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自社株評価とは
非上場株式の評価方法と実務論点

自社株評価は、非上場会社の株式価値を目的に合わせて算定する実務です。税務、会社法、会計、M&A、事業承継、株主間紛争で前提が変わるため、数字だけでなく目的、基準日、手続、資料を整理することが重要です。

3つ 目的・主体・時点の確認
3年から5年 財務資料の基本確認期間
37%から38% 純資産価額方式の改正動向
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自社株評価とは 非上場株式の評価方法と実務論点

自社株評価は、非上場会社の株式価値を目的に合わせて算定する実務です。

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自社株評価とは 非上場株式の評価方法と実務論点
自社株評価は、非上場会社の株式価値を目的に合わせて算定する実務です。
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  • 自社株評価とは 非上場株式の評価方法と実務論点
  • 自社株評価は、非上場会社の株式価値を目的に合わせて算定する実務です。

POINT 1

  • 自社株評価の全体像をつかむ
  • 非上場会社の株式には市場価格がないため、目的ごとの評価軸を先に整理します。
  • 自社株評価は目的適合性が出発点です
  • 何のための評価か
  • 誰にとっての価値か

POINT 2

  • 自社株評価が必要になる場面
  • 相続、株式売買、少数株主対応、M&A、インセンティブ、訴訟で評価目的が変わります。
  • どの場面でも、価格の合理性だけでなく、契約、決議、説明資料、税務処理、紛争予防が重要です。
  • 次の比較一覧は、自社株評価が使われる代表的な場面と、そこで重視される論点を表しています。
  • 場面ごとに、確認すべきリスクと関与すべき専門家が変わることを読み取ってください。

POINT 3

  • 自社株評価で最初に整理する基本概念
  • 評価目的、評価基準日、評価単位、企業価値と株式価値、時価概念を区別します。
  • 企業価値と株式価値の関係
  • 自社株評価では、評価目的、評価基準日、評価単位を最初に確定します。
  • 次の比較一覧は、自社株評価で混同しやすい基本概念を整理しています。

POINT 4

  • 税務上の自社株評価と取引相場のない株式
  • 1. 取得者と株主区分を確認します:同族株主等に該当するか、会社支配に関係する株主かを整理します。
  • 2. 会社規模を判定します:従業員数、総資産価額、取引金額などから大会社・中会社・小会社を確認します。
  • 3. 特定の評価会社に該当するか確認します:株式等保有特定会社、土地保有特定会社、比準要素数1の会社、休業会社、清算中会社などを確認します。
  • 4. 原則的評価方式:類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式を検討します。
  • 5. 特例的評価方式:要件を満たす場合、配当還元方式を検討します。

POINT 5

  • 会社法・企業法務における自社株評価
  • 税務評価だけに依存するリスク
  • 税務評価額は参考資料になっても、会社法上の公正な価格を自動的に決めるものではありません。
  • 利益相反のリスク
  • 支配株主、役員、親族、関連会社が関係する場合、特別利害関係人や取締役の忠実義務を確認します。

POINT 6

  • M&A・組織再編における自社株評価
  • 1. 複数手法で評価レンジを作ります:DCF法、類似会社比較法、類似取引比較法、修正純資産法を会社の性質に合わせて使います。
  • 2. デューデリジェンスで前提を検証します:正常収益力、偶発債務、契約承継、労務、税務、知財、運転資本を確認します。
  • 3. 価格調整と補償条項へ反映します:発見されたリスクを、価格調整、表明保証、補償、エスクロー、保険で処理します。
  • 4. 手続の公正性を記録します:利益相反がある取引では、特別委員会や独立専門家の関与、少数株主への説明を残します。

POINT 7

  • 評価目的別に選ぶ自社株評価の方法
  • 相続税、親族間売買、自己株式取得、M&A、株主間紛争、会計で使い分けます。
  • 自社株評価では、目的に合った方法を選ぶことが重要です。
  • 相続税・贈与税では財産評価基本通達が中心ですが、親族間売買では税務上の時価と民事上の合意価格をあわせて確認します。
  • 会社による自己株式取得では財源規制、株主平等、みなし配当、取締役責任も問題になります。

POINT 8

  • 自社株評価の実務プロセスと必要資料
  • 1. 評価目的を文書化します:相続税申告、贈与検討、少数株主買取り、M&A、取締役会資料など、何のための評価かを明確にします。
  • 2. 評価対象を特定します:普通株式、種類株式、新株予約権、少数株式、自己株式取得対象などを株式数と議決権割合まで確認します。
  • 3. 評価基準日を設定します:相続開始日、贈与日、契約日、買取請求日、決算日など、目的に合う日を明記します。
  • 4. 資料を集めます:過去3年から5年の決算書、税務申告書、株主名簿、定款、事業計画、重要契約、不動産資料などを整えます。
  • 5. 財務・税務・法務を確認します:正常収益力、非経常損益、含み損益、偶発債務、株式の有効性、許認可、契約、労務、知財を確認します。
  • 6. 評価方法を選定します:税務申告、M&A、資産保有会社、紛争対応など、目的と資料状況に合う方法を選び、採用理由を残します。
  • 7. 試算と感応度分析を行います:評価レンジを示し、割引率、成長率、営業利益率、不動産評価、偶発債務などの影響を確認します。
  • 8. 専門家レビューを受けます:弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、不動産鑑定士、M&Aアドバイザーが目的との整合性を確認します。
  • 9. 意思決定と証拠化を行います:議事録、契約書、稟議、計算ファイル、専門家とのやり取り、税務申告資料を整理して保存します。

