CG報告書を単なる年次更新にせず、コンプライ・オア・エクスプレインを投資家との対話に機能させるための実務ポイントを整理します。
CG報告書を単なる年次更新にせず、コンプライ・オア・エクスプレインを投資家との対話に機能させるための実務ポイントを整理します。
自社のガバナンス設計を市場へ説明できる状態にすることが中心です。
コーポレートガバナンスコードの遵守状況の開示は、各原則に丸を付けるだけの作業ではありません。会社が自社のガバナンスをどのように設計し、どの原則をどの根拠で実施し、どの原則については会社の個別事情から実施しない、または別の方法で趣旨を実現しているのかを、投資者・株主・市場へ説明可能な形にする実務です。
東京証券取引所は、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則としてコーポレートガバナンス・コードを定めています。現行制度では、プライム市場・スタンダード市場の上場会社にはコードの全原則について、グロース市場の上場会社には基本原則について、実施しないものがある場合に理由を説明することが求められます。この仕組みが一般にコンプライ・オア・エクスプレインと呼ばれます。
コーポレートガバナンスコードの遵守状況の開示で最初に押さえるべき要点をまとめると、何を表すかは制度の対象と実務の焦点であり、なぜ重要かは形式的な実施表示よりも投資家が納得できる説明が問われるためです。読者は、コンプライが唯一の正解ではなく、未実施の理由・代替措置・今後の検討を具体的に示すことが制度趣旨に合う場合がある、と読み取ってください。
形式的に全ての項目を実施とするより、実施していない部分を正確に特定し、その理由、代替措置、今後の検討予定を具体的に説明する方が、投資家との建設的な対話につながる場合があります。
2026年4月10日に金融庁・東京証券取引所が公表した改訂案では、コードの実質化、プリンシプル化・スリム化、成長投資の促進、取締役会の機能強化、有価証券報告書の株主総会前開示などが大きな論点になりました。東京証券取引所の制度要綱では、改訂後コードに対応したCG報告書を、準備ができ次第、2027年7月末日までに提出する案が示されています。
遵守、実施、開示、説明を分けるとCG報告書の記載が整理しやすくなります。
コーポレートガバナンス・コードは、コーポレートガバナンスを、会社が株主をはじめ、顧客、従業員、地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みとして説明しています。これは不祥事を防ぐ内部統制だけではなく、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現する統治構造を意味します。
コーポレートガバナンス・コードは、上場会社に実効的なガバナンスを促す原則集です。2021年6月版では、株主の権利・平等性、株主以外のステークホルダーとの協働、情報開示、取締役会等の責務、株主との対話という5つの基本原則が中心に置かれています。
コードは会社法そのものではなく、刑罰や行政処分を直接予定する法律でもありません。しかし、上場会社にとっては東京証券取引所の上場制度と結び付き、CG報告書を通じて実施状況や実施しない理由を開示することが求められます。この意味で、任意の啓発文書ではなく、資本市場対応・説明責任・投資家対話の中核をなす実務規範です。
SEO上はコーポレートガバナンスコードの遵守状況の開示という表現が使われますが、制度上の厳密な構造は、コードの各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するというものです。法令遵守のように、違反か適法かを二分する概念とは異なります。
次の比較表は、用語ごとに何を表すかを整理したものです。なぜ重要かというと、用語の混同があると、実施状況の説明、非実施理由、特定事項の開示が同じ文章に混ざり、投資家に伝わりにくくなるためです。読者は、どの欄で何を書くべきかを切り分けて読み取ってください。
| 用語 | 実務上の意味 | 開示での注意点 |
|---|---|---|
| 遵守 | 検索上よく使われる表現 | 全部守る義務という印象を与えやすいため、実施と説明の構造を補う必要があります。 |
| 実施 | 原則の趣旨に沿った取組みを行っている状態 | 実施と記載するには、取締役会資料、規程、議事録、データなどの証跡確認が必要です。 |
