企業法務、人事労務、コンプライアンス、現場管理が同じ基準で動けるよう、2026年10月1日の義務化を踏まえた規程設計、初動、証拠保全、取引先対応、内部監査を整理します。
正当な苦情を尊重しながら、社会通念上相当な範囲を超える言動から労働者を守るための統制文書です。
正当な苦情を尊重しながら、社会通念上相当な範囲を超える言動から労働者を守るための統制文書です。
顧客・取引先からのハラスメントへの対応規程は、単なるクレーム対応マニュアルではありません。労働者の安全と尊厳を守り、正当な苦情や取引上の協議を適切に受け止めながら、暴言、脅迫、執拗な要求、土下座要求、性的言動、SNS上の晒し行為、契約外の過大要求に組織として対応するための企業法務上の統制文書です。
2026年5月24日時点の制度整理では、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。対応規程は、法的義務への対応文書、安全配慮文書、現場対応の業務標準、取引先との紛争予防文書、個人情報と証拠管理の統制文書として設計することが重要です。
この重要ポイントは、対応規程が何を守る文書かを示しています。経営、法務、人事、現場が目的を共有するために重要であり、顧客排除ではなく、正当な苦情の尊重と労働者保護を同時に実現する文書として読み取ることが大切です。
正当な意見、苦情、要望を改善に生かしながら、人格否定、長時間拘束、過大要求、SNSでの名指し攻撃などを組織として止めることが、持続可能な取引と安全な職場を支えます。
次の一覧は、対応規程が担う主要な役割を表しています。読者にとって重要なのは、規程を一つの部署だけの文書にせず、現場保護、記録、取引判断、監査までつながる文書として設計する点です。各項目を見て、自社の既存規程やマニュアルで不足している領域を読み取ってください。
会社が正当な苦情を尊重しつつ、社会通念上相当な範囲を超える言動に毅然と対応する姿勢を示します。
単独対応回避、上長交代、退避、退店要請、電話終了、警察通報など、現場が迷わず安全確保に動ける基準を定めます。
録音録画、メール、SNS、対応記録、保存責任者、アクセス権限を整理し、後日の労務紛争や内部監査に備えます。
次の比較表は、顧客・取引先からのハラスメントへの対応規程と周辺文書の役割の違いを表しています。読者にとって重要なのは、どの文書に何を書き、どこを重複させずに連動させるかです。表では、社内ルール、現場手順、契約条項、個人情報管理の分担を確認してください。
| 文書 | 主な役割 | 対応規程との関係 |
|---|---|---|
| 就業規則 | 服務規律、不利益取扱い禁止、懲戒、相談協力を定めます。 | 労働者側の義務と保護の根拠を補います。 |
| ハラスメント防止規程 | 社内のパワハラ、セクハラ、マタハラなどの相談体制を定めます。 | 相談窓口や調査体制を共通化できます。 |
| クレーム対応マニュアル | 通常苦情、品質不良、返金、謝罪、代替品提供などの業務手順を定めます。 | 正当な苦情と不当な言動を分ける運用に接続します。 |
| 個人情報管理規程 | 録音録画、相談記録、顧客情報、SNS対応の取扱いを定めます。 | 証拠保全とプライバシー保護の限界を明確にします。 |
| 取引基本契約 | 取引先によるハラスメント防止、協力義務、是正、解除を定めます。 | BtoB事案で相手方事業主へ協力を求める根拠になります。 |
2026年10月1日の義務化、厚生労働省指針、東京都条例、安全配慮義務を規程に落とし込みます。
厚生労働省は、令和7年改正により、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となり、施行日は令和8年10月1日であると公表しています。政府広報オンラインも、2025年6月の法改正を受け、2026年10月1日から企業等にカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置が義務付けられると説明しています。
この時系列は、法改正、指針、自治体動向、安全配慮義務の位置付けを表しています。読者にとって重要なのは、施行日だけでなく、指針が示す相談体制、事後対応、プライバシー保護、不利益取扱い禁止を事前に制度化する点です。順番を追って、自社でいつまでにどの文書を整えるかを読み取ってください。
東京都カスタマーハラスメント防止条例が施行され、正当なクレーム等の権利に留意しながら、著しい迷惑行為を防止する姿勢が示されました。
カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置が事業主の義務となる方向が明確になりました。
定義、相談体制、迅速な事後対応、悪質事案への抑止措置、プライバシー保護、不利益取扱い禁止が整理されました。
企業は方針周知、相談体制、事実確認、被害者配慮、再発防止を雇用管理上の義務として運用する準備が求められます。
厚生労働省指針は、職場で行われる顧客等の言動で、労働者の業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超え、その結果として労働者の就業環境が害されるものをカスタマーハラスメントとして整理しています。顧客等からの苦情すべてが対象になるわけではなく、客観的に社会通念上許容される正当な申入れは区別されます。
次の表は、規程に入れるべき法制度上の要素を表しています。読者にとって重要なのは、法令名を並べるだけでは運用できないため、各制度をどの条項や手順に反映するかを明確にすることです。表では、定義、対象範囲、措置、地域動向、安全配慮のつながりを読み取ってください。
| 論点 | 制度上の整理 | 規程での反映 |
|---|---|---|
| 定義 | 顧客等の言動が社会通念上相当な範囲を超え、就業環境を害するものです。 | 要求内容、手段態様、頻度、継続性、労働者の状態を総合考慮する条項を置きます。 |
| 対象となる顧客等 | 利用者だけでなく、潜在顧客、取引先、今後取引する可能性がある者、施設近隣住民も含まれ得ます。 | 店舗、電話、訪問先、オンライン会議、取引先事務所など広い接点を含めます。 |
| 措置義務 | 方針周知、相談体制、事後対応、抑止措置、プライバシー保護、不利益取扱い禁止が中心です。 | 相談窓口、事実確認、被害者配慮、記録保存、再発防止を一体化します。 |
| 東京都条例 | 何人もカスタマーハラスメントを行わないこと、正当な顧客の権利に留意することが示されています。 | 国の指針に加え、自治体や業界の手引を参照する見直し条項を置きます。 |
| 安全配慮義務 | 社外者による行為でも、予見可能な危険を放置した場合に問題となる可能性があります。 | 一人対応回避、上長代替、メンタルヘルス相談、警察相談の基準を定めます。 |
安全配慮義務との関係では、労働契約法5条が定める生命、身体等の安全への配慮が背景になります。NHKサービスセンター事件では、マニュアルや対応ルール、メンタルヘルス相談体制が評価されました。他方、甲府市・山梨県(市立小学校教諭)事件では、保護者対応で担当者に謝罪を強いる対応が二次被害につながるリスクを示しています。規程では、現場任せにせず、上長代替、相談、記録、警察相談、専門家連携、メンタルケアを組織対応として明確にすることが重要です。
要求内容が正当でも手段が著しく不相当な場合、または手段が穏当でも要求が契約外で過大な場合を分けて見ます。
顧客の不満、苦情、改善要求、補償請求、価格交渉は、それ自体として違法でも不当でもありません。企業側に契約不履行、品質不良、説明不足、納期遅延、接客不備、個人情報事故、表示誤認などがあれば、顧客や取引先が説明や改善を求めることは自然です。
一方で、要求内容が正当でも、その手段が著しく不相当であればハラスメントになり得ます。納品不良の指摘自体は正当でも、人格否定、深夜の連続電話、社内処分や土下座要求、SNSへの氏名や顔写真の投稿示唆が加わると、要求実現の手段として許容範囲を超える可能性があります。
この判断の流れは、現場が短時間で一次判断をするための順番を表しています。読者にとって重要なのは、顧客を一律に拒むことでも、担当者に我慢を強いることでもなく、要求の根拠、手段、影響、会社側の原因を分けて確認する点です。上から順に見て、どの段階で上長や法務へつなぐかを読み取ってください。
契約、法令、約款、保証内容、業界慣行に根拠があるかを確認します。
商品、サービス、取引内容との関連性、金額、期間、頻度、作業量、謝罪方法を整理します。
暴力、脅迫、侮辱、土下座要求、居座り、執拗な電話、SNS投稿、盗撮、性的言動の有無を見ます。
相談窓口、法務、人事、危機管理へつなぎ、必要に応じて対応を中止します。
説明、調査、補償、謝罪、品質改善を通常手順で進めます。
次の一覧は、規程で確認すべき八つの判断軸を表しています。読者にとって重要なのは、ひとつの要素だけで決めず、会社側の原因や合理的配慮も含めて総合的に見ることです。各項目を、自社の現場がチェックできる言葉に置き換えられるか確認してください。
