損害賠償の時効は、一律に5年へ変わったわけではありません。不法行為か債務不履行か、人身損害か財産的損害か、経過措置があるかを順番に整理します。
損害賠償の時効は、一律に5年へ変わったわけではありません。
3年、5年、10年、20年の違いを最初に整理します。
このページは、2020年4月1日に施行された民法改正によって、損害賠償の時効がどのように整理されたのかを一般向けに説明するものです。事故、契約トラブル、医療・介護、労務、取引上の紛争などでは、事故日や契約日だけでなく、損害を知った日、加害者を知った日、交渉経過、催告、訴訟提起、債務の承認などで結論が変わる可能性があります。
最初に押さえるべき結論は、損害賠償の時効が一律に5年になったわけではないという点です。不法行為か債務不履行か、生命・身体侵害か財産的損害かによって、主に次のように期間が分かれます。
次の比較表は、改正後の代表的な時効期間を請求の根拠と損害の種類で分けたものです。どの行に近いかを確認することが、時効判断の出発点になります。
| 請求の根拠 | 損害の種類 | 改正後の主な時効期間 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 不法行為 | 物損・財産損害など | 損害及び加害者を知った時から3年/不法行為の時から20年 | 物損事故、器物損壊、名誉毀損など |
| 不法行為 | 生命・身体侵害 | 損害及び加害者を知った時から5年/不法行為の時から20年 | 交通事故のけが、暴行による傷害、死亡事故など |
| 債務不履行 | 一般的な契約上の損害 | 権利行使可能と知った時から5年/権利行使可能時から10年 | 売買契約違反、業務委託契約違反、システム開発紛争など |
| 債務不履行 | 生命・身体侵害 | 権利行使可能と知った時から5年/権利行使可能時から20年 | 医療契約、介護契約、施設利用契約上の安全配慮義務違反など |
同じ出来事でも、法律構成が複数あり得ます。医療事故、介護施設内の事故、スポーツ施設での事故、業務委託先による安全配慮義務違反などでは、不法行為責任と契約上の債務不履行責任が並行して検討されることがあります。
この結論を短くまとめると、物損型の不法行為では3年が残り、人身損害の不法行為では3年が5年へ延び、債務不履行では5年と10年または20年の二重構造を確認する必要があります。
次の重要ポイントは、期間だけを見て判断しないための要点を示しています。損害賠償の時効では、根拠、損害の種類、起算点、時効対策を順番に確認することが重要です。
2020年改正後は、請求の根拠と損害の種類を分類し、起算点になり得る日付を一覧化することが、時効リスクを見落とさないための基本になります。
不法行為と債務不履行の違いを押さえると、期間の見方が変わります。
損害賠償とは、他人の行為や契約違反によって損害を受けた人が、その損害を金銭で補填するよう求める制度です。日常的には、慰謝料、修理代、治療費、休業損害、逸失利益などとして語られますが、法的には損害の内容と請求の根拠ごとに整理されます。
損害賠償請求の主な根拠は、不法行為責任と債務不履行責任です。次の比較一覧は、両者がどのような場面で問題になるかを整理したものです。自分のトラブルがどちらに近いかを読むことで、時効期間を検討する入口が見えます。
契約関係がなくても、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合に問題になります。交通事故、暴行、名誉毀損、プライバシー侵害、器物損壊などが典型例です。
契約などの法律関係を前提に、約束された履行がされない場合や履行が不能になった場合に問題になります。納品遅延、品質不良、施設利用契約上の安全配慮義務違反などが典型例です。
介護施設、医療、学校、スポーツ施設、宿泊施設などの事故では、不法行為責任と債務不履行責任の双方が検討されることがあります。どちらで考えるかにより、時効期間や起算点が変わる可能性があります。
不法行為は、赤信号を無視した車に歩行者がはねられた場合のように、当事者間に契約がなくても成立し得ます。これに対して債務不履行は、施設利用契約や医療契約など、契約関係を前提に義務違反を考えるのが基本です。
一般情報として最も大切なのは、損害賠償という言葉だけでは時効期間を決められないことです。まずは、どの法律構成で請求するのかを確認する必要があります。
時効完成、援用、起算点を区別して理解します。
