会社分割で対象事業をどう定義し、資産・債務・契約・労働契約・知財・個人情報・許認可をどう承継、非承継、条件付き承継、共用に分けるかを実務目線で整理します。
会社分割で最初にそろえるべき四層の境界設計を確認します。
会社分割で最初にそろえるべき四層の境界設計を確認します。
分割対象事業の特定と権利義務の切り分けは、会社分割実務の中心です。吸収分割および新設分割は、分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、既存会社または新設会社に承継させる組織再編行為です。
包括承継的な効果を有するからといって、対象事業に関するものが何となく全部移るわけではありません。実務上の承継範囲は、分割契約または分割計画の記載、添付明細、会計・税務上の区分、労働契約承継法上の手続、契約上の通知・同意・解除条項、個人情報・知財・許認可の個別法制によって具体化されます。
次の重要ポイントは、会社分割の成否を左右する四層の設計を表しています。読者にとって重要なのは、事業の輪郭、法的承継、第三者対応、運用分離が一致しなければ、効力発生日後に重大な不整合が出る点です。4つの層を横断して読み取ってください。
法律上、会計上、税務上、労務上、データ上、運用上の輪郭を同じ形で説明できる状態まで具体化することが、分割対象事業の特定と権利義務の切り分けのゴールです。
次の4つの観点一覧は、検討対象を段階別に整理しています。重要なのは、どれか一つを後回しにすると、資産は移ったが契約が使えない、従業員は移ったが許認可がないといった問題に直結することです。各層で何を確認するかを見てください。
商品・サービス、顧客、商流、拠点、組織、人員、設備、システム、データ、知財、許認可、収益費用を単位として対象事業を定義します。
資産、債務、契約、労働契約、知財、データ、訴訟上の地位、保証、偶発債務を承継・非承継・条件付き承継・共用に分類します。
債権者保護、契約相手方の通知・同意、許認可、労働者・労働組合への通知、個人情報の利用目的、知財登録を処理します。
会社分割、分割対象事業、権利義務の意味を実務上の単位に落とします。
会社分割には、分割会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を既存会社に承継させる吸収分割と、分割により設立する会社に承継させる新設分割があります。株式譲渡と異なり対象は株式そのものではなく、事業に関する権利義務です。事業譲渡よりも組織再編行為としての性質が強い一方、承継対象の具体化は分割契約・分割計画で行います。
次の比較表は、会社分割、株式譲渡、事業譲渡の違いを整理しています。なぜ重要かというと、対象が法人格なのか、株式なのか、権利義務なのかによって、契約同意、労働者保護、許認可、会計税務の検討順序が変わるためです。取引の対象と移転方法を横に見比べてください。
| 類型 | 主な対象 | 分割対象事業との関係 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 対象会社の株式 | 法人格と権利義務は原則として対象会社に残り、株主が変わります。 |
| 事業譲渡 | 個別の資産・契約・債務など | 契約・資産ごとの移転手続や相手方同意が中心になります。 |
| 会社分割 | 事業に関して有する権利義務の全部または一部 | 分割契約・分割計画に定めた範囲を承継させる組織再編行為です。 |
次の一覧は、会社分割で権利義務に含まれ得る対象を分類しています。重要なのは、帳簿に載る資産負債だけでなく、契約上の地位、労働契約、知財、個人情報、許認可、訴訟、保証、税務上の地位まで含めて棚卸しする点です。項目ごとに、明細化すべき範囲を確認してください。
部署名ではなく、製品・顧客・拠点・人員・データまで定義します。
会社分割の初期検討では、この事業を切り出す、この部門を分割するという経営上の言葉が使われます。しかし契約書に記載すべき対象は、経営上の感覚ではなく、法律上特定可能な事業境界です。既存の部署名、支店名、勘定科目名だけでは、複数事業の兼営、共通部門、共通知財、共通システム、兼務者を処理しきれません。
次の表は、分割対象事業を定義するための確認観点を示しています。なぜ重要かというと、対象事業の外延が曖昧なまま権利義務を分類しても、後で承継漏れや過剰承継が発生するためです。左列の観点ごとに、中央列の確認内容と右列の留意点を読み取ってください。
