2σ Guide

労働局による
偽装請負調査対応のポイント

37号告示、現場の指揮命令、証拠保全、回答文書、是正措置、平時の予防体制まで、企業法務・労務コンプライアンスの観点から整理します。

37号 告示の判断枠組み
72時間 初動対応の目安
3層 事実・評価・是正
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

労働局による 偽装請負調査対応のポイント

37号告示、現場の指揮命令、証拠保全、回答文書、是正措置、平時の予防体制まで、企業法務 ・労務コンプライアンスの観点から整理します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
労働局による 偽装請負調査対応のポイント
37号告示、現場の指揮命令、証拠保全、回答文書、是正措置、平時の予防体制まで、企業法務 ・労務コンプライアンスの観点から整理します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 労働局による 偽装請負調査対応のポイント
  • 37号告示、現場の指揮命令、証拠保全、回答文書、是正措置、平時の予防体制まで、企業法務 ・労務コンプライアンスの観点から整理します。

POINT 1

  • 労働局による偽装請負調査対応の全体像
  • 契約書名ではなく、現場の指揮命令、受託会社の独立性、証拠に残る運用を起点に整理します。
  • 契約形式より現場実態が優先される
  • 指揮命令の経路
  • 記録の保存

POINT 2

  • 偽装請負調査対応で押さえる基礎概念
  • 労働者派遣、請負、偽装請負を分け、外部委託が違法化する境界を確認します。
  • 重大リスクとして扱うべき理由
  • 外部人材の活用自体は違法ではありません。
  • 次の比較一覧は、労働者派遣、請負、偽装請負の違いを整理したものです。

POINT 3

  • 偽装請負調査対応の判断枠組み ― 37号告示の二本柱
  • 1. 契約類型と業務範囲を確認:契約書、発注書、仕様書、検収条件、報酬設計を把握します。
  • 2. 現場での指示経路を確認:発注者から個々の作業者への具体的な指示がないかを見ます。
  • 3. リスク高:記録を保全し、範囲、原因、是正策を整理します。
  • 4. 追加確認:管理者が実質的に作業割当や労務管理をしているかを確認します。

POINT 4

  • 労働局による偽装請負調査の基本構造
  • 担当部門、調査の契機、提出資料を把握し、調査対象と証拠範囲を早期に確定します。
  • 調査の契機
  • 資料ごとに指揮命令、独立性、労務管理、報酬設計を裏付ける意味が違うため重要です。
  • 読者は、自社がどの資料を保有し、どの記録が現場実態を示すかを読み取ってください。

POINT 5

  • 労働局による偽装請負調査の初動72時間
  • 1. 社内窓口を一本化する:当局窓口、総括責任者、現場連絡先を定め、個別回答を止めます。
  • 2. 調査範囲を確認する:担当部署、法的根拠、対象事業所、対象契約、対象期間、提出資料、期限、面談対象を確認します。
  • 3. 証拠保全を指示する:契約、メール、チャット、チケット、日報、勤怠、請求、ログ、会議録、入退館記録の削除・改変を禁止します。
  • 4. 暫定的な事実整理を行う:契約書、現場運用、管理者機能、不利な記録の有無を確認し、外部専門家の関与要否を判断します。

POINT 6

  • 偽装請負調査対応の事実調査設計
  • 発注者・派遣先
  • 契約上の発注者、現場責任者、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを特定します。
  • 元請・下請
  • 元請会社、一次下請会社、二次下請会社の責任範囲と現場関与を確認します。

POINT 7

  • 労働局への説明方針と回答文書の作り方
  • 事実、評価、是正策を分け、不利な事実も含めて客観資料と対応づけます。
  • 契約・体制・運用・記録
  • 37号告示等への当てはめ
  • 実施済み措置と計画

POINT 8

  • 偽装請負調査で問題になりやすい典型論点
  • 日常会話、再作業、混在作業、技術指導、ITチケットなど、現場で境界が揺れやすい場面を確認します。
  • IT案件で特に残りやすい証拠
  • 同じ構内や同じシステム環境で働く場合、発注者と受託会社作業者の接点を完全になくすことは現実的ではありません。
  • 重要なのは、仕様・納期・検収・安全連絡と、作業方法・順序・速度・配置・残業に関する直接命令を分けることです。

まとめ

  • 労働局による 偽装請負調査対応のポイント
  • 労働局による偽装請負調査対応の全体像:契約書名ではなく、現場の指揮命令、受託会社の独立性、証拠に残る運用を起点に整理します。
  • 偽装請負調査対応で押さえる基礎概念:労働者派遣、請負、偽装請負を分け、外部委託が違法化する境界を確認します。
  • 偽装請負調査対応の判断枠組み ― 37号告示の二本柱:自己の労働者を自ら利用しているか、自己の業務として独立処理しているかを証拠で検証します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

労働局による偽装請負調査対応の全体像

契約書名ではなく、現場の指揮命令、受託会社の独立性、証拠に残る運用を起点に整理します。

労働局による偽装請負調査対応では、業務委託契約書、請負契約書、基本契約書、発注書、仕様書を整えているかだけでは足りません。中心的な争点は、実際の現場で発注者が受託会社の労働者に指揮命令していたか、受託会社が自己の責任と裁量で労務管理と事業運営をしていたかです。

厚生労働省は、労働者派遣と請負の区分について、いわゆる37号告示に基づき、契約形式ではなく実態で判断する考え方を示しています。請負、業務委託、委任、準委任、SES、アウトソーシング、BPO、構内請負、常駐業務、フリーランス契約などの名称があっても、実態として発注者の指揮命令下で他社労働者を就労させている場合には、労働者派遣法上の問題となる可能性があります。

重要労働局が確認するのは、現場で誰が、誰に、何を、どの程度具体的に指示していたかです。契約書、メール、チャット、チケット、日報、勤怠、請求明細、ヒアリング結果をつなげて説明できる状態を作る必要があります。

次の重要ポイント一覧は、調査対応で最初に押さえるべき観点を整理したものです。どの論点も、対応の遅れが行政対応、民事労務紛争、内部統制、レピュテーションへ波及し得るため重要です。読者は、契約形式、現場運用、証拠保全、是正策を同時に見直す必要があることを読み取ってください。

