相談窓口を置くだけでなく、受付、初動、調査、配慮措置、秘密保持、不利益取扱い禁止、記録管理、再発防止までを条項化するための企業法務向け整理です。
相談先を置くだけでなく、受付、調査、配慮措置、記録、再発防止までを一体で設計します。
相談先を置くだけでなく、受付、調査、配慮措置、記録、再発防止までを一体で設計します。
ハラスメント相談窓口設置に関する規程条項は、メールアドレスを掲示するための短い条文ではありません。労働者が安心して相談でき、会社が迅速かつ公正に事実確認を進め、相談者、行為者とされる者、調査協力者のプライバシーと手続的公正を守るための運用基盤です。
次の一覧は、相談窓口条項が担う七つの機能を整理したものです。どの機能が欠けると初動遅れ、情報漏えい、不利益取扱い、懲戒手続の不備につながるかを確認することが重要です。
誰に、どの方法で、どの範囲の相談ができるかを定め、全ての労働者へ周知します。
発生済みの被害だけでなく、おそれがある段階や該当性が微妙な段階も受け付けます。
安全、健康、証拠保全、報復防止を早期に見極め、必要な範囲で関係部署につなぎます。
相談者の保護と、行為者とされる者の名誉や弁明機会の双方に配慮して確認します。
健康情報、性的指向、性自認、妊娠、不妊治療などの機微な情報を最小限に扱います。
相談、調査協力、行政機関への相談等を理由とする解雇、降格、評価不利益、孤立化を防ぎます。
受付、判断、共有範囲、措置、再発防止を記録し、監査や紛争時に説明できる状態にします。
このページでは、法令と行政指針を踏まえ、定義、法的根拠、中核要素、実務設計、条項例、逐条の意図、内部通報制度や個人情報保護との接続、会社規模別の設計、監査項目、FAQまでを一続きで整理します。
相談、苦情、通報、申告を区別し、窓口の対象範囲を曖昧にしないことが出発点です。
規程上の相談窓口は、物理的な受付場所に限られません。社内担当者、人事労務、法務、コンプライアンス、内部監査、監査役等、外部専門家、電話、メール、ウェブフォーム、面談、オンライン面談、匿名受付、緊急連絡先を組み合わせた制度として設計します。
次の比較表は、実務で混同されやすい言葉の違いを表しています。どの言葉を使うかで受付後の期待値や保護ルールが変わるため、規程では意味と処理の入口をそろえることが重要です。
| 用語 | 主な意味 | 条項設計での注意点 |
|---|---|---|
| 相談 | ハラスメントか分からない段階の問い合わせや不安の表明を含みます。 | 正式申告前でも広く受け付け、門前払いを避けます。 |
| 苦情 | 不快感、就業環境の悪化、制度利用妨害について改善を求める性質が強いものです。 | 改善要求として扱い、初動記録とフォローを残します。 |
| 通報 | 規程違反、法令違反、懲戒対象行為、公益通報対象事実を知らせるものです。 | 公益通報者保護法、従事者指定、範囲外共有防止との接続を確認します。 |
| 申告 | 社内手続に乗せることを前提にした正式な申し出として使われることが多いものです。 | 正式申告がない限り会社が動かないという誤解を避けます。 |
| 情報提供 | 本人以外の目撃者、同僚、管理職、家族等からの連絡を含みます。 | 本人確認、本人の意向、二次被害防止、匿名性の限界を整理します。 |
相談窓口条項には、労働者に相談先を示す役割、担当部署の権限と責任を明確にする役割、関係者の手続的公正を守る役割、プライバシーと個人情報を統制する役割、行政対応や紛争対応に耐える証跡を残す役割があります。
窓口の構成要素は多層的です。次の一覧は、社内と社外のどの接点を制度に入れるかを考えるためのものです。相談者の心理的安全性と会社の初動力を両立できているかを読み取ります。
人事労務、法務、コンプライアンス、内部監査などが受付と初期整理を担います。
外部専門家や外部相談機関により、相談しやすさと専門性を補います。
窓口担当者や人事責任者が関係者となる場合に備え、別の連絡先を置きます。
生命、身体、重大な健康被害、報復、証拠隠滅のおそれがある場合の連絡先を定めます。
相談窓口条項は、複数の法令と行政指針が重なる領域です。法令ごとに保護対象や措置義務が異なるため、条項では最低限の義務と会社独自の拡張範囲を分けて整理します。