まとめ

  • 自社株評価とは 非上場株式の評価方法と実務論点
  • 自社株評価の全体像をつかむ:非上場会社の株式には市場価格がないため、目的ごとの評価軸を先に整理します。
  • 自社株評価が必要になる場面:相続、株式売買、少数株主対応、M&A、インセンティブ、訴訟で評価目的が変わります。
  • 自社株評価で最初に整理する基本概念:評価目的、評価基準日、評価単位、企業価値と株式価値、時価概念を区別します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

自社株評価の全体像をつかむ

非上場会社の株式には市場価格がないため、目的ごとの評価軸を先に整理します。

自社株評価とは、会社が発行する株式、とくに非上場会社、同族会社、中小企業、オーナー企業の株式について、一定の目的に応じて価値を算定する実務です。上場株式には市場価格がありますが、非上場株式は取引事例が少なく、流動性、株主構成、支配関係、契約関係、会社の資産や収益力によって評価が大きく変わります。

自社株評価で最初に押さえるべき点は、唯一絶対の価格を探す作業ではないという点です。相続税や贈与税では国税庁の財産評価基本通達が中心になりますが、M&Aでは将来キャッシュフローやシナジーが重視され、会社法上の株式買取請求や譲渡制限株式の価格決定では公正な価格と手続の公正性が問題になります。

次の重要ポイントは、自社株評価がどの目的で使われ、どの前提を確認すべきかを示します。読者にとって重要なのは、最初の整理がずれると税務調査、株主紛争、役員責任相続人間の対立、M&A価格調整に波及する点です。ここでは、数字を見る前に決めるべき観点を読み取ってください。

自社株評価は目的適合性が出発点です

税務評価、会社法上の公正価格、M&A評価、会計上の公正価値は、目的、基準日、資料、利害調整の考え方が異なります。同じ会社の同じ株式でも、目的が変われば評価額は変わる可能性があります。

自社株評価で最初に問う3つのこと

次の一覧は、自社株評価の着手前に確認する3つの問いを整理したものです。なぜ重要かというと、この3点が評価方法、必要資料、専門家の関与範囲を決めるためです。各項目から、評価目的、価値を見る主体、評価時点の違いが結論に影響することを読み取ってください。

Question 01

何のための評価か

相続税申告、贈与、親族間売買、少数株主からの買取り、M&A、裁判、会計処理、社内意思決定では、評価方法と証拠の整え方が異なります。

Question 02

誰にとっての価値か

支配株主の株式と少数株主の株式では、議決権支配、配当期待、売却可能性が異なります。支配プレミアムや少数性の扱いは目的ごとの検討が必要です。

Question 03

いつの価値か

相続開始日、贈与日、売買契約日、買取請求日、組織再編効力発生日など、評価基準日が変わると業績、金利、不動産価格、訴訟リスクの前提も変わります。

自社株評価では、会社全体の価値だけでなく、株式の種類、保有割合、譲渡制限、潜在株式、自己株式、株主間契約も確認します。評価額だけを先に出すのではなく、評価の目的、対象、基準日、株主属性、資料の信頼性、手続の公正性を順に固めることが、後の説明可能性につながります。

Section 01

自社株評価が必要になる場面

相続、株式売買、少数株主対応、M&A、インセンティブ、訴訟で評価目的が変わります。

自社株評価は、相続税贈与税だけでなく、親族間売買、譲渡制限株式の価格決定、少数株主からの買取り、M&A、MBO、従業員持株会、ストックオプション、離婚や相続人間紛争でも必要になります。どの場面でも、価格の合理性だけでなく、契約、決議、説明資料、税務処理、紛争予防が重要です。

次の比較一覧は、自社株評価が使われる代表的な場面と、そこで重視される論点を表しています。なぜ重要かというと、同じ非上場株式でも、税務申告用の価格、売買交渉用の価格、裁判所が見る価格、買主が支払える価格は一致しないためです。場面ごとに、確認すべきリスクと関与すべき専門家が変わることを読み取ってください。

場面主な目的重点論点
相続・贈与・事業承継相続税・贈与税の課税価格、後継者への株式移転財産評価基本通達、納税資金、議決権集中、遺留分、種類株式、納税猶予制度を確認します。
親族間・同族間売買売買価格の合理性と税務上の時価確認低すぎる価格や高すぎる価格による贈与税、所得税、法人税、みなし配当、利益供与を確認します。
少数株主からの買取り株式分散の整理と紛争予防提示価格の説明、少数性や流動性の扱い、評価レンジ、情報開示、和解条件を検討します。
譲渡制限株式承認しない場合の会社または指定買取人による取得会社法手続、協議、裁判所への価格決定申立て、定款、過去取引事例を確認します。
M&A・組織再編株式譲渡価格、交換比率、買取請求への対応DCF法、類似会社比較法、修正純資産法、デューデリジェンス、価格調整条項を検討します。
MBO・完全子会社化利益相反を伴う取引価格と手続の公正性特別委員会、第三者算定、情報開示、少数株主保護、強圧性の排除を確認します。
役員・従業員インセンティブ持株会、譲渡制限株式、ストックオプションの価格設計取得価格、退職時買戻し価格、給与課税、贈与税、議決権、相続時の扱いを整理します。
訴訟・調停・相続人間紛争裁判所や相手方に説明できる評価資料の整備評価基準日、資料開示、算定人の独立性、反対説への応答、証拠保存が重要です。

親族間売買や少数株主対応では、当事者が合意していても税務上・会社法上の問題が残ることがあります。取締役会議事録、株主総会議事録、契約書、専門家意見書、算定資料を整備し、価格形成の合理性を説明できる状態にすることが大切です。

