2σ Guide

事業承継・引継ぎ支援センターに
計画策定を相談する方法

相続、株式、事業用不動産、税務、登記、M&Aを一体で整理し、公的センターを入口に専門家へつなぐ実務手順を解説します。

47都道府県の公的窓口
10か月相続税申告の基本期限
3年相続登記の基本期限
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事業承継・引継ぎ支援センターに 計画策定を相談する方法

相続、株式、事業用不動産、税務、登記、M&Aを一体で整理し、公的センターを入口に専門家へつなぐ実務手順を解説します。

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事業承継・引継ぎ支援センターに 計画策定を相談する方法
相続、株式、事業用不動産、税務、登記、M&Aを一体で整理し、公的センターを入口に専門家へつなぐ実務手順を解説します。
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  • 事業承継・引継ぎ支援センターに 計画策定を相談する方法
  • 相続、株式、事業用不動産、税務、登記、M&Aを一体で整理し、公的センターを入口に専門家へつなぐ実務手順を解説します。

POINT 1

  • 事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法
  • 1. 相談目的を一文で定義:親族内承継、従業員承継、第三者承継、相続 発生後対応のどれに近いかを仮分類します。
  • 2. 都道府県のセンターを確認:所在地、予約方法、無料相談、秘密保持、専門家連携の有無を確認します。
  • 3. 会社・家族・期限の資料を用意:決算書、株主名簿、不動産資料、相続関係図、遺言、借入・保証資料をそろえます。
  • 4. 支援ルートを選ぶ:親族内、社内、第三者、事業整理の選択肢を比較し、必要な専門職へつなぎます。
  • 5. 年1回見直す:後継者の意思、株式、税務、家族関係、金融機関方針を更新します。

POINT 2

  • 事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 要旨
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 事業承継は、単に代表者を交代する手続ではありません。
  • センターは中立的な公的支援窓口であるため、相続人の一方だけの代理人として交渉や訴訟を行う機関ではありません。

POINT 3

  • 2. 事業承継・引継ぎ支援センターとは何か
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 2.1 公的な相談窓口としての性格
  • 2.2 センターの支援対象
  • 2.3 センターができることとできないこと

POINT 4

  • 3. なぜ相続問題でセンター相談が必要になるのか
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 3.1 会社は「相続財産」であると同時に「継続する事業」である
  • 3.2 相続人の公平と会社の安定は衝突しやすい
  • 3.3 期限のある制度を見落としやすい

POINT 5

  • 事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相談前に整理すべき五つの問い
  • 4.1 誰が現在の経営者か
  • 4.2 誰が後継者候補か
  • 4.3 何を承継するのか
  • 4.4 相続人間で争いがあるか
  • 4.5 期限が迫っている手続は何か
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

POINT 6

  • 5. 事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 5.1 手順1: 相談目的を一文で定義する
  • 5.2 手順2: 都道府県のセンターを確認する
  • 5.3 手順3: 初回相談に持参する資料を準備する

POINT 7

  • 事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相続の段階別に見る相談戦略
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 6.1 経営者が生存し、判断能力が十分な場合
  • 6.2 経営者の判断能力低下が心配な場合
  • 6.3 相続発生後で争いがない場合

POINT 8

  • 事業承継・引継ぎ支援センター相談で作る 事業承継計画に必ず入れるべき項目
  • 制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 7.1 株式と議決権の設計
  • 7.2 事業用不動産の整理
  • 7.3 借入金、担保、経営者保証

まとめ

  • 事業承継・引継ぎ支援センターに 計画策定を相談する方法
  • 事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法:まず重要な構造をつかみます。
  • 事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 要旨:制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 2. 事業承継・引継ぎ支援センターとは何か:制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法

まず重要な構造をつかみます。

このページでは、事業承継・引継ぎ支援センターを、相続、株式、税務、登記、金融、M&Aを束ねる入口として使う方法を整理します。センターは公的な相談窓口ですが、相続人間の交渉、税務申告、登記、裁判所手続を一手に担う機関ではありません。

次の比較一覧は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

経営

代表者と後継者を決める

従業員、取引先、許認可、金融機関、経営者保証を含めて、誰が事業を継続するかを確認します。

財産

株式と事業用資産を整理する

自社株式、事業用不動産、設備、貸付金、借入金、保証を誰がどの順番で承継するかを確認します。

相続

家族合意と期限を管理する

遺言、遺産分割、遺留分、相続税10か月、相続登記3年、未成年者や後見利用者の利益相反を整理します。

次の手順図は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

センター相談を成果へつなげる順序

相談目的を一文で定義

親族内承継、従業員承継、第三者承継、相続発生後対応のどれに近いかを仮分類します。

都道府県のセンターを確認

所在地、予約方法、無料相談、秘密保持、専門家連携の有無を確認します。

会社・家族・期限の資料を用意

決算書、株主名簿、不動産資料、相続関係図、遺言、借入・保証資料をそろえます。

支援ルートを選ぶ

親族内、社内、第三者、事業整理の選択肢を比較し、必要な専門職へつなぎます。

年1回見直す

後継者の意思、株式、税務、家族関係、金融機関方針を更新します。

次の注意項目は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

遺留分

後継者に株式や事業用資産を集中させるほど、非後継者への代償金、生命保険、説明記録が重要になります。

相続税10か月

相続発生後は申告・納税期限を意識し、事業承継計画と税額試算を並行して進めます。

相続登記3年

事業用不動産が個人名義や共有のままだと、担保、M&A、賃貸借、建替えが止まる可能性があります。

税制期限

法人版・個人版の事業承継税制には計画提出や承継実行の期限と継続管理があります。

Section 01

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 要旨

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

このページは、相続問題を抱える読者が「事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法」を実務的に理解できるように、相談前の準備、初回相談で伝えるべき事項、計画策定の中身、相続人間の紛争がある場合の専門職連携、税務・登記・裁判所手続との接続、相談後の実行管理までを体系的に解説するものです。

