2026年施行の取適法への改正を踏まえ、適用範囲、優先適用、発注書、支払期日、価格協議、社内統制まで、企業法務の実務に沿って整理します。
2026年施行の取適法への改正を踏まえ、適用範囲、優先適用、発注書、支払期日、価格協議、社内統制まで、企業法務の実務に沿って整理します。
同じ委託取引に複数の規制が重なる前提で、最初に見るべき順番を整理します。
企業が個人事業主、ひとり法人、業務委託先、クリエイター、エンジニア、ライター、コンサルタント、配送・役務提供者などに仕事を依頼する場面では、従来から下請法が問題になってきました。そこに2024年11月1日施行のフリーランス新法が加わり、2026年1月1日からは下請法が取適法へ改正されたため、企業法務では両法の重なり方を発注単位で確認する必要があります。
この重要ポイントは、両法がどちらか一方だけで完結しないことを表しています。結論部分が実務判断の出発点になるため、まずは優先適用の意味と、なお残る取適法対応を読み取ってください。
同じ発注にフリーランス新法と下請法(現・取適法)が重なることがあります。公正取引委員会は重複違反について原則フリーランス新法を優先適用する考え方を示していますが、取適法だけの違反が併存する場合には取適法の執行リスクも残ります。
企業が最初に確認すべき順番は、受注者の属性、取引類型、取適法上の規模要件、発注書と支払管理への反映です。この判断の流れは、漏れやすい確認項目を上から順に処理するために重要で、どの段階で両法が重なるかを読み取れます。
従業員を使用しない個人またはひとり法人か、従業員のいる法人かを記録します。
物品製造、情報成果物作成、役務提供、特定運送委託などに当たるかを見ます。
資本金基準や従業員基準を満たすかを発注者と受注者の双方で確認します。
発注書、変更記録、支払期日、価格協議、解除予告を一体で管理します。
該当する法律と、民法・独禁法・労働法などの周辺リスクを確認します。
フリーランス、下請、取適法という言葉を混同すると、適用判定を誤りやすくなります。
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。保護対象は、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人、または一人代表者のみで従業員を使用しない法人が中心です。従業員を使用するかどうかは、原則として1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上継続して雇用されることが見込まれる労働者の有無を見ます。
下請法は2026年1月1日から改正され、現行法では「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法です。検索や実務上は下請法という呼称がなお使われるため、このページでは下請法(現・取適法)として整理します。
次の比較一覧は、似た言葉が何を保護し、どの入口から判定するかを表しています。用語の違いを理解することが重要なのは、同じ個人への発注でも、フリーランス新法だけ、取適法だけ、両方、または周辺法だけという結論に分かれるためです。
従業員を使用しない個人・ひとり法人として働く受託者を中心に、取引条件明示、報酬支払、禁止行為、就業環境整備を求めます。
一定の委託取引における中小受託事業者を保護し、発注内容の明示、記録保存、60日以内支払、禁止行為を規律します。
個人やひとり法人への委託が、同時に取適法上の対象取引・規模要件を満たすと、発注書と支払管理で両法を同時に満たす必要があります。
制度名と保護対象の違いは、発注前確認の精度に直結します。次の表では、受注者属性、取引類型、発注者側の規模要件を列ごとに比べ、どの要件を個別に確認すべきかを読み取れるようにしています。
| 観点 | フリーランス新法 | 下請法(現・取適法) |
|---|---|---|
| 主たる保護対象 | 従業員を使用しない個人事業主、または一人代表者のみで従業員を使用しない法人 | 資本金基準・従業員基準等を満たす中小受託事業者。個人も含まれ得ます |
| 発注者側の入口 | 取引条件明示は広く業務委託事業者に適用され、支払義務や就業環境整備は発注者類型により広がります | 委託事業者と中小受託事業者の資本金基準・従業員基準などにより判定します |
| 対象取引 | 事業のために行う物品製造、情報成果物作成、役務提供の委託 | 製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託など |
| 自社利用の役務 | 発注者が自ら用いる役務提供委託も含まれます | 役務提供委託は原則として委託事業者が他者に提供する役務を念頭に置くため、より狭い場面があります |
