損益相殺、請求の相手方との関係は個別に整理する必要がある。

4-3. 請求相手

主たる相手方は、B、C本人である。中学1年生であれば、通常は責任能力が問題なく認められる可能性があるが、最終的には個別判断である。

B、Cの保護者に対しては、過去の暴力や学校からの連絡を知っていたか、家庭での指導を怠ったかが争点になる。

学校・自治体に対しては、担任が以前から相談を受けていたこと、具体的な危険を予見できたこと、分離措置や組織対応をしなかったことが過失として主張され得る。

4-4. 立証のポイント

この想定事例では、単発の転倒事故ではなく、継続的ないじめ行為の延長として骨折が発生したことを示す必要がある。重要な証拠は次のとおりである。

  • 診断書、診療明細、通院記録
  • 事故直後の写真
  • Aの被害メモ
  • 保護者から担任への相談記録
  • 学校からの回答文書
  • 目撃生徒の陳述
  • 休み時間や部活動後の監督体制に関する資料
  • 校内事故報告書
  • いじめアンケートの記載

学校側が「ふざけ合い」と主張する場合でも、被害者が嫌がっていたこと、複数回継続していたこと、身体に危険が及ぶ行為であったことを丁寧に示す必要がある。

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Section 05

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例2 ― 暴言・無視・排除により不登校になった場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

5-1. 事案設定

小学6年生Dは、クラス内の数名から「きもい」「近づくな」「菌がうつる」などと言われ、給食班や班活動で仲間外れにされた。Dは学校に行く前に腹痛を訴えるようになり、欠席が増えた。

保護者は担任に相談したが、担任は「本人の受け止め方にも問題がある」「クラス替えまで様子を見ましょう」と述べた。Dはその後、心療内科で適応障害と診断され、長期欠席になった。

5-2. 不法行為性の検討

暴力がない場合でも、人格を傷つける暴言、集団での排除、継続的な無視、差別的な発言は、不法行為となり得る。

裁判上の争点は、次の点に集中しやすい。

  • 発言や排除行為が実際にあったか
  • どの程度継続していたか
  • 単なるけんかや一時的な不和を超える違法性があるか
  • Dの不登校や診断との因果関係があるか
  • 学校が相談を受けた後、合理的な対応をしたか

5-3. 損害項目

この事例では、身体的なけががなくても、次の損害が問題になる。

  • 心療内科・精神科・小児科等の診療費
  • カウンセリング費用
  • 通院交通費
  • 不登校期間中の学習支援費用
  • 転校、別室登校、フリースクール等に関連する費用
  • 精神的苦痛に対する慰謝料
  • 保護者の対応負担に関連する一定の費用

ただし、学習塾費用やフリースクール費用がすべて当然に賠償対象となるわけではない。必要性、相当性、いじめとの因果関係、学校側の対応状況、他の選択肢の有無が検討される。

5-4. 重大事態該当性

いじめ防止対策推進法28条は、いじめにより生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合、または相当期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある場合を重大事態として扱う。

この事例でDが長期欠席になっている場合、重大事態としての調査を求める余地がある。重大事態調査では、事実関係の明確化、学校の対応、再発防止策、被害児童生徒・保護者への情報提供が重要になる。

5-5. 立証のポイント

精神的被害は外から見えにくいため、証拠の積み重ねが重要である。

  • 欠席日数の記録
  • 体調不良の経過メモ
  • 医師の診断書、診療録、意見書
  • スクールカウンセラーとの相談記録
  • 担任・管理職との面談メモ
  • クラス内での発言や出来事の時系列表
  • LINE、SNS、チャット、ノート、手紙
  • 学校アンケートや聞き取り結果
  • D本人の負担にならない範囲での陳述

精神的被害では、医師に「訴訟用の文章を書いてほしい」と依頼する前に、まず通常診療の中で、症状の経過、発症時期、学校生活との関係を正確に伝えることが重要である。

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Section 06

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例3 ― SNSで写真や悪口を拡散された場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

6-1. 事案設定

高校1年生Eは、同級生グループから、体育の授業中に撮影された写真を無断でSNSに投稿され、「陰キャ」「臭い」「学校来るな」などのコメントを付けられた。投稿は24時間で消える形式だったが、複数の生徒がスクリーンショットを保存し、別のチャットグループにも拡散した。

