2σ Guide

種類株式発行のための
定款記載事項

会社法108条を中心に、9類型、発行可能種類株式総数、定款変更、募集株式発行、登記、投資契約・税務・会計との整合まで実務目線で整理します。

9類型 会社法108条1項
108条2項 内容と上限数
2週間 変更登記の目安
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種類株式発行のための 定款記載事項

会社法108条を中心に、9類型、発行可能種類株式総数、定款変更、募集株式発行、登記、投資契約・税務・会計との整合まで実務目線で整理します。

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種類株式発行のための 定款記載事項
会社法108条を中心に、9類型、発行可能種類株式総数、定款変更、募集株式発行、登記、投資契約・税務・会計との整合まで実務目線で整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 種類株式発行のための 定款記載事項
  • 会社法108条を中心に、9類型、発行可能種類株式総数、定款変更、募集株式発行、登記、投資契約・税務・会計との整合まで実務目線で整理します。

POINT 1

  • 種類株式発行のための定款記載事項の全体像
  • 会社法108条2項を中心に、内容、上限数、手続、登記、契約整合をまとめて確認します。
  • 定款には名称ではなく権利内容と上限数を書く
  • この重要ポイントは、会社法108条2項が求める骨格を一枚で確認するためのものです。
  • なぜ重要かというと、名称だけの優先株式では発行手続、登記、投資契約、将来ラウンドで不整合が起きやすいからです。

POINT 2

  • 種類株式発行のための定款記載事項を理解する基本概念
  • 普通株式、種類株式、会社法107条・108条・109条の違いを整理します。
  • 標準的な株式
  • 内容の異なる株式
  • 複数種類を置く会社

POINT 3

  • 種類株式発行のための定款記載事項と会社法108条の位置づけ
  • 相対的記載事項、108条2項、要綱方式の意味を確認します。
  • 会社法108条2項が求める中心事項
  • 会社法108条3項の要綱方式
  • 定款記載事項の比較表は、種類株式の内容がどの位置づけにあるかを整理するものです。

POINT 4

  • 種類株式発行のための定款記載事項 ― 9類型ごとの設計
  • 定款変更
  • 種類株式の内容や株主間の権利配分に影響する変更を対象にすることがあります。
  • 新株発行・自己株式処分
  • 希薄化や支配権変動を伴うため、投資家保護の中心論点になります。

POINT 5

  • 種類株式発行のための定款記載事項と発行可能種類株式総数
  • 全体の授権枠と種類ごとの上限数を整合させるための見方です。
  • 発行可能種類株式総数の条項例
  • 発行可能株式総数と発行可能種類株式総数の比較表は、会社全体の授権枠と種類ごとの上限数を区別するものです。
  • なぜ重要かというと、種類株式発行会社では各種類ごとの上限数が定款記載事項になり、登記にも反映されるからです。

POINT 6

  • 種類株式発行のための定款変更・発行・登記の手続
  • 1. 種類株式の設計案を作成:取締役会または取締役が、権利内容、上限数、発行目的を整理します。
  • 2. 既存株主・投資家・専門家と調整:金融機関、税務・会計専門家、既存契約との整合を確認します。
  • 3. 種類株主総会や全員同意の要否を確認:会社法322条、111条、324条、反対株主保護を確認します。
  • 4. 追加決議・同意を取得:漏れがあると定款変更や発行の効力が争われる可能性があります。
  • 5. 株主総会特別決議へ進む:会社法466条、309条2項に基づく定款変更を決議します。
  • 6. 変更登記と募集株式発行:登記事項の変更後、必要に応じて募集事項決定、割当て、払込み、登記を行います。

POINT 7

  • 種類株式発行のための定款記載事項の実務チェックリスト
  • 法務、登記、税務・会計、ガバナンスの観点から確認漏れを防ぎます。
  • 法務チェック
  • 登記チェック
  • 税務・会計チェック

POINT 8

  • 種類株式発行のための定款記載事項を目的別に設計する
  • 資金調達、事業承継、共同事業、M&A、企業再生で必要な条項は変わります。
  • 目的別の一覧は、種類株式が使われる場面ごとに、定款に置く内容と契約で補う内容を整理するものです。
  • なぜ重要かというと、同じA種優先株式でも、資金調達、事業承継、ジョイントベンチャー、M&Aで必要な条項が変わるからです。
  • 各項目で、目的、主な設計要素、追加で見るべき契約・税務・会計論点を読み取ってください。

まとめ

  • 種類株式発行のための 定款記載事項
  • 種類株式発行のための定款記載事項の全体像:会社法108条2項を中心に、内容、上限数、手続、登記、契約整合をまとめて確認します。
  • 種類株式発行のための定款記載事項を理解する基本概念:普通株式、種類株式、会社法107条・108条・109条の違いを整理します。
  • 種類株式発行のための定款記載事項と会社法108条の位置づけ:相対的記載事項、108条2項、要綱方式の意味を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

種類株式発行のための定款記載事項の全体像

会社法108条2項を中心に、内容、上限数、手続、登記、契約整合をまとめて確認します。

種類株式発行のための定款記載事項は、会社法108条を軸に、株式の権利内容、発行可能種類株式総数、定款変更、種類株主総会、募集株式の発行、登記までを一体で設計する領域です。経営者、法務担当、商事法務担当、司法書士、税理士、公認会計士、M&A担当者、上場準備担当者にとって、単なる条項追加ではなく資本政策そのものを定款へ落とし込む作業になります。

この重要ポイントは、会社法108条2項が求める骨格を一枚で確認するためのものです。なぜ重要かというと、名称だけの優先株式では発行手続、登記、投資契約、将来ラウンドで不整合が起きやすいからです。ここでは、具体的内容、上限数、手続、登記表現、契約との整合を同時に読む必要があります。

