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不動産の相続を
登記・税金・分け方から整理

親の家や土地を受け継ぐときは、相続人、期限、評価、登記、税金、売却、共有リスクを同時に確認する必要があります。

3年相続登記の原則期限
10か月相続税申告・納税
80%小規模宅地等の減額例
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不動産の相続を 登記・税金・分け方から整理

親の家や土地を受け継ぐときは、相続 人、期限、評価、登記、税金、売却、共有リスクを同時に確認する必要があります。

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不動産の相続を 登記・税金・分け方から整理
親の家や土地を受け継ぐときは、相続 人、期限、評価、登記、税金、売却、共有リスクを同時に確認する必要があります。
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  • 不動産の相続を 登記・税金・分け方から整理
  • 親の家や土地を受け継ぐときは、相続 人、期限、評価、登記、税金、売却、共有リスクを同時に確認する必要があります。

POINT 1

  • 不動産の相続の全体像
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 相続人、不動産、期限を先に一覧化することが出発点です
  • 誰が相続人か
  • 誰が取得するか

POINT 2

  • 不動産の相続とは何か
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 相続は、人の死亡によって開始する。
  • 死亡した人を「被相続人」といい、被相続人の権利義務を承継する人を「相続人」という。
  • 第一に、誰が相続人なのかという身分関係の問題です。

POINT 3

  • 不動産の相続 ― 主要用語の定義
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

POINT 4

  • 不動産の相続で最初に把握すべき期限
  • 1. 相続放棄・限定承認:負債や管理困難不動産がある場合に検討します。
  • 2. 相続税申告・納税:未分割でも期限は原則として進みます。
  • 3. 相続登記:取得を知った日から原則3年以内に申請します。

POINT 5

  • 誰が相続人になるのか
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産の相続では、まず相続人を確定する。
  • 相続人の確定を誤ると、遺産分割協議が無効になったり、登記ができなかったり、後日紛争が発生したりする。
  • 民法上、配偶者は常に相続人となります。

POINT 6

  • 相続放棄と不動産の相続
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産を相続したくない場合に、最初に検討されるのが相続放棄です。
  • 相続放棄は、家庭裁判所に対して申述する手続であり、単に他の相続人に「私は要らない」と伝えるだけでは足りない。
  • 相続放棄の申述は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内に行う必要があります。

POINT 7

  • 遺言がある場合の不動産の相続
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産の相続では、遺言の有無が手続全体を左右する。
  • 公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書 遺言書 保管制度の利用の有無を確認する。
  • 自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合、原則として家庭裁判所の検認が必要です。

POINT 8

  • 不動産の調査 ― 登記簿だけでは足りない
  • 制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産の相続では、「何を相続するのか」を正確に調査する必要があります。
  • 実務上、次の資料を収集する。
  • 令和8年、すなわち2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度も開始されている。

まとめ

  • 不動産の相続を 登記・税金・分け方から整理
  • 不動産の相続の全体像:制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産の相続とは何か:制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 不動産の相続 ― 主要用語の定義:制度・期限・評価・資料を分けて確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

不動産の相続の全体像

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

次の重要ポイントは、不動産の相続で最初に分解すべき三つの問いを示しています。身分関係、分配、取得後の実務を分けて見ることで、どこから確認すればよいかを読み取れます。

相続人、不動産、期限を先に一覧化することが出発点です

戸籍で相続人を確定し、名寄帳や登記事項証明書で不動産を洗い出し、3か月、10か月、3年の期限を同じ管理表に入れると、話し合いと手続を並行しやすくなります。

次の一覧は、不動産の相続で同時に処理する三つの領域を表しています。各領域が別々に進むと漏れが起きるため、自分の相続で未確認の領域を読み取ってください。

Check 01

誰が相続人か

戸籍で配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹、代襲相続人を確認します。

Check 02

誰が取得するか

遺言があれば内容を確認し、足りない部分は遺産分割協議で現物、代償、換価、共有を比較します。

Check 03

取得後に何をするか

相続登記、相続税申告、売却、賃貸管理、境界、農地届出などを期限で管理します。

不動産の相続は、単に「親の家や土地を誰がもらうか」という問題ではありません。そこには、民法上の相続人・相続分、遺言の効力、遺産分割協議、相続登記、相続税評価、固定資産税、売却時の譲渡所得税、境界、農地法、借地借家、共有関係、家庭裁判所の調停・審判など、多数の制度が重なっている。

とくに日本では、令和6年、すなわち2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となり得る。義務化前に発生した相続であっても、未登記のまま残っている不動産は対象になるため、古い相続ほど早期の点検が必要です。

この記事は、「不動産の相続」に悩む一般の読者に向けて、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、家庭裁判所実務、金融機関・保険実務などの視点を横断して整理しています。一般的な情報提供であり、個別案件では有資格専門家による確認が必要です。

Section 01

不動産の相続とは何か

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

「不動産の相続」とは、被相続人、すなわち亡くなった人が所有していた土地、建物、マンション、借地権、底地、共有持分、賃貸用不動産、農地、山林などの権利義務が、相続人や受遺者に承継されることをいう。

相続は、人の死亡によって開始する。死亡した人を「被相続人」といい、被相続人の権利義務を承継する人を「相続人」という。不動産が遺産に含まれる場合、相続人は次の三つの問題を同時に処理しなければならない。

第一に、誰が相続人なのかという身分関係の問題です。戸籍を収集し、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹、代襲相続人の有無を確認する。

第二に、不動産を誰が取得するのかという分配の問題です。遺言がある場合は遺言を確認し、遺言がない、または遺言だけでは処理できない場合は遺産分割協議を行います。協議がまとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停・審判に進む。

第三に、取得後に名義・税金・利用・処分をどうするのかという実務問題です。相続登記、相続税申告、売却、賃貸管理、共有解消、境界確定、建物解体、農地届出などがここに含まれます。