次の比較表は、相談窓口条項の根拠となる主な制度と、条項に反映すべき実務上の意味を表しています。列ごとに、対象となるハラスメント、根拠、条項に落とすべき内容を読み比べてください。
| 領域 | 主な根拠 | 条項に反映する内容 |
|---|---|---|
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法第30条の2、パワーハラスメント防止指針 | 相談体制、広い受付、担当者研修、人事部門との連携、不利益取扱い禁止を明記します。 |
| セクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法第11条 | 性的な言動、対価型、環境型、同性間や性的指向・性自認に関する言動を含めます。 |
| 妊娠・出産等 | 男女雇用機会均等法第11条の3 | 健康情報、配置、評価、休業制度、産業保健との共有範囲を整理します。 |
| 育児・介護等 | 育児・介護休業法、関連指針 | 制度利用者だけでなく、周囲の労働者からの相談も扱える設計にします。 |
| カスタマーハラスメント | 2026年10月1日以降の措置義務化を見据えた制度設計 | 顧客、取引先、利用者等からの著しい迷惑行為を相談対象に含めます。 |
| 求職者等へのセクシュアルハラスメント | 2026年10月1日以降の対策義務化を見据えた制度設計 | 採用面接、インターン、内定者、会社説明会、SNS接点の相談ルートを考えます。 |
| 就業規則 | 労働基準法第89条、就業規則変更手続 | 懲戒、服務規律、調査協力、秘密保持、不利益取扱い禁止との整合を取ります。 |
全ての事業主に求められる措置であること、相談を理由とする不利益取扱いをしてはならないこと、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、プライバシーを守ることは、条項の中心に置くべき要素です。
目的、範囲、定義、受付、初動、調査、措置、秘密保持、記録までを条項化します。
中核要素は、条項に書く順番どおりに運用されるとは限りません。相談受付後は、安全確認、証拠保全、情報共有範囲の説明、暫定措置、事実確認が同時並行で進むことがあります。
次の判断の流れは、相談を受けた後にどの順番で初期対応を考えるかを表しています。上から下へ進み、途中の判断で緊急対応や専門家連携に分かれる点を読み取ってください。
相談、苦情、通報、情報提供を広く受け、日時、方法、関係者、希望を記録します。
生命、身体、健康、報復、証拠隠滅、顧客対応の危険を確認します。
接触回避、勤務調整、産業保健、外部専門家、警察等への相談を検討します。
聴取対象、資料、共有範囲、結果説明の進め方を整理します。
相談者、行為者とされる者、第三者、客観資料を確認し、配慮措置、行為者措置、再発防止につなげます。
条項に入れる要素は、漏れがあると運用の空白になります。次の比較表は、各条項で何を定めるか、なぜ必要か、監査で何を見るかを整理したものです。
| 要素 | 定める内容 | 監査で見る点 |
|---|---|---|
| 目的 | 予防、早期発見、是正、再発防止、人格と就業環境の保護、公正な手続。 | 相談者保護だけでなく、行為者とされる者や協力者の保護も入っているか。 |
| 適用範囲 | 正社員、契約社員、パート、派遣、出向、役員、休職者、内定者、求職者、業務関係者。 | 法令上の義務対象と会社独自の受付範囲を混同していないか。 |
| 定義 | パワハラ、セクハラ、妊娠・育児・介護、SOGI、顧客等からの言動。 | 抽象的すぎず、指導や正当な苦情との区別も示しているか。 |
| 窓口設置 | 名称、担当者、連絡先、受付方法、受付時間、外部窓口、代替窓口。 | 担当者変更時に周知できる仕組みか。 |
| 初動対応 | 安全確認、希望確認、情報共有範囲、証拠保全、緊急措置。 | 受け付けただけで放置されない設計か。 |
| 事実確認 | 双方聴取、第三者聴取、メール、チャット、勤怠、録音等の確認。 | 証拠がない相談を機械的に排除していないか。 |
| 配慮措置 | 接触回避、配置調整、勤務時間、休暇、産業保健、評価不利益の防止。 | 相談者だけに不利益が集中しないか。 |
