2σ Guide

事業譲渡の
株主総会特別決議の要否

会社法467条・468条・309条を軸に、売主側・買主側・親会社側で特別決議が必要になる場面、不要となる例外、取締役会決議、反対株主対応、決議漏れの効力までを整理します。

5分の1 帳簿価額・純資産額の主要基準
3分の2 特別決議の原則的な賛成要件
20日前 株式買取請求に関わる通知期限
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事業譲渡の 株主総会特別決議の要否

条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。

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事業譲渡の 株主総会特別決議の要否
条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 事業譲渡の 株主総会特別決議の要否
  • 条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。

POINT 1

  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否をまず全体像で押さえる
  • 条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。
  • 必要性の判断は四層で見る
  • ただし、結論は単純な名称や金額だけでは決まりません。
  • 会社法468条の例外、取締役会決議、反対株主の株式買取請求、契約・許認可・労務・税務の個別手続を別途確認する必要があります。

POINT 2

  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否の基本ルール
  • 売主側、買主側、子会社株式譲渡、単なる資産売買を分けて確認します。
  • 売主側の基本ルール
  • 買主側の基本ルール
  • この承認決議は会社法309条2項11号により、通常決議ではなく特別決議です。

POINT 3

  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否は契約名ではなく実体で判断する
  • 資産売買、営業権譲渡、店舗譲渡という名称だけで結論を出さないことが重要です。
  • 有形資産と顧客関係
  • 人員・契約・許認可
  • 事業継続と競業避止

POINT 4

  • 事業譲渡の株主総会特別決議が必要となる会社法467条1項各号
  • 条文ごとに、どの会社で決議を検討するかを分けて整理します。
  • 事業全部の譲渡と重要な一部の譲渡
  • 子会社株式・持分の譲渡
  • 他の会社の事業全部の譲受けと周辺類型

POINT 5

  • 事業譲渡の株主総会特別決議で確認する会社法309条と319条
  • 決議が必要かだけでなく、自社の定款やみなし決議の可否も確認します。
  • 会社法467条1項の承認決議は、会社法309条2項11号により特別決議です。
  • 事業譲渡では複数の機関決定が重なることがあるため、どの決定が何を代替できないのかを読み取ることが重要です。
  • 非公開会社、同族会社、少数株主会社では会社法319条のみなし決議が使われることがあります。

POINT 6

  • 事業譲渡の株主総会特別決議が不要となる例外と注意点
  • 不要と判断する場合ほど、根拠を文書化して後日の確認に備えます。
  • 467条1項各号に当たらない
  • 特別支配会社が相手方
  • 事業全部譲受けの対価基準

POINT 7

  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否を判定する手順
  • 1. Step 1 当事者は株式会社か:合同会社、個人事業主、外国法人だけの問題では株式会社としての株主総会特別決議は当然には生じません。
  • 2. Step 2 譲渡対象は事業か:資産リストだけでなく、顧客、従業員、契約、商標、ノウハウ、許認可、商流、運営体制が一体として移るかを見ます。
  • 3. Step 3 売主側・買主側・親会社側を分ける:売主は事業全部または重要な一部、買主は他社事業全部の譲受け、親会社は重要子会社株式譲渡を確認します。
  • 4. Step 4 定量基準を計算する
  • 5. Step 5 例外の適用可能性を確認する:特別支配会社、簡易要件、株主の反対通知、定款規定を確認します。
  • 6. Step 6 周辺決議と契約上の承認を確認する:取締役会、種類株主総会、金融機関承諾、重要契約、許認可、労働者説明、個人情報、税務届出を確認します。
  • 7. Step 7 反対株主の株式買取請求を検討する:株主総会決議の有無だけを見ると、通知・公告や買取請求期間を見落とす危険があります。

POINT 8

  • 事業譲渡の株主総会特別決議と反対株主の株式買取請求
  • 1. 事業譲渡等をする旨の通知・公告:会社法469条は、原則として効力発生日の20日前までに株主へ通知することを求めます。
  • 2. 株式買取請求期間:株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に行います。
  • 3. 価格協議と裁判所申立て:株主と会社で価格協議を行い、協議が調わない場合には会社法470条に基づき裁判所へ価格決定を申し立てることがあります。

まとめ

  • 事業譲渡の 株主総会特別決議の要否
  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否をまず全体像で押さえる:条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。
  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否の基本ルール:売主側、買主側、子会社株式譲渡、単なる資産売買を分けて確認します。
  • 事業譲渡の株主総会特別決議の要否は契約名ではなく実体で判断する:資産売買、営業権譲渡、店舗譲渡という名称だけで結論を出さないことが重要です。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

事業譲渡の株主総会特別決議の要否をまず全体像で押さえる

条文、実体、定量基準、例外、周辺手続を同時に見ることが重要です。

事業譲渡の株主総会特別決議の要否は、まず会社法467条1項各号に該当するかを確認し、該当する場合に会社法309条2項11号の特別決議が求められるかを検討する問題です。典型的には、株式会社が事業の全部を譲渡する場合、または事業の重要な一部を譲渡し、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超える場合には、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認が必要になります。