不動産の相続が預金の相続より難しいのは、不動産が物理的に分けにくく、価格評価にも幅があり、維持費や税金が継続的に発生し、権利関係が登記や第三者との契約に反映されるからです。

Section 02

不動産の相続 ― 主要用語の定義

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

この記事で頻出する用語を先に整理する。

次の比較表は、2. 主要用語の定義に関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

用語意味
被相続人亡くなった人。遺産を残した人。
相続人被相続人の財産上の権利義務を承継する人。配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など。
受遺者遺言により財産を受ける人。相続人である場合も、相続人以外である場合もあります。
遺産相続により承継される財産。土地、建物、預金、株式、負債などを含む。
遺産分割相続人間で、遺産を誰がどのように取得するかを確定する手続。
法定相続分民法が定める相続分。協議がまとまらないときの基準であり、必ずその割合で分けなければならないわけではありません。
遺留分一定の相続人に最低限保障される相続財産に対する取り分。兄弟姉妹には遺留分がない。
相続登記相続により不動産の所有者が変わったことを登記簿に反映させる登記。
相続人申告登記相続登記義務化に伴い、相続人が申請義務を簡易に履行するために設けられた制度。遺産分割後の最終的な所有権移転登記とは異なります。
法定相続情報証明制度戸除籍謄本等の束の代わりに、法務局が確認した法定相続情報一覧図の写しを各種相続手続で利用できる制度。
固定資産税評価額市区町村が固定資産税等の課税のために用いる評価額。登録免許税の課税標準になることが多い。
相続税評価額相続税計算上の財産評価額。土地は原則として路線価方式または倍率方式で評価する。
共有一つの不動産を複数人が持分割合に応じて共同所有する状態。
代償分割ある相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う分割方法。
換価分割不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分ける方法。
現物分割不動産そのものを特定の相続人が取得する、または土地を分筆して分ける方法。
Section 03

不動産の相続で最初に把握すべき期限

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

次の時系列は、不動産の相続で最初に把握する期限を順番に示しています。期限を過ぎると選択肢が狭くなるため、3か月・4か月・10か月・3年の節目を読み取ってください。

3か月以内

相続放棄・限定承認

負債や管理困難不動産がある場合に検討します。

10か月以内

相続税申告・納税

未分割でも期限は原則として進みます。

3年以内

相続登記

取得を知った日から原則3年以内に申請します。

不動産の相続では、「話し合いが済んでから考える」では遅い手続がある。次の期限は最低限把握する必要があります。

次の比較表は、3. 不動産の相続で最初に把握すべき期限に関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

時期・期限手続主な担当・相談先実務上の注意
相続開始を知った時から3か月以内相続放棄・限定承認の検討弁護士、司法書士、家庭裁判所負債、不動産の管理費、空き家リスクが大きい場合は早期判断が必要。相続放棄の申述は原則3か月以内。
相続開始を知った日の翌日から4か月以内準確定申告税理士、税務署被相続人に不動産賃貸収入、事業所得、譲渡所得等がある場合は要注意。
死亡を知った日の翌日から10か月以内相続税申告・納税税理士、税務署相続税が出るか、特例適用に申告が必要かを早めに判定する。
相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内相続登記司法書士、法務局2024年4月1日から義務化。義務化前の相続も対象。
遺産分割成立日から3年以内遺産分割内容に沿った追加登記司法書士、法務局相続人申告登記で履行できるのは基本的義務であり、遺産分割後の追加義務は別に残る。
相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の検討税理士相続税が課税された人が一定期間内に不動産を売却する場合、譲渡所得税に影響する。
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで空き家の3,000万円特別控除の検討税理士、宅建業者、自治体一定要件を満たす被相続人居住用家屋等の譲渡で控除可能。ただし相続人が3人以上の場合など控除額に制限がある。

不動産の相続では、期限管理を「税務だけ」「登記だけ」に分けて考えると漏れが生じる。弁護士、司法書士、税理士のいずれかが窓口になる場合でも、最初の相談時に全期限を一覧化する必要があります。

Section 04

誰が相続人になるのか

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、まず相続人を確定する。相続人の確定を誤ると、遺産分割協議が無効になったり、登記ができなかったり、後日紛争が発生したりする。

民法上、配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の血族相続人には順位があり、第一順位は子、第二順位は直系尊属、第三順位は兄弟姉妹です。子が被相続人より先に死亡している場合などには、孫等が代襲相続人になることがある。

法定相続分の代表例は次のとおりです。国税庁も、民法上の法定相続分は「相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分」であり、必ずこの割合で分割しなければならないものではないと説明している。

次の比較表は、4. 誰が相続人になるのかに関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

相続人の組合せ法定相続分
配偶者と子配偶者2分の1、子全体で2分の1
配偶者と直系尊属配偶者3分の2、直系尊属全体で3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1
配偶者のみ配偶者が全部
子のみ子全体で全部

相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の現在戸籍、代襲相続がある場合の関係戸籍などが必要になります。兄弟姉妹相続では、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍まで必要になることがあり、調査量が大きくなります。

Section 05

相続放棄と不動産の相続

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産を相続したくない場合に、最初に検討されるのが相続放棄です。相続放棄は、家庭裁判所に対して申述する手続であり、単に他の相続人に「私は要らない」と伝えるだけでは足りない。

相続放棄の申述は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内に行う必要があります。申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

不動産の相続で相続放棄を検討すべき典型例は、次のような場合です。

  • 老朽化した空き家で、解体費や管理責任が重い。
  • 山林、原野、別荘地など、固定資産税や管理費だけが継続的に発生する。
  • 住宅ローン、事業債務、保証債務が大きい。
  • 共有持分だけを相続し、利用も売却も困難です。
  • 境界紛争、土壌汚染、崖地、越境、未登記建物などのリスクがある。

