セット販売が直ちに違法になるわけではありません。問題は、主たる商品・役務を梃子に従たる商品・役務を買わせ、競争や顧客の選択を不当に害する構造があるかです。
セット販売が直ちに違法になるわけではありません。
セット化そのものではなく、強制性、競争への影響、顧客選択の阻害を順に確認します。
抱き合わせ販売を検討するときの出発点は、複数の商品・役務を一緒に販売したかではありません。中心となる商品・役務の供給を受けるために、別の商品・役務の購入、利用、契約を余儀なくされる構造があるか、そしてそれが従たる市場の競争や顧客の選択の自由を害するかが重要です。
このページは、2026年5月12日時点で確認された公的資料と近時事例をもとに、企業法務・コンプライアンス担当者が社内審査で使いやすい順番に整理しています。
日本法では、抱き合わせ販売は主に独占禁止法19条が禁止する不公正な取引方法として問題になります。公正取引委員会の一般指定10項は、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を購入させ、又は自己・指定事業者と取引させる行為を規制しています。
次の重要ポイントは、このページ全体の読み方を表します。読者にとって重要なのは、セット販売の名前だけで判断せず、どの市場で、誰の選択が、どのように制限されているかを読み取ることです。
ただし、主たる商品・役務の供給を梃子にして従たる商品・役務を購入させ、競争や顧客選択を不当に害する場合は、抱き合わせ販売等として問題になります。
次の一覧は、抱き合わせ販売規制が何を守ろうとしているかを整理したものです。保護される利益を分けて見ることが重要で、従たる市場の競争だけでなく、顧客が本来選べるはずの取引を選べるかを読み取ってください。
主たる商品で強い地位を持つ事業者が従たる商品まで買わせると、競争者の販路や新規参入の機会が失われるおそれがあります。
顧客が価格、品質、サービスを比較して選べるはずの従たる商品を選べなくなると、不公正な競争手段と評価されることがあります。
優越的な地位を背景に不要な商品・役務を購入させる場合は、抱き合わせ販売に加えて優越的地位の濫用も問題になり得ます。
このページでは、典型パターン、違反判定の順序、近時事例、契約条項・営業運用・技術仕様の注意点、社内審査の確認事項を企業法務の実務向けに整理します。
独占禁止法19条、一般指定10項、行政上・民事上のリスクを整理します。
抱き合わせ販売は、独占禁止法上は主として不公正な取引方法として問題になります。一般指定10項の要点は、主たる商品・役務の供給に併せて、従たる商品・役務を購入させ、又は自己・指定事業者との取引を求める点にあります。
次の比較表は、一般指定10項を実務で確認する際の要素を示しています。各列は規制文言と実務上の意味を対応させたもので、契約書、販売条件、営業説明、技術仕様のどこに要素が現れているかを読み取ることが重要です。
| 要素 | 実務上の意味 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 商品又は役務の供給に併せて | 販売、貸与、利用許諾、保守、サービス提供などに関連して従たる取引を求めることです。 | 契約書、見積書、約款、販売条件、提案資料 |
| 他の商品又は役務を購入させる | 消耗品、保守、決済、金融、保険、施工、ライセンス、データサービスなどを購入・利用させることです。 | 価格表、保証規程、注文画面、営業台本 |
| 自己又は指定事業者と取引させる | 自社だけでなく、指定販売店、指定金融会社、指定保守会社、指定決済会社との取引を求める場合も含まれ得ます。 | 代理店契約、販売店指示、KPI、インセンティブ |
「購入させる」という評価は、契約書に明示的な義務がある場合だけに限られません。客観的に見て少なからぬ顧客が従たる商品を購入せざるを得ない状況であれば、抱き合わせ販売として検討対象になり得ます。
次の比較表は、違反又は違反のおそれが問題化した場合の主なリスクを整理したものです。行政手続、民事請求、信用低下が同時に動くことがあるため、どのリスクが自社の施策に近いかを読み取ってください。
| リスク | 内容 | 実務上の影響 |
|---|---|---|