契約名が業務委託契約、請負契約、準委任契約であっても、実態が労働者に当たる場合には労働関係法令が問題になります。労働組合法上の労働者性が認められる場面では、フリーランス新法と労働組合法上の保護が併存し得る点も見落とせません。
取引条件、支払期日、禁止行為、就業環境整備、記録保存の違いを並べて確認します。
両法は似た義務を持ちますが、同じ言葉でも対象者、期間、執行の重点が異なります。次の比較表は、発注書や社内規程へ落とし込む際に確認すべき項目を列ごとに示しており、共通点だけでなく、片方にしかない義務を読み取ることが重要です。
| 観点 | フリーランス新法 | 下請法(現・取適法) |
|---|---|---|
| 正式名称 | 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 | 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 |
| 取引条件の明示 | 業務委託後、直ちに書面または電磁的方法で明示します。口頭のみは不可です | 発注内容、代金額、支払期日、支払方法等を明示します。改正後は電子メール等による明示も可能です |
| 支払期日 | 原則として給付受領日から60日以内のできる限り短い期間。再委託例外があります | 原則として物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間 |
| 禁止行為 | 一定期間以上の業務委託について、受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な利益提供要請、不当な変更・やり直しを禁止します | 受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置、有償支給原材料等の早期決済、不当な利益提供要請、不当な変更・やり直し、協議に応じない一方的な代金決定などを禁止します |
| 就業環境整備 | 募集情報の的確表示、育児介護等への配慮、ハラスメント対策、解除等の予告・理由開示が特徴です | 取引条件、支払、代金決定の適正化が中心で、就業環境整備は中心規制ではありません |
| 記録保存 | 明示、やり取り、支払、変更の証跡化が実務上重要です | 取引記録の作成・保存義務が明確に定められます |
| 重複違反 | 公正取引委員会は原則としてフリーランス新法を優先適用するとしています | 取適法だけの違反もある場合など、取適法に基づく勧告がされることがあります |
共通している60日以内支払や明示義務だけを見てしまうと、就業環境整備、遅延利息、価格協議、手形払等禁止などの差分を落としやすくなります。両法が重なる取引では、片方の要件で足りるかではなく、双方の要件を満たす書式と運用を標準化する発想が必要です。
相手が個人というだけでは足りず、特定受託事業者、業務委託、発注者類型を順に見ます。
フリーランス新法の第一の入口は、受注者が特定受託事業者に当たるかです。個人事業主であっても従業員を使用していれば、原則として同法上の特定受託事業者ではありません。法人であっても、一人代表者のみで従業員を使用しない場合には、同法上の保護対象になり得ます。
次の注意要素は、フリーランス新法の適用判定で発注部門が確認すべき事項を示しています。なぜ重要かというと、口頭確認だけでは後から発注時点の属性を証明しにくいためで、各項目は記録として残すべき情報を読み取るために使います。
1週間20時間以上、かつ31日以上継続雇用が見込まれる労働者の有無を確認し、回答日と発注番号に紐付けて保存します。
物品製造、情報成果物作成、役務提供の委託に当たるかを見ます。既製品購入や単なる貸借とは分けて整理します。
社内研修、社内広報動画、社内システム保守など、自社で使う役務もフリーランス新法上は対象になりやすい点を確認します。
発注者が特定業務委託事業者に当たる場合、支払期日、禁止行為、募集情報、ハラスメント対策、解除予告などが広がります。
確認文例としては、発注時点で「貴殿または貴社は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上継続して雇用されることが見込まれる労働者を使用していますか」と尋ねる方法が考えられます。ただし、質問文だけで終わらせず、回答の保存、回答日、発注日、発注番号、契約書・発注書との紐付けまで管理する必要があります。
フリーランス新法上の業務委託は、発注者が事業のために他の事業者へ物品の製造、情報成果物の作成、または役務の提供を委託する行為です。発注者が自ら用いる役務も含まれるため、社内研修講師、社内資料デザイン、社内イベント運営補助などは、取適法の対象になるかとは別に、フリーランス新法の検討対象になりやすいといえます。