Eは強い不安を訴え、登校を控えるようになった。保護者は学校に相談したが、学校は「校外のSNSなので学校では対応しにくい」と説明した。

6-2. 法的問題

この事例では、次の法的問題が重なる。

  • 名誉毀損・侮辱に当たり得る投稿
  • プライバシー侵害
  • 肖像権侵害
  • いじめ防止対策推進法上のネットいじめ
  • 学校の対応義務
  • 発信者情報開示や削除請求
  • 投稿者が未成年である場合の保護者責任

いじめ防止対策推進法は、インターネットを通じて行われる行為もいじめに含める。したがって、投稿が校外で行われたとしても、学校の児童生徒間の人的関係に基づくもので、被害者が心身の苦痛を感じていれば、学校として対応すべき問題となり得る。

6-3. 初動対応

ネットいじめでは、投稿が削除される前に証拠化する必要がある。

  • 画面全体のスクリーンショットを保存する
  • URL、アカウント名、投稿日時、閲覧数、コメント欄を記録する
  • 可能であれば別端末で画面を撮影する
  • 保存した生徒に無理な提出要求をしない
  • 学校に対して、投稿内容と拡散範囲の確認を求める
  • 緊急性が高い場合は、削除請求、警察相談、弁護士相談を検討する

発信者情報開示には時間制限がある。通信ログが消えると投稿者特定が難しくなるため、匿名アカウントの事案では早期に専門家へ相談する必要性が高い。

6-4. 損害賠償の構成

投稿者が特定できる場合、投稿者本人に対する不法行為責任を検討する。投稿者が複数いる場合、共同不法行為が問題となることがある。拡散者も、単に見ただけではなく、積極的に転送・再投稿した場合には責任を問われ得る。

保護者責任は、端末管理、過去の投稿トラブル、学校からの注意、家庭での指導状況が争点になりやすい。

学校側については、「校外のSNSだから無関係」とはいえない。学校内の人間関係に起因し、学校生活に重大な影響が出ている場合、学校が調査・支援・再発防止措置を尽くしたかが問われる。

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Section 07

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例4 ― 部活動内のいじめと指導者の放置

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

7-1. 事案設定

中学2年生Fは、運動部の上級生から、練習後に用具片付けを一人で押し付けられる、失敗すると全員の前で罵倒される、私物を隠されるなどの行為を受けていた。顧問教諭は一部を見ていたが、「部活は厳しいものだ」として止めなかった。

Fは練習に参加できなくなり、部活動だけでなく学校全体への登校も困難になった。

7-2. 争点

部活動は教育活動の一部として学校管理下に置かれることが多い。そのため、部活動内のいじめでは、加害生徒だけでなく、顧問教諭や学校の管理責任が問題になりやすい。

争点は次のとおりである。

  • 上級生の行為が指導・注意の範囲を超えた違法行為か
  • 顧問が事実を把握していたか
  • 顧問が把握できる状況にあったか
  • 顧問の言動がいじめを助長したか
  • 部活動の慣行として不適切な上下関係が放置されていたか
  • 学校が部活動内の安全管理体制を整えていたか

7-3. 損害賠償請求の組み立て

加害生徒には、不法行為責任が問題となる。顧問教諭が見て見ぬふりをしたり、過度な叱責に同調したりしていた場合、公立学校では自治体への国家賠償請求、私立学校では学校法人への請求を検討する。

この類型では、部活動の連絡アプリ、練習日誌、顧問の指導記録、他の部員の証言、過去の同種トラブルが重要である。

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Section 08

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例5 ― 学校が重大事態として扱わなかった場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

8-1. 事案設定

中学3年生Gは、クラス内での継続的なからかいとSNSでの中傷により、3か月以上欠席した。保護者は学校に対し、いじめ防止対策推進法上の重大事態として調査するよう求めたが、学校は「本人の不安傾向が主因で、いじめによる欠席とはいえない」と回答した。

教育委員会にも相談したが、調査開始まで半年以上かかった。その間、Gは進路選択に大きな影響を受けた。

8-2. 重大事態調査と損害賠償の関係

重大事態調査は、被害児童生徒と保護者にとって、事実関係を明らかにする重要な機会である。しかし、重大事態調査は、損害賠償請求そのものではない。調査報告書でいじめが認定されても、損害額や法的責任は別途検討される。