ただし、相続放棄をすると、原則として預金や有価証券などのプラス財産も承継できなくなります。また、先順位の相続人が放棄すると、次順位の親族が相続人となることがある。家族全体で負債や管理不動産を避けるには、次順位者への説明も必要になります。

Section 06

遺言がある場合の不動産の相続

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、遺言の有無が手続全体を左右する。公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言書保管制度の利用の有無を確認する。

自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合、原則として家庭裁判所の検認が必要です。裁判所は、検認とは遺言の存在と内容を相続人に知らせ、形状、加除訂正、日付、署名などを明確にして偽造・変造を防止する手続であり、遺言の有効・無効を判断する手続ではないと説明している。公正証書遺言と、法務局で保管されている自筆証書遺言に関する遺言書情報証明書は、検認を要しない。

不動産を遺言で承継させる場合、遺言書の記載は極めて重要です。「自宅を長男に相続させる」とだけ書かれていると、敷地、私道持分、別棟、未登記建物、共有持分、借地権、農地などが対象に含まれるか争いになることがある。遺言書には、登記事項証明書に基づき、所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積を正確に記載するのが望ましい。

遺言がある場合でも、次のような争点が残ることがある。

  • 遺言能力があったか。
  • 自筆証書遺言の方式を満たしているか。
  • 遺言の解釈として、どの不動産が対象か。
  • 遺留分を侵害していないか。
  • 遺言執行者が必要か。
  • 不動産以外の財産とのバランスが著しく不公平ではないか。
Section 07

不動産の調査 ― 登記簿だけでは足りない

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、「何を相続するのか」を正確に調査する必要があります。登記簿に載っている所有者名だけを見て判断すると、私道、共有持分、未登記建物、農地、山林、別荘地、借地権、抵当権、賃借人、境界問題を見落とすことがある。

実務上、次の資料を収集する。

次の比較表は、7. 不動産の調査 ― 登記簿だけでは足りないに関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

資料取得先・確認先目的
登記事項証明書法務局所有者、共有持分、抵当権、地目、地積、家屋番号を確認する。
公図、地積測量図、建物図面法務局土地の位置、形状、測量履歴、建物配置を確認する。
固定資産税納税通知書、課税明細書被相続人の書類、市区町村所有不動産の一覧、固定資産税評価額を把握する。
名寄帳市区町村同一市区町村内の被相続人名義不動産を一覧化する。
固定資産評価証明書市区町村登録免許税の課税標準、相続税申告資料に用いる。
路線価図・評価倍率表国税庁相続税評価額の基礎資料。
賃貸借契約書被相続人の書類、管理会社賃貸物件、借地、借家の権利義務を確認する。
ローン残高証明書金融機関抵当権、債務、団体信用生命保険の有無を確認する。
境界確認書、測量図被相続人の書類、土地家屋調査士売却、分筆、隣地紛争リスクを確認する。
管理規約、総会議事録、管理費明細マンション管理組合滞納管理費、修繕積立金、使用細則を確認する。

令和8年、すなわち2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度も開始されている。これは、登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明書として交付する制度であり、亡くなった人が所有していた不動産を把握しやすくするための制度です。

Section 08

相続登記の義務化と実務

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続において、2024年4月1日以降、相続登記は「してもしなくてもよい手続」ではなくなった。法務省は、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、その相続開始と所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があると説明している。正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象となり得る。

また、2024年4月1日より前に開始した相続でも、相続登記が未了であれば義務化の対象になります。法務省は、この場合、原則として2027年3月31日まで、または不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月以降であればその日から3年以内に登記が必要であると説明しています。

8.1 相続登記で必要になる主な書類

一般的な相続登記では、次のような書類が必要になります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍。
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票。
  • 相続人全員の戸籍。
  • 不動産を取得する相続人の住民票。
  • 遺産分割協議書。
  • 相続人全員の印鑑証明書。
  • 固定資産評価証明書または固定資産税課税明細書。
  • 遺言書がある場合は遺言書および検認済証明書等。
  • 司法書士に依頼する場合は委任状。

書類は事案により異なります。数次相続、代襲相続、相続放棄、遺言、遺贈、未成年者、成年後見、海外在住相続人、旧姓・住所変更が絡む場合は追加資料が必要になります。

8.2 相続人申告登記

遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記義務を放置してよいわけではありません。このような場合の簡易な履行方法として、相続人申告登記が設けられています。法務省は、登記記録上の所有者について相続が開始したことと、自らがその相続人であることを期限内に登記官へ申し出ることで、相続登記の基本的義務を履行できる制度であると説明しています。

ただし、相続人申告登記は、最終的に誰が所有者になるかを確定する登記ではありません。遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に、遺産分割内容に沿った所有権移転登記を申請する必要があります。法務省も、相続人申告登記で履行できるのは基本的義務であり、遺産分割成立時の追加的義務は履行できないと説明している。

8.3 登録免許税

相続登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表では、相続による土地・建物の所有権移転登記の税率は、不動産の価額の1000分の4、すなわち0.4%です。課税標準となる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合、原則としてその価格です。

また、相続による土地の所有権移転登記等については、一定の免税措置があります。たとえば、令和9年、すなわち2027年3月31日までに、土地について相続による所有権移転登記を受ける場合で、課税標準となる不動産の価額が100万円以下であるときは、登録免許税が課されない措置があります。

8.4 住所等変更登記の義務化にも注意

不動産を相続して所有者になった後は、住所や氏名の変更登記にも注意が必要です。令和8年、すなわち2026年4月1日から、所有権の登記名義人は住所や氏名・名称の変更日から2年以内に変更登記を申請することが義務付けられている。

これは相続登記そのものではないが、不動産を取得した相続人がその後転居した場合や、婚姻・離婚・法人名変更などで登記名義人の表示が変わった場合に関係する。

Section 09

不動産の評価 ― 相続税評価と遺産分割評価は同じではない

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、「その不動産はいくらか」が争点になります。しかし、不動産の価額には複数の意味がある。