取引条件明示では、発注者・受注者の名称、業務委託日、給付内容、受領期日・役務提供期日、場所、検査完了期日、報酬額、支払期日、現金以外の支払方法などを直ちに書面または電磁的方法で示す必要があります。口頭のみの発注は、後日トラブルになったときに最も弱い運用です。
フリーランスかどうかではなく、取引類型と規模要件で判定します。
取適法は、フリーランス個人の就業環境ではなく、中小受託事業者との委託取引の公正化を目的とします。対象取引には、製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託などがあり、委託事業者と中小受託事業者の資本金基準または従業員基準により適用関係を判定します。
次の比較表は、2026年改正後に取適法で特に見落としやすい入口をまとめたものです。フリーランス新法とは違う物差しを使うことが重要で、列ごとに、誰を確認し、どの取引を確認し、どの社内記録を残すかを読み取ってください。
| 確認項目 | 実務上の意味 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 対象取引 | 製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託などを確認します | 単なる外注先という呼び名だけで対象外と扱うこと |
| 規模要件 | 資本金基準に加え、製造委託等は常時使用従業員数300人、役務提供委託等は100人といった従業員基準を確認します | 受注者が個人か法人かだけで判定すること |
| 義務 | 発注内容等の明示、取引記録の作成・保存、支払期日の設定、遅延利息の支払が問題になります | 基本契約だけで個別発注の内容を明示しないこと |
| 禁止行為 | 支払遅延、減額、返品、買いたたき、不当な変更・やり直し、価格協議に応じない一方的な代金決定などを管理します | 現場の値下げ依頼や無償追加依頼を軽く扱うこと |
取適法は、従業員を使用している中小企業、法人、個人事業主にも適用され得ます。たとえば、従業員10名のデザイン会社、20名のソフトウェア開発会社、補助者を雇用している職人は、フリーランス新法上の特定受託事業者でなくても、取適法上の中小受託事業者に該当し得ます。
行政執行上の優先と、発注時点で満たすべき義務は同じではありません。
公正取引委員会は、フリーランス新法と取適法のいずれにも違反する行為について、原則としてフリーランス新法を優先して適用し、フリーランス新法に基づく勧告の対象となった行為について重ねて取適法に基づく勧告はしない、という考え方を示しています。
ただし、同じ事業者が取適法のみに違反する行為も行っており、行為全体について取適法を適用することが適当と考えられる場合には、重なり合う行為についても取適法に基づく勧告がされることがあります。これは、優先適用が取適法の消滅を意味しないことを示しています。
次の判断の流れは、優先適用を社内手順へ誤って持ち込まないためのものです。上段は行政執行の整理、下段は企業が発注時に実装すべき対応を表し、両者を分けて読むことが重要です。
行政執行上は原則としてフリーランス新法を優先する整理があります。
支払遅延、記録保存、価格協議、手形払等禁止など独自論点を確認します。
重なり合う行為を含めて取適法に基づく勧告があり得ます。
ただし社内書式は両法の要求を満たす前提で設計します。
同じ「60日以内支払」でも、フリーランス新法には再委託の場合の支払期日の例外があります。元委託者から受けた業務をフリーランスへ再委託する場合、一定事項を明示すれば元委託業務の対価の支払期日から30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることができます。一方で、取適法にも同じ例外が当然にあるとは限らないため、両法が重なる取引では、特段の検討がない限り受領日から60日以内を標準とする運用が保守的です。
フリーランス新法のみ、取適法のみ、両法重複、周辺法対応の4類型で整理します。
同じ業務委託でも、受注者属性、取引類型、規模要件の組み合わせで適用される法律が変わります。次の4類型は、社内の発注前チェックで分岐を確認するために重要で、どの場面でどの義務を重点管理するかを読み取れます。
従業員を使用しない個人やひとり法人に、自社利用の研修、資料作成、イベント撮影などを委託し、取適法の対象取引や規模要件を満たさない場面です。
従業員を使用している中小企業や制作会社などが受注者で、フリーランス新法の特定受託事業者ではないものの、取適法の対象取引・規模要件を満たす場面です。
従業員を使用しない個人エンジニア、個人職人、個人クリエイターなどに委託し、同時に取適法上の対象取引・規模要件も満たす場面です。