契約形式より現場実態が優先される

偽装請負調査では、契約名や請求名目ではなく、指揮命令の経路、受託会社管理者の機能、労働時間・配置・評価の管理主体、成果責任と報酬設計が総合的に見られます。

初動で見るべき領域は広く、労務だけでは完結しません。次の一覧は、行政対応と社内対応を分解したもので、どの部門の記録が調査説明に直結するかを把握するために重要です。ここでは、現場、契約、調達、IT、経営報告までを一体で確認する必要があると読み取ってください。

実態確認

指揮命令の経路

作業手順、優先順位、残業、配置、再作業を誰が決めたかを、記録とヒアリングで確認します。

証拠保全

記録の保存

メール、チャット、チケット、日報、勤怠、請求、入退館、会議録を削除や改変なく保全します。

是正設計

運用と契約の修正

受託会社責任者を通す連絡経路、成果物・検収基準、報酬設計、教育、内部監査を整えます。

Section 01

偽装請負調査対応で押さえる基礎概念

労働者派遣、請負、偽装請負を分け、外部委託が違法化する境界を確認します。

偽装請負とは、形式上は請負契約、業務委託契約、準委任契約などとして処理されているにもかかわらず、実態としては発注者が受託会社の労働者に直接または実質的に指揮命令を行い、労働者派遣に近い形で就労させている状態を指す実務上の表現です。

外部人材の活用自体は違法ではありません。製造、物流、情報システム、研究開発、施設管理、コールセンター、経理・人事BPO、広告制作、建設関連業務、データ処理、店舗運営補助など、事業運営上、外部委託は不可欠です。ただし、外部委託を選択した以上、発注者は成果または業務単位を発注する立場にとどまり、受託会社の従業員を自社従業員のように使うことはできません。

次の比較一覧は、労働者派遣、請負、偽装請負の違いを整理したものです。労働局調査では名称ではなく実態が見られるため、この違いを押さえることが重要です。読者は、指揮命令の主体と受託会社の独立性が判断の中心になることを読み取ってください。

概念基本構造調査での焦点
労働者派遣派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働させる構造です。許可、派遣契約、管理台帳、責任者、期間制限、待遇確保、苦情処理、安全衛生の役割分担が問題になります。
請負受託会社が仕事の完成や業務処理を自己の責任と裁量で行い、注文者が結果に対して報酬を支払う構造です。受託会社が自社労働者を自ら管理し、業務を自己の業務として独立処理しているかが問題になります。
偽装請負契約上は請負・委託でも、実態として発注者が受託会社労働者を直接利用している状態です。誰が作業手順、残業、配置、評価、再作業、チケット割当を決めていたかが確認されます。

重大リスクとして扱うべき理由

労働局による偽装請負調査で問題となりやすいのは、発注者社員が日々の作業手順、優先順位、作業速度、配置、残業、休日出勤を直接指示している場面です。請負会社の管理者が形式的に存在するだけで、実際には発注者の管理職が作業者を管理している場合も、リスクが高くなります。

  • 契約書は請負でも、請求額が人数・時間単価に連動し、成果物や完成責任が不明確である。
  • 発注者が個々の作業者を面接、選定、交代要求、評価している。
  • IT開発や運用保守で、発注者がチケット管理ツールやチャットにより個々のエンジニアへ直接タスクを割り当てている。
  • 現場責任者が、明日から別工程に回す、今日は残業する、この順番で処理するといった具体的指示を直接出している。

これらの事実が存在すると、行政指導、是正報告、改善命令、勧告・公表、罰則、労働契約申込みみなし制度、民事上の雇用・賃金・安全配慮義務問題、取引先・株主・監査人への説明問題に発展する可能性があります。上場会社、IPO準備会社、金融・医薬・製造・IT・公共調達関連企業では、内部統制上の重要事項として扱うべきです。

Section 02

偽装請負調査対応の判断枠組み ― 37号告示の二本柱

自己の労働者を自ら利用しているか、自己の業務として独立処理しているかを証拠で検証します。

37号告示の構造は、大きく二つに整理できます。第一に、請負事業主が自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していることです。第二に、請負事業主が請け負った業務を自己の業務として、相手方から独立して処理していることです。

次の表は、第一の柱である労働力の直接利用について、確認領域ごとに典型的な質問と高リスク例を示したものです。発注者の現場関与が労務管理に入り込むほどリスクが高まるため重要です。読者は、作業方法、労働時間、配置、評価、服務、管理者機能のどこに証拠が残るかを読み取ってください。

確認領域典型的な確認事項リスクが高い例
業務遂行方法作業手順、作業順序、作業速度、優先順位を誰が決めるか。発注者が個々の作業者へ直接指示する。
労働時間管理始業・終業、休憩、残業、休日出勤を誰が決めるか。発注者が残業や休日出勤を直接命じる。
勤務配置どの作業者をどの工程・担当に配置するかを誰が決めるか。発注者が名指しで配置変更を指示する。
業務評価個々の作業者の作業態度、能力、成果を誰が評価するか。発注者の評価が契約継続や交代に直結する。
服務規律遅刻、休暇、服装、規律、教育を誰が管理するか。発注者が自社社員と同様に懲戒的指導をする。
管理者機能受託会社の管理者が実質的に指揮命令しているか。管理者が名義だけで、発注者が実質管理する。

次の表は、第二の柱である独立処理について、事業者としての責任と裁量を確認するものです。契約が人員提供に近づくほど請負性の説明が難しくなるため重要です。読者は、設備、責任、専門性、報酬、業務範囲、再委託構造を横断して確認する必要があると読み取ってください。