事業承継は、単に代表者を交代する手続ではありません。中小企業庁の事業承継ガイドラインは、事業承継を親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継に整理し、経営権、株式や事業用資産、負債、保証、知的資産を含む経営資源の承継として位置付けています。したがって、相続の場面では、遺産分割、自社株式評価、事業用不動産の名義、相続税、遺留分、会社支配権、従業員の雇用、取引先の信用が同時に問題となります。

事業承継・引継ぎ支援センターは、全国の都道府県に設置された公的相談窓口であり、中小企業の親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継、後継者人材バンクなどを支援します。令和6年度の公表資料では、相談件数、第三者承継の相談、成約支援件数、後継者人材バンクの実績が示され、相談窓口としての実務的利用が広がっています。

結論からいえば、相談の成功を左右するのは、初回相談前に「誰が何を承継するのか」「相続人間で争いがあるのか」「会社の株主構成と事業用資産はどうなっているのか」「税制や登記の期限が迫っていないか」を整理することです。センターは中立的な公的支援窓口であるため、相続人の一方だけの代理人として交渉や訴訟を行う機関ではありません。争いがある相続では弁護士、相続登記や不動産名義では司法書士、相続税や事業承継税制では税理士、会社価値や事業計画では公認会計士や中小企業診断士との連携が不可欠です。

Section 02

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る このページで扱う問題

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

このページの中心テーマは「事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法」です。ここでいう計画策定とは、一般に次の三つを含む。

  1. 経営者、後継者、相続人、会社、従業員、取引先、金融機関が同じ方向を向くための事業承継計画
  2. 自社株式、事業用不動産、設備、借入金、保証、許認可、知的財産、取引関係を誰にどの順序で移すかという実行計画
  3. 相続税、贈与税、法人税、登録免許税、事業承継税制、遺言、遺産分割、相続登記などを踏まえた専門家連携計画

とくに相続に不安を抱える読者にとって重要なのは、センターへの相談と、弁護士、司法書士、税理士などの個別専門職への相談を混同しないことです。センターは事業承継の入口として極めて有用ですが、紛争代理、税務代理、登記申請、裁判所提出書類作成などには、それぞれ法律上または実務上の専門職が関与します。

Section 03

2. 事業承継・引継ぎ支援センターとは何か

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

2.1 公的な相談窓口としての性格

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継に関する公的相談窓口です。中小企業庁は、各都道府県に公的相談窓口としてセンターを設置し、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継、事業承継計画の支援などに対応する旨を案内しています。中小機構のポータルも、センターが全国の中小企業を支援する相談窓口であり、親族や従業員への承継、第三者への引継ぎ、後継者人材バンクを扱うことを示しています。

多くのセンターは無料相談、秘密厳守、中立的支援を掲げています。都道府県ごとのセンター紹介では、無料・秘密厳守の相談、弁護士や税理士などの専門家との連携、地域金融機関や商工団体との連携が案内されています。したがって、民間のM&A仲介会社や個別専門家事務所と異なり、相談者は最初の整理窓口として利用しやすいです。

2.2 センターの支援対象

センターの対象は、中小企業、小規模事業者、個人事業主などです。実務上は次のような相談が想定されます。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

相談類型 典型例 センター相談で整理する事項
親族内承継 子、配偶者、兄弟姉妹、甥姪が後継者候補 後継者育成、株式移転、遺言、遺留分対策、相続税、経営権集中
役員・従業員承継 番頭、役員、店長、工場長への承継 株式取得資金、金融機関対応、保証、現経営者の退任条件
第三者承継 後継者不在のためM&Aを検討 事業価値の見える化、譲渡候補探索、M&A支援機関との接続
個人事業承継 店舗、医院、工場、農業、士業事務所など 事業用資産、許認可、屋号、取引契約、個人版事業承継税制
相続発生後の事業継続 経営者死亡後に相続人が方針未定 代表者変更、事業継続可否、相続人間協議、専門家連携

2.3 センターができることとできないこと

センターができることは、事業承継課題の発見、事業の見える化、承継方法の選択肢整理、事業承継計画の策定支援、後継者不在時の第三者承継支援、関係専門家や支援機関との連携です。中小機構の公表資料は、事業承継計画の策定支援について、株式や事業用資産の集中、金融機関との調整、税制活用、後継者育成などを可視化するものとして説明しています。

一方で、センターは、特定の相続人の代理人として相手方と交渉したり、遺産分割調停で代理活動をしたり、相続税申告書を作成したり、不動産登記申請を代理したりする機関ではありません。争いがある場合は弁護士、登記が必要な場合は司法書士、税務判断や申告が必要な場合は税理士など、各専門職が中心となります。

Section 04

3. なぜ相続問題でセンター相談が必要になるのか

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

3.1 会社は「相続財産」であると同時に「継続する事業」である

相続では、預金、不動産、有価証券などの財産を誰が取得するかが問題になります。しかし、中小企業の承継では、会社や事業は単なる財産ではありません。従業員が働き、顧客と契約し、金融機関から借入れ、仕入先に支払い、税務申告を継続する経済活動そのものです。

そのため、相続人間で遺産分割がまとまらないまま時間が経過すると、会社の意思決定が止まり、取引先や従業員が不安を抱き、金融機関対応が遅れ、事業価値が低下するおそれがあります。裁判所の案内でも、遺産分割について相続人間の話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用でき、調停では事情聴取、資料提出、鑑定などを通じて合意形成を図ると説明されています。しかし、裁判所手続だけでは事業承継計画そのものは完成しません。会社の経営をどう継続するかという視点が必要です。

3.2 相続人の公平と会社の安定は衝突しやすい

相続人が複数いる場合、会社を継ぐ一人に自社株式や事業用資産を集中させると、他の相続人は「自分の取り分が少ない」と感じることがあります。逆に、形式的な公平を優先して自社株式を相続人全員で分散取得すると、会社の株主意思決定が不安定になります。