フリーランス新法のみが問題になりやすい例として、中小企業が個人デザイナーへ社内報デザインを依頼する、ひとり法人の講師へ社内研修を依頼する、個人ライターへ社内向けマニュアル作成を依頼する、個人カメラマンへ自社イベント撮影を依頼する場面があります。
取適法のみが問題になりやすい例として、大企業が従業員20名のソフトウェア会社へ顧客向けシステム開発を委託する、メーカーが従業員のいる町工場へ部品加工を委託する、広告関連企業が従業員のいる制作会社へ情報成果物作成を委託する場面があります。
両法が重なる場面では、発注書、個別注文書、契約管理、支払管理、変更管理、価格協議記録を別々の縦割りにせず、一体で管理することが重要です。単なる既製品購入やスペース貸借でも、仕様変更、加工、管理、清掃、運搬、設置などが加われば別途検討が必要になります。
基本契約だけで安心せず、個別発注ごとに給付内容、支払期日、変更手続を明示します。
フリーランス新法では、業務委託をした場合、直ちに取引条件を明示する必要があります。契約書を締結していても、個別発注の給付内容、数量、納期、検査期日、報酬額、支払期日などが確定していなければ、個別の明示として不十分になり得ます。取適法でも、基本契約書だけでは足りない場面があります。
次の表は、発注書に含めるべき項目と実務上の書き方を示しています。発注書を最小限の帳票ではなく紛争予防の証跡として使うことが重要で、各行から、後で争点になりやすい事項をどこまで具体化するかを読み取ってください。
| 項目 | 実務上の記載ポイント |
|---|---|
| 発注者・受注者の名称 | 個人名、屋号、法人名、登録番号、メールアドレス等を管理します |
| 業務委託日・発注日 | 合意日・発注日を明確にし、属性確認日と紐付けます |
| 給付内容 | 成果物、仕様、範囲、数量、品質基準、知的財産権の扱いを明確にします |
| 納期・場所 | 具体日、明確な期間、電子納品先、提出システム、役務提供場所を記載します |
| 検査完了期日 | 検収条件、検収期間、検収方法を記載します |
| 報酬額 | 税込・税抜、単価、数量、変動算定式、経費負担を明確にします |
| 支払期日 | 受領日から60日以内のできる限り短い期間で、具体日が特定できる形にします |
| 支払方法 | 銀行振込、振込手数料の負担者、現金以外の方法の条件を明示します |
| 再委託該当性 | 再委託例外を使う場合は、再委託である旨、元委託者名、元委託業務の支払期日を明示します |
| 変更手続 | 仕様変更、追加作業、やり直し、キャンセル時の費用負担を明確にします |
| 価格協議 | 労務費・原材料費等の変動時の協議窓口、記録方法を定めます |
| 相談・通報 | 報復措置禁止、ハラスメント相談窓口、業務上の苦情処理手続を整備します |
支払期日では、「翌月末まで」「請求書受領後60日以内」「検収後速やかに」といった曖昧な表現が問題になります。実務上は、具体日を記載する、月末締め翌月25日支払としつつ受領日から60日を超える場合は60日目を支払期日とする、金融機関休業日の順延はあらかじめ合意する、といった設計が望ましいです。
変更・やり直しは、無償対応として現場で処理されやすい危険領域です。仕様変更は口頭で依頼せず、追加作業の範囲、追加報酬、納期延長を同時に確定し、顧客都合のキャンセルを受注者に転嫁しない運用が必要です。
買いたたき、一方的な代金決定、価格転嫁対応を記録に残します。
フリーランス新法では、一定期間以上の業務委託について、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定める買いたたきが禁止されます。継続取引の中で発注者が一方的に単価を引き下げる、物価上昇・労務費上昇を無視して旧単価を押し付ける、追加仕様を入れながら報酬を据え置く行為は問題になりやすい領域です。
取適法では、2026年改正により、協議に応じない一方的な代金決定が禁止行為として追加されました。中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じない、必要な説明をしない、一方的に代金を決定する運用は、取適法上のリスクになります。
次の表は、価格改定要請を受けたときの社内手順を表しています。価格協議は結論だけでなく過程の記録が重要で、各段階から、受付、事実確認、協議、判断理由、証跡保存、契約反映のどこを残すべきかを読み取ってください。
| 段階 | 必要な対応 |
|---|---|
| 協議申入れ受付 | 受注者からの価格改定要請を受け付ける窓口を明示します |
| 事実確認 | 労務費、原材料費、外注費、為替、エネルギー価格、仕様変更の有無を確認します |
| 協議実施 | 面談、メール、オンライン会議等で実質的な協議を行います |
