就業規則、労働条件通知書、勤怠記録、ハラスメント資料、電子証拠を、相談前にどう整理するかを実務目線で解説します。
就業規則、労働条件通知書、勤怠記録、ハラスメント資料、電子証拠を、相談前にどう整理するかを実務目線で解説します。
就業規則、個別合意、事実経過を三層で整理します。
労務トラブル相談で準備したい就業規則と証拠を考えるとき、最も重要なのは、就業規則を単なる社内ルール集としてではなく、労働契約の内容、使用者の権限行使の根拠、労働者の権利義務、紛争時の主張立証をつなぐ中核資料として扱うことです。
次の一覧は、相談前に資料を三層に分ける考え方を示すものです。この整理が重要なのは、「何が起きたか」という説明だけでは足りず、どの規程に基づき、どの手続を経て、どの記録が残っているかを説明する必要があるためです。各層が争点とどう接続するかを読み取ってください。
| 資料の層 | 含まれる資料 | 相談時の意味 |
|---|---|---|
| ルールを示す資料 | 就業規則、賃金規程、退職金規程、休職規程、ハラスメント防止規程、情報セキュリティ規程、労使協定、労働協約 | 労働条件、服務規律、懲戒、解雇、休職、情報管理などの根拠を示します。 |
| 個別合意を示す資料 | 労働条件通知書、雇用契約書、内定通知書、辞令、労働条件変更合意書、同意書、誓約書、秘密保持契約書 | 当事者間でどの条件を合意したかを示します。 |
| 事実経過を示す資料 | 勤怠記録、賃金台帳、給与明細、メール、チャット、面談記録、録音、診断書、通報記録、調査報告書、解雇通知書 | 実際に何が起き、相手方が何を認識していたかを示します。 |
契約内容、規程根拠、不利益変更、労働審判の準備に関わります。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成・届出義務が問題となるだけでなく、労働契約の内容や懲戒・解雇の根拠にも関わります。この一覧が重要なのは、現行版だけでなく、問題発生時点の規程、周知、届出、意見書まで確認する必要があるためです。どの場面でどの資料が必要になるかを読み取ってください。
| 場面 | 就業規則が問題になる理由 | 準備する証拠 |
|---|---|---|
| 労働契約の内容 | 合理的な労働条件を定めた就業規則が周知されている場合、労働契約の内容となり得ます。 | 就業規則の版、周知記録、入社時説明資料、雇用契約書、労働条件通知書 |
| 不利益変更 | 労働者の不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労使交渉などが問題になります。 | 変更理由資料、労使協議記録、説明資料、比較表、経過措置、周知記録 |
| 個別契約との関係 | 就業規則を下回る個別契約は、その部分が無効となる可能性があります。 | 雇用契約書、就業規則、賃金規程、退職金規程、雇用区分別規程 |
| 懲戒・解雇 | 懲戒の種類・事由、解雇事由、手続、相当性が問題になります。 | 懲戒規程、解雇条項、処分通知、解雇理由証明書、面談記録、指導記録 |
| 労働審判 | 原則3回以内の期日で進むため、初期段階の主張と証拠が重要です。 | 時系列表、争点表、主要証拠、就業規則一式、通知書、相手方資料 |
労働基準法89条は、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金、退職、解雇事由などの記載事項を定めています。制度を設ける場合には、退職手当、臨時賃金、労働者負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁なども確認対象になります。
事実、規程、証拠、未確認事項を日付順に接続します。
時系列表は、どの専門家に相談する場合でも最初に役立つ資料です。この表が重要なのは、出来事、関係者、根拠規程、証拠、未確認事項を同じ行で確認できるためです。次の表では、日付順に何を並べるか、どの列が争点整理に効くかを読み取ってください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付・時刻 | 可能な限り年月日と時刻を書きます。曖昧な場合は「2025年4月上旬」など幅を明示します。 |