この緊張関係は、事業承継計画の中核です。計画では、後継者に必要な議決権を集中させつつ、他の相続人には代償金、生命保険金、非事業用財産、遺言、遺留分対策、種類株式、持株会社、信託などを組み合わせて納得可能性を高めることが検討されます。これらはセンターだけで完結するものではなく、弁護士、税理士、司法書士、公認会計士などとの協働が必要です。

3.3 期限のある制度を見落としやすい

相続と事業承継には重要な期限があります。相続税の申告と納税は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。相続登記は、2024年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく申請しない場合には過料の対象となり得ます。

法人版事業承継税制の特例措置については、2026年5月時点で、特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日、特例措置の対象となる承継期限が令和9年12月31日と案内されています。個人版事業承継税制については、個人事業承継計画の提出期間が令和10年9月30日までとされています。これらの制度は細かな要件と手続があるため、税理士や認定経営革新等支援機関との連携が不可欠です。

Section 05

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相談前に整理すべき五つの問い

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

センターに相談する前に、次の五つを紙に書き出します。完璧である必要はありません。むしろ、不明点を明確にすることが初回相談の価値を高めます。

4.1 誰が現在の経営者か

代表取締役、実質的な経営者、株式の過半数を持つ人、事業用不動産の所有者、金融機関との主たる交渉者が一致しているとは限りません。父が代表者、母が土地所有者、長男が専務、二男が工場長、長女が経理担当、株式は父母と子どもに分散という状況も珍しくありません。

初回相談では、法的な代表者と実質的な意思決定者を分けて伝えます。

4.2 誰が後継者候補か

後継者候補がいる場合は、その人の氏名、年齢、会社での役職、勤務年数、保有株式、経営意欲、他の相続人との関係を整理します。候補者がいない場合は、従業員承継、第三者承継、廃業、事業縮小、資産売却などを比較検討します。

中小企業庁のガイドラインは、親族内承継では準備期間と後継者教育、第三者承継では外部候補者探索や企業価値の磨き上げに十分な時間が必要であると整理しています。したがって、後継者候補の有無は相談の最初に伝えるべき最重要事項です。

4.3 何を承継するのか

承継対象は、株式、事業用不動産、機械設備、車両、預金、借入金、保証、取引先契約、許認可、知的財産、従業員、ノウハウ、ブランド、顧客名簿、ウェブサイト、商標、業務マニュアルなど多岐にわたる。

中小企業庁のガイドラインは、事業承継では人、資産、知的資産という経営資源の承継が重要であると説明しています。計画策定では、目に見える財産だけでなく、顧客からの信頼、技術、経営理念、社内文化まで含めて整理します。

4.4 相続人間で争いがあるか

すでに「長男が会社を使い込んだ」「役員報酬が不公平」「生前贈与が不公平」「遺言が無効ではないか」「株式評価が高すぎる」「父の判断能力が低下していた」などの主張がある場合、センター相談と並行して弁護士に相談します。センターは事業の継続と承継の整理を支援できるが、相続人間の代理交渉や訴訟活動は弁護士の領域です。

争いが顕在化していない場合でも、他の相続人が知らないまま計画を進めると、後日「隠していた」と受け止められることがあります。誰に、いつ、どの範囲を説明するかも計画の一部です。

4.5 期限が迫っている手続は何か

相続税申告、相続登記、代表者変更、許認可更新、借入金の返済条件変更、金融機関への報告、株主総会、役員任期、契約更新、税制特例の計画提出など、期限のある手続を一覧化します。期限が迫っている場合は、センター相談より先に税理士、司法書士、弁護士などへ緊急相談すべき場合があります。

Section 06

5. 事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

ここからは、実際に「事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法」を手順として示します。

5.1 手順1: 相談目的を一文で定義する

最初に、相談目的を一文にします。例は次のとおりです。

「父が代表を務める製造業について、長男を後継者とする事業承継計画を作りたいが、株式、工場土地、相続税、二男への説明が不安です。」

「母が営む飲食店について、後継者がいないため、第三者承継か廃業かを比較し、計画を作りたい。」

「代表者が急死し、相続人間で株式と不動産の分け方が未定ですが、従業員と取引先を守るため、事業継続の方針を整理したい。」

この一文があると、センター側は親族内承継、従業員承継、第三者承継、相続発生後対応のどれに近いかを判断しやすいです。

5.2 手順2: 都道府県のセンターを確認する

中小企業庁と中小機構は、都道府県ごとのセンター情報を案内しています。通常は会社所在地または主たる事業所所在地のセンターから始めます。遠隔地に相続人がいる場合でも、まず事業が所在する地域のセンターに連絡し、必要に応じて他地域の専門家や支援機関との連携を相談します。

電話または問い合わせフォームを使う際は、次の事項を簡潔に伝えます。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

伝える事項
相談者の立場 長男、配偶者、現代表、後継者候補、従業員、相続人代表
事業形態 株式会社、合同会社、個人事業、医療法人、農業法人など
業種と規模 製造業、従業員25名、年商3億円など
現在の状況 代表者が高齢、相続発生済み、後継者未定、M&A検討中
希望 事業承継計画の策定、専門家紹介、M&Aの入口相談
緊急性 相続税申告期限が近い、金融機関対応が迫っているなど

5.3 手順3: 初回相談に持参する資料を準備する

初回相談は、資料が少なくても可能です。ただし、計画策定を目的とするなら、次の資料があると議論が具体化します。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

分野 資料例 主な確認目的
会社概要 会社案内、登記事項証明書、定款、株主名簿、役員一覧 支配権、役員任期、株式構成
財務 直近3期分の決算書、税務申告書、試算表、借入金一覧 収益力、財務状況、金融機関対応
資産 事業用不動産の登記事項証明書、固定資産税通知、賃貸借契約 事業用資産の所有者、相続登記
株式 株主名簿、株券発行有無、過去の贈与資料 株式集中、議決権、評価
相続 戸籍関係、家族構成図、遺言書、遺産目録、生命保険資料 相続人、遺産分割、遺留分
税務 贈与履歴、相続税試算、事業承継税制の検討資料 税負担、納税猶予、提出期限
契約 金融機関契約、保証契約、主要取引契約、許認可資料 保証、契約承継、許認可
経営 事業計画、組織図、主要顧客一覧、後継者育成計画 承継後の事業継続