| 観点 | 確認すべき内容 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 商品・サービス | 製造・販売・提供しているもの | 旧製品、保守サービス、派生製品、開発中製品を含めるか。 |
| 顧客 | 対象顧客・契約・販売チャネル | グループ顧客、包括契約、未発注案件、代理店経由取引を整理します。 |
| 仕入・外注 | サプライヤー、購買、外注 | 共通購買契約、価格条件、独占供給、最低購入義務に注意します。 |
| 拠点 | 工場、店舗、支店、倉庫、研究所 | 賃貸借、設備、消防・環境・業法許認可と連動します。 |
| 人員 | 主従事労働者、兼務者、管理職、派遣・出向者 | 労働契約承継法、社会保険、退職給付を検討します。 |
| 知財・データ | 特許、商標、ノウハウ、個人情報、営業秘密 | 利用目的、共同利用、移転登録、アクセス権限を確認します。 |
| システム・収益費用 | ERP、CRM、会計、人事、製造管理、売上・原価・共通費 | 会計・税務上の事業単位、データ移行、移行サービスと整合させます。 |
| 許認可 | 免許、登録、届出、有効期限 | 承継可否、事前承認、再取得、効力発生日の日程を確認します。 |
次の重要ポイントは、事業としての有機的一体性を確認する視点を表しています。重要なのは、設備だけ、契約だけ、人員だけを移しても事業が継続できない場合があることです。承継会社が効力発生日の翌日から対象事業を続けられるかを読み取ってください。
売上を生む契約、仕入・外注契約、人員、設備、システム、許認可、データ、品質保証、保守対応がそろっているかを確認し、足りない機能は移行サービス契約や業務委託で補完します。
承継・非承継・条件付き承継・共用を明細化します。
権利義務の切り分けでは、すべての権利義務を、承継対象、非承継対象、条件付き承継、共用・移行対象の四分類に置くことが実務上有効です。分類しないまま進めると、会社分割後にどちらの会社が管理するのか分からない権利義務が残ります。
次の表は、四分類の意味と典型例を整理しています。重要なのは、法務上の分類が会計処理、税務処理、内部統制、契約管理、個人情報管理、監査対応にも波及することです。各分類の対象と、必要な追加手続を確認してください。
| 分類 | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| 承継対象 | 承継会社・新設会社に移す | 対象事業の顧客契約、在庫、設備、主従事者の雇用契約 |
| 非承継対象 | 分割会社に残す | 本社借入、全社訴訟、他事業の契約、除外知財 |
| 条件付き承継 | 同意、許認可、登録、解除条件等を要する | 金融契約、ライセンス契約、許認可、公共契約 |
| 共用・移行対象 | 一定期間または継続的に双方で利用する | ERP、商標、物流契約、共通購買、バックオフィス機能 |
次の表は、権利義務明細表に入れるべき管理項目を示しています。なぜ重要かというと、この明細表は作業資料にとどまらず、契約ドラフティング、取締役会説明、債権者対応、労働者対応、監査、税務、登記、PMIに共通して使われる中核文書だからです。列ごとに、証跡化すべき情報を確認してください。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 管理番号・区分・名称 | 契約番号、資産番号、勘定コード、契約名、資産名、債権債務名、権利名を記載します。 |
| 相手方・内容 | 顧客、仕入先、金融機関、従業員、金額、期間、主要条件、所在地を整理します。 |
| 帰属・担当者 | 承継、非承継、条件付き承継、共用を明示し、双方の担当部署・責任者を置きます。 |
| 必要手続・リスク | 同意、通知、登録、許認可、公告、労働者通知、解除、期限の利益喪失、違約金、個人情報、担保、紛争を管理します。 |
| 証跡 | 契約書、台帳、議事録、同意書、届出控え、監査資料をひも付けます。 |
次の判断の流れは、包括的な一切の権利義務という表現だけで足りるかを確認するためのものです。重要なのは、共通契約、過去製品保証、税務リスク、個人データ、許認可などは包括文言だけでは処理できないことです。上から順に、別紙明細と除外リストが必要かを判断してください。
