2σ Guide

不公正な取引方法とは?
独占禁止法上の体系・類型・実務対応

不公正な取引方法について、独占禁止法上の位置づけ、一般指定15類型、優越的地位の濫用、価格転嫁、調査対応、予防体制まで企業法務の視点で整理します。

15類型一般指定の全体像
21件令和6年度の排除措置命令
1%優越的地位濫用の算定率
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不公正な取引方法とは? 独占禁止法上の体系・類型・実務対応

独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。

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不公正な取引方法とは? 独占禁止法上の体系・類型・実務対応
独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。
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  • 不公正な取引方法とは? 独占禁止法上の体系・類型・実務対応
  • 独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。

POINT 1

  • 不公正な取引方法の全体像
  • 独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。
  • 行為類型
  • 公正競争阻害性
  • 実務上の影響

POINT 2

  • 不公正な取引方法の基本概念
  • 排除目的または排除効果
  • 競争者を市場から排除する目的または効果をもつ取引拒絶、排他条件、採算度外視の低価格販売が問題になります。
  • 価格決定の拘束
  • 取引先に小売価格を守らせ、値引き販売を妨げると、再販売価格の拘束として問題になる可能性があります。

POINT 3

  • 不公正な取引方法の独占禁止法上の位置づけ
  • 独占禁止法19条・2条9項、法定類型、指定類型、特殊指定の関係を確認します。
  • 一般指定と特殊指定
  • 不公正な取引方法は、独占禁止法19条により禁止されています。
  • 定義は独占禁止法2条9項に置かれ、法律に直接定められた類型と、公正取引委員会が告示で指定する類型に分かれます。

POINT 4

  • 不公正な取引方法の判断枠組み
  • 1. 行為の特定:価格、供給停止、契約条件、表示、拘束、利益提供、追加負担などを具体化します。
  • 2. 類型との照合:法定類型、一般指定、特殊指定のどこに近いかを確認します。
  • 3. 競争への影響:競争者、取引先、顧客、市場全体への影響を分けて見ます。
  • 4. 是正・記録化:条件変更、協議、証拠保全、専門家相談を検討します。
  • 5. 根拠を保存:品質管理、安全性、投資回収などの合理性を資料化します。

POINT 5

  • 不公正な取引方法の一般指定15類型
  • 全業種に適用される15類型を、企業法務の典型場面とあわせて確認します。
  • この15類型は、名称を覚えるだけでは足りません。

POINT 6

  • 不公正な取引方法の類型別実務ポイント
  • 取引拒絶から内部干渉まで、各類型の境界線を実務目線で整理します。
  • 類型別の検討では、行為ごとに正当化事情とリスクが変わります。
  • 数量割引や地域コストに基づく差はあり得ますが、競争者排除、新規参入妨害、不当な差別につながる価格差・条件差は検討が必要です。
  • 安売り自体は能率競争の中核です。

POINT 7

  • 優越的地位の濫用と不公正な取引方法
  • 1. 内容と根拠資料を受領する:申入れ日、申入れ内容、根拠資料、対象取引を記録します。
  • 2. 検討過程を残す:原価、取引依存度、代替措置、取引継続の必要性を社内資料に残します。
  • 3. 理由付きで回答する:回答日、回答内容、理由、参加者、議事録、協議回数を記録します。
  • 4. 可否と代替措置を整理する:価格改定の範囲、改定できない場合の代替措置、取引打切り判断の合理的理由を保存します。

POINT 8

  • 取適法・フリーランス法と不公正な取引方法
  • 独占禁止法と、取適法・フリーランス法が重なる場面を整理します。
  • 不公正な取引方法は、取適法やフリーランス法と重なって問題になることがあります。

まとめ

  • 不公正な取引方法とは? 独占禁止法上の体系・類型・実務対応
  • 不公正な取引方法の全体像:独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。
  • 不公正な取引方法の基本概念:不利な契約条件と、競争秩序を害する取引方法は区別して考えます。
  • 不公正な取引方法の独占禁止法上の位置づけ:独占禁止法19条・2条9項、法定類型、指定類型、特殊指定の関係を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

不公正な取引方法の全体像

独占禁止法上の規制を、類型・判断枠組み・実務影響から整理します。

不公正な取引方法は、独占禁止法が禁止する競争阻害的な取引行為の一群です。取引拒絶、差別的取扱い、不当廉売、ぎまん的顧客誘引、抱き合わせ販売、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、競争者に対する取引妨害などが典型です。

