2σ Guide

取締役会付議基準・報告基準の
作り方

取締役会が決める事項、経営陣へ委任する事項、監督のために報告を受ける事項を、会社法とガバナンス実務に沿って整理します。

3か月 職務執行報告
10手順 実務設計
年1回 基準見直し
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取締役会付議基準・報告基準の 作り方

取締役会が決める事項、経営陣へ委任する事項、監督のために報告を受ける事項を、会社法とガバナンス実務に沿って整理します。

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取締役会付議基準・報告基準の 作り方
取締役会が決める事項、経営陣へ委任する事項、監督のために報告を受ける事項を、会社法とガバナンス実務に沿って整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 取締役会付議基準・報告基準の 作り方
  • 取締役会が決める事項、経営陣へ委任する事項、監督のために報告を受ける事項を、会社法とガバナンス実務に沿って整理します。

POINT 1

  • 取締役会付議基準・報告基準の作り方の全体像
  • 取締役会に残す事項、経営陣に任せる事項、監督のために報告させる事項を整理します。
  • 決議・審議する事項
  • 報告を受ける事項
  • 事前相談する事項

POINT 2

  • 取締役会付議基準・報告基準の基本用語
  • 決議事項、審議事項、報告事項、事前相談事項を分けると運用しやすくなります。
  • 取締役会付議基準とは、どの事項を取締役会に上程し、決議・審議・承認を受けるべきかを定める基準です。
  • ここでいう付議は、狭い意味の決議事項だけでなく、審議事項や事前相談事項まで含めて設計すると実務に合います。
  • 区分ごとに求められる判断の深さが違うため、議題名だけでなく「何を求めるのか」を明確にすることが重要です。

POINT 3

  • 取締役会付議基準・報告基準を支える法令とガバナンス
  • 会社法、内部統制、コーポレートガバナンス・コードを基準作りへ接続します。
  • 会社法上の権限
  • 内部統制との接続
  • 委任範囲の明確化

POINT 4

  • 取締役会付議基準・報告基準の設計思想
  • 1. 構想段階の審議:案件の目的、選択肢、リスク、代替案を議論する。
  • 2. 条件確定前の審議:交渉方針、上限条件、重要論点を確認する。
  • 3. 実行決定の決議:契約締結、投資実行、資金調達等を承認する。
  • 4. 実行後の報告:進捗、KPI、リスク、統合状況、効果検証を報告する。

POINT 5

  • 取締役会付議基準・報告基準の作り方を10手順で進める
  • 1. 会社の前提条件を確認する:上場・非上場、機関設計、大会社該当性、業種、グループ構造、財務規模、主要リスク、株主構成、既存規程を確認します。
  • 2. 法定事項・定款事項・既存規程を棚卸しする
  • 3. 過去1年から3年の議案を分析する:重要案件が適切に上がったか、軽微な案件が多すぎないか、金額基準の境界で判断が割れた案件がないかを確認します。
  • 4. 取締役会に残す事項と委任する事項を分ける:取締役会、経営会議・執行役員会、代表取締役・担当役員・部門長の三層で役割を整理します。
  • 5. 金額基準・質的基準・報告基準を設計する
  • 6. 子会社基準、緊急時処理、資料・議事録・追跡を設計する:親会社承認・協議・報告、緊急時の事前連絡と事後報告、議案資料、議事録、決議後の進捗報告を定めます。

POINT 6

  • 取締役会決議事項・報告基準の標準例
  • 別紙化しやすい標準例を、法定事項、戦略、財務、投資、リスク、報告に分けて整理します。
  • 標準例は、自社の定款、機関設計、上場規則、決裁権限規程、業法を踏まえて調整する必要があります。
  • ここでは、取締役会で決議・審議・報告されやすい事項を、実務で別紙化しやすい粒度にまとめます。
  • 分類の列は案件の性質、中央の列は取締役会で扱う対象、補足の列は関係部門や確認論点を読むためのものです。