| 場所・媒体 | 事務所、会議室、オンライン会議、メール、チャット、電話などを記録します。 |
| 関係者 | 発言者、受信者、同席者、承認者、決裁者を分けます。 |
| 出来事 | 退職勧奨、業務指示、残業、面談、注意指導、ハラスメント発言、診断、休職申請などを具体化します。 |
| 関連規程 | 就業規則、賃金規程、ハラスメント規程、休職規程など該当条項を対応づけます。 |
| 証拠 | メール、チャット、録音、勤怠記録、診断書、給与明細、面談メモなどを記載します。 |
| 争点 | 未払残業代、解雇無効、懲戒無効、安全配慮義務違反、退職強要などを入れます。 |
| 未確認事項 | 原本不明、規程版不明、相手方資料未入手などを残します。 |
時系列では、感情評価と事実を分けることが重要です。例えば「悪質な嫌がらせ」ではなく、日時、場所、発言内容、同席者、録音の有無を書く方が、証拠評価に結びつきます。企業側も「問題社員」ではなく、納期失念、苦情メール、注意日、教育記録のように具体化します。
次の判断の流れは、相談前に時系列表を完成形へ近づける順番を示すものです。順番が重要なのは、先に主張を固めすぎると、不利な証拠や欠落資料を見落とすためです。資料の有無、原本、争点を順に読み取ってください。
まず評価を入れず、事実だけを置きます。
誰が、どこで、どの媒体で関与したかを記録します。
各出来事に、該当規程と証拠資料を紐づけます。
原本、版、相手方資料、期限を確認課題として残します。
現行版、過去版、届出、意見書、周知証拠をセットで確認します。
就業規則は、現行版だけでなく、問題発生時点の版が必要です。この一覧が重要なのは、2026年時点の規程が整備されていても、2023年の懲戒、2024年の雇止め、2025年の賃金改定には、その時点の規程が適用されるためです。どの規程を一式としてそろえるかを読み取ってください。
| 規程・資料 | 確認する理由 |
|---|---|
| 就業規則本体 | 労働条件、服務規律、退職、解雇、懲戒の基本根拠になります。 |
| 賃金規程・退職金規程 | 未払賃金、固定残業代、手当、退職金計算の根拠になります。 |
| 休職・復職規程 | メンタル不調、傷病、休職期間満了退職、復職判定で問題になります。 |
| 育児・介護休業規程 | 配置転換、勤務配慮、不利益取扱いとの関係で確認します。 |
| ハラスメント防止規程 | 相談窓口、調査手続、再発防止、懲戒との関係を確認します。 |
| 懲戒規程または服務規律部分 | 懲戒の種類、事由、手続、弁明機会を確認します。 |
| 安全衛生規程・情報セキュリティ規程 | 安全配慮義務、ログ保全、情報管理、調査の適法性に関わります。 |
| テレワーク・副業・出張旅費・個人情報関連規程 | 勤務場所、兼業、費用負担、秘密情報、個人情報の扱いを確認します。 |
| 雇用区分別規程・労使協定・36協定 | 有期、パート、変形労働時間制、時間外労働の根拠を確認します。 |
届出済みであることだけでは足りません。次の一覧は、届出と周知の確認項目を示しています。なぜ重要かというと、就業規則が労働契約内容となるには周知が重要であり、不利益変更では合理性や説明過程も問題になるためです。届出日、適用開始日、代表者選出、周知方法の対応関係を読み取ってください。
| 確認項目 | 見るべき点 |
|---|---|
| 届出日・適用開始日 | いつからその版が適用されたかを確認します。 |
| 労働者代表の選出方法 | 過半数代表者の選出が適正かを確認します。 |
| 意見書の内容 | 反対意見の有無、説明経過、労使協議の実態を確認します。 |
| 旧規程からの変更点 | 不利益変更の有無、変更理由、代償措置、経過措置を確認します。 |
| 周知方法 | 社内ポータル、メール配布、書面交付、掲示、規程集設置などを確認します。 |
| 周知証拠 | スクリーンショット、掲載日時、配布メール、受領確認、電子署名ログ、アクセス権限設定を確認します。 |
未払残業代、解雇、懲戒、ハラスメントなど類型別に整理します。
労務トラブルでは、類型ごとに必要な規程と証拠が変わります。この一覧が重要なのは、未払残業代とハラスメント、解雇、懲戒では、見るべき資料の組み合わせが異なるためです。どの争点にどの資料が対応するかを読み取ってください。
| 類型 | 準備すべき規程 | 準備すべき証拠 |
