2σ Guide

信託銀行の遺言信託サービスの
仕組みと注意点

遺言書の作成相談、保管、死亡後の遺言執行を一体で支援するサービスについて、費用、法的限界、税務、不動産、専門家の役割分担まで確認します。

3か月相続放棄の検討期限
10か月相続税申告と納税
3年相続登記の申請義務
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信託銀行の遺言信託サービスの 仕組みと注意点

遺言書の作成相談、保管、死亡後の遺言執行を一体で支援するサービスについて、費用、法的限界、税務、不動産、専門家の役割分担まで確認します。

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信託銀行の遺言信託サービスの 仕組みと注意点
遺言書の作成相談、保管、死亡後の遺言執行を一体で支援するサービスについて、費用、法的限界、税務、不動産、専門家の役割分担まで確認します。
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  • 信託銀行の遺言信託サービスの 仕組みと注意点
  • 遺言書の作成相談、保管、死亡後の遺言執行を一体で支援するサービスについて、費用、法的限界、税務、不動産、専門家の役割分担まで確認します。

POINT 1

  • 信託銀行の遺言信託サービスの全体像
  • 遺言作成、保管、死亡後の執行を一体で見ると、利点と限界が整理しやすくなります。
  • 遺言の実現可能性を高める実務サービスです
  • 次の重要ポイントは、この章で扱う判断の軸を短くまとめたものです。
  • 最初に結論を確認しておくと、後続の制度説明や注意点のうち、どこを重点的に読むべきかをつかめます。

POINT 2

  • 信託銀行の遺言信託サービスで扱う範囲
  • サービス名だけで判断せず、契約書と実際の業務範囲を確認します。

POINT 3

  • 信託銀行の遺言信託サービスで使う基本用語
  • 相続人、受遺者、遺留分、死亡通知人を分けて理解すると、契約後の混乱を減らせます。
  • 1. 信託銀行、信託兼営金融機関
  • 2. 遺言
  • 3. 遺言執行者

POINT 4

  • 信託銀行の遺言信託サービスの基本構造
  • 1. 家族関係と財産を確認:相続人、財産、税務、不動産、負債、海外財産などを洗い出します。
  • 2. 公正証書遺言を整える:遺言内容、執行者、死亡通知人、必要資料を具体化します。
  • 3. 定期的に見直す:家族や財産の変化、法改正、連絡先変更を反映します。
  • 4. 就職可否を判断して執行:通知、財産調査、目録作成、換金、分配、完了報告へ進みます。

POINT 5

  • 信託銀行の遺言信託サービスの法的性質と限界
  • 名称に含まれる信託という言葉と、実際の遺言関連業務を区別します。
  • 遺言信託という呼び名
  • 遺言関連業務
  • 紛争解決ではない

POINT 6

  • 信託銀行の遺言信託サービスの費用構造
  • 初期費用だけでなく、保管料、変更手数料、執行報酬、外部専門家費用まで分解します。
  • 2. 公開例から見える費用上の注意点
  • 3. 「高いか安いか」ではなく「何を外注するか」で考える
  • 遺言信託の費用は、「申込時にいくらか」だけで判断してはいけない。

POINT 7

  • 信託銀行の遺言信託サービスが向くケースと慎重なケース
  • 家族関係、財産内容、紛争可能性によって向き不向きが変わります。
  • 1. 利用に向いているケース
  • 2. 慎重検討が必要なケース
  • 3. 向いていない可能性が高いケース

POINT 8

  • 信託銀行の遺言信託サービスで注意すべき9項目
  • 1. 注意点1 ― 遺留分を無視しない
  • 2. 注意点2 ― 遺言能力を証拠化する
  • 3. 注意点3 ― 受託範囲と免責、辞任条件を読む
  • 4. 注意点4 ― 税務申告は別であることが多い
  • 5. 注意点5 ― 不動産は相続登記、評価、売却、管理が難所になる
  • 6. 注意点6 ― 生命保険と遺言の整合性を確認する
  • 7. 注意点7 ― 会社株式と事業承継は別枠で設計する
  • 8. 注意点8 ― デジタル資産と情報資産を放置しない
  • 9. 注意点9 ― 家族への説明不足は紛争の原因になる
  • 遺留分、遺言能力、税務、不動産、会社株式、情報資産をまとめて確認します。

まとめ

  • 信託銀行の遺言信託サービスの 仕組みと注意点
  • 信託銀行の遺言信託サービスの全体像:遺言作成、保管、死亡後の執行を一体で見ると、利点と限界が整理しやすくなります。
  • 信託銀行の遺言信託サービスで扱う範囲:サービス名だけで判断せず、契約書と実際の業務範囲を確認します。
  • 信託銀行の遺言信託サービスで使う基本用語:相続人、受遺者、遺留分、死亡通知人を分けて理解すると、契約後の混乱を減らせます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

信託銀行の遺言信託サービスの全体像

遺言作成、保管、死亡後の執行を一体で見ると、利点と限界が整理しやすくなります。

次の重要ポイントは、この章で扱う判断の軸を短くまとめたものです。最初に結論を確認しておくと、後続の制度説明や注意点のうち、どこを重点的に読むべきかをつかめます。

遺言の実現可能性を高める実務サービスです

財産を預ければ相続問題が自動解決する商品ではなく、遺言設計、保管、死亡後の執行を金融機関の管理体制で進める仕組みとして理解することが重要です。

信託銀行の遺言信託サービスは、一般に、遺言書の作成相談、遺言書の保管、死亡後の遺言執行を一体として支援する相続関連サービスである。信託協会も、信託銀行等が遺言書作成の相談から保管、遺言の執行までを扱うサービスとして説明している。

もっとも、ここでいう「遺言信託」は、名称に「信託」とあるため誤解されやすい。多くの場合、遺言者の財産を生前から信託財産として移転する典型的な信託契約ではなく、信託銀行等が遺言執行者となることを中心とした「遺言関連業務」である。信託銀行は、銀行業務と信託業務に加え、遺言書の保管や相続関連業務などの併営業務を行うことができると説明されている。 したがって、利用者が理解すべき核心は、「財産を預ければ相続問題が自動的に解決する商品」ではなく、「遺言の設計、保管、死亡後の執行を、金融機関の管理体制の下で進めるための実務サービス」だという点である。