| 判断理由 | 価格改定を認める場合も認めない場合も、合理的な理由を記録します |
| 証跡保存 | 見積書、議事録、メール、社内承認記録を保存します |
| 契約反映 | 単価改定、追加費用、納期変更を発注書または変更書に反映します |
取引先マスター、発注前確認、支払システム、現場研修を一体で整えます。
企業法務・購買・経理・現場部門が最初に取り組むべきは、取引先マスターの整備です。発注先ごとに、個人・法人・ひとり法人の区分、従業員使用の有無、確認日・確認方法、資本金、従業員数、取適法該当性、取引類型、継続期間、解除予定、ハラスメント窓口の案内、価格協議履歴を管理します。
次の一覧は、社内統制として組み込むべき管理領域を表しています。なぜ重要かというと、法務だけでなく購買、経理、人事、現場の作業がつながって初めて違反を防げるためで、各項目から部門ごとの管理責任を読み取ってください。
属性、確認日、規模要件、取引類型、継続期間、相談窓口案内、価格協議履歴を一元管理します。
属性管理従業員使用、対象取引、資本金・従業員基準、発注書記載事項、60日以内支払、継続期間、募集情報、解除予告、秘密情報、知財を確認します。
発注統制発注日、受領日、検収日、支払期日を必須項目にし、60日超過、請求書未着、手数料控除、減額、相殺、返品、キャンセルを監視します。
重点管理発注後の値下げ、顧客キャンセルの転嫁、無償追加修正、購入要請、価格改定拒否、支払遅延、行政申出への不利益取扱いを禁止例として示します。
現場運用発注前チェックでは、受注者が従業員を使用していない個人またはひとり法人か、取引が物品製造・情報成果物作成・役務提供のいずれかか、自社利用の役務か顧客提供役務の一部か、取適法上の対象取引と規模要件を満たすか、発注書に必要事項が記載されているかを確認します。
支払管理では、請求書未着を理由に支払保留しない運用、振込手数料控除が報酬減額・代金減額にならない確認、交通費・材料費・立替費用の未払い防止、減額・相殺・協賛金・手数料控除・返品・キャンセルの承認権限を法務・経理に集中する仕組みが重要です。
開発、製造、研修、制作の4場面で、発注書に落とすべき論点を確認します。
制度説明だけでは、どの発注で両法が重なるかを判断しにくいことがあります。次の比較一覧は、典型的な委託場面ごとに、どの法律が問題になりやすく、発注書へ何を明示すべきかを示しており、自社の取引に近い場面を探して読むことが重要です。
大企業が従業員を使用しない個人にプログラム作成を委託する場合、フリーランス新法と取適法が重なる可能性があります。仕様、成果物、納期、検査完了期日、報酬額、支払期日、知財、保守範囲を明示します。
材料支給、有償支給原材料、検査基準、不良品対応、返品、納期遅延、金型・治具の扱いが重要です。後出しの検査基準や受領後長期間経過後の返品はリスクが高まります。
フリーランス新法上の役務提供委託に該当しやすい一方、自社利用の役務であるため取適法は慎重な判定が必要です。研修日、時間、場所、資料作成、録画利用、キャンセル料、交通費、支払期日を明示します。
制作会社が広告主案件の一部を再委託する場合、修正回数、追加料金、納期変更、著作権譲渡・利用許諾の範囲を個別発注書に明確に記載する必要があります。
制作・開発案件では、クライアント都合の修正、素材差し替え、納品後のサイズ展開、追加資料作成などが発生しやすくなります。これらを当然の無償対応として扱うのではなく、変更注文、追加報酬、納期延長を記録する運用が、両法対応の中心になります。
社内で起きやすい理解のずれを、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、その理解だけでは足りません。両法は目的と適用対象が異なり、フリーランス新法が適用される取引でも、取適法の対象取引・規模要件を満たせば取適法上の義務・禁止行為も検討する必要があります。具体的な適用関係は、取引内容、当事者属性、規模要件によって変わるため、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、個人であっても従業員を使用していれば、原則として特定受託事業者ではないとされています。また、実態として労働者に当たる場合は労働関係法令が問題になります。具体的な判断は、従業員使用の有無、業務実態、指揮命令関係などで変わる可能性があります。
一般的には、その理解は適切ではありません。フリーランスが取適法上の中小受託事業者にも該当し、取引類型・規模要件を満たす場合、両法が重なる可能性があります。個別の発注では、両法を別々に判定する必要があります。
一般的には、個別の給付内容、納期、報酬額、支払期日、検査期日などは、個々の業務委託時に明示する必要があります。基本契約書と個別発注書を組み合わせる実務が望ましい場面が多いとされています。