| 行為者措置 | 注意、指導、研修、誓約、配置転換、接触禁止、懲戒、取引先への申入れ。 | 就業規則と比例原則に沿っているか。 |
| 秘密保持 | 氏名、所属、相談内容、健康情報、私生活情報の共有制限。 | 必要最小限の共有とアクセス制限が記録されているか。 |
| 不利益取扱い禁止 | 相談、協力、行政相談、調停申請等を理由に不利益を与えないこと。 | 報復、探索、孤立化、評価不利益を広く禁止しているか。 |
| 記録管理 | 受付、判断、調査、措置、結果説明、再発防止、保存期間、廃棄。 | リーガルホールドや個人情報リスクも考慮しているか。 |
社内窓口と外部窓口、匿名相談、調査拒否、虚偽申告、管理職報告を設計します。
実務設計では、条項の美しさよりも、相談者が実際に利用できるか、窓口担当者が迷わず動けるか、利害関係者が関与したときに迂回できるかが重要です。
次の比較表は、社内窓口と外部窓口の長所と弱点を表しています。どちらか一方を選ぶのではなく、受付、一次相談、調査、措置、健康配慮、制度評価をどの役割に分けるかを読み取ります。
| 窓口 | 強み | 弱点 | 設計上の工夫 |
|---|---|---|---|
| 社内窓口 | 組織、業務、人間関係を把握し、人事措置や職場改善につなげやすい。 | 評価や上司への漏えいを心配されやすい。 | 代替窓口、守秘、担当者研修、情報共有範囲の説明を定めます。 |
| 外部窓口 | 心理的安全性、中立性、専門性を補いやすい。 | 社内権限が弱く、会社への報告範囲を誤ると対応が遅れます。 | 委託契約で報告範囲、緊急時連携、秘密保持、利益相反を定めます。 |
| 併設型 | 相談しやすさと会社の初動力を両立しやすい。 | 入口が複数になり、制度間連携が不明確だと混乱します。 | 入口は広く、内部処理でハラスメント、公益通報、労務、個人情報へ振り分けます。 |
匿名相談や調査を望まない相談では、相談者の意向を尊重しつつ、会社として安全配慮や被害拡大防止が必要な場合があります。次の一覧は、判断時に見るべき論点をまとめたものです。
可能な範囲で受け付けますが、事実確認、措置、結果通知には限界があることを説明します。
本人の意向を尊重しつつ、重大な危険や被害拡大のおそれがある場合は最小限の対応を検討します。
故意の虚偽や証拠偽造と、認定できなかった相談を明確に分け、相談抑止を避けます。
個人的に抱え込ませず、相談者の意向とプライバシーに配慮して窓口へ連絡させます。
保存期間を一律に断定せず、紛争、労災、懲戒、個人情報リスクに応じて管理します。
多言語、やさしい日本語、通訳者の秘密保持、在留資格への不安に配慮します。
労働組合、従業員代表、グループ会社、海外拠点、親会社共通窓口を使う場合は、個人情報の共同利用、委託、第三者提供、越境移転、誰が事業主として措置を講ずるかを整理します。
20条構成と別表を使い、自社の就業規則、内部通報、個人情報保護規程へ接続します。
条項例は、そのまま貼り付けるよりも、自社の規模、雇用形態、派遣や委託の有無、外部窓口、内部通報制度、文書保存規程に合わせて調整する必要があります。次の一覧は20条構成と別表の意味を表しており、どの条項がどのリスクを抑えるかを読み取ります。
| 条項 | 定める内容 | 作成時の要点 |
|---|---|---|
| 第1条 目的 | 予防、早期発見、迅速な対応、人格・尊厳・健康・就業環境の保護。 | 相談者保護、公正手続、プライバシー保護を併記します。 |
| 第2条 定義 | パワハラ、セクハラ、妊娠・育児・介護、SOGI、顧客等からの言動、職場の範囲。 | オンライン会議、チャット、SNS、懇親会、出張先も業務関連性で含めます。 |
| 第3条 基本方針 | 会社がハラスメントを許容せず、管理職にも予防・早期対応責任を課すこと。 | 経営メッセージ、行動規範、研修に接続します。 |
| 第4条 相談窓口の設置 | 社内窓口、外部窓口、担当者、連絡先、受付方法、周知。 | 担当者名を別表化すると変更時に運用しやすくなります。 |
| 第5条 相談方法 | 面談、電話、メール、ウェブフォーム、オンライン面談、書面、匿名相談。 | 顕名原則でも匿名を可能な範囲で扱う余地を残します。 |
