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過失相殺とは
損害賠償額を左右する公平原則

損害賠償を請求する側にも損害の発生や拡大に関わる不注意がある場合、賠償額はどのように調整されるのでしょうか。民法の根拠、過失割合との違い、計算方法、判例、交通事故・契約トラブルでの考え方を整理します。

722条 不法行為の根拠
418条 債務不履行の根拠
5段階 判断構造
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過失相殺とは 損害賠償額を左右する公平原則

損害賠償を請求する側にも損害の発生や拡大に関わる不注意がある場合、賠償額はどのように調整されるのでしょうか。

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過失相殺とは 損害賠償額を左右する公平原則
損害賠償を請求する側にも損害の発生や拡大に関わる不注意がある場合、賠償額はどのように調整されるのでしょうか。
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  • 過失相殺とは 損害賠償額を左右する公平原則
  • 損害賠償を請求する側にも損害の発生や拡大に関わる不注意がある場合、賠償額はどのように調整されるのでしょうか。

POINT 1

  • 過失相殺とは何か ― 損害を公平に分ける制度
  • まず、過失相殺の意味と目的を押さえます。
  • 請求する側の落ち度を賠償額に反映する制度
  • そこで、どの程度を相手方に負担させ、どの程度を被害者側にも負担させるかを調整します。
  • この制度は単なる値引き交渉ではなく、損害賠償制度の中にある公平原則です。

POINT 2

  • 過失相殺とは民法722条2項と民法418条を根拠にする制度
  • 不法行為と債務不履行で、根拠条文と検討対象が変わります。
  • 不法行為における民法722条2項
  • 債務不履行における民法418条
  • 第一に、交通事故、医療事故、施設事故、名誉毀損、労災類似事故などの不法行為です。

POINT 3

  • 過失相殺とは過失割合・相殺・損益相殺と何が違うのか
  • 似た言葉を分けて理解すると、交渉や計算で混乱しにくくなります。
  • 交通事故では 過失割合と混同されやすく、契約トラブルでは民法上の相殺と混同されやすいところです。
  • また、損益相殺や素因減額も、結果として賠償額を下げる方向に働くことがあります。
  • どの言葉が制度そのものを指し、どの言葉が計算上の評価や別の控除理由を指すのかを読み分けることが重要です。

POINT 4

  • 過失相殺とは交通事故だけでなく幅広い損害賠償で問題になる
  • 交通事故、施設事故、医療・介護、労務、契約トラブルにまたがる考え方です。
  • 交通事故
  • 施設事故・店舗事故
  • 医療・介護・福祉

POINT 5

  • 過失相殺とは5段階で損害額と落ち度を整理する判断
  • 1. 第1段階 ― 損害賠償責任の発生:不法行為なら権利侵害、過失、損害、因果関係を確認します。
  • 2. 第2段階 ― 損害総額の算定:治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、修補費用、追加人件費などを整理します。
  • 3. 第3段階 ― 請求する側の過失の特定:どの時点で、どの行為について、どの注意義務を怠ったかを具体化します。
  • 4. 第4段階 ― 損害との関係:その過失が損害の発生または拡大にどの程度関係したかを検討します。
  • 5. 第5段階 ― 割合または減額幅:過失の程度、寄与度、当事者の属性、危険支配、予見・回避可能性、裁判例、証拠を総合します。

POINT 6

  • 過失相殺とは損害総額に過失割合を反映して計算する仕組み
  • 損害総額を先に整理
  • 治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、修補費用など、過失相殺前の金額を明確にします。
  • 損害項目ごとの因果関係
  • 追加開発費は認めるが逸失利益は否定するなど、項目ごとに扱いが分かれることがあります。

POINT 7

  • 過失相殺とは判例で射程と限界が具体化されている制度
  • 1. 父母の監督上の過失
  • 2. 未成年者の事理弁識能力:未成年の被害者の過失を考慮するには、責任能力までは不要で、事理を弁識するに足る知能があれば足りるとされました。
  • 3. 被害者側の過失の範囲
  • 4. 同乗者と運転者の関係
  • 5. 疾患と身体的特徴の区別
  • 6. 基礎疾患と業務上の過重負荷:業務上の過重負荷と基礎疾患が共に原因となった死亡事案で、民法722条2項類推適用の可否が問題になりました。