ただし、結論は単純な名称や金額だけでは決まりません。会社法468条の例外、取締役会決議、反対株主の株式買取請求、契約・許認可・労務・税務の個別手続を別途確認する必要があります。このページは、株式会社が関与する事業譲渡を前提に、経営者、法務担当、M&A担当、取締役会・株主総会事務局、会計・税務・登記実務の関係者が共通して確認できる判断枠組みを示します。

次の重要ポイントは、事業譲渡の株主総会特別決議の要否を検討するときに最初に確認すべき骨格をまとめたものです。読者にとって重要なのは、条文番号だけではなく、売主・買主・親会社のどの立場で何を判定するのかを分けて読むことです。

必要性の判断は四層で見る

会社法467条1項各号への該当性、事業としての実体、5分の1基準などの計算、会社法468条や株式買取請求などの例外・周辺手続を順に確認します。

Section 01

事業譲渡の株主総会特別決議の要否の基本ルール

売主側、買主側、子会社株式譲渡、単なる資産売買を分けて確認します。

売主側の基本ルール

株式会社が事業の全部を譲渡する場合は、会社法467条1項1号により、効力発生日の前日までに契約について株主総会の承認を受ける必要があります。この承認決議は会社法309条2項11号により、通常決議ではなく特別決議です。

株式会社が事業の重要な一部を譲渡する場合も、会社法467条1項2号により原則として株主総会承認の対象になります。ただし、譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が、会社の総資産額として法務省令で算定される額の5分の1を超えない場合は同号の対象から除外されます。定款で5分の1を下回る割合を定めている場合は、その割合を基準にします。

買主側の基本ルール

買主側では、会社法467条1項3号が重要です。株式会社が他の会社の事業の全部を譲り受ける場合、原則として買主側でも株主総会承認が必要です。もっとも、会社法468条2項により、対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が買主会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、原則として承認が不要となり得ます。ただし、一定数の株式を有する株主が反対通知をした場合には承認が必要になります。

買主が他社の事業の一部を取得する場合は、会社法467条1項3号の文言上「他の会社の事業の全部の譲受け」ではないため、同号による株主総会特別決議は直ちには要求されません。もっとも、取締役会設置会社では、重要な財産の譲受けとして取締役会決議が必要となる可能性があります。

次の比較表は、事業譲渡の株主総会特別決議の要否を場面ごとに整理したものです。最初に自社がどの行に当たるかを確認すると、株主総会、取締役会、定款、契約上の承認のどこを深掘りすべきかが見えます。

検討場面原則的な結論
売主が事業全部を譲渡する原則として売主側で株主総会特別決議が必要です。
売主が事業の重要な一部を譲渡する原則として売主側で株主総会特別決議が必要です。ただし、帳簿価額が総資産額の5分の1以下なら467条1項2号から除外されます。
買主が他の会社の事業全部を譲り受ける原則として買主側で株主総会特別決議が必要です。ただし、468条2項の簡易要件を満たす場合は不要となり得ます。
買主が他の会社の事業の一部を譲り受ける原則として467条1項3号の株主総会特別決議は不要です。ただし取締役会決議、定款、契約上の承認、借入契約上の制限を確認します。
単なる資産売買会社法上の事業譲渡に当たらなければ467条の株主総会特別決議は不要です。ただし重要財産の処分・譲受けとして取締役会決議が問題になります。
子会社株式の譲渡会社法467条1項2号の2に該当する場合は、親会社側で株主総会特別決議が必要となる可能性があります。
Section 02

事業譲渡の株主総会特別決議の要否は契約名ではなく実体で判断する

資産売買、営業権譲渡、店舗譲渡という名称だけで結論を出さないことが重要です。

「事業譲渡契約」という名称でも会社法上の事業譲渡に当たるとは限らず、「資産譲渡契約」「設備売買契約」「営業権譲渡契約」「店舗譲渡契約」という名称でも、実体として事業の有機的一体が移転するなら事業譲渡に当たり得ます。したがって、事業譲渡の株主総会特別決議の要否は、契約書名ではなく、譲渡対象が事業か、個別資産・権利の売買にすぎないかを検討して判断します。

最高裁昭和40年9月22日判決は、旧商法上の営業譲渡について、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産を譲渡し、譲渡会社の営業活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社が競業避止義務を負う結果を伴うものと示しました。ここでいう財産には、得意先関係など経済的価値のある事実関係も含まれます。

次の一覧は、事業としての実体を判断するときに見る代表的な要素です。読者にとって重要なのは、資産の金額だけでなく、顧客・人員・契約・ノウハウが一体として移転し、買主が同一または類似事業を継続できるかを読むことです。

資産と商流

有形資産と顧客関係

店舗、工場、設備、在庫、車両などの有形資産に加え、顧客リスト、取引先関係、商圏、ブランド、営業ノウハウ、営業秘密が一体として移るかを見ます。

運営体制

人員・契約・許認可

従業員、業務委託先、代理店、販売網、主要契約、ライセンス、知的財産、許認可関連の地位が移転または承継されるかを確認します。

継続性

事業継続と競業避止

譲渡後に譲受人が同一または類似事業を継続できる構造か、譲渡人がその事業領域から退出し競業避止義務を負うかが重要です。

重要な営業用財産を売却しても、それだけで会社法467条の事業譲渡になるわけではありません。製造会社が余剰不動産を売却する場合や老朽設備を一括処分する場合は、通常、事業の有機的一体の移転ではありません。これに対し、特定工場の設備、従業員、顧客、製造ノウハウ、販売契約を一体として移転し、買主がその工場事業を継続する場合は事業譲渡性が強くなります。

