海外子会社、共同研究、ライセンス、M&A、クラウド共有で技術が動く前に、許可・届出・報告・事前報告をどう切り分けるかを企業法務の実務順で整理します。
届出だけで考えず、許可・報告・事前報告を分けます。
届出だけで考えず、許可・報告・事前報告を分けます。
国際技術供与における外為法上の届出判断では、海外へ技術を出す場面、海外から技術を入れる場面、重要管理対象技術を移転する場面、外国投資家が非公開技術へアクセスする場面を分けることが出発点です。
次の比較表は、判断を4つの層に分けたものです。どの制度がどの取引に対応するかを先に見極めることが重要で、表では左から制度、典型場面、実務上の結論を読めるようにしています。
| 判断層 | 主な制度 | 典型場面 | 実務上の結論 |
|---|---|---|---|
| 第1層 | 役務取引許可 | 日本から海外へ、または居住者から非居住者等へ、外為令別表該当技術を提供する | 届出ではなく、提供前の許可が必要となり得ます |
| 第2層 | 技術導入契約の届出・報告 | 日本企業が海外企業から指定技術を導入する | 指定技術・対価・契約類型により事前届出または事後報告を検討します |
| 第3層 | 官民対話スキームの事前報告 | 重要管理対象技術を海外での製造・製品開発につながる形で移転する | 契約前報告、官民対話、必要に応じインフォームが問題になります |
| 第4層 | 対内直接投資等と技術アクセス | 外国投資家による投資、役員就任、非公開技術情報アクセス等 | 投資側の事前届出・免除条件・技術情報管理と連動します |
技術はメール、会議、クラウド、研修、データルームなど見えにくい形で移転します。
外為法上の技術供与判断が難しいのは、規制対象が貨物の輸出だけでなく、図面、仕様書、ソースコード、製造条件、試験方法、設計思想、ノウハウ、オンライン会議、研修、クラウド共有などの情報移転に及ぶためです。
次の一覧は、企業法務が早い段階で拾うべき典型場面を整理したものです。各項目は技術が実際にどの経路で移るかを示しており、自社案件に近い場面を見つけたら輸出管理・知財・ITの確認が必要になると読み取れます。
海外子会社の技術者に工程条件、品質基準、量産立上げ手順を説明する場合、グループ内であっても確認が必要です。
海外企業や大学との共同研究では、相手方研究者、委託先、クラウド管理者まで実アクセス者を確認します。
NDAがあっても外為法上の許可要否は消えません。段階的開示、クリーンチーム、ログ管理が重要です。
公開特許に載らない歩留まり改善策、検査手順、材料配合などは公知技術とは別に扱います。
暗号、センサー、航空宇宙、半導体、材料、制御プログラムなどは技術またはプログラムとして確認します。
一般公開資料だけでなく、商談ブースで顧客向けカスタム仕様や性能限界を説明する場面に注意します。
外為法、技術、特定技術、居住性、該非判定などを実務の文脈で整理します。
用語の誤解は、届出判断を大きく誤らせます。次の表は、判断の前提となる用語を制度上の意味と実務上の注意に分けたものです。左列で用語を確認し、右列で社内ヒアリングや証跡作成にどう効くかを読んでください。
| 用語 | 意味 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 外為法 | 外国為替及び外国貿易法の略称で、技術提供、安全保障貿易管理、対内直接投資等を規律します | 主に25条、30条、55条の6、55条の8、55条の10等が問題になります |
| 技術 | 貨物の設計、製造または使用に必要な特定の情報を指します | 文書、図面、モデル、数式、仕様書、プログラム、技術指導、技能訓練が含まれ得ます |
| 特定技術 | 外為令別表に掲げられる規制対象技術です | 1項から15項はリスト規制、16項はキャッチオール規制の文脈で確認します |
| 技術提供・役務取引 | 技術データまたは技術支援を相手方に利用可能にする行為です | メール、画面共有、クラウド権限、研修、USB交付、ソースコード共有も対象になり得ます |
| 居住者・非居住者 | 国籍ではなく居住性を基本に相手方を把握します | 2022年5月1日施行の特定類型該当者に対するみなし輸出管理にも注意します |