|---|---|---|
| 未払残業代・労働時間 | 労働時間、休憩、休日、時間外労働、賃金、固定残業代、変形労働時間制、フレックスタイム、裁量労働制、管理職、テレワーク、36協定 | タイムカード、入退館記録、PCログ、メール、チャット、日報、シフト表、残業申請、給与明細、賃金台帳、休憩記録 |
| 解雇・退職勧奨・雇止め | 退職・解雇条項、試用期間、休職・復職、懲戒、人事評価、配置転換、定年・再雇用、有期契約更新基準 | 解雇通知書、解雇理由証明書、退職勧奨面談記録、録音、人事評価、注意指導書、業務改善計画、更新履歴 |
| 懲戒処分 | 懲戒の種類、懲戒事由、服務規律、秘密保持、情報セキュリティ、ハラスメント、兼業、副業、競業避止、SNS、調査手続 | 非違行為を示すメール、ログ、顧客苦情、監査資料、通報記録、ヒアリングメモ、弁明書、処分通知、過去事例 |
| ハラスメント・メンタルヘルス | ハラスメント防止、相談窓口、通報、懲戒、休職・復職、安全衛生、メンタルヘルス、配置転換、カスタマーハラスメント | 発言録、録音、メール、チャット、通報記録、診断書、産業医面談、調査報告、ヒアリング記録、再発防止策 |
| 配置転換・出向・転勤・降格 | 配置転換、転勤、出向、職種限定、勤務地限定、人事異動、雇用契約 | 辞令、異動理由資料、組織図、面談記録、家庭事情・健康事情の申告、代替候補者の検討資料 |
| 休職・復職 | 休職、復職、休職期間満了退職、リハビリ勤務、安全衛生 | 診断書、主治医意見書、産業医意見書、面談記録、勤怠、業務負荷、復職判定会議資料 |
| 有期雇用・雇止め・無期転換 | 有期雇用規程、更新基準、更新上限、無期転換、労働条件明示 | 契約書、労働条件通知書、更新履歴、雇止め通知、雇止め理由証明書、評価、過去の更新実績 |
| 退職・競業避止・秘密保持 | 退職条項、退職金、秘密保持、競業避止、貸与物、情報管理 | 退職届、退職合意書、有給残日数、退職金計算書、誓約書、貸与物管理表、アクセスログ、引継ぎ資料 |
書面、電子データ、録音、供述を、強さと注意点に分けます。
証拠は種類ごとに評価ポイントが異なります。この一覧が重要なのは、数が多い資料より、客観性、作成時期、原本性、相手方認識、規程との接続が明確な資料の方が強く働くためです。どの証拠で何を確認するかを読み取ってください。
雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、辞令、通知書、面談記録、診断書などです。作成日、作成者、署名押印、交付・受領、原本所在を確認します。
メール、チャット、クラウド文書、勤怠システムログ、PCログ、GPS、入退館記録などです。メタデータ、更新履歴、アクセス権限、保存形式を確認します。
退職勧奨、ハラスメント、面談、懲戒調査で重要になり得ます。原音声、録音日時、参加者、場所、文字起こし、前後文脈を準備します。
同僚、上司、部下、顧客、産業医、相談窓口担当者などの見聞内容です。感想ではなく日時、場所、発言内容、資料との対応関係を整理します。
電子証拠では、スクリーンショットだけでなく元データを残すことが重要です。メールはヘッダー情報、チャットはエクスポート、クラウド文書は更新履歴を保存します。企業側では、紛争が予見された時点でログや防犯カメラ映像の保全指示を検討します。
資料収集、弱点確認、追加資料の洗い出しを表に落とし込みます。
相談前チェックリストは、資料不足を早めに見つけるためのものです。この確認が重要なのは、労働審判や行政対応へ進むと短期間で主張と証拠をそろえる必要があるためです。次の表では、共通項目、企業側、労働者側で何が違うかを読み取ってください。
| 対象 | チェック項目 |
|---|---|
| 全事件共通 | 時系列表、相談したい結論、現行版と問題発生時点の就業規則、関連規程、届出控え、意見書、周知証拠、雇用契約書、労働条件通知書、給与明細、賃金台帳、勤怠記録、メール、チャット、録音、秘匿資料の区分、原本とコピーの区別、期限の確認 |
| 企業側 | 事実調査の担当者と範囲、関係者ヒアリング、ヒアリング記録、関連ログ保全、労働者代表の選出・意見聴取記録、過去類似事例、決裁権限、窓口一本化、社外専門家への共有資料、情報漏えい・報復・二次被害防止 |