契約、法令、約款、利用規約、保証内容、業界慣行に基づく要求かを確認します。
商品、サービス、取引内容との関連性があり、担当者個人への私的要求に移っていないかを見ます。
金額、期間、頻度、作業量、謝罪方法が過大になっていないかを確認します。
暴力、脅迫、侮辱、土下座要求、居座り、SNS投稿、性的言動などがないかを見ます。
一回限りか、繰り返し又は長時間に及ぶかを記録します。
担当者の心身、他顧客対応、業務遂行、職場秩序に支障が出ているかを確認します。
商品不良、説明不足、接客不備など、会社側に改善すべき事情があるかを分けて見ます。
障害、認知症、高齢、言語、文化、緊急性など、対応上考慮すべき事情を確認します。
次の表は、典型的なハラスメント類型と規程上の扱いを表しています。読者にとって重要なのは、行為名を並べるだけでなく、どの類型でどの部門や外部機関に接続するかを決めることです。表では、現場が抱え込まずに報告すべき行為を読み取ってください。
| 類型 | 実務例 | 規程上の対応 |
|---|---|---|
| 身体的攻撃型 | 殴る、蹴る、物を投げる、つばを吐く、身体を押す、立ちはだかる行為です。 | 安全確保、退避、警察通報、役員報告の基準を明記します。 |
| 精神的攻撃型 | 侮辱、人格否定、脅迫、名誉毀損、SNSでの晒し予告、土下座要求です。 | 上長交代、記録化、警告、法務相談へ進みます。 |
| 拘束・反復型 | 長時間電話、居座り、退去拒否、同一内容の反復連絡です。 | 対応時間の上限、電話終了、窓口一本化を定めます。 |
| 過大要求型 | 契約外の無償対応、過大補償、担当者処分要求、役員謝罪要求です。 | 契約根拠の有無を確認し、書面回答や取引条件見直しへ進みます。 |
| 性的・差別的言動型 | わいせつ発言、性的質問、交際要求、身体接触、属性への侮辱です。 | 被害者保護、接触遮断、外部専門家や警察相談を検討します。 |
| デジタル攻撃型 | 顔写真や名札の晒し、レビュー荒らし、録音録画の悪用です。 | SNS保存、削除申請、広報、情報セキュリティ、法務が連携します。 |
| BtoB不当要求型 | 発注権限を背景にした私的便宜、契約外作業、無償出張、協賛金要求です。 | 営業責任者、法務、人事、経営で取引継続判断を行います。 |
対応規程は、目的、定義、適用範囲、相談、記録、措置、教育、監査までを一体で構成します。
対応規程の目的は、現場にどこまで対応し、どこから断るかを明確にすることです。同時に、会社が労働者を守る意思を制度化し、正当な苦情まで一律に拒む誤対応を防ぐことも目的です。規程があっても、現場が使えない、相談窓口が機能しない、録音録画が個人情報保護に対応していない、取引先への協力依頼や警告書の責任者が不明確な場合、制度として機能しません。
次の一覧は、対応規程に求められる機能を整理しています。読者にとって重要なのは、方針だけを定めるのではなく、予防、現場保護、証拠管理、相談、調査、措置、ケア、再発防止、監査までをつなげることです。自社の規程案で不足している機能を読み取ってください。
対象となる顧客等、禁止行為、正当な苦情の尊重、商品説明や契約管理の改善を定めます。
一人対応回避、上長交代、緊急退避、相談窓口、広い相談範囲、不利益取扱い禁止を定めます。
録音、録画、メール、SNS、警告、入店禁止、契約解除、警察や専門家との連携を定めます。
管理職研修、現場研修、営業購買研修、役員報告、内部監査、年1回以上の見直しを定めます。
次の表は、対応規程の章立て案を表しています。読者にとって重要なのは、顧客対応の現場判断と会社としての管理判断を分離し、現場には危険回避と一次記録、管理部門には事実認定、法的評価、措置決定、再発防止を割り当てる点です。表では、条項の並びと責任分担を確認してください。
| 領域 | 入れる項目 | 設計上の狙い |
|---|---|---|
| 基本設計 | 目的、基本方針、定義、適用範囲、正当な苦情等の尊重 | 顧客軽視ではなく、正当な申入れと不当な言動を分ける姿勢を示します。 |
| 現場対応 | 禁止行為、報告義務、緊急退避、管理監督者の初期対応 | 危険がある場合に対応継続より安全確保を優先できるようにします。 |
| 調査と記録 | 相談窓口、事実確認、証拠保全、録音録画、個人情報管理 | 感情的評価ではなく、客観的事実を後日確認できる状態にします。 |