部門コード、顧客、製品、拠点、会計処理、利用実態で確認します。
共通契約、共通商標、共通システム、兼務者、共通負債を確認します。
共用、ライセンス、業務委託、移行サービス、費用負担を明確にします。
除外リストや誤配・誤請求処理条項と合わせて証跡化します。
流動資産、固定資産、無形資産、過去債務、将来債務を時間軸で整理します。
資産の切り分けでは、売掛金、棚卸資産、前払費用、未収入金、現金預金、不動産、機械装置、工具器具備品、車両、リース資産、ソフトウェア、建設仮勘定を整理します。無形資産・データ・ITでは、ソースコード、API、データベース、クラウドアカウント、ドメイン、SNSアカウント、広告アカウント、アクセス権限も対象になります。
次の比較表は、資産類型ごとの確認事項を示しています。重要なのは、権利の帰属と実際に利用できる状態が一致しないことがある点です。各資産について、台帳、契約主体、保管場所、名義、権限を照合してください。
| 資産類型 | 確認事項 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 売掛金、棚卸資産、前払費用、未収入金、現金預金 | 基準日までに発生した債権と効力発生日後の債権、ロット、滞留在庫、返品予定品を分けます。 |
| 固定資産 | 不動産、建物、設備、リース資産、車両、ソフトウェア | 登記、担保権、賃貸借、環境リスク、消防・建築規制、リース会社承諾を確認します。 |
| 無形資産・IT | ソースコード、クラウド、データベース、ドメイン、広告アカウント | 契約主体、サブスクリプション、データ処理契約、暗号鍵、ログ保存、管理者権限を確認します。 |
次の時系列は、債務を効力発生日の前後で切り分ける考え方を表しています。重要なのは、効力発生日後に顕在化したクレームでも、原因が効力発生日以前の設計・製造にある場合がある点です。いつ発生し、何に起因し、誰が最終負担するかを確認してください。
買掛金、未払費用、税務リスク、不祥事、過去製品保証、既存訴訟を承継対象にするか、残存させるかを決めます。
帳簿、明細表、契約同意、許認可、労働者承継、登記・登録を照合します。
次のリスク一覧は、帳簿上明確に見えにくい偶発債務を表しています。重要なのは、未計上でも会社分割の価値や承継会社の事業継続に直結する点です。外部化の程度に応じて、承継、残存、補償、保険、引当金を検討してください。
訴訟、仲裁、行政調査、税務調査、労務紛争は、当事者、請求額、対応方針を明細化します。
知財侵害警告、製品クレーム、品質保証、情報漏えい通知などは将来負担を定めます。
外部化していない不正、環境、労務、セキュリティ、税務否認リスクも検討対象です。
契約台帳、同意・通知、解除、期限の利益喪失を全件レビューします。
契約の切り分けは、会社分割の中でも実務負荷が高い領域です。対象事業の契約には、顧客契約、仕入契約、販売代理店契約、業務委託契約、ライセンス契約、共同開発契約、秘密保持契約、賃貸借契約、金融契約、保険契約、クラウド利用契約、広告契約、物流契約などが含まれます。
次の表は、契約レビューで必ず確認したい項目と典型リスクを整理しています。重要なのは、会社法上の承継効があっても、契約上の通知・同意・解除・期限の利益喪失条項は別に問題となることです。各行で、相手方対応の必要性を確認してください。
| 確認項目 | 典型的なリスク |
|---|---|
| 譲渡・承継制限 | 会社分割、組織再編、実質的支配変更が同意対象になっている可能性があります。 |
| 通知義務 | 効力発生日の何日前までに通知が必要かを確認します。 |
| 解除条項・期限の利益喪失 | 会社分割、信用不安、支配変更が解除や金融契約のトリガーになることがあります。 |
| 独占・競業避止 | 承継会社の既存事業との競合が問題になります。 |
| 価格・リベート・最低数量 | グループ全体取引量を前提とした条件が維持できるか確認します。 |
| 個人情報・知財ライセンス | 委託先、共同利用、越境移転、サブライセンス、使用範囲、地域を確認します。 |
次の判断の流れは、同意未取得契約をどう処理するかを表しています。なぜ重要かというと、効力発生日までに同意が得られない契約を便宜的に運用すると、業法、個人情報、知財ライセンス、下請・独禁法、税務、会計、収益認識の問題が後で顕在化するためです。分岐ごとの選択肢を確認してください。