| 開示 | コードが特定事項の記載を求める場合の情報提供 | 原則3-1、補充原則4-11①、補充原則4-11③、原則5-1などは実施していても具体的開示が必要です。 |
| 説明 | 実施しない理由や代替措置を示すこと | 未実施部分、自社事情、代替措置、検討体制、スケジュールを具体化することが重要です。 |
東京証券取引所は、各社のコーポレートガバナンスの状況を投資者により明確に伝える手段として、コーポレート・ガバナンスに関する報告書の開示を上場会社に求めています。CG報告書は、株主総会招集通知、有価証券報告書、統合報告書、決算説明資料、サステナビリティレポートとは異なる独立した開示媒体です。
一方で、実務ではこれらの資料との整合性が非常に重要です。たとえば、CG報告書で取締役会の実効性評価を毎年実施していると記載しながら、取締役会資料や議事録上その実体が確認できない場合、投資家対話、不祥事調査、内部監査、取締役の善管注意義務の議論で重大な説明不一致となる可能性があります。
上場規程、ソフトロー、投資家対話が重なる領域として理解します。
コンプライ・オア・エクスプレインとは、原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する手法です。2026年改訂案のクリーン版では、コードはルールベースではなくプリンシプルベースを採用し、形式的な文言にとらわれず、趣旨・精神に照らして自社の活動が原則に即しているかを判断することが求められると整理されています。
同改訂案は、コードの各原則は法的拘束力を有する規範ではなく、会社の個別事情に照らして実施が適切でないと考えるものがあれば、十分な説明により一部の原則を実施しないことが考えられるとしています。実務上は、未実施と書くこと自体を過度に恐れるのではなく、実質が伴わないのに実施と記載すること、または未実施理由を抽象的に書くことを避けるべきです。
次の判断の流れは、実施表示と説明表示をどの順で検討するかを表します。なぜ重要かというと、最初から実施か未実施かだけを決めると、原則の趣旨、会社事情、証跡、代替措置の確認が抜けやすいためです。読者は、上から順に確認し、分岐後に必要な記載要素が変わることを読み取ってください。
市場区分、現行コード、改訂案、記載要領を確認します。
形式的な文言だけでなく、投資家保護と企業価値向上の観点を整理します。
規程、議事録、会議体、データ、承認プロセスの有無を点検します。
未実施部分、自社事情、代替措置、検討体制、期限を示します。
取組み内容と合理的理由を示し、対話に使える情報にします。
コード対応に関する開示は、大きく二つに分かれます。第一に、実施しない原則について理由を説明する開示です。これはエクスプレインの中核であり、なぜ実施しないのか、どのような代替措置があるのか、今後どのように検討・対応する予定なのかを示します。
第二に、コードの各原則が特定事項について開示を求めている場合の開示です。2025年7月改訂版のCG報告書記載要領は、プライム市場またはスタンダード市場の上場会社が特定の事項を開示すべき原則に基づき開示を行う場合、当該内容をCG報告書の欄に記載し、開示原則を項番等で具体的に特定することを示しています。
次の表は、二つの開示類型の違いを表します。なぜ重要かというと、非実施理由の欄に積極開示事項を混ぜたり、開示事項を単なる実施表示で済ませたりすると、記載要領との対応関係が分かりにくくなるためです。読者は、どの原則が理由説明を求め、どの原則が内容開示を求めるのかを分けて確認してください。
| 類型 | 主な内容 | 典型例 |
|---|---|---|
| 実施しない理由の説明 | 原則を実施しない理由、代替措置、検討状況を示す | 任意の指名・報酬委員会を未設置とする理由、英文開示を限定する理由など |
| 特定事項の開示 | 実施している場合でもコードが求める内容を具体的に記載する | 原則3-1の基本方針、補充原則4-11①のスキル・マトリックス、補充原則4-11③の実効性評価、原則5-1の対話方針など |
CG報告書は、内容変更が生じた場合、原則として変更後遅滞なくTDnetを用いて提出します。ただし、資本構成・企業属性、コードに関する事項、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして東証が認める事項については、変更が生じた後最初に到来する定時株主総会の日以後、遅滞なく提出することでも差し支えないとされています。