定款には名称ではなく権利内容と上限数を書く

種類株式の定款設計では、9類型のどれを使うか、会社法108条2項の記載事項を満たすか、発行可能株式総数と発行可能種類株式総数が整合するかを先に確認します。

最初に押さえる5つの核心

  1. 会社法108条1項の9類型のどれを採用するかを特定します。
  2. 会社法108条2項が求める具体的な定款記載事項を漏れなく置きます。
  3. 発行可能株式総数と発行可能種類株式総数を整合させます。
  4. 定款変更、種類株主総会、株主全員同意、種類株主全員同意の要否を確認します。
  5. 登記事項になることを前提に、第三者が読んでも内容を把握できる表現にします。

種類株式は、スタートアップ投資、事業承継、ジョイントベンチャー、M&A、経営権調整、再生局面、投資家保護、少数株主保護で使われます。他方で、定款記載が不正確な場合は、発行手続の瑕疵、登記補正、株主間紛争、投資契約との齟齬、資金調達の停滞、IPO審査上の論点につながります。

注意実際の定款変更、種類株式発行、登記、税務・会計処理では、会社の株主構成、既存契約、資本政策、上場予定、税務上の評価によって結論が変わります。個別の対応は、資料を整理したうえで専門家に確認する必要があります。
Section 01

種類株式発行のための定款記載事項を理解する基本概念

普通株式、種類株式、会社法107条・108条・109条の違いを整理します。

基本概念の一覧は、普通株式、種類株式、種類株式発行会社、属人的定めの違いを整理するものです。なぜ重要かというと、会社法107条、108条、109条の使い分けを誤ると、定款変更の要否や種類株主総会の要否を誤りやすいからです。読者は、権利差が株式そのものに付くのか、全株式に共通するのか、特定株主の属性に付くのかを読み分けてください。

普通株式

標準的な株式

剰余金配当、残余財産分配、株主総会議決権について、特別な優先権や制限を付していない株式です。

種類株式

内容の異なる株式

配当、残余財産、議決権、譲渡制限、取得請求権、取得条項などについて、普通株式と異なる権利内容または制限内容を持つ株式です。

発行会社

複数種類を置く会社

定款上、普通株式とA種優先株式など複数種類の株式を発行できる構造を置く会社です。未発行の種類でも、定款と登記の整備が問題になります。

属人的定め

株主属性に着目する制度

公開会社でない株式会社で、特定株主ごとに異なる取扱いを定める方法です。権利差を株式に付ける種類株式とは設計思想が異なります。

次の比較表は、会社法107条、108条、109条の使い分けを示します。これは定款記載事項の根拠条文を選ぶために重要です。左から順に、対象、典型例、実務上の判断軸を確認し、全部の株式に共通する定めか、種類ごとの差か、株主ごとの差かを読み取ってください。

条文対象典型例判断軸
会社法107条発行する全部の株式の内容全株式の譲渡制限、取得請求権、取得条項すべての株式に同じ内容を付ける場合
会社法108条内容の異なる二以上の種類の株式普通株式は議決権あり、A種株式は無議決権など種類ごとに権利内容や制限内容が異なる場合
会社法109条2項公開会社でない株式会社の株主ごとの取扱い特定株主だけ議決権数や配当取扱いを変える定め株式ではなく株主の属性に着目する場合

事業承継や同族会社では、株式譲渡後も権利差を維持したい場合は種類株式が適しやすく、特定人物の属性に着目したい場合は属人的定めが検討されます。もっとも、会社法は属人的定めについても一定範囲で種類株式に関する規律を及ぼすため、制度選択は慎重に行う必要があります。

Section 02

種類株式発行のための定款記載事項と会社法108条の位置づけ

相対的記載事項、108条2項、要綱方式の意味を確認します。

定款記載事項の比較表は、種類株式の内容がどの位置づけにあるかを整理するものです。なぜ重要かというと、相対的記載事項は定款に書いて初めて効力が生じ、契約書や議事録だけでは代替できないからです。各区分の意味と例を確認し、種類株式の内容が定款上の必須設計項目になることを読み取ってください。

区分意味
絶対的記載事項記載がなければ定款自体が有効に成立しない事項目的、商号、本店所在地、設立時に出資される財産の価額または最低額、発起人の氏名・住所など
相対的記載事項定款に記載して初めて効力が生じる事項現物出資、財産引受、設立費用、種類株式の内容、一定の機関設計など
任意的記載事項法令に反しない限り任意に記載できる事項事業年度、株主総会の議長、取締役の員数、社内手続など

会社法108条2項が求める中心事項

種類株式発行会社では、定款に少なくとも各種類株式の具体的な権利内容または制限内容と、各種類株式について発行できる上限数である発行可能種類株式総数を記載します。「普通株式およびA種優先株式を発行できる」という名称だけの記載では、内容も上限数も明らかではありません。

要点会社法108条2項は、種類株式の設計を「種類名」ではなく「内容」と「数」で定款化することを求める規定です。登記されることも踏まえ、第三者が読んで内容を把握できる粒度にします。

会社法108条3項の要綱方式

要綱方式は、一定事項について、当該種類の株式を初めて発行する時までに決議で具体的内容を定める旨を定款で置く方法です。将来の資金調達条件を完全には固定できない場面で有用ですが、すべてを後日決定に委ねられるわけではありません。会社法施行規則20条の範囲と、定款に必ず残す骨格を区別します。

次の一覧は、108条2項と108条3項の実務上の使い分けを示します。これは、どこまで定款本文に書くか、どこを後日決定にできるかを判断するために重要です。各行の「使いどころ」と「注意点」を見比べ、資金調達条件の柔軟性と登記可能性の均衡を読み取ってください。