資料がそろっていない場合は、手元にあるものだけでよいです。重要なのは、わからないことを隠さず「不明」と書くことです。

5.4 手順4: 初回相談では三層に分けて話す

初回相談では、話が相続感情に流れやすいです。相談者は次の三層に分けて説明するとよいです。

第一層は事実です。会社名、業種、役員、株主、相続人、財産、負債、期限を述べます。

第二層は問題です。後継者未定、株式分散、相続人不仲、相続税資金不足、金融機関保証、事業用不動産の名義未整理などを述べます。

第三層は希望です。会社を残したい、売却も検討したい、特定の子に継がせたい、全員が納得できる形にしたい、従業員を守りたいなどを述べます。

この三層を区別すると、センターは計画策定の範囲を設計しやすくなる。

5.5 手順5: 支援ルートを選択する

センター相談後の主なルートは次の四つです。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

ルート 適する状況 計画上の焦点
親族内承継 後継者候補が家族内にいる 株式集中、遺言、遺留分、後継者育成、税制
役員・従業員承継 親族に後継者がいないが社内に候補者がいる 株式取得資金、保証解除、経営権移転
第三者承継 社内外に後継者がいない、M&Aを検討 企業価値、譲渡条件、情報管理、買い手探索
事業整理 承継困難、採算悪化、資産整理が必要 廃業手続、債務整理、従業員対応、資産売却

中小M&Aを検討する場合には、中小企業庁の中小M&Aガイドラインも参照します。第3版では、仲介者やFAの手数料、サービス内容、広告や営業、利益相反、最終契約、経営者保証などについて整理がされています。M&A支援機関登録制度も活用し、専門業者を選ぶ際は登録状況、報酬体系、利益相反管理、秘密保持を確認します。

5.6 手順6: 事業承継計画の骨子を作る

中小企業庁のガイドラインは、事業承継のステップとして、経営状況、経営課題、経営資源の見える化、磨き上げ、事業承継計画の策定、M&A工程、承継実行などを示しています。計画策定では、概ね次の項目を文書化します。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

項目 内容
現状分析 会社概要、財務、株主、資産、負債、強み、弱み
承継方針 親族内、社内、第三者、廃業、複合案
後継者 候補者、役職、教育計画、権限移譲
株式・資産 移転方法、時期、評価、資金、登記
税務 相続税、贈与税、事業承継税制、納税資金
法務 遺言、遺留分、定款、株主間合意、契約
金融 借入金、保証、担保、金融機関説明
人事 従業員説明、役員体制、キーパーソン維持
事業戦略 承継後の売上計画、投資、撤退、改善
実行工程 1年、3年、5年、10年の工程表
リスク対応 経営者死亡、認知症、後継者辞退、相続紛争

中小企業庁のガイドラインは、事業承継計画について、現状分析、環境変化の予測、承継時期を含む事業の方向性、具体的目標、課題整理などを含めることを示しています。つまり、計画書は単なる様式ではなく、現経営者、後継者、相続人、従業員、金融機関の認識をそろえるための道具です。

5.7 手順7: 専門職との役割分担を決める

センター相談で方向性が見えたら、各専門職の担当領域を明確にします。役割分担を曖昧にすると、同じ資料を何度も提出し、判断が遅れます。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

専門職 中核業務 事業承継計画での役割
弁護士 相続紛争、遺留分、交渉、調停、審判、訴訟、契約 相続人間の合意形成、遺言設計、株主間紛争、M&A契約、経営者保証問題
司法書士 相続登記、不動産名義変更、会社登記、裁判所提出書類作成 事業用不動産の相続登記、役員変更、株式承継に伴う登記、法定相続情報
税理士 相続税申告、贈与税、税務相談、税務代理、税務調査対応 自社株評価、納税資金、事業承継税制、特例承継計画、申告期限管理
行政書士 官公署提出書類、権利義務書類、事実証明書類の作成。ただし他法令で制限される業務を除く 遺産分割協議書案、許認可承継、契約書類整理、相続関係説明資料
公証人 公正証書遺言、公証事務 遺言の公正証書化、任意後見契約、死後事務委任などの公証
遺言執行者 遺言内容の実現 株式や預金などの遺言執行、後継者への財産移転
信託銀行等 遺言信託、遺言保管、遺言執行、資産承継支援 大規模資産や金融資産の管理、遺言執行体制
不動産鑑定士 不動産価値評価 工場、店舗、賃貸物件、底地、借地権などの評価
土地家屋調査士 表示登記、境界、分筆 事業用土地の境界確認、分筆、建物表示登記
宅地建物取引士・不動産業者 不動産取引実務 相続不動産の売却、事業用不動産の賃貸借、譲渡先探索
公認会計士 財務監査、財務分析、株式価値、内部管理 非上場株式評価、企業価値分析、M&Aデューデリジェンス
中小企業診断士 経営診断、経営改善、承継計画 事業の見える化、磨き上げ、後継者育成、経営改善計画
弁理士 特許、商標、意匠など知的財産 商標や特許の名義、ライセンス、知財評価
ファイナンシャル・プランナー 家計、保険、資産設計 納税資金、生命保険、退職後資金、代償金原資
社会保険労務士 年金、労務、社会保険 役員退任、従業員承継、遺族年金、就業規則
家庭裁判所関係者 調停、審判、手続進行、調査、鑑定 遺産分割調停、審判、鑑定、専門委員、特別代理人

弁護士会は、相続で争いが生じる前の予防や紛争発生後の対応について弁護士が助言できることを案内しています。税理士会は、税務代理、税務書類作成、税務相談を税理士の業務として説明しています。行政書士会は、官公署提出書類、権利義務書類、事実証明書類の作成を扱う一方、他法令で制限される業務はできないことを示しています。このような業務範囲を理解して、センターを入口に適切な専門職へ接続することが重要です。