確認領域典型的な確認事項リスクが高い例
資金・設備業務遂行に必要な資金、設備、機械、器材、材料を誰が負担するか。発注者の設備だけを使い、受託会社の独自性がない。
法律上の責任瑕疵、損害、事故、納期遅延、品質不良について誰が責任を負うか。契約上の責任が曖昧で、実態は労務提供のみである。
専門性・企画性受託会社が専門的技術、経験、企画に基づき業務遂行しているか。発注者の指示を単純に人員で処理するだけである。
報酬設計成果、業務単位、出来高、プロジェクトに連動しているか。人数×時間単価で精算し、成果責任がない。
業務範囲委託業務の範囲、成果物、検収条件が明確か。その他発注者の指示する業務だけで無限定である。
再委託・下請構造下請階層ごとの責任と指揮命令系統が明確か。元請も下請も管理せず、発注者が末端作業者を指示する。

次の判断の流れは、契約書の表示から現場実態まで順に確認するためのものです。形式的な適法性だけで止まると見落としが生じるため重要です。読者は、契約、運用記録、管理者機能、報酬設計、是正要否を順番に確認する読み方をしてください。

37号告示に沿った確認順序

契約類型と業務範囲を確認

契約書、発注書、仕様書、検収条件、報酬設計を把握します。

現場での指示経路を確認

発注者から個々の作業者への具体的な指示がないかを見ます。

直接指示あり
リスク高

記録を保全し、範囲、原因、是正策を整理します。

責任者経由
追加確認

管理者が実質的に作業割当や労務管理をしているかを確認します。

Section 03

労働局による偽装請負調査の基本構造

担当部門、調査の契機、提出資料を把握し、調査対象と証拠範囲を早期に確定します。

偽装請負や労働者派遣に関する調査・指導は、都道府県労働局の需給調整事業部、需給調整事業課、需給調整事業室などが中心となることが多いです。名称は労働局により異なりますが、労働者派遣事業、有料職業紹介事業、請負と派遣の区分、違法派遣、労働契約申込みみなし制度などを扱う部門です。

調査の契機

  • 労働者、退職者、取引先、労働組合、内部通報窓口などからの申告・相談。
  • 定期的な事業所訪問、派遣元・派遣先への指導監督。
  • 派遣事業報告書、許可・更新手続、関係書類からの確認。
  • 労働基準監督署、公共職業安定所、他の行政機関からの情報連携。
  • 労働災害、ハラスメント、賃金不払い、解雇、契約終了を契機とする相談。
  • 大規模アウトソーシング、構内請負、常駐型IT業務、製造工程請負などの業種特性に基づく確認。
  • 報道、SNS、株主・投資家対応、自治体・公共調達関連の問題化。

次の表は、調査で提出や確認を求められやすい資料を類型別に整理したものです。資料ごとに指揮命令、独立性、労務管理、報酬設計を裏付ける意味が違うため重要です。読者は、自社がどの資料を保有し、どの記録が現場実態を示すかを読み取ってください。

資料類型具体例確認目的
契約関係資料基本契約書、個別契約書、発注書、注文書、仕様書、覚書、変更合意書契約形式、業務範囲、責任分担、報酬設計を確認します。
業務運用資料作業手順書、業務手順、マニュアル、作業標準、SOP、工程表発注者の指示か、受託会社の管理かを確認します。
指示・連絡記録メール、チャット、チケット、議事録、日報、朝礼資料、ホワイトボード写真指揮命令の有無、経路、具体性を確認します。
人員管理資料要員表、シフト表、配置表、入退館記録、勤怠データ、残業申請労働時間・配置管理の主体を確認します。
経理資料請求書、精算明細、単価表、見積書、検収書成果報酬か、人月・時間精算かを確認します。
組織資料体制図、責任者一覧、連絡系統図、委託先管理台帳管理責任者の実体、指揮命令系統を確認します。
安全衛生資料安全教育記録、事故報告、保護具ルール、危険作業手順合理的な安全指示と業務指示の区別を確認します。
システム資料Jira、Backlog、Redmine、Git、Slack、Teams、ServiceNow等の設定・履歴個々の作業者への直接タスク割当の有無を確認します。
内部統制資料委託先選定資料、稟議、内部監査報告、是正計画会社としての管理体制、故意・過失の評価を確認します。
注意提出資料を有利・不利で選別する前に、保存義務と証拠保全を徹底する必要があります。調査開始後の削除、改変、バックデートは、事実認定だけでなく企業姿勢そのものの問題になります。
Section 04

労働局による偽装請負調査の初動72時間

窓口一本化、調査範囲確認、証拠保全、事実確認前の結論固定を避けることが核心です。

労働局から連絡を受けた場合、まず社内窓口を一本化します。事業部門、工場、支店、情報システム部門、調達部門、人事部門が個別に回答を始めると、事実確認前の不正確な説明、回答の齟齬、資料提出漏れが発生しやすくなります。

次の時系列は、連絡を受けた直後から72時間程度で優先すべき対応を整理したものです。初動の混乱は調査全体の信用に影響するため重要です。読者は、先に窓口と保存を固め、その後に範囲確認と事実整理へ進む順番を読み取ってください。

即時

社内窓口を一本化する

当局窓口、総括責任者、現場連絡先を定め、個別回答を止めます。

初日

調査範囲を確認する

担当部署、法的根拠、対象事業所、対象契約、対象期間、提出資料、期限、面談対象を確認します。

24時間以内

証拠保全を指示する

契約、メール、チャット、チケット、日報、勤怠、請求、ログ、会議録、入退館記録の削除・改変を禁止します。

72時間以内

暫定的な事実整理を行う

契約書、現場運用、管理者機能、不利な記録の有無を確認し、外部専門家の関与要否を判断します。

次の表は、推奨される初動体制と担当を整理したものです。偽装請負問題は法務部だけで完結せず、契約、労務、調達、IT、経営判断を伴うため重要です。読者は、誰が何を担うかを先に決めることで、回答の一貫性と証拠保全を守る必要があると読み取ってください。

役割主な担当
総括責任者法務責任者、コンプライアンス責任者、管理本部長等。
当局窓口法務担当、労務法務担当、外部専門家等。
事実調査法務、内部監査、人事労務、事業部門、調達、情報システム。
労務論点人事労務、社会保険労務士、弁護士。
契約論点契約法務、調達、外部専門家。
証拠保全IT、情報セキュリティ、デジタルフォレンジック担当。
経営報告取締役、監査役、監査等委員、経営会議、必要に応じて社外役員。

