2σ Guide

特許権侵害で訴えられた場合の
初動対応

訴状が届いた直後に何を確認し、どの資料を守り、誰とどの順番で動くべきかを、企業法務・知財・技術・広報の観点から整理します。

5つ 最初の中核対応
20年 原則の存続期間
3段階 当日・1週間・答弁前
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特許権侵害で訴えられた場合の 初動対応

訴状が届いた直後に何を確認し、どの資料を守り、誰とどの順番で動くべきかを、企業法務 ・知財・技術・広報の観点から整理します。

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特許権侵害で訴えられた場合の 初動対応
訴状が届いた直後に何を確認し、どの資料を守り、誰とどの順番で動くべきかを、企業法務 ・知財・技術・広報の観点から整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 特許権侵害で訴えられた場合の 初動対応
  • 訴状が届いた直後に何を確認し、どの資料を守り、誰とどの順番で動くべきかを、企業法務 ・知財・技術・広報の観点から整理します。

POINT 1

  • 特許権侵害で訴えられた場合の初動対応の全体像
  • 訴訟対応は、期限・証拠・技術・事業・広報を同時に管理する危機対応です。
  • 初動対応の中心は、裁判手続と事業継続を同時に守ることです
  • 期限を確認する
  • 証拠を消さない

POINT 2

  • 特許権侵害の基本と訴訟段階で変わる緊急度
  • 権利範囲、実施行為、直接侵害・間接侵害、警告書と訴訟の違いを先に整理します。
  • 特許請求の範囲
  • 直接侵害
  • 間接侵害

POINT 3

  • 特許権侵害で訴えられた当日に守る期限・証拠・発言管理
  • 1. 訴状・対象製品・関係部署を確認:争点に関係し得るシステムやアカウントを洗い出します。
  • 2. 自動削除・保存期間満了・ログ上書きがあるか確認:チャット、クラウド、開発管理、販売管理、CRM、ERP、メールアーカイブ、監視ログを確認します。
  • 3. 削除停止と保全範囲を指示:退職者アカウントの消去やバックアップ上書きも管理します。
  • 4. 保存状態を記録:後日の説明に備え、保存場所と担当者を明確にします。

POINT 4

  • 特許権侵害訴訟の訴状を読み初動対応チームを作る
  • 訴状の読み方、社内チーム、弁護士・弁理士へ渡す資料を整理します。
  • 訴状は、相手が裁判所に何を求め、何を根拠にしているかを整理した文書です。
  • 読者は、請求内容、対象特許、対象製品、証拠の出どころを切り分けて読み取ってください。
  • 次の役割表は、初動対応チームに必要な担当を表しています。

POINT 5

  • 特許権侵害の初動対応で作る構成要件対比表
  • 1. 請求項を構成要件に分ける:特許請求の範囲の文言を一つずつ区切ります。
  • 2. 自社製品・方法が各要件を満たすか確認:仕様書、実機、試験データ、ソースコード、工程資料で確認します。
  • 3. 非充足・用語解釈を検討:明細書、図面、審査経過、技術常識を踏まえて説明します。
  • 4. 均等侵害の主張に注意:本質的部分、作用効果、置換容易性、出願経過上の除外などを確認します。

POINT 6

  • 特許権侵害で訴えられた場合の反論候補と答弁書対応
  • 1. 請求を争うかを決める:少なくとも請求を争う意思、認否の方針、詳細な反論を追って行う旨を明確にする必要があります。
  • 2. 認否と反論の範囲を調整する:安易に知らない、否認するとだけ書くのではなく、後の主張、裁判所への印象、相手への情報開示の程度を踏まえます。
  • 3. 専門家と方針を確認する:初回ですべての技術的反論や無効理由を出し切れない場合でも、手続上の期限と主張の整合性を確認します。

POINT 7

  • 特許権侵害訴訟の損害論・差止め・証拠開示への備え
  • 1. 対象製品の事業影響を把握:主力商品か、顧客契約やサプライチェーンに影響するかを確認します。
  • 2. 仮処分の可能性を確認:通常訴訟の判決を待たずに販売停止などを求められる可能性を検討します。
  • 3. 代替設計・販売停止案を準備:一部機能停止、設計変更品への切替え、在庫停止、特定顧客向け対応を検討します。
  • 4. 争点整理と交渉余地を確認:ライセンス、和解、将来製品への影響を検討します。

POINT 8

  • 特許権侵害で訴えられた後の広報・顧客対応と和解検討
  • 言ってよいこと
  • 会社として確認済みの事実、供給方針、問い合わせ窓口など、法務・広報が承認した範囲に限定します。
  • 避けるべきこと
  • 絶対に侵害していない、相手の特許は無効であるなど、裁判所の判断を先取りする表現は避けます。