| 該非判定 | 提供技術が外為令別表に該当するかを確認する作業です | 法律文言だけでなく、性能、用途、仕様、工程、例外規定、通達解釈を合わせて見ます |
| インフォーム | 経済産業大臣から許可申請が必要である旨の通知を受けることです | 受けた場合、当該技術提供は許可を受けなければ行えません |
| 技術導入契約 | 居住者が非居住者から工業所有権、実施権、技術指導等を受け入れる契約です | 海外から日本へ技術を入れる契約で、事前届出または事後報告が問題になります |
外向き技術提供と内向き技術導入で、制度の名前と効果が変わります。
行政手続の名称だけでなく、行為前に止まるのか、行為後に報告するのか、当局対話の端緒なのかを区別する必要があります。次の表は、各手続の実務上の効果を比較したものです。
| 区分 | 概要 | 実務上の効果 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 許可 | 行為前に行政庁の許可を取得します | 許可前に行為をしてはなりません | 外為法25条の役務取引許可 |
| 事前届出 | 行為前に届出を行い、審査期間・禁止期間を経ます | 受理後一定期間は原則実行できず、短縮されることがあります | 技術導入契約の締結等の届出 |
| 事後報告 | 行為後に所定期限内に報告します | 行為自体は許可制ではありませんが、報告漏れが問題になります | 技術導入契約の締結等の報告 |
| 事前報告 | 行為前に報告し、当局との対話・確認の端緒とします | 報告後の官民対話、必要に応じインフォームにつながります | 技術管理強化のための官民対話スキーム |
次の判断の流れは、技術が外へ出るのか、国内へ入るのか、双方向なのかを最初に分けるためのものです。契約名よりも技術の向きを先に見ることで、許可と届出を取り違えにくくなります。
契約書、NDA、データルーム、研修、出張、クラウド共有を含めます
日本から海外へ出るか、海外から日本へ入るか、双方向かを分けます
外為法25条系の許可、例外、包括許可、キャッチオールを確認します
指定技術、対価、クロスライセンス、親子間ライセンスを確認します
外向きの技術提供は、情報単位・アクセス者単位で提供前に確認します。
外向きの技術提供では、契約単位ではなく、図面、仕様書、ソースコード、工程条件、研修資料、試験方法など情報単位で判断します。次の判断の流れは提供前に確認すべき段階を示しており、上から順に進めることで該非判定、例外、包括許可、キャッチオール、周辺論点を確認できます。
営業資料や商務条件にとどまるか、設計・製造・使用に必要な情報かを分けます
契約相手だけでなく実アクセス者、クラウド、会議、研修、データルームを確認します
非居住者、海外子会社、国内の特定類型該当者を確認します
外為令別表1から15項、貨物等省令、通達、マトリクス表を照合します
公知技術、基礎科学研究、特許出願、最低限の使用技術、市販プログラム等を検討します
仕向地、需要者、用途、項番、内部規程、チェックリストの条件を確認します
用途、需要者、外国ユーザーリスト、懸念情報、インフォームの有無を確認します
契約条件、アクセス制御、社内承認、ログ、教育、監査を残します
次の一覧は、技術に該当し得る情報の種類を示します。どの情報が問題になりやすいかを把握することは、技術部門から具体的資料を出してもらうために重要です。
設計図、回路図、CADデータ、仕様書、モデル、数式、設計資料などは、性能や構成に結びつく情報として確認します。
設計温度、圧力、時間、材料配合、成膜条件、熱処理条件、歩留まり改善手順などは非公開ノウハウになりやすい領域です。
製造試験方法、評価条件、検査治具、合否基準、不具合解析結果、改善手順は、製品の使用や改良に必要な情報となり得ます。
評価ソースコード、アルゴリズム、ファームウェア、PLCプログラム、AIモデル、重み、推論ロジックは、技術またはプログラムとして確認します。
プログラム技術指導、技能訓練、オンライン研修、出張支援、コンサルティングは、資料交付がなくても対象となり得ます。
口頭説明次の比較表は、リスト規制に該当する可能性がある場合でも検討する代表的な例外をまとめたものです。例外名だけで判断せず、右列の落とし穴を確認することが重要です。