消滅時効とは、権利者が一定期間権利を行使しない場合に、その権利を消滅させる制度です。損害賠償請求では、一定期間内に請求、訴訟提起、完成猶予・更新の措置などを取らなかった場合、相手方から時効を主張されることで、請求が認められなくなる可能性があります。
民法145条との関係では、時効期間が経過しただけで裁判所が当然に請求を退けるわけではありません。相手方が時効を援用して初めて、時効による権利消滅が問題になります。ただし実務上は、時効期間が経過していれば相手方が援用することが多いため、期限前の対応が重要です。
次の判断の流れは、損害賠償の時効を検討するときに確認する順番を示しています。根拠、損害の種類、起算点、時効対策の順に見ることで、期間だけを見て誤解するリスクを下げられます。
不法行為か、債務不履行か、両方があり得るかを整理します。
生命・身体侵害か、物損・経済的損害かを分けます。
損害や加害者を知った時、権利行使可能と知った時、客観的な権利行使可能時を比べます。
任意交渉だけで安心せず、完成猶予や更新につながる手段を検討する必要があります。
起算点とは、時効期間のカウントが始まる時点です。不法行為では、単に事故日から機械的に数えるとは限らず、被害者または法定代理人が損害及び加害者を知った時が問題になります。
債務不履行では、権利を行使することができる時や、権利を行使することができることを知った時が問題になります。契約の内容、履行期、損害の発生時期、相手方の違反が明らかになった時期などを確認する必要があります。
債権法改正の趣旨と旧法の問題点を整理します。
2020年4月1日に施行された民法改正は、一般に債権法改正と呼ばれます。契約、債務不履行、債権譲渡、保証、消滅時効など、取引社会の基礎になる領域を広く見直した改正です。
次の時系列は、改正の流れと損害賠償の時効で重要な変化を並べたものです。時期ごとの違いを確認することで、2020年4月1日前後の事件や契約で経過措置を意識すべき理由が分かります。
旧民法724条後段の20年期間は、最高裁判例上、消滅時効ではなく除斥期間と解される場面がありました。
約120年間大きく見直されてこなかった債権関係規定を、社会・経済の変化に合わせて整理する趣旨で改正が進みました。
一般債権は主観的5年と客観的10年を基本に整理され、人身損害では不法行為の主観的期間や債務不履行の客観的期間が延長されました。
旧法では、商事債権や職業別の短期消滅時効など、現在より複雑な期間区分が存在しました。改正後は、一般債権について、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年という基本構造に整理されています。
また、生命・身体を害された被害者の損害賠償請求について、通常の財産的損害よりも長い期間を認める方向で整備されました。治療の長期化、後遺障害の判断、責任主体の特定、保険会社との協議などに時間を要することがあるためです。
民法166条、167条、724条、724条の2を対応づけます。
改正後の損害賠償の時効を理解するには、民法166条、167条、724条、724条の2を対応づけて読む必要があります。次の一覧は、どの条文がどの請求類型に関わるかを示しています。
一般債権の消滅時効です。債務不履行に基づく損害賠償では、権利行使可能と知った時から5年、権利行使可能時から10年が基本になります。
一般債権人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権では、166条1項2号の10年を20年に読み替えます。
人身損害不法行為による損害賠償請求権では、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年が基本になります。
不法行為人の生命または身体を害する不法行為では、724条1号の3年を5年に読み替えます。
3年から5年条文ごとの違いは、請求の根拠と損害の性質を組み合わせて読むと整理しやすくなります。次の表では、主観的期間と客観的期間を分けて確認できます。
| 類型 | 主観的期間 | 客観的期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 不法行為・物損など | 損害及び加害者を知った時から3年 | 不法行為の時から20年 | 2020年改正で物損まで5年になったわけではありません。 |
| 不法行為・生命身体侵害 | 損害及び加害者を知った時から5年 | 不法行為の時から20年 | 交通事故のけがや死亡事故などで問題になります。 |
| 債務不履行・一般損害 | 権利行使可能と知った時から5年 | 権利行使可能時から10年 | 旧法の感覚で10年だけを見ると危険です。 |