| 排除措置命令 | 違反行為の取りやめ、再発防止、通知、社内周知、研修、監査などを命じられる可能性があります。 | 販売方法、契約、技術仕様、社内体制の見直しが必要になります。 |
| 確約手続 | 疑義を解消する措置を事業者が計画し、公正取引委員会が認定することがあります。 | 違反認定とは別に、同種行為を止める実務上の強いシグナルになります。 |
| 警告・注意 | 法的措置に至らなくても、違反のおそれがある行為として警告されることがあります。 | 当局公表や報道により、販売現場や取引先への説明負担が生じます。 |
| 差止・損害賠償 | 不公正な取引方法に係る違反では、差止請求や独占禁止法25条の損害賠償責任が問題になり得ます。 | 顧客、競合、取引先との紛争対応が必要になります。 |
| 信用低下・取引停止 | 報道、競合からの申告、顧客離反、販売店の不信、公共調達・医療・金融分野での信用低下が起こり得ます。 | 法的対応だけでなく、広報、営業、内部統制の連携が必要になります。 |
一体商品、任意の割引、事実上の強制を切り分けます。
パソコン本体とOS、医療機器と試薬、SaaSとサポート、機械設備と保守、自動車とメンテナンス、店舗と決済サービスのように、複数の商品・役務を組み合わせる販売方法は広く使われています。顧客利便性、品質維持、安全性、在庫管理、販売促進などの合理性がある場合も多く、セット販売であることだけで違法になるわけではありません。
次の比較表は、組み合わされたものが別個の商品・役務と評価されやすいか、一体の商品・役務と評価されやすいかを示しています。境界判断は抱き合わせ販売の前提になるため、需要、機能、価格、取引実態の列を横断して読み取ることが重要です。
| 判定要素 | 別個の商品・役務と評価されやすい事情 | 一体の商品・役務と評価されやすい事情 |
|---|---|---|
| 需要 | 顧客が片方だけを購入したい需要を持つ。 | 顧客は一体の機能や成果を購入している。 |
| 機能 | 機能、用途、評価軸が異なる。 | 組合せにより新たな単一機能になっている。 |
| 取引実態 | 単品販売、競合品、第三者提供が存在する。 | 通常一体として販売又は使用される。 |
| 価格 | 単品価格、個別請求、別見積りがある。 | 一体価格しかなく、分解が困難である。 |
| 代替性 | 従たる商品を他社から調達できる。 | 他社品では安全、性能、法令適合を確保できない。 |
| 顧客認識 | 顧客が本体と別サービスを区別している。 | 顧客が一つの総合サービスとして購入している。 |
次の一覧は、明示的な義務がなくても実質的にセット購入を選ばざるを得ない典型事情を示しています。読者にとって重要なのは、契約書上の任意性だけでなく、価格差、納期、保証、技術制限、営業説明が顧客の選択を狭めていないかを読み取ることです。
単品購入は可能とされていても、単品価格が著しく高く、合理的な選択肢として機能しない場合です。
セット購入者だけ納期、在庫、割当てで優遇し、単品希望者を恒常的に後回しにする場合です。
自社指定品を使わない場合、必要な修理、情報開示、部品供給を拒む場合です。
競合品を使うと機能が作動しない、又は必要な連携ができないように設計する場合です。
任意としながら、現場で「買わないと売れない」「加入が条件」と説明する場合です。
販売マニュアル、KPI、インセンティブが、実質的な条件販売を誘発している場合です。
公正取引委員会の相談事例では、検査機器と検査試薬を組み合わせた料金方式について、顧客が申し出れば個別販売を受けられ、他メーカーの試薬を選択できることから、直ちには問題ないと整理された例があります。ただし、セット方式だけを著しく有利にして他方式の選択を妨げる場合は、評価が変わり得ます。
商品分離、強制性、市場力、市場閉鎖、顧客選択、正当化事由を順に見ます。
次の判断の流れは、抱き合わせ販売の違反判定で確認する順番を示しています。順番が重要なのは、商品が別個でなければ抱き合わせの前提が弱くなり、強制性や市場影響がなければ違法評価に進みにくいためです。上から下へ、各段階で何が不足しているかを読み取ってください。
主たる商品・役務と従たる商品・役務が別個といえるかを確認します。
顧客が従たる商品・役務を購入又は利用せざるを得ないかを確認します。
行為者が主たる商品・役務市場で有力な事業者かを確認します。
競争者の取引機会減少、新規参入阻害、価格・品質への影響を確認します。