| 被害者保護 | 担当者交代、接触遮断、休養、産業医、カウンセリング、不利益取扱い禁止 | 事実認定の完了を待たず、暫定的な安全と健康を確保します。 |
| 相手方対応 | 口頭注意、文書警告、窓口限定、入店禁止、取引先協力、契約解除 | 事案の程度に応じて必要かつ相当な措置を選べるようにします。 |
| 統制 | 警察、弁護士、行政機関との連携、SNS、広報、教育研修、再発防止、保存期間、見直し | 重大事案、広報、監査、経営報告まで接続します。 |
安全優先、単独対応回避、記録化を三原則にし、レベル分類と現場文言を準備します。
現場対応の三原則は、安全優先、単独対応回避、記録化です。身体的危険、脅迫、性的言動、拘束、深夜対応がある場合は、説明継続より安全確保を優先します。可能な限り複数名で対応し、上長又は管理者に交代します。日時、場所、相手、要求内容、言動、対応者、証拠、被害状況を記録します。
この手順図は、現場が最初に取る対応の順番を表しています。読者にとって重要なのは、現場担当者へ法的判断を押し付けず、危険の有無と上長接続を先に決めることです。上から下へ、通常苦情として続ける場面と、対応を中止又は限定する場面を読み取ってください。
暴力、脅迫、性的言動、拘束、深夜対応、退去拒否がないかを確認します。
上長、店舗責任者、SV、プロジェクト責任者に接続し、複数名対応に切り替えます。
相手方の要求、問題言動、会社側の説明、不備の有無、証拠を整理します。
対応中止、退店要請、電話終了、警察通報を含めて安全を優先します。
対応者交代、連絡窓口の指定、書面回答、継続的な記録化へ進みます。
次の表は、レベル分類と対応の目安を表しています。読者にとって重要なのは、レベルが上がるほど、現場単独ではなく管理部門、法務、役員、警察へ接続する点です。表では、通常苦情、警戒、重大事案、経営判断事案の違いを読み取ってください。
| レベル | 事案の目安 | 主な対応 |
|---|---|---|
| レベル1 | 通常苦情又は注意事案です。言動は冷静で、通常の苦情対応で処理できます。 | 事実確認、説明、改善、補償、謝罪を通常手順で進めます。 |
| レベル2 | 声を荒らげる、同じ要求を繰り返す、長時間拘束する、要求が過大になり始める事案です。 | 上長報告、複数名対応、対応時間の管理、記録化を行います。 |
| レベル3 | 人格否定、侮辱、土下座要求、SNS投稿示唆、性的言動などがある事案です。 | 上長交代、相談窓口報告、接触遮断、必要に応じて警告を検討します。 |
| レベル4 | 暴行、傷害、脅迫、恐喝、監禁、不退去、不同意わいせつ、個人情報晒しがある重大事案です。 | 警察、法務、危機管理、役員報告へ接続します。 |
| レベル5 | 大口取引先、公共性の高いサービス停止、契約解除、仮処分、損害賠償、記者対応、行政報告を要する事案です。 | 経営判断として、法務、営業責任者、人事、広報、役員で対応方針を決めます。 |
次の表は、現場で使う説明文言の例を表しています。読者にとって重要なのは、感情的対立を避けながら境界を明確にし、担当者がその場で言葉を探さずに済むようにすることです。表では、通常苦情、暴言、長時間対応、退店要請、警察相談の文言差を確認してください。
| 場面 | 文言例 | 狙い |
|---|---|---|
| 通常苦情 | ご指摘ありがとうございます。内容を確認し、当社で対応できる範囲を整理いたします。 | 正当な苦情を尊重する姿勢を示します。 |
| 暴言の一次制止 | ご説明は承りますが、人格を否定する発言や大声での叱責が続く場合、このまま対応を継続できません。 | 会話継続の条件を明確にします。 |
| 長時間対応の終了 | 必要な説明は行いました。同じ内容の要求が続いているため、本日の対応はここまでといたします。今後は窓口を通じてご連絡ください。 | 対応終了と窓口限定を示します。 |
| 電話終了予告 | 暴言が続く場合、通話を終了いたします。通常の会話に戻していただける場合は引き続き承ります。 | 終了前に条件を明示します。 |
| 退店要請 | 他のお客様と従業員の安全確保のため、これ以上の店内での対応はできません。本日はご退店をお願いします。 | 安全確保を理由として伝えます。 |
| 警察相談の予告 | 脅迫に当たる可能性のある発言がありました。安全確保のため、警察への相談を含めて対応します。 | 重大化した場合の接続先を示します。 |
相談体制は広く、事実確認は客観的に、被害者保護は事実認定の完了を待たずに実施します。