次の比較表は、事業譲渡と会社分割の違いを整理したものです。どちらも事業を動かす手段ですが、承継の仕組みと必要手続が異なるため、スキーム選択時には法務・税務・会計・許認可・労務・PMIの観点から読む必要があります。

観点事業譲渡会社分割
承継の性質個別承継が基本です。契約上の地位、債権債務、雇用契約、許認可は個別の同意・手続を確認します。組織再編行為であり、法定の承継効果を伴います。
株主・債権者手続会社法467条に該当すれば株主総会特別決議が問題になります。反対株主の株式買取請求も確認します。株主総会決議、債権者保護手続、反対株主の株式買取請求など別の厳格な手続があります。
実務上の比較軸個別承継の自由度がある一方、契約・許認可・労務の個別対応が重くなります。包括的な移転を設計しやすい一方、組織再編としての手続負担があります。
Section 03

事業譲渡の株主総会特別決議が必要となる会社法467条1項各号

条文ごとに、どの会社で決議を検討するかを分けて整理します。

会社法467条1項は、株式会社が一定の行為をする場合に、効力発生日の前日までに株主総会の決議によって契約承認を受けることを求めています。典型的な事業譲渡だけでなく、事業全部の賃貸、経営委任、損益共通契約、事後設立類似の財産取得も含まれるため、条文の号ごとに確認します。

次の比較表は、会社法467条1項の主要類型を、決議を検討する会社と例外・注意点で整理したものです。どの号に該当するかを取り違えると、売主側だけでなく買主側や親会社側の承認を見落とすため、各行を別々に読むことが重要です。

区分条文主に決議を検討する会社株主総会特別決議の要否重要な例外・注意点
事業全部の譲渡467条1項1号売主原則必要相手方が特別支配会社なら468条1項により不要となり得ます。
事業の重要な一部の譲渡467条1項2号売主原則必要譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下なら同号から除外されます。定款で下回る割合があればその割合を使います。
子会社株式・持分の譲渡467条1項2号の2親会社要件を満たせば必要帳簿価額が総資産額の5分の1を超え、効力発生日に親会社が過半数議決権を失う場合に確認します。
他の会社の事業全部の譲受け467条1項3号買主原則必要468条2項により対価が純資産額の5分の1以下なら不要となり得ます。ただし株主反対通知で承認が必要化します。
事業全部の賃貸・経営委任等467条1項4号当該行為をする会社原則必要売買でなくても事業支配・損益帰属を変更するため対象になります。
設立後2年以内の一定財産取得467条1項5号取得会社要件を満たせば必要事後設立類似の規律です。純資産額の5分の1基準を確認します。

事業全部の譲渡と重要な一部の譲渡

事業全部の譲渡は、会社が営む事業活動の全部を譲受人に移転する行為です。会社の存立基盤を大きく変更し、株主に重大な影響を与えるため、原則として株主総会特別決議が必要です。会社が複数事業を営む場合、特定部門の全部譲渡は、会社全体から見ると重要な一部の譲渡として検討されることが多くなります。

事業の重要な一部の譲渡では、まず譲渡対象が事業または事業の一部といえるかを判断し、次に重要性と5分の1基準を確認します。帳簿価額が大きくても単なる不動産や設備なら467条1項2号の問題とは別です。他方、帳簿価額が大きく、対象が事業として機能する一体であれば、特別決議が必要となる可能性が高くなります。

子会社株式・持分の譲渡

会社法467条1項2号の2は、子会社株式・持分の譲渡について、譲渡する株式・持分の帳簿価額が親会社の総資産額の5分の1を超え、かつ効力発生日に親会社が当該子会社の議決権総数の過半数を有しなくなる場合に株主総会承認を求めます。形式は株式譲渡でも、経済的には重要な事業部門を子会社ごと外部へ移転する場合があるためです。

他の会社の事業全部の譲受けと周辺類型

買主側が他社事業全部を譲り受ける場合も、会社の財産状態、リスク、事業方針、債務負担、PMI、経営資源配分に重大な影響を与え得るため、原則として株主総会承認が必要です。事業全部の賃貸、事業全部の経営委任、損益全部を共通にする契約は売買ではありませんが、会社の事業支配や利益帰属を大きく変えるため、事業譲渡と同様に株主保護の対象になります。

Section 04

事業譲渡の株主総会特別決議で確認する会社法309条と319条

決議が必要かだけでなく、自社の定款やみなし決議の可否も確認します。

会社法467条1項の承認決議は、会社法309条2項11号により特別決議です。原則として、株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。定款で定足数を3分の1以上に緩和できる一方、3分の2を上回る賛成割合や一定数以上の株主の賛成など追加要件を定めることもできます。

次の比較表は、普通決議、取締役会決議、特別決議、みなし決議の位置付けを整理したものです。事業譲渡では複数の機関決定が重なることがあるため、どの決定が何を代替できないのかを読み取ることが重要です。