Section 02

自社株評価で最初に整理する基本概念

評価目的、評価基準日、評価単位、企業価値と株式価値、時価概念を区別します。

自社株評価では、評価目的、評価基準日、評価単位を最初に確定します。会社全体の株式価値を発行済株式数で割れば単純に一株当たり価値が出るように見えますが、支配株式、少数株式、議決権制限株式、配当優先株式、拒否権付株式、取得条項付株式、自己株式では価値の見方が変わります。

次の比較一覧は、自社株評価で混同しやすい基本概念を整理しています。なぜ重要かというと、概念の取り違えは、評価方法の誤用、二重控除、過大評価または過小評価につながるためです。各行から、どの概念がどの評価場面で問題になるかを読み取ってください。

概念意味実務上の注意点
評価目的何のために株価を出すかという目的です。税務申告、M&A、裁判、社内意思決定、会計処理では前提が異なります。
評価基準日いつの時点の価値を見るかという日です。相続開始日、贈与日、契約日、買取請求日、決算日など、目的ごとに設定します。
評価単位どの株式ブロックを評価するかという単位です。支配株式と少数株式、普通株式と種類株式、自己株式や潜在株式を区別します。
企業価値会社の事業全体と非事業資産を含む価値です。事業価値、非事業資産、有利子負債、余剰現預金、偶発債務を調整します。
株式価値企業価値から負債等を調整した後、株主に帰属する価値です。退職給付債務、訴訟リスク、設備投資不足、関連当事者取引も影響します。
時価・公正価値・公正な価格似た言葉ですが、税務、会計、会社法で意味が異なります。税務上の時価、会計上の公正価値、会社法上の公正な価格を混同しないことが重要です。

企業価値と株式価値の関係

次の比較一覧は、企業価値から株式価値へ至る基本構造を表しています。なぜ重要かというと、M&Aや評価書では、事業価値、非事業資産、有利子負債、余剰現預金の扱いが価格交渉の中心になるためです。式の各項目が加算か控除かを読み取ってください。

整理基本式補足
企業価値事業価値 + 非事業資産本業の価値に、遊休資産や投資資産などを加味します。
株式価値企業価値 - 有利子負債等 + 余剰現預金等株主に帰属する価値へ調整します。偶発債務や税効果も検討します。

支配プレミアムは、経営権を取得できる株式ブロックに上乗せされる価値です。少数株主持分ディスカウントや流動性ディスカウントは、経営に影響を及ぼしにくいことや売却しにくいことによる減価です。ただし、税務評価、会社法上の公正価格、M&A評価、会計評価では扱いが異なるため、機械的に適用すると二重控除や恣意的な低廉評価になるおそれがあります。

Section 03

税務上の自社株評価と取引相場のない株式

相続税・贈与税では、財産評価基本通達に基づく評価方式を中心に確認します。

相続税・贈与税で最も多く参照されるのが、国税庁の財産評価基本通達に基づく取引相場のない株式の評価です。多くの中小企業、同族会社、オーナー会社の株式は公開市場価格がないため、会社規模、株主の属性、資産構成、業種、配当、利益、純資産に応じた評価方式を用います。

次の判断の流れは、税務上の自社株評価で確認する大枠を表しています。なぜ重要かというと、取得者が同族株主かどうか、会社規模や特定評価会社への該当性によって評価方式が変わり、評価額も大きく変わるためです。上から順に、株主区分、会社規模、特定評価会社、採用方式を読み取ってください。

税務評価で確認する順番

取得者と株主区分を確認します

同族株主等に該当するか、会社支配に関係する株主かを整理します。

会社規模を判定します

従業員数、総資産価額、取引金額などから大会社・中会社・小会社を確認します。

特定の評価会社に該当するか確認します

株式等保有特定会社、土地保有特定会社、比準要素数1の会社、休業会社、清算中会社などを確認します。

支配に関係
原則的評価方式

類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式を検討します。

支配に関係しない
特例的評価方式

要件を満たす場合、配当還元方式を検討します。

次の比較一覧は、税務上の主な評価方式と実務上の注意点を整理しています。なぜ重要かというと、評価方式ごとの発想と限界を理解していないと、税務上の評価額をM&A価格や会社法上の価格にそのまま転用してしまうためです。各方式が何を重視し、どこに注意すべきかを読み取ってください。

方式考え方注意点
類似業種比準方式類似する上場会社群の株価を基礎に、配当、利益、純資産を比準します。業種選定、非経常損益、役員報酬、関連当事者取引、赤字決算の扱いが論点になります。
純資産価額方式資産と負債を相続税評価額ベースなどで評価し、純資産を基礎にします。土地、有価証券、保険積立金、含み益、法人税等相当額、将来収益力の反映不足に注意します。
併用方式類似業種比準価額と純資産価額を会社規模に応じて組み合わせます。収益力と含み資産の差が大きい会社では、評価額がどちらに寄るかが重要です。
配当還元方式会社支配に関係しない一定の株主について、配当期待を資本還元します。少数株主だから当然に使えるわけではなく、適用要件を厳格に確認します。
特定の評価会社通常方式では適切な評価が難しい会社を別扱いします。株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後間もない会社、休業会社、清算中会社などを確認します。

2026年時点では、純資産価額方式で用いられる法人税等相当額の控除割合について、一定の取得時期以後に従来の37%から38%へ変更される動向があります。相続・贈与・事業承継では計画期間が長くなりやすいため、評価基準日、取得日、最新通達、有識者会議資料、会計検査院の指摘を確認することが重要です。

税務評価は課税の公平と画一性を重視する制度です。そのため、主要顧客との契約終了リスク、創業者依存、後継者不在、知的財産、ブランド、訴訟リスク、環境債務、役員報酬の過大・過小、関連当事者取引、買主固有のシナジーなどを十分に反映しないことがあります。