会社分割、組織再編、支配変更、譲渡禁止、通知期限を契約台帳で確認します。
相手方の審査期間、交渉条件、解除・違約金リスクを見込みます。
同意書、通知控え、契約変更、相手方説明を証跡化します。
承継対象から除外、効力発生日延期、停止条件、暫定委託、新契約、補償条項を検討します。
労働契約承継法、主従事労働者、異議申述、説明手続を整理します。
会社分割における労働者保護では、会社法だけでなく労働契約承継法が重要です。同法は、会社分割に伴う労働契約の承継等について会社法の特例を定め、労働者保護を図る制度です。対象事業に主として従事する労働者かどうか、分割契約・分割計画に承継対象として記載されているかにより、通知、異議申述、承継効果が変わります。
次の比較表は、主として従事する労働者と、主として従事しない労働者の扱いを整理しています。重要なのは、会社側が人員配分表だけで自由に決められるわけではなく、労働者側の異議申述と承継効果が制度上組み込まれている点です。対象事業との実質的な関係と、契約上の記載を合わせて確認してください。
| 労働者の区分 | 承継対象として記載された場合 | 記載されない場合 |
|---|---|---|
| 対象事業に主として従事する労働者 | 原則として効力発生日に労働契約が承継されます。 | 異議を述べることができ、異議がある場合には承継される方向で処理されます。 |
| 対象事業に主として従事しない労働者 | 異議申述の機会があり、異議がある場合には承継されない方向で処理されます。 | 原則として分割会社に残ります。 |
次の時系列は、労働者・労働組合への通知と説明の流れを表しています。重要なのは、法定通知だけでなく、労働条件、就業規則、福利厚生、社会保険、退職給付、人事制度の説明が納得可能性に直結することです。通知日と異議申述期限の間には少なくとも13日を置くことにも注意してください。
対象事業との実質的な従事割合、職務、所属、人事制度、労務リスクを確認します。
承継対象、労働条件、異議申述期間、分割後の制度を説明します。通知日と期限の間には少なくとも13日を確保する必要があります。
社会保険、労働保険、雇用保険、給与計算、アクセス権限、個人情報の移転を実行します。
個別法、利用目的、登録・対抗要件、共用ライセンスを確認します。
許認可、免許、登録、届出上の地位は、個別の業法により承継可否、事前承認、届出、再取得、要件審査が定められます。会社分割の包括承継的効果があるとしても、規制当局が当然に同じ許認可を承継会社に認めるとは限りません。建設業のように、事前認可により許可を承継できる仕組みが整備されている分野もあります。
次の一覧は、許認可・個人情報・知財で確認すべき事項を整理しています。重要なのは、これらが事業境界そのものを左右し、効力発生日の設定にも影響することです。各領域について、承継可否と運用可能性を合わせて確認してください。
名義人、対象施設、対象業務、対象地域、有効期限、承継可否、事前承認、事後届出、再申請、人的・資本・設備要件を確認します。
業法日程特許、商標、著作権、営業秘密、ソースコード、デザイン、ドメイン、SNS、OSS、AI学習データの帰属と使用範囲を整理します。
登録秘密管理次の比較表は、無形資産とデータで特に不一致が起きやすいポイントを示しています。重要なのは、契約上の権利、法律上の扱い、システム上の保管場所、実際のアクセス権限が一致しない場合があることです。表では、法務とIT・知財担当が突合すべき項目を確認してください。
| 対象 | 確認ポイント | 不一致が起きる例 |
|---|---|---|
| 個人データ | 利用目的、共同利用、委託、外国提供、要配慮情報、ログ | 契約では承継対象でも、全社CRMに他事業データと混在している。 |
| ソフトウェア | 著作権、外注成果物、OSS、クラウド契約、管理者権限 | 承継会社が使う前提だが、契約主体は分割会社のままになっている。 |
| 商標・ブランド | 権利者、使用範囲、移行期間、ブランドガイドライン | 権利は分割会社に残り、承継会社の製品販売は当該商標を前提にしている。 |
| 著作権 | 移転登録、第三者対抗要件、共有者、ライセンス | 会社分割等の一般承継でも、第三者対抗のため登録が必要となる場合があります。 |
分離財務情報、適格分割、承継条項、誤配処理、移行サービスをつなげます。