反対に、学校が重大事態として扱わなかった場合でも、裁判でいじめ行為や学校側の過失が認められる可能性はある。

8-3. 学校側対応の違法性

学校側の調査遅延や不十分な対応が、独立した損害を生むことがある。たとえば、次のような場合である。

  • 被害者が安心して登校できる環境を整えなかった
  • いじめを訴えた被害者を「問題児」扱いした
  • 加害児童生徒との接触を避ける措置を怠った
  • 保護者への情報提供が不十分だった
  • 調査開始を不当に遅らせた
  • 被害者に二次的な精神的苦痛を与えた

ただし、調査が遅れたこと自体から直ちに高額の損害賠償が認められるわけではない。調査遅延によりどのような損害が具体的に生じたか、原いじめ被害との関係をどう整理するかが重要になる。

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Section 09

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例6 ― 私立学校で学校法人への請求を検討する場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

9-1. 事案設定

私立中学校に通うHは、同級生から継続的に容姿をからかわれ、学校のタブレット端末を使って悪口を共有された。Hの保護者は学校に相談したが、学校は「本校のブランドを損なうので外部には出さないでほしい」と述べ、内部での注意にとどめた。

Hは転校を余儀なくされ、入学金、制服代、通学費、学習環境の変化による補習費用などが発生した。

9-2. 私立学校特有の論点

私立学校では、保護者と学校法人の間に在学契約関係がある。学校法人は、教育サービスを提供するだけでなく、生徒が安全に学校生活を送れるよう配慮する義務を負うと考えられる。

この事例では、次の資料が重要になる。

  • 入学時の契約関係書類
  • 生徒心得、校則、いじめ防止基本方針
  • タブレット利用規程
  • SNS・ICT利用ルール
  • 保護者説明会資料
  • 学校からのメール
  • 面談記録
  • 転校に至った経緯資料

9-3. 請求項目

転校費用は、いじめとの因果関係と必要性が争点になる。学校が適切な安全確保をせず、Hが元の学校に在籍し続けることが困難だったといえる場合には、転校関連費用の一部が損害として主張され得る。

ただし、私立から私立へ転校した場合の授業料差額、任意に選択した高額な補習費用などは、相当性が厳しく問われる可能性がある。損害項目は広く拾い上げたうえで、法的に通る項目と交渉上の項目を分けて整理する必要がある。

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Section 10

学校でのいじめ損害賠償 ― 想定事例7 ― 加害児童生徒側の反論がある場合

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

10-1. 事案設定

中学2年生Iは、同級生Jから暴言や物隠しを受けたとして損害賠償請求を検討している。ところがJ側は、「IもJに悪口を言っていた」「双方に原因がある」「いじめではなく対等なけんかだった」と反論している。

10-2. 互いに言い分がある事案の難しさ

いじめ事案では、加害側が「先に言われた」「冗談だった」「本人も笑っていた」「グループ全員の遊びだった」と主張することがある。

この場合、被害者側は、単に「つらかった」と述べるだけではなく、次の点を整理する必要がある。

  • 行為の頻度
  • 人数差・力関係
  • 継続期間
  • 被害者が嫌がっていた事実
  • 行為の内容の悪質性
  • その後の症状や欠席
  • 学校への相談の有無
  • 加害側が止める機会を得ていたか

10-3. 過失相殺・素因減額の主張

加害側や学校側は、被害者側にも原因がある、元々不安傾向があった、家庭環境に別要因があったなどと主張することがある。これらは、因果関係、損害額、過失相殺、素因減額の文脈で争われる。

被害者側としては、被害者を責める議論に感情的に反発したくなるのは当然である。しかし、訴訟では、既往症、家庭事情、友人関係、通院歴、欠席歴などが争点化する可能性がある。弁護士相談時には、不利に見える事情も隠さず共有し、どう説明するかを事前に検討する必要がある。

