遺族基礎年金と遺族厚生年金を分け、子の人数、報酬比例部分、加算、65歳以後の調整、相続実務との関係まで体系的に確認します。
遺族基礎年金と遺族厚生年金を分け、子の人数、報酬比例部分、加算、65歳以後の調整、相続 実務との関係まで体系的に確認します。
公式シミュレーターだけでは補えないため、制度、要件、計算式、加算、相続実務を順に確認します。
遺族年金の受給額をシミュレーションする方法は、亡くなった人の年金額に一定割合を掛けるだけでは足りません。国民年金からの遺族基礎年金、厚生年金保険からの遺族厚生年金、子の加算、中高齢寡婦加算、65歳以後の併給調整、年金生活者支援給付金を分けて確認する必要があります。
厚生労働省の公的年金シミュレーターや日本年金機構のねんきんネットは、老齢年金などの試算に対応していますが、遺族年金は試算対象外とされています。そのため、公式の金額表、年金記録、報酬比例部分の計算式、年金事務所での確認を組み合わせて検証します。
次の比較一覧は、受給額を試算する際に見る順番を表しています。上から順に、死亡した人の加入状況、遺族側の要件、基礎年金、厚生年金、加算、税務や支払月へ進むことで、抜け漏れを防げる点が重要です。
国民年金、厚生年金、共済期間、受給中かどうかを確認します。
被保険者中の死亡、初診日から5年以内の死亡、老齢年金受給権者の死亡などを分けます。
子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母などの順位と収入要件を確認します。
子の人数、報酬比例部分、300月みなし、中高齢寡婦加算を入れます。
老齢厚生年金との調整、未支給年金、非課税、時効、支払月まで確認します。
遺族基礎年金、遺族厚生年金、生計維持、報酬比例部分を分けて理解します。
遺族基礎年金は、国民年金の側から支給される遺族年金です。主な対象は、死亡した人に生計を維持されていた子のある配偶者または子です。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までにある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子を指します。
遺族厚生年金は、厚生年金保険の側から支給される遺族年金です。子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母などが対象となり得ますが、最も優先順位の高い人が受け取る仕組みです。子のない30歳未満の妻は5年間のみ、子のない夫や父母、祖父母は55歳以上であることや原則60歳からの受給開始が問題になります。
次の一覧は、試算前に混同しやすい4つの言葉を整理したものです。用語ごとに見ている制度や証明資料が違うため、どの欄が金額計算に直結し、どの欄が受給可否に関わるかを読み分けることが重要です。
| 用語 | 意味 | 試算での見方 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 国民年金から支給される遺族年金 | 子の有無、子の人数、子の年齢で金額が大きく変わります。 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金保険から支給される遺族年金 | 死亡した人の報酬比例部分と300月みなしが中心です。 |
| 生計維持 | 生計同一と収入要件を満たすこと | 前年収入850万円未満または所得655万5千円未満が目安です。 |
| 報酬比例部分 | 給与や賞与、加入月数に応じた厚生年金の上乗せ部分 | 遺族厚生年金は原則としてこの4分の3を基礎にします。 |
生計維持では、同居だけでなく、別居中の仕送り、健康保険の扶養、生活費負担、療養や介護の実態なども確認材料になります。相続争い、内縁関係、DV避難がある場合は、住民票、戸籍、所得証明、送金履歴などの整合性が重要です。
子のある配偶者と子だけが受け取る場合で、基礎額と加算の扱いが異なります。
令和8年度の遺族基礎年金は、子のある配偶者が受け取る場合、昭和31年4月2日以後生まれであれば年額847,300円に子の加算額を加えます。昭和31年4月1日以前生まれの場合は、基礎部分が844,900円です。
次の表は、子のある配偶者が受け取る場合の年額を、対象となる子の人数別に示しています。右列は昭和31年4月2日以後生まれの基礎部分を使った金額で、子が1人、2人、3人以上で加算額の増え方が変わる点を読み取ります。
| 子の人数 | 子の加算額 | 遺族基礎年金の年額 |
|---|---|---|
| 1人 | 243,800円 | 1,091,100円 |
| 2人 | 487,600円 | 1,334,900円 |
| 3人 | 568,900円 | 1,416,200円 |
| 4人 | 650,200円 | 1,497,500円 |
子だけが受け取る場合は、配偶者が受け取る場合と計算の考え方が違います。次の表では、子全体の年額を出したうえで人数で割るため、人数が増えるほど1人あたり額が下がる読み方になります。
| 子の人数 | 子全体の年額 | 1人あたりの年額、概算 |
|---|---|---|
| 1人 | 847,300円 | 847,300円 |
| 2人 | 1,091,100円 | 545,550円 |
| 3人 | 1,172,400円 | 390,800円 |
| 4人 | 1,253,700円 | 313,425円 |
報酬比例部分の4分の3を基本に、加入時期と短期要件を分けて計算します。