| 例外類型 | 概要 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 公知技術 | 新聞、書籍、学会発表、公開特許、公衆が制限なく入手可能な情報等 | 非公開ノウハウが混入すると例外から外れます |
| 基礎科学研究 | 自然科学分野の基礎的研究等 | 特定製品の設計・製造目的がある場合は慎重に見ます |
| 特許出願等 | 特許出願に必要な最小限の情報提供等 | 出願範囲を超える製造条件や失敗データの提供は別判断です |
| 最低限の使用技術 | 貨物の据付、操作、保守等に必要最小限の技術 | 製造・改造・性能向上ノウハウを含めないようにします |
| 市販プログラム等 | 一定条件を満たす汎用品・市販プログラム | 利用者制限、カスタム提供、ソースコード提供に注意します |
海外から日本へ技術を入れる契約では、指定技術と対価・契約類型を確認します。
文字どおり届出・報告が中心になるのは、日本企業が海外から技術を導入する技術導入契約です。次の表は指定技術の5分野を示します。左列の分野に関係する契約では、対価や契約類型を見て事前届出か事後報告かを読み分けます。
| 指定技術 | 例 |
|---|---|
| 航空機に関する技術 | 機体、エンジン、制御、構造、整備等 |
| 武器に関する技術 | 防衛装備、武器システム、弾薬関連等 |
| 火薬類の製造に関する技術 | 火薬、爆薬、推進薬、製造工程等 |
| 原子力に関する技術 | 原子炉、核燃料、放射線関連、濃縮・再処理等 |
| 宇宙開発に関する技術 | ロケット、衛星、宇宙機器、追跡管制等 |
次の時系列は、技術導入契約で管理すべき期限を整理したものです。契約締結前と締結後で必要な対応が変わるため、契約締結日、変更日、承継日、対価変更日を起算点として読むことが重要です。
指定技術で対価1億円相当額超、不確定、クロスライセンス、親子間ライセンス等に当たる場合は、契約締結前の届出を確認します。
届出受理後は原則として一定期間、契約締結等が制限され、短縮の有無をスケジュールに反映します。
事前届出対象でない指定技術契約や一定の変更では、契約後の報告期限を管理します。
次の比較表は、内向き技術導入で手続の要否を分ける観点をまとめたものです。指定技術かどうかだけでなく、対価、クロスライセンス、親子間取引、手続不要類型を横に見てください。
| 場面 | 確認するポイント | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 事前届出が問題になる場面 | 指定技術、対価1億円相当額超または不確定、クロスライセンス、親子間ライセンス等 | 契約締結前の届出と禁止期間管理を検討します |
| 事後報告が問題になる場面 | 指定技術に係る契約で事前届出対象ではないもの、一定の契約変更 | 契約締結・変更後の期限管理を行います |
| 手続不要となり得る場面 | 非居住者の在日支店等が独自開発した技術、一定のパッケージソフトウェア等 | 制度資料に照らし、不要と判断した根拠を記録します |
| 双方向クロスライセンス | 日本から海外へ出る技術と海外から日本へ入る技術が併存 | 役務取引許可と技術導入契約の届出・報告を別々に確認します |
重要技術の海外移転では、契約前報告とインフォームの可能性を契約スケジュールに入れます。
官民対話スキームは、重要技術の移転について契約前の事前報告を端緒に当局と対話する制度です。次の時系列は、事前報告から契約・移転、またはインフォームに至る流れを表しています。
半導体、センサー、蓄電池、量子、素材、医療機器等の機微性が高い分野では、最新資料で対象技術を確認します。
海外での製造・製品開発を可能にする設計・製造技術の提供かを確認し、共同研究でも技術の中身を見ます。
経済産業省との対話で、用途、需要者、再移転、アクセス制御、監査等を説明できるようにします。
払拭されれば契約・移転へ進み、払拭されない場合は許可申請を求めるインフォームの可能性があります。
次の一覧は、官民対話スキームが契約法務に与える影響を整理したものです。どの条項でスケジュール遅延や許可不取得に備えるかを読み取ることが重要です。
事前報告、官民対話、インフォーム対応を、契約発効や技術提供開始の条件にします。
対象技術を確定し、詳細情報を段階的に開示することで、不要な移転を避けます。