決定方法役割事業譲渡での注意点
普通決議会社法309条1項の原則的な株主総会決議です。会社法467条1項の承認決議には足りません。
取締役会決議重要な業務執行決定、重要な財産の処分・譲受けを扱います。株主総会特別決議を要する場合でも、通常は取締役会決議も整えます。両者は代替関係ではありません。
株主総会特別決議会社の基礎的変更や株主の重大な利害に関わる事項について重い賛成要件を課す制度です。467条1項に該当し例外がなければ、効力発生日の前日までに承認を受けます。
会社法319条のみなし決議議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意した場合、株主総会決議があったものとみなす制度です。全員同意が必要です。契約承認、効力発生日、譲渡対象、対価、買取請求との関係、議事録・同意書の備置きを厳格に残します。

非公開会社、同族会社、少数株主会社では会社法319条のみなし決議が使われることがあります。ただし、少数株主がいる会社では安易に利用できません。事業譲渡の契約承認や効力発生日だけでなく、反対株主の株式買取請求との関係、証跡の残し方まで設計する必要があります。

Section 05

事業譲渡の株主総会特別決議が不要となる例外と注意点

不要と判断する場合ほど、根拠を文書化して後日の確認に備えます。

最も基本的な不要ケースは、会社法467条1項各号に該当しない場合です。単なる個別資産の売買、重要な一部ではない事業の一部譲渡、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下で定款にも低い基準がない場合、買主側で取得するのが他社事業の一部にとどまる場合、子会社株式譲渡で帳簿価額要件または議決権喪失要件を満たさない場合などが考えられます。

次の一覧は、株主総会特別決議が不要となり得る場面と、なお確認すべき注意点をまとめたものです。読者にとって重要なのは、「不要」という結論が株主総会だけの話であり、取締役会、反対株主、契約、許認可、労務・税務まで不要になるとは限らない点です。

該当性なし

467条1項各号に当たらない

単なる資産売買、重要性を欠く事業の一部譲渡、子会社株式譲渡の要件未充足などでは、467条の承認対象から外れる可能性があります。

略式

特別支配会社が相手方

会社法468条1項は、467条1項1号から4号までの行為について、契約の相手方が当該株式会社の特別支配会社である場合に467条を適用しないと定めます。

簡易

事業全部譲受けの対価基準

会社法468条2項は、他社事業全部の譲受けについて、交付する財産の帳簿価額合計額が買主会社の純資産額の5分の1を超えない場合に承認不要となり得る例外を置きます。

特別支配会社は、概略として総株主の議決権の10分の9以上を有する会社等を指します。定款でこれを上回る割合を定めている場合には、その割合によります。この例外は手続合理化を認めるものですが、反対株主の株式買取請求、通知・公告、利益相反、少数株主保護、取締役の善管注意義務は別途問題になり得ます。

会社法468条2項で比較するのは、取得対象事業の資産額ではなく、買主が交付する財産の帳簿価額合計額と買主会社の純資産額です。さらに、同条3項により一定数の株式を有する株主が通知または公告の日から2週間以内に反対通知をした場合、効力発生日の前日までに株主総会決議による承認が必要になります。

取締役会が全員一致で承認していることは、株主総会特別決議を省略する理由にはなりません。親会社が賛成していても、会社法468条1項の特別支配会社要件を満たさない場合には、株主総会特別決議を省略できるとは限りません。特に親会社の議決権割合が90%未満の場合、少数株主がいる場合、定款で高い割合を定めている場合は慎重な確認が必要です。

Section 06

事業譲渡の株主総会特別決議の要否を判定する手順

当事者、譲渡対象、立場、計算、例外、周辺決議、反対株主対応の順に確認します。

実務では、論点を一度に見ようとすると、売主側の事業譲渡性、買主側の事業全部譲受け、子会社株式譲渡、取締役会決議、買取請求が混線しやすくなります。次の判断の流れは、どの順番で確認すれば見落としが少ないかを示すもので、上から順に読めば社内メモや取締役会資料の骨子にも使えます。

事業譲渡の特別決議要否を確認する順番

Step 1 当事者は株式会社か

合同会社、個人事業主、外国法人だけの問題では株式会社としての株主総会特別決議は当然には生じません。株式会社側の当事者について467条を確認します。

Step 2 譲渡対象は事業か

資産リストだけでなく、顧客、従業員、契約、商標、ノウハウ、許認可、商流、運営体制が一体として移るかを見ます。

Step 3 売主側・買主側・親会社側を分ける

売主は事業全部または重要な一部、買主は他社事業全部の譲受け、親会社は重要子会社株式譲渡を確認します。

Step 4 定量基準を計算する

売主側は帳簿価額と総資産額、買主側は対価の帳簿価額合計額と純資産額、子会社株式譲渡は親会社の総資産額との関係を見ます。

Step 5 例外の適用可能性を確認する

特別支配会社、簡易要件、株主の反対通知、定款規定を確認します。

Step 6 周辺決議と契約上の承認を確認する

取締役会、種類株主総会、金融機関承諾、重要契約、許認可、労働者説明、個人情報、税務届出を確認します。

Step 7 反対株主の株式買取請求を検討する

株主総会決議の有無だけを見ると、通知・公告や買取請求期間を見落とす危険があります。

定量基準では、売主側の重要な一部譲渡について譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるか、買主側の事業全部譲受けについて対価として交付する財産の帳簿価額合計額が純資産額の5分の1を超えるか、子会社株式譲渡について譲渡する子会社株式・持分の帳簿価額が親会社の総資産額の5分の1を超えるかを確認します。定款で5分の1を下回る基準がないかも必ず確認します。