まとめ

  • 特許権侵害で訴えられた場合の 初動対応
  • 特許権侵害で訴えられた場合の初動対応の全体像:訴訟対応は、期限・証拠・技術・事業・広報を同時に管理する危機対応です。
  • 特許権侵害の基本と訴訟段階で変わる緊急度:権利範囲、実施行為、直接侵害・間接侵害、警告書と訴訟の違いを先に整理します。
  • 特許権侵害で訴えられた当日に守る期限・証拠・発言管理:到着日時の記録、社内共有範囲、証拠保全、電子データの管理を最優先で行います。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

特許権侵害で訴えられた場合の初動対応の全体像

訴訟対応は、期限・証拠・技術・事業・広報を同時に管理する危機対応です。

特許権侵害で訴えられた場合の初動対応は、訴状を読んで専門家へ連絡するだけでは足りません。特許訴訟では、法律判断、技術判断、事業判断、証拠管理、取引先対応、広報対応がほぼ同時に動きます。特許訴訟は東京地方裁判所・大阪地方裁判所などの専門部で扱われることが多く、最初の数日から数週間の対応を誤ると、裁判上の不利益だけでなく、製品販売、顧客信用、資金繰り、研究開発、ライセンス交渉にも影響が及びます。

このページは、一般的な情報提供として、訴状到着直後に把握すべき事項、守るべき資料、専門家へ相談する前の準備、侵害論・無効論・損害論・広報対応の考え方を整理します。個別事件の結論や代理方針は、資料を整理したうえで弁護士・弁理士などの専門家に確認する必要があります。

次の重要ポイントは、特許権侵害で訴えられた直後に同時並行で管理すべき中核事項を表しています。読者にとって重要なのは、どれか一つだけを処理するのではなく、期限管理、証拠保全、発言管理、特許と製品の照合、専門家相談を同じ情報基盤で進める必要がある点を読み取ることです。

初動対応の中心は、裁判手続と事業継続を同時に守ることです

答弁書期限を落とさず、関連資料を消さず、社内外の発言を統制し、特許請求の範囲と自社製品を対応づけ、早期に専門家へ相談することが出発点になります。

次の一覧は、初動で必ず分けて考える五つの対応領域を表しています。なぜ重要かというと、特許訴訟では技術的な反論だけでは足りず、期限、証拠、社外説明、会計資料まで後の主張と整合させる必要があるためです。各項目から、自社で今すぐ止める作業と、早めに集める資料を読み取ってください。

Deadline

期限を確認する

訴状、呼出状、答弁書催告状、裁判所からの連絡書面を確認し、答弁書提出期限、第一回口頭弁論期日、担当裁判所、事件番号を正確に記録します。

Evidence

証拠を消さない

メール、設計図、仕様書、試験データ、製造記録、売上資料、契約書、議事録、チャット、クラウド上のファイルを保全します。

Message

発言を一本化する

原告、取引先、報道機関、顧客、投資家、SNSへの不用意な説明を避け、法務・経営・広報の指定窓口に集約します。

Claim

特許と製品を照合する

特許請求の範囲と自社製品・方法の構成を一つずつ比較し、争点を見える形にします。一般に構成要件対比表などと呼ばれます。

Team

専門家へ早期に相談する

特許訴訟は民事訴訟、特許法、技術、会計、事業判断が交差するため、弁護士・弁理士・社内技術者・会計担当・広報担当を早期につなぎます。

Section 01

特許権侵害の基本と訴訟段階で変わる緊急度

権利範囲、実施行為、直接侵害・間接侵害、警告書と訴訟の違いを先に整理します。

特許権とは、特許庁で登録された発明について、特許権者が業として独占的に実施できる権利です。発明は、特許法上、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものと定義されます。特許権は出願だけで発生するのではなく、設定登録によって発生します。

特許法でいう実施は、日常語の使うより広い概念です。物の発明では製造、使用、譲渡、輸出、輸入、譲渡の申出などが含まれます。方法の発明では、その方法を使用する行為が問題となり、物を生産する方法の発明では、その方法で作られた物の使用・譲渡なども問題になります。

次の一覧は、特許権侵害の判断で最初に確認する用語と役割を表しています。用語の意味を取り違えると、似ているかどうかという感覚的な判断に流れやすいため重要です。読者は、侵害判断の出発点が特許請求の範囲であり、明細書や図面は請求項の意味を解釈する資料として使われる点を読み取ってください。