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Section 11

学校でのいじめ損害賠償 ― 損害項目の専門的整理

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

11-1. 財産的損害

財産的損害とは、金銭的に評価できる損害である。学校でのいじめ被害では、次のような項目が考えられる。

損害項目内容証拠
治療費外科、整形外科、心療内科、精神科、小児科等領収書、診療明細、診断書
通院交通費電車、バス、タクシー等交通履歴、領収書、通院日記
カウンセリング費用臨床心理士、公認心理師等契約書、領収書、相談記録
学用品・私物損壊制服、眼鏡、端末、教材等写真、購入記録、修理見積
転校関連費入学金、制服代、通学費等請求書、領収書、転校理由資料
学習支援費補習、家庭教師、フリースクール等契約書、領収書、必要性の説明
付添・看護費通院や登校支援の付添付添記録、勤務調整資料

11-2. 精神的損害・慰謝料

慰謝料とは、精神的苦痛を金銭で評価する損害である。いじめ被害では、次の事情が慰謝料額に影響し得る。

  • 行為の悪質性
  • 継続期間
  • 加害者の人数
  • 被害者の年齢
  • 暴力・性的要素・差別的発言の有無
  • SNS拡散の範囲
  • 不登校の期間
  • 医学的診断の有無
  • 学校側対応による二次被害
  • 加害側の謝罪・反省の有無
  • 被害回復措置の有無

慰謝料額は、報道された裁判例の金額だけで単純に予測できない。死亡、重い後遺障害、長期不登校、軽度の物損、短期の暴言では、損害の質と量が大きく異なる。

11-3. 弁護士費用相当額

不法行為訴訟では、認容額の一部として弁護士費用相当額が損害に含まれることがある。ただし、実際に依頼者が弁護士に支払う費用全額が当然に相手方から回収できるわけではない。請求段階では、弁護士報酬契約と裁判上認められ得る弁護士費用相当額を分けて理解する必要がある。

11-4. 損益相殺

学校管理下のけがで災害共済給付を受けた場合、保険金や給付金がある場合、自治体の医療費助成を受けた場合などには、損害額から控除するかが問題になることがある。これは制度の性質によって異なるため、弁護士に資料を示して確認するのがよい。

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Section 12

学校でのいじめ損害賠償 ― 証拠の作り方・残し方

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

12-1. 最初に作るべき時系列表

いじめ損害賠償請求で最も重要な基礎資料は、時系列表である。

時系列表には、次の項目を入れる。

日付場所出来事関係者証拠被害・症状学校への連絡
4月10日教室「菌」と言われるB、C本人メモ帰宅後泣くなし
4月15日廊下足を引っかけられるB友人目撃膝を打つ担任に相談
5月2日SNS写真投稿不明スクショ登校不安学校にメール

時系列表は、感情を排除する必要はないが、まずは事実を優先する。「許せない」「ひどい」だけではなく、「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」を記録する。

12-2. 学校とのやり取り

学校との面談は、後に重要な証拠となることが多い。次の工夫が有効である。

  • 面談前に議題をメールで送る
  • 面談後に「本日の確認事項」として要約メールを送る
  • 担任だけでなく管理職、いじめ対策組織の関与を求める
  • 口頭説明だけでなく文書回答を求める
  • 感情的な長文ではなく、事実、要望、期限を分けて書く

録音については、地域や学校との関係、後の交渉への影響も踏まえて慎重に扱う必要がある。違法な盗聴や不適切な公開は避けるべきである。

12-3. 医療記録

心身の被害を立証するには、医療記録が重要である。

  • 初診日
  • 主訴
  • 症状の経過
  • 学校生活との関連
  • 診断名
  • 治療内容
  • 通院頻度
  • 服薬の有無
  • 登校可否に関する医師の意見

医師には、裁判で使うための結論を無理に求めるのではなく、正確な症状と経過を伝えることが第一である。

12-4. SNS証拠

SNS証拠では、画面の一部だけでなく、投稿者、日時、URL、アカウント情報、前後の文脈がわかる形で保存する。

  • スクリーンショット
  • 画面録画
  • URL保存
  • 投稿ID
  • アカウントプロフィール
  • コメント欄
  • 転送先のチャット
  • 既読・反応数

投稿が消える形式のSNSでは、保存が遅れると証拠が失われる。削除請求と証拠保全の順序にも注意が必要である。

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Section 13

学校でのいじめ損害賠償 ― 手続の流れ

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

次の判断の流れは、学校でのいじめ損害賠償を進める順番を示します。重要なのは、金銭請求を急ぐ前に安全確保と学校への組織対応を置く点です。上から順に、現在の危険を止め、証拠と手続を選ぶ流れとして読んでください。