市場閉鎖が明確でなくても、顧客の選択を不当に害していないかを確認します。
安全性、品質、法令対応などの必要性と、より制限の少ない手段を確認します。
次の比較表は、強制性を明示的強制、条件付き強制、事実上の強制に分けたものです。リスクの高低は契約書だけで決まらないため、列ごとの例を自社の販売実態に当てはめて読み取ることが重要です。
| 強制性の層 | 例 | リスク |
|---|---|---|
| 明示的強制 | 本体購入者は当社試薬のみを使用する、指定ローン契約を締結する、という条項を置く。 | 高い |
| 条件付き強制 | 購入しない場合、納期、価格、保証、修理、部品供給、更新、サポートで不利益を与える。 | 高い |
| 事実上の強制 | 技術仕様、価格差、営業運用、在庫配分、現場説明により、現実には他の選択肢がない。 | 事情次第で高い |
公正取引委員会のFAQは、主たる商品の市場における有力なメーカーについて、一応の目安として市場シェア20%超に言及しています。ただし、この数字は絶対的な安全圏や危険圏ではありません。ブランド、規格、既存設備、スイッチングコスト、供給制約、認証、ネットワーク効果なども合わせて確認します。
次の比較表は、市場閉鎖効果を見るための評価項目を整理しています。対象顧客、期間、競争者、代替販路、技術利用可能性、顧客の実害、内部資料の列から、競争への影響がどこに現れるかを読み取ってください。
| 評価項目 | 確認すべき事実 |
|---|---|
| 顧客範囲 | 全顧客か、一部顧客か、大口顧客か、新規顧客か既存顧客かを確認します。 |
| 期間 | 一回限りか、継続契約か、更新時も拘束されるか、保守期間に及ぶかを確認します。 |
| 従たる市場の競争者 | 競合供給者の数、規模、参入可能性、差別化の程度を確認します。 |
| 代替販路 | 競争者が他の顧客層、用途、地域で販売できるかを確認します。 |
| 技術的利用可能性 | 本来は利用可能な競合品を、契約、技術、営業で排除していないかを確認します。 |
| 顧客の実害 | 価格上昇、選択肢減少、品質・サービス低下、革新阻害を確認します。 |
| 内部資料 | 後発品排除、競合の販路遮断、他社サービス封じ込めを示す記載がないかを確認します。 |
安全性、品質保証、相互運用性、法令・規制対応、知財保護、顧客利便性、コスト低減は、抱き合わせ的な設計を説明する事情になり得ます。ただし、単に安全や品質のためと述べるだけでは足りず、必要性、範囲の限定、期間の限定、第三者参入可能性、情報・部品アクセス、顧客選択の余地を具体的に設計する必要があります。
人気商品、機器と消耗品、ソフトウェア、自動車、加盟店、金融、ライセンス、サブスクを見ます。
次の一覧は、実務で問題になりやすい抱き合わせ販売の類型を並べたものです。類型ごとに主たる商品、従たる商品、強制の現れ方が異なるため、どの部門や資料を確認すべきかを読み取ることが重要です。
人気ゲーム機、希少車種、出店権、重要部品などを条件に、売れ残り商品、付帯サービス、金融契約、下取りを求める類型です。
希少性販売現場本体販売後に継続的に必要となる消耗品、試薬、部品、保守を自社品に限定する類型です。他社品が本来利用可能かが重要です。
技術制限保守OS、SaaS、クラウド、API、データ、決済、広告、AI機能を組み合わせ、第三者アプリやサービスを排除する類型です。
連携制限データメンテナンスパック、保証延長、ローン、保険、下取り、施工、コーティングを本体販売の実質条件にする類型です。
付帯販売納期出店、加盟、契約更新の条件として、決済、ポイント制度、POS、物流、広告、指定仕入先、保険を求める類型です。
加盟条件併用可否融資、保証、リース、与信、決済を梃子に、別の金融商品、保険、口座、コンサルティング契約を購入させる類型です。
優越的地位任意性技術ライセンスやノウハウ提供の条件として、関連部品、装置、研修、データ、別ライセンスを購入させる類型です。
知財認定基準顧客が不要な機能を高額に負担しなければ基本サービスを利用できない、又は競合機能を排除する目的で重要機能を束ねる類型です。
価格設計解約ASP Japan合同会社事件やシスメックス確約事案が示すように、契約条項だけでなく、二次元コード、認証、ソフトウェア制御、API、保証条件によって他社品を実質的に使えなくする設計が問題になり得ます。技術部門、品質保証、規制対応、営業、カスタマーサポートを含めて競争法レビューを行う必要があります。