Scope

特許請求の範囲

特許権の権利範囲を画する中心的な文書です。侵害判断では、請求項の構成要件を自社製品・方法が満たすかを分析します。

Direct

直接侵害

特許発明の構成要件を満たす製品や方法を、権限なく業として実施する典型的な侵害です。

Indirect

間接侵害

特許発明そのものを直接実施していなくても、専用品などを製造・販売する行為が侵害とみなされる場合があります。

次の比較表は、警告書段階と訴訟段階の違いを表しています。両者を分けることが重要なのは、訴えられた後は裁判所の期限が現実に進むため、交渉だけではなく手続対応が必要になるからです。列ごとに、目的、期限、主な作業、放置した場合のリスクを確認してください。

段階中心になる目的主な作業注意点
警告書・通知書相手の主張を検証し、交渉方針を立てる特許・対象製品・ライセンス提案・回答期限を確認する不用意な回答や侵害を認める表現を避ける
訴えられた場合裁判手続上の期限を守り、争点形成と証拠保全を進める答弁書期限、第一回期日、訴状の請求内容、証拠を確認する対応しないと、主張を争わない扱いや不利な手続進行のリスクがある

次の比較一覧は、特許訴訟の審理で意識すべき大きな局面を表しています。初動段階でこの分かれ方を知ることが重要なのは、損害額だけを先に議論しても、侵害の有無や特許の有効性が整理されなければ方針が定まりにくいからです。各項目から、最初に集める技術資料と、後で必要になる会計資料を分けて読み取ってください。

1

侵害論

被告製品・方法が特許発明の技術的範囲に属するか、対象製品がどこまでか、特許が有効かを審理します。

技術資料
2

損害論

侵害が認められる方向になった場合、販売数量、利益、相当実施料額などを踏まえて損害額を審理します。

会計資料
3

技術説明

裁判所が技術内容を理解するため、技術説明会や専門委員が関与する場合があります。

説明準備
Section 02

特許権侵害で訴えられた当日に守る期限・証拠・発言管理

到着日時の記録、社内共有範囲、証拠保全、電子データの管理を最優先で行います。

訴状が届いたら、封筒、送達報告、裁判所からの書面を保存し、到着日時、受領者、受領場所を記録します。送達日は、その後の手続管理に関係します。訴状は重要文書ですが、社内で無制限に転送するのではなく、必要な範囲に限定して共有します。

次の確認表は、訴状到着直後に一覧化すべき裁判関係情報を表しています。この表が重要なのは、期限や対象製品の誤認が後の対応全体をずらしてしまうためです。読者は、裁判所書面に基づく情報と、訴状に記載された請求・対象特許・対象製品を分けて記録する点を読み取ってください。

確認項目内容
事件番号裁判所書面に記載された番号
裁判所東京地方裁判所、大阪地方裁判所など
原告特許権者、専用実施権者など
被告自社名、グループ会社名、代表者表示
請求内容差止め、廃棄、損害賠償、謝罪広告など
対象特許特許番号、請求項番号
対象製品・方法訴状で特定された製品、サービス、工程
答弁書期限裁判所の書面に記載された期限
第一回期日日時、場所、出頭方法

次の注意点一覧は、訴状を社内外に共有する場面で管理すべき情報を表しています。重要なのは、訴訟方針や技術上の弱点、過去の設計経緯などが不用意に拡散すると、後の説明や証拠管理に影響する点です。どの情報を誰が何の目的で知る必要があるかを読み取ってください。

共有範囲

技術、営業、経営層に共有が必要な場合でも、訴訟対応に不要な者へ広く転送することは避けます。

相談内容

弁護士との相談内容、主張方針、弱点分析は、慎重に管理すべき情報です。

社外発言

原告、取引先、報道機関、顧客、投資家、SNSへの説明は、指定窓口に集約します。

次の一覧は、訴えられた時点で保全すべき資料群を表しています。なぜ重要かというと、不利に見える資料だけでなく、有利な資料も散逸すると、先使用権、非侵害、無効理由、ライセンス、消尽、設計変更の経緯を後から説明しにくくなるためです。紙資料と電子データの両方を対象にする点を読み取ってください。

製品・技術資料

仕様書、設計図、回路図、CADデータ、研究開発ノート、実験記録、試験データ、ソースコード、リポジトリ、コミット履歴を保全します。

技術

製造・品質資料

製造工程表、作業標準書、品質管理記録、原材料・部品の購入記録、仕入先資料を確認します。

工程

取引・会計資料

契約書、注文書、納品書、売上台帳、請求書、在庫資料、利益資料を保全します。

取引

連絡・公表資料

メール、チャット、議事録、稟議書、過去の特許調査、広告、カタログ、ウェブページ、展示会資料を残します。

発言

次の判断の流れは、電子データの自動削除やログローテーションによる上書きを止めるための基本順序を表しています。リーガルホールドとして、IT部門だけで判断せず、訴訟対応チームと連携して保存範囲を決めることが重要です。順番に沿って、削除停止、対象範囲の特定、アクセス管理を読み取ってください。