Section 04

会社法・企業法務における自社株評価

税務評価とは別に、少数株主保護、公正な価格、取締役責任、手続設計を確認します。

会社法上の自社株評価では、税務上の財産評価基本通達とは異なる観点が問題になります。譲渡制限株式の売買価格決定、反対株主の株式買取請求、全部取得条項付種類株式、株式併合、スクイーズアウト、MBOでは、公正な価格、少数株主保護、手続の公正性、情報開示、利益相反管理が中心になります。

次の比較一覧は、会社法・企業法務で自社株評価が問題になる局面と、手続上の確認事項を表しています。なぜ重要かというと、価格の合理性だけでなく、誰がどの情報を持ち、どの手続で意思決定したかが後の紛争で問われるためです。各局面で、評価と手続が一体で確認されることを読み取ってください。

局面価格に関する視点手続に関する視点
譲渡制限株式の価格決定資産状態、収益力、配当、将来性、過去取引、株式の支配性を考慮します。承認請求、会社または指定買取人、協議、裁判所への申立期間を確認します。
反対株主の株式買取請求組織再編がなかった場合の価値や企業価値増加分の分配を確認します。情報開示、反対手続、請求期間、少数株主への説明を確認します。
MBO・支配株主取引取引価格だけでなく、一般株主が判断できる条件かを確認します。特別委員会、独立専門家、少数株主への開示、利益相反管理が重要です。
自己株式取得・関連当事者取引高すぎる価格や低すぎる価格による会社損害、利益移転を確認します。財源規制、株主平等、利益相反、取締役会・株主総会の要否を確認します。
企業内法務の管理評価書の目的、前提、算定レンジ、感応度を把握します。定款、株主名簿、議事録、契約書、専門家選任、証拠保存を整えます。

次の注意点の一覧は、自社株評価を巡る会社法上のリスクを整理しています。なぜ重要かというと、評価額が一定の合理性を持っていても、手続が不公正に見えると、取締役責任や少数株主との紛争につながる可能性があるためです。価格、手続、証拠の3面を合わせて読むことが大切です。

税務評価だけに依存するリスク

税務評価額は参考資料になっても、会社法上の公正な価格を自動的に決めるものではありません。

利益相反のリスク

支配株主、役員、親族、関連会社が関係する場合、特別利害関係人や取締役の忠実義務を確認します。

説明不足のリスク

少数株主が十分な情報を得られないまま価格を提示されると、不信感が高まりやすくなります。

議事録不足のリスク

評価書を受け取るだけでなく、前提、代替案、専門家の独立性を検討した過程を残す必要があります。

商事法務担当や企業内弁護士は、算定そのものを担わない場合でも、定款、株主名簿、過去の株式移動、株券発行の有無、株主総会・取締役会決議、利益相反取引、反対株主への通知、契約書の価格調整や補償条項を確認する中核的な役割を担います。

Section 05

M&A・組織再編における自社株評価

理論株価だけでなく、交渉、デューデリジェンス、価格調整、公正手続を組み合わせます。

M&Aにおける自社株評価は、企業価値、シナジー、競争環境、交渉力、資金調達、買主の戦略、売主の売却意欲、独占交渉の有無、デューデリジェンス結果、表明保証保険、価格調整条項によって変わります。評価額を一点で示すよりも、複数手法による評価レンジを示すことが多くなります。

次の比較一覧は、売主側と買主側が自社株評価で見る観点の違いを表しています。なぜ重要かというと、同じ会社でも売主は税引後手取りや補償リスクを重視し、買主は将来キャッシュフローや統合コストを重視するためです。左右の違いから、交渉で確認すべき論点を読み取ってください。

立場重視する事項評価への影響
売主側売却希望価格、税引後手取り、退職金、役員借入金、個人保証解除、従業員雇用、補償責任高い価格だけでなく、クロージング確実性、引継ぎ義務、信用、税務負担を含めて判断します。
買主側正常収益力、主要顧客依存、許認可、労務・税務・訴訟リスク、知財、運転資本、PMI費用単独価値に加え、買主が実現できるシナジーやリスク調整を検討します。
第三者算定機関DCF法、類似会社比較法、類似取引比較法、修正純資産法、前提条件、算定レンジ株式価値算定書は重要資料ですが、依頼範囲や独立性、取締役会での検討も問われます。
利益相反取引MBO、支配株主取引、完全子会社化、スクイーズアウト特別委員会、独立専門家、十分な情報開示、対抗提案機会、強圧性の排除が重要です。

次の判断の流れは、M&Aで自社株評価を価格交渉へつなげる順番を表しています。なぜ重要かというと、算定レンジだけを作っても、デューデリジェンスや契約条件に反映しなければ実際の取引価格を説明しにくいためです。順番から、評価、調査、契約、手続が連動することを読み取ってください。

M&A評価から取引条件へつなげる順番

複数手法で評価レンジを作ります

DCF法、類似会社比較法、類似取引比較法、修正純資産法を会社の性質に合わせて使います。

デューデリジェンスで前提を検証します

正常収益力、偶発債務、契約承継、労務、税務、知財、運転資本を確認します。

価格調整と補償条項へ反映します

発見されたリスクを、価格調整、表明保証、補償、エスクロー、保険で処理します。

手続の公正性を記録します

利益相反がある取引では、特別委員会や独立専門家の関与、少数株主への説明を残します。

フェアネス・オピニオンは、取引条件が財務的見地から公正かについての意見書です。非上場M&Aで常に必要とは限りませんが、上場会社、MBO、支配株主取引、利益相反性の高い取引では重要になります。取得しても取締役の責任が当然に免除されるわけではなく、前提資料、専門家の独立性、取締役会の検討状況が問われます。