方式使いどころ注意点
具体的記載配当額、取得対価、議決権、拒否権対象などを定款に明記する登記と投資契約との照合がしやすい一方、条件変更には定款変更が必要になりやすい
要綱方式初回発行時までに一定事項を決議で定める余地を残す後日決定可能な範囲を超えると、定款記載として不十分になり得る
Section 03

種類株式発行のための定款記載事項 ― 9類型ごとの設計

配当、残余財産、議決権、取得、拒否権、役員選任権まで条項例とともに整理します。

9類型の比較表は、会社法108条1項が認める種類株式のメニューと実務上の呼称を対応させるものです。なぜ重要かというと、条項名ではなく法定類型を特定しないと、会社法108条2項で何を書くべきかが決まらないからです。各行で、どの権利や制限を変える制度なのかを読み取ってください。

番号会社法108条1項の類型実務上の呼称例定款設計の焦点
1剰余金の配当配当優先株式、累積型優先株式配当額、累積性、参加性、順位、条件
2残余財産の分配残余財産優先株式、清算優先株式優先分配額、倍率、参加性、分配順位
3議決権を行使できる事項議決権制限株式、無議決権株式議決権の有無、復活条件、対象事項
4譲渡による取得に会社承認を要すること譲渡制限種類株式承認機関、みなし承認、既発行株式への後付け手続
5株主が会社に取得を請求できること取得請求権付種類株式、転換請求権付種類株式請求期間、対価、転換比率、調整条項
6一定事由を条件として会社が取得できること取得条項付種類株式、強制転換条項付種類株式取得事由、取得日、一部取得、対価
7株主総会決議により会社が全部を取得できること全部取得条項付種類株式取得対価、決議条件、反対株主保護
8一定事項について種類株主総会決議を必要とすること拒否権付種類株式、黄金株対象事項、条件、デッドロック対策
9種類株主総会で取締役または監査役を選任すること役員選任権付種類株式選任人数、共同選任、公開会社での制限

剰余金配当に関する種類株式

配当優先株式では、配当財産の価額の決定方法、配当条件、その他の取扱いを定めます。優先配当額は固定額、払込金額に対する割合、算定式などで設計され、累積型か非累積型か、参加型か非参加型か、普通株式との順位も重要です。

次の比較表は、配当優先株式で検討する主な要素を示します。これは、経済条件が投資家保護と創業者インセンティブの双方に影響するため重要です。列ごとに、金額、繰越し、追加参加、財産の種類、条件、順位のどこを条文化するかを読み取ってください。

検討項目実務上の意味
優先配当額1株あたり固定額、払込金額に対する割合、算定式など
累積型か非累積型か不足配当を翌期以降に繰り越すか
参加型か非参加型か優先配当後、普通株式とともに追加配当に参加できるか
配当財産の種類金銭か、現物配当を想定するか
配当条件配当可能額、事業年度、決議機関、基準日など
普通株式との順位優先、同順位、劣後のいずれか

条項例 ― 非累積・非参加型の優先配当

第○条(A種優先株主に対する優先配当)
当会社は、剰余金の配当を行うときは、A種優先株式を有する株主に対し、普通株式を有する株主に先立ち、A種優先株式1株につき年○円を上限として、剰余金の配当を行う。
2 ある事業年度においてA種優先株主に対して前項に定める額に満たない配当が行われた場合であっても、その不足額は翌事業年度以降に累積しない。
3 A種優先株主は、第1項に定める優先配当を超えて剰余金の配当を受ける権利を有しない。

残余財産分配に関する種類株式

残余財産優先株式では、清算時またはみなし清算イベントを見据え、残余財産の価額、財産の種類、分配順位、参加性を定めます。スタートアップ投資では、投資家が出資額の1倍を普通株式に先立って回収する1倍清算優先権が検討されることがあります。

次の比較表は、残余財産優先権の経済条件を整理するものです。これは、M&Aや清算時の回収順位が株主間の利害に直結するため重要です。優先分配額、参加性、順位、財産の種類、契約との整合を順に確認してください。

検討項目実務上の意味
優先分配額1株あたり払込金額相当額、一定倍率、固定額など
参加型か非参加型か優先分配後に普通株式とともに残余部分へ参加するか
分配順位A種、B種、普通株式間の順位をどう定めるか
残余財産の種類金銭以外の財産分配を想定するか
M&A時の取扱い定款だけでなく投資契約・株主間契約との整合が必要

条項例 ― 非参加型の残余財産優先分配

第○条(残余財産の分配)
当会社は、残余財産を分配するときは、普通株主に先立ち、A種優先株主に対し、A種優先株式1株につき金○円を分配する。
2 A種優先株主は、前項の分配を受けた後、残余財産について普通株主とともに追加の分配を受ける権利を有しない。

議決権制限種類株式

議決権制限種類株式では、株主総会で議決権を行使できる事項と、条件付議決権を置く場合の条件を定めます。公開会社では、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えた場合、必要な措置をとる規制も問題になります。

次の比較表は、議決権制限の代表的な設計を示します。これは、経済的利益と支配権を分離する際の影響が大きいため重要です。どの事項で議決権が残るか、どの条件で復活するかを読み取ってください。

類型
完全無議決権原則として株主総会のすべての事項について議決権を行使できない
一部議決権定款変更、合併、解散など特定事項についてのみ議決権を有する
条件付議決権優先配当が一定期間支払われない場合に議決権が復活する

条項例 ― 一定事項に限り議決権を有する場合

第○条(議決権)
A種優先株主は、株主総会において、次に掲げる事項についてのみ議決権を行使することができる。
(1) 当会社の定款の変更のうちA種優先株式の内容に影響を及ぼすもの
(2) 合併、会社分割、株式交換、株式移転又は株式交付
(3) 解散
2 前項に掲げる事項以外の事項について、A種優先株主は議決権を有しない。