この記事の結論は次のとおりである。

  1. 信託銀行の遺言信託サービスは、相続人の負担を軽減し、遺言執行を組織的に行う利点がある。
  2. ただし、遺留分、遺言能力、使い込み疑い、不動産評価、非上場株式、海外財産、相続税などの論点がある場合、信託銀行だけで完結しないことが多い。
  3. 費用は「申込時手数料」「保管料」「変更手数料」「死亡後の遺言執行報酬」「実費」「外部専門家報酬」に分解して確認する必要がある。
  4. 争いが予想される相続では、弁護士を中心に、司法書士、税理士、不動産鑑定士、公認会計士などを組み合わせる体制が望ましい。
  5. 最も重要な注意点は、遺言内容の法的有効性、遺留分への配慮、財産の換金可能性、相続税の納税資金、契約後の定期見直しである。

この記事は、相続に不安を抱える一般読者を対象としつつ、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証人、遺言執行者、信託銀行担当者、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、公認会計士、家庭裁判所実務、その他周辺専門職の視点を統合した専門解説として構成する。

Section 01

信託銀行の遺言信託サービスで扱う範囲

サービス名だけで判断せず、契約書と実際の業務範囲を確認します。

Section 02

信託銀行の遺言信託サービスで使う基本用語

相続人、受遺者、遺留分、死亡通知人を分けて理解すると、契約後の混乱を減らせます。

1. 信託銀行、信託兼営金融機関

信託銀行とは、銀行業務に加えて信託業務を営む金融機関である。信託協会は、信託銀行について、預金や貸付などの銀行業務に加えて信託業務を行い、さらに遺言書保管や相続関連業務などの併営業務を行うことができると説明している。

また、信託協会は、銀行などの金融機関が信託業務を行うための兼営の認可、業務、監督を定める法律として「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」を説明し、同法により認可を得た金融機関を信託銀行または信託兼営金融機関と説明している。

2. 遺言

遺言とは、人が死亡後の財産承継等について、民法の方式に従って最終意思を表示する制度である。遺言は、単なる手紙やメモではなく、法律上の方式を満たさなければ効力が認められない。代表的な方式は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言である。

信託銀行の遺言信託サービスでは、公正証書遺言を前提とする、または公正証書遺言を強く推奨する設計が多い。公正証書遺言は公証人が関与し、公証役場で原本が保管されるため、方式不備、紛失、改ざんリスクを下げやすい。一方で、公正証書であっても、遺言能力、錯誤、詐欺、強迫、遺留分、内容解釈をめぐる争いが全く起きないわけではない。

3. 遺言執行者

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する者である。裁判所は、遺言によって遺言執行者が指定されていないとき、または遺言執行者がいなくなったときは、家庭裁判所が申立てにより遺言執行者を選任できると説明している。

信託銀行の遺言信託サービスでは、遺言書の中で信託銀行を遺言執行者に指定する構成が基本である。ただし、遺言書に名前が書かれていても、死亡後に信託銀行が遺言執行者として就職を承諾することが実務上の前提となる。財産が消滅している、遺言内容が執行不能である、紛争が深刻である、受託時の前提が大きく変わっているなどの事情があると、就職の可否が問題となる。

4. 死亡通知人

死亡通知人とは、遺言者が死亡したとき、信託銀行へ死亡事実を知らせる役割を担う人である。遺言信託では、遺言者が死亡しても、信託銀行がその事実を自動的に把握できるとは限らない。したがって、死亡通知人を適切に選び、連絡先を常に更新することが重要である。

死亡通知人は、相続人の一人、親族、近しい第三者、施設関係者などが候補となる。ただし、死亡通知人が高齢である、相続人と不仲である、連絡先が変わりやすい、海外居住であるといった事情がある場合、複数名を設定できるか、代替連絡手段を用意できるかを確認すべきである。

5. 相続人、受遺者、遺留分権利者

相続人とは、民法上、被相続人の財産上の権利義務を承継する人である。受遺者とは、遺言によって財産を取得する人であり、相続人である場合も、相続人でない第三者である場合もある。

遺留分権利者とは、一定の相続人に保障される最低限の取り分を有する人である。遺言で「長男に全部相続させる」「内縁の配偶者に全財産を遺贈する」「特定の団体に大部分を寄付する」と定めても、遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行う可能性がある。遺留分は、遺言信託の成否を左右する重要論点である。

6. 遺産整理業務との違い

遺言信託と混同されやすいものに、遺産整理業務がある。遺産整理業務は、遺言書がない場合、または遺言執行者としてではなく、相続人の委任に基づいて戸籍収集、財産調査、遺産分割協議書の作成支援、名義変更、預金払戻しなどを支援するサービスである。

次の比較表は、項目、遺言信託、遺産整理業務を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

項目遺言信託遺産整理業務
出発点生前の遺言作成と保管死亡後の相続手続
根拠遺言書、遺言執行者指定、契約相続人からの委任契約
誰の意思を中心にするか遺言者の最終意思相続人全員または依頼者の委任内容
遺産分割協議遺言で決まる部分は原則不要原則として相続人間の協議が必要
紛争時の限界遺留分、無効主張、使い込み疑いなどは弁護士領域になりやすい相続人間の争いがあると委任継続が難しいことがある
Section 03

信託銀行の遺言信託サービスの基本構造

契約前相談から死亡後の執行まで、時系列で確認します。

次の時系列は、信託銀行の遺言信託サービスがいつ何を扱うかを示しています。契約時点と死亡後で確認事項が変わるため、左から下へ進む順番に、どの段階で専門家を加えるべきかを読み取ってください。

契約前

家族関係と財産を確認

相続人、財産、税務、不動産、負債、海外財産などを洗い出します。

作成時

公正証書遺言を整える

遺言内容、執行者、死亡通知人、必要資料を具体化します。

保管中

定期的に見直す

家族や財産の変化、法改正、連絡先変更を反映します。

死亡後

就職可否を判断して執行

通知、財産調査、目録作成、換金、分配、完了報告へ進みます。

1. 登場人物

典型的な遺言信託の関係者は次のとおりである。

次の比較表は、関係者、役割を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

関係者役割
遺言者遺言を作成する本人
信託銀行等遺言書の作成相談、保管、遺言執行者としての候補者
公証人公正証書遺言を作成する公的専門職
証人公正証書遺言作成時に立ち会う者
死亡通知人遺言者死亡時に信託銀行へ連絡する者
相続人民法上の相続権を持つ者
受遺者遺言によって財産を受ける者
遺留分権利者遺言内容にかかわらず一定の最低保障を主張し得る者
税理士相続税、準確定申告、税務調査対応を担当する者
司法書士相続登記、不動産名義変更、登記書類を担当する者
弁護士紛争、交渉、調停、審判、訴訟、遺留分対応を担当する者