実務上は、毎年の定時株主総会後に、役員構成、独立役員、委員会構成、取締役会実効性評価、スキル・マトリックス、政策保有株式、サステナビリティ、人的資本、IR体制などを更新するサイクルが中心です。重大な機関設計変更、支配株主の異動、買収への対応方針、内部統制・適時開示体制に関する重大な変更がある場合には、年次更新を待たずに修正が必要となる可能性があります。
プライム、スタンダード、グロースで求められる対応範囲が異なります。
プライム市場およびスタンダード市場の上場会社は、現行制度上、コードの全原則について、実施しないものがある場合に理由を説明することが求められます。基本原則だけでなく、原則・補充原則を含む全体が対象となる点が重要です。
プライム市場会社では、独立社外取締役の3分の1以上の選任、指名委員会・報酬委員会の設置、スキル・マトリックス、サステナビリティ、TCFD等に基づく気候変動開示、英文開示、議決権電子行使プラットフォーム利用など、より高い水準が意識されています。
グロース市場の上場会社は、コードの基本原則について、実施しないものがある場合に理由を説明することが求められます。もっとも、2025年7月版の記載要領は、グロース市場の上場会社が基本原則以外の各原則について実施しない理由を任意に記載することも可能としています。上場準備企業やグロース市場企業は、市場変更、機関投資家との対話、M&A、資金調達、人材採用、レピュテーションを見据えて、主要原則への先行対応を検討する価値があります。
次の比較表は、市場区分ごとの対象範囲と実務上の読み方を表します。なぜ重要かというと、自社の義務範囲を誤ると、必要な説明が不足したり、任意開示の戦略を立てにくくなるためです。読者は、現行制度の対象と2026年改訂案の見直し方向を分けて読み取ってください。
| 市場区分 | 現行の中心的な対象 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| プライム市場 | 全原則 | 独立社外取締役、委員会、英文開示、サステナビリティ、気候変動、資本配分の説明品質が問われます。 |
| スタンダード市場 | 全原則 | 全原則対応が必要でありつつ、自社の規模・株主構成・成長段階に即した説明の具体性が重要です。 |
| グロース市場 | 基本原則 | 任意で基本原則以外の説明も可能です。将来の市場変更や投資家対話を見据えた先行対応が有益です。 |
| 2026年改訂案 | スタンダード・プライムは基本原則・原則、グロースは基本原則とする案 | 補充原則の廃止に伴う対象範囲見直し案であり、最終化後の確認が不可欠です。 |
政策保有株式からIR体制まで、部門横断で証跡を確認します。
CG報告書で扱うテーマは、商事法務だけに閉じません。政策保有株式、関連当事者取引、取締役会構成、指名・報酬、実効性評価、サステナビリティ、人的資本、知的財産、気候変動、株主との対話など、財務・人事・IR・内部監査・サステナビリティ部門を横断します。
次の一覧は、主要テーマごとに何を確認するかを表します。なぜ重要かというと、各テーマはCG報告書の記載だけでなく、取締役会資料、議事録、社内規程、投資家対話の実態と結び付くためです。読者は、テーマごとに責任部署と証跡をセットで確認する必要がある、と読み取ってください。
保有方針、縮減方針、個別銘柄の保有目的、便益・リスクと資本コストの検証、議決権行使基準を毎年確認します。
役員・主要株主との取引、親会社との独立性、少数株主保護、特別委員会、利益相反審議体制を整理します。
経営戦略に照らしたスキル項目、多様性、独立性、規模、スキル・マトリックスの妥当性を見直します。
委員会の構成、独立性、権限、CEO後継者計画、候補者選定、報酬ポリシーへの実質的関与を確認します。
評価方法、評価対象、前年度課題への対応、新たな課題、今後の改善方針を具体的に説明します。
人的資本・知財・気候変動を、経営戦略、資本配分、リスク管理、取締役会監督と結び付けます。
対話申込みへの対応方針、IR担当部署、担当役員、専任担当者、取締役会へのフィードバック方法を示します。
現行の原則1-4は、政策保有株式として上場株式を保有する場合、政策保有に関する方針、縮減方針・考え方、個別銘柄ごとの保有目的、便益やリスクが資本コストに見合っているか等の検証、議決権行使基準の策定・開示を求めています。実務では、取締役会で具体的に精査していると記載しながら、資料が形式的な一覧表にとどまる場合が問題になりやすいです。