譲渡制限種類株式

特定の種類株式だけに譲渡制限を付す場合は、当該種類の株式を譲渡により取得することについて会社の承認を要する旨を定款に定めます。一定の場合に承認したものとみなすときは、その旨と条件も明記します。

第○条(A種優先株式の譲渡制限)
A種優先株式を譲渡により取得するには、当会社の取締役会の承認を受けなければならない。
2 A種優先株式の譲渡人および譲受人がいずれも当会社の株主である場合には、当会社は前項の承認をしたものとみなす。

既発行の種類株式に後から譲渡制限を付す場合には、会社法111条2項、324条3項などによる種類株主総会の特殊決議や、反対株主の株式買取請求が問題になります。株券発行会社では株券提供公告等も確認します。

取得請求権付種類株式

取得請求権付種類株式は、株主が会社に対して、その株式を取得するよう請求できる種類株式です。優先株式を普通株式に転換する権利、一定期間後に会社へ償還請求する権利などとして設計されます。

第○条(取得請求権)
A種優先株主は、当会社に対し、A種優先株式の全部又は一部を取得することを請求することができる。
2 当会社は、前項の請求を受けたA種優先株式1株を取得するのと引換えに、普通株式○株をA種優先株主に交付する。
3 第1項の請求をすることができる期間は、A種優先株式の発行日から○年を経過した日以降とする。

転換比率の調整条項は重要です。株式分割、株式併合、無償割当て、低価発行、組織再編などが起きた場合に転換比率をどう調整するかを定めないと、投資家保護にも創業者保護にも不十分になり得ます。

取得条項付種類株式

取得条項付種類株式は、一定の事由が発生した場合に、会社がその株式を取得できる種類株式です。会社側の取得が中心であり、取得事由、取得日、一部取得の有無、取得対価の内容・数・額・算定方法を定めます。

第○条(取得条項)
当会社は、当会社の普通株式が金融商品取引所に上場されることが承認された日をもって、A種優先株式の全部を取得する。
2 当会社は、前項によりA種優先株式1株を取得するのと引換えに、A種優先株主に対し、普通株式○株を交付する。

取得条項を後から既発行の種類株式に付す場合には、当該種類株主全員の同意が必要です。将来の出口戦略を見据える場合、最初の発行時点から取得条項を設計しておくことが重要です。

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株式は、会社が株主総会の決議によって、その種類株式の全部を取得できる種類株式です。取得対価の価額の決定方法、株主総会決議をすることができるか否かについて条件を定めるときはその条件を記載します。

第○条(全部取得条項)
当会社は、株主総会の決議により、A種優先株式の全部を取得することができる。
2 前項によりA種優先株式を取得する場合の取得対価は、A種優先株式1株につき金○円又は株主総会で定める算定方法により算定される額とする。

実際の全部取得では、定款記載だけでなく、株主総会決議、取得対価、反対株主保護、端数処理、登記、税務、会計処理を総合的に検討します。

拒否権付種類株式

拒否権付種類株式は、株主総会、取締役会、清算人会で決議すべき一定事項について、その決議に加えて当該種類株主総会の決議を必要とする制度です。投資家保護や共同支配に有効ですが、範囲が広すぎると会社運営が硬直化します。

次の一覧は、拒否権対象として検討される事項を整理するものです。これは、重要事項に絞らず広げすぎるとデッドロックを招くため重要です。列挙された事項のうち、会社の資本政策や支配権に直結するものを読み分けてください。

定款変更

種類株式の内容や株主間の権利配分に影響する変更を対象にすることがあります。

新株発行・自己株式処分

希薄化や支配権変動を伴うため、投資家保護の中心論点になります。

組織再編

合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付などが対象になります。

重要な事業譲渡

会社価値の主要部分を移転するため、共同支配の場面で重視されます。

借入れ・資産処分

一定額を超える借入れや重要資産の処分を対象にすることがあります。

代表取締役・予算

代表者の選定・解職、事業計画・予算の承認を対象にする例があります。

第○条(A種優先株主総会の承認事項)
当会社は、次に掲げる事項を行うには、株主総会又は取締役会の決議に加え、A種優先株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する。
(1) 定款の変更
(2) 合併、会社分割、株式交換、株式移転又は株式交付
(3) 会社の解散
(4) A種優先株式に劣後しない株式又は新株予約権の発行

役員選任権付種類株式

役員選任権付種類株式は、ある種類の株主を構成員とする種類株主総会で取締役または監査役を選任できる株式です。選任人数、共同して選任する種類、変更条件を定款に記載します。指名委員会等設置会社および公開会社は発行できないため、主に非公開会社、ジョイントベンチャー、事業承継会社で検討されます。

第○条(A種種類株主総会による取締役の選任)
A種優先株主を構成員とする種類株主総会は、取締役1名を選任することができる。
2 前項により選任された取締役が任期満了前に退任した場合、A種優先株主を構成員とする種類株主総会は、補欠の取締役1名を選任することができる。
Section 04

種類株式発行のための定款記載事項と発行可能種類株式総数

全体の授権枠と種類ごとの上限数を整合させるための見方です。

発行可能株式総数と発行可能種類株式総数の比較表は、会社全体の授権枠と種類ごとの上限数を区別するものです。なぜ重要かというと、種類株式発行会社では各種類ごとの上限数が定款記載事項になり、登記にも反映されるからです。全体枠と種類別枠の整合、将来ラウンドやストックオプション枠との関係を読み取ってください。

項目意味設計上の注意
発行可能株式総数会社が発行できる株式全体の上限公開会社が定款変更で増加する場合などは、発行済株式総数の4倍制限が問題になる
発行可能種類株式総数普通株式、A種優先株式など各種類ごとの発行上限種類株式発行会社では、各種類の内容とともに定款へ記載する