学校でのいじめ損害賠償を進める順番

安全確保

接触回避、別室登校、医療機関受診、緊急時の警察相談を優先します。

学校・設置者へ申入れ

事実経過、被害状況、安全確保措置、調査事項、重大事態該当性、回答期限を分けて伝えます。

通知の時期を検討

早すぎる通知は学校調査や学校生活に影響し、遅すぎる通知は時効や証拠散逸の問題を生みます。

交渉・調停・訴訟

謝罪、再発防止、接触禁止、SNS投稿削除、損害賠償額などを、証拠と子どもの負担を踏まえて選びます。

13-1. 安全確保

最優先は、損害賠償ではなく子どもの安全確保である。

  • 加害児童生徒との接触回避
  • 別室登校
  • 登下校の安全確保
  • 部活動停止または配置変更
  • スクールカウンセラーとの接続
  • 医療機関受診
  • 緊急時の警察相談

損害賠償請求のために無理に登校を続けさせる必要はない。むしろ、心身の安全を守るための対応が、その後の法的主張の基礎になる。

13-2. 学校・教育委員会への申入れ

次に、学校に対して事実確認、支援、再発防止、情報共有を求める。公立学校では教育委員会、私立学校では学校法人や所轄庁への相談も検討する。

申入れでは、次を分けて書くとよい。

  1. これまでの事実経過
  2. 現在の被害状況
  3. 直ちに求める安全確保措置
  4. 事実調査として求める事項
  5. 重大事態該当性に関する見解
  6. 回答期限

13-3. 内容証明郵便・通知書

損害賠償請求を本格化する場合、弁護士名または本人名で、相手方に通知書を送ることがある。通知書には、行為、損害、請求額、支払期限、協議方法を記載する。

ただし、早すぎる通知が学校調査や子どもの学校生活に影響することもある。反対に、通知を遅らせすぎると時効や証拠散逸の問題が生じる。タイミングは事案ごとに判断する。

13-4. 交渉

交渉では、金銭だけでなく、謝罪、再発防止、接触禁止、クラス替え、部活動対応、学校内での説明、SNS投稿削除などが議題になることがある。

ただし、相手方に過度な謝罪文を強要する、加害児童生徒の個人情報を公開する、学校や家庭に大人数で押しかけるといった行為は避けるべきである。被害回復を目指すはずが、逆に名誉毀損、プライバシー侵害、威力業務妨害などの問題を招く危険がある。

13-5. 民事調停・ADR

裁判外の話し合いが難しい場合、民事調停やADRを利用することがある。調停は、裁判所の調停委員を介した話し合いである。ADRは、民間または公的な紛争解決機関による手続である。

いじめ事案では、子どもの在学中に対立が激化すると学校生活に影響するため、訴訟前の調整手段として検討する価値がある。ただし、相手方が事実を全面否認している場合や証拠開示が必要な場合には、訴訟の方が適していることもある。

13-6. 民事訴訟

訴訟では、原告が請求原因を主張立証する。主張立証の中心は、次の事項である。

  • いじめ行為の存在
  • 各行為の違法性
  • 加害者の故意・過失
  • 学校側の注意義務違反
  • 損害の発生
  • 因果関係
  • 損害額

被告側は、行為の否認、違法性の否認、因果関係の否認、損害額の争い、被害者側事情、時効などを主張することがある。

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Section 14

学校でのいじめ損害賠償 ― 時効に関する注意点

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

次の重要表示は、学校でのいじめ損害賠償で見落としやすい期間の違いを示します。読者にとって重要なのは、通常の不法行為、生命・身体侵害、不法行為時からの長期期間を分けて確認することです。

3年・5年・20年を分けて確認

不法行為による損害賠償請求権は、被害者または法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、生命・身体を害する不法行為では5年間、不法行為の時から20年間が問題になります。

14-1. 不法行為の時効

民法724条は、不法行為による損害賠償請求権について、被害者または法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間行使しない場合に時効で消滅すると定める。

さらに、生命・身体を害する不法行為については、民法724条の2により、上記の3年間が5年間に延長される。

いじめ事案では、いつ「損害および加害者を知った」といえるか、継続的ないじめのどの時点を起算点とするか、精神疾患や後遺障害の損害をいつ認識したかが争点になることがある。