原則1-7は、役員や主要株主等との関連当事者取引について、会社や株主共同の利益を害することのないよう、取締役会が手続の枠組みを定めて開示し、その手続を踏まえた監視を行うべきことを定めています。親会社を有する上場子会社、支配株主を有する上場会社、上場子会社を有する親会社では、少数株主保護の観点が特に重要です。
補充原則4-11①は、経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル等を特定し、知識・経験・能力のバランス、多様性、規模に関する考え方をスキル・マトリックス等により開示することを求めています。補充原則4-10①は、指名・報酬など重要事項について独立社外取締役を主要な構成員とする委員会の関与を求め、補充原則4-11③は、毎年の取締役会実効性評価と結果概要の開示を求めています。
補充原則3-1③は、サステナビリティへの取組み、人的資本や知的財産への投資等について、経営戦略・経営課題との整合性を意識し、分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきことを定めています。人的資本開示では、女性管理職比率、男性育休取得率、研修時間、エンゲージメントスコアだけでなく、事業戦略上必要な人材ポートフォリオと施策を結び付ける必要があります。
原則5-1は、株主からの対話申込みに合理的な範囲で前向きに対応し、取締役会が建設的な対話を促進する体制整備・取組みに関する方針を検討・承認し、開示すべきことを定めています。東証は全上場会社を対象に、株主および投資者との関係構築に向けたIR体制の整備とCG報告書での開示を求めています。
年次更新の前から部門横断で棚卸し、証跡確認、取締役会確認を進めます。
多くの会社では、CG報告書の取りまとめは総務部、法務部、商事法務部、取締役会事務局、IR部門のいずれかが担います。しかし、各原則の実質的な内容は広範です。年次更新の3〜4か月前には、財務、人事、サステナビリティ、内部監査、コンプライアンス、外部専門家を含めた体制を組むことが望ましいです。
次の役割分担表は、どの部署がどの論点を持つかを表します。なぜ重要かというと、CG報告書は一つの部署だけで正確性を担保できず、責任部署が曖昧な項目ほど抽象的な記載になりやすいためです。読者は、各行の主な担当と責任を自社体制に置き換えて確認してください。
| 役割 | 主な担当 | 実務上の責任 |
|---|---|---|
| 全体統括 | 商事法務、取締役会事務局、法務 | 原則一覧、開示方針、上場規程・記載要領確認、取締役会報告 |
| 投資家対話 | IR、経営企画 | 株主との対話方針、IR体制、英文開示、投資家からの指摘整理 |
| 財務・資本政策 | CFO部門、経理、財務 | 政策保有株式、資本コスト、資本政策、キャピタルアロケーション |
| 人的資本 | 人事、CHRO部門 | 多様性、人材育成方針、社内環境整備、人的資本KPI |
| サステナビリティ | サステナビリティ、環境、リスク管理 | 気候変動、TCFD等、サステナビリティ基本方針 |
| ガバナンス | 取締役会事務局、指名・報酬委員会事務局 | 取締役会構成、委員会、実効性評価、スキル・マトリックス |
| 検証 | 内部監査、コンプライアンス、外部専門家 | 記載内容と実態の整合性、証跡確認、リスクレビュー |
各原則は、実施しており開示も十分な原則、実施しているが開示の具体性が不足する原則、一部実施・一部未実施の原則、実施しておらず理由・代替措置・今後の方針を説明すべき原則に分けると整理しやすくなります。一つの原則の中に実施部分と未実施部分がある場合は、それらを明確に示すことが考えられます。
実施と記載するには、取締役会議事録、委員会議事録、規程、方針文書、社内決裁、取締役会資料、社外役員説明資料、IR面談記録、投資家フィードバック、人事データ、サステナビリティデータ、内部監査報告書などの証跡が必要です。
次の時系列は、年次更新の作業順序を表します。なぜ重要かというと、証跡確認や取締役会確認を後回しにすると、提出直前に記載と実態の不一致が見つかるためです。読者は、更新前から提出後までの順番と、各段階で残すべき記録を読み取ってください。
責任部署、関与部署、確認資料、スケジュールを決め、前年度との差分を一覧化します。
取締役会議事録、委員会資料、人事・IR・サステナビリティデータ、規程との整合性を確認します。
実施表示、未実施理由、積極開示事項を分けて記載し、外部専門家や内部監査の視点で点検します。