次の比較表は、9. 不動産の評価 ― 相続税評価と遺産分割評価は同じではないに関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

評価の種類主な用途特徴
固定資産税評価額固定資産税、登録免許税の課税標準市区町村が評価。毎年の課税明細で確認しやすい。
相続税評価額相続税申告土地は路線価方式または倍率方式が基本。建物は固定資産税評価額を基礎とする。
実勢価格売却、遺産分割交渉実際に市場で売れる可能性のある価格。仲介査定や取引事例を参照する。
不動産鑑定評価額調停、審判、訴訟、専門的評価不動産鑑定士が鑑定評価基準に基づき評価する。費用と時間がかかります。
収益価格賃貸物件、事業用不動産賃料収入、空室率、修繕費、利回りを反映する。

国税庁は、土地の評価方法には路線価方式と倍率方式があると説明している。路線価方式では、路線価を土地の形状等に応じた補正率で補正し、面積を乗じて評価する。倍率方式では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する。

しかし、遺産分割における公平性を考えると、相続税評価額だけでは不十分なことがある。たとえば、都心部の収益物件、再建築不可物件、借地権付き建物、底地、共有持分、境界未確定地、土壌汚染地、崖地、古家付き土地では、相続税評価額と実勢価格が大きく乖離することがある。

相続税申告では相続開始時点の評価が基本となる一方、遺産分割では分割時の時価が問題になることが多い。相続開始から数年が経過している場合、地価上昇や建物劣化をどう扱うかが争点になります。

Section 10

不動産の分け方 ― 現物・代償・換価・共有

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

次の一覧は、不動産を分ける四つの方法を比較したものです。公平性、資金、売却、将来紛争のリスクが異なるため、自宅を残すのか、現金化するのか、共有を避けるのかを読み取ってください。

Method 01

現物分割

不動産そのものを特定の相続人が取得します。

Method 02

代償分割

一人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を支払います。

Method 03

換価分割

不動産を売却して代金を分けます。

Method 04

共有分割

複数人で持分を取得しますが、将来の合意形成に注意が必要です。

不動産の相続における遺産分割方法は、大きく四つに分けられる。

10.1 現物分割

現物分割とは、不動産そのものを特定の相続人が取得する方法です。たとえば、自宅土地建物を配偶者が取得し、預金を子が取得する場合です。

土地が広い場合には、土地家屋調査士による測量・分筆を経て、複数の相続人がそれぞれ別の土地を取得する方法もある。ただし、分筆には接道、建築基準法、都市計画、農地法、境界確認、評価差、固定資産税負担などの検討が必要です。

10.2 代償分割

代償分割とは、一人または一部の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。自宅を守りたい相続人がいる場合に有効です。

ただし、代償分割には資金調達の問題がある。代償金を支払う相続人に預金やローン調達力がなければ、合意が成立しても履行できない。代償金の支払期限、分割払いの可否、遅延損害金、担保設定の有無を遺産分割協議書に明記する必要があります。

10.3 換価分割

換価分割とは、不動産を売却し、売却代金を相続人間で分ける方法です。相続人の誰も居住・利用しない不動産、空き家、遠方の土地、管理困難な賃貸物件では有力な選択肢になります。

ただし、売却には相続登記が必要です。買主は登記簿上の所有者から所有権移転を受けるため、被相続人名義のままでは通常売却できない。また、売却時には譲渡所得税、仲介手数料、測量費、解体費、残置物処分費、抵当権抹消費用なども考慮する。

10.4 共有分割

共有分割とは、相続人が共有持分を取得する方法です。一見公平に見えるが、将来の売却、賃貸、建替え、担保設定、修繕、固定資産税負担で紛争化しやすい。

不動産の相続で共有を選ぶ場合は、少なくとも次の事項を合意しておくべきです。

  • 誰が居住または利用するのか。
  • 固定資産税、火災保険、修繕費を誰が負担するのか。
  • 売却する場合の最低価格、仲介業者、時期をどう決めるのか。
  • 一部共有者が死亡した場合に持分がさらに細分化するリスクをどう扱うのか。
  • 賃貸する場合の賃料配分、管理責任、修繕承認をどうするのか。

専門家実務では、将来の紛争を避ける観点から、安易な共有分割は慎重に扱われる。

Section 11

不動産の相続 ― 配偶者居住権という選択肢

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

配偶者が被相続人所有の自宅に住んでいた場合、配偶者の居住を守る制度として配偶者居住権がある。法務省は、相続法改正により、残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されたと説明している。

配偶者居住権を利用すると、建物の所有権と居住権を分けることができます。たとえば、建物所有権を子が取得し、配偶者が配偶者居住権を取得することで、配偶者は住み続けながら、他の財産とのバランスを調整できる場合がある。

ただし、配偶者居住権は万能ではありません。登記、評価、売却制限、建物の修繕負担、配偶者死亡時の処理、相続税評価などが関係する。国税庁は、配偶者居住権等の評価方法を示しており、相続税申告上も専門的な検討が必要です。

Section 12

相続税と不動産の相続

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、相続税が発生するかどうかが大きな関心事です。相続税は、相続財産の合計が基礎控除額を超える場合に問題になります。国税庁は、課税価格の合計額から基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を差し引いて課税遺産総額を計算すると説明している。

12.1 不動産があると相続税が発生しやすい理由

不動産は、現金収入を生まない自宅であっても、相続税評価額として課税価格に算入される。都心部や駅近の土地、賃貸物件、事業用不動産、農地転用可能地、共有でない広い土地などでは、預金が少なくても相続税が発生することがある。

問題は、相続税は原則として金銭で納付する必要がある点です。不動産評価額は高いが現金が少ない場合、相続税納税資金をどう確保するかが重要になります。生命保険、納税資金用預金、売却、代償金、延納、物納の検討が必要になる場合がある。