信託協会は、遺言信託の主な関係者として、遺言者、死亡通知人、遺言書保管者兼遺言執行者である信託銀行等を挙げている。

2. 契約前相談

最初の段階では、信託銀行担当者が、家族構成、財産内容、遺言者の希望、遺留分リスク、相続税の見込み、財産分配の実現可能性を聴取する。ここで重要なのは、「誰に何を遺したいか」だけではない。少なくとも次の情報が必要である。

次の比較表は、確認項目、重要性を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

確認項目重要性
戸籍上の相続人相続人の漏れは遺言設計の根本的欠陥になる
推定相続人の住所、関係性死亡後の連絡、紛争予測、遺留分対応に影響する
不動産の所在地、共有関係、担保登記、換金、管理、境界、借地借家関係に影響する
預貯金、有価証券、保険分配方法、納税資金、執行報酬の計算に影響する
負債、保証、未払税金相続放棄、限定承認、納税、債務弁済に影響する
生前贈与、特別受益遺留分、相続人間の不公平感に影響する
介護、同居、寄与事実上の不満、寄与分主張、感情対立に影響する
会社株式、事業用資産事業承継、議決権、株価評価、資金繰りに影響する
海外財産、海外居住者準拠法、税務、送金、本人確認に影響する
デジタル資産アクセス権、秘密鍵、利用規約、財産把握に影響する

この段階で、信託銀行担当者が法的紛争の代理や税務代理をするわけではない。相続税申告が必要な見込みなら税理士、不動産登記が必要なら司法書士、争いがあるなら弁護士、非上場株式があるなら公認会計士または税理士を早期に加えるべきである。

3. 遺言内容の設計

遺言内容の設計では、次の点を具体化する。

  1. 財産を誰に承継させるか。
  2. 財産を現物で渡すか、換金して金銭で分けるか。
  3. 配偶者の住まいをどう守るか。
  4. 障害のある子、未成年者、浪費傾向のある相続人をどう保護するか。
  5. 遺留分侵害額請求が出た場合の支払原資をどう確保するか。
  6. 相続税の納税資金をどこから出すか。
  7. 不動産売却が必要な場合、誰がいつ売却するか。
  8. 会社株式を誰に集約するか。
  9. 寄付、祭祀承継、墓地、仏壇、ペット、デジタル資産をどう扱うか。

形式上は有効な遺言であっても、実務上執行しにくい遺言がある。たとえば「全財産を長男に相続させる。ただし長男は次男に相当額を支払うこと」という記載は、支払額、支払期限、支払原資、利息、担保、遅延時の扱いが不明確だと争いを招く。「不動産を売却して均等に分ける」と書いても、共有者、借地権、境界、残置物、賃借人、接道、土壌汚染、農地法などの問題があると、換金まで長期化する。

4. 公正証書遺言の作成

公正証書遺言は、公証人が関与して作成される。公証人手数料は財産額等によって変動し、日本公証人連合会は公正証書作成手数料の考え方を公表している。

公正証書遺言の利点は次のとおりである。

次の比較表は、利点、説明を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

利点説明
方式不備リスクの低減公証人が方式を確認する
原本保管公証役場で原本が保管される
検認不要家庭裁判所の検認が不要である
本人確認公証人が本人確認を行う
実務上の信頼性金融機関や法務局での手続が進めやすい

ただし、公正証書遺言でも、遺言能力が争われることはある。特に高齢者、認知症診断後、入退院中、施設入所中、家族の一人が同席していた場合、急な遺言変更があった場合は、医療記録、介護記録、面談記録、作成経緯の透明性が重要になる。

5. 遺言書の保管と定期見直し

契約後、信託銀行は遺言書を保管し、必要に応じて定期的な状況確認を行う。金融庁の検査マニュアルでも、遺言書の保管、契約継続、遺言者の内容、財産、相続人等の確認、異動事項への対応などが管理態勢上の確認項目として挙げられている。

遺言は作成時点で完成するが、相続は死亡時点で発生する。作成後に次の変化が起きると、遺言内容は実情に合わなくなる。

  1. 配偶者、子、受遺者、遺言執行者候補者の死亡。
  2. 相続人との関係悪化または和解。
  3. 不動産の売却、購入、建替え、賃貸開始。
  4. 預貯金、投資信託、株式、保険の大幅変動。
  5. 会社株式の承継方針変更。
  6. 相続税改正、財産評価の変化。
  7. 認知症、任意後見、成年後見、介護施設入所。
  8. 海外移住、相続人の海外居住。
  9. 孫の誕生、養子縁組、離婚、再婚。

最低でも数年に一度、または家族関係と財産に大きな変動があった時点で、遺言の見直しを行うべきである。

6. 死亡後の初動

遺言者が死亡すると、死亡通知人または相続人が信託銀行へ連絡する。信託銀行は死亡事実を確認し、遺言執行者として就職するかを判断し、就職する場合は相続人、受遺者等へ通知し、相続人調査、財産調査、財産目録作成へ進む。

この初動段階で並行して発生する主な期限は次のとおりである。

次の比較表は、期限、手続、担当候補を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

期限手続担当候補
死亡後7日以内が原則死亡届親族、市区町村、葬儀社支援
相続開始を知った時から3か月以内相続放棄、限定承認の検討弁護士、司法書士、家庭裁判所
相続開始を知った日の翌日から4か月以内準確定申告税理士
相続開始を知った日の翌日から10か月以内相続税申告と納税税理士
不動産取得を知った日から3年以内相続登記司法書士

裁判所は、相続放棄の申述期間について、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内と説明している。 国税庁は、準確定申告について相続の開始を知った日の翌日から4か月以内と説明している。 相続税申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内である。 相続登記については、法務省が、相続により不動産所有権を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になると説明している。

7. 遺言執行の実務

遺言執行では、信託銀行が遺言内容に従って、関係者への通知、財産調査、財産目録作成、預貯金の解約、有価証券の移管または換金、不動産の名義変更または売却、受遺者への財産交付などを進める。

金融庁の検査マニュアルは、遺言執行業務を、信託兼営金融機関が遺言書を保管し、遺言者の死亡後、遺言内容に従い適切に執行手続を行うものと説明し、権利関係等が複雑な場合があるため、高度な専門性、法令遵守態勢、顧客保護等管理態勢が求められるとしている。

遺言執行は、単なる事務ではない。次のような判断が随所に現れる。

次の比較表は、判断場面、典型的問題を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

判断場面典型的問題
遺言の解釈「預金」と「金融資産」の範囲、口座移動後の扱い
財産調査遺言書記載外財産、負債、名義預金、貸金庫
換金売却時期、売却価格、誰に売るか、税務上の影響
不動産登記、境界、借地借家、共有、農地、空き家
有価証券相場変動、売却タイミング、移管不能商品
遺留分金銭請求への対応、交渉、時効管理
税務相続税評価、譲渡所得、準確定申告、納税資金
紛争無効主張、使い込み疑い、寄与分、特別受益