調査範囲の確認事項

  • 担当労働局、担当部署、担当官の氏名・連絡先。
  • 任意調査か、報告徴収・立入検査等を伴うものか。
  • 対象事業所、対象部署、対象契約、対象期間。
  • 対象となる委託先、派遣元、下請会社、個人事業主。
  • 提出資料の種類、形式、期限、面談・ヒアリング対象者、事業所訪問の有無。

証拠保全の注意点

  • 削除、改変、上書き、バックデートを禁止します。
  • 個人判断で資料を整理・廃棄しないよう周知します。
  • チャット、メール、チケット、共有ドライブ、個人PC、業務スマートフォンを含めます。
  • 自動削除設定、ログ保存期間、退職者アカウントの扱いを確認します。
  • 外部専門家の関与がある場合、法的助言目的の調査資料と通常業務資料を区別して管理します。
初動の禁物現場からの断片的説明だけで、当社は請負だから問題ないと結論を固定しないことが重要です。契約書の記載と現場実態が乖離していることは少なくありません。
Section 05

偽装請負調査対応の事実調査設計

取引構造、契約と実態、指揮命令の証拠、ヒアリング対象を分けて確認します。

事実調査では、まず対象取引の関係者を整理します。多層化しているほど責任と指揮命令系統が不明確になりやすく、労働者派遣法だけでなく、職業安定法上の労働者供給、建設業法、下請法独占禁止法、個人事業主の労働者性、フリーランス保護関連の論点が併発することがあります。

次の一覧は、最初に確認すべき関係者を整理したものです。誰が契約相手で、誰が現場で指示し、誰が実際に就労しているかがずれると、説明が崩れやすくなるため重要です。読者は、発注者から末端作業者までの関係を一列に並べ、指示経路と契約経路を分けて読み取ってください。

発注者・派遣先

契約上の発注者、現場責任者、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを特定します。

元請・下請

元請会社、一次下請会社、二次下請会社の責任範囲と現場関与を確認します。

個人事業主

フリーランス、個人事業主の実態、労働者性、再委託関係を確認します。

派遣元・受託会社

派遣元事業主、受託会社管理者、営業責任者、実際に就労する作業者を確認します。

次の表は、契約書上の建付けと実際の運用を対照するものです。契約書だけを読めば適法に見えても、現場運用が異なればリスクは解消しないため重要です。読者は、各条項に対応する実態確認質問を使って、契約と証拠のずれを確認してください。

契約書上の記載実態確認の質問
受託者が自己の責任で業務を遂行する。実際に受託者の管理者が日々の指示を出しているか。
発注者は個々の作業者に指示しない。チャット、メール、朝礼、現場巡回で直接指示していないか。
業務範囲は仕様書のとおり。仕様書外の雑務、突発対応、他部署支援を命じていないか。
報酬は業務委託料とする。実際には人数、時間、残業時間に連動していないか。
受託者が労働時間を管理する。発注者がシフト、残業、休日出勤、休暇可否を決めていないか。
受託者が要員を選定する。発注者が面接、指名、交代、評価をしていないか。
受託者が成果物責任を負う。品質不良や納期遅延の責任が曖昧で、再作業指示だけになっていないか。

次の表は、指揮命令の証拠を時系列で整理する際の確認ポイントです。抽象的な印象ではなく、誰が、いつ、誰に、何を、どの程度具体的に指示したかを示すために重要です。読者は、記録の種類ごとに直接指示、勤怠承認、配置決定、人月精算の痕跡を読み取ってください。

証拠確認ポイント
メール個々の作業者宛てに作業手順、期限、優先順位を命じていないか。
チャットSlack、Teams等で発注者が個々の作業者に直接タスクを振っていないか。
チケット管理発注者が受託会社の個人名にチケットを割り当てていないか。
朝礼資料発注者の朝礼で請負労働者に直接作業指示をしていないか。
日報発注者の承認欄、評価欄、指示欄がないか。
勤怠記録発注者が出退勤、残業、休暇を承認していないか。
配置表発注者が人員配置や工程移動を決定していないか。
請求明細人月、時間単価、残業単価、深夜単価で精算していないか。
会議議事録受託会社の管理者を飛ばして、個々の作業者に具体指示していないか。

ヒアリング対象者を分ける

発注者側、受託会社側、現場作業者の認識は一致しないことがあります。最低限、発注者側の契約責任者、現場責任者、作業指示者、調達担当、人事労務担当、受託会社の営業責任者、受託会社の現場管理者、実際に作業している受託会社従業員、退職者・異動者、IT管理者・システム管理者から事情を聴くことが望ましいです。

ヒアリング証言誘導や口裏合わせと評価される行為は避けます。調査開始後に今後はこう説明するようにと関係者へ指示すれば、事実隠蔽と疑われる危険があります。
Section 06

労働局への説明方針と回答文書の作り方

事実、評価、是正策を分け、不利な事実も含めて客観資料と対応づけます。

労働局への説明では、客観的事実、法的・実務的評価、是正策・再発防止策を分けます。問題ありませんという結論だけではなく、発注者から受託会社への注文、仕様説明、検収指摘、安全衛生上の合理的連絡と、個々の労働者への指揮命令を区別して説明する必要があります。

次の三つの項目は、回答方針を組み立てるための基本単位です。事実と評価を混ぜると当局との認識差が広がるため重要です。読者は、記録で示せる事実、37号告示等に照らした評価、期限と責任者のある是正策を分けて読み取ってください。

事実

契約・体制・運用・記録

対象取引の概要、契約関係、業務内容、指示経路、労務管理、設備、請求、接点を資料番号と対応させます。

評価

37号告示等への当てはめ

仕様説明、品質確認、合理的な安全連絡と、直接の作業命令を区別して整理します。

是正

実施済み措置と計画

連絡経路の一本化、ツール運用変更、契約改訂、研修、棚卸しなどを期限付きで示します。

不利な事実を無視しない

不利なメール、チャット、日報、配置表が存在する場合、それを無視して直接指示はありませんと回答すると、後に資料が発見されたときの信用毀損が大きくなります。実務上は、不利な事実を認定したうえで、単発か継続的か、仕様説明か作業命令か、受託会社管理者が関与していたか、例外運用か組織的運用か、他部署にも存在するか、いつ誰が是正したかを整理します。