POINT 8

  • 交通事故の過失相殺とは保険会社の提示だけで確定しない
  • 道路交通法上の優先関係
  • 信号、一時停止、優先道路、横断歩道など、交通ルール上の優先関係が出発点になります。
  • 予見・回避可能性
  • 事故を予見できたか、危険を避ける行動が可能だったかが検討されます。

まとめ

  • 過失相殺とは 損害賠償額を左右する公平原則
  • 過失相殺とは何か ― 損害を公平に分ける制度:まず、過失相殺の意味と目的を押さえます。
  • 過失相殺とは民法722条2項と民法418条を根拠にする制度:不法行為と債務不履行で、根拠条文と検討対象が変わります。
  • 過失相殺とは過失割合・相殺・損益相殺と何が違うのか:似た言葉を分けて理解すると、交渉や計算で混乱しにくくなります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

過失相殺とは何か ― 損害を公平に分ける制度

まず、過失相殺の意味と目的を押さえます。

過失相殺とは、損害賠償を請求する側にも損害の発生や拡大について不注意・落ち度がある場合に、その事情を考慮して相手方が負担する損害賠償額を調整する制度です。

たとえば交通事故で、相手車両に重大な前方不注視があっても、請求する側に赤信号無視、著しい速度超過、急な飛び出し、安全確認不足などがあれば、損害の全額を相手方だけに負担させることが公平とは限りません。そこで、どの程度を相手方に負担させ、どの程度を被害者側にも負担させるかを調整します。

この制度は単なる値引き交渉ではなく、損害賠償制度の中にある公平原則です。被害者保護だけでなく、加害者・債務者に過大な負担をさせないという観点も含みます。

次の強調部分は、過失相殺の中心にある考え方を表しています。制度の目的を先に理解しておくと、過失割合や計算式だけを見て結論を急がず、損害額・証拠・寄与度を合わせて検討する必要性を読み取れます。

請求する側の落ち度を賠償額に反映する制度

過失相殺とは、損害が起きたことについて請求する側にも注意義務違反がある場合に、その関与の程度を損害賠償額へ反映させる仕組みです。

ただし、ここでいう落ち度は、日常語の道徳的非難そのものではありません。法律上は、その場面で通常求められる注意義務を果たしたか、損害の発生・拡大にどの程度寄与したかという客観的な観点から判断されます。

注意このページは一般的な法律情報を整理するものです。事故、契約、労務、医療・介護、建築、不動産、保険を含む個別案件では、事実関係と証拠によって結論が変わります。
Section 02

過失相殺とは過失割合・相殺・損益相殺と何が違うのか

似た言葉を分けて理解すると、交渉や計算で混乱しにくくなります。

交通事故では過失割合と混同されやすく、契約トラブルでは民法上の相殺と混同されやすいところです。また、損益相殺や素因減額も、結果として賠償額を下げる方向に働くことがあります。

次の比較表は、似た用語の役割と根拠の違いを整理したものです。どの言葉が制度そのものを指し、どの言葉が計算上の評価や別の控除理由を指すのかを読み分けることが重要です。

用語意味過失相殺との関係
過失相殺請求する側の過失を考慮して、損害賠償額を調整する制度です。制度そのものです。
過失割合当事者双方の落ち度を数字で表したものです。過失相殺を金額へ反映するための評価数値です。
民法上の相殺互いに同種の債権を持つ場合に、対当額で債務を消滅させる制度です。互いの債権を前提にするため、過失相殺とは法的性質が異なります。
損益相殺同じ原因から利益も得た場合、その利益を損害額から控除する考え方です。過失ではなく、損害と同一原因から生じた利益を理由に控除します。
素因減額既存疾患や心因的要因が損害の発生・拡大に寄与した場合に考慮される考え方です。過失ではありませんが、民法722条2項の類推適用として論じられることがあります。