Section 06

自社株評価の会計・ファイナンス手法

インカム、マーケット、ネットアセットの3つの基本アプローチから評価手法を選びます。

企業価値評価では、将来利益やキャッシュフローを見るインカム・アプローチ、市場データを見るマーケット・アプローチ、資産と負債を見るネットアセット・アプローチが使われます。実務では一つの手法だけで結論を出すのではなく、会社の状況、資料の信頼性、評価目的に応じて複数手法を併用します。

次の比較一覧は、自社株評価で使われる主な手法を整理しています。なぜ重要かというと、手法ごとに反映しやすい価値と見落としやすい価値が異なり、目的に合わない手法を選ぶと説明力が落ちるためです。各手法の得意な場面と限界を読み取ってください。

手法特徴主な注意点
DCF法将来のフリー・キャッシュ・フローを現在価値へ割り引きます。事業計画、WACC、永久成長率、設備投資、運転資本の前提に大きく左右されます。
収益還元法平均的な利益を資本還元率で還元します。非経常損益、役員報酬、関連当事者取引、景気変動を調整します。
配当還元法株主が受け取る配当を基礎に価値を算定します。実際配当だけを見ると、利益があっても配当しない会社を過小評価する可能性があります。
類似会社比較法上場類似会社のEV/EBITDA、PER、PBR、売上高倍率を参照します。規模、地域性、成長性、流動性、事業リスクの違いを調整します。
類似取引比較法過去のM&A取引倍率を参照します。支配プレミアム、シナジー、競争入札、アーンアウトなどの特殊事情に注意します。
修正純資産法資産・負債を時価に修正し、純資産を基礎にします。不動産、有価証券、回収不能債権、退職給付、未払残業代、税効果を確認します。
清算価値法会社を清算した場合に株主へ残る価値を見ます。処分費用、税金、退職金、解雇関連費用、原状回復費用を控除します。
直近取引価格法第三者割当増資、ベンチャー投資、役員間売買、M&A提案価格を参照します。独立当事者間取引か、十分な情報に基づく交渉か、特殊事情がないかを確認します。

次の重要ポイントは、DCF法で感応度分析が不可欠になる理由を表しています。なぜ重要かというと、割引率や永久成長率のわずかな違いが評価額を大きく動かすためです。0.5%や1%の前提差が、株式価値レンジの幅として現れることを読み取ってください。

DCF法では前提の小さな差が評価額を動かします

割引率を0.5%変えた場合、成長率を0.5%変えた場合、営業利益率を1%変えた場合に株式価値がどの程度変わるかを示すことで、評価レンジと重点検証ポイントが明確になります。

スタートアップでは、直近資金調達価格、優先株式条件、TAM、ARR、MRR、チャーン率、CAC、LTV、開発状況、知財、チーム、競合、資本政策が重要です。優先株式の価格を普通株式にそのまま適用することはできず、清算優先権、転換権、希薄化防止条項、拒否権などを確認します。

Section 07

評価目的別に選ぶ自社株評価の方法

相続税、親族間売買、自己株式取得、M&A、株主間紛争、会計で使い分けます。

自社株評価では、目的に合った方法を選ぶことが重要です。相続税・贈与税では財産評価基本通達が中心ですが、親族間売買では税務上の時価と民事上の合意価格をあわせて確認します。会社による自己株式取得では財源規制、株主平等、みなし配当、取締役責任も問題になります。

次の比較一覧は、評価目的ごとに中心となる方法と補助的に見る論点を表しています。なぜ重要かというと、目的と方法が合っていない評価書は、交渉、税務調査、裁判、監査で説明しにくくなるためです。各目的に応じて、主軸にする評価と周辺確認が違うことを読み取ってください。

目的中心となる考え方補助的に確認する論点
相続税・贈与税申告財産評価基本通達に基づく取引相場のない株式評価を中心にします。会社規模、株主区分、特定評価会社、類似業種、配当、利益、純資産を確認します。
親族間売買税務上の時価と民事上の合意価格を総合的に見ます。低廉譲渡、高額譲渡、贈与税、所得税、法人税、会社法手続を確認します。
自己株式取得価格の合理性と会社法上の手続をあわせて確認します。財源規制、株主平等、みなし配当、支払資金、少数株主説明を整備します。
M&ADCF法、類似会社比較法、類似取引比較法、修正純資産法を組み合わせます。デューデリジェンス、シナジー、価格調整、表明保証、補償条項を反映します。
株主間紛争複数手法と資料開示、算定人の独立性を重視します。株主間契約、定款、配当政策、交渉経緯、相手方の主張を予測します。
会計・監査会計基準に基づく公正価値、減損、企業結合、株式報酬を確認します。評価モデル、見積り、感応度、外部専門家の利用が監査上の焦点になります。

株主間契約や定款で、退職時、死亡時、譲渡希望時の評価方法をあらかじめ定めることは紛争予防に役立ちます。ただし、税務上の時価、会社法上の手続、民法上の効力、相続人への拘束力が常に問題なく整理できるとは限らないため、定期的な見直しが必要です。

Section 08

自社株評価の実務プロセスと必要資料

目的確定から資料収集、調査、試算、専門家レビュー、意思決定、証拠化まで進めます。

自社株評価の実務は、目的の確定、評価対象の特定、評価基準日の設定、資料収集、財務・税務・法務デューデリジェンス、評価方法の選定、試算と感応度分析、専門家レビュー、意思決定と証拠化の順で進めます。計算より前の準備が、評価書の信頼性を大きく左右します。

次の時系列は、自社株評価を進める9つの段階を表しています。なぜ重要かというと、後の紛争では最終的な数字だけでなく、その時点で合理的な情報に基づき、合理的な過程で判断したかが問われるためです。順番から、評価作業が資料整理と意思決定の記録まで含むことを読み取ってください。