法務上の権利義務明細は、会計上の事業分離・組織再編処理と整合していなければなりません。法務上は承継対象とされているが会計上の分離財務情報に含まれていない資産、逆に会計上は対象事業に含まれているが法務上承継されない契約・負債があると、後日の紛争や監査上の問題になります。
次の表は、会計・税務・条項で不一致が出やすい例を整理しています。重要なのは、適格分割、非適格分割、資産負債の帳簿価額、繰越欠損金、消費税、登録免許税などの検討が、法務上の切り分けと連動する点です。各例で、部門横断の突合ポイントを確認してください。
| 不一致の例 | 問題になる理由 |
|---|---|
| 法務上は顧客契約を承継するが、売上が残存会社に計上され続ける | 収益認識、請求名義、内部統制、監査証跡がずれます。 |
| 会計上は在庫を移転したが、倉庫契約・保険契約が承継されていない | 保管・リスク負担・保険事故時の対応に空白が生じます。 |
| 税務上は事業移転要件を満たす前提だが、重要従業員が承継されていない | 適格組織再編の検討や事業継続性の説明に影響します。 |
| 契約上は承継会社が債務を負うが、引当金が分割会社に残っている | 会計処理、補償請求、内部負担の整理が必要になります。 |
次の一覧は、分割契約・分割計画で入れるべき代表的な条項を表しています。重要なのは、承継対象を列挙するだけでなく、除外、条件付き承継、誤配・誤請求、移行サービスまで一体で定めることです。各条項がどの不整合を防ぐかを確認してください。
別紙記載資産と対象事業に専らまたは主として用いられる資産を組み合わせ、除外資産を別紙で明示します。
通常営業債務と、効力発生日以前の行為・事由に起因する債務、税務、訴訟、行政調査、偶発債務を分けます。
別紙記載契約を中心に、同意、許認可、届出、未了時の取扱いを別紙で管理します。
IT、人事、経理、物流、品質保証、法務、知財管理などのサービス水準、費用、個人情報、終了時処理を定めます。
初期設計からDD、明細化、クロージング、PMIまでを管理します。
実務プロセスは、初期設計、デューデリジェンス、権利義務マッピング、契約・計画ドラフト、クロージング・効力発生日対応、PMI・分割後管理に分かれます。目的は、単にリスクを発見することではなく、承継対象、非承継対象、条件付き承継対象、共用対象を決定し、証跡化することです。
次の時系列は、会社分割の境界設計をどの順番で進めるかを表しています。重要なのは、許認可・金融契約・労働者・個人データ・知財・税務リスクを初期段階で確認しないと、後で分割スキームそのものを変更する可能性が出ることです。各段階の成果物を確認してください。
目的、吸収分割・新設分割、分割型・分社型、対価、資本関係、税務適格性、対象事業の仮定義を固めます。
契約、労務、知財、許認可、個人情報・データ、会計・税務、訴訟、IT、内部統制を調査します。
明細表を作成し、承継可否、手続、担当者、期限、証跡、残課題を管理します。
資産負債確定、契約通知、許認可、労働契約承継、会計仕訳、登記、システム権限、請求・支払名義、分割後課題を管理します。
次の比較一覧は、典型的な失敗例を整理しています。なぜ重要かというと、これらは効力発生日後に顧客・従業員・当局・監査法人・取引先を巻き込んで表面化しやすいからです。各失敗例から、事前にどの明細や手続を補強すべきかを読み取ってください。
| 失敗例 | 発生する問題 |
|---|---|
| 共通契約の見落とし | 物流契約、クラウド契約、保険契約、購買契約を承継会社が使えない、または分割会社が契約違反になります。 |
| 労働者区分の誤り | 主従事労働者や非主従事労働者の異議申述により、想定と異なる承継効果が生じます。 |
| 許認可の空白 | 効力発生日には事業が承継されたのに、必要な許認可がなく営業継続できません。 |
| 個人データの利用目的不一致 | 承継会社が分割前とは異なる目的でデータを使おうとし、本人同意や公表内容の問題が出ます。 |
| 知財の登録・ライセンス不備 | 商標、ソフトウェア、ライセンスの使用権限が問題になります。 |
| 会計・法務の不一致 | 監査、税務、補償請求、内部統制上の問題につながります。 |
製造、SaaS、規制業種で境界設計の違いを確認します。