たとえば「相手方90%、こちら10%」という数字は過失割合です。その割合を使って損害額を減額する処理が過失相殺です。過失割合は、過失相殺を実行するための道具であって、制度そのものではありません。

素因減額では、被害者の疾患が損害の発生に関与し、加害者に全損害を負担させるのが公平を失する場合に、疾患を考慮できるとした最高裁判例があります。一方で、疾患に当たらない単なる身体的特徴は、特段の事情がない限り考慮できないとされています。

Section 03

過失相殺とは交通事故だけでなく幅広い損害賠償で問題になる

交通事故、施設事故、医療・介護、労務、契約トラブルにまたがる考え方です。

過失相殺は交通事故でよく知られていますが、損害賠償が問題になる多くの分野で登場します。分野ごとに、誰にどの注意義務があり、どの行動が損害の発生・拡大に関係したかが変わります。

次の一覧は、過失相殺が問題になりやすい場面を並べたものです。分野ごとの違いを把握すると、自分の問題で何の資料や事実を確認すべきかを読み取りやすくなります。

Traffic

交通事故

車対車、車対歩行者、自転車、バイク、非接触事故、駐車場事故などで、信号、速度、安全確認、道路状況、交通弱者保護などが検討されます。

Facility

施設事故・店舗事故

店舗内の転倒、マンション共用部、スポーツ施設、駅・商業施設などで、管理側の安全配慮と利用者側の注意義務が問題になります。

Medical

医療・介護・福祉

説明義務、管理体制、患者・利用者側の情報提供や受診時期が問題になります。ただし専門性や立場の弱さも踏まえる必要があります。

Labor

労務・安全配慮義務

過重労働、ハラスメント、職場事故などで、会社側の管理体制と従業員側の事情が損害にどの程度関与したかが争われる場合があります。

Contract

契約トラブル

売買、請負、賃貸借、業務委託、システム開発、建築、不動産取引などで、協力不足、通知遅延、損害拡大防止措置が問題になります。

重要医療・介護や労務の領域では、専門性や当事者の立場の差が大きく影響します。単純に「指示に従わなかったから減額」と機械的に考えるのは適切ではありません。
Section 04

過失相殺とは5段階で損害額と落ち度を整理する判断

責任、損害総額、過失、寄与度、割合の順に検討します。

過失相殺は、感覚だけで決まるものではありません。実務では、相手方の責任を確認し、損害額を整理し、請求する側の過失と損害との関係を検討したうえで、割合または減額幅を判断します。

次の判断の流れは、過失相殺を検討する順番を表しています。先に損害総額を整理しないまま割合だけを争うと、最終的な賠償額が見えにくいため、上から下へ順に確認することが重要です。

過失相殺を検討する順番

第1段階 ― 損害賠償責任の発生

不法行為なら権利侵害、過失、損害、因果関係を確認します。契約責任なら義務違反、損害、因果関係を確認します。

第2段階 ― 損害総額の算定

治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、修補費用、追加人件費などを整理します。

第3段階 ― 請求する側の過失の特定

どの時点で、どの行為について、どの注意義務を怠ったかを具体化します。

第4段階 ― 損害との関係

その過失が損害の発生または拡大にどの程度関係したかを検討します。

第5段階 ― 割合または減額幅

過失の程度、寄与度、当事者の属性、危険支配、予見・回避可能性、裁判例、証拠を総合します。

交通事故では、信号、速度、一時停止、安全確認、進路変更、車間距離、夜間のライト、歩行者の横断態様などが問題になります。契約トラブルでは、情報提供、検収、指示、協力、通知、損害拡大防止措置などが問題になります。

契約トラブルでは、過失割合を明確な百分率で表すよりも、損害項目ごとに因果関係や責任範囲を調整する形になることもあります。

Section 05

過失相殺とは損害総額に過失割合を反映して計算する仕組み

基本式と交通事故・契約トラブルの具体例を確認します。

過失相殺の基本的な計算は、過失相殺前の損害総額に、請求する側の過失割合を反映させる形で考えます。

基本式過失相殺後の賠償額 = 損害総額 ×(1 − 被害者側または債権者側の過失割合)