カスハラは、発生現場で即時対応が必要になることが多いため、事後相談窓口だけでは不十分な場合があります。規程では、現場一次相談、専門相談、独立相談の三層を置き、現実に生じた事案だけでなく、発生のおそれがある事案、該当性が微妙な事案、心理的負荷が高い事案にも広く対応する設計が重要です。
次の一覧は、相談、事実確認、記録、被害者配慮を並べて表しています。読者にとって重要なのは、相談を受けた後に何を確認し、誰が保存し、どのように被害者を守るかまで一連で決めることです。各項目から、自社の運用責任者と接続先を読み取ってください。
直属上長、店舗責任者、SV、プロジェクト責任者、人事労務、法務、コンプライアンス、内部通報窓口、外部窓口、EAP、産業医を組み合わせます。
広く受け付け日時、場所、相手、要求内容、言動、会社側の説明、商品や契約上の問題、録音録画、メール、SNS、心身への影響を確認します。
客観資料受付番号、発生日、部署、行為者情報、事案レベル、証拠資料、初期措置、配慮措置、相手方対応、保存期限、アクセス権限を記録します。
保存責任者担当者交代、別室待機、退避、休憩、早退、通院許可、産業医相談、EAP紹介、複数名対応、接触遮断を検討します。
暫定保護次の表は、事実確認で集める情報を表しています。読者にとって重要なのは、感情的な評価ではなく、後日の労務紛争、取引先協議、警察相談、裁判、労災、内部監査でも確認できる客観情報にすることです。表では、何を一枚の記録票に残すかを読み取ってください。
| 確認領域 | 確認項目 | 記録上の注意 |
|---|---|---|
| 事案情報 | 発生日時、場所、対応チャネル、事業所、部署、受付番号、報告日です。 | 店舗、電話、メール、チャット、SNS、訪問先、オンライン会議を区別します。 |
| 関係者 | 行為者の氏名、所属、連絡先、顧客番号、契約関係、対応者、同席者、目撃者です。 | 本人確認が困難な場合は識別情報やアカウントも記録します。 |
| 内容 | 要求内容、問題言動の具体例、会社側の説明、商品や契約上の問題の有無です。 | 要求の根拠と手段の相当性を分けて書きます。 |
| 証拠 | 録音、録画、メール、チャット、SNS投稿、通話ログ、防犯カメラ、写真、目撃者です。 | 保存場所、保存責任者、アクセス権限を併記します。 |
| 影響と措置 | 担当者の心身への影響、業務への影響、初期措置、配慮措置、再発防止、完了日です。 | 休職、退職、異動希望につながる兆候も記録します。 |
次の注意項目は、録音録画と個人情報保護の運用上の限界を表しています。読者にとって重要なのは、証拠保全として有効でも、利用目的、通知又は公表、アクセス制限、第三者提供、漏えい防止が必要になる点です。各項目から、プライバシーポリシーや店舗掲示に何を書くべきかを読み取ってください。
安全確保、事実確認、紛争対応、再発防止、品質改善に使うことをできる限り具体化します。
通話、対面、オンライン会議、防犯カメラ、メール、チャット、SNSのどれを記録するかを示します。
プライバシーポリシー、店舗掲示、通話冒頭アナウンス、利用規約で利用目的を案内します。
保存期間、暗号化、アクセス権限、持ち出し禁止、保存期間経過後の削除を定めます。
関係部門、弁護士等の専門家、警察、行政、裁判所への必要な範囲での利用を整理します。
私的端末への保存、SNS共有、関係者外への転送、目的外利用を禁止します。
発注権限や継続取引を背景にした不当要求は、営業個人ではなく組織として扱います。
取引先からのハラスメントは、消費者からのカスハラと異なる難しさがあります。発注権限、継続取引、下請構造、営業成績、価格交渉、品質問題、納期遅延、プロジェクト進行、保守対応、常駐、派遣、委託、フリーランスなどが絡むためです。担当者が取引を失う不安から相談をためらいやすく、営業部門が短期売上を優先して被害を軽視する場合もあります。
次の一覧は、BtoBカスハラで規程と契約に分けて決める事項を表しています。読者にとって重要なのは、現場担当者に取引継続判断を背負わせず、法務、営業責任者、人事、経営が関与する基準を置くことです。各項目から、社内規程だけで足りない契約上の協力義務を読み取ってください。
相手方役員又は従業員による言動について、事実確認、担当者変更、教育、注意、再発防止の協力を求める手順を定めます。
BtoB営業、購買、品質、プロジェクト管理、委託管理などで、自社が優越的立場を利用して不当要求を行わないよう研修します。