発行可能種類株式総数の条項例

第○条(発行可能株式総数及び発行可能種類株式総数)
当会社の発行可能株式総数は、100,000株とする。
2 当会社の各種類の株式の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。
(1) 普通株式 80,000株
(2) A種優先株式 20,000株

将来の資金調達、ストックオプション、株式分割、M&A対価としての株式発行を見越して余裕を持たせることがあります。ただし、枠が過大だと希薄化懸念や投資家交渉上の不信感を招くことがあります。

変更時ある種類の発行可能種類株式総数を減少する場合、変更後の上限数はその種類の発行済株式総数を下回れません。種類追加、内容変更、上限数の増加がある種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、会社法322条に基づく種類株主総会決議も検討します。

次の比較表は、発行可能種類株式総数を変更するときの確認事項をまとめたものです。これは、資本政策上の柔軟性と既存株主保護が衝突しやすいため重要です。変更の方向、既発行数、損害のおそれ、同意要件を順に確認してください。

場面確認事項リスク
種類株式の追加既存種類株主に損害を及ぼすおそれがあるか種類株主総会決議の漏れ
発行可能種類株式総数の増加将来発行による希薄化や優先順位への影響投資家交渉や既存契約との不整合
発行可能種類株式総数の減少変更後の数が発行済数を下回らないか定款変更・登記補正
322条2項の定め種類株主総会を不要とする定めを置くか後から置くには当該種類株主全員の同意が必要
Section 05

種類株式発行のための定款変更・発行・登記の手続

設立時、会社成立後、募集株式発行、変更登記を分けて確認します。

手続の時系列は、設立時に種類株式を置く場合の順番を示すものです。なぜ重要かというと、原始定款の認証前に条項整合性を確認しなければ、設立登記や初回発行で補正が生じやすいからです。上から下へ、資本政策、株式内容、上限数、定款認証、登記の順番を読み取ってください。

Step 01

資本政策を設計する

普通株式と種類株式の関係、投資家保護、創業者持分、将来ラウンドを整理します。

Step 02

株式内容と上限数を定める

会社法108条2項に沿って、各種類株式の内容と発行可能種類株式総数を置きます。

Step 03

設立時発行株式を決める

種類、数、割当て、払込内容を決め、原始定款と発起人決定書類を整合させます。

Step 04

定款認証と設立登記

原則として公証人の認証を受け、発行可能種類株式総数と各種類株式の内容を登記します。

次の判断の流れは、会社成立後に種類株式を追加する場合の手順を示します。これは、定款変更と株式発行が別手続であり、必要決議や登記期限を混同しやすいため重要です。順番に、定款変更、種類株主保護、登記、募集株式発行を切り分けて読んでください。

会社成立後に種類株式を追加する順番

種類株式の設計案を作成

取締役会または取締役が、権利内容、上限数、発行目的を整理します。

既存株主・投資家・専門家と調整

金融機関、税務・会計専門家、既存契約との整合を確認します。

種類株主総会や全員同意の要否を確認

会社法322条、111条、324条、反対株主保護を確認します。

必要あり
追加決議・同意を取得

漏れがあると定款変更や発行の効力が争われる可能性があります。

不要または完了
株主総会特別決議へ進む

会社法466条、309条2項に基づく定款変更を決議します。

変更登記と募集株式発行

登記事項の変更後、必要に応じて募集事項決定、割当て、払込み、登記を行います。

募集株式の発行手続との関係

会社が募集株式を発行する場合、会社法199条に基づき、募集株式の数、種類株式発行会社では募集株式の種類および数、払込金額または算定方法、現物出資の内容、払込期日または期間、増加する資本金・資本準備金などを定めます。非公開会社では原則として株主総会特別決議、公開会社では原則として取締役会決議が中心ですが、有利発行では株主総会特別決議が問題になります。

登記との関係

会社法911条3項7号は、種類株式発行会社について、発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容を登記事項としています。会社成立後に変更が生じた場合、会社法915条により、本店所在地で2週間以内に変更登記をする必要があります。

次の比較表は、登記実務で問題になりやすい点をまとめたものです。これは、定款の文言がそのまま登記審査や補正対応に影響するため重要です。問題欄と注意欄を対応させ、抽象的表現、議事録不一致、種類株主総会漏れ、取得対価の不明確さを読み取ってください。

問題実務上の注意
定款表現が抽象的「優先株式」とだけ記載しても不十分になり得る
定款と議事録の不一致決議内容、効力発生日、変更条項を一致させる
種類株主総会の漏れ会社法322条、324条、111条などを確認する
発行可能種類株式総数の漏れ各種類ごとの上限数を記載する
取得対価の不明確さ金銭、株式、社債、新株予約権、その他財産の内容・数・算定方法を明確にする
投資契約との不一致契約上の権利と定款上の権利が矛盾しないよう照合する
Section 06

種類株式発行のための定款記載事項の実務チェックリスト

法務、登記、税務・会計、ガバナンスの観点から確認漏れを防ぎます。

法務チェック

法務チェック表は、種類株式の根拠条文、記載事項、同意要件、種類株主総会、反対株主保護を確認するものです。なぜ重要かというと、1つの漏れが定款変更や発行手続の効力争いにつながる可能性があるからです。左列の項目を順番に確認し、右列で必要な検討ポイントを読み取ってください。