紛争性が高まると、信託銀行が中立的事務処理を継続できない場合がある。その場合、弁護士の関与が不可欠となる。

Section 05

信託銀行の遺言信託サービスの費用構造

初期費用だけでなく、保管料、変更手数料、執行報酬、外部専門家費用まで分解します。

1. 費用は一つの金額ではない

遺言信託の費用は、「申込時にいくらか」だけで判断してはいけない。一般に、費用は次の階層に分かれる。

次の比較表は、費用区分、発生時期、内容を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

費用区分発生時期内容
取扱手数料、基本手数料契約時遺言書作成支援、契約設定、初期事務
遺言書保管料、管理料契約期間中年間保管、管理、定期確認
変更手数料遺言変更時遺言書の書換え、再作成支援
遺言執行報酬死亡後、執行時財産調査、名義変更、換金、分配、報告
特別報酬特別事情発生時海外財産、複雑不動産、長期対応など
実費随時戸籍、評価証明、残高証明、郵送、公証人手数料等
外部専門家報酬必要時税理士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士、仲介業者等

三井住友信託銀行の公開例では、執行コースの基本手数料、遺言書保管料、変更手数料、遺言執行報酬が示され、遺言執行報酬は相続・遺贈財産に係る所定の相続財産評価額に対して算定される。最低執行報酬や、別途実費、司法書士手数料、税理士報酬等が必要となる場合も明記されている。

みずほ信託銀行の公開例では、遺言書保管時の基本手数料としてプラン100とプラン30があり、遺言執行時の財産比例報酬、最低報酬額が示されている。また、相続税申告、納付手続は相続人が依頼した税理士が行うと説明されている。

りそな銀行の公開例でも、取扱手数料、年間保管料、遺言変更手数料、精算費、相続発生後の執行報酬、最低報酬額、別途負担となる諸費用が示されている。

2. 公開例から見える費用上の注意点

各社の手数料表を比較すると、利用者が特に確認すべき点は次のとおりである。

  1. 申込時手数料が安いプランほど、死亡後の最低報酬や料率が高い場合がある。
  2. 申込時手数料が高いプランほど、死亡後の報酬が抑えられる場合がある。
  3. 年間保管料があるプランとないプランがある。
  4. 途中解約しても初期費用が返金されない場合がある。
  5. 遺言執行報酬は、債務控除後の純資産ではなく、所定の評価額や消極財産控除前の価額を基礎にする場合がある。
  6. 不動産登記費用、司法書士報酬、相続税申告の税理士報酬、鑑定費用、不動産売却手数料は別にかかることが多い。
  7. 海外相続人、海外財産、特殊財産、多数の関係者がいる場合は、別途特別報酬が発生する可能性がある。

3. 「高いか安いか」ではなく「何を外注するか」で考える

遺言信託の費用を検討する際、「銀行に払う金額が高いか安いか」だけでは不十分である。比較対象は、次のように分解すべきである。

次の比較表は、代替手段、費用面、リスク面を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

代替手段費用面リスク面
自筆証書遺言のみ低コスト方式不備、保管、検認、執行者不在のリスク
自筆証書遺言書保管制度低コスト内容の法的助言や執行支援は別途必要
公正証書遺言のみ中程度執行者を別に決める必要がある
弁護士を遺言執行者に指定事案により変動紛争対応に強いが、金融機関事務の量が多いと費用が増えることがある
司法書士を遺言執行者に指定不動産、登記に強い紛争代理や税務は別途必要
家族を遺言執行者に指定低コストになり得る手続負担、感情対立、利益相反、知識不足のリスク
信託銀行の遺言信託組織的対応だが費用は比較的高くなり得る紛争、税務、登記、特殊財産は外部専門家が必要

費用の合理性は、財産総額だけでなく、家族の協力可能性、相続人の人数、相続人の居住地、財産の種類、不動産の換金難易度、相続税の有無、紛争予測によって変わる。

Section 06

信託銀行の遺言信託サービスが向くケースと慎重なケース

家族関係、財産内容、紛争可能性によって向き不向きが変わります。

1. 利用に向いているケース

信託銀行の遺言信託サービスは、次のような場面で有効性が高い。

次の比較表は、ケース、理由を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

ケース理由
相続人が遠方または海外にいる金融機関、役所、不動産関係者との連絡負担を軽減できる
相続人が高齢で手続能力に不安がある組織的な執行が家族の負担を下げる
財産の種類が多い預金、有価証券、不動産等の手続を整理しやすい
寄付や相続人以外への遺贈がある遺言執行者がいた方が実現しやすい
相続人間の関係は悪くないが、事務負担が大きい事務委託の効果が大きい
生前から計画的に承継したい遺言作成、保管、変更、死亡後執行を一貫管理できる
家族に遺言執行者を頼みにくい組織を執行者候補にできる

2. 慎重検討が必要なケース

次のような場合は、信託銀行と契約する前に、弁護士、税理士、司法書士等との個別検討が必要である。

次の比較表は、ケース、慎重にすべき理由を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

ケース慎重にすべき理由
相続人間で既に対立がある信託銀行は紛争代理を行わないため、弁護士中心の体制が必要
遺留分侵害が明らか死亡後に金銭請求が出る可能性が高い
認知症診断後に遺言を作る遺言能力が争われやすい
使い込み疑いがある調査、交渉、訴訟は弁護士領域になりやすい
不動産が大部分で現金が少ない納税資金、遺留分支払資金、売却可能性が問題になる
非上場会社株式がある株価評価、議決権、事業承継税制、経営権が絡む
海外財産がある現地法、現地税務、送金規制が絡む
相続人に未成年者、後見利用者がいる特別代理人、利益相反、家庭裁判所手続が必要になり得る
借金や保証が多い相続放棄、限定承認、債務調査が最優先

3. 向いていない可能性が高いケース

次の場合、遺言信託より別の手段を優先すべきことが多い。

  1. 財産が少なく、相続人が一人で、争いもなく、手続負担も小さい。
  2. 既に訴訟レベルの対立があり、弁護士による紛争解決が必要である。
  3. 相続財産の大半が換金困難な不動産で、執行費用や納税資金を確保できない。
  4. 遺言者の判断能力が著しく低下し、遺言能力の立証が困難である。
  5. 遺言内容が主に認知、相続人廃除、親族関係など身分的事項であり、金融機関の執行に適さない。
  6. 手数料を支払う余力がなく、目的が単純な遺言書保管だけである。
Section 07