主要変更点を取締役会または関連委員会で確認し、提出後は投資家からの質問に備えます。
IR面談の指摘を記録し、次年度の開示改善、取締役会議題、委員会運営、社内規程見直しへつなげます。
コード対応の最終責任は、実質的には取締役会に帰属します。取締役会の構成、指名・報酬、実効性評価、政策保有株式、サステナビリティ、資本配分、株主との対話方針などは、取締役会の監督機能そのものに関わります。
CG報告書は提出して終わりではありません。提出後に、投資家、議決権行使助言会社、アナリスト、メディア、社外役員候補者、金融機関、取引先から読まれます。独立社外取締役比率、政策保有株式、資本効率、英文開示、取締役会実効性評価、女性管理職比率、人的資本、気候変動、親子上場、買収への対応方針は質問が出やすい領域です。
未実施の事実を隠さず、趣旨理解・代替措置・検討予定を具体化します。
悪いエクスプレインは、投資家から見ると説明ではなく回避に見えます。2026年改訂案のクリーン版も、エクスプレインを選択した場合には、株主等の理解が十分に得られるよう、趣旨・精神に照らして工夫し丁寧に説明すべきであり、ひな型的表現により表層的説明に終始することは趣旨に反すると述べています。
次の一覧は、避けるべき説明パターンを表します。なぜ重要かというと、抽象的な一文だけでは未実施の合理性が伝わらず、実態を伴わないコンプライよりも深い不信につながるためです。読者は、自社の記載がどの表現に近いかを点検してください。
検討体制、期限、論点がないため、進捗を評価できません。
なぜ会社規模が当該原則を実施しない理由になるのかが示されていません。
具体的な手続、会議体、代替措置、証跡が分かりません。
一部対応済みの項目と未対応の項目が区別できません。
状況変化、改善状況、今後の更新可能性が見えません。
有価証券報告書、統合報告書、招集通知との不整合が重大なリスクになります。
良いエクスプレインは、未実施の事実を隠さず、原則の趣旨を理解し、会社の個別事情と代替的取組みを示します。今後実施する可能性がある場合には、検討体制、論点、スケジュール、取締役会または委員会の関与、次回更新時の見直し方針を具体化します。
次の一覧は、良いエクスプレインに含めるべき要素を表します。なぜ重要かというと、投資家は未実施の事実そのものより、会社が趣旨を理解し、改善に向けて管理しているかを見ているためです。読者は、各要素が一つでも欠けると説明の説得力が落ちる、と読み取ってください。
原則のどの要素を実施していないのかを曖昧にしません。
業種、規模、成長段階、機関設計、株主構成、海外展開、リスク特性を示します。
当該原則が何を目的としているかを踏まえて説明します。
同じ趣旨を別の方法で実現している場合、その内容を具体化します。
検討体制、論点、スケジュール、実施要否の判断基準を示します。
取締役会または関連委員会でどのように審議・確認したかを示します。
たとえば、監査役会設置会社で独立社外取締役が取締役5名中2名であり、任意の指名・報酬委員会を設置していない場合、必要に応じて検討してまいります、だけでは情報価値が低いです。改善するなら、独立性・客観性を高める重要性を認識していること、独立社外取締役全員を含む社外役員意見交換会で候補者選定方針、CEO後継者計画、報酬体系について意見を聴取していること、2026年度中に委員会の設置要否、委員構成、諮問事項、事務局体制を取締役会で検討し、次回更新時に開示する予定であることを示す、といった書き方が考えられます。
法務、会計、内部統制、取締役会事務局、IRが異なる角度から検証します。
開示品質を高めるには、文章表現だけではなく、記載内容がどの制度、どの社内手続、どの証跡、どの投資家対話と結び付くかを確認する必要があります。弁護士・企業内弁護士、公認会計士、内部統制担当、取締役会事務局、IR・経営企画は、それぞれ異なるリスクを見ています。
次の一覧は、専門職・部署ごとに確認すべき視点を表します。なぜ重要かというと、CG報告書の記載は法的整合性、データ検証可能性、会議体運営、投資家目線の全てを満たして初めて説得力を持つためです。読者は、自社レビューで誰に何を見てもらうべきかを読み取ってください。
上場規程、会社法、金融商品取引法、適時開示、招集通知、有価証券報告書、内部規程との整合性を確認します。取締役会決議事項、委員会権限、関連当事者取引、支配株主との利益相反、買収対応方針、役員報酬、内部統制、危機対応は特に重要です。