相手方に用途、需要者、製造場所、再提供先、管理措置の情報提供を求めます。
インフォームや許可不取得時に提供停止、解除、代替履行を選べるようにします。
再提供・再移転・用途変更の事前承諾、監査、ログ保存、違反時通知を定めます。
外国投資家による非公開技術情報アクセスは、投資規制と技術提供規制を重ねて見ます。
外国投資家が日本企業に出資し、役員を派遣し、取締役会資料、技術ロードマップ、研究開発データ、営業秘密へアクセスする場合、単なる投資ではなく技術アクセスの問題が生じます。次の一覧は、M&Aや投資案件で同時に見るべき統制です。
対象会社の技術・事業が外為法上の規制業種や重要技術に関係するか、案件初期から確認します。
技術資料を入れる前に該非判定を行い、公開情報、営業情報、技術情報、リスト規制該当情報を分けます。
外国投資家、実質的支配者、LP、政府系関与、制裁対象者該当性を確認します。
クリーンチーム、閲覧禁止フォルダ、ダウンロード禁止、スクリーンショット禁止、ログ保存を設定します。
投資完了後に海外親会社やグループ会社へ技術移転する場合は、別途審査します。
海外子会社、工場立上げ、オンライン会議、クラウド、共同研究などを場面別に確認します。
次の表は、国際技術供与で実際に問題になりやすい事例を、確認ポイントと契約・運用上の対策に分けたものです。場面ごとに見るべき相手方、情報、アクセス経路が違うため、横並びで比較して自社案件に近いリスクを拾ってください。
| 場面 | 確認ポイント | 契約・運用上の対策 |
|---|---|---|
| 海外子会社への技術指導 | グループ内でも非居住者への技術提供となり得ます。量産移管、工程条件、現地従業員、再委託先を確認します | 包括許可、再移転禁止、アクセス制限、ログ管理、廃棄・返還義務を確認します |
| 海外工場の立上げ | 工場新設自体ではなく、貨物輸出や技術提供が問題になります | 装置、治具、図面、作業標準書、PLCプログラム、金型データを資料単位で判定します |
| オンライン会議・ウェビナー | 口頭説明、画面共有、録画、チャット、質疑応答が問題になります | 公開情報のみの説明可能範囲と、招待制説明会での未公開仕様説明を分けます |
| クラウド・データルーム | アクセス可能な状態にしたこと自体が技術提供として問題になり得ます | 二要素認証、閲覧期限、ダウンロード制限、ウォーターマーク、ログ保存を設定します |
| M&A・技術DD | DD段階でもリスト規制該当技術の開示は問題になり得ます | 段階的開示、クリーンチーム、閲覧禁止フォルダ、投資規制との整合を確認します |
| 共同研究・大学連携 | 基礎科学研究例外が使えるかは、研究目的と提供技術の中身で判断します | 成果発表前レビュー、外国政府資金、再委託、研究者所属を契約で確認します |
| ソースコード・AIモデル | ソースコード、学習済みモデル、重み、暗号関連コード、制御プログラムが対象になり得ます | 公開リポジトリか限定アクセスか、汎用品・市販プログラム例外を確認します |
| 展示会・商談会 | 公開パンフレットと未公開仕様・設計条件の説明を分けます | 説明可能情報リスト、NG情報リスト、技術者教育、資料配布管理を整えます |
| 海外委託製造・EMS | 図面、部品表、工程条件、検査方法、装置設定値の提供が典型です | 再委託禁止、指定工場限定、図面管理、監査、漏えい時通知を定めます |
| 海外からの技術導入 | 航空機、武器、火薬類、原子力、宇宙開発の指定技術が問題です | 事前届出・事後報告、日銀経由の提出先、支払・税務・会計を確認します |
許可・届出・報告を契約条件、再移転制限、アクセス制御、停止権に落とし込みます。
契約書では、一般的な法令遵守だけでなく、外為法・輸出管理に特化した条項を用意する必要があります。次の一覧は、条項ごとの役割を整理したものです。どの条項が許可要否、再提供、用途、アクセス、変更、違反時対応のどこを支えるかを読み取ってください。
外為法、関連政省令、告示、通達、米国EARその他適用ある輸出管理・経済制裁法令の遵守を明記します。
技術情報の提供やアクセス付与は、必要な許可、届出、報告、禁止期間満了等が完了した後に実施する設計にします。
受領者による第三者開示、移転、再許諾、再輸出、再提供、目的外使用を事前承諾と法令手続に結びつけます。