POINT 7

  • 取締役会付議基準・報告基準の条項例
  • 目的、定義、基本原則、決議・審議・報告、緊急時、見直しまで条文化します。
  • 規程条項は、抽象的な理念だけでなく、所管部門が運用できる粒度で書く必要があります。
  • ここでは、実務で利用しやすい条項の骨子を示します。
  • 実際に使用する際は、自社の定款、機関設計、既存規程に合わせて修正します。

POINT 8

  • 取締役会付議基準・報告基準の運用点検
  • 法務・弁護士
  • 法定決議事項、利益相反・競業取引、善管注意義務、緊急時対応、重要契約、M&A、訴訟、不祥事、子会社管理を確認します。
  • 商事法務・事務局

まとめ

  • 取締役会付議基準・報告基準の 作り方
  • 取締役会付議基準・報告基準の作り方の全体像:取締役会に残す事項、経営陣に任せる事項、監督のために報告させる事項を整理します。
  • 取締役会付議基準・報告基準の基本用語:決議事項、審議事項、報告事項、事前相談事項を分けると運用しやすくなります。
  • 取締役会付議基準・報告基準を支える法令とガバナンス:会社法、内部統制、コーポレートガバナンス・コードを基準作りへ接続します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

取締役会付議基準・報告基準の作り方の全体像

取締役会に残す事項、経営陣に任せる事項、監督のために報告させる事項を整理します。

取締役会付議基準・報告基準の作り方は、単なる社内規程の整備ではありません。取締役会が何を決定し、何を監督し、どこまで経営陣へ委任するかを定める、会社の意思決定システムの設計です。

上程すべき事項が曖昧なままだと、本来は取締役会で扱うべき重要案件が社長決裁や稟議だけで処理される一方、軽微な案件まで取締役会に集中することがあります。前者は法令違反、監督不全、内部統制不備につながり、後者は取締役会を形式的な承認機関にしてしまいます。

重要会社法上、取締役会は業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を担います。重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、重要な組織の設置・変更・廃止、内部統制システム整備など、委任できない事項を実務に落とし込むことが出発点です。

以下の要点一覧は、基準作りで最初に押さえる三つの役割を示しています。取締役会の議論を絞り込みつつ監督情報を逃さないために重要で、どの欄が決定、どの欄が監督、どの欄が事前の警戒線になるかを読み取ると設計の骨格が見えます。

DECIDE

決議・審議する事項

法定事項、会社の基本方針、重要な資本配分、重大リスク、経営陣人事、利益相反など、取締役会に残すべき事項を明確にします。

MONITOR

報告を受ける事項

業績、リスク、内部監査、訴訟、コンプライアンス、子会社、決議後の進捗など、監督のために必要な情報を頻度と粒度で定めます。

ESCALATE

事前相談する事項

付議該当性が不明な案件、緊急案件、利益相反の疑いがある案件を早めに取締役会事務局、法務、監査役等へ上げる仕組みを置きます。

個別会社の機関設計、上場区分、業種規制、定款、既存規程、開示体制によって具体的な結論は変わります。実際の規程作成・改定では、資料を整理したうえで弁護士、公認会計士、税理士、司法書士その他の専門家へ確認する必要があります。

Section 01

取締役会付議基準・報告基準の基本用語

決議事項、審議事項、報告事項、事前相談事項を分けると運用しやすくなります。

取締役会付議基準とは、どの事項を取締役会に上程し、決議・審議・承認を受けるべきかを定める基準です。ここでいう付議は、狭い意味の決議事項だけでなく、審議事項や事前相談事項まで含めて設計すると実務に合います。

次の比較表は、取締役会に上がる案件を四つの区分に分けたものです。区分ごとに求められる判断の深さが違うため、議題名だけでなく「何を求めるのか」を明確にすることが重要です。例の列から、正式決定の前に方向性を議論する案件と、監督のために情報共有する案件の違いを読み取ってください。