人的資本、サステナビリティ、資本コスト、政策保有株式、取締役会評価などの非財務情報について、算定基準、データオーナー、承認プロセス、更新頻度、内部チェック、外部保証の要否を整理します。
取締役会議題、年間スケジュール、役員トレーニング、社外役員への情報提供、委員会運営、実効性評価、スキル・マトリックス、株主総会対応を統合的に管理します。
投資家がガバナンス開示を、中期経営計画、資本政策、ROE、PBR、株主還元、事業ポートフォリオ、人的資本、社外取締役の実効性と一体で評価することを踏まえます。
実施と書くには、その実施が法的にどの機関の権限に属し、どの手続で決定され、どの証跡に残っているかを確認する必要があります。取締役会が委任範囲を明確に定めていると記載するなら、取締役会規程、職務権限規程、決裁規程、執行役員規程、委員会規程の整合性を確認すべきです。
内部統制の観点では、女性管理職比率の定義、外国人管理職の範囲、中途採用者管理職の算定基準、社外役員の独立性確認、IR面談件数、取締役会出席率などが、毎年同じ定義で集計されているかを確認する必要があります。
IR・経営企画の観点では、当社は株主との対話を重視しています、だけでは不十分です。対話の担当役員、面談体制、主な対話テーマ、投資家意見の経営・取締役会へのフィードバック方法、開示改善への反映状況を示すことが望ましいです。
成長投資、資本配分、取締役会支援、総会前開示が実務の焦点になります。
2026年4月10日、金融庁および東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コード改訂案を公表しました。金融庁の公表資料は、現行コードが2015年6月1日に適用開始され、2018年6月1日に改訂、2021年6月11日に再改訂されたものであり、今回公表されたものはその改訂案であると説明しています。
東京証券取引所のパブリックコメントページでは、募集期間が2026年4月10日から2026年5月15日までとされました。このページの内容を実務に使う際は、改訂案の最終化後の内容、上場規程、記載要領、制度要綱の実施時期を確認する必要があります。
次の時系列は、コード改訂と開示対応の主な節目を表します。なぜ重要かというと、現行開示を維持しながら改訂後コードへのギャップ分析を進める必要があるためです。読者は、過去の改訂時期、2026年案の公表時期、2027年提出期限案を分けて読み取ってください。
上場会社のガバナンス開示とコンプライ・オア・エクスプレインの実務が本格化しました。
政策保有株式、資本コスト、取締役会の機能などの論点が強化されました。
プライム市場に関する独立社外取締役、委員会、サステナビリティ、英文開示などが重要論点となりました。
成長投資、資本配分、取締役会機能、コーポレートセクレタリー、有価証券報告書の総会前開示が論点化しました。
準備ができ次第、改訂後コードに対応したCG報告書を提出する案が示されています。
改訂案の趣旨資料は、企業が中長期的に成長するには、成長投資や事業ポートフォリオ見直し等の適切な経営資源配分が必要であり、専ら株主還元に頼る短期目線ではなく、中長期的な企業価値向上に向けた成長投資等の取組みが期待されると説明しています。
今後の開示では、単に資本コストを意識して経営していますと記載するだけでは不十分です。取締役会が、現預金、金融資産、政策保有株式、遊休資産、人的資本、研究開発、知財、M&A、設備投資、株主還元をどのように比較検討しているかが、投資家対話の焦点となります。
改訂案の趣旨資料は、独立社外取締役の実効性向上に向け、独立社外取締役の役割・責務、質・量、独立性確保の重要性を強調し、議長や独立社外取締役を含めた取締役を支援する事務局、すなわちコーポレートセクレタリー等の機能強化を推進すべき旨を追記したと説明しています。
改訂案の趣旨資料は、有価証券報告書を株主総会前に提出することを、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として原則に記載したと説明しています。さらに、株主総会開催日の3週間以上前の提出が最も望ましいと補足しています。
方針、体制、実績、課題、今後を分けると記載が具体化します。
良いCG報告書は、抽象的な理念と具体的な実績が混在しません。各項目について、会社として何を重視するか、どの機関・部署・会議体が担当するか、当年度に何を行ったか、何が未達・検討中か、次年度以降に何を改善するかを分けると読みやすくなります。