| 第6条 相談受付の範囲 | 発生済み、発生のおそれ、該当性が微妙な場合、職場環境上の不安。 | ハラスメントでない可能性があっても適切な制度へ案内します。 |
| 第7条 担当者の責務 | 傾聴、説明、利害関係回避、秘密保持、研修受講。 | 担当者の属人的対応を避け、マニュアルと研修を整えます。 |
| 第8条 初動対応 | 概要確認、記録、緊急性判断、必要最小限の緊急措置。 | 相談者が調査を望まない場合の例外的対応も定めます。 |
| 第9条 事実確認 | 双方聴取、第三者聴取、客観資料確認、調査協力義務。 | 相談者の心身と、行為者とされる者の名誉・弁明機会を両立します。 |
| 第10条 配慮措置 | 接触回避、業務指示系統変更、配置、勤務時間、休暇、産業保健。 | 被害を受けた可能性のある者に一方的な不利益を集中させないようにします。 |
| 第11条 行為者措置 | 注意、指導、研修、誓約、配置転換、接触禁止、懲戒、契約上の措置。 | 懲戒は就業規則、弁明機会、処分相当性へ接続します。 |
| 第12条 再発防止 | 方針再周知、研修、管理職指導、職場環境改善、規程改訂。 | 認定できなかった場合でも職場環境上の問題があれば改善を検討します。 |
| 第13条 秘密保持 | 氏名、所属、相談内容、健康情報、私生活情報の開示制限。 | 法令、安全配慮、雇用管理上必要な最小限共有の例外を置きます。 |
| 第14条 不利益取扱い禁止 | 相談、調査協力、行政相談等を理由とする解雇、降格、減給、孤立化の禁止。 | 報復、探索、口止め、情報漏えいも禁止します。 |
| 第15条 虚偽申告 | 故意の虚偽や証拠偽造への対応と、認定不能との区別。 | 相談制度の濫用対策と相談抑止防止を両立します。 |
| 第16条 記録保管 | 受付、初動、調査、措置、結果通知、再発防止の記録。 | 保存期間、アクセス権限、紛争時の保全を定めます。 |
| 第17条 外部専門家 | 弁護士、社労士、産業医、保健師、EAP、調査専門家等への委託。 | 秘密保持、個人情報、利益相反、報告範囲、再委託を契約で確認します。 |
| 第18条 内部通報連携 | 公益通報、法令違反、会計不正、情報漏えい等を含む場合の振分け。 | 従事者指定、範囲外共有防止、不利益取扱い禁止を混同しません。 |
| 第19条 教育周知 | 役員、管理職、従業員、窓口担当者への教育と周知。 | 管理職が相談を受けたときの初動を重点的に教えます。 |
| 第20条 見直し | 法改正、指針変更、相談実績、監査結果、労働環境変化に応じた改訂。 | 就業規則、労働協約、社内手続に従って改廃します。 |
| 別表 | 社内窓口、代替窓口、外部窓口、緊急連絡先の名称、担当、方法、時間、備考。 | 利害関係がある場合の引継ぎ先を具体的に置きます。 |
条項文言を整える際は、相談者が「正式申告をしないと会社は動かない」と誤解しない表現にします。また、故意の虚偽申告と認定不能を区別し、不利益取扱い禁止を広く置くことが制度への信頼を支えます。
相談窓口、公益通報、要配慮個人情報、産業保健を必要最小限の共有で接続します。
ハラスメント相談は、内部通報、個人情報保護、公益通報者保護、メンタルヘルス、懲戒、刑事事件と重なることがあります。受付窓口を分けるか統合するかよりも、内部でどう分類し、誰に何を共有するかが重要です。
次の時系列は、情報共有の範囲を段階ごとに狭く管理する考え方を表しています。左から順に進むほど関係者が増えやすいため、各段階で共有目的と共有先を記録する点を読み取ります。
相談窓口担当者と責任者に限定し、相談者へ秘密保持と共有範囲を説明します。
人事、法務、産業保健、外部専門家など、緊急措置に必要な者だけに共有します。
弁明機会のための具体性と、相談者のプライバシー保護の均衡を取ります。
配置、接触制限、研修、懲戒、再発防止に必要な管理職や部署へ限定して共有します。
要配慮個人情報を含む相談記録は、通常の人事情報より慎重な扱いが必要です。次の一覧は、相談対応マニュアルや個人情報保護規程に落とすべき管理項目を表しています。
相談確認、事実調査、関係者保護、懲戒・人事措置、再発防止、行政・紛争対応を具体化します。