次の比較表は、原則的な計算例を金額で示したものです。計算式だけでなく、既払金、保険金、損害項目ごとの因果関係が後で加わる点を読み取ることが重要です。

場面前提計算調整後の目安
基本例損害総額1,000万円、請求する側の過失20%1,000万円 ×(1 − 0.20)800万円
交通事故損害総額500万円、被害者側の過失10%500万円 × 90%450万円
契約トラブルシステム開発契約で1,000万円の損害、発注者側の協力不足が30%寄与1,000万円 × 70%700万円

もっとも、実務ではここから既払金、保険金、労災給付、治療費の直接払い、物損と人損の区別、遅延損害金、弁護士費用相当額などが絡むことがあります。最終受領額は、単純な過失割合だけでは決まりません。

次の一覧は、計算前後に確認すべき項目をまとめたものです。割合の交渉だけに引きずられず、損害額の立証や保険金との関係も合わせて読む必要があります。

損害総額を先に整理

治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、修補費用など、過失相殺前の金額を明確にします。

損害項目ごとの因果関係

追加開発費は認めるが逸失利益は否定するなど、項目ごとに扱いが分かれることがあります。

既払金や保険金

自賠責、任意保険、労災給付、治療費の直接払いなどとの関係を確認します。

人損と物損の違い

人身損害と物的損害で、過失割合や処理が異なる説明を受ける場合があります。

示談書への署名

署名後は後から争いにくくなるため、過失割合、損害総額、清算条項を確認します。

Section 06

過失相殺とは判例で射程と限界が具体化されている制度

未成年者、被害者側の過失、同乗者、疾患・素因、基礎疾患の論点を整理します。

過失相殺は、条文だけで完結する制度ではありません。最高裁判例により、未成年者に必要な能力、誰の過失を被害者側に帰せられるか、疾患や身体的特徴をどう扱うかが具体化されています。

次の時系列は、過失相殺に関する主要な判例の流れを示しています。年代順に見ることで、被害者本人の過失から、家族・生活上一体の者、疾患・素因、労務上の基礎疾患へと論点が広がっていることを読み取れます。

昭和34年

父母の監督上の過失

幼児の生命侵害に関する慰謝料請求で、父母の一方に監督上の過失がある場合、父母双方について民法722条2項の適用があるとされました。

昭和39年

未成年者の事理弁識能力

未成年の被害者の過失を考慮するには、責任能力までは不要で、事理を弁識するに足る知能があれば足りるとされました。

昭和42年

被害者側の過失の範囲

幼児と身分上または生活関係上一体とみられる者の過失が問題になる一方、保育園の保母の過失はその事案では被害者の過失に当たらないとされました。

昭和51年

同乗者と運転者の関係

夫の運転する自動車に同乗していた妻が損害を受けた事案で、特段の事情がない限り、夫の過失を被害者の過失として考慮できるとされました。

平成4年・平成8年

疾患と身体的特徴の区別

既存疾患は公平の観点から考慮される場合がありますが、疾患に当たらない単なる身体的特徴は原則として安易に減額理由にできないとされました。

平成20年

基礎疾患と業務上の過重負荷

業務上の過重負荷と基礎疾患が共に原因となった死亡事案で、民法722条2項類推適用の可否が問題になりました。

判例法理では、年齢だけ、家族という肩書だけ、持病という一語だけで結論を決めません。具体的な生活関係、支配可能性、事故態様、疾患の態様・程度、損害との関係を丁寧に見る必要があります。

線引き同居親族や配偶者など生活上一体性のある者の過失が問題になりやすい一方、単なる第三者や被害者と一体性を欠く者の過失を当然に被害者へ帰すことはできません。
Section 07

交通事故の過失相殺とは保険会社の提示だけで確定しない

事故類型、修正要素、証拠、自賠責の制度差を分けて確認します。

交通事故では、保険会社から「あなたにも10%の過失があります」と言われて初めて、過失相殺という言葉を知る人も少なくありません。しかし、交通事故の過失割合は、最終的には当事者間の合意または裁判所の判断によって確定します。保険会社の提示は重要な交渉材料ですが、それ自体が絶対的な結論ではありません。