次の判断の流れは、開示文を作成する順番を表します。なぜ重要かというと、最初に美しい文章を作るより、方針から今後までの情報を分けて置く方が、記載の不足や重複を見つけやすいためです。読者は、各項目を一文ずつでも埋めることで、説明の骨格ができると読み取ってください。
会社として何を重視するかを示します。
どの機関・部署・会議体が担当するかを示します。
当年度に何を実施したかを証跡と結び付けます。
未達、検討中、改善が必要な点を隠さず整理します。
次年度以降に何を改善し、いつ見直すかを示します。
取締役会実効性評価であれば、方針として取締役会の監督機能向上を目的に毎年評価を行うこと、体制として全取締役・監査役を対象とするアンケートと個別インタビューを実施し外部機関の助言を得ること、実績として資本配分・人的資本・海外リスクに関する議論時間を増やしたこと、課題として中長期戦略に関する社外役員への情報提供をさらに充実させること、今後として事業部門責任者との対話機会を増やすこと、という構成が考えられます。
検討中は、詳細を伴わなければ投資家にとって情報価値が低い表現です。記載要領も、今後コードを実施していく方針であるものの提出時点では実施していない場合、検討体制、検討手法、考慮要素、進捗状況、実施までの具体的スケジュールを記載することが考えられるとしています。
次の比較表は、検討中と書く場合に補うべき情報を表します。なぜ重要かというと、曖昧な検討表現は、実施する意思があるのか、単に先送りしているのかを投資家が判断できないためです。読者は、検討対象、主体、会議体、期限、判断基準、経過措置を一体で示す必要があると読み取ってください。
| 確認項目 | 記載で示す内容 |
|---|---|
| 何を検討しているか | 委員会設置、英文開示、スキル項目、後継者計画など対象を特定します。 |
| 誰が検討しているか | 取締役会、指名・報酬委員会、IR、法務、人事など主体を示します。 |
| どの会議体か | 取締役会、委員会、社外役員意見交換会、プロジェクト会議を示します。 |
| いつまでに結論を出すか | 年度内、次回定時株主総会後、次回CG報告書更新時など時期を示します。 |
| 判断基準は何か | 投資家ニーズ、コスト、体制、成長戦略、リスク状況などを示します。 |
| 経過措置は何か | 代替的な会議体、社外役員への説明、暫定的な開示改善を示します。 |
未実施理由では、会社の規模、事業特性、現時点での必要性といった言葉がよく使われます。しかし、なぜその事情が当該原則を実施しない理由になるのかを説明しなければなりません。たとえば、海外投資家比率が低いため英文開示を行っていないと記載する場合でも、将来的な海外投資家獲得方針、プライム市場での英文開示要請、自社のIR戦略、翻訳品質・コスト、優先順位を検討した結果であることを示すべきです。
未実施そのものより、説明不備・虚偽的な実施表示・開示不整合が問題になります。
コードはコンプライ・オア・エクスプレインを採用しているため、ある原則を実施していないこと自体が直ちに違法というわけではありません。しかし、上場会社として必要な説明を怠ること、実施していないにもかかわらず実施していると記載すること、重要な事実と異なる記載を行うことは、上場制度上、投資家対話上、レピュテーション上の重大リスクとなります。
次の一覧は、開示不備がどの場面で問題化するかを表します。なぜ重要かというと、CG報告書は平時の対話資料であると同時に、有事には過去の説明責任を検証する資料になるためです。読者は、どの記載がどのリスクに結び付くかを確認してください。
CG報告書、有価証券報告書、招集通知、統合報告書、決算説明資料の記載が食い違うと、説明責任が重くなります。
取締役会の責務、指名・報酬、政策保有株式、資本配分、実効性評価などについて、取締役が内容を説明できない状態は望ましくありません。
過去のCG報告書に内部通報制度や内部監査体制の整備を記載している場合、有事にはその実態が確認されます。
実態が伴わないコンプライや定型的なエクスプレインは、ガバナンス改善への意思を疑われる可能性があります。
社外取締役は、CG報告書を投資家との対話資料として読むべきです。自社が何をコンプライとしているのか、何をエクスプレインしているのか、説明が投資家に理解されるかを確認することは、監督機能の一部です。
不祥事が発生した場合、第三者委員会、調査委員会、投資家、メディアは、過去のCG報告書を確認します。そこにコンプライアンス体制を整備している、内部通報制度を適切に運用している、内部監査部門が取締役会に直接報告しているといった記載があれば、その実態が検証されます。平時のCG報告書は、有事の説明責任の基礎資料でもあります。