区分意味典型例
決議事項取締役会の承認・決定がなければ実行できない事項重要な財産の取得、重要投資、代表取締役の選定、内部統制システム基本方針
審議事項正式決議の前に方向性、論点、条件を討議する事項M&A初期検討、新規事業構想、中期経営計画案、撤退方針
報告事項取締役会が監督のために情報を受ける事項業績進捗、リスク状況、内部監査結果、訴訟状況、コンプライアンス違反
事前相談事項正式上程前に議長、社外取締役、監査役、事務局等へ相談する事項付議該当性が不明な案件、緊急案件、利益相反の疑いがある案件

報告基準は、決議までは不要でも取締役会が監督責任を果たすために報告を受けるべき事項を定めます。報告のタイミングを分けておくと、定例情報と危機情報が混ざらず、取締役会が何をいつ見るべきかを判断しやすくなります。

次の表は、報告基準を定期、臨時、フォローアップの三つに整理したものです。頻度や発生時点に意味があるため、左から順に「通常監督」「早期把握」「決議後の追跡」と読み分けることが重要です。

種類内容
定期報告定例的に取締役会へ報告する事項四半期業績、経営計画進捗、内部監査、リスク管理、コンプライアンス
臨時報告発生時に速やかに報告する事項重大事故、情報漏えい、当局調査、重要訴訟、不祥事、業績急変
フォローアップ報告決議・報告済み案件の進捗と結果を追跡する事項M&A統合状況、大型投資のKPI、改善命令対応、再発防止策の進捗

決裁権限規程や稟議規程とは役割が異なります。取締役会付議基準・報告基準は、会社法、ガバナンス、監督、重要リスクの視点から取締役会の関与範囲を定めるものです。決裁権限規程は業務執行上の権限委譲、稟議規程は申請・承認・記録の手続、職務分掌規程は責任範囲、子会社管理規程はグループ管理を担います。

Section 03

取締役会付議基準・報告基準の設計思想

何でも承認する場にせず、委任しすぎも避ける均衡が重要です。

取締役会付議基準を作るときの典型的な誤りは、「重要そうなものは全部取締役会へ」と考えることです。細かな契約、少額支出、日常的な人事、定型的な業務案件に時間を使いすぎると、経営戦略、資本政策、事業ポートフォリオ、重要リスクの議論時間が減ります。

一方で、会社の経営方針を実質的に変える新規事業・撤退・M&A、財務状態に大きな影響を与える投資・借入・保証・資金調達、レピュテーションを大きく損なう不祥事・行政処分・情報漏えい、重要な子会社・海外拠点のリスク、経営陣・主要株主との利益相反取引が取締役会に上がらない設計は危険です。

次の比較表は、付議基準で併用すべき三つの判断軸を示しています。金額だけで機械的に線を引くと質的な重大リスクを落とすため、右列の例を見ながら、定量基準と定性基準を重ねて読むことが重要です。

判断軸意味拾うべき案件
金額基準投資額、取得価額、借入額、保証額、契約金額、損失見込額、売上影響額などで判定する大型設備投資、多額の借財、高額契約、保証、資金調達
質的基準金額では測れない重要性、不可逆性、リスク、開示影響、利益相反で判定する中核技術の独占ライセンス、重大な個人情報リスク、役員関連取引、規制リスク
例外的エスカレーション通常基準では軽微でも、社会的影響や緊急性が大きい場合に上げる報道可能性のある不祥事、当局調査、サイバー事故、重要子会社の危機

重要案件ほど、いきなり決議にかけず、段階的に議論する設計が有効です。次の判断の流れは、構想段階から実行後の追跡までを順番に示しています。順番には意味があり、早い段階ほど選択肢とリスクを広く議論し、後半ほど決定内容と検証に焦点を絞ります。