Section 07

事業譲渡の株主総会特別決議と反対株主の株式買取請求

株主総会の開催日だけでなく、効力発生日から逆算した通知・請求期間を確認します。

事業譲渡は会社の事業構造やリスクを大きく変えるため、反対株主にとって投資前提が変わる重大な局面になり得ます。会社法469条は、一定の場合に反対株主が自己の株式を公正な価格で買い取ることを会社に請求できる制度を置いています。

次の時系列は、効力発生日から逆算して確認する主な手続を示します。読者にとって重要なのは、株主総会決議が通る見込みだけでは足りず、20日前の通知・公告、買取請求期間、価格協議・裁判所申立てまで資金繰りとクロージング条件に影響する点です。

効力発生日の20日前まで

事業譲渡等をする旨の通知・公告

会社法469条は、原則として効力発生日の20日前までに株主へ通知することを求めます。公開会社や株主総会決議により承認を受けた場合などは、通知に代えて公告を用いることがあります。

20日前の日から前日まで

株式買取請求期間

株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に行います。クロージング日を決める際には、この期間も逆算します。

請求後

価格協議と裁判所申立て

株主と会社で価格協議を行い、協議が調わない場合には会社法470条に基づき裁判所へ価格決定を申し立てることがあります。

会社法468条2項により、事業全部譲受けについて株主総会承認が不要となる場合には、会社法469条1項2号により、原則として株式買取請求の対象からも除外されます。ただし、468条3項により一定株主が反対通知をして株主総会承認が必要となる場合には、別途対応が必要です。

Section 08

事業譲渡の株主総会特別決議を欠いた場合の効力とDD確認

決議漏れは契約の有効性、買主の権利取得、監査・金融・税務に波及します。

必要な株主総会特別決議を欠いた事業譲渡では、契約の効力に重大な問題が生じます。最高裁昭和61年9月11日判決は、旧商法上、営業の重要な一部の譲渡について株主総会特別決議を経ていない場合、営業譲渡契約は無効であり、その無効は譲渡会社、株主、債権者等の利害関係人だけでなく、譲受会社も主張できると判示しました。

次の重要ポイントは、決議漏れが発覚したときの実務上の危険を示します。読者にとって重要なのは、後日の信義則による制限に期待して手続を省略するのではなく、クロージング前に証跡で確認する必要がある点です。

決議漏れは有効性そのものに直結する

信義則上、無効主張が制限される場合があり得るとしても、買主の権利取得、金融機関の担保評価、監査上の確認、税務処理、許認可承継、従業員移籍、PMIに深刻な影響を及ぼします。

買主側の法務デューデリジェンスでは、売主が必要な株主総会特別決議を経ているかを確認します。次の資料一覧は、決議の有無だけでなく、招集、議決権、計算根拠、反対株主対応まで証跡を確認するためのものです。

確認資料確認する内容
取締役会議事録重要な財産の処分・譲受け、契約締結、株主総会招集、前提条件の承認を確認します。
株主総会議事録または319条同意書承認対象、効力発生日、譲渡対象、対価、特別決議要件または全員同意を確認します。
招集通知、委任状、議決権行使書、議決権集計資料適法な招集、議決権数、賛成割合、定款上の加重要件の充足を確認します。
事業譲渡契約書、資産・負債一覧、別紙承認された契約内容と実際の譲渡対象が一致しているかを確認します。
総資産額・純資産額・帳簿価額の算定資料、定款、株主名簿5分の1基準、定款上の厳格化、株主構成を確認します。
反対株主への通知・公告資料、買取請求対応資料20日前ルール、請求期間、価格協議、裁判所申立ての有無を確認します。
子会社株式譲渡の支配関係資料議決権割合、帳簿価額、効力発生日後の支配関係を確認します。
Section 09

事業譲渡の株主総会特別決議で誤りやすい論点

契約名、帳簿価額、買主側決議、買取請求、個別承継を混同しないようにします。

事業譲渡では、名称や社内感覚だけで判断すると、必要な株主総会特別決議や取締役会決議を見落とすことがあります。次の注意点一覧は、実務で誤りやすい論点を整理したものです。どの誤りが自社案件に近いかを読み取り、判断過程を文書化することが重要です。