| 債務不履行・生命身体侵害 | 権利行使可能と知った時から5年 | 権利行使可能時から20年 | 安全配慮義務違反などで検討されます。 |
この二重構造では、主観的期間と客観的期間のいずれか早い方で時効が完成します。20年という数字だけを見て、3年や5年の主観的期間を軽視しないことが重要です。
物損、人身損害、契約違反、契約上の人身損害を分けます。
2020年改正後は、損害賠償の時効を4つの類型で考えると理解しやすくなります。次の比較一覧は、どの類型でどの期間が問題になりやすいかを示しています。
物損事故や財産的被害では、改正後も基本は損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です。
交通事故のけがや暴行による傷害などでは、主観的期間が3年から5年へ延長されました。
契約違反による経済的損害では、権利行使可能と知った時から5年、権利行使可能時から10年のいずれか早い時点を見ます。
医療契約、介護契約、施設利用契約などで生命・身体が害された場合、客観的期間が20年になる可能性があります。
不法行為・物損型では、車両修理費、代車費用、評価損、器物損壊などが問題になります。2020年改正により、これらが一律に5年へ延びたわけではありません。
不法行為・人身損害型では、治療が長引く場合、症状固定まで時間がかかる場合、後遺障害等級認定を待つ場合、保険会社との交渉が長期化する場合などに、3年から5年への延長が重要になります。
債務不履行・一般損害型では、契約違反なら10年とだけ考えるのは危険です。債権者が権利を行使できることを知っている場合、5年期間が先に到来する可能性があります。
債務不履行・人身損害型では、安全配慮義務違反、医療契約上の注意義務違反、施設管理上の義務違反などが問題になることがあります。どの構成を取るかは、証拠、契約関係、注意義務の内容、過失の立証、時効期間などを総合して検討します。
慰謝料、精神的苦痛、物損との混在を慎重に分けます。
生命・身体の侵害には、死亡、傷害、後遺障害、疾病の発症・悪化などが典型的に含まれます。交通事故による骨折、暴行による打撲、医療事故による後遺障害、労災的な事故による身体障害などは、生命・身体侵害として検討される代表例です。
ただし、慰謝料という言葉が出てくるだけで、常に生命・身体侵害になるわけではありません。次の注意点一覧は、5年や20年の特則が問題になるかを考えるうえで、誤解しやすいポイントを整理しています。
名誉毀損、プライバシー侵害、信用毀損などによる精神的苦痛の慰謝料請求が、常に生命・身体侵害に当たるとは限りません。
医学的に評価される精神疾患を発症した場合などは、健康への侵害として検討される余地がありますが、診断書、治療経過、因果関係の確認が必要です。
同じ交通事故でも、車両修理費は3年が問題になり、けがに関する治療費や慰謝料は5年が問題になることがあります。
交通事故では、車両の修理費などの物損と、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害逸失利益などの人身損害が同時に発生することがあります。この場合、事故全体で一つの時効と考えるのではなく、損害項目ごとに整理する必要があります。
後遺障害に関する損害では、症状固定日、後遺障害等級認定、損害項目ごとの発生時期などにより、実際の起算点が争われることがあります。保険会社との交渉が続いていても、時効管理は別に考える必要があります。
旧法の除斥期間論と改正後の条文整理を分けて見ます。
旧民法724条後段の不法行為の時から20年という期間について、最高裁は消滅時効ではなく除斥期間と解してきました。除斥期間とされると、援用がなくても期間経過が考慮され得る、時効の中断・停止のような制度が及びにくいといった厳しい効果が問題になります。
改正後の民法724条は、不法行為による損害賠償請求権について、20年期間も時効によって消滅すると明記しました。次の重要ポイントは、この整理の意味と限界を示しています。
20年という期間がある場合でも、多くの場面では3年または5年の主観的期間が先に問題になります。20年あるから放置できる、という理解は危険です。
改正後は、20年期間についても、時効の援用、完成猶予、更新との関係を検討しやすくなりました。ただし、2020年4月1日前に発生した不法行為では、経過措置の問題があるため、改正後の条文だけを見て判断できるとは限りません。
たとえば、交通事故で被害者が事故当日に損害と加害者を知っている場合、人身損害については5年、物損については3年が先に到来するのが通常です。不法行為から20年という数字だけで判断しないことが重要です。