5.8 手順8: 計画を実行し、定期的に更新する

事業承継計画は作って終わりではありません。経営者の健康、後継者の能力、金融機関の方針、税制、相続人の生活状況、会社の業績、土地価格、M&A市場は変化します。少なくとも年1回、決算後または株主総会後に見直します。

見直し項目は次のとおりです。

  1. 後継者候補の意思と能力に変化がないか
  2. 株式や事業用資産の所有状況が計画通りか
  3. 相続税や贈与税の試算が最新か
  4. 遺言、生命保険、代償金の設計が現在の家族関係に合うか
  5. 会社の業績や借入金が計画と乖離していないか
  6. 金融機関や主要取引先に説明すべき変化がないか
  7. 事業承継税制の届出や報告を忘れていないか
  8. 相続登記や会社登記に漏れがないか
  9. M&Aを検討している場合、情報管理と候補先探索が適切か
Section 07

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相続の段階別に見る相談戦略

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

6.1 経営者が生存し、判断能力が十分な場合

もっとも望ましい時期です。経営者本人が株式、事業用不動産、借入金、保証、後継者、遺言、退職金、生命保険について意思を明確にできるからです。この段階では、センターに相談して事業承継計画を作成し、税理士による相続税・贈与税試算、弁護士による遺留分対策、司法書士による不動産と会社登記の確認、公証人による公正証書遺言の検討を進めます。

法務省の自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言を法務局で保管する制度ですが、法務局は遺言の内容に関する相談には応じられないため、内容に不明点がある場合は法律専門家に相談する必要があります。会社承継を含む遺言は、文言の誤りが経営権に直結するため、公正証書遺言や弁護士・司法書士等の確認を検討する価値が高いです。

6.2 経営者の判断能力低下が心配な場合

認知症などで経営者の判断能力が低下すると、株式譲渡、贈与、遺言、金融機関対応、M&A契約などが難しくなる。任意後見、家族信託、議決権設計、種類株式、役員体制などを検討するには、早い段階で弁護士、司法書士、税理士に相談する必要があります。センターには、経営者の健康状態や意思確認の状況を正直に伝えます。本人の意思が確認できない場合、センターの計画策定だけで解決することはできません。

6.3 相続発生後で争いがない場合

相続発生後でも、相続人全員が会社を残す方向で一致しているなら、センター相談は有効です。まず税理士が相続税申告期限と財産評価を確認し、司法書士が相続登記や役員変更登記を確認し、センターが事業継続と後継者への承継計画を整理します。

ただし、相続財産の分け方が決まる前に会社の重要資産を処分すると、後日トラブルになるおそれがあります。相続人全員の同意、代表者権限、株主権、金融機関契約を確認して進めます。

6.4 相続発生後で争いがある場合

相続人間で対立がある場合、最優先は弁護士への相談です。遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の遺産分割調停または審判が利用されます。センター相談は、会社の現状、事業継続の必要性、承継候補、M&A可能性などを客観的に整理するために活用できるが、相続人の一方を代理して相手を説得する場ではありません。

この局面では、センター相談の目的を「紛争解決」ではなく「事業継続上の選択肢整理」と位置付ける。弁護士が中心となり、税理士、公認会計士、不動産鑑定士などが評価資料を整え、必要に応じて調停や審判で利用できる資料に落とし込みます。

6.5 後継者不在で第三者承継を検討する場合

後継者がいない場合は、早期にセンターへ相談します。第三者承継では、買い手候補の探索、企業価値、従業員継続、取引先承継、情報漏えい防止、秘密保持、最終契約、表明保証、経営者保証の処理が重要になります。中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、仲介者やFAの説明義務、利益相反、手数料、広告や営業、最終契約、経営者保証について注意点を示しています。

相続と第三者承継が重なる場合は、譲渡代金が相続財産となるのか、株式を誰が売るのか、相続人全員の同意が必要か、税金は誰が負担するのかを明確にします。

Section 08

事業承継・引継ぎ支援センター相談で作る 事業承継計画に必ず入れるべき項目

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

7.1 株式と議決権の設計

株式会社の場合、経営権の中心は株式です。後継者が代表取締役になっても、株式の議決権を十分に持っていなければ、役員選任、定款変更、重要事項の決定が不安定になります。計画では、誰が何株持っているか、議決権割合はどうか、相続や贈与後にどう変化するかを表で示します。

検討すべき事項は次のとおりです。

  1. 現在の株主名簿が正確か
  2. 名義株や所在不明株主がいないか
  3. 株券発行会社か
  4. 譲渡制限規定があるか
  5. 後継者に必要な議決権をどう確保するか
  6. 他の相続人への代償をどう設計するか
  7. 事業承継税制の対象となり得るか
  8. 遺留分対策が必要か

経営承継円滑化法は、事業承継円滑化を支援する制度として、事業承継税制、金融支援、遺留分に関する民法特例、所在不明株主に関する会社法特例を含みます。これらは高度に専門的なため、弁護士、税理士、司法書士等と連携して検討します。

7.2 事業用不動産の整理

工場、店舗、倉庫、事務所、駐車場、社宅などの不動産は、会社所有、経営者個人所有、親族所有、借地、共有など、権利関係が複雑になりやすいです。会社が事業用建物を所有していても、土地は先代個人のままというケースもあります。

相続登記義務化により、相続で不動産を取得した場合は原則として3年以内に相続登記をする必要があります。事業用不動産の名義が未整理だと、金融機関担保、M&A、賃貸借契約、建替え、売却、分筆が進みません。司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産仲介業者との連携が必要です。

7.3 借入金、担保、経営者保証

中小企業では、会社借入に経営者個人の保証が付いていることが多いです。後継者が保証を引き継ぐのか、保証解除を金融機関と交渉するのか、担保不動産をどう扱うのかは、承継計画の重大論点です。経営者の死亡後、相続人が保証債務や担保権の存在を知らずに遺産分割を進めると、後から大きな問題になります。

センターには、借入先、借入残高、返済条件、担保、保証人、金融機関との関係を伝えます。税理士や中小企業診断士が財務改善計画を作り、弁護士が保証や契約上のリスクを確認し、金融機関と段階的に協議します。