12.2 小規模宅地等の特例

不動産の相続税で最重要の制度の一つが、小規模宅地等の特例です。国税庁は、相続または遺贈で取得した財産のうち、被相続人等の事業用または居住用に供されていた宅地等について、一定面積まで一定割合を減額すると説明している。特定居住用宅地等では、限度面積330平方メートル、減額割合80%とされている。

小規模宅地等の特例は、適用できるかどうかで相続税額が大きく変わる。しかし、取得者、同居の有無、持ち家の有無、申告期限までの保有・居住継続、貸付事業の実態、二世帯住宅、老人ホーム入所、配偶者居住権などにより判断が複雑です。

特例適用後に相続税がゼロになる場合でも、特例を使うために申告が必要になることがある。自己判断で申告不要と扱うのは危険です。

12.3 未分割でも申告期限は延びない

遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続税申告期限は原則として延びない。国税庁は、相続税申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うと説明している。

未分割の場合、法定相続分で取得したものとして申告し、後日分割が成立したときに修正申告や更正の請求を行う場合がある。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、未分割のままでは適用に制約が生じるため、税理士と早期に方針を決める必要があります。

Section 13

相続した不動産を売却する場合の税務

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

相続した不動産を売却すると、譲渡所得税が問題になります。相続税とは別の税金です。

国税庁は、相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算すると説明している。また、取得時期も被相続人や贈与者の取得時期を引き継ぐ。

つまり、相続時の評価額がそのまま譲渡所得の取得費になるわけではありません。古い土地で購入価格が不明な場合、概算取得費として売却代金の5%を用いることがあり、その結果、譲渡所得が大きくなることがある。

13.1 相続税の取得費加算

相続税が課税された人が、相続財産を一定期間内に譲渡する場合、相続税額のうち一定額を譲渡資産の取得費に加算できる特例がある。国税庁は、この特例の要件として、相続や遺贈により財産を取得したこと、その財産を取得した人に相続税が課税されていること、その財産を相続開始のあった日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることを挙げている。

この特例は、不動産を売却して納税資金や代償金を確保する場合に重要です。

13.2 空き家の3,000万円特別控除

被相続人の居住用財産、いわゆる相続空き家を売却する場合、一定要件のもとで譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例がある。国税庁は、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または敷地等を、2016年4月1日から2027年12月31日までの間に売って一定要件に該当する場合、最高3,000万円まで控除できると説明している。ただし、2024年1月1日以後の譲渡で、家屋および敷地等を取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円までとなります。

この特例は、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物でないこと、相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったことなど、細かな要件がある。売却前に税理士、自治体、宅建業者と確認する必要があります。

Section 14

不動産の相続 ― 家庭裁判所での遺産分割調停・審判

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

相続人間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する。裁判所は、遺産分割について相続人間で話合いがつかない場合には、遺産分割の調停または審判の手続を利用できると説明している。調停は、相続人の一人または複数が、他の相続人全員を相手方として申し立てる手続です。

調停では、調停委員会が当事者から事情を聴き、資料提出を求め、必要に応じて遺産の鑑定を行い、分割方法について合意を目指す。話し合いがまとまらず調停が不成立になると、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判する。

不動産の相続で調停になりやすい争点は次のとおりです。

  • 自宅を誰が取得するか。
  • 不動産の評価額をいくらにするか。
  • 一人が長年居住していた利益をどう見るか。
  • 被相続人の介護や事業貢献を寄与分として評価するか。
  • 生前贈与や住宅購入援助を特別受益として扱うか。
  • 使途不明金や預金引出しを遺産に戻すべきか。
  • 賃貸物件の賃料収入を誰が取得するか。
  • 共有にするか売却するか。

調停では、感情論だけでなく、登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書、鑑定書、預金履歴、介護記録、賃貸契約書、修繕費領収書などの客観資料が重要になります。

Section 15

不在者、未成年者、判断能力が低下した相続人がいる場合

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、相続人全員の合意が必要になります。相続人の中に所在不明者、未成年者、成年後見利用者、認知症の人がいる場合、通常の遺産分割協議はそのままではできない。

15.1 不在者財産管理人

相続人の一人が行方不明で連絡が取れない場合、不在者財産管理人の選任が必要になることがある。裁判所は、不在者財産管理人は不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割や不動産売却等を行うことができると説明している。

15.2 特別代理人

未成年者と親権者が共同相続人になる場合、利益相反が生じることがある。裁判所は、親権者と子の間で利益が相反する行為をするには、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないと説明している。父が死亡し、母と未成年の子が遺産分割協議をする場合などが典型例です。

15.3 成年後見、保佐、補助

相続人の判断能力が低下している場合、成年後見人、保佐人、補助人の関与が必要になることがある。後見人が本人のために遺産分割協議を行う場合でも、本人の利益を害する協議はできない。利益相反がある場合は、臨時保佐人、臨時補助人、特別代理人等が問題になります。

Section 16

不動産の相続 ― 農地・山林・別荘地・管理困難土地

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続で見落とされやすいのが、農地、山林、別荘地、原野、私道、墓地周辺地、共有山林などです。これらは市場性が低く、固定資産税や管理費、草刈り、近隣対応だけが残ることがある。

農地について、農林水産省は、農地を相続したときは、その農地の所在地の農業委員会に届出をする必要があると説明している。また、農地を貸す・売る場合は原則として農業委員会の許可が必要であり、転用も自由にはできず、原則として都道府県知事等の許可が必要です。

したがって、農地を相続した場合は、相続登記だけでなく、農業委員会への届出、利用計画、貸付、農地バンク、転用可否、納税猶予の有無を確認する。

Section 17

相続土地国庫帰属制度

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

相続した土地をどうしても利用・売却・管理できない場合、相続土地国庫帰属制度が選択肢になることがある。これは、相続等により土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たす土地について、法務大臣の承認を受け、負担金を納付することで土地を国庫に帰属させる制度です。法務省は、制度の概要、土地の要件、負担金、手続を公表している。