交渉中、内容証明、協議合意、承認の違いを整理します。
2020年改正では、従来の時効の停止や中断という用語が整理され、完成猶予と更新という概念が用いられています。完成猶予は時効の完成を一定期間先送りする制度で、更新は進んでいた時効期間をリセットして新たに進行させる効果です。
次の判断の流れは、交渉中に時効対策として何を確認すべきかを示しています。単なる話し合いと、法律上の完成猶予・更新につながる手段は分けて理解する必要があります。
話し合いだけで時効が止まるとは限りません。
内容証明郵便などによる請求は、通常、6か月の完成猶予にとどまります。
書面等による協議合意、訴訟、調停、支払督促などの効果を確認します。
6か月内の次の手続が必要になることがあります。
承認、支払い、交渉経過を示す資料を残します。
民法147条は、裁判上の請求、支払督促、和解・調停、破産手続参加などがある場合に、時効の完成猶予や更新が生じることを定めています。期限が迫っている場合、任意交渉だけを続けるのは危険です。
民法150条の催告は、時効の完成を6か月間猶予する制度です。内容証明を送ったから時効が完全にリセットされるわけではなく、原則として6か月以内に裁判上の請求などの次の手段を検討する必要があります。
当事者間で権利について協議を行う旨の合意が、書面または電磁的記録でされた場合、一定期間、時効の完成が猶予される制度もあります。口頭で話し合いましょうと言っているだけでは足りない場合があります。
民法152条では、権利の承認があったときは時効が更新されるとされています。相手方の発言、一部支払い、支払猶予の申出などが承認に当たるかは、文書、メール、支払記録、交渉経過などの証拠と文脈で検討されます。
施行日前の事件や契約では経過措置を確認します。
2020年改正民法は、原則として2020年4月1日から施行されています。しかし、施行日前に発生した請求権や、施行日前に締結された契約に基づく請求権について、常に改正後のルールが適用されるわけではありません。
次の時系列は、経過措置で確認すべき日付の並びを示しています。事故日、契約日、債権発生日、施行日、旧法上の時効完成時期を見比べることで、旧法と新法のどちらを検討すべきかが見えます。
施行日前に生じた債権や、施行日前の法律行為に基づく債権では、旧法が適用される場面があります。
この時点で旧法上の期間が完成していない人身損害の不法行為などでは、改正後の5年期間を検討する余地があります。
施行日前の契約でも、履行期、違反発生日、損害発生日、変更契約、継続的契約の事情を慎重に見ます。
たとえば、2018年に交通事故でけがをしたケースで、2020年4月1日時点で旧法上の3年期間がまだ経過していない場合、改正後の人身損害に関する5年期間を検討する余地があります。逆に、施行日前にすでに旧法上の時効が完成している場合、改正によって当然に権利が復活するわけではありません。
債務不履行では、契約日、履行期、違反発生日、損害発生日、損害賠償請求権の発生時期が問題になります。古い事故や契約については、日付を一覧化したうえで確認することが重要です。
交通事故、契約違反、施設事故、医療、労務を例にします。
具体例では、同じ損害賠償でも時効期間が分かれることがよく分かります。次の表は、代表的な場面ごとに、どの期間が問題になりやすいかを整理したものです。
| 典型事例 | 主に問題になる請求 | 時効で確認する点 |
|---|---|---|
| 交通事故で車だけが壊れた | 不法行為による物損 | 車両修理費、代車費用、評価損などは、原則として損害及び加害者を知った時から3年が問題になります。 |
| 交通事故でけがをした | 不法行為による人身損害 | 治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害逸失利益などは5年期間が問題になります。 |
| 契約違反で経済的損害を受けた | 債務不履行による一般損害 | 権利行使可能と知った時から5年、権利行使可能時から10年のどちらが先かを見ます。 |
| 施設内事故で利用者がけがをした | 不法行為と債務不履行の双方 | 不法行為では5年と20年、債務不履行では5年と20年が問題になる可能性があります。 |
| 医療事故 | 医療契約上の責任と不法行為 | 損害、過失、因果関係、加害者の特定、診療録の内容、医学的評価が起算点にも影響します。 |
| ハラスメント・労務トラブル | 不法行為、使用者責任、安全配慮義務違反 | 精神的苦痛だけか、医学的に評価される健康侵害を伴うかで検討が変わる可能性があります。 |