双方向口頭注意、書面警告、窓口限定、面談拒否、電話対応停止、入店禁止、取引条件変更、契約解除、法的手続を段階的に整理します。
段階対応次の表は、警告書と協力依頼文に入れる要素を表しています。読者にとって重要なのは、感情的な非難ではなく、事実、根拠、要請、今後の措置を簡潔に示すことです。表では、本人宛の警告と相手方事業主への協力依頼の違いを読み取ってください。
| 文書 | 記載する要素 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 警告書 | 宛先、発行日、発行者、対象事案の日時と場所、問題言動、会社方針、今後中止を求める行為、連絡窓口、再発時の措置です。 | 正当な意見や苦情を確認する姿勢を残しながら、人格否定、長時間拘束、SNS示唆などを具体化します。 |
| 協力依頼文 | 対象事案の概要、従業員への影響、確認済み証拠、相手方に求める確認事項、再発防止要請、窓口、秘密保持、期限です。 | 個人情報と秘密保持に配慮し、必要に応じて契約上の措置を留保します。 |
| 社外方針文 | 意見や苦情を真摯に受け止めること、不相当な言動がある場合に対応中止、利用拒否、警察や専門家との連携を行う場合があることです。 | 顧客の正当な権利を侵害する表現にならないよう、対象行為を具体化します。 |
次の表は、取引基本契約へ入れる条項の骨子を表しています。読者にとって重要なのは、被害発生後に初めて相手方へ協力を求めるのではなく、契約時点で窓口、調査協力、是正、重大違反時の措置を合意しておくことです。表では、各条項がどの場面に効くかを読み取ってください。
| 条項 | 定める内容 | 効く場面 |
|---|---|---|
| ハラスメント防止条項 | 暴力、脅迫、侮辱、名誉毀損、人格否定、差別的言動、性的言動、長時間拘束、契約上合理性を欠く過大要求を行わないことです。 | 取引先担当者の言動を契約上の問題として扱いやすくします。 |
| 相談及び協力条項 | 相手方の役員、従業員、業務従事者による該当疑いを認識した場合、事実確認と再発防止への合理的協力を求められることです。 | 相手方事業主へ調査や再発防止を求める根拠になります。 |
| 窓口指定条項 | 重要な連絡、協力依頼、苦情、改善要請を指定責任者又は窓口を通じて行うことです。 | 担当者個人への深夜休日連絡や私的接触を避けやすくします。 |
| 是正措置条項 | 合理的な是正要請を受けた場合、調査、担当者変更、教育、注意、懲戒その他再発防止措置を講じることです。 | 継続取引を維持しながら改善を求める選択肢になります。 |
| 重大違反条項 | 重大な違反又は相当期間内に是正されない場合、業務の一部停止、窓口限定、担当者変更要請、契約解除などを講じられることです。 | 悪質事案を経営判断として処理する根拠になります。 |
BtoB事案では、独占禁止法上の優越的地位の濫用、下請法、フリーランス保護法上の不当な経済上の利益提供要請と重なる場面もあります。取引上の立場を背景にした契約外作業、私的便宜、過大値引き、発注停止の示唆は、ハラスメント対応規程だけでなく、購買規程、営業規程、委託先管理、コンプライアンス研修とも接続して管理することが重要です。
相談記録、録音録画、SNS投稿、メディア対応、業種別の公共性や合理的配慮を整理します。
カスハラ対応では、被害者、相談者、目撃者、行為者、取引先担当者の個人情報が集まります。相談記録には、健康情報、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、障害、家族、SNSアカウント、通話音声、防犯カメラ映像など、慎重に扱うべき情報が含まれる場合もあります。閲覧権限を限定し、社内共有は必要最小限とし、第三者提供や外部委託は法令と社内規程に従う設計が必要です。
次の表は、SNSとメディア対応で確認すべき事項を表しています。読者にとって重要なのは、被害者本人に直接反論させず、広報、法務、情報セキュリティ、個人情報保護担当が連携することです。表では、保存、削除申請、社外公表の判断順を読み取ってください。
| 場面 | 対応項目 | 注意点 |
|---|---|---|
| SNS投稿 | スクリーンショット、URL、投稿日時、アカウント、拡散状況を保存します。 | 被害者本人へ反論や削除交渉をさせない設計にします。 |
| 削除申請 | プラットフォームへの削除申請、名誉毀損、侮辱、脅迫、業務妨害の可能性を検討します。 | 法務、情報セキュリティ、広報、外部専門家で連携します。 |