| 労働者側 | 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則の閲覧方法、給与明細、勤怠記録、メール・チャットの保存、録音原本、退職合意前の相談、解雇理由証明書、診断書、会社資料持ち出しの適法性、相談先、時効や申立期限 |
争点表は、相手方の主張、自分側の主張、根拠規程、証拠、弱点、追加資料を一覧化するものです。この表が重要なのは、主張の強さだけでなく、弱点や追加で集める資料を早めに見える化できるためです。次の例では、争点ごとに証拠と弱点がどう結びつくかを読み取ってください。
| 争点 | 自分側の主張 | 相手方の予想主張 | 根拠規程 | 主要証拠 | 弱点 | 追加資料 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 解雇無効 | 業務改善機会がなく解雇は相当でない。 | 重大な能力不足がある。 | 就業規則の解雇条項 | 評価表、面談録音 | ミスの記録がある。 | 過去評価、同僚証言 |
| 未払残業代 | 会社が残業を認識していた。 | 残業申請がない。 | 賃金規程、36協定 | PCログ、メール | 休憩時間が不明。 | 業務日報、チャット |
| ハラスメント | 上司発言が人格攻撃である。 | 業務指導の範囲である。 | ハラスメント規程 | 録音、診断書 | 同席者が非協力。 | 相談窓口記録 |
消さない、無理に集めない、機微情報を管理するという三点を整理します。
証拠保全と個人情報保護は、相談準備の裏側で必ず確認すべき論点です。この一覧が重要なのは、証拠を消してしまうことも、違法・不適切な方法で集めることも、どちらも後の紛争を悪化させるためです。保全、取得方法、個人情報の三点を読み取ってください。
| 観点 | 準備すべき対応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 証拠を消さない | メール、チャット、勤怠、入退館、PCログ、防犯カメラ、クラウド文書の保存期間を確認し、必要に応じて保全指示を出します。 | 退職後は社内システムへアクセスできなくなるため、適法に取得できる資料を早めに整理します。 |
| 不適切な取得を避ける | 他人のアカウントへの無断アクセス、秘密情報の大量持ち出し、私物端末の無断閲覧を避けます。 | 証拠の入手経路を隠すと、相談方針や後の手続に影響します。 |
| 個人情報を管理する | 住所、給与、評価、健康情報、懲戒情報、ハラスメント相談、家族情報の取扱いを確認します。 | 社外専門家への共有範囲、秘密保持、アクセス権限、委託先管理を確認します。 |
保存期間は、最低限の廃棄可能時期と誤解しないことが重要です。労働者名簿、賃金台帳、雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係の重要書類は保存義務の対象になりますが、未払賃金、退職金、懲戒、解雇、労災、安全配慮義務、ハラスメント、内部通報、不正調査では、法定保存期間を超えて資料が必要になることがあります。
弁護士、社労士、労働局、労基署、裁判所手続で整理の重点が変わります。
相談先によって、準備すべき資料の強調点は変わります。この比較が重要なのは、労働局や労基署、社労士、弁護士、裁判所手続では、扱える問題や必要資料が異なるためです。どの相談先に何を持っていくべきかを読み取ってください。
| 相談先・手続 | 主な検討事項 | 準備資料 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 法的請求の見通し、証拠評価、交渉方針、労働審判、訴訟、仮処分、刑事告訴、労基署申告との関係を検討します。 | 時系列表、争点表、就業規則一式、雇用契約書、労働条件通知書、主要証拠、相手方通知、希望する解決内容 |
| 社会保険労務士 | 就業規則整備、労務管理、労働保険・社会保険、給与計算、労使協定、予防法務を確認します。 | 規程版管理、届出、意見書、周知方法、労使協定、賃金台帳、勤怠管理、給与計算ルール |
| 労働局・総合労働相談コーナー | 解雇、雇止め、配置転換、賃金引下げ、いじめ、嫌がらせ、パワハラなど幅広い相談を扱います。 | 問題の概要、相手方名称、発生日、関係資料、希望する解決方法 |