チェック項目確認ポイント
会社法108条1項のどの類型か採用する種類株式の法的根拠を特定する
会社法108条2項の記載事項を満たすか各類型ごとの必須事項が定款に入っているか
会社法108条3項の要綱方式を使うか後日決定できる事項の範囲を超えていないか
会社法107条との区別全株式の内容か、種類ごとの内容か
会社法109条との関係株主平等原則、属人的定めとの関係を確認する
会社法111条の同意要件既発行株式に取得条項・譲渡制限・全部取得条項を付す場合を確認する
会社法322条の種類株主総会損害を及ぼすおそれがある行為について種類株主総会が必要か
会社法324条の決議要件種類株主総会の普通・特別・特殊決議を確認する
反対株主の株式買取請求会社法116条等の適用を確認する
上場準備への影響議決権種類株式、拒否権、役員選任権の整理が必要か

登記チェック

登記チェック表は、登記記録に載せるべき内容と添付書面を確認するものです。これは、登記補正を避け、変更後2週間以内の申請に備えるために重要です。各行で、定款、議事録、同意書、既存登記の整合を読み取ってください。

チェック項目確認ポイント
発行可能種類株式総数普通株式、A種、B種など各種類ごとの数を記載したか
各種類株式の内容登記記録に載せるべき内容として明確か
効力発生日定款変更の効力発生日と登記申請期限を確認したか
添付書面株主総会議事録、種類株主総会議事録、同意書、定款などを準備したか
株券発行会社か株券提供公告等が必要となる場面がないか
既存登記との整合発行済株式の種類・数、株式譲渡制限、単元株式数と矛盾しないか

税務・会計チェック

税務・会計チェック表は、法務上の条項が会計分類や課税関係に与える影響を整理するものです。これは、条件確定後に修正しようとすると投資家交渉や定款変更が難しくなるため重要です。発行価額、配当、取得対価、評価方法を横断して確認してください。

チェック項目確認ポイント
発行価額時価、公正価値、低額発行リスクを確認する
優先配当会計上の資本・負債分類、配当原資、税務処理を確認する
取得請求・取得条項取得対価が金銭か株式かにより税務・会計処理が変わる
みなし配当自己株式取得、償還、組織再編に伴う課税関係を確認する
種類株式評価相続・贈与・事業承継で評価方法が問題となる

ガバナンス・経営チェック

ガバナンス・経営チェック表は、条項が会社運営、資本政策、投資家関係に与える影響を確認するものです。これは、法務上有効でも会社運営が硬直化したり、将来のM&AやIPOで不利に見られたりする可能性があるため重要です。拒否権、議決権、役員選任権、契約整合、紛争予防を読み取ってください。

チェック項目確認ポイント
拒否権の範囲重要事項に限定されているか、日常経営を阻害しないか
議決権制限少数株主保護、投資家保護、上場準備と整合するか
役員選任権取締役会の構成、責任、利益相反管理と整合するか
資本政策将来ラウンド、希薄化、ストックオプション枠と整合するか
契約との関係投資契約、株主間契約、種類株主間契約と矛盾しないか
紛争予防デッドロック、退出、買戻し、M&A時の同意手続を定めているか
Section 07

種類株式発行のための定款記載事項を目的別に設計する

資金調達、事業承継、共同事業、M&A、企業再生で必要な条項は変わります。

目的別の一覧は、種類株式が使われる場面ごとに、定款に置く内容と契約で補う内容を整理するものです。なぜ重要かというと、同じA種優先株式でも、資金調達、事業承継、ジョイントベンチャー、M&Aで必要な条項が変わるからです。各項目で、目的、主な設計要素、追加で見るべき契約・税務・会計論点を読み取ってください。

01

スタートアップの資金調達

A種優先株式、B種優先株式などのラウンド別優先株式が使われます。残余財産優先分配、普通株式への転換請求権、IPO時の強制転換条項、希薄化防止条項、重要事項拒否権、譲渡制限を定款と投資契約で分担します。

資金調達投資契約
02

事業承継・同族会社

後継者に議決権を集中させ、他の相続人には経済的利益を与える設計が検討されます。無議決権配当優先株式、譲渡制限、相続人等に対する売渡請求、取得条項、種類株式評価が重要です。

承継税務評価
03

ジョイントベンチャー

複数の事業会社が共同決定権を持つため、拒否権付種類株式や役員選任権付種類株式が検討されます。デッドロック発生時の売買、清算、事業譲渡は株主間契約でも補います。

共同支配デッドロック
04

経営権維持・買収防衛

拒否権付種類株式や議決権制限株式が議論されます。ただし上場会社・上場準備会社では、株主平等、少数株主保護、取引所規則、機関投資家の議決権行使基準を検討します。

支配権上場準備
05

企業再生・M&A

既存株主の権利調整、新投資家への優先権付与、債務の株式化、スポンサー投資、ロールオーバー株式、優先回収、強制転換条項などが検討されます。

M&A再生

種類株式は支配を固定する道具としてだけではなく、経済権と支配権を合理的に配分する道具として設計することが重要です。過度な拒否権や支配維持条項は、将来の投資家、金融機関、M&A買主から不利に見られることがあります。

Section 08

種類株式発行のための定款記載事項を作るときの注意点

名称だけの記載、契約との混同、登記表現、将来ラウンド、税務・会計を確認します。

実務上の注意点の一覧は、定款条項を作るときに失敗しやすい論点をまとめたものです。なぜ重要かというと、種類株式は登記され、契約や資本政策と連動し、後から直すには多数決だけで足りない場面があるからです。各項目で、名称、手続、契約、登記、将来ラウンド、税務・会計のどこにリスクがあるかを読み取ってください。