この分野では、単に不利な条件や強い交渉だけを問題にするのではなく、契約自由や価格競争の範囲を超えて、公正かつ自由な競争を害するおそれがあるかを見ます。

次の一覧は、不公正な取引方法を検討するときに最初に押さえる三つの観点を示しています。社内で一次整理をする際に重要なのは、行為名だけでなく、競争への影響と公取委対応・民事紛争まで同時に読むことです。

Type

行為類型

取引拒絶、不当廉売、排他条件、抱き合わせ、優越的地位の濫用など、どの類型に近いかを確認します。

Competition

公正競争阻害性

自由競争の減殺、競争手段の不公正、自由競争基盤の侵害のどれが問題になるかを整理します。

Impact

実務上の影響

排除措置命令、課徴金、確約手続、警告、注意、差止、損害賠償、信用低下の可能性を見ます。

近年は、価格転嫁、物流取引、フランチャイズ、デジタル・プラットフォーム、フリーランス取引、EC販売、メーカーによる販売価格管理、サプライチェーン上の取引条件変更が主要論点になっています。

Section 01

不公正な取引方法の基本概念

不利な契約条件と、競争秩序を害する取引方法は区別して考えます。

不公正な取引方法は、道徳的に悪い取引や契約上不利な取引をすべて取り締まる制度ではありません。独占禁止法上は、価格、品質、納期、サービス、技術、ブランド、販売網、データ、知的財産、人材、物流、顧客接点などをめぐる競争の秩序を守る制度です。

不利な条件だけでは足りない

商取引では、交渉力、信用力、供給能力、ブランド力、代替可能性に差があること自体は通常あり得ます。価格が低い、契約条項が厳しい、納期が短いというだけで、直ちに独占禁止法違反になるわけではありません。

次の一覧は、不利な取引条件が不公正な取引方法として問題化しやすい場面を整理したものです。読者にとって重要なのは、単なる不満ではなく、競争者排除、価格拘束、自由意思の侵害、顧客選択の歪みがあるかを読み分けることです。

排除目的または排除効果

競争者を市場から排除する目的または効果をもつ取引拒絶、排他条件、採算度外視の低価格販売が問題になります。

価格決定の拘束

取引先に小売価格を守らせ、値引き販売を妨げると、再販売価格の拘束として問題になる可能性があります。

自由意思の侵害

協賛金、返品、従業員派遣、代金減額、支払遅延、無償作業を取引上の優越性で求める場面です。

顧客選択の歪み

抱き合わせや誤認を招く説明により、顧客が本来比較できる商品・サービスを選べなくなる場面です。

したがって、企業法務では、契約自由の尊重と競争秩序の保護の境界を、取引構造、目的、効果、証拠から見極める必要があります。

Section 03

不公正な取引方法の判断枠組み

行為類型だけでなく、公正競争阻害性と正当化事情を見ます。

不公正な取引方法の多くは、「不当に」「正当な理由がないのに」「正常な商慣習に照らして不当に」といった評価概念を含みます。そのため、ある契約条項や営業行為が形式的に類型に近いだけで、直ちに違法になるとは限りません。

次の比較表は、公正競争阻害性を三つの視点で整理したものです。社内検討では、どの視点が問題になるかを分けることで、必要な証拠、反論、是正策を具体化しやすくなります。

視点内容典型例
自由競争の減殺競争者の取引機会や新規参入を妨げ、市場の競争を弱めることです。排他条件付取引、取引拒絶、不当廉売、拘束条件付取引
競争手段の不公正顧客の合理的選択を歪め、欺き、過大な利益で誘引することです。ぎまん的顧客誘引、不当な利益による顧客誘引
自由競争基盤の侵害取引先の自由意思や事業活動の基盤を侵害することです。優越的地位の濫用、取引条件の一方的変更、協賛金・返品の強要

次の判断の流れは、契約条項や営業施策を見たときの検討順序を示しています。順番が重要で、類型名だけで終わらせず、市場地位、正当化事情、社内証拠、影響範囲まで確認することが読み取りどころです。

不公正な取引方法の一次判断

行為の特定

価格、供給停止、契約条件、表示、拘束、利益提供、追加負担などを具体化します。

類型との照合

法定類型、一般指定、特殊指定のどこに近いかを確認します。

競争への影響

競争者、取引先、顧客、市場全体への影響を分けて見ます。

懸念あり
是正・記録化

条件変更、協議、証拠保全、専門家相談を検討します。

説明可能
根拠を保存

品質管理、安全性、投資回収などの合理性を資料化します。

判断に使う実務要素

  • 行為者の市場地位、シェア、ブランド力、販売網、データ支配力
  • 取引先の代替可能性、取引依存度、投資回収状況、契約期間
  • 契約条項、交渉経緯、説明の有無、同意の実質性
  • 行為の継続性、反復性、対象範囲、業界全体への波及
  • 価格、費用、利益率、販売数量、競争者への影響
  • 品質管理、安全性、知財保護、投資回収などの正当化事情
  • 社内メール、チャット、会議資料に現れた目的・認識
Section 04