信託銀行の遺言信託サービスで注意すべき9項目

遺留分、遺言能力、税務、不動産、会社株式、情報資産をまとめて確認します。

次の注意点一覧は、遺言信託だけでは解決しにくい代表論点をまとめたものです。どの項目も死亡後の執行停止や紛争化につながり得るため、該当する項目があるかを読み取り、早めに追加専門家を検討します。

遺留分

遺言内容によって金銭請求が出る可能性があります。

遺言能力

高齢、認知症、急な変更では記録化が重要です。

税務申告

相続税申告は税理士領域として別費用になることがあります。

不動産

登記、評価、売却、境界、借地借家が難所になります。

事業承継

非上場株式は評価、議決権、納税資金を別枠で設計します。

情報資産

ネット口座や暗号資産は存在を把握できる仕組みが必要です。

1. 注意点1 ― 遺留分を無視しない

遺言信託を利用しても、遺留分侵害額請求を防げるわけではない。遺留分権利者が請求すれば、受遺者や特定財産を承継した相続人は、金銭支払を求められる可能性がある。

特に問題になるのは次の設計である。

  1. 長男に自宅と預金の大半を承継させる。
  2. 後妻に全財産を遺贈し、前妻の子に何も残さない。
  3. 同居して介護した子に全財産を残す。
  4. 相続人ではない内縁の配偶者や団体へ大部分を遺贈する。
  5. 事業承継のため後継者に会社株式を集中させる。

遺留分対策としては、生命保険の活用、代償金原資の確保、遺留分に配慮した配分、付言事項による説明、生前贈与の整理、相続人との事前対話などが考えられる。ただし、生前贈与や生命保険も遺留分、税務、特別受益、保険金受取人固有財産性などの論点があるため、弁護士と税理士の共同検討が望ましい。

2. 注意点2 ― 遺言能力を証拠化する

高齢者の遺言では、死亡後に「本人は分かっていなかった」「特定の相続人に誘導された」と主張されることがある。公正証書遺言でも、遺言能力が争点になる可能性は残る。

対策としては、次のような証拠化が有効である。

次の比較表は、対策、内容を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

対策内容
医師の診断書認知機能、意思疎通能力を確認する
面談記録誰が同席したか、本人が何を述べたかを記録する
財産一覧の本人確認本人が財産内容を理解していることを確認する
家族関係の本人確認誰が相続人か、なぜその配分にするかを確認する
変更理由の記録以前の遺言から変更する理由を残す
不自然な同席を避ける利益を受ける相続人だけが誘導したと見られないようにする

金融庁の検査マニュアルでも、遺言信託の受託において、遺言者と面談して遺言能力と遺言作成意思を確認しているかが確認項目とされている。

3. 注意点3 ― 受託範囲と免責、辞任条件を読む

遺言信託の契約書には、信託銀行がどこまで行うか、どこから外部専門家が必要か、どのような場合に辞任または就職辞退できるかが定められている。利用者は、少なくとも次の条項を確認すべきである。

  1. 遺言執行者として就職しない場合の条件。
  2. 紛争発生時の対応。
  3. 遺留分請求が出た場合の対応。
  4. 税務申告、登記、裁判手続が対象外であること。
  5. 外部専門家を選任する際の費用負担。
  6. 不動産売却の方法、価格決定、仲介会社選定。
  7. 特別報酬が発生する場合。
  8. 中途解約時の返金有無。
  9. 個人情報の取扱い。
  10. 死亡通知人の変更方法。

「信託銀行だから全部やってくれる」という理解ではなく、「契約上、何を、いくらで、どの条件で行うか」を確認する必要がある。

4. 注意点4 ― 税務申告は別であることが多い

遺言信託の遺言執行と、相続税申告は別業務である。みずほ信託銀行の公開情報でも、相続税申告と納付手続について、相続人が依頼した税理士が行うと説明されている。

相続税が発生するかどうかは、遺産総額、債務、葬式費用、非課税財産、相続時精算課税、暦年贈与加算、法定相続人の数などで決まる。国税庁は、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要であり、基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数と説明している。

また、不動産がある場合、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、貸付事業用宅地、事業承継税制など、専門的判断が必要である。国税庁は、小規模宅地等の特例について、一定の居住用または事業用宅地等の価額を一定割合減額する制度として説明している。

5. 注意点5 ― 不動産は相続登記、評価、売却、管理が難所になる

相続財産に不動産が含まれる場合、遺言信託の実務難易度は高くなる。特に、次の不動産は要注意である。

  1. 共有不動産。
  2. 借地、底地、賃貸中物件。
  3. 境界未確定の土地。
  4. 市街化調整区域、農地、山林。
  5. 老朽建物、空き家、再建築不可物件。
  6. 抵当権、根抵当権、差押えがある物件。
  7. 収益不動産。
  8. 同族会社に貸している土地建物。
  9. 相続人の一人が居住している自宅。

2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要がある。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となる。 不動産がある相続では、司法書士を早期に関与させるべきである。

さらに、不動産の価値をめぐって争いがある場合、不動産鑑定士の評価が必要になる。土地を分筆する場合、境界確定や表示登記のために土地家屋調査士が関与する。売却して分配する場合、宅地建物取引士または不動産仲介業者が重要事項説明、契約実務を担う。

6. 注意点6 ― 生命保険と遺言の整合性を確認する

生命保険金は、契約形態によって、受取人固有の財産として扱われることがある。遺言書で「全財産を長女に相続させる」と記載しても、死亡保険金の受取人が長男であれば、保険金は遺言の分配と別に支払われる可能性がある。

したがって、遺言信託を契約する際は、保険証券、契約者、被保険者、受取人、保険金額、非課税枠、税務上の扱いを確認する必要がある。生命保険は、納税資金、代償金、遺留分対応に有用だが、受取人指定が古いままだと意図と異なる結果になる。

7. 注意点7 ― 会社株式と事業承継は別枠で設計する

非上場会社株式が相続財産に含まれる場合、単なる遺言では不十分なことが多い。会社株式には、次の問題がある。

  1. 株価評価が難しい。
  2. 議決権の分散が経営権争いを招く。
  3. 相続税評価額が高く、納税資金が不足しやすい。
  4. 後継者以外に遺留分が発生しやすい。
  5. 種類株式、株主間契約、定款、役員退職金、生命保険などとの連動が必要である。
  6. 事業承継税制の要件管理が必要になることがある。