次の表は、文書回答の基本構成を並べたものです。抽象的な法令文言を繰り返すだけでは説明力が弱いため重要です。読者は、各見出しに具体的事実と証拠番号を対応させることを読み取ってください。

順番記載事項説明の焦点
1調査対象取引の概要対象部署、契約、期間、受託会社、業務内容を特定します。
2契約関係と取引構造発注者、元請、下請、作業者、責任者の関係を整理します。
3業務内容、成果物、責任分担成果物、検収基準、品質責任、修補責任を示します。
4指揮命令系統連絡経路、日々の作業割当、受託会社責任者の役割を示します。
5労働時間、配置、服務、評価勤怠、休暇、残業、配置、服務、教育、評価の管理主体を示します。
6設備、資材、システム、費用負担受託会社の独立性と発注者設備利用の理由を説明します。
7請求・精算方法成果、業務単位、出来高、SLA、検収との対応を示します。
8疑義がある事実と会社の認識不適切な運用や例外事実を隠さず整理します。
9是正済み事項と再発防止策実施日、対象、責任者、期限、教育、監査を示します。
10添付資料一覧記載と証拠を対応させ、確認可能性を高めます。

記載例の考え方

請負性を説明する場合でも、日々の作業割当、作業順序、作業方法、担当者配置、勤怠、休暇、残業の要否を受託会社の現場責任者が決定していることを、資料に基づいて示す必要があります。一部のチャットに個人宛て確認依頼があった場合は、誤解を招くおそれがある事実として認定し、連絡経路の一本化や研修実施を併記することが望ましいです。

是正計画では、発注者側連絡窓口と受託会社側責任者の再指定、個々の作業者への直接作業指示の禁止、チャット・チケット運用の変更、契約書・仕様書の改訂、発注者側の現場責任者・調達担当者への研修、同種取引の全社棚卸しを、具体的な期限と責任者付きで示します。

Section 07

偽装請負調査で問題になりやすい典型論点

日常会話、再作業、混在作業、技術指導、ITチケットなど、現場で境界が揺れやすい場面を確認します。

同じ構内や同じシステム環境で働く場合、発注者と受託会社作業者の接点を完全になくすことは現実的ではありません。重要なのは、仕様・納期・検収・安全連絡と、作業方法・順序・速度・配置・残業に関する直接命令を分けることです。

次の一覧は、偽装請負調査で頻出する典型論点を整理したものです。現場では合理的な連絡と指揮命令の境界が曖昧になりやすいため重要です。読者は、各場面で発注者が誰に何を伝えるべきか、受託会社責任者を通すべき場面はどこかを読み取ってください。

01

日常会話

挨拶、設備利用上の案内、危険回避の声掛けは生じ得ます。ただし、会話の形で作業内容、順序、方法、速度、残業、配置を命じるとリスクが高まります。

境界注意
02

不具合・手直し・再作業

仕様不適合や品質不良は、受託会社責任者へ伝え、受託会社が作業者を割り当てる形が低リスクです。個々の作業者への直接修正指示は危険です。

品質対応
03

混在作業・同一フロア作業

物理的に混在すること自体で直ちに問題になるわけではありません。責任者、連絡経路、緊急時・安全衛生上の例外、研修を明確にします。

構内請負
04

技術指導

設備の使用方法、仕様説明、安全衛生上必要な説明、緊急時対応はあり得ます。毎日の作業割当、個別の不具合修正方法、残業命令に変わると危険です。

技術説明
05

作業服・名札・入館証・アカウント

安全、情報セキュリティ、顧客対応、秘密保持、衛生管理の合理的ルールはあり得ます。服務規律や人事管理として発注者管理へ傾きすぎないようにします。

管理範囲
06

人員の指名・交代要求・面談

個々の作業者を面接・選定・名指し配置・直接評価すると、受託会社の独立性を損ないます。重大トラブル時も契約相手である受託会社へ改善を求めます。

人員管理
07

人月・時間単価による精算

見積りや精算に工数を用いること自体で直ちに問題になるわけではありませんが、成果物、業務範囲、検収、品質責任が不明確だと労務提供に近づきます。

報酬設計
08

一人常駐・名ばかり管理者

受託会社管理者が現場におらず、一名に直接作業依頼が集まる構造はリスクが高いです。管理者が作業者を兼ねる場合も、責任者機能の実体が必要です。

常駐型
09

IT・システム開発・アジャイル開発

発注者が個々のエンジニアへ直接タスクを割り振り、進捗や作業方法を管理するとリスクが高まります。要件や受入条件は受託会社責任者へ伝えます。

IT案件

IT案件で特に残りやすい証拠

  • チケットは受託会社または受託チームに割り当て、個々の受託会社労働者への直接割当を避けます。
  • 発注者のプロダクトオーナーは、優先順位、要件、受入条件を受託会社責任者へ伝えます。
  • 受託会社のスクラムマスター、プロジェクトマネージャー、リードエンジニアが作業分担を決定します。
  • チャットで発注者が個々の作業者に直接作業命令を出さないようにします。
  • 仕様確認、レビュー、検収コメントと、作業指示を区別します。
Section 08

労働契約申込みみなし制度と行政・民事リスク

違法派遣と評価された場合、行政処分だけでなく雇用関係・賃金・安全配慮義務へ波及します。

偽装請負調査で特に注意すべき制度が、労働契約申込みみなし制度です。派遣先等が違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先等から派遣労働者に対して、派遣元との労働条件と同一内容の労働契約の申込みをしたものとみなされ、労働者が一定期間内に承諾すれば労働契約が成立する制度として説明されています。派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がない場合は対象外とされています。

次の重要ポイントは、偽装請負が行政対応にとどまらず民事上の雇用関係リスクへ広がることを示します。調査対象者の就労を急に打ち切ると別の紛争を生むおそれがあるため重要です。読者は、制度対応、契約切替、対象者説明、受託会社との調整を一体で検討する必要があると読み取ってください。