不公正な取引方法の一般指定15類型

全業種に適用される15類型を、企業法務の典型場面とあわせて確認します。

一般指定は、全ての業種に適用される不公正な取引方法を15項目に整理しています。次の表では、各類型の短い意味と企業法務で出やすい場面を並べており、取引条件の棚卸しや研修資料に使うときは、自社の営業・購買・物流・販売管理のどこに当てはまるかを読み取ることが重要です。

一般指定類型簡潔な説明企業法務での典型場面
1共同の取引拒絶競争者と共同して、特定事業者との取引を拒絶・制限する業界内の共同ボイコット、共同排除
2その他の取引拒絶単独または他者を使って不当に取引を拒絶・制限する安売り業者への出荷停止、競争者取引先への供給停止
3差別対価地域・相手方により不当に差別的な価格で供給・購入する特定地域での排除的価格設定、競争者顧客だけへの極端な価格差
4取引条件等の差別取扱い取引条件や実施で不当に有利・不利に扱うリベート、支払条件、返品条件の差別的設定
5事業者団体における差別取扱い等団体・共同活動から不当に排斥・差別する業界団体からの排除、共同販売からの排斥
6不当廉売不当に低い対価で供給し、他事業者の事業活動を困難にさせるおそれガソリン、酒類、小売、ECでの採算度外視販売
7不当高価購入不当に高い対価で購入し、他事業者の事業活動を困難にさせるおそれ原材料の買い占め、新規参入妨害
8ぎまん的顧客誘引商品・役務の内容や条件を誤認させて顧客を誘引する実態と異なる品質・価格・条件表示
9不当な利益による顧客誘引正常な商慣習に照らして不当な利益で顧客を誘引する過大景品、過剰な金銭提供、取引秩序を害する利益提供
10抱き合わせ販売等ある商品・役務に併せ、別商品・別事業者との取引を強制する機器と消耗品、ソフトと保守、プラットフォーム付帯サービス
11排他条件付取引競争者と取引しないことを条件に取引し、競争者の機会を減少させるおそれ専売店契約、競合品取扱禁止、最恵・排他条項
12拘束条件付取引相手方の取引先・販売地域・販売方法などを不当に拘束するEC販売制限、販売先制限、契約終了後の活動制限
13取引の相手方の役員選任への不当干渉優越的地位を利用して取引先会社の役員選任に干渉する買収・出資・取引継続条件としての役員人事介入
14競争者に対する取引妨害競争者とその取引先との契約成立・履行を不当に妨害する取引先への圧力、虚偽情報、契約解除誘引
15競争会社に対する内部干渉競争会社の株主・役員に不利益行為をさせるよう誘引・強制する株主権行使への不当介入、秘密漏えい誘導

この15類型は、名称を覚えるだけでは足りません。取引先を選ぶ自由、価格競争、ブランド管理、品質維持といった正当な事業活動との境界を、目的、効果、期間、範囲、代替可能性から確認する必要があります。

Section 05

不公正な取引方法の類型別実務ポイント

取引拒絶から内部干渉まで、各類型の境界線を実務目線で整理します。

類型別の検討では、行為ごとに正当化事情とリスクが変わります。次の一覧は、このページで取り上げる主要類型を実務場面ごとにまとめたもので、各項目では「何が通常の競争で、どこから不公正な取引方法の懸念になるか」を読み取ることが重要です。