14-2. 時効完成を防ぐ方法

時効が迫っている場合、単に相手にメールを送るだけでは不十分なことがある。催告、協議合意、訴訟提起、調停申立てなど、時効の完成猶予・更新に関する手続を検討する必要がある。

時効は技術的で、誤ると請求権を失う危険がある。被害発生日から年数が経っている場合は、早急に弁護士へ相談することが望ましい。

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Section 15

学校でのいじめ損害賠償 ― 弁護士に相談する際の準備

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

15-1. 相談前に整理する資料

弁護士相談では、限られた時間で事案の骨格を伝える必要がある。次の資料を準備すると相談の質が上がる。

  • 時系列表
  • 学校とのメール・連絡帳・面談メモ
  • 診断書、領収書、診療明細
  • SNSスクリーンショット
  • 写真、動画、音声
  • 欠席記録、成績や進路への影響資料
  • 学校のいじめ防止基本方針
  • 重大事態調査に関する文書
  • 加害側とのやり取り
  • 損害額一覧表

15-2. 弁護士に確認すべき質問

相談時には、次の質問をすると実務的である。

  • 請求相手は誰にすべきか
  • 加害児童生徒本人、保護者、学校、自治体・学校法人の責任をどう整理するか
  • 証拠として足りないものは何か
  • 重大事態調査を求めるべきか
  • 先に学校対応を進めるべきか、通知書を送るべきか
  • 予想される請求額の幅はどの程度か
  • 交渉、調停、訴訟のどれが適しているか
  • 時効のリスクはあるか
  • 子どもの学校生活への影響をどう抑えるか
  • 弁護士費用と回収見込みのバランスはどうか

15-3. 法テラス等の利用

経済的に余裕がない場合、法テラスの民事法律扶助により、無料法律相談や弁護士費用等の立替えを利用できることがある。法テラスの無料法律相談は、一定の収入・資産基準を満たす人を対象とし、同一案件で原則3回まで、1回30分の相談が可能とされている。

ただし、利用条件や対象範囲は変更され得るため、最新の条件は法テラスで確認する必要がある。

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Section 16

学校でのいじめ損害賠償 ― 学校でのいじめ被害に対し損害賠償を請求する想定事例における実務上の判断枠組み

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

16-1. 請求すべきかを判断する5つの軸

学校でのいじめ被害に対し損害賠償を請求するかどうかは、怒りの大きさだけで決めるべきではない。次の五つを総合的に検討する。

第一に、被害の深刻さである。けが、診断、不登校、SNS拡散、性的被害、金銭被害、進路への影響がある場合は、法的対応の必要性が高い。

第二に、証拠の強さである。証拠が乏しい段階で強硬な請求をすると、相手が否認し、かえって事実解明が難しくなることがある。

第三に、学校の対応状況である。学校が適切に調査し、安全確保に動いている場合と、学校が否認・放置している場合では、戦略が異なる。

第四に、子どもの現在の状態である。被害児童生徒が裁判や聞き取りに耐えられる状態か、二次被害を避ける方法があるかを考える必要がある。

第五に、費用対効果である。損害賠償請求は、時間、費用、精神的負担を伴う。回収可能性、相手方の資力、訴訟期間、学校生活への影響を見積もるべきである。

16-2. 損害賠償より先に必要なこと

多くの事案では、損害賠償請求より前に、次の対応が必要である。

  • 現在進行中のいじめを止める
  • 被害児童生徒の安全な居場所を確保する
  • 医療・心理支援につなげる
  • 証拠を消さずに保存する
  • 学校に組織対応を求める
  • 加害児童生徒との接触を制限する
  • 重大事態該当性を確認する