契約名だけで判断する

事業譲渡契約という名称でも必ず特別決議が必要とは限らず、資産譲渡契約という名称でも事業の有機的一体が移るなら該当し得ます。

帳簿価額と時価を混同する

467条1項2号、2号の2、468条2項では帳簿価額が重要です。売買価格、時価、税務評価額と単純に同じとは限りません。

買主側の決議を忘れる

売主が事業全部を譲渡する場合、買主が他の会社の事業全部を譲り受けるなら買主側でも467条1項3号を検討します。

取締役会決議を軽視する

株主総会特別決議が不要でも、重要な財産の処分または譲受けであれば、取締役会設置会社では取締役会決議が必要となる可能性があります。

株式買取請求を軽視する

特別決議が通る見込みでも、反対株主の株式買取請求により資金負担や価格紛争が生じることがあります。

個別承継を過大評価する

事業譲渡は包括承継ではありません。許認可、個別契約、リース、金融機関契約、雇用、個人情報、知的財産権は個別に確認します。

計算にあたっては、会計担当、公認会計士、税理士と連携し、会社法施行規則上の算定方法を確認する必要があります。特に非上場会社では、反対株主の公正な価格をめぐる紛争が資金繰りやクロージング条件に直結することがあります。

Section 10

会社法467条・468条から見る事業譲渡の実務比較

条文ごとの実務対応を、承認・例外・反対株主対応の関係で見直します。

会社法467条と468条は、承認が必要な取引類型と、承認を要しない例外を組み合わせて読む必要があります。次の比較表は、条文ごとの決議要否を再整理したものです。実務では、承認不要の根拠まで取締役会資料や法務メモに残すことが重要です。

確認項目実務で見るポイント文書化すべき根拠
467条1項1号会社の全事業を譲渡するかを確認します。譲渡対象事業の範囲、承認議案、効力発生日、契約書別紙。
467条1項2号事業の重要な一部か、帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるかを確認します。事業該当性メモ、帳簿価額・総資産額の計算、定款上の基準。
467条1項2号の2子会社株式・持分の帳簿価額と、効力発生日後の議決権過半数喪失を確認します。子会社株式簿価、総資産額、議決権割合、支配関係図。
467条1項3号買主が他社の事業全部を譲り受けるかを確認します。取得対象、売主の事業範囲、買主側の承認要否メモ。
468条1項相手方が特別支配会社かを確認します。議決権割合、定款上の割合、少数株主・利益相反対応。
468条2項・3項事業全部譲受けの対価基準と株主反対通知を確認します。対価の帳簿価額合計額、純資産額、通知・公告、2週間以内の反対通知。
Section 11

事業譲渡の株主総会特別決議で取締役・法務・専門家が確認すること

意思決定、契約、登記、会計、税務を横断して役割分担します。

事業譲渡の手続は、会社法だけで完結しません。次の役割別一覧は、取締役、法務担当、外部専門家が何を確認するかを整理したものです。読者にとって重要なのは、株主総会特別決議の要否を誰か一人の判断に閉じず、契約・会計・税務・登記・許認可にまたがる証跡として残すことです。

取締役

取引の事業上の合理性、価格の公正性、代替案との比較、株主総会特別決議・取締役会決議の要否、利益相反、少数株主・債権者・従業員・取引先への影響、情報開示・説明責任を確認します。

意思決定

法務担当・企業内弁護士

467条該当性、468条の例外、309条2項、定款上の加重要件、319条のみなし決議、反対株主対応、契約の前提条件、表明保証、補償、解除、許認可・労務・知財の移転手続を管理します。

契約・手続

外部専門家

外部弁護士は法的意見、議案・議事録、反対株主対応、契約交渉、決議漏れの是正策を確認します。司法書士は登記や議事録形式、公認会計士・税理士は帳簿価額、総資産額、純資産額、税務・会計処理を確認します。

横断確認

事業譲渡自体は、合併・会社分割のように必ず商業登記を伴うとは限りません。しかし、商号、本店、目的、役員、増資、担保権、商業登記、不動産登記が発生することがあります。帳簿価額、総資産額、純資産額、対価の会計処理、税務上の譲渡損益、消費税、のれん、減損、組織再編税制との比較も、特別決議要否や契約設計に影響し得ます。

Section 12

ケース別に見る事業譲渡の株主総会特別決議の要否

全事業売却、部門売却、工場不動産売却、子会社株式売却を比較します。

次のケース別一覧は、同じ「売却」でも、事業全部譲渡、事業の重要な一部譲渡、単なる重要資産売却、子会社株式譲渡で結論が変わることを示します。読者にとって重要なのは、会社法467条のどの号に当たるか、売主側・買主側・親会社側のどこで承認を検討するかを分けて読むことです。

ケース1

会社の全事業を第三者に売却

A社が唯一営む製造事業をB社に譲渡し、A社が譲渡後に事業活動を行わない予定なら、A社側では467条1項1号により原則として特別決議が必要です。B社側もA社の事業全部を譲り受けるため、467条1項3号と468条2項を確認します。

ケース2

一つの事業部門だけを売却

A社が保守事業を顧客契約、従業員、設備、ノウハウとともにB社へ譲渡する場合、まず事業該当性を見て、重要な一部か、帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるかを確認します。B社側では他社事業全部ではないため、467条1項3号は原則対象外です。

ケース3

重要な工場不動産だけを売却

主要工場の土地建物を売却しても、顧客・従業員・ノウハウ・契約関係が移転せず、A社が別工場で同じ製造事業を継続するなら、事業の有機的一体の移転ではない可能性があります。ただし重要財産の処分として取締役会決議を確認します。