| 労働基準監督署 | 未払賃金、最低賃金、労働時間、休憩、休日、解雇予告、労災、安全衛生など法令違反を確認します。 | 勤怠、給与明細、賃金台帳、36協定、解雇予告資料、安全衛生資料 |
| 労働審判・裁判所手続 | 短期間で主張立証を尽くす必要があります。 | 申立書・答弁書に対応する証拠、証拠番号、主要証拠の優先順位、相手方反論の整理 |
人事、法務、社労士、情報システム、経営陣の役割を分けます。
企業法務やガバナンスの観点では、労務トラブルは個別の人事問題にとどまりません。この役割分担が重要なのは、上場企業、IPO準備企業、M&A対象企業、規制業種では、開示、デューデリジェンス、行政対応、信用リスクへ波及するためです。どの部署が何を担うかを読み取ってください。
| 役割 | 主な担当 |
|---|---|
| 人事労務 | 事実把握、勤怠・給与・人事評価資料の収集 |
| 法務・企業内弁護士 | 法的リスク評価、外部弁護士連携、文書管理 |
| 社会保険労務士 | 就業規則、労使協定、労務管理実務 |
| 外部弁護士 | 紛争対応、労働審判・訴訟、交渉、調査 |
| コンプライアンス | 通報制度、ハラスメント対応、再発防止 |
| 内部監査 | 統制不備、運用実態、監査証跡 |
| 情報システム | ログ保全、アクセス権限、電子証拠 |
| 個人情報保護担当 | 個人情報・要配慮情報の取扱い |
| 経営陣 | 重大案件の意思決定、ガバナンス対応 |
よくある失敗例を先に把握しておくと、相談準備の品質が上がります。次の一覧は、後で争点化しやすい失敗をまとめたものです。どの失敗が資料不足、手続不足、記録文化の問題につながるかを読み取ってください。
問題発生時点の規程、改定前後の比較、適用日、周知日、意見書が必要になります。
ファイルサーバーに置いた事実だけでは、常時確認可能性や通知の有無が問題になります。
本人了承、注意済みだけではなく、日時、出席者、説明内容、本人発言、資料交付を残します。
退職強要や不当な動機の証拠として扱われ得るため、管理職の記録文化を整えます。
顧客情報の持ち出しや私物端末の無断閲覧は、別の紛争を生む可能性があります。
清算条項、口外禁止、税務、社会保険、有給、退職金への影響を確認します。
相談内容、規程、証拠を同じ形式で整理します。
相談前のテンプレートは、抜け漏れを減らすために役立ちます。この一覧が重要なのは、相談概要、就業規則、証拠一覧を同じ粒度でそろえることで、専門家が短時間で全体像を把握できるためです。各行に何を記入するかを読み取ってください。
| 相談概要メモ | 記載する内容 |
|---|---|
| 相談者・立場 | 労働者、使用者、人事担当、法務担当などを明確にします。 |
| 相手方・勤務先・事業場 | 会社名、部署、事業場、関係者を整理します。 |
| 雇用形態・入社日 | 正社員、契約社員、パート、派遣、業務委託などを確認します。 |
| 問題発生日・相談したい問題 | 時系列の起点と相談テーマを明確にします。 |
| 希望する解決・既に行った対応 | 復職、金銭解決、撤回、是正、調査などを整理します。 |
| 通知・期限・重要証拠 | 相手方通知、回答期限、申立期限、主要証拠を記載します。 |
| 不利な事情・未入手資料 | 相手方から指摘されそうな点と、今後集める資料を明記します。 |
就業規則確認メモでは、版、改定日、適用開始日、届出日、意見書、代表者選出、周知方法、問題条文、旧規程との差分、個別契約との違い、労働協約・労使協定との関係、実運用との違いを確認します。証拠一覧表では、証拠番号、資料名、作成日、作成者、入手経路、原本所在、内容要旨、対応争点、反論可能性、秘匿情報、追加確認事項を整理します。
証拠の強さを見るときは、客観性、同時性、連続性、相手方認識、規程との接続が重要です。次の比較表は、どの観点で資料を評価するかを示すものです。資料の数ではなく、争点を説明できる力を読み取ってください。
| 評価観点 | 意味 |
|---|---|
| 客観性 | 第三者が見ても内容を確認できる資料か。タイムカード、PCログ、メール、給与明細、診断書、届出控えなどが典型です。 |
| 同時性 | 出来事の直後に作成された資料か。当日のメール、日報、相談記録は重要です。 |