対象者を突然排除しない

調査を契機に作業者の就労を突然打ち切ると、雇用関係、損害賠償、報復的取扱い、内部通報対応、労働組合対応、SNS・報道対応の問題が生じる可能性があります。

次の一覧は、偽装請負が確認または疑われる場合の主な波及リスクを整理したものです。行政処分だけを見ていると、労務紛争、契約紛争、監査・IPO上の影響を見落とすため重要です。読者は、行政上、刑事上、民事上、経営上のリスクを同時に確認してください。

行政対応

行政指導、是正指導、改善命令、事業停止命令、許可取消し、勧告、公表が問題となる可能性があります。

罰則・調査妨害

無許可派遣、禁止業務派遣、名義貸し、改善命令違反、報告拒否、虚偽報告、立入検査拒否等が問題となり得ます。

民事・労務紛争

雇用関係成立、地位確認、賃金請求、残業代、安全配慮義務、労災、ハラスメントの責任分担に発展することがあります。

取引・資本市場

取引停止、入札停止、公共調達上の評価低下、M&A・IPO・監査での偶発債務やコンプライアンス指摘が生じ得ます。

厚生労働省の業務取扱要領では、違反行為の防止、摘発、行政処分、勧告・公表、罰則に関する整理が置かれています。また、東京労働局は令和6年度の民間人材ビジネスに関する指導監督状況として、多数の事業所に対する文書指導等を公表しています。行政指導で済む可能性があるとしても、是正報告が不十分であれば追加資料提出、再調査、他事業所への横展開確認、経営層への説明要求につながることがあります。

Section 09

偽装請負調査後の是正措置と契約・現場運用の直し方

直接指示を止め、契約条項、連絡経路、ツール運用、派遣・直接雇用への切替を検討します。

偽装請負リスクが判明した場合、まず止めるべき運用を特定します。発注者から個々の作業者への直接作業指示、残業・休日出勤・休暇承認、名指し配置・交代・評価、受託会社管理者を介さないチャット・チケット割当、同一の指揮命令系統への組込み、契約範囲外業務の直接依頼、人数・時間だけを基礎とする実質的な人員供給契約は、停止または変更の対象になります。

次の表は、契約書を修正する際の主要条項と方向性を整理したものです。契約書の修正だけでは足りませんが、業務範囲、連絡経路、責任分担を明文化しないと現場運用の是正が定着しにくいため重要です。読者は、各条項を現場の運用ルール、ツール設定、研修と結びつけて読み取ってください。

条項修正の方向性
業務範囲成果物、処理範囲、対象業務、除外業務を具体化します。
指揮命令禁止発注者が受託会社労働者へ直接指揮命令しない旨を明記します。
管理責任者受託会社の現場責任者、発注者の連絡窓口を明確化します。
連絡経路発注者からの連絡は原則として受託会社責任者に行う設計にします。
労務管理勤怠、休暇、残業、配置、服務、教育は受託会社が管理する建付けにします。
検収・品質検収基準、不適合時の修補、再作業、責任範囲を明確化します。
報酬成果、業務単位、出来高、SLA等に基づく設計を検討します。
設備・費用設備、材料、ライセンス、交通費、保険、損害負担を整理します。
安全・秘密保持合理的な安全衛生・情報管理ルールと業務指示を区別します。
監査・是正委託先管理、記録保存、違反時の是正協議を規定します。

次の手段一覧は、現場運用を再設計する際に実施しやすい施策を並べたものです。契約書を変えてもチャットや朝礼の運用が変わらなければ再発するため重要です。読者は、依頼先、割当主体、ツール設定、研修、体制変更を一体で進める必要があると読み取ってください。

01

依頼先を集約する

発注者側の依頼事項は受託会社責任者へ集約し、受託会社責任者が作業者への割当、順序、方法を決めます。

連絡経路
02

チャット・チケットを分ける

発注者・受託会社責任者間の連絡用と、受託会社内部の作業指示用を分け、個人名への直接割当を避けます。

IT運用
03

朝礼・定例会の役割を変える

発注者は個々の作業者に指示せず、仕様、納期、品質、検収、課題を受託会社責任者へ共有します。

会議運用
04

不在の管理者を是正する

受託会社管理者が不在または機能不全の場合、体制変更を求め、一人常駐型業務は派遣・直接雇用・成果型委託への再設計を検討します。

体制変更

適法な派遣への切替

業務の性質上、発注者が個々の労働者に日々指揮命令しなければならない場合、その業務は請負・委託ではなく、適法な労働者派遣または直接雇用で処理することを検討します。派遣元の許可、労働者派遣契約、派遣先責任者、派遣先管理台帳、派遣可能期間、待遇確保、苦情処理、安全衛生、派遣禁止業務、二重派遣・多重派遣・労働者供給の該当性を確認します。

直接雇用・内製化

対象業務が企業の中核業務で、発注者が日常的・継続的に指揮命令する必要がある場合、直接雇用または内製化が安定的な選択肢となることがあります。対象者の雇用形態、賃金、労働時間、勤務地、職務内容、受託会社との契約上の制限、既存労働者との待遇バランス、社会保険、労働保険、就業規則、評価制度、業務移管、情報セキュリティを整理します。

Section 10

社内専門職の役割分担と調査対応チェックリスト

法務、労務、調達、内部監査、IT、経営陣の役割と、初動・37号告示の確認項目を整理します。

労働局による偽装請負調査対応は、法務部だけで完結しません。調達コスト削減、採用難、現場の柔軟性、プロジェクト納期、IT人材不足など、事業上の圧力から問題が発生しやすいため、経営層が適法な外部人材活用の設計を経営課題として扱うことが必要です。

次の表は、社内外の専門職・担当部門ごとの主要な役割を整理したものです。対応漏れを防ぐには、事実調査、契約分析、証拠保全、経営報告、再発防止を分担することが重要です。読者は、自社の体制に置き換え、誰がどの記録と判断を持つかを読み取ってください。