01

取引拒絶

取引先を選ぶ自由はありますが、共同排除、値引き販売店への出荷停止、業界団体による働きかけ、競合サービス利用を理由にした掲載制限は問題になり得ます。

取引機会
02

差別対価・差別取扱い

数量割引や地域コストに基づく差はあり得ますが、競争者排除、新規参入妨害、不当な差別につながる価格差・条件差は検討が必要です。

価格差
03

不当廉売

安売り自体は能率競争の中核です。費用を著しく下回る対価、継続性、他事業者の事業活動を困難にさせるおそれ、正当な理由を確認します。

採算度外視
04

不当高価購入

高値購入一般ではなく、希少な原材料、広告枠、データ、人材、物流能力を囲い込み、競争者の供給能力や参入機会を奪う場合が問題です。

買い占め
05

顧客誘引

実態と異なる品質・価格・条件表示や、正常な商慣習に照らして不当な利益提供があると、景品表示法や業法とも交錯します。

表示・利益
06

抱き合わせ販売等

セット販売には合理性がある場合もありますが、顧客が本来選べる商品・サービスを不当に特定商品に結び付けると問題になります。

選択制限
07

排他条件付取引

専売店、独占販売、競合品取扱禁止は、ブランド育成や投資回収の合理性と、市場閉鎖効果を比較して検討します。

市場閉鎖
08

拘束条件付取引

EC販売禁止、販売地域制限、販売先制限、広告方法制限、契約終了後の競業禁止・移籍禁止などは、合理的必要性と範囲が問われます。

活動制限
09

再販売価格の拘束

希望小売価格や参考価格の提示自体よりも、価格監視、是正要請、出荷停止、リベート削減などで実質的に価格を守らせる点が問題です。

価格維持
10

役員選任への不当干渉

出資、業務提携、代理店契約、フランチャイズ、重要取引の継続条件として役員人事に介入すると、企業統治への不当介入となり得ます。

統治介入
11

競争者に対する取引妨害

虚偽情報、取引先への圧力、契約解除の誘引、システム接続妨害、データアクセス妨害などが問題になります。

妨害
12

競争会社への内部干渉

競争会社の株主・役員に不利益行為をさせるよう誘引・強制する場面では、会社法、不正競争防止法、金融商品取引法、労働法、刑事法も関係します。

内部干渉

公取委の近時公表事例では、医療機器・消耗品や測定装置・試薬の組合せ、椅子ブランドの参考売価での販売維持、即席麺などの小売価格に関する警告、契約終了後のライブ配信活動禁止や同種事業禁止への注意などが取り上げられています。

Section 06

優越的地位の濫用と不公正な取引方法

相対的な優越性、合意の実質性、価格転嫁、物流取引を深掘りします。

優越的地位の濫用は、不公正な取引方法の中でも企業法務上の相談が多い類型です。自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用し、正常な商慣習に照らして不当に、購入・利用強制、経済上の利益提供の要請、受領拒否、返品、支払遅延、減額、不利益な条件設定・変更・実施を行うことが問題になります。

優越的地位は相対的に判断される

市場全体で圧倒的なシェアを持つ必要はなく、取引相手との関係で相対的に優越していれば足ります。取引依存度、市場における地位、取引先変更可能性、取引の必要性などを総合的に見ます。大企業対中小企業だけでなく、大企業同士、中小企業同士でも成立し得ます。

次の一覧は、署名や名目だけでは安全といえない典型場面を整理しています。読者にとって重要なのは、書面の有無だけでなく、相手方が拒否しにくい状況、説明不足、負担範囲の不明確さを読み取ることです。

拒否できない署名

取引継続のために拒否しにくい状況で、協賛金、減額、追加作業などに署名させる場面です。

根拠や使途の未説明

販売促進費、システム利用料、協賛金の算定根拠や使途が説明されていない場面です。

範囲・期間・上限の不明確さ

追加負担や従業員派遣の範囲、期間、上限、費用負担が不明確なまま運用される場面です。

不利益の示唆

拒否した場合の取引停止、条件悪化、発注減少などを示唆し、実質的な協議がない場面です。

価格転嫁と物流取引

近年は、労務費、原材料費、エネルギーコスト、物流費の上昇を受け、価格転嫁が重要論点になっています。発注者が価格交渉申入れを無視し、資料提出だけを求めて協議しない、合理的説明なく従来価格を据え置く、取引打切りを示唆して値上げを拒む場合、優越的地位の濫用につながるおそれがあります。

次の時系列は、価格改定申入れを受けた企業が記録すべき事項を順番に示しています。後から説明可能性を確保するために、申入れ、社内検討、回答、協議、代替措置の流れを残すことが重要です。

申入れ時

内容と根拠資料を受領する

申入れ日、申入れ内容、根拠資料、対象取引を記録します。

社内検討

検討過程を残す

原価、取引依存度、代替措置、取引継続の必要性を社内資料に残します。

回答・協議

理由付きで回答する

回答日、回答内容、理由、参加者、議事録、協議回数を記録します。

改定後

可否と代替措置を整理する

価格改定の範囲、改定できない場合の代替措置、取引打切り判断の合理的理由を保存します。

物流分野では、荷主が運送事業者に契約外の荷役、荷待ち、検品、返品回収、棚入れ、仕分けなどを無償で行わせることが問題になり得ます。契約書には、基本運賃、附帯作業の範囲、時間外・休日・長距離・多頻度配送の追加料金、待機時間の起算点、キャンセル・返品・再配達の費用、燃料費・人件費上昇時の価格改定条項、記録方法、検収方法、請求方法を明記することが重要です。