7.4 後継者育成と権限移譲

後継者が決まっていても、取引先、金融機関、従業員、親族が後継者を認めるまでには時間がかかる。中小企業庁のガイドラインは、事業承継には準備期間が必要であり、後継者教育や関係者理解が重要であると示しています。

計画では、後継者の役職、担当業務、決裁権限、金融機関同行、主要顧客訪問、幹部面談、社内研修、外部研修、株式取得時期を具体化します。親族内承継では、現経営者がいつ何を手放すかも重要です。代表権は譲ったが実権は先代が握るという状況は、後継者の信用形成を妨げることがあります。

7.5 遺言、遺留分、代償金

自社株式や事業用資産を後継者に集中させる場合、遺言が重要になります。しかし、遺言があっても遺留分侵害額請求の問題が残ることがあります。弁護士は、遺留分、特別受益、寄与分、遺言能力、遺言執行、紛争予防の観点から計画を確認します。

代償金の原資として生命保険、役員退職金、非事業用資産、分割払い、会社からの配当などを検討することがあります。ただし、税務上の扱いや会社法上の制約があるため、税理士、公認会計士、弁護士の確認が必要です。

7.6 税務と納税資金

相続税や贈与税の負担が大きいと、後継者は株式や事業用資産を承継しても納税資金に苦しみます。法人版事業承継税制や個人版事業承継税制は、一定要件の下で納税猶予や免除を受ける制度ですが、期限、認定、届出、継続要件があります。センター相談では、税制の可能性を尋ねることはできますが、具体的な税額計算、申告、税務代理は税理士の担当です。

7.7 知的資産、許認可、契約

技術、ノウハウ、商標、特許、顧客情報、レシピ、職人の技能、地域での信用は、帳簿には表れにくいが事業価値の源泉です。中小企業庁のガイドラインも、知的資産を人材、技術、技能、知的財産、組織力、経営理念、顧客ネットワークなどの無形資産として整理しています。

許認可業種では、承継に伴う許認可の変更、届出、再取得が必要となることがあります。行政書士、弁護士、所管官庁への確認が必要です。

Section 09

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相談時に使える実務テンプレート

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

8.1 電話相談の文例

相談文例
事業承継計画について相談したく連絡しました。会社は〇〇県で〇〇業を営む株式会社です。代表者は父で、後継者候補は長男の私ですが、株式と事業用不動産、相続税、他の相続人への説明に不安があります。事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法と、初回相談に必要な資料を教えてください。

8.2 メール問い合わせの文例

件名: 事業承継計画策定の相談希望

本文例:

メール文例
〇〇県で〇〇業を営む株式会社〇〇について、事業承継計画の策定を相談したくご連絡いたしました。相談者は現代表者の子であり、後継者候補です。従業員は〇名、直近売上は約〇円、株式は現代表者が〇%、配偶者が〇%、子が〇%保有しています。事業用土地は現代表者個人名義で、相続税や遺留分、相続登記も気になっています。初回相談の予約方法、必要資料、親族内承継と税務・法務専門家連携の進め方についてご教示ください。よろしくお願いいたします。

8.3 初回相談メモの雛形

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

項目 記入欄
相談者 例: 長男、後継者候補、取締役
会社名・所在地
業種・従業員数
代表者年齢・健康状態
後継者候補
株主構成
事業用不動産の所有者
借入金・保証
相続人
遺言の有無
相続税申告の見込み
相続人間の対立
希望する承継方法
緊急期限
相談で聞きたいこと
Section 10

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る ケース別の専門的検討

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

9.1 ケース1: 父が代表、長男が後継者、二男が反対している

このケースでは、センター相談の目的は、長男への承継が事業継続上合理的かを見える化することです。長男の勤務実績、顧客対応、技術、従業員支持、金融機関評価を整理し、後継者育成計画を作ります。同時に、二男の相続分や遺留分に配慮し、代償金、生命保険、非事業用財産、遺言を検討します。

中心専門職は弁護士、税理士、司法書士です。二男との交渉や遺留分リスクは弁護士、自社株評価と税負担は税理士、不動産名義や登記は司法書士が担います。センターは、事業承継計画の枠組み、専門家連携、後継者育成、金融機関説明の整理に使います。

9.2 ケース2: 代表者が急死し、株式が相続人共有状態になっている

急死後は、まず誰が会社を代表して業務を継続できるかを確認します。会社の登記、定款、取締役会、株主構成、遺言の有無を確認します。相続税申告期限は原則10か月であり、事業用不動産がある場合は相続登記の期限も意識します。

相続人が合意できるなら、税理士、司法書士、センターが連携して事業継続と承継計画を作ります。合意できない場合は弁護士が中心となり、必要に応じて家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。センターには、会社の事業価値を落とさないための暫定方針、第三者承継の可能性、専門家の接続を相談します。

9.3 ケース3: 後継者不在でM&Aを検討しているが、相続人は売却に反対している

後継者不在の場合、会社を残す選択肢として第三者承継があります。しかし、相続人が売却に反対する場合、株式所有者、議決権、遺言、相続分、売却代金の分配、従業員保護を丁寧に説明する必要があります。M&Aを急ぐ前に、なぜ親族内承継が難しいのか、廃業した場合の従業員・取引先・地域への影響、売却した場合の条件を比較します。

中小M&Aガイドラインは、仲介者やFAの手数料、説明、利益相反、広告、最終契約などを重視しています。センターは公的な入口として、安易な売却や不透明な仲介契約を避けるための相談先になり得ます。

9.4 ケース4: 個人事業の店舗を子に継がせたい

個人事業では、会社株式ではなく、店舗設備、在庫、屋号、賃貸借契約、営業許可、顧客、従業員、借入金、個人名義の不動産が問題になります。法人版事業承継税制ではなく、個人版事業承継税制の可能性を検討します。中小企業庁は、個人版事業承継税制について、一定の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度であり、個人事業承継計画の提出期間などを案内しています。