専門職・部門主要な役割
企業内弁護士・法務担当当局対応方針、事実調査設計、契約分析、回答文書作成、経営報告。
外部専門家法的評価、リスク判断、当局対応助言、労務紛争・訴訟対応。
社会保険労務士労務管理、就業規則、勤怠・残業・安全衛生、派遣実務確認。
コンプライアンス担当再発防止策、研修、社内規程、内部通報対応。
内部監査担当委託先管理、証跡確認、他部署横展開、統制不備評価。
調達・購買担当契約類型、委託先選定、単価・精算、委託先評価。
事業部門現場実態の説明、運用変更、受託会社との実務調整。
人事労務担当労働時間、安全衛生、直接雇用・派遣切替時の実務。
情報システム担当チャット、チケット、ログ、アカウント、証拠保全。
デジタルフォレンジック専門家電子証拠の保全・解析、削除・改変の有無確認。
公認会計士・税理士請求・原価・会計処理、偶発債務、M&A・IPO上の影響確認。
監査役・監査等委員経営陣の対応監督、内部統制上の問題把握。
取締役・経営陣リスク許容度、事業継続、予算、人員、組織是正の意思決定。

次の表は、初動で確認すべき項目をまとめたものです。担当者が多いほど対応漏れや重複回答が起きやすいため重要です。読者は、労働局との連絡、社内体制、証拠保全、専門家関与、実態照合を順に確認してください。

項目確認
労働局の担当部署・担当官・調査対象を確認したか
社内窓口を一本化したか
経営層、法務、人事労務、事業部門、調達、ITを含む対応チームを設置したか
対象契約、対象期間、対象事業所、対象委託先を特定したか
証拠保全指示を出したか
メール、チャット、チケット、勤怠、請求、入退館記録を保全したか
現場関係者への不用意な口裏合わせ指示を禁止したか
外部専門家への相談要否を判断したか
提出資料の期限、形式、範囲を確認したか
回答前に契約書と実態の照合を行ったか

次の表は、37号告示の観点から点検すべき確認項目です。現場運用のどこが指揮命令や独立性の問題につながるかを一目で見るために重要です。読者は、作業方法、割当、勤怠、配置、評価、服務、管理者、成果責任、報酬、設備、責任、連絡経路を横断して確認してください。

確認項目問い
作業方法作業手順・順序・速度を受託会社が決めているか。
作業割当個々の作業者への割当を受託会社が決めているか。
勤怠管理始業・終業・休憩・残業・休暇を受託会社が管理しているか。
配置変更発注者が名指しで配置変更していないか。
評価発注者が個々の作業者を評価・査定していないか。
服務規律服装、遅刻、休暇、規律指導を受託会社が行っているか。
管理者受託会社の管理者が実質的に機能しているか。
成果責任受託会社が成果物・品質・納期について責任を負っているか。
報酬人数・時間だけでなく成果・業務単位が明確か。
設備・材料受託会社の設備、材料、専門性、企画性が説明できるか。
法的責任損害、瑕疵、事故、遅延の責任分担が明確か。
連絡経路発注者から個々の作業者への直接指示を避けているか。

赤信号リスト

  • 発注者が受託会社の作業者に毎朝直接作業指示をしている。
  • 発注者が受託会社の作業者の残業・休暇を承認している。
  • 発注者が受託会社の作業者を名指しで配置・交代させている。
  • 請負会社の管理者が不在、または形式的にしか機能していない。
  • チャットやチケットで、発注者が個々の受託会社作業者にタスクを割り当てている。
  • 請求が人数×時間で、成果物・品質責任・検収条件が不明確である。
  • 発注者の社員と受託会社作業者が同一の組織図・勤務表で管理されている。
  • 受託会社が独自の設備、技術、責任、裁量をほとんど持たない。
  • 現場の関係者が、実質的には派遣と同じと認識している。
Section 11

業種別の偽装請負調査ポイントと平時の予防体制

製造、物流、IT、BPO、研究開発の現場特性を踏まえ、外部人材活用の統制を整えます。

偽装請負リスクは業種ごとに現れ方が異なります。製造現場ではライン速度や配置、物流では緊急出荷、ITではチケットとチャット、BPOでは応対品質とシフト、研究開発では共同作業と技術指導が問題になりやすいです。

次の業種別一覧は、現場特性ごとの注意点を整理したものです。同じ37号告示でも証拠の残り方や運用改善の方法が異なるため重要です。読者は、自社の業務がどの類型に近いかを確認し、直接指示が発生しやすい場面を読み取ってください。

01

製造・構内請負

ライン速度、工程順序、配置、残業、品質不良時の再作業が問題になりやすいです。生産計画や品質基準は受託会社へ示し、個々の作業者への命令を避けます。

構内
02

物流・倉庫

出荷量の変動、緊急出荷、ピッキング、梱包、検品、配送調整で直接指示が生じやすいです。優先順位は受託会社責任者へ伝えます。

物流
03

IT・システム開発

チケット管理、チャット、コードレビュー、デイリースクラムが証拠化されやすいです。準委任やアジャイルという名称だけでは十分ではありません。

IT
04

コールセンター・BPO

応対品質、処理件数、クレーム対応、個人情報管理が問題になりやすいです。個々のオペレーターへシフト、休憩、残業を直接命じることは避けます。

BPO
05

研究開発・技術支援

発注者研究者と受託会社技術者が一体で作業するため境界が曖昧になりやすいです。共同研究、知財、秘密保持、実験設備、安全衛生を整理します。

研究開発

外部人材活用ポリシー

企業は、派遣、請負、準委任、業務委託、フリーランス、出向、職業紹介、再委託の違いを整理した外部人材活用ポリシーを作成することが望ましいです。契約類型ごとの利用可能場面、発注者が行ってよい指示と禁止される指示、受託会社責任者の設置要件、一人常駐型業務の承認条件、人月精算・時間精算の審査基準、再委託確認、派遣への切替基準、法務・人事労務・調達レビュー、年次棚卸し、内部監査、研修を含めます。

契約審査・現場教育・内部監査

契約法務担当は、賠償責任、秘密保持、知的財産権、解除条項だけでなく、業務範囲、成果物、指揮命令禁止、責任者、連絡経路、勤怠・配置・服務の管理主体、報酬設計、検収・品質・再作業、再委託先管理、監査権、資料提出、是正協議を確認します。