電子データ保全の判断の流れ

訴状・対象製品・関係部署を確認

争点に関係し得るシステムやアカウントを洗い出します。

自動削除・保存期間満了・ログ上書きがあるか確認

チャット、クラウド、開発管理、販売管理、CRM、ERP、メールアーカイブ、監視ログを確認します。

あり
削除停止と保全範囲を指示

退職者アカウントの消去やバックアップ上書きも管理します。

なし
保存状態を記録

後日の説明に備え、保存場所と担当者を明確にします。

Section 03

特許権侵害訴訟の訴状を読み初動対応チームを作る

訴状の読み方、社内チーム、弁護士・弁理士へ渡す資料を整理します。

訴状は、相手が裁判所に何を求め、何を根拠にしているかを整理した文書です。初動では、請求の趣旨、請求の原因、証拠説明書と証拠を分けて読み、差止め、廃棄、損害賠償、遅延損害金、訴訟費用、仮執行宣言などの有無を確認します。

次の表は、訴状を読む順番と確認すべき内容を表しています。訴状の各部分を分けて読むことが重要なのは、原告が求める判決内容、根拠にしている事実、すでに把握している証拠を混同しないためです。読者は、請求内容、対象特許、対象製品、証拠の出どころを切り分けて読み取ってください。

読む部分確認する内容初動での使い方
請求の趣旨差止め、廃棄、損害賠償、遅延損害金、訴訟費用、仮執行宣言事業影響と緊急度を把握する
請求の原因対象特許、請求項、対象製品・方法、構成要件充足の主張、損害額の計算争点と反論候補を整理する
証拠説明書と証拠カタログ、ウェブページ、分析結果、分解写真、マニュアル、営業資料、過去メール原告が何をどこまで把握しているかを検討する

次の役割表は、初動対応チームに必要な担当を表しています。特許訴訟では、技術的に正しい説明が法的には不利になることもあり、法的に整った主張が技術的な説得力を欠くこともあるため、横断的なチーム作りが重要です。各担当がどの情報を持つかを読み取ってください。

役割主な担当
統括責任者経営層または法務責任者が意思決定と社内調整を担います。
法務担当裁判手続、弁護士連絡、契約確認、証拠管理を担います。
知財担当特許公報、審査経過、無効資料、先行技術調査を担います。
技術担当対象製品・方法の構成、設計経緯、代替案を説明します。
営業担当販売先、販売数量、顧客影響、契約上の通知義務を確認します。
経理・財務担当売上、利益、原価、在庫、損害論資料を整理します。
広報担当社外発表、問い合わせ対応、想定問答を管理します。
IT担当電子データ保全、アクセス権限、ログ管理を担います。
外部専門家弁護士、弁理士、技術専門家、会計専門家などが関与します。

次の資料一覧は、弁護士・弁理士へ相談する前に整理しておきたい情報を表しています。重要なのは、初回相談の質が持参資料の質で大きく変わることです。読者は、裁判書類、特許資料、技術資料、事業・会計資料、社外コミュニケーション資料を分けて準備する点を読み取ってください。

裁判関係資料

訴状一式、証拠説明書、書証の写し、呼出状、答弁書催告状、封筒、送達関連資料、事件番号、担当部、期日情報をまとめます。

手続

特許関係資料

原告特許の公報、特許請求の範囲、明細書・図面、審査経過、分割出願、訂正、無効審判、異議申立て、対応外国特許、過去の特許調査資料を確認します。

権利

製品・技術資料

仕様書、設計図、回路図、構成図、製造工程、使用方法、マニュアル、サンプル品、部品表、試験結果、ソースコード、設計変更履歴を整理します。

技術

事業・会計資料

販売開始時期、販売数量、売上高、粗利、限界利益、原価資料、在庫、顧客リスト、仕入先、ライセンス契約、補償条項、通知条項を集めます。

金額

社外説明資料

原告との過去のやり取り、警告書、回答書、面談記録、展示会資料、プレスリリース、ウェブページ、営業資料、代理店向け資料を確認します。

発言
Section 04

特許権侵害の初動対応で作る構成要件対比表

請求項を分解し、自社製品・方法との違いを証拠で説明できる形にします。

特許訴訟の侵害論では、特許請求の範囲を分解し、自社製品・方法と一つずつ照合します。たとえば請求項がA、B、Cを備える装置と記載している場合、自社製品がA、B、Cをすべて備えるかを検討します。感覚的に似ていない、違うというだけでは足りません。