Step 01

評価目的を文書化します

相続税申告、贈与検討、少数株主買取り、M&A、取締役会資料など、何のための評価かを明確にします。

Step 02

評価対象を特定します

普通株式、種類株式、新株予約権、少数株式、自己株式取得対象などを株式数と議決権割合まで確認します。

Step 03

評価基準日を設定します

相続開始日、贈与日、契約日、買取請求日、決算日など、目的に合う日を明記します。

Step 04

資料を集めます

過去3年から5年の決算書、税務申告書、株主名簿、定款、事業計画、重要契約、不動産資料などを整えます。

Step 05

財務・税務・法務を確認します

正常収益力、非経常損益、含み損益、偶発債務、株式の有効性、許認可、契約、労務、知財を確認します。

Step 06

評価方法を選定します

税務申告、M&A、資産保有会社、紛争対応など、目的と資料状況に合う方法を選び、採用理由を残します。

Step 07

試算と感応度分析を行います

評価レンジを示し、割引率、成長率、営業利益率、不動産評価、偶発債務などの影響を確認します。

Step 08

専門家レビューを受けます

弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、不動産鑑定士、M&Aアドバイザーが目的との整合性を確認します。

Step 09

意思決定と証拠化を行います

議事録、契約書、稟議、計算ファイル、専門家とのやり取り、税務申告資料を整理して保存します。

次の比較一覧は、自社株評価で集める資料を分野別に整理しています。なぜ重要かというと、決算書だけでは、法務リスク、税務リスク、不動産の含み損益、労務債務、知財の帰属を把握しきれないためです。どの資料がどの評価リスクに関係するかを読み取ってください。

資料分野主な資料評価で見る点
基本資料定款、登記事項証明書、株主名簿、株式取扱規程、種類株式資料、株主間契約、議事録株式の権利内容、発行の有効性、議決権、譲渡制限、過去の株式移動を確認します。
財務資料決算書、月次試算表、キャッシュフロー、事業計画、借入金明細、固定資産台帳正常収益力、季節性、主要顧客依存、役員報酬、設備投資、運転資本を確認します。
税務資料法人税申告書、別表、勘定科目内訳書、消費税申告書、税務調査履歴、繰越欠損金同族株主判定、会社規模、特定評価会社、役員給与、関連当事者取引を確認します。
法務資料重要契約、許認可、訴訟資料、労務資料、知財資料、個人情報管理資料契約承継、チェンジ・オブ・コントロール、訴訟、未払残業代、権利帰属を確認します。
不動産・資産資料固定資産税評価額、路線価、鑑定評価、賃貸借契約、担保、土壌汚染、修繕履歴含み益、含み損、賃料水準、空室率、修繕費、環境債務を確認します。
知財・IT・データ資料特許、商標、著作権、ライセンス契約、営業秘密、個人情報、サイバーセキュリティ権利帰属、残存期間、侵害リスク、オープンソース、データ利用権を確認します。
Section 09

自社株評価で争いになりやすい論点

目的混同、基準日、事業計画、関連当事者取引、含み損益、偶発債務、証拠不足に注意します。

自社株評価で最も多い紛争原因は、評価目的の混同です。相続税評価額をM&A価格として主張したり、M&Aで提示された高い価格を少数株式の税務評価にそのまま持ち込んだりすると、議論が混乱します。評価書の冒頭では、目的と基準日を明確にすることが大切です。

次の注意点の一覧は、自社株評価で争われやすい論点を整理しています。なぜ重要かというと、評価額の争いは計算式だけでなく、前提資料、調整項目、情報開示、証拠保存の不足から生じるためです。各項目から、事前に検証すべきリスクを読み取ってください。

評価基準日の争い

重要契約、大型損失、資金調達、訴訟発生の前後では価値が変わるため、基準日後の情報をどこまで使うかを説明します。

事業計画の楽観性

DCF法では、売上成長率、利益率、人員計画、設備能力、業界統計との整合性を検証します。

役員報酬とオーナー経費

過大または過小な役員報酬、個人的経費、正常収益力への調整理由を明確にします。

関連当事者取引

親族、関連会社、オーナーとの賃料、貸付、保証、業務委託料、商標使用料を独立第三者間価格で見直します。

含み資産・含み損

長年保有する土地、有価証券、投資不動産、保険積立金、老朽設備の時価差を確認します。

偶発債務・簿外債務

訴訟、税務調査、製品保証、環境問題、未払残業代、退職給付、保証債務を確認します。

流動性・少数性の扱い

流動性や少数性の減価は、目的ごとの扱いと二重控除の有無を慎重に確認します。

証拠不足

評価書だけでなく、基礎資料、計算ファイル、議事録、専門家とのやり取りを残します。

事業承継、少数株主、種類株式での追加論点

次の比較一覧は、事業承継、少数株主対策、種類株式、資産保有会社、スタートアップ、倒産・再生局面で自社株評価に追加される論点を表しています。なぜ重要かというと、会社の状態や株式の権利内容が通常の評価方法だけでは反映しきれない場合があるためです。各局面で何を追加確認すべきかを読み取ってください。

局面追加で確認する論点実務上の方向性
事業承継議決権集中、納税資金、遺留分、種類株式、役員退職金、持株会社、法人版事業承継税制税負担だけでなく、事業継続、資金繰り、相続人間の公平を一体で検討します。
少数株主対策株式分散、配当政策、情報開示、買取価格、秘密保持、和解条件第三者評価、評価レンジ、交渉経緯、清算条項を整えて紛争予防につなげます。
種類株式・属人的定め配当優先、残余財産分配、議決権、取得条項、拒否権、株主ごとの権利差普通株式と同じ価値にせず、権利内容と税務上の評価を確認します。
不動産・有価証券・知財保有会社土地保有特定会社、株式等保有特定会社、鑑定評価、関係会社株式、権利帰属資産評価の精度が株式価値を左右するため、専門家評価を検討します。
スタートアップ・赤字会社優先株式、清算優先権、直近資金調達、繰越欠損金、将来黒字化可能性過去利益や純資産だけでなく、成長シナリオと権利内容を確認します。
倒産・再生・清算局面継続企業価値、清算価値、スポンサー支援、債務免除、債権者回収額資産売却費用、解雇関連費用、税金、専門家費用を控除して現実的に見ます。