重要案件を段階的に扱う判断の流れ

構想段階の審議

案件の目的、選択肢、リスク、代替案を議論する。

条件確定前の審議

交渉方針、上限条件、重要論点を確認する。

実行決定の決議

契約締結、投資実行、資金調達等を承認する。

実行後の報告

進捗、KPI、リスク、統合状況、効果検証を報告する。

Section 04

取締役会付議基準・報告基準の作り方を10手順で進める

前提確認、棚卸し、金額基準、質的基準、子会社基準、緊急時対応まで順に整えます。

実務では、テンプレートをそのまま使うよりも、自社の前提条件と過去議案を確認してから基準化することが重要です。会社ごとに上場区分、機関設計、規模、業種、グループ構造、主要リスクが違うためです。

次の時系列は、付議基準・報告基準を作る作業順序を示しています。順番には意味があり、前半で現状と法定事項を固め、中盤で判断基準を作り、後半で運用・記録・見直しへつなげる構成になっています。

Step 1

会社の前提条件を確認する

上場・非上場、機関設計、大会社該当性、業種、グループ構造、財務規模、主要リスク、株主構成、既存規程を確認します。

Step 2

法定事項・定款事項・既存規程を棚卸しする

会社法、会社法施行規則、金融商品取引法、取引所規則、業法、定款、取締役会規程、決裁権限規程などから取締役会事項を抽出します。

Step 3

過去1年から3年の議案を分析する

重要案件が適切に上がったか、軽微な案件が多すぎないか、金額基準の境界で判断が割れた案件がないかを確認します。

Step 4

取締役会に残す事項と委任する事項を分ける

取締役会、経営会議・執行役員会、代表取締役・担当役員・部門長の三層で役割を整理します。

Step 5-7

金額基準・質的基準・報告基準を設計する

絶対額、相対額、予算対比、損失影響、キャッシュ影響に加え、戦略性、不可逆性、重大リスク、利益相反、開示影響を組み込みます。

Step 8-10

子会社基準、緊急時処理、資料・議事録・追跡を設計する

親会社承認・協議・報告、緊急時の事前連絡と事後報告、議案資料、議事録、決議後の進捗報告を定めます。

前提条件の確認では、各項目が実務上どの判断に影響するかを見ます。次の表は、確認項目と意味を対応させたものです。左列は棚卸し対象、右列は金額基準・質的基準・報告頻度へどう効くかを読み取るためのものです。

確認項目実務上の意味
上場・非上場コーポレートガバナンス・コード、適時開示、投資家説明の要否が変わります。
機関設計監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社で権限設計が変わります。
業種・主要リスク金融、医薬、建設、IT、通信、食品、エネルギー、個人情報、サイバー、製品安全、労務などの重点が変わります。
グループ構造国内外子会社、JV、持分法会社、上場子会社の有無で親会社承認・報告の設計が変わります。
財務規模売上、営業利益、純資産、時価総額、借入余力により金額基準が変わります。
既存規程取締役会規程、決裁権限規程、稟議規程、子会社管理規程との整合が必要です。

金額基準は運用しやすい一方、固定金額だけでは会社の成長・縮小・業績変動に対応できません。次の表では、複数の金額軸を並べています。左列の基準がどの財務影響を拾うものかを確認し、複数基準に該当する案件ほど取締役会で扱う必要性が高まると読み取ります。

基準意味
絶対額基準金額そのものを基準にする取得価額10億円以上、契約金額5億円以上
相対額基準会社規模に対する割合を基準にする売上高の1%以上、純資産の5%以上、営業利益の10%以上
予算対比基準承認済み予算との差異を基準にする承認予算を20%以上超過する投資
損失影響基準損失・減損・引当の影響を基準にする特別損失が一定額以上見込まれる案件
キャッシュ影響基準資金流出・保証・偶発債務を基準にする保証債務、長期コミットメント、解約不能債務
Section 05

取締役会決議事項・報告基準の標準例

別紙化しやすい標準例を、法定事項、戦略、財務、投資、リスク、報告に分けて整理します。

標準例は、自社の定款、機関設計、上場規則、決裁権限規程、業法を踏まえて調整する必要があります。ここでは、取締役会で決議・審議・報告されやすい事項を、実務で別紙化しやすい粒度にまとめます。