次の表は、構成要件対比表の基本的な作り方を表しています。この表が重要なのは、原告の主張、自社の実態、反論候補、必要証拠を同じ行で結びつけることで、争点を具体化できるためです。読者は、請求項の文言ごとに、どの証拠でどの反論を支えるかを読み取ってください。

請求項の構成原告の主張自社の実態反論候補必要証拠
A充足する仕様書上は近い用語解釈で争う仕様書、設計図
B充足する実際には異なる非充足を主張する試験データ
C充足する代替構造を採用構成要件を欠く図面、技術説明

次の判断の流れは、請求項と自社製品を照合するときの順序を表しています。重要なのは、ひとつの構成要件を欠く可能性がある場合でも、均等侵害や用語解釈の争いを見落とさないことです。順番に、文言充足、用語解釈、均等侵害、証拠の対応を読み取ってください。

構成要件を検討する順序

請求項を構成要件に分ける

特許請求の範囲の文言を一つずつ区切ります。

自社製品・方法が各要件を満たすか確認

仕様書、実機、試験データ、ソースコード、工程資料で確認します。

相違あり
非充足・用語解釈を検討

明細書、図面、審査経過、技術常識を踏まえて説明します。

相違が小さい
均等侵害の主張に注意

本質的部分、作用効果、置換容易性、出願経過上の除外などを確認します。

次の注意点一覧は、対象特許の有効性と存続状況を確認する観点を表しています。訴えられたからといって、相手の特許が当然に有効で現在も存続しているとは限らないため重要です。登録、存続期間、権利者、訂正、過去の争いを順に読み取ってください。

登録の有無

特許出願中の発明と登録済みの特許権は異なります。差止めや損害賠償の根拠は、原則として登録された特許権です。

存続期間

日本の特許権の存続期間は、原則として出願日から20年です。医薬品などでは存続期間延長登録が問題になることがあります。

権利者

原告が特許権者、専用実施権者、独占的通常実施権者のどれに当たるか、譲渡登録の有無を確認します。

請求項の訂正

訂正審判や無効審判中の訂正請求により、請求項の内容が変わっていないかを確認します。

過去の履歴

無効審判、異議申立て、関連訴訟、審査経過での説明は、主張の手掛かりになります。

Section 05

特許権侵害で訴えられた場合の反論候補と答弁書対応

無効理由、先使用権、ライセンス、消尽、答弁書提出前の方針を確認します。

特許権侵害訴訟では、仮に自社製品が請求項の文言に近いとしても、その特許は無効とされるべきであるという防御が問題になります。日本の特許訴訟では、特許が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者が権利を行使できないとする抗弁が認められています。

次の表は、初動で検討されやすい無効理由を表しています。重要なのは、資料の数ではなく、請求項の構成要件との対応関係が主張の強さを左右する点です。各行から、どの種類の不備が無効理由として問題になり得るかを読み取ってください。

無効理由内容
新規性欠如出願前に同じ発明が公知だった場合です。
進歩性欠如出願前の技術から当業者が容易に想到できた場合です。
記載要件違反明細書や請求項の記載が不十分、不明確、サポート不足である場合です。
実施可能要件違反当業者が発明を実施できる程度に説明されていない場合です。
補正・訂正の違法出願後の補正や訂正が許される範囲を超えている場合です。
冒認・共同出願違反真の発明者や出願権限に問題がある場合です。

次の資料一覧は、先行技術調査で確認する対象を表しています。似た技術を広く探すだけでは不十分で、請求項の構成要件をどの文献がどこまで開示しているかを分析する必要があるため重要です。公報、論文、標準規格、旧製品、社内資料まで幅広く見る点を読み取ってください。

特許文献

日本の公開特許公報、特許公報、外国特許文献を確認します。

公報

技術資料

学術論文、技術雑誌、標準規格、製品カタログ、取扱説明書、展示会資料、ウェブアーカイブを調査します。

技術

実施資料

旧製品、販売記録、業界資料、社内の研究開発資料を確認します。

実施

次の一覧は、非侵害や無効以外に検討される防御・制限理由を表しています。これらが重要なのは、自社に実施権限がある、または権利行使が制限される可能性がある場合、訴訟方針や交渉方針が変わるためです。どの資料が立証に必要になるかを読み取ってください。

Prior Use

先使用権

特許出願前から日本国内で発明の実施事業または準備をしていた場合、一定範囲で実施を継続できる可能性があります。日付のある研究ノート、議事録、設計書、試作品、試験記録、発注書、納品書、設備投資資料が重要です。