ただし、すべての土地を国に引き取ってもらえるわけではありません。建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、崖地、土壌汚染、埋設物、通常管理に過大な費用を要する土地などは問題になります。農林水産省も、農地を含め相続した土地について国に引き渡せる制度がある一方、建物、耕作物、土壌汚染、埋設物、危険な崖、権利関係の争い、担保権、通路利用などが要件上問題になると説明している。

相続土地国庫帰属制度は、「不要な土地を無料で捨てられる制度」ではありません。申請手数料、測量・境界確認、建物解体、残置物撤去、負担金、専門家費用を含めて比較する必要があります。

Section 18

共有不動産の相続リスク

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続で最も長期化しやすい問題の一つが共有です。共有不動産は、一次相続では兄弟二人の共有で済んでも、二次相続、三次相続を経ると、甥姪、配偶者、疎遠な親族へ持分が分散する。

共有の問題は、次のように現れる。

  • 売却に全員の同意が必要になります。
  • 一人が居住している場合、賃料相当額や使用料が争点になります。
  • 修繕費、固定資産税、保険料の負担割合でもめる。
  • 共有者の一人が死亡すると、さらに相続人が増える。
  • 共有者の一人が破産、差押え、離婚財産分与の問題を抱えると、不動産全体に影響する。
  • 所在不明共有者がいると、売却も管理も停滞する。

共有を選ぶ場合は、将来売却する時期、最低売却価格、管理者、費用負担、利用者、買戻し方法を定めておくべきです。それが難しい場合は、代償分割や換価分割を優先検討する。

Section 19

賃貸不動産を相続する場合

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

賃貸アパート、貸家、貸地、駐車場、テナントビルを相続する場合、相続人は賃貸人としての地位を承継する。単なる不動産所有ではなく、賃料請求、敷金返還債務、修繕義務、原状回復、賃貸借契約更新、管理会社契約、火災保険、借入金、減価償却、所得税申告が関係する。

賃貸不動産の相続で確認すべき事項は次のとおりです。

  • 賃貸借契約書、更新契約書、保証会社契約。
  • 敷金・保証金の残高。
  • 賃料滞納の有無。
  • 管理会社との委託契約。
  • 修繕履歴、長期修繕予定。
  • 抵当権、ローン残高、団体信用生命保険。
  • 空室率、利回り、老朽化、耐震性。
  • 相続開始後の賃料を誰が受領するか。
  • 遺産分割成立までの収益と費用をどう精算するか。

賃貸不動産は評価が難しい。土地建物の評価だけでなく、収益性、借地借家法上の制約、修繕費、立退料リスク、借入金を含めて検討する必要があります。

Section 20

マンションを相続する場合

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

マンションの相続では、土地建物一体の区分所有権、敷地権、管理費、修繕積立金、管理規約、専有部分・共用部分、駐車場使用権、滞納管理費、管理組合との関係が問題になります。

古いマンションでは、修繕積立金不足、耐震性、建替え決議、管理不全、賃貸制限、民泊禁止、ペット規約などが価格に影響する。相続税評価額だけで判断せず、管理状況と売却可能性を確認する必要があります。

相続人の誰かが住む場合でも、他の相続人への代償金、管理費負担、固定資産税、将来売却時の合意を明確にしておく必要があります。

Section 21

不動産の相続 ― 住宅ローン・抵当権・団体信用生命保険

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

被相続人が住宅ローンを残して死亡した場合、まず団体信用生命保険の有無を確認する。団信によりローンが完済される場合、抵当権抹消登記が必要になります。団信がない、または適用されない場合、ローン債務は相続債務として承継される可能性がある。

相続放棄を検討している場合、ローン、保証債務、担保不動産、滞納税、管理費滞納を早期に確認しなければならない。ローンが不動産価値を上回る場合、相続放棄、任意売却、限定承認などの検討が必要になります。

Section 22

不動産の相続 ― 境界・測量・未登記建物・違反建築

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産を相続して売却や分筆をする場合、境界が大きな問題になります。登記簿面積と実測面積が異なる、隣地との境界標がない、越境物がある、私道負担がある、セットバックが必要、建物が未登記、増築部分が未登記、建築確認と現況が違うといった事例は珍しくない。

この分野では土地家屋調査士の役割が重要です。境界確認、現況測量、確定測量、分筆登記、建物表題登記、滅失登記などは、相続登記とは別の表示登記実務として整理する。

売却を前提とする場合、宅地建物取引士・不動産仲介業者は重要事項説明のために、接道、用途地域、建ぺい率・容積率、上下水道、土砂災害警戒区域、ハザード、埋設管、越境、契約不適合責任を調査する。相続人は「親の土地だから問題ない」と考えず、売却前調査に時間と費用がかかることを想定する必要があります。

Section 23

遺留分と不動産の相続

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

遺言により特定の相続人が不動産を取得する場合、他の相続人の遺留分を侵害することがある。遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の取り分です。

不動産が主な財産である場合、遺留分侵害額請求は金銭請求として問題化する可能性があります。たとえば、長男が自宅土地建物を遺言で取得したものの、他の子の遺留分を侵害している場合、長男は現金で支払う必要に迫られることがあります。

遺留分対策では、次の点が重要です。

  • 遺言作成時に不動産評価を現実的に行います。
  • 生命保険や預金を使って遺留分原資を準備する。
  • 生前贈与や特別受益を記録する。
  • 代償金支払能力を確認する。
  • 事業用不動産や自宅を承継する相続人の資金計画を立てる。
Section 24