次の一覧は、取締役会決議事項の標準例を分類ごとに示しています。分類の列は案件の性質、中央の列は取締役会で扱う対象、補足の列は関係部門や確認論点を読むためのものです。

分類決議・審議事項の例補足
法定・機関運営代表取締役の選定・解職、役付取締役、取締役会規程、株主総会、内部統制、責任限定契約、補償契約、D&O保険、競業・利益相反会社法上の権限と定款・規程を確認します。
経営戦略・計画経営理念、長期ビジョン、中期経営計画、年度予算、事業ポートフォリオ、新規事業、海外展開、サステナビリティ投資家説明や企業価値向上と連動します。
財務・資本政策募集株式、自己株式、社債、多額の借財、保証・担保、配当、資本コスト、ROE、デリバティブ方針開示、税務、財務制限条項、偶発債務を確認します。
投資・M&A・組織再編株式取得、事業譲受、合併、会社分割、出資、JV、設備投資、IT投資、事業撤退、PMI早期審議、ROI、減損、撤退基準、統合後の追跡が重要です。
重要契約・リスク・人事高額契約、長期契約、知的財産、データ・AI、不祥事、当局対応、訴訟、サイバー、CEO・役員、重要使用人金額が小さくても質的に重要な案件を拾います。

報告基準は、取締役会の監督機能に直結します。次の表は、定例報告として扱いやすい項目、頻度、担当部署、主な論点をまとめたものです。頻度の列は最低限の目安ではなく、リスク水準や会社規模に応じて濃淡を付ける読み方をします。

報告事項頻度報告部署主な論点
業績・財務月次または四半期経理・財務予算差異、資金繰り、利益率、資本効率
経営計画進捗四半期経営企画KPI、重点施策、未達要因、修正対応
主要投資・M&A・PMI四半期または案件ごと事業部・経営企画・M&A部門進捗、費用超過、ROI、統合、シナジー、減損兆候
リスク管理・コンプライアンス・内部監査四半期または半期リスク管理、法務、内部監査主要リスク、違反、研修、内部通報、監査結果、改善進捗
法務・訴訟・当局対応四半期または発生時法務重要契約、紛争、法改正、当局対応、和解判断
情報セキュリティ・個人情報四半期または発生時IT・セキュリティ・プライバシー担当インシデント、脆弱性、訓練結果、委託先管理、漏えい、越境移転
人的資本・労務・サステナビリティ・子会社半期または四半期人事、ESG、子会社管理部門離職、採用、労働時間、ハラスメント、気候、人権、サプライチェーン、子会社リスク

重大危機では、定例会議を待つことは不適切です。次の表は、臨時報告が必要になりやすい事象と報告期限の例を示しています。期限の列は、対応の早さを読むための目安であり、重大性が高いほど即時に近い扱いになります。

発生事象報告期限の例報告先の例
重大な法令違反の疑い認識後24時間以内CEO、取締役会議長、監査役、法務、コンプライアンス
当局調査・立入検査即時CEO、法務、関係役員、監査役
重大な情報漏えい即時CEO、CISO、法務、個人情報担当、監査役
重大製品事故・リコール即時CEO、品質保証、法務、広報、監査役
役員不正・利益相反疑義即時取締役会議長、社外取締役、監査役、法務
業績予想に重大影響認識後速やかにCEO、CFO、開示担当、監査役
Section 06

取締役会付議基準・報告基準の条項例

目的、定義、基本原則、決議・審議・報告、緊急時、見直しまで条文化します。

規程条項は、抽象的な理念だけでなく、所管部門が運用できる粒度で書く必要があります。ここでは、実務で利用しやすい条項の骨子を示します。実際に使用する際は、自社の定款、機関設計、既存規程に合わせて修正します。