大量破壊兵器、通常兵器、軍事用途、制裁対象用途への使用・提供をしない表明保証を求めます。
アクセス者を事前承認者に限定し、ログ保存、ダウンロード、複製、録画、外部保存を制限します。
最終用途、需要者、使用場所、製造場所、再委託先、支配関係、制裁リスト該当性の変更を通知させます。
法務だけでなく、技術・知財・輸出管理・IT・経営が同じ判断材料を持つ必要があります。
国際技術供与の外為法判断は、単独部署では完結しません。次の表は、部署・専門職ごとの役割を示しています。左列で担当を確認し、右列でどの証跡や判断に責任を持つかを読み取ってください。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 法務担当・企業内弁護士 | 契約条項、法的スキーム、届出・許可条件、リスク説明、取締役会報告 |
| 外部弁護士 | 難件、当局対応、違反疑義、M&A、国際契約、意見書作成 |
| 輸出管理・通商法務担当 | 該非判定、許可申請、キャッチオール、包括許可、記録管理 |
| 知財法務担当・弁理士 | ノウハウ特定、公知・非公知の切分け、ライセンス設計、特許出願との整合 |
| 技術・研究開発部門 | 技術内容、仕様、性能、製造・使用該当性、技術資料の範囲確定 |
| 海外事業・営業部門 | 顧客、用途、需要者、契約背景、海外現地事情の確認 |
| 人事部門 | 外国人雇用、研修、特定類型確認、出向・受入管理 |
| IT・情報セキュリティ部門 | アクセス制御、ログ、データルーム、クラウド、持出し制限 |
| 内部監査部門 | 統制の有効性検証、サンプル監査、是正措置確認 |
| 経理・税務・財務 | ロイヤルティ、支払報告、移転価格、源泉税、対価管理 |
| 経営陣 | 重要技術移転のリスク判断、事業撤退・移転・投資判断、当局対応方針 |
次の重要ポイントは、外為法対応を契約チェックに閉じ込めないためのものです。誰がどこまで判断するかを社内規程と承認プロセスに入れることが重要です。
輸出者等遵守基準や輸出管理内部規程を踏まえ、技術提供に関する一連の手続、承認、教育、監査、記録保存を仕組みにする必要があります。
技術提供前、技術導入契約、データルーム・クラウド共有を分けて点検します。
次の表は、外向き技術提供前に確認する項目を、確認事項と証跡に分けたものです。証跡列まで埋めることが重要で、後日の当局・監査対応では判断した理由が問われます。
| 項目 | 確認事項 | 証跡 |
|---|---|---|
| 技術内容 | 提供資料、口頭説明、ソフトウェア、研修内容を特定したか | 資料一覧、研修アジェンダ |
| 技術該当性 | 設計・製造・使用に必要な特定情報か | 技術部門メモ |
| 該非判定 | 外為令別表1から15項、16項を確認したか | 該非判定書、マトリクス |
| 提供先 | 契約相手、実アクセス者、再委託先を確認したか | 受領者リスト |
| 居住性 | 居住者・非居住者・特定類型を確認したか | 確認書 |
| 用途 | 最終用途、最終需要者、製造場所を確認したか | 用途確認書 |
| 例外 | 公知、基礎科学、最低限使用技術等を検討したか | 例外適用メモ |
| 許可 | 個別許可または包括許可の要否を確認したか | 許可証、包括許可適用判定 |
| キャッチオール | 客観要件、インフォーム、ユーザーリストを確認したか | スクリーニング結果 |
| 官民対話 | 重要管理対象技術の事前報告対象か | 検討メモ、当局相談記録 |
| 契約 | 輸出管理条項、再移転禁止、停止権があるか | 契約書 |
| IT統制 | アクセス権、ログ、ダウンロード制限を設定したか | IT設定記録 |
| 承認 | 社内決裁、輸出管理責任者承認を得たか | 稟議、承認ログ |
次の表は、海外から日本へ技術を導入する契約で確認する項目です。外向き技術提供とは制度趣旨が異なるため、契約方向、指定技術、対価、契約類型、期限管理を別建てで読む必要があります。
| 項目 | 確認事項 |
|---|---|
| 契約方向 | 日本企業が海外企業から技術を導入する契約か |
| 相手方 | 非居住者または非居住者の在日支店等か |
| 対象 | 工業所有権、ノウハウ、実施権、使用権、技術指導か |