ケース4

親会社が重要子会社株式を売却

P社が完全子会社S社株式を第三者に売却し、売却後に議決権の過半数を失い、S社株式の帳簿価額がP社の総資産額の5分の1を超える場合、467条1項2号の2によりP社側で特別決議が必要となる可能性が高くなります。

Section 13

事業譲渡の株主総会特別決議を確認する実務チェックリスト

売主側、買主側、子会社株式譲渡で確認項目を分けて管理します。

チェックリストは、結論を出すためだけでなく、後日確認されたときに判断過程を説明するためにも重要です。次の比較表は、売主側、買主側、子会社株式譲渡ごとの確認事項をまとめたものです。各列を案件担当者ごとの作業分担として読むと、手続漏れを防ぎやすくなります。

立場主な確認事項
売主側譲渡対象が事業の有機的一体か、事業全部か一部か、重要な一部か、譲渡資産の帳簿価額、会社の総資産額、5分の1基準、定款上の低い基準、特別支配会社該当性、取締役会決議、株主総会特別決議、招集通知・議案・議事録、反対株主対応、契約上の前提条件、許認可・重要契約・雇用・個人情報・知財・税務の移転手続を確認します。
買主側取得対象が相手方の事業全部か一部か、売主側の特別決議要否と決議資料、買主側の467条1項3号の承認要否、交付する対価の帳簿価額合計額、買主の純資産額、468条2項の簡易要件、株主の反対通知、取締役会決議、DDでの決議漏れ・許認可不備・契約承継不能・労務リスク、表明保証・補償・前提条件・解除条項を確認します。
子会社株式譲渡譲渡対象が子会社の株式または持分か、譲渡する株式・持分の帳簿価額、親会社の総資産額、5分の1基準、定款上の低い割合、効力発生日に親会社が議決権過半数を失うか、467条1項2号の2による特別決議要否、グループ再編、適時開示、インサイダー管理、競争法、税務、会計、債務保証解除を確認します。
Section 14

事業譲渡の株主総会特別決議に関するFAQ

回答は一般的な制度説明です。個別案件では資料に基づく専門家確認が必要です。

Q1. 事業譲渡には必ず株主総会特別決議が必要ですか。

一般的には、事業全部の譲渡であれば原則として必要とされます。一方、事業の一部譲渡では、重要な一部か、帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるか、定款に別基準があるか、会社法468条の例外があるかで結論が変わる可能性があります。単なる資産売買であれば467条の事業譲渡に当たらない可能性もあります。具体的な対応は、譲渡対象や計算資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 取締役会決議だけで事業譲渡を実行できますか。

一般的には、会社法467条1項に該当し例外がない場合、取締役会決議だけでは足りず、株主総会特別決議が必要とされています。ただし、467条の株主総会特別決議が不要な場合でも、重要な財産の処分・譲受けとして取締役会決議が必要となる可能性があります。具体的な要否は、機関設計、定款、取引内容によって変わります。

Q3. 「5分の1」は売買価格で判定しますか。

一般的には、売主側の事業の重要な一部譲渡では、譲り渡す資産の帳簿価額と会社の総資産額を比較します。買主側の事業全部譲受けにおける468条2項では、対価として交付する財産の帳簿価額合計額と買主会社の純資産額を比較します。売買価格、時価、税務上の評価額と一致するとは限らないため、会計・税務資料と法務判断を突き合わせる必要があります。

Q4. 契約締結後に株主総会承認を得ることはできますか。

一般的には、会社法467条1項は効力発生日の前日までに契約承認を受けることを求めています。そのため、事業譲渡契約を締結し、株主総会承認をクロージングの前提条件とする設計が用いられることがあります。ただし、承認未了の場合の効力、解除、違約金、費用負担、誓約事項は契約で明確にする必要があります。

Q5. 買主側でも株主総会特別決議が必要ですか。

一般的には、買主が他の会社の事業全部を譲り受ける場合、会社法467条1項3号により買主側でも株主総会特別決議が必要となる可能性があります。ただし、会社法468条2項の簡易要件を満たす場合には不要となり得ます。事業の一部譲受けにとどまる場合は同号の対象外となる可能性がありますが、取締役会決議や契約上の承認は別途確認が必要です。

Q6. 子会社株式の売却でも株主総会特別決議が必要ですか。

一般的には、会社法467条1項2号の2により、子会社株式・持分の帳簿価額が親会社の総資産額の5分の1を超え、かつ効力発生日に親会社が子会社の議決権過半数を有しなくなる場合には、株主総会承認が必要となる可能性があります。具体的な結論は、帳簿価額、総資産額、議決権割合、定款によって変わります。

Q7. 株主が全員賛成している場合、株主総会を開かなくてもよいですか。

一般的には、会社法319条の要件を満たせば、株主総会決議の省略、いわゆるみなし決議を利用できる可能性があります。議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録で同意することが必要で、同意書等の備置きも問題になります。少数株主の有無や同意の範囲によって結論が変わります。

Q8. 株主総会特別決議をし忘れた場合、後で追認すればよいですか。

一般的には、必要な特別決議を欠いた営業譲渡契約について無効を認めた最高裁判例があり、重大なリスクがあります。事後的な承認や履行状況によって常に有効化されるとは限りません。発覚した場合には、契約の再締結、追認決議、クロージング停止、相手方協議、開示、会計処理、利害関係人対応などを、弁護士等の専門家と確認する必要があります。