Section 08

デジタル・フランチャイズ・知的財産と不公正な取引方法

プラットフォーム、加盟店、ライセンス取引で生じる制限と合理性を確認します。

不公正な取引方法は、デジタル・プラットフォーム、フランチャイズ、知的財産・ライセンスなど、取引構造が複雑な分野で特に現れやすくなります。次の一覧は、各分野で何が問題になりやすいかを整理したものです。読み取るべき点は、支配的な仕組みそのものではなく、相手方の選択や競争機会を不当に狭めていないかです。

Digital

デジタル・プラットフォーム

ネットワーク効果、データ集中、規模の経済、ロックイン、多面市場性があります。手数料・規約の一方的変更、自社優遇、ランキング操作、競合利用制限、データ提供の過剰要求、決済・広告・物流の抱き合わせ、アカウント停止の恣意的運用、消費者データ取得の不透明な同意が問題になります。

Franchise

フランチャイズ

ブランド統一や品質維持の必要性がある一方、本部指定業者からの仕入強制、過大な仕入数量、見切り販売制限、営業時間短縮協議の拒絶、ドミナント出店、追加設備投資の強制、ロイヤルティ算定の不透明性が問題になります。

License

知的財産・ライセンス

利用範囲、地域、期間、分野、数量、サブライセンス、改良技術、非係争義務、販売先、価格を定めます。権利行使に見えても、実質的に供給量や競争を制限する場合は不公正な取引方法の観点から検討が必要です。

個人情報等も、無料サービスの利用場面で対価として提供される場合があると整理されています。個人情報保護法上の適法性だけでなく、消費者または事業者に競争法上の不利益を与えていないかを確認することが重要です。

Section 09

不公正な取引方法の公取委手続と法的リスク

調査、排除措置命令、課徴金、民事差止、損害賠償、ガバナンス影響を見ます。

公正取引委員会は、独占禁止法違反の疑いがある場合、調査を行い、必要に応じて排除措置命令、課徴金納付命令、確約計画の認定、警告、注意などを行います。企業にとっては、法的措置に至らない場合でも、公表や取引先・株主・金融機関・採用市場・メディア・行政との関係への影響が重要です。

次の強調表示は、令和6年度処理状況で示された数値を、企業法務上のリスク感度を持つために整理したものです。排除措置命令全体の中に不公正な取引方法が含まれること、そして警告・注意・確約手続も実務上無視できないことを読み取る必要があります。

令和6年度は排除措置命令21件のうち、不公正な取引方法5件が含まれる

違反被疑行為については、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等などに関する確約計画の認定も行われています。

次の比較表は、不公正な取引方法に関わる主な法的・実務的リスクを並べたものです。行政、金銭、民事、刑事・ガバナンスのどこに波及するかを分けて読むと、社内説明や初動対応が組み立てやすくなります。

リスク内容企業法務上の注意点
行政対応調査、排除措置命令、確約手続、警告、注意があり得ます。資料保存、関係者ヒアリング、当局対応窓口、再発防止策の整理が必要です。
課徴金共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用が対象になり得ます。全ての該当行為が直ちに対象になるわけではなく、反復要件や継続性などの法定要件を確認します。優越的地位の濫用では算定率1%とされています。
民事差止・損害賠償不公正な取引方法は差止請求の対象になり、損害賠償請求も問題になります。独占禁止法上の損害賠償、民法上の不法行為責任、契約責任、不当利得返還請求を検討します。
刑事・ガバナンス不公正な取引方法そのものの刑事事件化は限定的ですが、独禁法違反全般では刑事告発、罰則、入札参加停止、開示、役員責任が問題になります。取締役会、監査役、監査等委員、内部監査、コンプライアンス部門の体制整備が問われます。
Section 10

不公正な取引方法の被害を受けた側の実務対応

事実整理、証拠化、相談先、交渉方針を順番に確認します。

取引先から不公正な取引方法に該当し得る行為を受けている場合、感情的に抗議する前に、事実と証拠を整理することが重要です。誰が、いつ、どのような要請・制限・不利益を課したか、口頭か文書か、契約書・発注書・仕様書・約款との関係、取引依存度、代替先、拒否した場合の不利益、実際の影響、同じ被害を受けている事業者の有無を確認します。