損害賠償請求は、これらの対応と並行して進めることはできるが、子どもの安全を犠牲にしてまで優先すべきではない。

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Section 17

学校でのいじめ損害賠償でよくある誤解

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

誤解1 ― 学校が「いじめ」と認めないと請求できない

学校がいじめと認めていなくても、証拠により不法行為や学校側の過失を主張できる場合がある。学校の認定は重要な資料だが、裁判所の判断を拘束するものではない。

誤解2 ― いじめ認定があれば必ず勝てる

いじめ認定があっても、損害、因果関係、責任主体、損害額の立証が必要である。特に精神的被害や不登校との因果関係は争われやすい。

誤解3 ― 加害児童生徒の親は必ず責任を負う

保護者責任は当然には認められない。責任能力の有無、監督義務違反、過去の認識、家庭での対応などを具体的に検討する必要がある。

誤解4 ― SNSで加害者名を晒せば学校が動く

加害者名や顔写真の公開は、名誉毀損、プライバシー侵害、少年の保護、学校運営への影響など重大なリスクがある。被害者側が別の法的責任を問われる可能性もあるため、避けるべきである。

誤解5 ― 警察に相談すると民事請求はできない

刑事手続と民事請求は別である。暴行、傷害、脅迫、恐喝、器物損壊、性的被害、悪質なネット投稿などでは、警察相談と民事請求を並行して検討することがある。

誤解6 ― 弁護士に相談するとすぐ裁判になる

弁護士相談は、裁判を始めるためだけのものではない。証拠整理、学校への申入れ、重大事態調査への関与、交渉方針、時効管理、子どもの負担軽減のためにも役立つ。

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Section 18

学校でのいじめ損害賠償の実務上の結論

いじめ被害の安全確保、証拠化、損害賠償請求を一般情報として整理します。

次の時系列は、請求を急ぐ前に優先する行動順序を表します。重要なのは、子どもの安全と医療・心理支援を先に置く点です。上から順に、危険を止め、証拠と学校対応を整え、請求相手や手続を選ぶ流れとして読んでください。

1

子どもの安全を確保する

接触回避、別室登校、登下校の安全、部活動対応、緊急時の警察相談を検討します。

2

医療・心理支援につなげる

体調不良、適応障害、不眠、不安などがある場合は医療機関やスクールカウンセラーにつなげます。

3

証拠を保存する

時系列表、診断書、領収書、SNS記録、学校連絡、面談メモを消さずに整理します。

4

学校に組織対応を求める

担任だけでなく管理職、いじめ対策組織、設置者への報告、重大事態該当性の確認を求めます。

5

請求相手と手続を選ぶ

加害児童生徒、保護者、自治体、学校法人、SNS投稿者を整理し、交渉、調停、訴訟を選択します。

学校でのいじめ被害に対し損害賠償を請求する想定事例では、被害感情の強さだけでなく、法的要件、証拠、学校対応、子どもの安全、時効、費用対効果を総合的に検討する必要がある。

いじめ防止対策推進法は、学校に早期発見・組織対応・重大事態調査・情報提供を求める重要な法律である。一方、損害賠償請求の直接の根拠は、多くの場合、民法上の不法行為責任、監督義務者責任、共同不法行為、公立学校に関する国家賠償法、私立学校に関する契約上の安全配慮義務や使用者責任である。

実務上は、次の順序で考えるとよい。

  1. 子どもの安全を確保する
  2. 医療・心理支援につなげる
  3. 証拠を保存する
  4. 学校に組織対応を求める
  5. 重大事態該当性を確認する
  6. 請求相手と損害項目を整理する
  7. 時効を確認する
  8. 弁護士に相談する
  9. 交渉、調停、訴訟を選択する

いじめ被害は、家庭だけで抱え込むには重すぎることがある。損害賠償請求は、子どもの回復、安全な学習環境の再構築、再発防止、事実解明の一手段である。法的手続を使う場合でも、最終的な目的は、子どもが安心して生活し、学び、将来を取り戻すことである。

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Reference

この記事の参考資料

法令・公的資料

  • 文部科学省「いじめ防止対策推進法(平成25年9月28日)」
  • 文部科学省「いじめの問題に対する施策」
  • 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等 生徒指導上の諸課題に関する調査」
  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等 生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「国家賠償法」
  • e-Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」
  • e-Gov法令検索「学校保健安全法」
  • 文部科学省「学校安全」
  • 日本スポーツ振興センター「災害共済給付」
  • 法テラス「民事法律扶助制度」
  • 情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト
  • 国立国会図書館サーチ「いじめによる女子高校生の自殺について教諭に自殺についての予見可能性がないとして、精神的苦痛の範囲で損害賠償が認容された事例」
  • 朝日新聞「大津いじめ自殺、元同級生2人の賠償確定 最高裁」