名称だけでは足りない

「A種優先株式」「黄金株」などの名称は法的内容そのものではありません。配当、残余財産、議決権、取得、拒否権、上限数を具体化します。

権利内容と発行手続を分ける

定款に種類株式を置くことと、実際に募集株式を発行することは別です。募集事項決定、割当て、払込み、登記を別途確認します。

投資契約と定款を区別する

契約上の事前承諾事項と、定款上の拒否権付種類株式は効力が異なります。定款に書かなければ効力が生じない事項は契約だけでは足りません。

登記される前提で書く

「投資契約に定める算式による」といった参照だけの文言は問題になり得ます。取得対価、転換比率、優先配当額は登記記録で把握できる粒度にします。

将来ラウンドを想定する

A種だけでなく、B種、C種、既存優先株式との順位、希薄化防止、転換比率調整、投資家間の拒否権調整を見越します。

税務・会計を後回しにしない

償還型優先株式、取得請求権付株式、取得条項付株式、残余財産優先権、関連当事者間発行では、税務・会計の影響を早期に確認します。

避けたい定款記載の例

当会社は、普通株式及びA種優先株式を発行することができる。

この記載だけでは、A種優先株式が何について優先するのか、配当なのか残余財産なのか、議決権の有無はどうか、取得請求権や取得条項はあるのか、発行可能種類株式総数はいくらかが分かりません。

Section 09

種類株式発行のための定款記載事項に関するFAQ

よくある疑問を一般的な制度説明として整理します。

Q1. 普通株式だけの会社がA種優先株式を発行するには何が必要ですか。

一般的には、定款を変更してA種優先株式の内容と発行可能種類株式総数を定め、その後に募集株式の発行手続を行う流れになります。ただし、既存株主への影響、会社の機関設計、発行条件、種類株主総会や反対株主保護の要否によって必要手続は変わる可能性があります。具体的な対応は、株主構成、定款、登記記録、投資契約等を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q2. 「A種優先株式」と定款に書けば足りますか。

一般的には、名称だけでは会社法108条2項の定款記載事項を満たさないと考えられます。配当、残余財産、議決権、取得請求権、取得条項、拒否権、発行可能種類株式総数など、採用する類型に応じた具体的内容を定める必要があります。ただし、どの事項をどこまで具体化するかは設計内容で変わるため、個別の定款案は専門家に確認する必要があります。

Q3. 種類株式の内容は登記されますか。

一般的には、種類株式発行会社では、発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容が登記事項とされています。変更が生じた場合には、会社法上の期間内に変更登記が必要となる可能性があります。ただし、登記すべき文言や添付書面は変更内容で異なるため、登記実務に詳しい専門家へ確認する必要があります。

Q4. 投資契約に書けば、定款に書かなくてもよいですか。

一般的には、定款に記載しなければ効力が生じない事項は、投資契約だけでは代替できないとされています。投資契約は当事者間の拘束として重要ですが、会社法上の種類株式の権利内容は定款へ反映させる必要があります。ただし、契約上の義務と会社法上の効力の関係は条項内容で変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q5. 無議決権株式を発行すれば、経営者は支配権を維持できますか。

一般的には、議決権制限株式により議決権と経済的利益を分ける設計は可能とされています。ただし、公開会社の議決権制限株式に関する規制、上場準備での審査、少数株主保護、投資家評価、既存契約との関係で結論が変わる可能性があります。具体的な資本政策は、会社の成長計画や株主構成を踏まえて専門家に相談する必要があります。

Q6. 拒否権付種類株式はどの程度強い制度ですか。

一般的には、定款上、一定事項について種類株主総会の決議を必要とする設計にすると、その決議の有無が会社行為の効力に影響し得る強い制度とされています。ただし、対象事項を広げすぎると経営停滞やデッドロックにつながる可能性があります。具体的な範囲は、事業内容、投資家保護、共同支配の必要性を踏まえて専門家に確認する必要があります。

Q7. 役員選任権付種類株式はどの会社でも使えますか。

一般的には、指名委員会等設置会社および公開会社は、会社法108条1項9号の役員選任権付種類株式を発行できないとされています。主に非公開会社、ジョイントベンチャー、事業承継会社で検討される制度です。ただし、機関設計や将来の公開会社化の予定によって適否が変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Section 10

種類株式発行のための定款記載事項の構成例

普通株式とA種優先株式を置く場合の骨格を確認します。

定款構成例は、普通株式とA種優先株式を置く場合の骨格を一覧できるようにしたものです。なぜ重要かというと、各条項が単独で存在するのではなく、発行可能種類株式総数、配当、残余財産、議決権、取得請求、取得条項、拒否権が連動するからです。条項の並びと相互関係を確認し、個別案件では数値、比率、調整条項、端数処理を別途設計する必要があることを読み取ってください。

第2章 株式

第○条(発行可能株式総数及び発行可能種類株式総数)
当会社の発行可能株式総数は、100,000株とする。
2 当会社の各種類の株式の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。
(1) 普通株式 80,000株
(2) A種優先株式 20,000株

第○条(剰余金の配当)
当会社は、剰余金の配当を行うときは、A種優先株主に対し、普通株主に先立ち、A種優先株式1株につき年○円を上限として配当する。
2 A種優先配当金の不足額は翌事業年度以降に累積しない。
3 A種優先株主は、A種優先配当金を超えて剰余金の配当を受ける権利を有しない。

第○条(残余財産の分配)
当会社は、残余財産を分配するときは、A種優先株主に対し、普通株主に先立ち、A種優先株式1株につき金○円を分配する。
2 A種優先株主は、前項の分配を受けた後、残余財産について追加の分配を受ける権利を有しない。

第○条(議決権)
A種優先株主は、株主総会において、普通株主と同一の議決権を有する。ただし、別途本定款に定める事項については、A種優先株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する。

第○条(取得請求権)
A種優先株主は、当会社に対し、A種優先株式の全部又は一部を取得することを請求することができる。
2 当会社は、前項の請求に係るA種優先株式1株を取得するのと引換えに、普通株式○株を交付する。
3 取得請求をすることができる期間は、A種優先株式の発行日以降とする。