| 連続性 | 単発ではなく継続的な記録があるか。数か月分の勤怠、PCログ、日報などが役立ちます。 |
| 相手方認識 | 会社や相手方が事実を認識していたことを示すか。残業認識、相談履歴、異議申出などが該当します。 |
| 規程との接続 | 就業規則、賃金規程、36協定、懲戒規程、ハラスメント規程と証拠が結びついているか。 |
相談前によくある疑問を一般情報として整理します。
一般的には、会社の所定の閲覧方法、社内ポータル、規程集、総務・人事への請求方法を確認します。就業規則は周知義務が問題になるため、閲覧できない状態自体が争点となる可能性があります。ただし、具体的な請求方法や対応は事案によって変わるため、記録を整理して専門家に相談する必要があります。
一般的には、就業規則がなくても相談は可能です。雇用契約書、労働条件通知書、求人票、賃金台帳、勤怠記録、メール、慣行が重要資料となります。常時10人以上の事業場で就業規則がない場合は、会社側の管理不備として問題になる可能性があります。
一般的には、スクリーンショットも資料になり得ますが、元データ、URL、撮影日時、端末、アカウント、前後文脈を残す方が望ましいとされています。チャットやメールは、エクスポート、ヘッダー、メタデータを保存することが重要です。
一般的には、重要な面談やハラスメント発言の録音がある場合、原音声と文字起こしを準備すると整理しやすくなります。ただし、録音方法や内容によって別の法的問題が生じ得るため、入手経緯を専門家に説明する必要があります。
一般的には、私物端末にはプライバシーや個人情報の問題があります。情報漏えい調査等で必要性がある場合でも、規程、同意、範囲、方法、第三者関与、ログ保全などを慎重に検討する必要があります。無断閲覧は別の紛争を生む危険があります。
一般的には、退職後は社内システムへのアクセス権を失うため、無権限アクセスは避ける必要があります。在職中に適法に入手した資料、会社から交付された資料、給与明細、労働条件通知書、自己宛の記録などを整理します。足りない資料は、専門家を通じた開示要請や手続上の証拠提出方法を検討します。
一般的には、通知の要否は事案によって異なります。証拠保全、時効、退職合意、解雇、懲戒、ハラスメント調査では、先に通知すると証拠散逸や関係悪化、期限徒過につながる可能性もあります。重大案件では、通知前に専門家へ相談する必要があります。
平時から証跡が残る仕組みを作り、相談時に時系列表と争点表へ落とし込みます。
労務トラブルは、発生後に証拠を集めるより、平時から証跡が残る仕組みを作る方が合理的です。次の一覧は、平時整備の項目を示しています。この一覧が重要なのは、紛争発生後の対応力が、日常の規程管理、ログ保全、窓口運用でほぼ決まるためです。どの体制から整えるかを読み取ってください。
| 平時整備の項目 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 就業規則の年次レビュー | 法改正、勤務制度、賃金制度、雇用区分の変化を反映します。 |
| 改定履歴と周知ログの保存 | 旧版、適用開始日、労働者代表意見、配布・閲覧記録を残します。 |
| 労使協定の期限管理 | 36協定、変形労働時間制、労使協定の更新漏れを防ぎます。 |
| 勤怠管理の客観化 | 自己申告だけでなく、PCログや入退館記録との整合性を確認します。 |
| 面談記録の標準化 | 退職勧奨、注意指導、復職判定、ハラスメント対応で記録品質をそろえます。 |
| 相談窓口の独立性確保 | 通報者保護、報復禁止、二次被害防止を制度化します。 |
| 懲戒調査の手続化 | 調査範囲、ヒアリング、弁明機会、処分通知、再発防止を整えます。 |
| 電子証拠保全ポリシー | メール、チャット、ログ、防犯カメラ、クラウド文書の保存とアクセス権限を管理します。 |
| 外部専門家との連携体制 | 弁護士、社労士、フォレンジック、個人情報保護担当との連携を準備します。 |
相談時には、就業規則、労働条件通知書、雇用契約書、勤怠記録、賃金台帳、メール、チャット、面談記録、録音、診断書、通報記録、調査資料を、時系列表と争点表に落とし込みます。企業側には紛争予防と防御の基盤となり、労働者側には契約内容、実労働時間、会社の認識、相談履歴、通知書類を保存する基盤となります。