License

ライセンス

共同開発、売買、OEM、販売代理、M&A契約の中に、知的財産権の許諾、不争条項、補償条項が含まれる場合があります。

Exhaustion

消尽

特許権者または正当な権限を有する者が適法に譲渡した特許製品について、権利行使が制限される場面があります。

Joint

共同開発・権利帰属

共同開発の相手方が特許を取得して訴えてきた場合、発明者、共同出願義務、秘密保持契約、成果帰属条項が問題になります。

次の時系列は、答弁書対応で意識すべき流れを表しています。手続期限を守ることが重要なのは、答弁書を提出せず期日にも対応しない場合、原告の主張を争わないものとして扱われたり、請求どおりの判決が出たりするリスクがあるからです。初回書面でどこまで書くかは、後の主張との整合性も踏まえて読み取ってください。

訴状到着後

請求を争うかを決める

少なくとも請求を争う意思、認否の方針、詳細な反論を追って行う旨を明確にする必要があります。

答弁書作成時

認否と反論の範囲を調整する

安易に知らない、否認するとだけ書くのではなく、後の主張、裁判所への印象、相手への情報開示の程度を踏まえます。

提出前

専門家と方針を確認する

初回ですべての技術的反論や無効理由を出し切れない場合でも、手続上の期限と主張の整合性を確認します。

侵害論では、構成要件を充足しない、原告の用語解釈が広すぎる、対象製品の特定が不十分、実施主体が違う、業としての実施ではない、無効の抗弁が主要な反論候補になります。これらは、技術資料と請求項解釈を結びつけて検討します。

Section 06

特許権侵害訴訟の損害論・差止め・証拠開示への備え

損害額資料、販売停止シナリオ、査証・秘密保持命令まで初動で見通します。

特許訴訟では、侵害が認められるかどうかが先に問題になりますが、損害論の資料は初動から保全すべきです。後から売上・原価・利益資料を集めると、資料の欠落や説明不一致が生じることがあります。

次の表は、損害論で必要になりやすい会計・事業資料を表しています。重要なのは、数字そのものだけでなく、根拠、算出方法、会計システム上の定義も説明できるようにすることです。対象製品の範囲、対象期間、原価区分、返品・値引き処理を読み取ってください。

資料確認する理由
販売数量・販売期間・売上高侵害者の譲渡数量や売上規模を把握する基礎になります。
売上原価・変動費・固定費粗利益や限界利益の説明に関係します。
値引き・返品・リベート売上や利益の修正要素を整理します。
在庫数・販売地域・販売チャネル差止め、廃棄、事業影響の検討にも関係します。
代替品の有無・対象機能の価値割合損害額や寄与度の議論で問題になることがあります。

次の判断の流れは、差止めや仮処分に備えて事業上の選択肢を整理する順序を表しています。差止めは金銭の支払いだけでは解決できず、製造・販売・輸入・使用の停止につながるため重要です。読者は、現行製品の継続、機能停止、設計変更、在庫停止、ライセンス交渉、和解の検討を、法律判断だけでなく経営判断として読む必要があります。

差止めリスクに備える判断の流れ

対象製品の事業影響を把握

主力商品か、顧客契約やサプライチェーンに影響するかを確認します。

仮処分の可能性を確認

通常訴訟の判決を待たずに販売停止などを求められる可能性を検討します。

高い
代替設計・販売停止案を準備

一部機能停止、設計変更品への切替え、在庫停止、特定顧客向け対応を検討します。

限定的
争点整理と交渉余地を確認

ライセンス、和解、将来製品への影響を検討します。

次の制度一覧は、特許訴訟で相手方しか持っていない情報が重要になる場面に備える制度を表しています。重要なのは、技術秘密や営業秘密を守りながら裁判所に必要な説明をする必要がある点です。各制度の対象と、秘密管理上の注意を読み取ってください。

具体的態様の明示義務

侵害を否認する被告に対し、自己の行為の具体的態様を明らかにすることを求める制度です。営業秘密を守りながら必要な説明を行う工夫が必要です。

文書提出命令

侵害行為や損害額の立証に必要な文書について、一定の場合に提出が求められることがあります。

査証制度

裁判所が指定する中立的な専門家が、工場、研究施設、装置、文書などを確認し、報告書を作成する制度です。

秘密保持命令

訴訟資料に含まれる営業秘密の不必要な拡散を防ぐ制度です。どの資料を誰にどこまで開示するかを整理します。

Section 07

特許権侵害で訴えられた後の広報・顧客対応と和解検討

法務対応と矛盾しない社外説明、営業担当への指示、ライセンス交渉の観点を整理します。

特許権侵害で訴えられた場合、法務対応と同じくらい重要なのが広報・顧客対応です。上場企業、BtoB企業、医療・製造・IT・プラットフォーム事業者では、訴訟の存在が顧客・投資家・取引先に影響します。基本方針は、事実確認前に断定しない、相手方を攻撃しない、裁判所の判断を先取りしない、技術的詳細を不用意に開示しない、顧客不安を放置しない、社内向け説明と社外向け説明を矛盾させないことです。