この領域では、税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、司法書士が連携すべきである。知的財産が会社または個人にある場合は、弁理士の関与も検討する。

8. 注意点8 ― デジタル資産と情報資産を放置しない

近年は、ネット銀行、ネット証券、暗号資産、ポイント、電子マネー、クラウド会計、サブスクリプション、SNS、写真データ、ドメイン、アフィリエイト収益など、物理的な通帳や証券がない財産が増えている。

遺言書にIDやパスワードを直接記載することは、変更、漏えい、保管の観点から危険である。別途、財産一覧、アカウント一覧、連絡先一覧、秘密情報の保管方法を整備し、遺言執行者が存在を把握できるようにする必要がある。ただし、利用規約、相続による承継可否、本人確認、秘密鍵喪失などの問題があるため、財産種別ごとに対応が必要である。

9. 注意点9 ― 家族への説明不足は紛争の原因になる

遺言は本人の最終意思であるから、相続人全員に生前説明する義務はない。しかし、相続人が「なぜこの分け方なのか」を全く理解していない場合、死亡後に不信感が生じやすい。

説明方法には段階がある。

次の比較表は、方法、利点、注意点を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

方法利点注意点
遺言書の付言事項本人の思いを残せる法的効力は限定的
生前の家族会議誤解を減らせる反発が先に表面化することがある
一部相続人への説明介護者や後継者に準備させやすい不公平感を招くことがある
弁護士同席の説明紛争予防に有効緊張感が高まることがある
説明しない本人の平穏を保てる死亡後の驚きが大きい

不公平な配分をする場合は、理由を文章で残すことが重要である。ただし、他の相続人を非難する付言は、かえって紛争を激化させることがあるため、慎重に表現する。

Section 08

信託銀行の遺言信託サービスと専門職の役割分担

銀行だけで完結しない領域を、専門職ごとに見分けます。

次の役割一覧は、信託銀行と併せて検討する専門職を整理したものです。担当範囲を分けることが重要なため、各項目から誰に何を相談するかを読み取ってください。

税理士

相続税申告、準確定申告、税務調査、評価明細の確認を担います。

税務

司法書士

相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記書類を担います。

登記

弁護士

遺留分、無効主張、使い込み疑い、調停、訴訟を担います。

紛争

不動産鑑定士等

評価、境界、売却、分筆、建物処理などを補います。

不動産

1. 中核専門職

次の比較表は、専門職、主な役割、遺言信託との関係を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

専門職主な役割遺言信託との関係
弁護士紛争、遺留分、使い込み疑い、交渉、調停、審判、訴訟争いがある、または予想される場合の中心職
司法書士相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記書類、一定の裁判所提出書類作成不動産がある相続では必須級
税理士相続税申告、準確定申告、税務相談、税務代理、税務調査対応相続税が発生し得る場合の中心職
行政書士争いのない相続関係書類、遺産分割協議書作成、戸籍整理紛争、税務、登記申請を除く書類整理に向く
公証人公正証書遺言の作成遺言信託で公正証書遺言を作る際の公的担当者
遺言執行者遺言内容の実現信託銀行、弁護士、司法書士、家族等が候補
信託銀行等遺言作成相談、保管、執行支援組織的な遺言執行を担うが、紛争代理や税務申告は別

2. 不動産がある場合に増える専門職

次の比較表は、専門職、役割を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

専門職役割
不動産鑑定士遺産分割、遺留分、不動産売却、訴訟で価格が争点になる場合の評価
土地家屋調査士境界確認、分筆、表示登記、建物滅失登記
宅地建物取引士、不動産仲介業者相続不動産の売却、重要事項説明、売買契約実務
建築士、解体業者老朽建物、耐震、空き家、解体、再建築の検討
管理会社賃貸物件の賃料、敷金、原状回復、入居者対応

3. 家庭裁判所で関わる人

次の比較表は、関係者、役割を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

関係者役割
裁判官、家事調停官調停、審判の進行、判断
家事調停委員当事者の話を聴き、合意形成を支援
裁判所書記官記録、調書、手続案内
家庭裁判所調査官必要に応じた事情調査
鑑定人、専門委員不動産、会社価値、医学など専門争点を補助
特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人未成年者、後見利用者等の利益相反に対応

裁判所の遺言執行者選任手続では、利害関係人が申立人となり、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立てるとされている。

4. 会社、特殊財産、周辺手続で増える専門職

次の比較表は、専門職等、役割を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

専門職等役割
公認会計士非上場株式評価、財務分析、事業承継計画
中小企業診断士後継者育成、経営改善、承継計画
弁理士特許、商標など知的財産の名義変更、承継手続
ファイナンシャル・プランナー家計、保険、老後資金、資産全体設計、専門家紹介
社会保険労務士遺族年金、社会保険手続
遺言書保管官法務局の自筆証書遺言書保管制度に関与
市区町村戸籍担当窓口死亡届、戸籍、住民票関係
医師、検案医死亡診断書、死体検案書
銀行、生命保険会社等の相続担当預金払戻し、残高証明、保険金請求
Section 09

信託銀行の遺言信託サービスを契約する前の確認事項

家族、財産、税務、不動産、契約条件を事前に棚卸しします。

信託銀行の遺言信託サービスを契約する前に、次のチェックを行う。

1. 家族関係チェック

  • 法定相続人を戸籍で確認したか。
  • 前婚の子、認知した子、養子、代襲相続人を確認したか。
  • 相続人に未成年者、認知症の人、行方不明者、海外居住者はいないか。
  • 相続人間の対立の程度を把握したか。
  • 遺留分権利者を確認したか。

2. 財産チェック

  • 預金、証券、保険、不動産、貸金庫、貴金属、車、船舶、ゴルフ会員権を一覧化したか。
  • 借入、保証、未払税金、未払医療費、施設費を確認したか。
  • 名義預金、家族名義財産、過去の贈与を確認したか。
  • 非上場株式、事業用資産、知的財産を確認したか。
  • デジタル資産、ネット口座、暗号資産を確認したか。

3. 税務チェック

  • 相続税基礎控除を超える可能性を確認したか。
  • 小規模宅地等の特例の適用可能性を検討したか。
  • 配偶者の税額軽減を使う場合の二次相続リスクを検討したか。
  • 納税資金を確保したか。
  • 準確定申告が必要か確認したか。
  • 生前贈与、相続時精算課税、生命保険の税務を確認したか。

4. 不動産チェック

  • 登記名義が現在の所有者になっているか。
  • 共有者、担保、差押え、仮登記を確認したか。
  • 境界、測量、越境、私道、接道を確認したか。
  • 賃貸借契約、敷金、保証金を確認したか。
  • 売却予定なら査定、残置物、修繕、税務を確認したか。
  • 相続登記義務化に対応できるか確認したか。