次の判断の流れは、被害を受けた側が初動で行う整理を順番に示しています。順序が重要で、証拠化の前に強い通知を出すと、取引継続や立証に影響することがあるため、事実、資料、相談先を落ち着いて分けて読む必要があります。

被害側の初動整理

事実を時系列化

要請、制限、不利益、影響、関係者を日時ごとに整理します。

契約・証拠を集める

契約書、発注書、請求書、メール、チャット、通話メモ、原価資料を保存します。

法令と交渉方針を確認

独占禁止法、取適法、フリーランス法、契約上の権利を分けて見ます。

緊急性高い
専門家・窓口へ相談

資料を整理し、公取委、関連窓口、弁護士等へ相談します。

交渉余地あり
協議を記録化

価格協議、契約改定、代替案を記録しながら進めます。

次の一覧は、証拠化すべき資料を分類したものです。どの資料が、取引依存度、要請内容、損害、相手方の認識を示すのかを意識して整理すると、相談時の説明が具体的になります。

A

契約・発注関係

契約書、覚書、約款、発注書、仕様書、請求書、検収資料を保存します。

基本資料
B

やり取りの記録

メール、チャット、通話メモ、会議議事録、営業日報、相手方説明資料を保存します。

経緯
C

価格・負担資料

価格改定申入れ、見積書、原価資料、返品、減額、支払遅延、協賛金、派遣要請の記録を整理します。

金額影響
D

依存度・代替性

売上構成、取引依存度、代替先検討資料、同業者への影響を示す資料を整理します。

取引構造

相談先としては、弁護士、企業内弁護士、外部弁護士、公正取引委員会の相談・申告窓口、取適法の相談窓口、フリーランス・トラブル110番等の関連窓口、業界団体、商工会議所、中小企業支援機関が考えられます。

Section 11

不公正な取引方法を防ぐ予防体制

営業・購買・物流・販売管理の現場運用と契約条項を整えます。

不公正な取引方法は、法務部門が契約書レビューをしているだけでは防げません。営業、購買、店舗運営、販売代理店管理、物流管理、マーケティング、プロダクト設計、プラットフォーム運営、フランチャイズ本部運営で発生しやすいリスクを、事前相談事項として社内に組み込む必要があります。

次の一覧は、予防体制で整えるべき運用をまとめたものです。読者にとって重要なのは、禁止行為の暗記ではなく、現場の判断を法務・コンプライアンスへ早く接続し、価格・費用・役務負担の根拠を説明できる状態にすることです。

Governance

事前相談事項を明確にする

価格指示、販売制限、取引拒絶、協賛金、返品、従業員派遣、追加作業要請を事前相談事項にします。

Approval

契約外負担は承認制にする

契約外の費用負担を求める場合、法務・コンプライアンス承認を必須にします。

Record

価格転嫁協議を記録する

申入れ、回答、協議、根拠、代替措置を残す記録様式を作ります。

Training

現場研修を行う

優越的地位の濫用、再販売価格拘束、不当廉売を営業・購買担当者に研修します。

契約書に書くべきこと

次の比較表は、不公正な取引方法を防ぐために契約書で具体化すべき事項を整理したものです。条項名だけでなく、費用・役務・変更・記録の根拠を明示できているかを読み取ることが重要です。

領域具体化すべき事項
取引条件取引対象、数量、品質、納期、検収、価格、価格改定、追加費用、燃料費・労務費上昇時の協議
返品・費用負担返品条件、返品費用、返品期間、販売促進費、協賛金、広告分担金の算定根拠と使途
人員・物流従業員派遣、応援作業、物流附帯作業、荷待ち、時間外対応の範囲と対価
拘束条件解約、取引停止、供給停止、競業禁止、排他、販売地域、販売先制限の範囲と合理性
知財・データ知的財産、データ、成果物利用の範囲、紛争解決、協議手続、記録方法

社内文書の危険な表現

次の一覧は、公取委調査や訴訟で競争者排除や取引先への不当な圧力を示す証拠として使われ得る表現を整理したものです。表現だけで結論が決まるわけではありませんが、実態と合わさるとリスクが高まるため、目的と理由を適切に書く必要があります。