遺族厚生年金の年額は、原則として死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分に4分の3を掛けて計算します。平成15年4月以後だけで概算する場合は、平均標準報酬額に5.481/1000と加入月数を掛け、さらに4分の3を掛けます。
次の一覧は、報酬比例部分の計算で分けるべき要素を示しています。平成15年3月以前と平成15年4月以後では係数と報酬の見方が異なるため、どの期間の情報を入力するかを読み取ることが重要です。
| 期間 | 計算に使う報酬 | 係数 | 式の考え方 |
|---|---|---|---|
| 平成15年3月以前 | 平均標準報酬月額 | 7.125/1000 | A = 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 加入月数 |
| 平成15年4月以後 | 平均標準報酬額 | 5.481/1000 | B = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数 |
| 合計 | AとB | 4分の3 | 遺族厚生年金 = (A + B) × 3/4 |
300月みなしは、若くして亡くなった会社員世帯の試算で大きな差を生みます。次の重要ポイントは、実月数が短い場合でも一定の短期要件に該当すれば300月として扱われることがある点を示しています。
厚生年金加入中の死亡、厚生年金加入期間中に初診日がある病気やけがによる初診日から5年以内の死亡、1級または2級の障害厚生年金を受けている人の死亡などでは、被保険者期間が300月未満でも300月とみなすことがあります。
一方、老齢厚生年金の受給権者だった人や、老齢厚生年金の受給資格を満たした人の死亡では、常に300月みなしを使うわけではありません。この区別を誤ると、受給額の見込みが大きくずれます。
中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算、老齢厚生年金との調整を分けて扱います。
中高齢寡婦加算は、一定の妻が受ける遺族厚生年金に、40歳から65歳になるまでの間、加算される年額です。令和8年度の中高齢寡婦加算は635,500円です。子がいない妻、または子の年齢到達で遺族基礎年金を受けられなくなった妻などで問題になります。
次の比較一覧は、加算と65歳以後の調整を年齢で分けて整理したものです。いつまで加算され、65歳以後に何と比較するのかを読み取ることで、同じ世帯でも年度によって受給額が変わる理由が分かります。
要件を満たす妻の遺族厚生年金に、令和8年度では年額635,500円を加える可能性があります。
昭和31年4月1日以前生まれの妻について、65歳以後に加算されることがある経過措置です。
自分の老齢厚生年金を全額受け、遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金相当額が支給停止されます。
65歳以上の配偶者が遺族厚生年金を受ける場合は、次の2つを比較します。AとBの高い方が採用額になり、その採用額から自分の老齢厚生年金に相当する額を差し引いて、実際に支給される遺族厚生年金部分を整理します。
| 項目 | 計算式 | 例 |
|---|---|---|
| A | 死亡した人の報酬比例部分 × 3/4 | 1,200,000円 × 3/4 = 900,000円 |
| B | 死亡した人の報酬比例部分 × 1/2 + 自分の老齢厚生年金 × 1/2 | 1,200,000円 × 1/2 + 400,000円 × 1/2 = 800,000円 |
| 実支給部分 | 採用額 − 自分の老齢厚生年金 | 900,000円 − 400,000円 = 500,000円 |
遺族基礎年金を受けている人で、前年所得額が一定額以下の場合は、遺族年金生活者支援給付金も確認します。令和8年度の給付額は月額5,620円で、概算年額は5,620円 × 12か月 = 67,440円です。
入力資料を集め、年額、月額換算、偶数月入金を分けて管理します。
試算では、死亡診断書、戸籍、住民票、所得証明、年金証書、ねんきん定期便、給与明細、標準報酬関係、遺産分割協議書、相続放棄申述受理通知書、年金振込通知書などを集めます。遺族年金の請求権者と相続人が一致しないことがあるため、年金と相続の資料を整理しても、判断軸は分けておく必要があります。
次の時系列は、試算に必要な作業を実務で進める順番を示しています。上から下へ進むほど金額の精度が上がるため、どの段階で概算にとどまり、どの段階で年金事務所の確認が必要になるかを読み取ってください。
死亡日、制度加入、年金記録、対象子数、配偶者の年齢、所得資料を整理します。
国民年金、厚生年金の死亡要件と納付要件、短期要件を確認します。
子の年齢、障害状態、生計維持、子のない配偶者の年齢制限を確認します。
基礎額、子の加算、報酬比例部分、300月みなし、4分の3を反映します。
中高齢寡婦加算、65歳調整、年額、月額換算、偶数月の2か月分入金を分けます。
子の人数、300月みなし、中高齢寡婦加算、65歳調整で年額が変わります。
以下の例は、令和8年度額を前提にした概算です。実際の裁定額は、日本年金機構の決定、年金記録、再評価率、端数処理、共済期間、基金代行部分、制度改正によって変わります。
次の比較表は、4つの試算例を年額と月額換算で並べたものです。世帯構成と前提の違いが金額差に直結するため、子の人数、平均標準報酬額、300月みなし、中高齢寡婦加算、65歳調整の有無を読み取ってください。
| ケース | 主な前提 | 概算年額 | 月額換算 |
|---|---|---|---|