| 指定技術 | 航空機、武器、火薬類、原子力、宇宙開発に関する技術か |
| 対価 | 1億円相当額超、不確定、または対価変更により超過するか |
| 契約類型 | クロスライセンス、親子間ライセンスか |
| 届出 | 契約締結日前3か月以内の事前届出が必要か |
| 禁止期間 | 受理後30日、期間短縮、契約効力発生日を管理したか |
| 報告 | 契約締結・変更日から45日以内の事後報告が必要か |
| 支払 | 支払等報告、源泉税、移転価格、会計処理を確認したか |
違反が疑われるときは、隠さず止め、残し、特定し、再判定します。
違反疑義では、通常の契約違反や情報漏えいとは異なる初動が必要です。次の時系列は、技術提供を止めてから再発防止までの順番を示しています。証跡削除や後付け説明を避けるため、まず停止と保全を優先します。
データルーム、クラウド、リポジトリ、オンライン会議、サポート窓口、出張支援を停止または保全します。
メール、アクセスログ、会議録、送付資料、契約書、稟議、該非判定書、チャット、ファイル履歴を保全します。
何を、誰に、いつ、どこで、どのように、何のために提供したかを時系列で整理します。
技術部門と輸出管理部門で、提供済み情報の該当性を再判定します。
必要に応じて外部専門家を含む危機対応チームを組成し、相談・報告方針と再発防止策を決めます。
次の比較一覧は、起きやすい誤解をまとめたものです。誤解の文だけを見て終わらせず、右側の正しい整理を自社ルールに落とし込むことが重要です。
| よくある誤解 | 正しい整理 |
|---|---|
| 外国人に技術を見せると必ず違反になる | 国籍だけでなく、居住性、特定類型、技術該当性、提供場所、提供方法を確認します |
| 子会社への提供なら許可不要である | 海外子会社への技術移転は典型的な技術提供として許可要否を確認します |
| NDAを結べば技術提供ではない | NDAは秘密保持義務を作りますが、外為法上の許可要否を消しません |
| 契約締結時に届出をすれば足りる | 外向き技術提供では届出ではなく許可が必要となり得ます |
| 貨物が非該当なら技術も非該当である | 貨物の該非と技術の該非は関連しますが同一ではありません |
| 公開特許に載っている技術なら何を説明してもよい | 公開特許にない製造条件、量産ノウハウ、失敗データ、改良方法は別途判断します |
| クラウドに置いただけなら問題ない | アクセス権を付与し、閲覧できる状態にすることが技術提供として問題になり得ます |
| リスト非該当なら記録不要である | 非該当の根拠、キャッチオール確認、用途・需要者確認、例外適用根拠を記録します |
よくある質問を、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、海外子会社やその現地従業員への技術提供は、グループ内であっても外為法上の確認対象になり得るとされています。ただし、提供技術の内容、該非判定、例外、包括許可、用途・需要者によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで専門家や所管官庁へ確認する必要があります。
一般的には、公衆が制限なく入手できる公知情報は許可不要例外の検討対象になり得ます。ただし、公開特許に記載されていない製造条件、量産ノウハウ、失敗データ、改良方法を併せて説明する場合は別判断となる可能性があります。具体的な対応は、提供情報を分けて専門家等へ相談する必要があります。
一般的には、NDAは秘密保持義務を定める契約であり、外為法上の許可要否を当然に消すものではないと考えられます。ただし、情報の範囲、アクセス者、用途、提供方法によって必要な管理は変わります。具体的な対応は、契約書と提供資料を照らして専門家等へ相談する必要があります。
一般的には、海外関係者や非居住者が規制対象技術にアクセスできる状態を作ることは、技術提供として問題になり得るとされています。ただし、資料の内容、アクセス権限、実アクセス者、例外の有無で判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、ログや権限設定を確認したうえで専門家等へ相談する必要があります。
外為法・安全保障貿易管理・技術導入契約に関する公的資料を整理しています。