診断名、性的情報、家族情報などは、意思決定に必要な範囲に限定します。
電子ファイル、紙記録、外部窓口報告、議事録の閲覧者を限定します。
要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等が疑われる場合の報告・連絡手順を定めます。
外部窓口を弁護士に委託する場合でも、相談者との関係、会社への報告範囲、緊急時の報告、利益相反時の処理を明確にする必要があります。会社の顧問弁護士が常に最適とは限らない点にも注意します。
中小企業、上場会社、医療・介護、店舗、IT・リモートでは必要な窓口設計が変わります。
同じ条項でも、会社規模や業種によって機能し方が変わります。現場が夜勤中心か、顧客接点が多いか、役員関与リスクが高いか、リモート中心かにより、窓口、記録、緊急時対応、研修の重点が変わります。
次の比較表は、会社類型ごとに相談窓口条項で追加すべき視点を表しています。自社に近い行を見て、社内窓口だけで足りるか、外部窓口や専門家連携が必要かを読み取ります。
| 会社・業種 | 起きやすい課題 | 条項・運用の重点 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 人事部門が小さく、相談者と行為者の距離が近い。 | 外部社労士、外部弁護士、業界団体、EAP等を活用しつつ、会社が措置主体であることを明確にします。 |
| 上場会社・IPO準備会社 | 経営幹部や重要部署が関与すると独立性が問題になる。 | 監査役、監査等委員、社外取締役、外部弁護士、第三者的調査へのエスカレーション基準を置きます。 |
| 医療・介護・福祉・教育 | 患者、利用者、保護者、学生、家族からの言動を職員が我慢しやすい。 | 顧客等からの言動を相談対象にし、管理職介入、警察・行政相談、チーム対応を定めます。 |
| 小売・飲食・宿泊・交通・コールセンター | 現場の非正規従業員が顧客対応を一人で抱えやすい。 | 対応打切り、録音録画、出入り禁止、SNS炎上、従業員ケアのルールを整えます。 |
| IT・スタートアップ・リモート中心 | チャット、オンライン会議、社内SNS、深夜メンションが問題になりやすい。 | オンライン上の職場、ログ保存、プライベートチャンネル、BYOD、海外メンバー対応を入れます。 |
会社別設計では、外部に丸投げしないことも重要です。外部窓口は受付や助言を補えますが、配置、懲戒、再発防止、研修、周知は会社が実施します。
不備のある条項例を修正し、規程、周知、運用、記録、内部通報接続を点検します。
相談窓口条項の不備は、文言だけでなく運用で表れます。担当者が分からない、正式申告書がないと動かない、匿名相談を排除する、認定できなかった相談を虚偽扱いする、といった設計は制度への信頼を損ないます。
次の比較表は、不備のある条項、問題点、修正方向を並べたものです。左列の文言をそのまま使っていないか、右列のように運用可能な形へ直せているかを確認してください。
| 不備のある条項 | 問題点 | 修正方向 |
|---|---|---|
| 相談窓口は人事部とするだけ | 担当者、方法、周知、代替窓口が不明確です。 | 別表で担当者、連絡先、受付方法、代替窓口を明記します。 |
| 正式な申告書がある場合のみ調査する | 相談段階や緊急事案を放置する危険があります。 | 相談、苦情、情報提供を広く受け、必要に応じて初動対応します。 |
| 匿名相談は受け付けない | 早期発見の機会を失うことがあります。 | 匿名でも可能な範囲で受け、限界を説明します。 |
| ハラスメントと認められない相談は懲戒する | 相談を萎縮させ、不利益取扱いに近い効果を生みます。 | 故意の虚偽申告と、確認できなかった相談を分けます。 |
| 相談内容は必要に応じて共有するだけ | 共有範囲が広すぎ、プライバシー侵害の危険があります。 | 必要最小限、目的限定、アクセス管理、記録化を定めます。 |
| 外部窓口に委託しただけ | 会社の雇用管理上の措置が空白になります。 | 外部窓口から社内責任部署への報告、調査、措置の流れを定めます。 |