次の一覧は、条項例を目的別に並べたものです。左から順に、条文の役割、入れるべき内容、運用時に確認する点を読み取ると、規程全体の抜け漏れを確認できます。

01

目的・定義

取締役会に付議・報告すべき事項を明確にし、重要な業務執行の決定と職務執行の監督を適切かつ効率的に行う目的を置きます。付議、報告、重要の意味も定義します。

第1条・第2条
02

基本原則

法令・定款上の取締役会事項、経営戦略、資本配分、重要リスク、内部統制、経営陣人事、利益相反を取締役会が扱い、その他は業務執行側へ委任する原則を定めます。

第3条
03

決議・審議・報告

法定事項、経営計画、M&A、投資、財務、重要契約、危機対応、内部統制、役員人事、子会社事項を決議対象とし、正式決議前に審議する事項と監督上報告する事項を分けます。

第4条から第6条
04

臨時報告・利益相反

重大な法令違反、不祥事、行政調査、重大事故、情報漏えい、サイバー攻撃、重要訴訟、業績影響、役員・主要株主に関する利益相反疑義を早期に報告させます。

第7条・第8条
05

子会社・緊急時

重要子会社の承認・協議・報告事項を定め、緊急時には事前連絡、法令・定款への適合、事後報告、追認または追加決議を求める仕組みにします。

第9条・第10条
06

議案提出・見直し

議案提出期限、関係部署確認、資料の十分性、議事録記載上の留意点を事務局が確認し、法令改正、上場規則改正、実効性評価、内部監査結果を踏まえて少なくとも年1回見直します。

第11条・第12条

重要案件の資料は、取締役会が承認するだけでなく、戦略、リスク、代替案、実行後の管理を含めて判断できるように設計します。次の表は、議案資料テンプレートに入れる項目を、検討の順番に沿って整理したものです。左から案件の性質と確認項目を読み取り、資料に不足している論点を補うために使います。

区分記載項目
議案の基本情報議案名、付議区分、取締役会に求める事項、案件の背景・目的、経営戦略・中期計画との関係
案件の内容案件概要、金額・財務影響、資金調達・資金繰りへの影響、実行体制・責任者、スケジュール
専門論点会計・税務上の論点、法務・契約上の論点、業法・許認可・当局対応、開示要否、関係部署・外部専門家の確認状況
判断材料リスク評価、利益相反・関連当事者の有無、代替案・見送り案、KPI・モニタリング方法、決議文案・条件、次回報告予定
Section 07

取締役会付議基準・報告基準の運用点検

専門職の関与、会社類型ごとの差、よくある失敗、高度論点を見直しに反映します。

基準は作って終わりではありません。取締役会事務局、法務、財務、内部監査、監査役、社外取締役が連携し、実際に守られているかを点検して改善する必要があります。

次の一覧は、専門職・担当部門ごとの確認ポイントを整理したものです。担当ごとの視点を分けることで、会社法だけ、財務だけ、規程だけに偏らず、基準を総合的に点検できます。

法務・弁護士

法定決議事項、利益相反・競業取引、善管注意義務、緊急時対応、重要契約、M&A、訴訟、不祥事、子会社管理を確認します。

商事法務・事務局

条文化、議案提出手続、年間アジェンダ、資料テンプレート、議事録品質、社外役員への情報提供、開示資料との整合を担います。

リスク・内部監査

臨時報告、重大リスクのエスカレーション、付議漏れ、決裁権限規程との整合、子会社報告の実効性、決議後の追跡を確認します。

会計・税務・登記・労務

減損、引当、偶発債務、税務調査、組織再編税制、商業登記、知財、重大労務リスク、人的資本開示への影響を確認します。

会社類型によって、付議基準・報告基準の重点は変わります。次の比較表は、上場会社、非上場大会社、中小企業の違いを示しています。各行の重点を読むことで、自社に必要な複雑さと簡素化できる範囲を判断できます。

会社類型重点論点設計上の注意
上場会社コーポレートガバナンス・コード、適時開示、金商法開示、投資家対話、内部統制報告、実効性評価経営陣への委任範囲、社外取締役への情報提供、関連当事者取引、支配株主取引、公正性を明確にします。
非上場大会社会社法上の内部統制システム、金融機関・取引先・親会社・株主への説明責任同族・オーナー企業では役員・株主・親族との利益相反、関連会社間取引、保証、少数株主対応に注意します。
中小企業法定決議事項、借入、保証、不動産、設備投資、役員関連取引、重要契約、訴訟、労務トラブル、税務調査過度に複雑な基準は運用されにくいため、簡素でも漏れのない基準と議事録作成を重視します。