5. 契約チェック

  • 信託銀行が行う業務と行わない業務を確認したか。
  • 手数料、最低報酬、料率、特別報酬を確認したか。
  • 中途解約時の返金有無を確認したか。
  • 遺言執行者として就職しない場合を確認したか。
  • 死亡通知人を複数設定できるか確認したか。
  • 税理士、司法書士、弁護士の費用が別であることを確認したか。
  • 遺言変更の方法と費用を確認したか。
Section 10

信託銀行の遺言信託サービスで多い誤解

公正証書、相続税申告、登記、報酬計算について誤解しやすい点を整理します。

1. 「信託銀行に頼めば相続争いは絶対に起きない」

誤りである。遺言信託は争いの予防に役立つが、遺留分、遺言能力、使い込み疑い、財産評価、遺言解釈をめぐる争いは起こり得る。争いが予想される場合は、契約前から弁護士を関与させるべきである。

2. 「公正証書遺言なら無効にならない」

誤りである。方式不備のリスクは下がるが、遺言能力、詐欺、強迫、錯誤、内容解釈などが争われる可能性は残る。

3. 「相続税申告も信託銀行がやってくれる」

通常は誤りである。相続税申告は税理士の独占業務であり、信託銀行が遺言執行を行っても、税務申告は別途税理士に依頼する必要があることが多い。

4. 「登記も信託銀行が全部やる」

不正確である。不動産登記申請は司法書士が担当するのが通常であり、信託銀行の費用とは別に登録免許税や司法書士報酬が必要になることが多い。三井住友信託銀行やりそな銀行の公開情報でも、不動産登記に関する登録免許税や司法書士手数料等が別途費用として示されている。

5. 「遺言執行報酬は財産から債務を引いた残りにだけかかる」

必ずしもそうではない。手数料表では、所定の相続財産評価額、消極財産控除前の評価額などを基礎にする例がある。契約前に、負債、不動産評価、保険、非上場株式が報酬計算にどう反映されるかを確認する必要がある。

6. 「死亡通知人を決めれば必ずすぐ執行が始まる」

死亡通知人が連絡しなければ、信託銀行は死亡を把握できない場合がある。また、連絡後も、死亡確認、戸籍収集、相続人確認、遺言執行者への就職可否判断、財産調査が必要である。

Section 11

信託銀行の遺言信託サービスを事例で考える

標準世帯、再婚家庭、会社オーナー、寄付希望の場面を比較します。

1. 事例1 ― 配偶者と子2人、自宅と預金がある標準世帯

事実関係

夫が遺言者。相続人は妻、長男、長女。財産は自宅土地建物、預金、投資信託。妻は自宅に住み続けたい。長男は遠方、長女は近居で介護をしている。

検討

この場合、妻の居住確保、長女の介護貢献への配慮、長男の遺留分、不動産登記、相続税を同時に検討する必要がある。自宅を妻に相続させ、預金を子に分ける案は分かりやすいが、妻死亡後の二次相続で子ども同士が争う可能性がある。

遺言信託の有用性

相続人の関係が悪くないなら、信託銀行が遺言執行者となることで、預金解約、証券移管、財産目録作成、名義変更支援の負担を減らせる。ただし、相続税が発生するなら税理士、自宅登記は司法書士が必要である。

2. 事例2 ― 前婚の子と後妻がいる再婚家庭

事実関係

遺言者には後妻と、前婚の子2人がいる。遺言者は後妻に自宅と預金を多く残したい。前婚の子とは疎遠である。

検討

この類型は遺留分紛争が起きやすい。後妻に全財産を相続させる遺言を作ると、前婚の子から遺留分侵害額請求が出る可能性がある。後妻が不動産しか取得せず現金が少ないと、遺留分支払資金に困る。

遺言信託の限界

信託銀行を遺言執行者にしても、前婚の子の遺留分請求を消すことはできない。契約前に弁護士が遺留分リスクを試算し、税理士が相続税と納税資金を確認し、必要に応じて生命保険、代償金、遺言の配分調整を検討すべきである。

3. 事例3 ― 非上場会社のオーナー

事実関係

遺言者は非上場会社の代表者。長男が後継者、次男は会社に関与していない。財産の大半は自社株式と会社への貸付金である。

検討

後継者に株式を集中させなければ経営が不安定になる。一方、次男の遺留分をどう確保するかが問題となる。自社株式評価、役員退職金、生命保険、事業承継税制、定款、種類株式、株主間契約まで総合設計が必要である。

遺言信託の使い方

信託銀行の遺言信託は、遺言書の保管と執行の枠組みとして有用である。しかし、事業承継そのものは、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士、司法書士が連携して設計する必要がある。

4. 事例4 ― 独身、子なし、寄付を希望

事実関係

遺言者は独身で子がいない。兄弟姉妹はいるが疎遠。自分の財産の一部を公益団体に寄付したい。

検討

兄弟姉妹には遺留分がないが、遺言書がなければ兄弟姉妹等が相続人となる可能性がある。寄付先の正式名称、所在地、受入条件、現金寄付か現物寄付か、領収書、税務上の扱いを確認する必要がある。

遺言信託の有用性

相続人以外への遺贈や寄付は、遺言執行者がいた方が実現しやすい。信託銀行の遺言信託は有力な選択肢である。ただし、寄付先が不動産を受け取らない場合、換金して金銭で寄付する設計が必要になる。

Section 12

信託銀行の遺言信託サービスを活かす設計原則

執行可能性、予備的条項、納税資金、制度の使い分けを確認します。

1. 原則1 ― 遺言は「感情」ではなく「執行可能性」まで書く

遺言は思いを残す文書であると同時に、死亡後の事務指図書である。次のような表現は避けるべきである。

  • 「できるだけ公平に分ける」
  • 「自宅は家族で話し合って決める」
  • 「預金は必要な人に渡す」
  • 「長男は長女に相当額を払う」
  • 「不動産はよい時期に売る」

望ましいのは、財産、取得者、割合、換金方法、支払期限、残余財産、予備的受遺者を明確にすることである。

2. 原則2 ― 予備的条項を入れる

遺言者より先に受遺者が死亡することがある。その場合に備えて、予備的条項を設けるべきである。

例として、「長男Aが遺言者より先に死亡した場合は、Aの子Bに相続させる」「受遺団体が解散している場合は、同種目的の団体に遺贈する」などである。予備的条項がないと、遺言の一部が失効し、法定相続または遺産分割協議が必要になることがある。