一般的には、請求書未提出だけを理由に支払期日を徒過する運用はリスクがあります。フリーランス新法や取適法では、給付受領日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定めることが重要です。具体的な支払処理は契約内容や受領状況により変わるため、専門家へ確認する必要があります。
一般的には、取適法では価格協議の求めに応じない、必要な説明をしない、一方的に代金を決定する運用が問題となる可能性があります。フリーランス新法上も、著しく低い報酬を不当に定める買いたたきが問題となる可能性があります。協議の経過と判断理由を記録することが重要です。
一般的には、担当者のメール、チャット、口頭指示、会議での合意は、発注内容や変更指示の証拠になり得ます。会社としては、現場の依頼経路、変更注文、追加報酬、支払期日を管理する必要があります。
法務だけで抱えず、経理、労務、知財、内部監査と分担します。
両法対応は、契約条項の修正だけで完結しません。次の一覧は、専門職・部門ごとの役割分担を表しており、どの部門がどの統制を担うべきかを読み取るために重要です。
適用判定、契約書・発注書ひな形、違反疑義時の調査、行政対応、紛争対応を担います。
基本契約、個別発注書、変更注文書、検収書、契約管理システム、取引先属性管理、証跡保存を整えます。
研修、相談窓口、報復措置禁止、ハラスメント対応、発注書未交付、支払遅延、価格協議記録の不備を監査します。
支払期日、源泉徴収、消費税、インボイス、振込手数料、立替経費、相殺処理を管理します。
業務委託と雇用の境界、ハラスメント対策、育児介護等への配慮、契約解除時のトラブル予防に関与します。
成果物利用範囲、二次利用、著作者人格権、オープンソース、生成AI利用条件、情報セキュリティを確認します。
デザイン、ソフトウェア、コンテンツ、記事、動画、設計図、AI関連成果物では、知的財産権の譲渡・利用許諾範囲が重要です。給付内容の一部として、背景知財、本件成果物、二次利用、再委託先からの権利取得、秘密情報・個人データの扱いまで明示する場面があります。
発注前から支払、変更、解除、行政申出対応まで確認します。
最終確認では、制度名ではなく、発注・変更・支払・解除の運用に要件が入っているかを確認します。次の表は未対応時の主なリスクを横に並べており、各行を社内チェック項目として使うことで、どこに統制を追加すべきかを読み取れます。
| No. | チェック項目 | 未対応時の主なリスク |
|---|---|---|
| 1 | 取引先が従業員を使用しているか、発注時点で確認している | フリーランス新法の適用漏れ |
| 2 | 取引類型が物品製造、情報成果物作成、役務提供、特定運送委託等に該当するか判定している | 取適法の適用漏れ |
| 3 | 資本金・従業員数基準を確認している | 取適法の適用漏れ |
| 4 | 基本契約だけでなく個別発注書を発行している | 明示義務違反 |
| 5 | 発注書に報酬額・支払期日・検査期日・納期が明記されている | 支払期日・検収トラブル |
| 6 | 支払期日が受領日から60日以内で具体的に特定されている | 支払遅延、遅延利息、勧告リスク |
| 7 | 請求書未提出を理由に支払遅延しない仕組みがある | 支払遅延リスク |
| 8 | 仕様変更・追加作業・やり直しを変更注文で管理している | 不当な変更・やり直しリスク |
| 9 | 値下げ、相殺、手数料控除、協賛金徴収を法務・経理が確認している | 報酬減額・代金減額リスク |
| 10 | 価格協議の申入れを記録し、協議・回答・理由を保存している | 一方的な代金決定、買いたたきリスク |
| 11 | 1か月以上・6か月以上の継続取引を把握している | 禁止行為、配慮義務、解除予告義務の漏れ |
| 12 | 募集情報の正確性・最新性を管理している | 募集情報の的確表示義務違反 |
| 13 | ハラスメント相談窓口をフリーランスにも周知している | 就業環境整備義務違反 |
| 14 | 契約解除・不更新時に30日前予告・理由開示が必要か確認している | 解除等予告義務違反 |
| 15 | 行政機関への申出を理由に不利益取扱いをしない方針を周知している | 報復措置リスク |
企業が採るべき方針は、取引先属性を確認し記録に残すこと、フリーランス新法と取適法の適用を別々に判定すること、重なる場合はより広く厳格な要件を発注書とシステムに組み込むこと、支払期日・変更・やり直し・価格協議・減額・解除を重点管理すること、法務・購買・経理・コンプライアンス・内部監査・労務・知財・現場部門が共同で運用することです。
制度の正式名称や公的な考え方を確認するための資料名を整理しています。