| 発信者対応 | 必要に応じて発信者情報開示、仮処分、警察相談を検討します。 | 証拠保全と被害者保護を先に行います。 |
| メディア対応 | 正当な意見や苦情を尊重する姿勢、従業員保護、法令に基づく対応、再発防止を簡潔に説明します。 | 被害者の氏名、部署、心理状態、映像を安易に公表しないようにします。 |
次の一覧は、業種ごとの留意点を表しています。読者にとって重要なのは、同じ規程でも、店舗、電話、医療介護、教育、建設物流、ITでは危険の現れ方と法的制約が異なる点です。各領域から、自社の業種別マニュアルに追加すべき運用を読み取ってください。
入店、退店、会計、返品、予約、接客態度、待ち時間、酒類提供、宿泊拒否が問題になりやすく、店長権限、退店要請、防犯カメラ、深夜帯の安全確保が重要です。
通話録音、電話終了基準、SV転送、反復電話、わいせつ電話、在宅オペレーターの孤立防止、メンタルヘルス相談が重要です。
保護者対応、児童生徒対応、学校行事、SNS、謝罪要求、家庭訪問が問題になりやすく、管理職、法人本部、教育委員会、専門家との連携が重要です。
現場常駐、元請下請、納期、品質、事故、追加作業、近隣住民対応が中心となり、契約外作業や長時間拘束への対応を明確にします。
障害対応、仕様変更、SLA、深夜休日対応、チャット上の暴言、スクリーンショット晒し、追加開発の無償要求に備えます。
条文例、記録様式、導入プロジェクト、内部監査を一体で整備します。
社内規程の条文例は、業種、規模、就業規則、既存規程、個人情報保護体制、業法、労使慣行に応じて修正する前提で使います。第1条から第24条までを置くと、目的、基本方針、定義、緊急退避、相談、記録、録音録画、被害者配慮、相手方対応、取引先協力、自社が加害者側にならない教育、保存期間、見直しまでを網羅しやすくなります。
保存期間は、原則として事案終結日から5年間とする設計が考えられます。ただし、訴訟、労災、刑事事件、行政対応、契約紛争などが続く場合は、その必要性が残る期間は保存する整理が実務的です。
次の表は、規程ひな形の条項構成を表しています。読者にとって重要なのは、条文をそのまま置くだけでなく、各条文を運用担当、様式、研修、契約条項へ接続することです。表では、24条のうち、どの条項が現場、管理、統制のどこを担うかを読み取ってください。
| 条項 | 主な内容 | 運用上の接続先 |
|---|---|---|
| 第1条から第5条 | 目的、基本方針、定義、適用範囲、正当な苦情等の尊重です。 | 就業規則、ハラスメント防止規程、顧客向け方針文と接続します。 |
| 第6条から第8条 | 対象となる言動、従業員等の報告及び緊急退避、管理監督者の初期対応です。 | 現場マニュアル、レベル分類、対応文言、警察通報基準と接続します。 |
| 第9条から第12条 | 相談窓口、事実確認、証拠保全及び記録、録音録画及び個人情報です。 | 相談受付票、記録票、プライバシーポリシー、アクセス権限管理と接続します。 |
| 第13条から第15条 | 被害者への配慮措置、行為者への対応、取引先等への協力依頼です。 | 担当者交代、接触遮断、警告書、協力依頼文、契約条項と接続します。 |
| 第16条から第20条 | 自社役職員による他社労働者へのハラスメント防止、警察等との連携、SNS及び広報、プライバシー保護、不利益取扱い禁止です。 | 営業購買研修、広報手順、内部通報、懲戒規程、情報セキュリティ規程と接続します。 |
| 第21条から第24条 | 教育研修、再発防止及び業務改善、保存期間、見直しです。 | 年次研修、内部監査、経営報告、年1回以上の改定確認と接続します。 |
次の表は、対応記録様式に入れる項目を表しています。読者にとって重要なのは、受付番号からアクセス権限までを同じ様式で残し、後日の労務紛争、取引先協議、警察相談、裁判、労災、内部監査に耐えられる記録にすることです。表では、漏れやすい項目を確認してください。
| 区分 | 記録項目 |
|---|---|
| 基本情報 | 受付番号、作成日、作成者、発生日、発生時刻、発生場所又はチャネル、部署、対応者、相談者です。 |
| 相手方情報 | 行為者氏名又は識別情報、行為者属性、契約又は案件番号、顧客番号です。 |
| 内容整理 | 事案レベル、要求内容、問題言動の具体的内容、会社側の説明内容、会社側の不備の有無です。 |
| 証拠と影響 | 録音、録画、メール、チャット、SNS、写真、防犯カメラ、目撃者、被害者の心身への影響、業務への影響です。 |