3. 原則3 ― 納税資金と遺留分資金を現金で確保する

相続税は原則として金銭一括納付である。相続税申告は死亡を知った日の翌日から10か月以内であり、期限までに申告と納税が必要である。 不動産が売れなければ納税資金が不足する。

遺留分侵害額請求も金銭請求である。後継者に不動産や株式を集中させる場合、後継者が遺留分を現金で払えるかが重要である。

4. 原則4 ― 相続人に手続能力がない場合を想定する

相続発生時に、相続人が認知症、未成年、行方不明、海外居住、長期入院であることは珍しくない。遺言信託は手続負担を減らすが、すべてを解決するわけではない。成年後見、特別代理人、不在者財産管理人、在外公館書類、翻訳、アポスティーユなどが必要になる場合がある。

5. 原則5 ― 遺言信託、任意後見、家族信託、死後事務委任を混同しない

高齢期の備えには複数の制度がある。

次の比較表は、制度、主な機能、死亡前、死亡後を横に並べて整理したものです。判断材料を同じ行で確認できるため、どこに違いがあり、どの項目を重点的に確認すべきかを読み取れます。

制度主な機能死亡前死亡後
遺言信託遺言作成、保管、執行遺言準備遺言執行
任意後見判断能力低下後の財産管理、身上保護本人の生前原則死亡で終了
家族信託生前から財産管理を受託者に任せる財産管理継続契約設計により承継可能
死後事務委任葬儀、納骨、施設精算、行政手続契約準備死後事務
生命保険死亡保険金の支払い保険料支払受取人請求

遺言信託は、認知症後の生前財産管理を直接担う制度ではない。認知症対策が主目的なら、任意後見、家族信託、財産管理委任契約を別に検討する必要がある。

Section 13

信託銀行の遺言信託サービスを依頼する前の質問

担当者に確認すべき業務範囲、費用、辞退条件、外部専門家費用を並べます。

信託銀行の担当者に、次の質問をそのまま確認するとよい。

  1. この商品は法的にはどのような契約ですか。
  2. 信託銀行は遺言執行者として必ず就職しますか。就職しない場合は何ですか。
  3. 公正証書遺言以外でも対応しますか。
  4. 遺言書の正本、謄本、原本はどこに保管されますか。
  5. 死亡通知人が連絡しなかった場合、どうなりますか。
  6. 申込時手数料、保管料、変更手数料、執行報酬、最低報酬はいくらですか。
  7. 報酬計算の基礎となる財産評価額は、債務控除前ですか、控除後ですか。
  8. 不動産、非上場株式、保険、海外財産は報酬計算にどう入りますか。
  9. 不動産登記、相続税申告、準確定申告、裁判手続は誰が行いますか。
  10. 外部専門家は利用者が選べますか。銀行指定ですか。
  11. 遺留分請求が出た場合、銀行はどこまで対応しますか。
  12. 遺言無効確認訴訟が起きた場合、銀行はどうしますか。
  13. 不動産売却はどの仲介業者を使いますか。相見積もりは可能ですか。
  14. 契約後に財産が変わった場合、どの頻度で見直しますか。
  15. 中途解約時に返金はありますか。
  16. 苦情や相談窓口はどこですか。
  17. 個人情報はどの範囲で共有されますか。
  18. 相続人にどのタイミングで遺言内容を通知しますか。
  19. 執行完了報告書には何が記載されますか。
  20. 想定総費用の概算書を作成できますか。
Section 14

信託銀行の遺言信託サービスを選ぶ判断の流れ

争い、税務、不動産、事務負担を順番に確認します。

次の判断の流れは、契約前に確認する順番を示しています。上から順に確認すると、信託銀行に任せるべき領域と、弁護士、税理士、司法書士へ先に相談すべき領域を読み分けられます。

遺言信託を選ぶ前の確認順序

争いの有無を確認

既に対立が深い場合は、まず弁護士中心の体制を検討します。

税務と不動産を確認

相続税、不動産登記、売却、評価の論点があるかを見ます。

事務負担を確認

相続人が遠方、高齢、多数であれば組織的な執行の価値が高まります。

契約条件を比較

費用、辞任条件、外部専門家費用、見直し方法を確認して選びます。

Section 15

信託銀行の遺言信託サービスのまとめ

有名な銀行かどうかではなく、死亡後に実現できる設計かを見ます。

「信託銀行の遺言信託サービスの仕組みと注意点」を一言でまとめるなら、遺言者の意思を金融機関の組織的事務で実現しやすくするサービスだが、法律、税務、登記、紛争、不動産、事業承継の問題を自動的に消す制度ではない、ということである。

信託銀行の遺言信託サービスは、次の条件を満たすと有効性が高い。

  1. 遺言者の意思が明確である。
  2. 遺言能力が適切に確認、記録されている。
  3. 相続人、受遺者、遺留分リスクが把握されている。
  4. 財産と負債が一覧化されている。
  5. 納税資金と遺留分支払資金が確保されている。
  6. 不動産の登記、評価、売却可能性が確認されている。
  7. 税理士、司法書士、弁護士等との役割分担が明確である。
  8. 手数料と外部費用を含む総費用を理解している。
  9. 契約後も定期的に見直している。
  10. 死亡通知人、連絡先、財産情報が更新されている。

反対に、既に相続人間の対立が深い場合、遺留分侵害が大きい場合、遺言能力が疑われる場合、財産の大半が換金困難な不動産または非上場株式である場合は、信託銀行との契約だけでなく、弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士、公認会計士等を含む専門家チームで設計する必要がある。

遺言信託を選ぶべきかどうかは、「有名な銀行だから安心」という抽象的な理由ではなく、本人の意思、家族関係、財産内容、税務、費用、執行可能性を総合して判断すべきである。最善の相続対策は、遺言書を作ること自体ではなく、死亡後にその遺言が無理なく、争いを最小化しながら、期限内に、税務と登記も含めて実現される状態を作ることである。

Reference

信託銀行の遺言信託サービスの参考資料

公的機関・中立的情報

  • 一般社団法人信託協会「遺言信託」
  • 一般社団法人信託協会「信託を利用するには?」
  • 一般社団法人信託協会「信託法と信託業法と兼営法」
  • 裁判所「遺言執行者の選任」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
  • 法務省「相続登記の申請義務化」
  • 金融庁「信託検査マニュアル別編 信託業務編 併営業務管理態勢」
  • 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告 準確定申告」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」

費用確認で参照した情報

  • 信託銀行等の公開手数料情報
  • 日本公証人連合会「公証事務に関する手数料」