行政書士は許認可、税理士は税務、司法書士は不動産登記、弁護士は賃貸借契約や相続紛争、中小企業診断士は事業計画を担当します。センターには、個人事業の承継手順と専門家連携を相談します。

Section 11

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る よくある誤解とリスク

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

10.1 「センターに相談すれば相続争いも解決してくれる」という誤解

センターは事業承継支援の窓口であり、相続人の代理人として交渉する機関ではありません。争いがある場合は弁護士に相談し、センターは事業面の整理や専門家連携の入口として使います。

10.2 「事業承継計画は税制のためだけの書類」という誤解

事業承継税制に関する特例承継計画や個人事業承継計画は重要です。しかし、事業承継計画全体は、後継者育成、株式、資産、金融、従業員、取引先、相続人説明を含む経営計画です。税制書類だけを作っても、事業や家族関係の問題は解決しません。

10.3 「自社株式は親族で均等に分ければ公平」という誤解

相続上の公平と会社経営上の安定は同じではありません。株式を均等に分けると、重要な意思決定が難しくなる場合があります。後継者に議決権を集中させ、他の相続人には別の方法で公平を確保する設計が必要となります。

10.4 「不動産の名義は後でよい」という誤解

事業用不動産の名義が未整理だと、担保設定、売却、M&A、建替え、賃貸借、相続人間の協議が難しくなります。相続登記義務化も踏まえ、早めに司法書士へ相談します。

10.5 「M&A仲介契約は急いで結んだ方がよい」という誤解

後継者不在の不安から、十分な検討なく仲介契約を結ぶと、手数料、専任条項、直接交渉制限、秘密保持、利益相反、最終契約で問題が生じることがあります。中小M&Aガイドラインと登録制度を確認し、センターや弁護士、税理士、公認会計士の助言を受けて進めます。

Section 12

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 家族会議と説明の進め方

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

事業承継では、計画の内容だけでなく、説明の順序が重要です。いきなり「長男に会社を渡す」と伝えると反発されやすいです。次の順序が実務的です。

  1. 会社の現状と課題を説明する
  2. 後継者が必要な理由を説明する
  3. 後継者候補の実績と今後の育成計画を説明する
  4. 自社株式や事業用資産を集中させる理由を説明する
  5. 他の相続人の生活や相続分への配慮を説明する
  6. 税理士や弁護士など第三者専門家の確認を受ける
  7. 遺言、生命保険、代償金、非事業用財産の案を示す
  8. 質問や不満を記録し、計画を更新する

感情的対立が強い場合は、家族会議を無理に開かず、弁護士を通じて調整します。センターは家族内の感情的調停をする機関ではありませんが、事業の現状と承継課題を客観資料として整理する助けになります。

Section 13

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 家庭裁判所手続と事業承継計画の接続

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

遺産分割調停や審判では、相続財産の範囲、評価、分割方法が問題となります。裁判所の案内は、調停で当事者から事情を聴き、必要に応じて資料提出や鑑定を行い、解決案を提示し、合意を目指すと説明しています。事業承継が関係する場合、非上場株式評価、会社の継続可能性、事業用不動産の必要性、後継者の経営能力、代償金支払能力が争点になり得ます。

この場合、弁護士が手続全体を担い、公認会計士や税理士が株式評価、不動産鑑定士が不動産評価、中小企業診断士が事業継続性、司法書士が登記関係を補助します。センター相談で作成した現状整理資料や事業承継計画の骨子は、直接の証拠になるかどうかは別として、協議の前提整理に役立つことがあります。

未成年者や成年後見制度利用者が相続人で、利益相反がある場合は、特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人などの選任が必要になることがあります。この点は弁護士または司法書士に確認します。

Section 14

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 税制と公的支援の位置付け

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

13.1 経営承継円滑化法

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を円滑にするため、事業承継税制、金融支援、遺留分に関する民法特例、所在不明株主に関する会社法特例などを用意しています。ただし、これらは要件が複雑であり、センターへの相談だけで適用が確定するものではありません。都道府県、税務署、認定経営革新等支援機関、税理士、弁護士、司法書士等の関与が必要となります。

13.2 法人版事業承継税制

法人版事業承継税制の特例措置では、一定要件の下で非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予や免除を受けられます。2026年5月時点の中小企業庁案内では、特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日、特例措置の対象となる承継期限は令和9年12月31日です。特例承継計画には、後継者、承継時期、承継までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを記載し、認定経営革新等支援機関の所見が必要とされます。

注意すべきは、センターで作る事業承継計画と、税制上の特例承継計画は同じではないという点です。前者は経営と相続の総合計画であり、後者は税制適用のための制度上の計画です。両者を整合させることが重要です。

13.3 個人版事業承継税制

個人版事業承継税制は、個人事業者の事業用資産に関する納税猶予制度です。中小企業庁は、個人事業承継計画を令和10年9月30日までに提出する必要があること、認定経営革新等支援機関による指導や助言が必要であることなどを案内しています。個人事業では、屋号や顧客関係だけでなく、土地、建物、機械、許認可、賃貸借契約を丁寧に整理する必要があります。

13.4 相続税と相続登記

相続税の申告・納税期限は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。事業承継計画では、この二つの期限を工程表に必ず入れる。

Section 15

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相談の品質を高める資料作成法

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

14.1 家系図ではなく相続関係図を作る

家系図は親族関係を示すだけで足りることが多いです。しかし事業承継では、各人が会社でどの役職か、株式を何株持つか、事業用不動産を持つか、会社借入の保証人か、経営に関与しているかを併記します。これを相続関係図と株主関係図を一体化した資料として作ります。

14.2 財産目録ではなく事業承継資産表を作る

通常の相続財産目録に加えて、事業承継資産表を作ります。そこには、会社財産、個人財産、会社が使っている親族財産を分けて記載します。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