第○条(取得条項)
当会社は、当会社の普通株式が金融商品取引所に上場されることが承認された日その他取締役会が定める日をもって、A種優先株式の全部を取得することができる。
2 当会社は、前項によりA種優先株式1株を取得するのと引換えに、普通株式○株を交付する。

第○条(A種優先株主総会の承認事項)
当会社は、次に掲げる事項を行うには、株主総会又は取締役会の決議に加え、A種優先株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する。
(1) A種優先株式の内容に影響を及ぼす定款変更
(2) 合併、会社分割、株式交換、株式移転又は株式交付
(3) 解散
(4) A種優先株式に優先し又は同順位となる株式の発行

この骨格例は一般的なサンプルです。取得請求権・取得条項の転換比率、希薄化防止、株式分割・併合時の調整、端数処理、税務、会計、発行価額、投資契約との整合性は、会社ごとに設計する必要があります。

Section 11

種類株式発行のための定款記載事項の失敗リスク

発行可能種類株式総数、取得対価、拒否権、種類株主総会、税務・会計の見落としを防ぎます。

失敗事例の一覧は、種類株式の定款記載で紛争や補正につながりやすいリスクをまとめたものです。なぜ重要かというと、条項の不足は登記で止まるだけでなく、株主間の効力争い、資金調達の遅延、税務・会計上の想定外の結果につながるからです。各項目で、何が不足し、どの実務影響が出るかを読み取ってください。

発行可能種類株式総数の漏れ

種類名と内容だけでは会社法108条2項の要件を満たさず、登記上も問題となります。各種類ごとの発行可能数を記載します。

取得対価が不明確

取得請求権付種類株式や取得条項付種類株式では、金銭、普通株式、社債、新株予約権、その他財産のいずれか、数量または算定方法を具体化します。

拒否権が広すぎる

「会社の一切の重要事項」のような曖昧な表現は、どの機関決定にどの種類株主総会決議が必要かを不明確にします。

会社法322条の見落とし

種類追加や内容変更がある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合、種類株主総会決議が必要になることがあります。

後付け取得条項の誤解

既発行の種類株式に取得条項を後から付す場合、当該種類株主全員の同意が必要となります。多数決だけで進められるとは限りません。

税務・会計の後回し

優先株式の条件によって、会計分類、税務評価、みなし配当、組織再編時の課税関係が変わる可能性があります。

Section 12

種類株式発行のための定款記載事項と専門家の役割

法務、登記、税務、会計、M&A、経営判断を同じ資料でつなぎます。

専門家別の役割表は、種類株式発行のための定款記載事項を誰がどの観点で確認するかを整理するものです。なぜ重要かというと、種類株式は法務だけで完結せず、資本政策、税務、会計、登記、投資家対応、M&AやIPOに影響するからです。左列の担当者と右列の役割を対応させ、同じ資本政策表と同じ定款案を見ながら協議すべき範囲を読み取ってください。

専門家・実務担当主な役割
弁護士種類株式の法的設計、投資契約、株主間契約、手続瑕疵リスク、紛争予防
企業内弁護士・法務担当経営方針との整合、社内調整、取締役会・株主総会準備、契約管理
外部弁護士会社法、M&A、ファイナンス、訴訟リスク、上場準備の専門助言
司法書士定款変更登記、発行可能種類株式総数・各種類株式内容の登記、添付書面確認
税理士発行価額、取得・償還、みなし配当、相続・贈与、組織再編税制
公認会計士会計分類、監査対応、内部統制、IPO審査、財務諸表影響
商事法務担当株主総会・種類株主総会、議事録、招集通知、株主管理
M&A法務担当Exit条項、強制転換、ドラッグ、買主DD対応、表明保証
経営者・取締役資本政策、支配権、投資家対応、長期的な会社価値の判断

専門家の分断を避けるには、同じ資本政策表、同じ投資契約案、同じ定款案、同じ登記予定文言を使って検討することが重要です。法務、税務、会計、登記の確認時期がずれると、条件修正のコストが大きくなります。

Section 13

種類株式発行のための定款記載事項のまとめ

会社の将来を拘束する定款設計として、順序立てて検討します。

種類株式発行のための定款記載事項は、会社法108条2項を中心に、単なる名称ではなく、各種類株式の具体的内容と発行可能種類株式総数を記載する制度として理解する必要があります。資金調達、事業承継、ジョイントベンチャー、経営権調整、投資家保護、M&A、企業再生で有効ですが、曖昧な定款記載は登記、手続、紛争、将来の資金調達や上場に大きく影響します。

実務上の検討順序

  1. なぜ種類株式が必要なのかを明確にします。
  2. 会社法108条1項のどの類型を使うのかを特定します。
  3. 会社法108条2項の定款記載事項を漏れなく整理します。
  4. 発行可能株式総数と発行可能種類株式総数を整合させます。
  5. 定款変更、種類株主総会、株主全員同意、種類株主全員同意の要否を確認します。
  6. 登記される表現として明確かを確認します。
  7. 投資契約、株主間契約、税務、会計、上場準備、M&Aとの整合を確認します。
まとめ種類株式の定款設計は会社の将来を拘束します。短期的な資金調達条件だけでなく、成長、退出、承継、紛争予防、ガバナンスを見据えて設計することが重要です。
Reference

この記事の参考情報源

法令・公的資料

  • 会社法(平成17年法律第86号)第105条、第107条、第108条、第109条、第111条、第113条、第114条、第115条、第116条、第199条、第200条、第201条、第202条、第309条、第322条、第323条、第324条、第466条、第911条、第915条等 ― e-Gov法令検索
  • 会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第20条等 ― e-Gov法令検索
  • 法務省民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」
  • 日本公証人連合会「定款等記載例」
  • 日本公証人連合会「株式会社の定款記載例4(大規模な会社)」
  • JETRO「会社の定款記載事項」