次の一覧は、交通事故の過失割合で修正要素になりやすい事情を整理したものです。基本割合だけでなく、証拠と照らしてどの事情が加味されたのかを読むことが重要です。

道路交通法上の優先関係

信号、一時停止、優先道路、横断歩道など、交通ルール上の優先関係が出発点になります。

予見・回避可能性

事故を予見できたか、危険を避ける行動が可能だったかが検討されます。

交通弱者保護

歩行者、児童、高齢者、自転車などの属性が、過失割合の修正に関わることがあります。

著しい過失・重過失

著しい速度超過、酒気帯び、スマートフォン操作など、危険性の高い行動が問題になります。

客観的な証拠

ドライブレコーダー、実況見分調書、事故現場図、信号サイクル、車両損傷状況が重要です。

自賠責保険と過失相殺

自賠責保険・共済では、通常の民事賠償と同じ過失相殺が常にそのまま行われるわけではありません。被害者に重大な過失がある場合や、受傷と死亡・後遺障害との因果関係判断が困難な場合に減額が行われると説明されています。

つまり、任意保険や民事訴訟上の過失相殺と、自賠責保険の支払基準上の減額は、制度趣旨と処理が異なる場合があります。保険会社の説明を聞くときは、民事上の過失割合の話なのか、自賠責の重過失減額の話なのかを区別する必要があります。

0対100にこだわる前に見るべきこと

追突事故、信号無視、センターラインオーバーなど、一方の過失が大きい類型でも、具体的事情によって修正されることがあります。逆に、保険会社が10%や20%の過失を主張していても、証拠上その修正が不合理であれば争う余地があります。重要なのは、感情としての納得ではなく、法的・証拠的にその割合を説明できるかです。

Section 08

契約トラブルの過失相殺とは協力義務や損害拡大防止を問う考え方

企業法務では契約書の作り方、初動、記録化が大きく影響します。

過失相殺は、一般消費者の交通事故だけでなく、企業間取引でも重要です。企業法務では、過失相殺を理解しているかどうかで、契約書の作り方、トラブル時の初動、交渉戦略が変わります。

次の一覧は、契約トラブルで過失相殺が問題になりやすい取引類型を整理したものです。どの取引でも、相手方の義務違反だけでなく、請求する側の協力・通知・損害拡大防止の記録を確認することが重要です。

システム開発契約

受注者の納期遅延や品質不良が問題になる一方、発注者側の仕様未確定、仕様変更、資料提供遅延、検収遅延、意思決定の停滞も検討されます。

仕様資料提出

建築・請負契約

施工ミス、工期遅延、設計不備、追加変更、現場管理、注文者の指示が複雑に絡みます。不適切な指示や承認遅延が問題になることがあります。

承認現場条件

売買・賃貸借・不動産取引

買主側の検査遅延、通知遅延、損害拡大防止措置、借主側の使用方法や管理状況が、損害額の調整に関わることがあります。

通知管理状況

契約書と運用

協力義務、情報提供義務、検収期限、通知義務、責任制限条項、仕様変更手続、議事録承認手続を明確にしておくと、後の紛争で事実を判断しやすくなります。

記録化責任範囲

契約実務では、過失相殺を争う前に、過失相殺の前提となる事実を記録化できる契約運用を整えることが重要です。議事録、課題管理表、仕様変更履歴、メール、チャット、納品物、検収記録、会議体の決裁履歴などが、後の判断を左右します。

Section 09

過失相殺とは証拠と時系列で争う論点

交通事故と契約トラブルで、集めるべき資料を分けて整理します。

過失相殺の争いは、最終的には証拠の争いです。どれだけ理論的に正しい主張でも、証拠がなければ交渉や裁判で通りにくくなります。

次の比較表は、交通事故と契約トラブルで集めるべき資料を整理したものです。分野ごとに必要な証拠が異なるため、自分の場面で早期に確保すべき資料を読み取ることが重要です。