契約書では任意と書いていても、営業担当が「ローンを組まないと売れません」「下取りがないと納車枠を回せません」「加入しないと順番が後になります」と説明すると、顧客には強制と受け止められる可能性があります。販売台本、研修、KPI、インセンティブ、管理職の指示、顧客説明資料を含めた実態管理が必要です。
技術的ロック、指定試薬、希少車種、相談事例から実務上の線引きを確認します。
次の時系列は、このページで取り上げた近時・代表的事例を並べたものです。日付や期間は、当局がどの段階で問題視したかを理解するために重要で、各事例の主たる商品、従たる商品、問題となった拘束方法を読み取ってください。
内視鏡洗浄消毒器について、自社消毒剤の二次元コードを読み取らなければ機能が作動しない構造が問題になりました。技術的なロックインが抱き合わせ販売等と評価され得ることを示します。
特定血液凝固測定装置で他社製試薬を使用できるにもかかわらず、自社指定試薬のみを使用することを条件として装置を供給していたことが違反被疑行為として公表されました。
特定車種の新車購入希望者に対し、ボディコーティング、メンテナンスパック、指定クレジット契約、下取りをさせていた疑いがあるとして警告が行われました。
次の比較表は、相談事例で問題ない方向に整理された主な理由をまとめたものです。自社施策を安全側に寄せるには、合理性だけでなく、範囲限定、併用可能性、単品選択、情報アクセスが確保されているかを読み取ることが重要です。
| 相談事例 | 問題ないとされた主な理由 | 実務への示唆 |
|---|---|---|
| 建築用建材と定期点検契約 | 安全性確保の必要性、十分な点検ができる者が現時点で自社以外にいないこと、単年契約、更新時の乗換可能性、必要部品の供給を制限しないことが考慮されました。 | 安全性を理由にする場合も、期間と範囲を限定し、第三者参入の余地を残します。 |
| 鉄道事業者と電子マネー契約 | 対象が新規テナント事業者に限定され、他の電子マネーとの併用を制限しないことが考慮されました。 | 指定サービスを標準にしても、他社サービスとの併用を妨げない設計が重要です。 |
| バイオ検査機器と検査試薬 | 顧客の申し出があれば個別販売し、他メーカー試薬を選択可能であることが考慮されました。 | 単品購入や他社品利用が実質的に可能であることを運用で支える必要があります。 |
| エネルギー商品のセット販売 | 原則として供給費用を下回らない形で、提携先の商品とセット販売することが問題ない方向に整理されました。 | 価格設計には、原価、効率性、顧客への利益還元の説明可能性が必要です。 |
これらの事例に共通するのは、合理性がある、範囲が限定される、他社品・他社サービスを妨げない、単品・代替手段が残される、顧客の選択を実質的に確保する、という点です。
商品分離、強制性、市場力、市場閉鎖、正当化を社内審査で確認します。
次の比較表は、主たる商品・役務と従たる商品・役務が別個と評価されやすい事情を示しています。最初の切り分けを誤ると、その後の市場影響評価もずれるため、顧客需要と取引実態を中心に読み取ってください。
| チェック項目 | はいの場合の意味 |
|---|---|
| 顧客は従たる商品・役務だけを単独で購入することがあるか | 別個商品性を示します。 |
| 従たる商品・役務には競合事業者がいるか | 別市場の存在を示します。 |
| 過去に単品販売していたか | 別個取引の実態を示します。 |
| 見積書・請求書・契約書で個別に表示しているか | 分離可能性を示します。 |
| 顧客は従たる商品・役務を不要又は他社品希望と表明しているか | 顧客需要の分離を示します。 |
| 従たる商品・役務は内容・機能・評価基準が異なるか | 独立性を示します。 |
| 業界では他社品・第三者サービスの利用が一般的か | 代替可能性を示します。 |
次の比較表は、強制性と市場力を同時に確認するための実務項目です。赤信号の列は、販売現場や技術仕様に現れやすい事情を示すため、契約書だけではなく実際の運用資料まで読み取ってください。
| 区分 | 赤信号の例 |
|---|---|
| 契約条項 | 本体購入者は当社指定品のみを購入する。 |