区分 注意点
会社所有資産 機械、車両、在庫、売掛金、会社名義不動産 決算書と固定資産台帳を確認
経営者個人所有資産 会社が使う土地、建物、貸付金 相続登記、賃貸借、担保
親族所有資産 配偶者名義土地、兄弟共有土地 使用権限、賃料、相続後の継続性
無形資産 顧客、技術、商標、ノウハウ 知的資産として承継計画に記載
負債・保証 借入金、保証、担保 金融機関協議、相続放棄との関係

14.3 「希望」と「前提」を分ける

「長男に継がせたい」は希望です。「長男が株式を30%持っている」「長男が10年勤務している」「金融機関が長男を評価している」は前提です。希望と前提を分けると、専門家はリスクを評価しやすいです。

14.4 争点表を作る

相続人間で意見が違う場合は、争点表を作ります。

次の表は、この章の内容を具体的に整理したものです。何を表すかというと、本文で述べる論点を比較しやすい形にした情報です。なぜ重要かというと、項目ごとの違いや優先順位を見落としにくくなるためです。列や項目の並びを確認し、どの資料・期限・担当者が関係するかを読み取ってください。

争点 Aの意見 Bの意見 必要資料 担当専門職
自社株式評価 高すぎる 妥当 決算書、株式評価資料 税理士、公認会計士
工場土地 後継者が取得すべき 売却して分けるべき 登記、評価、賃貸借 弁護士、司法書士、不動産鑑定士
役員報酬 使い込みではないか 業務対価である 会計帳簿、議事録 弁護士、税理士
後継者 長男が適任 外部売却すべき 経歴、事業計画 センター、中小企業診断士
Section 16

事業承継・引継ぎ支援センター相談で見る 相談後のロードマップ

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

15.1 30日以内に行うこと

初回相談後30日以内に、議事メモを作成し、必要資料リストを完成させます。税務、法務、登記、経営の担当専門家を決め、次回相談日を設定します。緊急期限がある場合は、税理士や弁護士の初回面談を先に入れます。

15.2 90日以内に行うこと

株主構成、事業用不動産、借入金、保証、相続人、後継者候補、税務見込みを整理し、承継ルートを仮決定します。親族内承継なら遺言と株式移転、第三者承継ならM&A準備、従業員承継なら資金調達と保証問題を具体化します。

15.3 6か月以内に行うこと

事業承継計画の初版を作成し、関係者へ説明します。必要に応じて、公正証書遺言、生命保険、株式贈与、定款変更、金融機関説明、役員体制変更、事業承継税制の計画提出準備を進めます。

15.4 1年以内に行うこと

後継者の権限移譲を進め、株式や資産移転の第一段階を実行します。第三者承継の場合は、候補先探索、秘密保持、条件交渉、基本合意、デューデリジェンス、最終契約の段階に入る可能性があります。専門家の助言を受け、契約内容と税務を確認します。

Section 17

事業承継・引継ぎ支援センター相談の実務上の結論

制度説明と実務上の確認事項を分けて読みます。

事業承継・引継ぎ支援センターは、相続と事業承継が交差する問題を整理するための有力な公的相談窓口です。とくに、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継の選択肢を比較し、事業承継計画を作る段階では、相談の入口として有用です。

ただし、相続問題を抱える読者は、センターの機能を過大評価してはなりません。センターは中立的な支援機関であり、相続人間紛争の代理、税務申告、登記、裁判所手続の代理を一手に担うわけではありません。争いがある場合は弁護士、相続登記や会社登記は司法書士、相続税や事業承継税制は税理士、会社価値や事業改善は公認会計士や中小企業診断士、不動産評価は不動産鑑定士、境界や分筆は土地家屋調査士、許認可や書類整理は行政書士など、専門職の役割を組み合わせる。

計画策定の核心は、会社の存続と相続人の納得を両立させることです。株式を誰に集中させるか、事業用不動産をどう扱うか、相続税をどう払うか、遺留分にどう備えるか、後継者をどう育てるか、従業員と取引先にいつ説明するか。これらを一枚の工程表に落とし込むことが、相談を成果に変える。

したがって、読者が今すぐ行うべきことは次の三つです。

  1. 会社、家族、株式、事業用資産、負債、相続期限を一枚に整理する
  2. 都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに連絡し、計画策定の相談予約を取る
  3. 弁護士、司法書士、税理士など、案件に必要な専門職を早期に接続する

「事業承継・引継ぎ支援センターに計画策定を相談する方法」は、単なる窓口案内ではありません。相続、経営、税務、登記、金融、家族関係を同時に扱う総合的な実務戦略です。早く相談し、事実を整理し、専門職を組み合わせ、計画を更新し続けることが、事業と家族を守る最も現実的な方法です。

Section FAQ

よくある質問

個別判断を避け、一般情報として整理します。

Q1. 相続人の一人だけでもセンターに相談できますか

一般的には、事業承継の選択肢整理や相談先の確認は可能な場合があります。ただし、相続人全員の同意が必要な事項、会社代表者や株主の権限に関わる事項は、相談者一人だけでは決められない可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 事業承継税制の相談はセンターで足りますか

一般的には、制度概要や計画策定の入口相談には役立つとされています。ただし、具体的な適用判断、税額試算、申告、届出、継続要件管理は、税理士や認定経営革新等支援機関との連携が必要になる可能性があります。

Q3. 相続登記が終わっていなくても相談できますか

一般的には、相談自体は可能な場合があります。ただし、事業用不動産の名義が未整理だと、担保、M&A、賃貸借、売却、建替えが止まる可能性があります。具体的な登記手続は、司法書士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相談で最も大切なことは何ですか

一般的には、相続問題と経営問題を分けずに、同じ計画表に載せることが重要とされています。ただし、後継者、株式、事業用不動産、相続税、遺留分、保証、従業員、取引先、M&A可能性は個別事情で結論が変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考資料

  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン」
  • 中小企業庁「M&A、事業承継に関するご相談」
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎポータルサイト」
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制」
  • 中小企業庁「個人版事業承継税制」
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
  • 国税庁「相続税の申告と納税」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 法務局「法定相続情報証明制度」
  • 日本税理士会連合会「税理士の業務」