分野主な資料特に注意する点
交通事故交通事故証明書、実況見分調書、物件事故報告書、事故現場図、ドライブレコーダー、防犯カメラ、車両損傷写真、現場写真、道路標識、信号、道路幅、目撃者情報、修理見積書、診断書、通院記録、保険会社とのメール・書面・録音メモドライブレコーダーや防犯カメラは保存期間が短いことがあるため、早期確保が重要です。
契約トラブル契約書、注文書、発注書、仕様書、見積書、提案書、要件定義書、議事録、課題管理表、変更履歴、メール、チャット、社内稟議、承認記録、納品物、検収書、不具合一覧、請求書、支払記録、損害額を示す資料、損害拡大防止の対応記録「言った・言わない」ではなく、時系列で誰がいつ何をすべきだったかを整理します。

次の判断の流れは、過失相殺を争うときの主張整理の順番を示しています。相手方の提示数字だけを見るのではなく、責任原因、損害額、過失の有無、寄与度、修正要素、既払金の処理まで順に確認することが重要です。

主張を整理する順番

1. 相手方の責任原因

事故類型、契約上の義務違反、注意義務違反を確認します。

2. 損害総額

請求の土台となる損害項目と金額を整理します。

3. こちら側の過失の有無

相手方が主張する過失が本当に存在するかを証拠で確認します。

4. 損害への関係

存在するとして、損害発生・拡大にどの程度関係したかを検討します。

5. 割合・修正・既払金

事故類型、裁判例、証拠、修正要素、保険金や既払金の処理を整理します。

Section 10

過失相殺とは早期相談で見通しが変わり得る争点

過失割合が賠償額に大きく影響する場合は、資料整理と相談準備が重要です。

過失相殺は、一般の人が自力で判断するには難しい領域です。特に、過失割合が賠償額に大きく影響する場合は、早めに弁護士等へ相談する価値があります。

次の一覧は、専門家への相談を検討しやすい典型場面をまとめたものです。損害額、証拠の有無、示談の時期、保険や労災の関係を見ながら、どの時点で相談すべきかを読み取ってください。

提示割合に納得できない

保険会社の提示する過失割合に疑問がある、0対100を主張したい、または相手から大きな過失を主張されている場合です。

損害額が大きい

後遺障害死亡事故、長期通院、契約トラブルの高額損害などでは、わずかな割合差が大きな金額差になります。

証拠の読み方が難しい

ドライブレコーダー、実況見分調書、契約書、メール、課題管理表などの読み解きが争点になる場合です。

複数制度が絡む

自賠責、任意保険、労災、健康保険、物損と人損の違いなどが絡むと、計算が複雑になります。

示談書への署名を迫られている

一度合意すると後から争いにくくなるため、署名前に過失割合、損害額、清算条項を確認する必要があります。

相談時に確認したい質問

  • この過失割合は、どの事故類型・裁判例を前提にしているのか
  • 相手方の提示割合に対する反論材料はあるのか
  • 修正要素として主張できる事実は何か
  • 追加で集めるべき証拠は何か
  • 損害額と過失割合を合わせた場合、現実的な回収見込みはいくらか
  • 示談した場合と裁判した場合のメリット・デメリットは何か
  • 弁護士費用特約を使えるか
  • 契約トラブルの場合、こちら側の協力義務違反として評価されるリスクはあるか

弁護士を選ぶ際は、単に「勝てるか」と聞くよりも、争点整理、証拠評価、過失割合の見通し、費用倒れの可能性、解決までの期間を具体的に説明してくれるかを確認するとよいでしょう。

FAQ

過失相殺とは何かに関するよくある質問

一般的な制度説明として、よくある疑問を整理します。

Q1. 過失相殺とは何ですか。

一般的には、損害賠償を請求する側にも損害の発生または拡大について過失がある場合に、その過失を考慮して賠償額を調整する制度とされています。ただし、事故態様、契約関係、証拠、損害項目によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 過失割合と過失相殺は同じですか。

一般的には、同じではないとされています。過失相殺は賠償額を調整する制度であり、過失割合はその調整を行うために当事者双方の落ち度を数字で表したものです。ただし、交通事故実務では両者が一体の話として説明されることがあります。