競争者排除を示す表現

「安売り店を潰す」「全社で足並みをそろえさせる」など、排除目的に読める文言です。

価格維持を示す表現

「価格を守らない店には出荷しない」「他社にも同じ価格を守らせている」など、価格拘束に読める文言です。

優越性利用を示す表現

「取引停止をちらつかせて協賛金を取る」「拒否できないはず」など、自由意思の侵害に読める文言です。

無償負担を示す表現

「値上げ要請は受け付けない」「契約にないが無償でやらせる」など、価格転嫁拒否や追加負担に読める文言です。

Section 12

不公正な取引方法に関わる専門家の役割分担

法務、弁護士、会計、労務、知財、現場、経営陣の連携を整理します。

不公正な取引方法への対応は、法務部門だけで完結しません。次の役割分担は、契約レビュー、事実整理、当局対応、税務・会計、労務、知財、現場運用、取締役会判断を横断して示しています。読み取るべき点は、誰が評価し、誰が証拠を集め、誰が是正策を実行するかを早期に分けることです。

役割主な担当
法務担当・企業内弁護士契約レビュー、事実整理、社内調整、当局対応窓口
外部弁護士独禁法評価、調査対応、意見書、交渉、訴訟・差止・損害賠償対応
コンプライアンス担当研修、規程整備、通報対応、再発防止策
内部監査担当取引条件、価格決定、協賛金、返品、物流費、証跡の監査
経理・公認会計士協賛金、リベート、減額、原価、課徴金影響の確認
税理士金銭提供、値引き、返品、寄附金・交際費・広告宣伝費等の税務確認
社会保険労務士フリーランス、労務、派遣、従業員応援の労務論点確認
弁理士・知財法務ライセンス制限、知財契約、標準化、パテントプールの確認
物流・購買・営業責任者現場運用、価格交渉、取引先対応、記録化
経営陣・取締役会方針決定、重大案件の承認、再発防止体制、開示判断

当局調査や社内不祥事対応では、弁護士、企業内弁護士、外部弁護士、内部監査、フォレンジック専門家、会計士、広報、取締役会が連携する必要があります。

Section 13

不公正な取引方法のよくある質問

個別判断ではなく、一般的な制度説明として主要な疑問を整理します。

Q1. 取引先から一方的に値下げを求められました。不公正な取引方法ですか。

一般的には、値下げ要請だけで直ちに不公正な取引方法になるわけではないとされています。ただし、取引上の優越的地位を利用し、協議なく一方的に価格を決める、取引打切りを示唆して受け入れさせる、原材料費・労務費上昇の説明を無視する、既発注分まで遡って減額するような場合は、優越的地位の濫用や取適法上の問題になる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. メーカーが小売価格を示すことは違法ですか。

一般的には、希望小売価格、参考価格、価格目安の提示自体は、取引先が自主的に価格を決められる限り、通常は問題になりにくいとされています。ただし、価格を守らせる方針、同意取得、価格監視、値引き店への是正要請、出荷停止・条件悪化などがある場合は、再販売価格の拘束として問題になる可能性があります。具体的な評価は、運用実態と証拠関係を踏まえて専門家へ相談する必要があります。

Q3. 安売りしている競争者を不当廉売で申告できますか。

一般的には、安売り自体は違法ではないとされています。不当廉売では、供給に要する費用を著しく下回る対価か、継続性があるか、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるか、正当な理由があるかが問題になります。単に自社より安いというだけでは足りないため、具体的には価格、原価、期間、影響資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q4. 契約書に署名していれば、優越的地位の濫用にはなりませんか。

一般的には、署名があることだけで安全とは限らないとされています。相手方が拒否できない状況で、十分な説明や協議がなく、実質的な納得がない場合、合意の実質性が問題になる可能性があります。具体的な判断は、交渉経緯、説明資料、取引依存度、不利益の示唆の有無によって変わります。

Q5. 不公正な取引方法と不正競争防止法は同じですか。

一般的には、両者は別の制度とされています。不公正な取引方法は独占禁止法上の概念で、競争秩序を害する取引方法を規制します。不正競争防止法は、周知・著名表示、商品形態模倣、営業秘密、限定提供データ、虚偽表示などの不正競争行為を規制します。ただし、同じ事案で両方が問題になる可能性があります。

Q6. 公取委に相談すると必ず公表されますか。

一般的には、一般相談には相談者の負担軽減や秘匿性に配慮して行われるものがあり、原則として非公表とされるものがあります。一方、事前相談制度や主要相談事例として公表される場合には、公表条件や相談者の同意が問題になります。相談前に制度の違いと提出資料の扱いを確認することが重要です。