| 供給条件 | 付帯サービスに加入しない場合、本体を販売しない。 |
| 技術仕様 | 他社品を使うと機能が作動しない。 |
| 保証条件 | 他社品使用で、因果関係のない不具合まで全保証を失効させる。 |
| 価格条件 | 単品価格が不合理に高く、現実的な選択肢にならない。 |
| 納期・在庫 | セット購入者だけ優先し、単品希望者を恒常的に後回しにする。 |
| 営業説明 | 必須、条件、加入しないと売れないと説明する。 |
| KPI | 従たる商品の装着率を過度に評価し、条件販売を誘発する。 |
| 顧客苦情 | 不要なのに買わされた、断ると供給されなかったという声がある。 |
次の比較表は、正当化事由を主張する場合に必要な裏付けを整理したものです。安全性や品質という見出しだけではなく、証拠、範囲、期間、非差別性、顧客説明までそろっているかを読み取ってください。
| チェック項目 | 適法方向に寄せる説明・証拠 |
|---|---|
| 安全性 | 事故リスク、法令・規格、検証データ、第三者品の具体的危険を示します。 |
| 品質 | 品質保証に必要な範囲か、過剰制限ではないかを説明します。 |
| 技術互換性 | 仕様開示、認証制度、テスト環境の提供可能性を検討します。 |
| 期間限定 | 初期導入時だけか、更新時に選択可能かを明確にします。 |
| 範囲限定 | 特定用途・特定機能だけに限定されているかを確認します。 |
| 単品選択 | 単品購入が実質的に可能かを確認します。 |
| 他社品選択 | 他社品・第三者サービスを利用できるかを確認します。 |
| 非差別性 | 認証、承認、サポート条件が客観的・非差別的かを確認します。 |
| 内部資料 | 目的が競合排除ではなく、合理的必要性として記録されているかを確認します。 |
危険な条項を、任意性、因果関係、客観基準、第三者選択へ修正します。
次の比較表は、抱き合わせ販売リスクが高い条項の考え方と、低リスク方向への修正を対応させたものです。左列は従たる商品を条件化する発想、右列は任意性や因果関係によって制限を絞る発想を示しており、どの修正要素が自社条項に不足しているかを読み取ってください。
| 高リスクの考え方 | 低リスク方向の考え方 |
|---|---|
| 本機器に使用する消耗品をすべて売主又は売主指定販売店から購入させる。 | 規格適合・認証済み消耗品を使用可能にし、自社品は推奨にとどめます。 |
| 指定保守契約に加入しない場合、本体販売や契約更新を拒絶できる。 | 初年度点検など必要範囲に限定し、更新時は第三者保守も選択できるようにします。 |
| 第三者製品を使用した場合、因果関係を問わず一切の保証を失わせる。 | 第三者製品の使用に起因する不具合だけを保証対象外とします。 |
| 指定決済、物流、広告、データ分析サービスを一律に利用させる。 | 標準サービスとして提供しつつ、他社サービスとの併用や必要機能だけの選択を認めます。 |
| 販売店に、指定金融契約や保険契約を顧客に締結させる義務を課す。 | 任意性、単品価格、代替手段、説明禁止事項を販売店契約と研修に明記します。 |
次の一覧は、技術部門と営業部門が見落としやすい赤信号を整理したものです。契約書が任意でも、技術仕様や現場指示が顧客の選択を奪うことがあるため、どの部門に是正を求めるべきかを読み取ってください。
自社消耗品、試薬、部品だけを認識する仕様は、他社品が本来利用可能な場合に高リスクです。
第三者アプリ、API、データ連携、プラグインを合理的理由なく排除する設計は注意が必要です。
競合事業者が互換製品を開発できない状態にすると、従たる市場への参入阻害が問題になります。
個人評価や販売店評価が付帯商品販売に偏ると、条件販売を誘発しやすくなります。
付帯商品販売実績に納期や供給枠を結び付けると、顧客に強制と受け止められやすくなります。
不要な商品を買わされたという苦情を法務・コンプライアンスへ共有しない運用は、早期是正を遅らせます。
修正の基本は、必須ではなく任意であること、保証除外は因果関係のある範囲に限定すること、安全・品質上の制限は客観基準にすること、第三者品・第三者サービスの利用可能性を残すこと、営業資料と実態を一致させることです。
商品設計段階から、価格、契約、技術、営業、KPIを横断して確認します。