使い込み疑いと不動産の相続

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、被相続人の預金から多額の引出しがあり、その資金で不動産の修繕、ローン返済、税金支払、生活費、介護費、相続人の個人的支出が行われたのではないかという争いが起こる。

使い込み疑いがある場合、次の資料を確認する。

  • 預金通帳、取引履歴。
  • ATM引出し時期と被相続人の判断能力。
  • 介護施設費、医療費、生活費の領収書。
  • 不動産修繕費、固定資産税、火災保険の支払資料。
  • 委任状、財産管理契約、任意後見契約。
  • 被相続人の意思を示すメモ、メール、録音。

遺産分割調停では、使途不明金そのものが当然に遺産分割の対象になるとは限らず、不当利得返還請求や損害賠償請求として別訴が必要になる場合もある。弁護士の関与が重要な領域です。

Section 25

不動産の相続 ― 専門職の役割分担

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続では、専門職を一人選べばすべてが解決するとは限らない。争点に応じた役割分担が必要です。

次の比較表は、25. 専門職の役割分担に関する項目を整理したものです。列ごとの差を見ることで、どの制度・資料・手続が自分の状況に関係するかを読み取れます。

課題主な専門職役割
相続人間でもめている弁護士交渉、遺産分割調停・審判、遺留分、使い込み、訴訟対応。
相続登記をしたい司法書士戸籍収集、登記原因証明、相続登記、抵当権抹消、法定相続情報。
相続税が心配税理士相続税申告、財産評価、小規模宅地等の特例、税務調査対応。
遺産分割協議書を作りたいが争いはない行政書士、司法書士、弁護士書類作成。ただし紛争性、税務、登記申請代理の範囲に注意。
遺言を作りたい弁護士、司法書士、行政書士、公証人遺言内容設計、公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度。
不動産価格でもめている不動産鑑定士適正価格の鑑定、調停・審判での評価資料。
境界・分筆が必要土地家屋調査士境界確認、測量、分筆登記、建物表題・滅失登記。
売却したい宅地建物取引士、不動産仲介業者査定、販売活動、重要事項説明、売買契約実務。
農地を相続した農業委員会、行政書士、司法書士、税理士届出、許可、登記、納税猶予、転用可否。
相続人が未成年家庭裁判所、弁護士、司法書士特別代理人選任、利益相反対応。
相続人が行方不明家庭裁判所、弁護士、司法書士不在者財産管理人、権限外行為許可。
非上場会社や事業用不動産がある公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士株式評価、事業承継、経営権、不動産保有会社の整理。
知的財産や特殊資産がある弁理士、弁護士、税理士特許、商標、著作権、評価、名義変更。
家計全体を見たいファイナンシャル・プランナー保険、老後資金、納税資金、専門家紹介。
遺族年金等社会保険労務士遺族年金、社会保険関係手続。

依頼の順序としては、紛争があるなら弁護士、不動産登記中心なら司法書士、相続税が発生しそうなら税理士を早期に入れるのが実務的です。境界、評価、売却、農地、会社承継が絡む場合は、途中から専門家を追加する。

Section 26

不動産の相続でよくある失敗

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

26.1 相続登記を先送りする

相続登記をしないまま年月が経つと、相続人がさらに死亡し、関係者が増える。必要な戸籍が膨大になり、連絡不能者、認知症、海外居住者、未成年者が現れることもある。2024年4月1日以降は義務化もあるため、先送りのリスクは大きい。

26.2 固定資産税評価額だけで分ける

固定資産税評価額は便利だが、実勢価格とは異なります。特に都市部、再建築不可、借地権、底地、共有持分、収益物件では、実態と乖離することがある。

26.3 共有にして問題を先送りする

「とりあえず共有」は将来の紛争を増幅させる。共有者が増えた後の解消は、代償金、共有物分割、売却同意、所在不明者対応などが難しくなります。

26.4 相続税申告だけをして登記しない

相続税申告と相続登記は別手続です。相続税申告をしても登記簿上の名義は自動的には変わらない。

26.5 売却代金だけ見て譲渡所得税を忘れる

相続した不動産を売却した場合、譲渡所得税が発生することがある。相続税を払ったから売却税金は不要、という理解は誤りです。

26.6 遺言書で不動産の表示が曖昧

「実家」「自宅」「土地全部」といった表現だけでは、私道、別棟、共有持分、敷地権、未登記建物が漏れることがある。遺言では登記簿に基づく特定が重要です。

Section 27

不動産の相続 ― ケース別の基本方針

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

27.1 親の自宅を一人が相続して住み続けたい

この場合は、代償分割が中心になります。取得者が他の相続人に代償金を払えるか、相続税納税資金があるか、住宅ローンを組めるかを確認する。配偶者が住み続ける場合は配偶者居住権も検討する。

27.2 相続人全員が遠方で誰も住まない

換価分割が有力です。相続登記、残置物整理、測量、境界確認、解体、空き家特例、譲渡所得税、売却代金分配を一体で計画する。

27.3 収益物件を相続した

賃貸契約、敷金、管理委託、ローン、修繕履歴、空室率、賃料収入、所得税申告を確認する。取得者を一人に集約するか、法人化・売却・共有管理契約を検討する。

27.4 農地を相続した

相続登記に加え、農業委員会への届出を確認する。自ら耕作する、貸す、売る、農地バンクに貸す、転用する、国庫帰属を検討するなどの選択肢がある。農地法と税制が絡むため早めに相談する。

27.5 相続人がもめている

弁護士を中心に、遺産目録、評価資料、特別受益、寄与分、使途不明金、遺留分、遺言の有効性を整理する。感情的交渉だけでなく、調停に耐える資料を作成する。

Section 28

実務チェックリスト

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

28.1 初動チェック

  • 被相続人の死亡日、最後の住所、本籍を確認したか。
  • 遺言書の有無を確認したか。
  • 相続人候補を戸籍で確認したか。
  • 相続放棄を検討すべき負債や管理困難不動産がないか。
  • 不動産の一覧を作成したか。
  • 固定資産税納税通知書、名寄帳を確認したか。
  • 登記事項証明書、公図、測量図を取得したか。
  • 相続税申告の要否を概算したか。
  • 不動産の管理者、鍵、保険、公共料金を確認したか。