| 対応と保存 | 初期対応、上長報告日時、相談窓口受付日時、取引先への協力依頼の要否、警察や専門家への相談の要否、被害者配慮措置、行為者への対応、再発防止策、完了日、保存責任者、アクセス権限です。 |
次の時系列は、導入プロジェクトの進め方を表しています。読者にとって重要なのは、規程だけを作って終わりにせず、実態調査、マニュアル、研修、契約、監査まで段階的に進めることです。順番を追って、参加部門と成果物を読み取ってください。
経営層、法務、人事労務、コンプライアンス、現場部門、個人情報保護担当、情報システム、広報、内部監査、外部専門家を参加させます。
過去3年の苦情、暴言、長時間対応、SNS事案、退職や休職との関連、既存マニュアル、録音録画の保存状況、契約条項、研修状況を確認します。
規程は全社ルール、マニュアルは現場手順、研修は行動定着のための手段として整備します。
取引基本契約、利用規約、店舗掲示、コールセンター案内、Webサイト方針を連動させます。
相談件数、重大事案、改善施策、教育実施状況、記録保存、年1回以上の見直しを経営へ報告します。
次の表は、内部監査で確認する20項目を表しています。読者にとって重要なのは、規程の有無だけでなく、現場理解、相談後の不利益取扱い、録音録画の個人情報対応、取引先協力、役員報告、年次見直しまで見ることです。表では、監査チェックリストとして使うべき観点を読み取ってください。
| 領域 | 確認項目 |
|---|---|
| 規程と周知 | 対応規程が制定され、2026年10月1日施行の義務化に対応し、正当な苦情との区別、広い顧客等の定義、全労働者への方針周知があるかを確認します。 |
| 相談と初動 | 相談窓口が機能し、現場が一人対応を回避でき、被害者配慮と不利益取扱い禁止が運用されているかを確認します。 |
| 記録と個人情報 | 録音録画の利用目的が公表され、記録様式、保存責任者、アクセス権限、SNS対応手順が明確かを確認します。 |
| 相手方対応 | 取引先への協力依頼手順、自社役職員が加害者側にならない研修、警告、入店禁止、契約解除の基準、業法や合理的配慮の例外判断があるかを確認します。 |
| 統制と改善 | 重大事案の役員報告基準、警察や専門家との連携基準、年1回以上の見直し、相談件数や改善施策の経営報告があるかを確認します。 |
よくある誤解を、一般的な制度説明として整理します。個別の結論は事情によって変わります。
次の一覧は、対応規程の導入時に起きやすい誤解を表しています。読者にとって重要なのは、顧客軽視、録音録画、出入り禁止、大口取引先、会社側ミスといった論点で、制度の趣旨を誤らないことです。各回答では、一般的な考え方と個別判断の限界を読み取ってください。
一般的には、正当な苦情は業務改善の重要な情報として尊重されます。ただし、暴力、脅迫、人格否定、長時間拘束などの不相当な言動まで受け入れる制度ではありません。具体的な対応は、事案の内容と証拠を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、顧客等には取引先、施設利用者、潜在顧客なども含まれ得るため、所属部署や雇用形態を問わない周知が求められます。ただし、業種や接点によって研修内容は変わります。具体的には、自社の対外接点を棚卸しして設計する必要があります。
一般的には、録音録画は証拠保全として有効な場合があります。ただし、個人情報に該当する場合、利用目的の特定、通知又は公表、保存管理、アクセス制限が必要です。具体的な利用範囲は、プライバシーポリシーや社内規程と合わせて確認する必要があります。
一般的には、出入り禁止を方針に入れても、すべての事案で機械的に実施するものではありません。法令、契約、業法、公共性、合理的配慮、危険性、再発可能性によって判断が変わります。具体的な措置は、資料を整理したうえで弁護士等へ相談する必要があります。
一般的には、大口取引先であっても、従業員の安全と就業環境への配慮は重要です。ただし、契約関係、代替可能性、事案の重大性、取引への影響によって対応方針は変わります。現場担当者へ判断を委ねず、法務、営業責任者、人事、経営で検討する必要があります。
一般的には、会社側の不備は改善、補償、謝罪の対象になり得ます。ただし、そのことだけで暴力、脅迫、侮辱、長時間拘束、性的言動などが正当化されるわけではありません。会社側の改善点と不相当な言動は分けて確認する必要があります。