次の比較表は、販売開始前の競争法レビューで確認すべき資料と、その確認目的を示しています。抱き合わせ販売リスクは販売後の修正が難しいため、事業企画、価格、契約、技術、保証、営業、苦情対応を一体で読み取ることが重要です。
| 資料 | 確認目的 |
|---|---|
| 事業企画書 | 目的が顧客利便性・品質か、競合排除かを確認します。 |
| 市場分析資料 | 主たる商品・従たる商品の市場、シェア、競合状況を確認します。 |
| 価格表 | 単品選択が実質的に可能かを確認します。 |
| 契約書・約款 | 明示的な購入義務、指定事業者取引義務の有無を確認します。 |
| 技術仕様 | 他社品利用を不必要に妨げていないかを確認します。 |
| 保証規程 | 保証除外が因果関係のある範囲に限定されているかを確認します。 |
| 営業資料 | 必須又は条件と誤認させないかを確認します。 |
| KPI・インセンティブ | 現場に事実上の強制を誘発しないかを確認します。 |
| 顧客説明資料 | 任意性、価格、選択肢、保証範囲が明確かを確認します。 |
| 苦情対応の経路 | 問題兆候を早期に把握できるかを確認します。 |
次の一覧は、セット販売を安全に行うための設計原則をまとめたものです。各項目は、顧客に選択肢を残し、競争者を不必要に排除しないための観点であり、自社の施策がどの原則を満たしているかを読み取ってください。
顧客がセット購入と単品購入を実質的に選べるようにします。
セット価格、単品価格、割引理由、保証範囲、解約条件を明確にします。
従たる商品・役務の競争者が合理的に顧客へアクセスできるようにします。
安全、品質、法令対応に必要な範囲を超えて制限しないようにします。
自社品限定ではなく、規格、認証、検証など客観的な基準を用います。
初期導入時の必要性がある場合でも、更新時や安定運用後の選択肢を確保します。
正当化理由、代替手段の検討、競争影響評価を記録します。
次の判断の流れは、高リスク施策を通常の販促承認だけで進めないための社内承認手順を示しています。順番に意味があり、事業部門の目的説明、法務の一次審査、技術・品質の裏付け、経営判断、販売後監査がつながっているかを読み取ってください。
施策案、目的、対象顧客、価格、契約、技術仕様を提出します。
抱き合わせ販売、排他条件、優越的地位、景表法、業法を一次審査します。
営業運用、KPI、研修、モニタリングを確認します。
安全性、品質、互換性、第三者品検証を説明します。
高リスク施策を承認又は差戻しします。
苦情、単品販売実績、競合排除効果、価格差を定期監査します。
兆候把握、初動、当局対応資料、是正措置を実務順に整理します。
抱き合わせ販売は、当局調査、競合からの申告、顧客苦情、販売店内部告発、SNS・報道で顕在化することがあります。不要な商品を買わされたという苦情、競合品が使えるはずなのに使えないという連絡、本部指示で付帯商品を条件にしているという販売店相談、競合排除を示す内部資料、他社品を遮断するアップデート、付帯商品装着率の急上昇、単品販売見積りの極端な不利化は早期確認が必要です。
次の時系列は、疑義が生じたときの初動対応の順番を示しています。初動の順番が重要なのは、証拠保全、説明統制、暫定停止、専門家関与、顧客影響把握を誤ると、後の調査や是正が難しくなるためです。
契約書、見積書、価格表、営業資料、メール、チャット、販売マニュアル、技術仕様、会議資料、顧客苦情を保全します。
営業担当が個別に説明すると証拠汚染や説明不一致が起こるため、法務主導で確認範囲と対外説明を統制します。
条件販売、技術ブロック、不適切説明が疑われる場合は、暫定停止や代替運用を検討します。
当局対応、内部調査、法的評価、証拠保全、秘密管理、再発防止策の設計には外部弁護士の関与が望ましい場面があります。
どの顧客がどの程度、従たる商品を購入せざるを得なかったか、返金、契約変更、通知の必要性を検討します。
次の比較表は、公正取引委員会の調査で重要になりやすい資料と争点を対応させたものです。事業目的、技術排除、営業説明、価格差、苦情、販売データ、法務レビューのどこにリスクが現れるかを読み取ってください。
| 資料 | 争点 |
|---|---|
| 事業計画・市場資料 | 市場力、競合排除目的、売上維持目的が問題になります。 |
| 技術仕様書 | 競合品を技術的に排除していないかが問題になります。 |