| 配偶者と子1人 | 平均標準報酬額400,000円、180月、300月みなし適用 | 1,584,390円 | 約132,033円 |
| 配偶者と子2人 | 平均標準報酬額450,000円、300月 | 約1,889,851円 | 約157,488円 |
| 子のない48歳の妻 | 平均標準報酬額500,000円、360月、中高齢寡婦加算あり | 1,375,435円 | 約114,620円 |
| 65歳以上の配偶者 | 死亡した配偶者の報酬比例部分1,200,000円、自分の老齢厚生年金400,000円 | 厚生年金部分900,000円 | 老齢基礎年金等を別途加算 |
次の横棒グラフは、上の3つの年額例を相対的に比べるためのものです。棒が長いほど年額が大きいことを示し、子2人の世帯、子1人の世帯、中高齢寡婦加算がある子なし妻の順に金額差を読み取れます。
子のある世帯では、子が18歳到達年度末を過ぎると遺族基礎年金と子の加算が終了または変動します。子ごとの年度末を家計表に入れ、年額が下がる年度を早めに確認します。
2025年に成立した年金制度改正法では、遺族厚生年金の男女差を解消し、子どもが遺族基礎年金を受け取りやすくする見直しが含まれています。法律上、遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定とされています。
次の一覧は、現行制度と改正後シナリオを分ける理由を示しています。死亡日や受給権発生日がいつかで使う制度が変わるため、生命保険、住宅ローン、教育資金、事業承継の長期設計では、左列と右列を分けて読むことが重要です。
| シナリオ | 使う制度 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 現行制度シナリオ | 2026年度時点の制度と年金額 | 現在死亡した場合の概算、相続発生後の相談 |
| 改正後シナリオ | 2028年4月施行予定の見直しを反映 | 生命保険見直し、長期家計設計、若年夫婦のリスク管理 |
次の重要ポイントは、遺族年金と相続実務の接点を整理したものです。遺族年金、未支給年金、死亡保険金、死亡退職金、個人年金保険は税務と相続上の扱いが異なるため、どれを継続収入として見るか、一時入金として見るかを読み分けてください。
公的遺族年金は通常、遺産分割で分ける財産ではありません。生活保障として家計設計に反映します。
公的遺族年金は相続財産ではないため、相続放棄だけで失うとは限りません。ただし未支給年金や死亡後入金は分けて確認します。
死亡月分までの未払い年金は一時的な入金として扱い、遺族年金の継続収入とは分けます。
年金を受ける権利は、権利発生から5年を経過したときに時効が問題になります。相続手続と別に早めに確認します。
令和8年度は、国民年金の基礎年金が令和7年度から1.9%引き上げ、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げと公表されています。将来シナリオでは、制度構造と年度別の金額改定を分けて管理します。
死亡した人、遺族、計算式、支払月、税務を最後に確認します。
最後に、死亡した人に関する情報、遺族に関する情報、計算式に関する情報を分けて確認します。チェック欄は、何が受給可否に関わり、何が金額に関わり、何が家計管理に関わるかを読み取るためのものです。
死亡日、死亡時の制度加入、保険料納付済期間、免除期間、直近1年間の未納、厚生年金加入月数、共済期間、基金代行部分、離婚時年金分割を確認します。
加入記録300月配偶者、子、父母、孫、祖父母の順位、子の18歳到達年度末、障害等級、生計同一、前年収入850万円未満または所得655万5千円未満を確認します。
生計維持年齢要件令和8年度額、子の加算、報酬比例部分、300月みなし、中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算、65歳以後の調整、年額、月額換算、偶数月入金を分けます。
年額支払月表計算で実装する場合は、死亡日、死亡時の制度、平成15年3月以前の平均標準報酬月額、平成15年4月以後の平均標準報酬額、加入月数、300月みなし、対象子数、配偶者の生年月日、配偶者の老齢厚生年金、中高齢寡婦加算、年金生活者支援給付金を入力欄として設けます。
老齢年金の承継、子の年齢、公式試算、課税、支払月を取り違えないようにします。
よくある誤解は、試算額を大きく誤らせます。次の一覧は、誤解と正しい見方を並べたものです。左列の思い込みに当てはまる場合は、右列の確認事項を優先して見直してください。
| 誤解 | 確認すべき見方 |
|---|---|
| 夫または妻の老齢年金をそのまま相続できる | 遺族基礎年金は子の要件が中心で、遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3が基本です。 |
| 子がいればいつまでも続く | 子は原則として18歳到達年度末までです。障害等級1級または2級の20歳未満の子は別に確認します。 |
| ねんきんネットで自動的に分かる | 遺族年金は現在、ねんきんネットや公的年金シミュレーターの試算対象外です。 |
| 遺族年金は課税される | 公的遺族年金は原則として所得税も相続税も課税されません。未支給年金や個人年金は分けます。 |
| 年額を12で割れば毎月入る | 家計管理上の月額換算と、偶数月に2か月分ずつ入る実際の入金は分けて管理します。 |
専門職の役割も分けて考えます。社会保険労務士は年金記録と請求、弁護士は相続紛争や相続放棄、税理士は課税関係、司法書士は相続登記や法定相続情報、行政書士は紛争性のない書類整理、FPは家計設計に関与します。