現場教育では、請負会社の作業者は自社社員でも派遣社員でもないこと、作業指示は受託会社責任者へ行うこと、残業・休暇・配置・作業順序を直接命じないこと、チャットやチケットの直接割当も指揮命令になり得ること、安全衛生・秘密保持・緊急時対応と日常的な労務管理を区別することを明確にします。

内部監査では、委託先一覧、常駐者一覧、契約類型一覧を入手し、一人常駐、人月精算、長期常駐、同一部署混在、下請多層化、ITチケット管理、工場構内請負などの高リスク取引を抽出します。契約書、仕様書、発注書、請求書、現場ヒアリング、チャット・チケット・日報のサンプル、指揮命令系統図と実態を照合し、是正事項を期限・責任者付きで管理します。

Section 12

偽装請負調査対応でよくある質問

個別事案の結論ではなく、一般的な制度理解と確認観点として整理します。

Q1. 契約書に請負と書いていれば大丈夫ですか。

一般的には、労働者派遣と請負の区分は契約書の形式ではなく実態で判断されるとされています。契約書の名称、請求書の名目、社内稟議の分類だけではなく、現場で誰が作業者に指示していたかが重要です。ただし、契約構造、現場運用、証拠関係によって評価は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 発注者が品質基準を説明することも禁止されますか。

一般的には、発注者が成果物、仕様、品質基準、納期、検収結果を受託会社に伝えること自体はあり得るとされています。ただし、個々の作業者に対して具体的な作業方法、順序、速度、残業、配置を直接命じると、指揮命令と評価される可能性があります。具体的には、連絡経路や記録を確認したうえで専門家に相談する必要があります。

Q3. 受託会社の作業者と同じ会議に出てもよいですか。

一般的には、会議参加自体が直ちに問題となるとは限らないとされています。問題は、その会議で発注者が個々の作業者に直接作業命令をしているかです。会議の目的、発言内容、出席者、議事録、作業分担の決定主体によって結論は変わる可能性があります。具体的な運用は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. チャットで受託会社の作業者に質問することも禁止ですか。

一般的には、仕様確認、障害時の緊急連絡、セキュリティ上の注意喚起など合理的な連絡はあり得るとされています。ただし、チャットで個々の作業者にタスクを割り振り、作業順序や期限を命じ、進捗を管理している場合、指揮命令と評価される可能性があります。チャット履歴やツール設定を確認し、具体的な対応は専門家に相談する必要があります。

Q5. 請負会社の管理者を置けば足りますか。

一般的には、形式的に管理者を置くだけでは不十分とされています。管理者が実際に作業割当、進捗管理、勤怠、配置、服務、品質対応を行っている必要があります。管理者が発注者からの指示を単に伝達するだけの場合には、偽装請負リスクが残る可能性があります。具体的な評価は、運用実態を整理して専門家に相談する必要があります。

Q6. 人月精算は必ず違法ですか。

一般的には、人月精算があるだけで直ちに違法と評価されるとは限らないとされています。ただし、人月精算は労務提供との結びつきが強く見えるため、成果物、業務範囲、検収、品質責任、受託会社の独立性を丁寧に説明する必要があります。契約と実態によって評価は変わるため、具体的な対応は専門家へ相談する必要があります。

Q7. 調査で不利な資料が見つかった場合、提出しないほうがよいですか。

一般的には、任意調査、報告徴収、立入検査等の法的性質、提出要請の範囲、守秘性、第三者情報を確認する必要があります。ただし、不利な資料を隠す、削除する、改変する、虚偽説明をすることは極めて危険とされています。具体的な提出範囲と説明方針は、法務・外部専門家の関与の下で整理する必要があります。

Q8. 調査が来た取引だけ是正すれば足りますか。

一般的には、特定取引について調査を受けた場合でも、同種の委託取引が他部署、他事業所、グループ会社に存在することがあります。全社的な棚卸しと横展開が必要となる可能性があります。具体的な範囲、優先順位、是正計画は、事実関係とリスクの大きさに応じて専門家に相談する必要があります。

Section 13

労働局による偽装請負調査対応のまとめ

契約形式、37号告示、初動、説明方針、予防体制を一体で見直します。

労働局による偽装請負調査対応のポイントは、五つに集約できます。第一に、契約形式ではなく実態を直視することです。請負契約書、業務委託契約書、準委任契約書が存在しても、発注者が受託会社の労働者に直接指揮命令していれば、偽装請負リスクは消えません。

第二に、37号告示の二本柱、すなわち、受託会社が自己の労働者を自ら直接利用しているか、受託業務を自己の業務として独立して処理しているかを、証拠に基づいて検証することです。

第三に、調査初動で、社内窓口の一本化、調査範囲の確認、証拠保全、事実調査、外部専門家の関与を速やかに行うことです。初動の混乱、資料の削除、虚偽説明、口裏合わせは、法的リスクと信用リスクを拡大させます。

第四に、労働局への説明では、事実、法的評価、是正策を分け、客観資料に基づいて説明することです。問題がある場合には、隠すのではなく、原因、範囲、是正、再発防止を具体的に示すことが重要です。

第五に、平時から外部人材活用の統制を整えることです。契約審査、現場教育、委託先管理、内部監査、ITツール運用、調達プロセス、派遣・請負・直接雇用の使い分けを整備しておかなければ、同じ問題は繰り返されます。

総括偽装請負問題は、単なる労務担当者の問題ではありません。企業法務、労務、調達、事業運営、内部統制、経営判断が交差する典型的なコンプライアンス課題として、外部人材活用のあり方を再設計する機会にすることが重要です。
Reference

この記事の参考情報源

公的資料・主要根拠

  • 厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」
  • 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」
  • 厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」
  • 厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集」
  • 厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集 第3集」
  • 厚生労働省「労働者派遣事業について」
  • 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領 第1 労働者派遣事業の意義等」
  • 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領 第11 違法行為の防止、摘発」
  • 厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領 第12 違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表」
  • 厚生労働省「労働契約申込みみなし制度について」
  • 東京労働局「令和6年度 民間人材ビジネスに関する指導監督状況」