医療事故では、証拠保全、診療録の開示、医学的意見の取得などに時間がかかることがあります。損害の発生、過失の存在、因果関係、加害者の特定が複雑で、いつ損害を知ったか、いつ加害者を知ったか、いつ権利を行使できることを知ったかの判断も簡単ではありません。
ハラスメント事案では、被害申告、社内調査、休職、診断書、労災申請、会社との交渉などが長期化しやすいため、時効管理を別途行う必要があります。
請求の根拠、損害の種類、日付、証拠を順番に整理します。
損害賠償の時効を検討するときは、感覚で期間を決めず、確認項目を順番に整理することが実務的です。次の判断の流れは、資料を集める前に見るべき順番を示しています。
不法行為、債務不履行、使用者責任、工作物責任、製造物責任、国家賠償などを確認します。
死亡、傷害、後遺障害、疾病、物損、経済的損失、名誉・信用・プライバシー侵害などを分けます。
事故日、契約日、損害発生日、損害を知った日、加害者を知った日、請求日、交渉日を並べます。
内容証明だけで足りるか、協議合意、訴訟、調停、支払督促などが必要かを確認します。
次の一覧は、時効判断のために確認したい日付と資料をまとめたものです。日付を時系列で並べると、起算点や完成猶予・更新の見落としを減らせます。
| 確認対象 | 具体例 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 発生に関する日付 | 事故日、事件日、契約日、履行期、納期、契約違反が発生した日 | 客観的起算点や旧法・新法の適用を考える基礎になります。 |
| 認識に関する日付 | 損害を知った日、加害者または責任主体を知った日、権利行使可能と知った日 | 主観的期間の起算点に関わります。 |
| 損害評価に関する日付 | 治療終了日、症状固定日、後遺障害等級認定日、損害額の資料がそろった日 | 損害項目ごとの発生時期や評価時期の検討に関わります。 |
| 交渉・手続に関する日付 | 請求日、内容証明郵便の発送日、相手方の回答日、支払日、協議合意日、訴訟や調停の申立日 | 完成猶予、更新、債務承認の検討に関わります。 |
| 保存すべき資料 | 契約書、請求書、領収書、診断書、事故証明、写真、メール、チャット、保険会社資料、回答書 | 起算点や時効対策の事実を説明するために重要です。 |
相手方とのやり取りは、時効の完成猶予・更新に関係する可能性があります。ただし、交渉しているだけで時効が止まるとは限りません。期限が近い場合には、内容証明、協議合意書、訴訟提起など、法的効果を意識した対応が必要です。
早めに専門家への相談を検討したい場面としては、3年、5年、10年、20年が近づいている場合、2020年4月1日前後の事故・契約で旧法と新法の関係が不明な場合、交通事故で後遺障害が残っている場合、医療事故・介護事故・学校事故・施設事故など責任原因の判断が難しい場合があります。
ほかにも、相手方や保険会社との交渉が長期化している場合、内容証明を送った後の対応が分からない場合、責任を一部認める発言が書面化されていない場合、物損と人身損害が混在している場合、時効を相手方から主張された場合は、資料を整理したうえで早期に確認することが重要です。
よくある誤解を一般情報として整理します。
一般的には、全部が5年になったわけではありません。不法行為による物損などは、原則として損害及び加害者を知った時から3年です。一方、人の生命・身体を害する不法行為では、この3年が5年に延長されました。ただし、請求の根拠、損害の種類、起算点、経過措置によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、交通事故でも物損と人身損害を分けて考える必要があります。けがに関する治療費、慰謝料、休業損害、後遺障害逸失利益などは5年期間が問題になり、車両修理費などの物損は3年期間が問題になることがあります。ただし、事故態様、損害項目、交渉経過、証拠関係によって判断が変わる可能性があります。
一般的には、単に交渉しているだけで時効が止まるとは限りません。裁判上の請求、催告、協議を行う旨の書面等による合意、債務の承認など、法律上の要件が問題になります。ただし、交渉内容や相手方の発言・支払いの有無で検討が変わる可能性があります。具体的には証拠を整理して専門家に確認する必要があります。
一般的には、内容証明による請求は催告として扱われることが多く、時効の完成が6か月猶予されるにとどまります。時効が当然にリセットされるわけではありません。ただし、文面、送付時期、その後の手続、相手方の対応によって検討が変わる可能性があります。