ケーススタディでは、同じ会社分割でも、製造業、SaaS事業、規制業種で境界設計の焦点が大きく変わります。重要なのは、対象事業の価値を支える要素が有形資産なのか、データやソフトウェアなのか、許認可なのかにより、明細化すべき対象が変わる点です。次の一覧で、業態ごとの中心論点を確認してください。
製造設備、金型、在庫、仕掛品、ノウハウ、品質保証、サプライヤー契約、顧客契約、保守部品、製品保証債務、PL保険、環境許認可、工場従業員を整理します。効力発生日前に出荷した製品の保証、設計不良、リコール費用の時間的切り分けが重要です。
顧客契約、利用規約、サブスクリプション請求、クラウド契約、ソースコード、データベース、個人情報、ログ、API、セキュリティ認証、サポート契約、OSS、開発者アカウントが中心です。
建設、医薬、金融、運送、産廃、電気通信では、許認可の対象範囲、人的要件、施設要件、監督当局への申請時期が効力発生日を左右します。
次の表は、専門職・担当者の役割分担を示しています。重要なのは、分割対象事業の特定と権利義務の切り分けが、単一の専門職だけで完結しないことです。各担当者がどの明細と証跡を担うかを読み取ってください。
| 専門職・担当者 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士・企業内弁護士 | スキーム設計、会社法手続、契約、債権者保護、労務・個人情報・許認可の横断整理。 |
| 司法書士 | 商業登記、不動産登記、組織再編登記日程。 |
| 税理士・公認会計士 | 適格分割、法人税、消費税、会計処理、分離財務情報、監査、内部統制。 |
| 社会保険労務士 | 労働契約承継、就業規則、労使協定、社会保険・労働保険。 |
| 弁理士・知財法務担当 | 知財棚卸し、移転登録、ライセンス、共有、対抗要件。 |
| 個人情報保護・IT担当 | 個人データ、DPA、アクセス制御、データ移行、アカウント、権限、ログ。 |
| 事業部門・経理・経営企画 | 対象事業の実態、顧客・仕入先、請求支払、事業計画、PMI、利害関係者調整。 |
一般的な制度説明として、個別案件の結論を断定せずに整理します。
一般的には、事業名だけでは顧客契約、仕入契約、設備、従業員、知財、データ、許認可、債務、偶発債務の範囲が明確になりにくいとされています。ただし、会社の組織、契約台帳、事業の独立性、共通機能の有無によって必要な明細の粒度は変わります。具体的な定義は、関係資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社分割には会社法上の承継効がありますが、契約条項で会社分割、組織再編、支配権変更が通知、同意、解除、期限の利益喪失の対象とされている場合があります。ただし、契約の文言、準拠法、相手方との取引実態、重要性によって結論が変わる可能性があります。具体的には、契約書を個別に確認する必要があります。
一般的には、労働契約については労働契約承継法の特別ルールがあり、対象事業に主として従事するか、承継対象として記載されているかにより、通知、異議申述、承継効果が異なるとされています。ただし、従事実態、兼務状況、労働条件、労働組合との関係によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、労務資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、許認可の承継可否は業法ごとに異なり、事前認可、届出、再取得、承継不可などの扱いがあり得ます。ただし、許認可の種類、対象施設、人的要件、資本要件、申請時期によって結論は変わります。具体的には、対象事業に必要な許認可を全件洗い出し、監督官庁や専門家に確認する必要があります。
一般的には、事業承継に伴う個人データの移転は、一定の範囲で第三者提供に該当しないと整理される場合があります。ただし、取得時の利用目的、プライバシーポリシー、同意文言、委託・共同利用・外国提供、データの混在状況によって必要な対応は変わります。具体的には、データマップと利用目的を確認する必要があります。
一般的には、分割契約・分割計画に加え、権利義務明細表、除外リスト、同意・通知管理表、労働者リスト、許認可リスト、個人データマップ、知財リスト、会計・税務突合表、移行サービス一覧が重要とされています。ただし、事業の性質や規制の有無によって優先度は変わります。具体的には、プロジェクトの初期段階で成果物一覧を設計する必要があります。