| 担当者研修がない | 二次被害、不適切対応、情報漏えいが起きやすくなります。 | 相談対応マニュアルと定期研修を設けます。 |
監査では、規程があるかだけでなく、全従業員に届いているか、初動判断が遅くないか、緊急時のエスカレーション基準があるか、双方聴取や客観資料確認が行われているか、アクセス権限が限定されているかを点検します。
次の一覧は、監査時に横断的に見る項目を整理したものです。項目ごとに「規程上の記載」「実際の運用」「記録の有無」の三つを照合することが重要です。
窓口、外部窓口、代替ルート、匿名相談、不利益取扱い、秘密保持、虚偽申告、内部通報接続を確認します。
入社時、管理職昇格時、派遣、パート、夜勤者、休職者、外国人労働者にも届いているかを見ます。
受付記録、初動判断、緊急対応、双方聴取、第三者確認、配慮措置、結果説明を確認します。
アクセス権限、要配慮個人情報、外部窓口契約、保存期間、記録保全、過剰記録を点検します。
公益通報該当性、従事者指定、範囲外共有防止、探索防止、記録化を確認します。
小規模企業、匿名相談、外部窓口、公益通報、記録管理の疑問を一般情報として整理します。
一般的には、ハラスメント防止措置は業種や規模を問わず事業主に求められるものとされています。ただし、専任部署を置けない場合もあるため、担当者指定、外部窓口の活用、周知、初動ルールなどを会社の規模に合わせて整える必要があります。
一般的には、窓口を定めて周知するだけでは十分でないとされています。担当者が相談内容に応じて適切に対応できる体制、マニュアル、研修、事実確認、配慮措置、再発防止、秘密保持、不利益取扱い禁止まで一体で整える必要があります。
一般的には、人事部のみの窓口でも直ちに不適切とは限りません。ただし、人事部が関係者となる場合や評価への不安がある場合には利用が難しくなるため、外部窓口、法務・コンプライアンス、監査役等への代替ルートを設ける設計が望ましいとされています。
一般的には、常に匿名相談を法的に義務付けるものではないと考えられます。ただし、匿名相談は早期発見に役立つ場合があり、可能な範囲で受け付ける一方、事実確認や結果通知には限界があることを説明する設計が実務的です。
一般的には、相談者の意向は尊重されるべきです。ただし、重大な危険、被害拡大、他の従業員への影響、法令上または安全配慮上の必要がある場合は、必要最小限の範囲で対応を検討することがあります。具体的な対応は個別事情により変わるため、専門家へ相談する必要があります。
一般的には、事実確認の結果としてハラスメントを認定できなかったことと、故意の虚偽申告は別とされています。故意の虚偽や証拠偽造が認められる場合を除き、認定不能のみを理由に不利益に扱うことは避ける必要があります。
一般的には、外部専門家は受付や助言を補う立場であり、雇用管理上必要な措置を講ずる主体は会社です。報告範囲、緊急時対応、調査、配慮措置、行為者措置、再発防止を社内で設計する必要があります。
一般的には、同一または一体運用もあり得ます。ただし、公益通報者保護法上の従事者指定、守秘義務、範囲外共有防止、不利益取扱い禁止などの要件と、ハラスメント相談の柔軟な受付を混同しない設計が必要です。
一般的には、顧客等からの著しい迷惑行為も労働者の安全や就業環境に影響するため、相談対象に含める設計が望ましいとされています。特に2026年10月1日以降のカスタマーハラスメント対策義務化を見据え、顧客等からの言動を含めた規程整備が重要です。
一般的には、対応に必要な事実、判断、措置、共有範囲を客観的に記録する必要があります。一方で、不要な私生活情報、推測、感情的評価、差別的表現を記録することは避けるべきです。保存期間や開示範囲は、紛争可能性や個人情報管理体制により変わります。
一般的には、健康確保や安全配慮のために産業保健スタッフとの連携が必要となる場合があります。ただし、共有範囲は必要最小限にし、可能な限り本人へ説明して同意を得ることが望ましいです。緊急性が高い場合も、共有理由、共有範囲、共有先を記録する必要があります。
一般的には、禁止行為、懲戒、服務規律、不利益取扱い禁止など労働条件や制裁に関わる部分は就業規則との整合が必要です。一方、窓口連絡先、受付手順、記録様式、担当者研修は別規程やマニュアルに置く方が更新しやすい場合があります。