| 会議議事録 | 目的、代替手段検討、法務レビューの有無が問題になります。 |
| 営業マニュアル | 顧客への説明が任意か条件かが問題になります。 |
| 価格表・割引表 | 単品選択が実質的に可能かが問題になります。 |
| 顧客苦情 | 顧客選択の自由が害されているかが問題になります。 |
| 販売データ | 付帯商品購入率、市場閉鎖効果、対象顧客数が問題になります。 |
| 競合資料 | 競合事業者の取引機会減少が問題になります。 |
| 法務レビュー | 事前検討の有無、是正提案、経営判断が問題になります。 |
次の一覧は、問題が認められる場合に検討される是正措置を整理したものです。単に今後注意するだけでは足りず、行為の取りやめ、機関決定、通知、周知、研修、監査、技術・契約・価格・KPIの改定まで、原因に応じて何を組み合わせるかを読み取ってください。
問題行為を取りやめ、同様行為を行わない旨を適切な機関で決定します。
停止対象者へ変更内容を通知し、現場説明のばらつきを防ぎます。
通知独占禁止法遵守に関する行動指針、定期研修、第三者監査を設計します。
統制技術仕様、情報開示、認証手続、契約条項、価格表、営業資料、評価指標を原因に応じて改定します。
根本対応企業法務でよく確認される論点を、一般情報として整理します。
一般的には、複数の商品・役務を組み合わせて販売すること自体が直ちに違法となるわけではないとされています。ただし、主たる商品・役務の供給を受けるために従たる商品・役務の購入を余儀なくされ、競争や顧客選択を不当に害する事情がある場合は、独占禁止法上問題となる可能性があります。具体的な評価は、市場、シェア、取引実態、営業説明、技術仕様、価格設計によって変わるため、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、任意であることを明記することは重要な対応の一つとされています。ただし、価格差、納期、在庫、保証、修理、技術仕様、販売現場の説明により、現実にはセット購入を選ばざるを得ない場合は、事実上の強制と評価される可能性があります。具体的には、契約文言と実際の運用が一致しているかを確認する必要があります。
一般的には、安全性、品質保証、法令適合、相互運用性が正当化事情として考慮されることがあります。ただし、必要性の裏付け、範囲の限定、期間の限定、第三者品の検証・認証手続、部品や情報への合理的アクセスがない場合は、過剰な制限と評価される可能性があります。個別の設計は、技術資料や事故リスクを含めて専門家に確認する必要があります。
一般的には、主たる商品・役務と従たる商品・役務の切り分け、購入・利用の強制性、主たる市場での地位、従たる市場への影響、顧客選択の阻害、正当化事由と代替手段を順に確認すると整理しやすいとされています。実務では、契約書だけでなく、価格表、営業資料、KPI、技術仕様、保証規程、苦情対応の資料も合わせて確認する必要があります。
法務、営業、技術、品質、知財、コンプライアンス、内部監査で共同管理すべきテーマです。
次の重要ポイントは、抱き合わせ販売の違反判定を一文で整理したものです。読み取るべき点は、販売名目ではなく、主たる商品・役務の供給を利用して顧客に従たる商品・役務を購入させているか、その結果として競争や顧客選択が不当に害されているかです。
顧客に選択肢を残し、単品購入を実質的に可能にし、第三者品・第三者サービスを不必要に排除せず、安全・品質上必要な制限は客観的・非差別的・最小限にすることが基本です。
企業法務の実務では、第一に主たる商品・役務と従たる商品・役務が別個か、第二に顧客が従たる商品・役務を購入・利用せざるを得ないか、第三に行為者が主たる市場で有力な地位を持つか、第四に従たる市場で競争者の取引機会が減少するか、第五に安全性・品質・法令対応などの合理的必要性があり、より制限の少ない手段を検討したかを確認します。
近年は、契約条項による明示的な抱き合わせだけでなく、技術仕様、認証コード、ソフトウェア制御、API、保証条件、販売KPI、在庫配分、希少商品の納期優遇などを通じた事実上の抱き合わせが重要になっています。判断過程を記録し、販売現場に正しく実装し、苦情や単品販売実績を継続的に監査することが、リスクを下げる実務対応になります。
公的資料と公正取引委員会資料を中心に整理しています。