法人版事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場会社株式について、贈与税・相続税の納税猶予等を受けられる制度です。ただし、単なる免税ではなく、認定、申告、継続届出、株式保有、経営継続などの要件を満たし続ける必要があります。

Section 10

自社株評価で関与する専門家の役割

税務、会社法、会計、不動産、労務、知財、内部統制を分担して確認します。

自社株評価は一人の専門家だけで完結しないことが多い実務です。税務評価に強い専門家、企業価値評価に強い専門家、会社法・契約・紛争に強い専門家、登記や不動産、労務、知財に強い専門家が、評価目的に応じて役割分担します。

次の一覧は、自社株評価に関与する専門家と役割を表しています。なぜ重要かというと、評価額の妥当性は計算だけでなく、法的手続、税務申告、会計処理、権利関係、資料の信頼性によって左右されるためです。どの専門家がどの論点を補うかを読み取ってください。

01

弁護士

会社法、民法、相続法、金融商品取引法、M&A契約、株主間契約、訴訟・非訟手続、利益相反、取締役責任を整理します。

法務紛争
02

企業内弁護士・法務担当

社内事情、資料収集、秘密保持、取締役会運営、株主対応、契約管理を統括し、外部専門家と経営陣をつなぎます。

社内管理
03

税理士

財産評価基本通達、同族株主判定、会社規模判定、事業承継税制、親族間売買の税務リスクを担当します。

税務
04

公認会計士・FA

企業価値評価、財務デューデリジェンス、株式価値算定書、フェアネス・オピニオン、感応度分析を担当します。

会計M&A
05

司法書士

商業登記、株式発行、増資、種類株式、役員変更、組織再編登記、議事録と登記の整合性を確認します。

登記
06

不動産鑑定士

土地・建物の時価、収益価格、借地権、借家権、底地、土壌汚染、再開発可能性を評価します。

不動産
07

社会保険労務士

未払残業代、就業規則、退職金、社会保険、労働時間管理、労務リスクを確認します。

労務
08

弁理士・知財専門家

特許、商標、著作権、ライセンス契約、職務発明、共同研究、営業秘密を確認します。

知財
09

内部監査・経営者

内部統制、関連当事者取引、決裁権限、証跡管理を確認し、最終的な意思決定と説明責任を担います。

統制意思決定

専門家の評価書を受け取るだけでは十分ではありません。経営者や取締役は、前提条件、資料の信頼性、算定レンジ、代替案、利害関係、将来の検証可能性を理解したうえで、会社にとって合理的な判断を行う必要があります。

Section 11

自社株評価の実務チェックリスト

初期確認、税務評価、M&A評価、会社法・ガバナンス、紛争予防を点検します。

自社株評価では、目的、基準日、対象株式、株式数、株主名簿、定款、株主間契約、過去の株式移動、同族株主判定、会社規模判定、税務・法務・会計のどの評価が必要かを初期段階で確認します。

次の比較一覧は、実務で点検する主な項目を分野別に整理したものです。なぜ重要かというと、評価額の正確さだけでなく、申告、契約、決議、説明、証拠保存の抜け漏れが後の問題につながるためです。各分野で最低限何を確認するかを読み取ってください。

分野主な確認項目
初期確認目的、基準日、評価対象、普通株式・種類株式、発行済株式数、自己株式数、株主名簿、定款、譲渡制限、株主間契約、過去の株式移動を確認します。
税務評価最新版の財産評価基本通達、株主区分、大会社・中会社・小会社、類似業種、配当、利益、純資産、土地保有特定会社、株式等保有特定会社、法人税等相当額の控除割合を確認します。
M&A評価事業計画、正常収益力、役員報酬、関連当事者取引、DCF法の割引率・成長率、類似会社、含み損益、有利子負債、運転資本、偶発債務、シナジー、価格調整条項を確認します。
会社法・ガバナンス取締役会決議、株主総会決議、特別利害関係人、利益相反、財源規制、株主平等、第三者評価書、特別委員会、反対株主の権利、登記手続を確認します。
紛争予防目的の文書化、方法選択の理由、採用しなかった方法の理由、基礎資料、計算ファイル、専門家とのやり取り、開示情報、秘密保持契約、交渉経緯、清算条項を保存します。

チェックリストは、機械的に埋めれば足りるものではありません。評価目的に照らして重要性が高い項目を深掘りし、不要な項目は理由を残したうえで簡略化するなど、説明可能な運用にすることが大切です。

Section 12

自社株評価のよくある質問

一般的な制度説明として、評価の進め方と注意点を整理します。

Q1. 自社株評価は税理士に頼めば足りますか。

一般的には、相続税・贈与税の評価では税理士が中心になることが多いとされています。ただし、株式売買、自己株式取得、譲渡制限株式、株主間紛争、M&A、種類株式、取締役責任が関係する場合は、会社法手続や契約実務も問題になります。具体的な役割分担は、目的と資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 税務上の自社株評価額で売買すれば安全ですか。

一般的には、税務評価額は相続税・贈与税等の課税目的で使われる評価であり、売買価格、M&A価格、会社法上の公正価格と同じとは限らないとされています。親族間売買や自己株式取得では、所得税、法人税、みなし配当、会社法手続なども関係します。具体的な価格設定は、取引目的と当事者関係を踏まえて弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 非上場会社の株式は売れないので価値は低いのですか。