次の表は、問い合わせに備える想定問答の基本方針を表しています。重要なのは、社外向けの説明が裁判上の主張や証拠と矛盾しないようにすることです。質問ごとに、回答できる範囲と保留すべき範囲を読み取ってください。

質問回答方針
訴えられたのは事実か公表済み事実の範囲で回答します。
対象製品は何か訴状記載や公表内容を踏まえ、必要最小限に説明します。
販売は続くのか現時点の事業方針を慎重に述べます。
顧客に影響はあるか契約・供給への影響を確認した上で回答します。
侵害を認めるのか係争中であり、主張は裁判手続で明らかにする旨を述べます。

次の注意点一覧は、営業担当への指示で明文化すべき内容を表しています。営業担当が顧客から質問を受けて個別判断で回答すると、後の訴訟対応と矛盾するおそれがあるため重要です。言ってよいこと、避けるべきこと、問い合わせを回す窓口を読み取ってください。

言ってよいこと

会社として確認済みの事実、供給方針、問い合わせ窓口など、法務・広報が承認した範囲に限定します。

避けるべきこと

絶対に侵害していない、相手の特許は無効であるなど、裁判所の判断を先取りする表現は避けます。

回す窓口

顧客、代理店、取引先、報道機関、投資家からの問い合わせは、指定された法務・広報窓口へ集約します。

次の比較表は、和解やライセンス交渉で検討する観点を表しています。判決まで進まない解決もあり得る一方、広いライセンスや強硬な対立は将来製品や顧客不安に影響するため重要です。侵害論、無効論、差止め、損害額、費用、将来事業の観点を読み取ってください。

検討項目確認する視点
和解の視点侵害論の見通し、無効論の強さ、差止めリスク、損害額の上限・下限、訴訟費用、経営資源の消耗、主要顧客への影響、競合他社との関係、将来製品、海外訴訟・海外特許との連動を確認します。
ライセンスの視点対象特許、対象製品、対象地域、実施料率、過去分の支払い、将来分の支払い、監査権、最恵待遇、解除条項、秘密保持、プレスリリース文言を確認します。
Section 08

特許権侵害で訴えられた場合の初動対応チェックリスト

当日から3営業日以内、1週間以内、答弁書提出前の三段階で確認します。

次の時系列は、特許権侵害で訴えられた場合に、いつまでに何を確認するかを表しています。重要なのは、期限管理、証拠保全、専門家相談、広報準備、事業判断を順番に分けつつ、実際には並行して進める点です。各期間の項目から、今すぐ着手する作業と、答弁書提出前までに整理する作業を読み取ってください。

当日から3営業日以内

期限・証拠・窓口を固める

訴状、証拠、裁判所書面をPDF化し、原本を保管します。事件番号、裁判所、期日、答弁書期限を記録し、経営層、法務、知財、技術、広報に限定共有します。関連資料の削除停止、IT部門への電子データ保全、原告・裁判所・顧客への窓口一本化、弁護士・弁理士への相談予約、対象特許番号・請求項・対象製品の一覧化を行います。

1週間以内

特許・製品・会計・広報を整理する

特許公報、審査経過、権利状況を確認し、構成要件対比表の一次案を作成します。対象製品の仕様書・設計図・試験資料、売上・利益・在庫資料の収集を始め、先使用権、ライセンス、共同開発契約を確認します。先行技術調査の方針、広報・顧客向け想定問答、設計変更や販売停止の可能性を検討します。

答弁書提出前

主張方針と事業方針の整合性を確認する

請求を争う方針、認否方針、主要な非侵害主張、主要な無効理由候補を整理します。秘密情報の開示範囲、損害論資料の保全状況、事業継続方針を確認し、社外説明と裁判上の主張に矛盾がないかを確認します。

注意チェックリストは一般的な整理です。実際の対応期限や提出書面の内容は、裁判所書面、訴状、対象特許、対象製品、社内資料の状況によって変わります。
Section 09

特許権侵害の初動対応で避けたい失敗と平時の備え

よくある失敗、相談のタイミング、社内規程として整えるべき体制を確認します。

次の失敗例一覧は、特許権侵害で訴えられた直後に起きやすい判断ミスを表しています。重要なのは、善意の社内対応でも、証拠管理、顧客説明、期限管理、無効資料の評価を誤ると後の手続に影響する点です。各項目から、何を急ぎ、何を断定しないかを読み取ってください。