失敗例は、基準改定の優先順位を決める手がかりになります。次の一覧は、典型的な不備と改善策を対応させています。左側の状態が自社で起きていないかを見て、右側の改善策から見直し項目を読み取ります。

よくある失敗改善策
法令事項だけを列挙して終わる法令事項、金額基準、質的基準、報告基準、子会社基準を一体で設計します。
金額基準が高すぎる、または低すぎる絶対額だけでなく、売上、営業利益、純資産、予算比などの相対基準を併用し、過去議案で調整します。
報告事項が情報の羅列になる現状、問題点、対応策、取締役会に求める判断、次回報告予定を明記します。
子会社が漏れる子会社管理規程を整備し、親会社承認事項・協議事項・報告事項を明確にします。
利益相反が金額基準に埋もれる利益相反・関連当事者取引は、金額にかかわらず事前相談、法務確認、必要に応じた取締役会承認とします。
決議後のフォローアップがない重要案件ごとに、3か月後、6か月後、1年後などの報告時期を設定します。
規程間の整合性がない規程体系表を作成し、優先関係、参照関係、改定責任部署を明確にします。

高度論点では、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の委任可能性、取締役会実効性評価、開示統制、AI・データ・サイバーリスク、サステナビリティ・人的資本、重大不祥事と第三者委員会の扱いを、付議・報告基準に反映します。

Section 08

取締役会付議基準・報告基準のチェックリスト

作成前、基準作成、運用の三段階で漏れを点検します。

チェックリストは、作成前、基準作成、運用の三段階に分けると使いやすくなります。次の比較表は、それぞれの段階で確認すべき項目を示しています。段階ごとに目的が違うため、左から順に準備、設計、定着の観点で読み分けてください。

段階主な確認項目
作成前機関設計、大会社該当性、上場区分、業法規制、会社法上の決議事項、定款・取締役会規程・決裁権限規程、過去1年から3年の議案、社外取締役・監査役・経営陣の問題意識、子会社・海外拠点、適時開示・決算・監査との関係
基準作成決議事項・審議事項・報告事項、法定事項と任意事項、金額基準と質的基準、M&A・投資・撤退の段階的付議、利益相反・関連当事者取引、重大リスク・不祥事・当局対応、子会社基準、緊急時処理、議案資料、フォローアップ報告
運用事務局の付議該当性確認、法務・財務・税務・会計・内部監査・開示担当の確認ルート、議案提出期限、資料品質、議事録の審議過程、決議後の進捗報告、緊急時の事後報告、内部監査での付議漏れ確認、年1回以上の見直し

最後に、取締役会付議基準・報告基準の作り方で特に重要な結論を確認します。次の強調欄は、全体の到達点を一つにまとめたものです。各文から、法令対応、役割分担、判断軸、報告設計、見直しの五つを読み取ります。

付議基準・報告基準は企業統治の設計図です

会社法上の取締役会権限を正確に押さえ、取締役会と経営陣の役割分担を明確にし、金額基準と質的基準を併用し、報告基準を監督機能に結びつけ、運用・見直しまで設計することが要点です。

Reference

参考資料

制度・ガバナンス実務を確認するための主要資料名を整理します。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「会社法施行規則」
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
  • 金融庁「コーポレートガバナンス・コード改訂案の公表について」
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂について」

実務指針

  • 経済産業省「コーポレートガバナンスに関する各種ガイドラインについて」
  • 経済産業省「CGSガイドライン」
  • 経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」
  • 経済産業省「社外取締役向けガイドライン」
  • 経済産業省「稼ぐ力を強化する取締役会5原則」
  • 経済産業省「コーポレートガバナンス・ガイダンス」