28.2 遺産分割前チェック

  • 不動産ごとの評価方法を合意したか。
  • 誰が取得するか、売却するか、共有するかを検討したか。
  • 代償金の金額、支払期限、支払方法を定めたか。
  • 売却する場合、相続登記、測量、残置物、解体、税金を確認したか。
  • 賃貸不動産の賃料収入と費用精算を定めたか。
  • 未成年者、不在者、成年後見等の問題がないか。
  • 遺留分侵害の可能性を確認したか。

28.3 登記・税務チェック

  • 相続登記期限を記録したか。
  • 遺産分割成立後3年以内の追加登記義務を確認したか。
  • 登録免許税を試算したか。
  • 小規模宅地等の特例の適用可能性を確認したか。
  • 相続税申告期限を確認したか。
  • 売却予定がある場合、譲渡所得税、取得費、取得時期、特例を確認したか。
  • 空き家特例や取得費加算の期限を確認したか。
Section 29

不動産の相続 ― よくある質問

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

Q1. 不動産の相続では、相続登記をしないと売却できませんか。

一般的には、売却前に相続登記が必要とされています。買主へ所有権移転登記をするには売主が登記名義人である必要があるため、被相続人名義のままでは実務上売却が進みにくい場合があります。具体的な進め方は、登記状況や売却条件を確認したうえで司法書士、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 遺産分割協議がまとまらない場合、相続登記義務はどうなりますか。

一般的には、協議がまとまらない場合でも相続登記の基本的義務は問題になります。相続人申告登記を利用することで基本的義務を履行できる場合がありますが、遺産分割が成立した後は、その内容に沿った登記を別途行う必要があります。具体的な対応は、期限と登記状況を整理したうえで司法書士、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 固定資産税評価額で遺産分割してよいですか。

一般的には、相続人全員が納得していれば一つの方法になり得ます。ただし、固定資産税評価額と実勢価格が大きく異なる不動産では不公平が生じる可能性があります。評価資料や争点によって結論は変わるため、必要に応じて不動産査定や鑑定評価を検討し、専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相続税がかからなければ、相続登記もしなくてよいですか。

一般的には、相続税申告の有無と相続登記の義務は別に扱われます。相続税がかからない場合でも、不動産を相続したなら相続登記の対象になる可能性があります。具体的には、取得状況や期限を確認したうえで司法書士等へ相談する必要があります。

Q5. 親名義の土地に子名義の建物がある場合、どう考えますか。

一般的には、土地と建物の所有者が異なるため、土地利用権、使用貸借、借地権、相続税評価、将来売却、建替えが問題になります。土地を誰が取得するかだけでなく、建物所有者との関係整理が必要です。個別の権利関係は資料により変わるため、専門家へ相談する必要があります。

Q6. 相続した空き家を放置するとどうなりますか。

一般的には、固定資産税、火災、倒壊、近隣被害、草木繁茂、不法投棄、管理責任の問題が生じる可能性があります。売却、賃貸、解体、国庫帰属、相続放棄の可否は、不動産の状態や期限によって判断が変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q7. 兄弟で共有にすれば公平ですか。

一般的には、共有は短期的には公平に見えることがあります。ただし、長期的には管理、売却、修繕、次の相続のたびに問題が増える可能性があります。共有を選ぶ場合は、管理、売却、費用負担のルールを明確にし、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q8. 不動産の相続で最初に相談すべき専門家は誰ですか。

一般的には、争いがある場合は弁護士、登記中心なら司法書士、相続税が発生しそうなら税理士が中心になることが多いです。評価、境界、売却、農地、会社承継が絡む場合は、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、行政書士、公認会計士などを組み合わせます。個別事情に応じて相談先は変わります。

Section 30

不動産の相続 ― 結論

制度・期限・評価・資料を分けて確認します。

不動産の相続は、権利、税金、登記、評価、利用、処分、家族関係が交差する総合実務です。単に「誰が家をもらうか」ではなく、相続人確定、遺言確認、相続放棄、相続税申告、相続登記、評価、遺産分割、売却、共有回避、境界、農地、空き家対策までを一体で設計しなければならない。

特に、2024年4月1日から相続登記が義務化された現在、不動産を相続した人は、名義変更を先送りすることが許されにくくなっている。過去の相続で名義が被相続人や祖父母のままになっている不動産も、早期に調査し、誰が相続人か、誰が取得するか、登記できるかを確認する必要があります。

不動産の相続で重要なのは、初期段階で「相続人」「不動産」「評価」「期限」「紛争可能性」を一覧化することです。そのうえで、弁護士、司法書士、税理士を中核とし、必要に応じて不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、行政書士、公証人、金融機関、保険会社、家庭裁判所手続の専門家を組み合わせます。専門職の連携こそが、不動産の相続を安全に終えるための最も重要な実務です。

Reference

この記事の参考情報源

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続人申告登記について」
  • 法務省「所有不動産記録証明制度について」
  • 法務省「住所等変更登記の義務化」
  • 法務局「法定相続情報証明制度について」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 裁判所「不在者財産管理人選任」
  • 裁判所「特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)」
  • 国税庁「相続人の範囲と法定相続分」
  • 国税庁「相続税の計算」
  • 国税庁「相続税の申告と納税」
  • 国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
  • 国税庁「土地家屋の評価」
  • 国税庁「小規模宅地等の特例」
  • 国税庁「登録免許税の税額表」
  • 国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
  • 国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
  • 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」
  • 国税庁「配偶者居住権等の評価」
  • 農林水産省「農地相続ポータル」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度について」