一般的には、非上場株式は流動性が低いため、その点が価値に影響する可能性があります。ただし、会社に高い収益力、豊富な純資産、買主とのシナジーがある場合は、高い価値が認められることもあります。少数株式か支配株式か、評価目的は何かによって判断が変わります。

Q4. 赤字会社の株式価値はゼロですか。

一般的には、赤字会社でも、知財、許認可、顧客基盤、不動産、将来黒字化可能性、繰越欠損金などに価値がある場合があります。一方、債務超過で再建可能性が乏しい場合は、株式価値が低くなる可能性があります。赤字という一事だけでは判断できず、具体的には資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q5. 自社株評価は毎年行うべきですか。

一般的には、相続・事業承継対策、株式移動、M&A検討、株主構成の課題がある会社では、定期的な自社株評価が有用とされています。特に、業績変動、不動産価格変動、制度改正、株主移動がある場合は見直しが必要になる可能性があります。頻度は会社の状況により変わります。

Q6. 評価額を下げる対策はできますか。

一般的には、役員退職金、配当政策、持株会社、組織再編、種類株式、従業員持株会などにより評価額が変わることがあります。ただし、評価額を下げることだけを目的とした不自然な取引は、税務上・会社法上問題となる可能性があります。事業継続、資金繰り、ガバナンス、相続人間の公平を含めて専門家へ相談する必要があります。

Q7. 少数株主から株式を買い取るとき、配当還元方式でよいですか。

一般的には、税務上の一定の場面で配当還元方式が用いられることがあります。ただし、会社法上の買取価格や交渉価格として当然に配当還元方式だけで足りるとは限りません。少数株主との紛争を避けるには、複数手法による評価、説明資料、専門家意見、交渉経緯の記録が重要です。

Q8. 評価書があれば裁判や税務調査で必ず認められますか。

一般的には、評価書は重要な証拠になりますが、前提資料が不十分、方法選択が不合理、専門家の独立性に問題がある、評価目的と方法が合っていない場合は、認められない可能性があります。評価書だけでなく、基礎資料、計算過程、議事録、専門家とのやり取りを整えることが重要です。

Q9. 自社株評価で最も重要な資料は何ですか。

一般的には、目的によって重要資料は変わりますが、決算書、税務申告書、株主名簿、定款、事業計画、勘定科目内訳書、重要契約、不動産資料、関連当事者取引資料は特に重要とされています。M&Aや紛争では、デューデリジェンス資料と議事録も重要になります。

Q10. 自社株評価を専門家に依頼するとき、最初に何を伝えるべきですか。

一般的には、評価目的、評価基準日、評価対象株式、予定している取引、関係者、紛争の有無、税務申告の有無、希望スケジュールを伝えることが重要とされています。単に株価を出してほしいと依頼するより、何のための株価かを明確にすることで、適切な評価方法を選びやすくなります。

Section 13

自社株評価で失敗しないための結論

数字の精密さだけでなく、目的への適合性、資料の信頼性、手続の公正性を確認します。

自社株評価は、非上場会社の経営、承継、紛争、M&A、税務、会計をつなぐ中核的実務です。一般には株価を計算する作業と見られがちですが、実際には、評価目的の確定、法的枠組みの整理、税務上の判定、財務分析、事業計画の検証、株主関係の調整、手続の公正性確保、証拠化まで含む総合的な検討になります。

次の重要ポイントは、自社株評価で最後に確認する5つの原則を表しています。なぜ重要かというと、評価書の品質は最終金額だけではなく、目的、前提、資料、手続、説明可能性の組み合わせで評価されるためです。各項目を、実務で確認すべき最終点検として読み取ってください。

Principle 01

評価目的を混同しません

税務評価、M&A評価、会社法上の公正価格、会計評価は、それぞれ目的と前提が異なります。

Principle 02

基準日と対象を明確にします

評価基準日、評価対象株式、株主属性、支配権の有無を曖昧にしないことが重要です。

Principle 03

複数手法を理解します

類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式、DCF法、類似会社比較法、修正純資産法には長所と限界があります。

Principle 04

手続の公正性を確保します

少数株主、親族、役員、支配株主、MBO、自己株式取得が関係する場合は、利益相反管理と説明可能性が重要です。

Principle 05

専門家を組み合わせます

税務、会計、法務、登記、不動産、労務、知財の役割を適切に組み合わせ、目的に合う評価体制を作ります。

最終的に、自社株評価の品質は、数字の精密さだけではなく、目的への適合性、前提の合理性、資料の信頼性、手続の公正性、説明可能性によって決まります。経営者、株主、法務担当者、専門家は、自社株評価を節税や交渉材料だけでなく、会社の支配、承継、成長、紛争予防を支える基盤として位置づけることが大切です。

Guide

自社株評価で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を7件表示しています。

Reference

自社株評価の参考資料

公的機関と専門機関の資料名を中心に整理しています。

税務評価に関する公的資料

  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「財産評価基本通達 178 取引相場のない株式の評価上の区分」
  • 国税庁「財産評価基本通達 189 特定の評価会社の株式」
  • 国税庁「財産評価基本通達 180 類似業種比準価額」
  • 国税庁「令和7年分の基準年利率について」の一部改正に関する資料
  • 国税庁「非上場株式の評価に関する有識者会議」資料

会計・M&A・事業承継に関する資料

  • 会計検査院「租税特別措置等に係る政策評価等の点検の状況について」関連資料
  • 日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」
  • 経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」
  • 最高裁判所判例「株式買取価格決定、組織再編、公開買付け後のスクイーズアウト等に関する判断」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制」
  • 国税庁「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除」