一般的には、時効は相手方が援用しなければ裁判所がこれに基づいて裁判をすることはできません。しかし、相手方が援用すれば、請求が認められにくくなる可能性があります。ただし、完成猶予、更新、債務承認、経過措置、起算点の争いにより、実際には時効が完成していないと主張できる場合もあります。
一般的には、精神的苦痛の慰謝料請求が常に生命・身体侵害に当たるわけではありません。名誉毀損やプライバシー侵害などでは、3年期間が問題になることがあります。ただし、医学的に評価される精神疾患の発症など健康侵害がある場合には、別途検討の余地があります。因果関係や損害の性質を慎重に確認する必要があります。
一般的には、施行日前に発生した請求権には旧法が適用される場面があります。ただし、人の生命・身体を害する不法行為では、施行日時点で旧法上の期間が完成していない場合などに、改正後の期間を検討する余地があります。具体的な適用関係は、事故日、認識日、時効完成の有無、経過措置を確認する必要があります。
一般的には、時系列表を作ることが有効です。事故日、契約日、損害発生日、損害を知った日、加害者を知った日、請求した日、相手方の回答日、支払いがあった日、示談交渉の経過などを日付順に整理します。あわせて、契約書、請求書、領収書、診断書、事故証明、写真、メール、チャット、内容証明、保険会社からの書類などを保存しておくことが重要です。
請求権単位、主観的起算点、客観的起算点を確認します。
時効は抽象的な事件単位ではなく、原則として請求権単位で問題になります。交通事故を例にすると、車両修理費、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などがあり、それぞれの性質と発生時期を意識する必要があります。
次の注意点一覧は、時効判断を深く見るときに誤解しやすい論点を整理したものです。期間だけでなく、どの事実をいつ知ったのか、いつ権利行使が可能になったのか、損害額の確定と権利行使可能性を混同していないかを読み取ることが重要です。
一つの事故から複数の請求権が発生する場合、それぞれについて時効を検討する必要があります。
不法行為では損害及び加害者を知った時、債務不履行では権利行使可能と知った時が問題になります。
債務不履行では権利行使可能時、不法行為では不法行為の時が基準になります。
損害額が完全に確定していないから時効が始まらない、と単純にはいえない場面があります。
不法行為の主観的期間では、損害及び加害者を知った時が問題になります。交通事故では比較的明確なことが多い一方、医療事故、建築紛争、環境被害、長期的な健康被害などでは、損害や加害者の認識時期が争点になり得ます。
債務不履行では、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年が進行します。契約違反の存在が明らかでも、修補交渉が続いている場合や将来損害が残る場合などには、起算点の判断が難しくなることがあります。
情報を読むときは、断定しすぎた説明に注意が必要です。時効は、条文上の期間だけでなく、起算点、完成猶予、更新、経過措置、請求権の性質によって結論が変わります。監修や執筆者の表示がある場合でも、根拠となる資料や更新状況を確認することが大切です。
分類、日付、証拠、時効対策を早めに整理します。
2020年改正後の損害賠償の時効では、分類と日付の整理がすべての出発点になります。次の重要ポイントは、このページで確認した内容を短くまとめたものです。
不法行為か債務不履行か、生命・身体侵害か財産的損害か、施行日前後の経過措置があるかを整理してから、3年、5年、10年、20年を確認します。
第1に、不法行為では民法724条・724条の2、債務不履行では民法166条・167条が中心になります。第2に、生命・身体侵害かどうかで期間が変わります。第3に、物損や財産的損害では、依然として3年期間が問題になる場面があります。
第4に、不法行為の20年期間は改正後、条文上、時効として整理されました。ただし、施行日前の事件では経過措置に注意が必要です。第5に、時効は期間だけでは判断できません。起算点、完成猶予、更新、債務承認、協議合意、催告、訴訟提起、経過措置などを総合して確認する必要があります。
損害賠償請求を検討している場合には、まだ時間があるはずと思い込まず、請求の根拠、損害の種類、重要な日付、交渉経過、証拠を整理することが重要です。時効完成が近い可能性がある場合には、早期に専門家へ相談することが権利を守るための第一歩になります。