Q7. 取引先に不公正な取引方法をやめさせるにはどうすればよいですか。

一般的には、まず事実と証拠を整理し、契約上の権利、独占禁止法上の論点、取適法・フリーランス法の適用、交渉方針を検討することが重要とされています。そのうえで、書面通知、公取委への相談・申告、民事差止、損害賠償請求などが選択肢になり得ます。ただし、取引継続の必要性や証拠関係で適切な進め方は変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Section 14

不公正な取引方法の企業法務チェックリスト

発注者側と受注者側の双方で、契約・価格・証拠を確認します。

不公正な取引方法のチェックでは、発注者・メーカー・本部側と、受注者・納入業者・加盟者側で見るべき項目が異なります。次の比較表は、双方の立場ごとの確認点を整理したもので、どの項目が契約、価格、役務負担、証拠化に関わるかを読み取ることが重要です。

立場チェックすべき事項
発注者・メーカー・本部側契約外の金銭・役務・人員派遣を求めていないか。協賛金、広告費、システム利用料の算定根拠と使途を説明できるか。返品・減額・支払遅延が契約と合理的理由に基づくか。価格転嫁協議に実質的に応じているか。小売価格を事実上拘束していないか。値引き販売店への出荷停止・条件悪化をしていないか。排他条項や競業禁止条項の範囲・期間が必要最小限か。抱き合わせに合理的理由があるか。フランチャイズ加盟者に過大な負担を課していないか。物流附帯作業や時間外業務の対価を明確にしているか。フリーランス・中小受託事業者への条件明示と支払期限を守っているか。
受注者・納入業者・加盟者側取引先からの要請内容を文書化しているか。取引依存度、代替先、投資状況を説明できるか。費用負担、返品、減額、無償作業の記録があるか。価格改定申入れの根拠資料を整理しているか。取引先からの圧力や不利益示唆を記録しているか。同業他社にも同様の要請があるか確認しているか。相談窓口や弁護士への相談時に必要な資料を準備しているか。

このチェックは、個別事案の結論を出すためのものではなく、早期に事実と資料をそろえ、専門家や当局窓口に相談しやすくするための入口です。

Section 15

不公正な取引方法の結論

契約の形式だけでなく、公正な競争秩序の中で説明できる取引条件を設計します。

不公正な取引方法は、契約書に書いてあるか、当事者が合意したか、価格が安いか高いかだけで判断できる分野ではありません。独占禁止法は、個々の契約を超えて、市場における公正かつ自由な競争を守るために、不当な取引拒絶、価格拘束、排他条件、抱き合わせ、優越的地位の濫用、取引妨害などを規制します。

次の強調表示は、このページ全体の結論をまとめたものです。自社に強い交渉力がある場面ほど、「できること」ではなく「公正な競争秩序の中で説明できること」を基準に取引条件を設計する必要があります。

契約だけでなく、競争への影響を見る

取引条件は、説明可能な交渉、価格・費用・役務負担の根拠、相手方の自由な事業判断への配慮、現場行為の法務把握を前提に設計することが重要です。

  • 取引先を支配するのではなく、説明可能な条件で交渉する。
  • 価格・費用・役務負担の根拠を明確にする。
  • 取引先の自由な事業判断を過度に拘束しない。
  • 自社の市場地位や取引依存度を過小評価しない。
  • 営業、購買、物流、マーケティングの現場行為を法務が把握する。
  • 問題が小さいうちに記録化、是正、相談を行う。

不公正な取引方法のリスクは、単なる法令違反にとどまりません。サプライチェーン、価格転嫁、人的資本、デジタル取引、消費者データ、知的財産、フランチャイズ、物流、フリーランス取引を含む、企業活動全体の公正性と持続可能性に関わります。

Guide

不公正な取引方法で次に確認したいこと

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このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を8件表示しています。

Reference

参考資料

法令・公的解説

  • e-Gov法令検索「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」
  • 公正取引委員会「独占禁止法の規制内容」
  • 公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」
  • 公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
  • 公正取引委員会「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」
  • 公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」
  • 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」
  • 公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」
  • 公正取引委員会「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」

関連制度・運用資料

  • 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
  • 政府広報オンライン「2026年1月から下請法が『取適法』に!委託取引のルールが大きく変わります」
  • 厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」
  • 公正取引委員会「令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況について」
  • 公正取引委員会「ライバー事務所を運営する事業者に対する注意について」
  • 公正取引委員会「課徴金制度」
  • 公正取引委員会「独占禁止法違反行為に対する差止請求制度についてのQ&A」
  • 公正取引委員会「独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)について」