技術的に違うから大丈夫と決めつける

技術者の感覚では違っても、特許請求の範囲の解釈上は構成要件を充足すると判断されることがあります。

訴状を放置する

答弁書期限や第一回期日を見落とすことは重大なリスクです。社内調整中でも裁判手続は進みます。

資料を削除してしまう

不要な資料を整理しただけでも、訴訟との関係では証拠隠滅と疑われることがあります。

顧客へ過剰に説明する

営業担当が安心させようとして断定的に説明すると、後の訴訟対応と矛盾するおそれがあります。

損害論資料を後回しにする

侵害が認められる方向になった場合、短期間で大量の会計資料を提出・説明する必要が出ることがあります。

無効資料を量だけで評価する

無効理由は資料の数ではなく、請求項との対応関係が重要です。

弁護士への相談はできる限り早い方が安全です。特に、訴状が届いている、差止めを求められている、主力製品が対象になっている、仮処分の可能性がある、海外でも同種紛争がある、顧客・取引先から説明を求められている、上場会社として開示判断が必要、技術秘密や営業秘密の開示が問題になる、損害額が大きい、無効審判や訂正が絡む場合は、早期相談の必要性が高まります。

次の体制一覧は、訴えられてから慌てないために平時から整える項目を表しています。重要なのは、FTO調査、開発記録、契約条項、広報危機管理が、訴訟発生後の証拠と説明の土台になることです。読者は、製品発売前・設計変更時・新市場参入時・M&A時にどの記録を残すかを読み取ってください。

F

FTO調査の運用

Freedom to Operateの考え方に基づき、新製品発売前、設計変更時、新市場参入時、M&A時に他社特許を確認する体制を整えます。

調査

開発記録の保存

先使用権や独自開発の立証に備え、研究ノート、設計レビュー、ソースコード履歴、試験記録、承認履歴を保存します。

証拠

契約書の知財条項

共同開発、製造委託、販売代理、OEM、SaaS、ソフトウェア開発、部品供給の契約で、権利帰属、補償、通知義務、訴訟協力義務を明確にします。

契約

広報危機管理

社内報告ルート、適時開示判断、顧客向け説明、メディア対応、SNS対応を平時から設計します。

広報
Section 10

特許権侵害で訴えられた場合のよくある疑問

個別事件への結論ではなく、初動でよく迷いやすい点を一般情報として整理します。

訴状が届いたら、まず専門家に連絡する前に何を確認しますか

一般的には、訴状一式、裁判所書面、答弁書期限、第一回期日、事件番号、対象特許、対象製品、請求内容を確認し、関連資料の削除停止を行うことが重要とされています。ただし、対象製品、証拠関係、社内体制、期日までの残り期間によって優先順位は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士・弁理士などの専門家へ相談する必要があります。

警告書の段階と訴えられた段階では何が違いますか

一般的には、警告書の段階では相手の主張を検証し交渉方針を立てることが中心ですが、訴えられた段階では裁判所の期限を守りながら、争点形成、証拠保全、事業継続判断を進める必要があるとされています。ただし、警告書の内容、訴状の請求、仮処分の有無によって緊急度は変わります。具体的な見通しは、関係資料をもとに専門家へ相談する必要があります。

弁護士と弁理士のどちらに相談するのがよいですか

一般的には、特許訴訟では裁判手続、特許法、技術内容が交差するため、訴訟対応に関わる弁護士と、特許実務・技術理解に詳しい弁理士が連携する場面があります。ただし、事件の内容、特許の技術分野、無効審判の可能性、社内知財部門の体制によって必要な関与は変わります。具体的な相談先や役割分担は、資料を整理して専門家へ確認する必要があります。

販売を続けてもよいかはどう判断されますか

一般的には、差止めリスク、仮処分の可能性、対象製品の売上規模、顧客契約、代替設計の可否、ライセンス交渉の余地などを総合的に検討するとされています。ただし、侵害論、無効論、証拠関係、事業上の制約によって結論は変わる可能性があります。個別の販売継続方針は、経営判断を含むため、弁護士等の専門家と社内関係部門で確認する必要があります。

Reference

この記事の参考資料

公的機関、裁判所、法令情報を中心に、特許訴訟の制度説明を確認しています。

公的資料・裁判所資料

  • 特許庁「特許権侵害への救済手続」
  • 東京地方裁判所知的財産権部「特許権侵害訴訟の審理要領」
  • 東京地方裁判所知的財産権部「損害賠償等に関する審理について」
  • 大阪地方裁判所「第一審の管轄」
  • 東京地方裁判所知的財産権部「査証手続の運用に関するQ&A」
  • 知的財産高等裁判所「知的財産高等裁判所の概要」
  • 特許庁「J-PlatPatでのリーガルステータスの照会」

法令情報

  • Japanese Law Translation「Patent Act」
  • Japanese Law Translation「Code of Civil Procedure」
  • 裁判所「裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A」