年次更新前、エクスプレイン作成時、提出後に分けて確認します。
実務チェックは、更新前だけでなく、エクスプレイン記載時、提出後の3段階で行うと漏れを減らせます。開示品質は、提出直前の校正だけではなく、最新制度の確認、データ定義、取締役会確認、投資家フィードバックの反映によって高まります。
次の一覧は、3段階のチェック項目を表します。なぜ重要かというと、更新前に制度・データを確認し、記載時に説明要素を補い、提出後に対話結果を次年度へ戻すことで、CG報告書が継続的に改善されるためです。読者は、自社の年次スケジュールに組み込む項目として読み取ってください。
制度の一般的な考え方として、個別会社の事情で結論が変わる点に注意して整理します。
一般的には、制度の基本はコンプライ・オア・エクスプレインであり、会社の個別事情に照らして実施しない原則がある場合には、その理由を説明することが予定されています。ただし、市場区分、上場規程、記載要領、改訂時期、会社の機関設計によって必要な対応は変わる可能性があります。具体的な開示判断は、最新資料と社内資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、遵守状況の開示と呼ばれるものには、実施しない原則の理由説明と、特定の事項についてコードが積極的開示を求める項目の記載が含まれると整理されます。ただし、どの原則にどの欄で対応するかは、記載要領や会社の市場区分で変わる可能性があります。具体的には、原則番号と記載欄を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、制度上は基本原則が中心とされていますが、任意で基本原則以外の原則について説明することも可能とされています。ただし、市場変更の予定、投資家層、資金調達方針、上場後の成長戦略によって望ましい対応は変わる可能性があります。具体的な開示範囲は、自社の計画と最新制度を踏まえて専門家へ相談する必要があります。
一般的には、全ての記載について一律に取締役会決議が必要とは限らないと考えられます。ただし、取締役会の責務、指名・報酬、政策保有株式、資本配分、実効性評価、株主との対話方針など、取締役会の監督機能に関わる事項では、取締役会または関連委員会での確認・報告が望ましい場合があります。具体的な機関決定の要否は、社内規程、上場規程、開示内容により変わるため専門家へ相談する必要があります。
一般的には、投資家が問題視するのは、未実施そのものよりも、理由が不明確であること、実態が伴わないコンプライ、説明の使い回し、改善意思の欠如とされています。ただし、会社の業種、成長段階、株主構成、過去の対話状況によって受け止められ方は変わる可能性があります。具体的な記載方針は、投資家対話の状況を踏まえて専門家へ相談する必要があります。
一般的には、最終化前の案を確定事項として開示することは避けるべきと考えられます。他方、成長投資、資本配分、取締役会機能、社外取締役支援、有価証券報告書の総会前開示などは、すでに投資家の関心が高い論点です。具体的な対応時期や記載方法は、最終化後のコード、上場規程、記載要領を確認し、専門家へ相談する必要があります。
形式的なコンプライ率ではなく、企業価値向上に必要なガバナンスを説明できるかが問われます。
コーポレートガバナンスコードの遵守状況の開示は、単なる年次事務ではありません。上場会社が自社の統治構造、取締役会の監督、経営戦略、資本配分、株主との対話、ステークホルダーとの協働をどのように考え、どのように実行しているかを市場に示す説明責任の設計です。
形式的なコンプライ率を上げることだけを目的にすると、CG報告書は読まれない文書になります。一方で、原則の趣旨を理解し、自社の個別事情を踏まえ、実施している内容と実施していない内容を正直かつ具体的に説明すれば、CG報告書は投資家との建設的対話を生む資料になります。
2026年改訂案は、コード対応を形式から実質へ戻す方向性を明確にしています。これからの実務では、法務、取締役会事務局、IR、経営企画、財務、人事、サステナビリティ、内部監査、外部専門家が連携し、単に文章を整えるのではなく、取締役会の議論、社内体制、データ、証跡、投資家対話を一体として整備することが求められます。
公的機関・取引所資料を中心に、制度理解に必要な資料名を整理します。