Q3. 少しでもこちらに過失があると、損害賠償は認められませんか。

一般的には、少しでも過失があるだけで請求全体が否定されるとは限らないとされています。多くの場合は、その過失の程度に応じて賠償額が調整されます。ただし、こちら側の過失が非常に大きい場合や損害との関係が強い場合には、回収額が大きく下がる可能性があります。

Q4. 保険会社が提示した過失割合は絶対ですか。

一般的には、保険会社の提示は交渉上の見解であり、絶対的な結論ではないとされています。ただし、事故類型、証拠、修正要素、裁判例との整合性によって評価は変わります。具体的には、根拠資料を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q5. 子どもが被害者の場合にも過失相殺されますか。

一般的には、未成年者本人の過失を考慮するには責任能力までは不要で、事理弁識能力があれば足りるとした判例があります。ただし、年齢、理解能力、事故態様、監督義務者との関係によって判断が変わる可能性があります。

Q6. 家族の過失が本人の損害賠償に影響することはありますか。

一般的には、被害者と身分上または生活関係上一体とみられる者の過失が、被害者側の過失として考慮される場合があります。ただし、誰の過失でも当然に本人へ帰せられるわけではなく、関係性や事故態様によって結論が変わります。

Q7. 持病があると損害賠償額は減りますか。

一般的には、既存疾患が損害の発生・拡大に関与し、相手方に全損害を負担させるのが公平を失する場合には、減額が問題になることがあります。一方、単なる身体的特徴や個体差は、原則として安易に減額理由にはできないとされています。

Q8. 契約違反でも過失相殺はありますか。

一般的には、債務不履行に関する民法418条により、債権者側の過失が債務不履行や損害の発生・拡大に関係している場合、責任や賠償額が調整されることがあります。ただし、契約内容、協力義務、通知義務、証拠関係によって判断が変わります。

Q9. 示談前に注意すべきことは何ですか。

一般的には、示談書に署名すると後から争いにくくなるため、過失割合、損害総額、後遺障害、既払金、保険金、今後の治療見込み、清算条項を確認する必要があるとされています。疑問がある場合は、署名前に資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q10. 弁護士に相談するタイミングはいつがよいですか。

一般的には、証拠の保存期間が短い交通事故、損害額が大きい事件、後遺障害が問題になる事件、契約書やメールの解釈が争点になる事件では、早い段階で相談する意義があるとされています。ただし、相談の必要性や優先順位は事案ごとに異なります。

Conclusion

過失相殺とは数字だけでなく根拠と証拠を見るべき論点

損害額、寄与度、判例、証拠を合わせて検討します。

過失相殺とは、損害賠償をめぐる公平原則を具体化する制度です。交通事故では過失割合という形で身近に現れますが、契約トラブル、施設事故、医療・介護、労務、企業間紛争など幅広い場面で問題になります。

重要なのは、過失相殺を「被害者にも悪いところがあるから減額する」という単純な話で終わらせないことです。法的には、相手方の責任、損害総額、請求する側の注意義務違反、損害発生・拡大への寄与、証拠、判例、実務基準を総合して判断する必要があります。

保険会社や相手方から提示された過失割合に納得できない場合、または契約トラブルで自社・自分の過失を主張されている場合は、数字だけを見て判断せず、根拠と証拠を確認することが大切です。過失相殺は、適切に争えば賠償額を大きく左右する一方、準備不足のまま示談すると後戻りが難しい論点です。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関、裁判所、公益的機関の情報を中心に整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」
  • 国土交通省「損害賠償を受けるときは?」

裁判例

  • 最高裁判所大法廷昭和39年6月24日判決
  • 最高裁判所第一小法廷昭和34年11月26日判決
  • 最高裁判所第三小法廷昭和42年6月27日判決
  • 最高裁判所第一小法廷昭和51年3月25日判決
  • 最高裁判所第一小法廷平成4年6月25日判決
  • 最高裁判所第三小法廷平成8年10月29日判決
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