Q9. 事業譲渡では債務も当然に買主へ移りますか。

一般的には、事業譲渡は個別承継を基本とするため、債務が当然に買主へ移るとは限りません。債務引受、契約上の地位移転、雇用契約移転、許認可、個人情報、知的財産権などは、それぞれの法的要件を確認する必要があります。商号続用や債務引受広告がある場合には、会社法22条・23条の責任も問題となり得ます。

Section 16

事業譲渡契約に入れるべき株主総会特別決議関連条項

前提条件、表明保証、誓約事項、解除・補償で手続不備リスクを扱います。

事業譲渡契約では、株主総会特別決議の要否を踏まえ、承認取得をクロージングの前提条件にするか、承認不要判断の根拠を表明保証に入れるか、手続不備時の解除・補償をどう設計するかを検討します。次の一覧は、契約条項として整理しやすい論点を示します。

前提条件

売主・買主の取締役会決議、必要な株主総会特別決議、反対株主の株式買取請求が一定範囲内であること、または重大な影響を及ぼさないことを条件化します。

クロージング

表明保証

契約締結・履行に必要な社内承認、法令・定款・社内規程・重要契約への適合、特別決議不要判断の根拠、総資産額・純資産額・帳簿価額・対価算定資料の正確性を確認します。

証跡

誓約事項

必要な株主総会・取締役会を適時に招集・開催し、招集通知、議案、議事録、反対株主対応を適法に行うこと、反対通知や買取請求を受けた場合に相手方へ通知することを定めます。

運用

解除・補償

必要な特別決議が得られない場合の解除権、手続不備で契約が無効・取消し・差止め等の対象となった場合の補償、買取請求費用、表明保証違反、許認可不備、承継不能の扱いを定めます。

リスク対応
Section 17

事業譲渡の株主総会特別決議を支える専門職連携モデル

商事法務、会計、税務、M&A、内部統制の連携で手続漏れを防ぎます。

事業譲渡の株主総会特別決議の要否は、会社法だけでは完結しません。次の役割分担表は、各担当者が主に確認する事項をまとめたものです。読者にとって重要なのは、社内稟議、取締役会、株主総会、契約、クロージングを一体の工程として管理することです。

役割主な確認事項
企業内弁護士・法務担当467条・468条の該当性、契約、社内承認、株主対応、許認可、労務、個人情報。
外部弁護士スキーム設計、法的意見、契約交渉、株主総会書類、紛争リスク、反対株主対応。
商事法務担当招集通知、議案、議事録、議決権集計、株主名簿、公告、備置書類。
司法書士登記、議事録形式、商業登記・不動産登記、担保権・商号変更等。
公認会計士・税理士帳簿価額、総資産額、純資産額、会計処理、監査上の確認、譲渡損益、消費税、法人税、税務届出。
M&A担当・経営企画スキーム比較、価格交渉、DD、PMI、社内稟議。
コンプライアンス・内部監査決裁統制、証跡、利益相反、反社確認、インサイダー管理。
Section 18

事業譲渡の株主総会特別決議の要否を文書化する方法

必要と判断した場合も不要と判断した場合も、結論だけでは足りません。

特別決議が必要と判断した場合も、不要と判断した場合も、結論だけでは不十分です。次の文書化の流れは、法務メモと取締役会資料に何を入れるべきかを整理したものです。読者にとって重要なのは、後日の株主、金融機関、監査法人、裁判所からの確認に耐えられるよう、計算根拠と判断過程を残すことです。

法務メモ 1

取引概要と467条該当性

当事者、譲渡対象、対価、効力発生日、クロージング日、スキームを整理し、事業全部譲渡、重要な一部譲渡、子会社株式譲渡、事業全部譲受け、事業全部賃貸等、事後設立類似取得のいずれに該当するかを確認します。

法務メモ 2

事業該当性と定量基準

有形資産、無形資産、顧客、従業員、契約、ノウハウ、許認可、競業避止義務の有無を整理し、帳簿価額、総資産額、純資産額、対価、計算基準日、定款上の割合を記録します。

法務メモ 3

例外・必要手続・結論

特別支配会社、簡易要件、株主反対通知、定款規定、取締役会、株主総会、種類株主総会、通知・公告、株式買取請求、契約前提条件を整理し、特別決議の要否と期限を明記します。

取締役会資料

意思決定に必要な説明

取引の背景と目的、譲渡対象事業の概要、譲渡価格・算定根拠、会社法上の手続、株主総会特別決議の要否、開催日・効力発生日・クロージング日、反対株主対応、事業上・財務上・税務上の影響、主要リスク、決議事項を整理します。

Section 19

事業譲渡の株主総会特別決議の要否は条文・実体・計算・例外で判断する

早い段階で関係者を集め、手続要否とスケジュールを一体設計します。

事業譲渡の株主総会特別決議の要否は、「事業譲渡だから必要」「資産譲渡だから不要」という形式的判断では足りません。第一に、会社法467条1項各号のどれに該当するかを確認します。売主側の事業全部譲渡・重要な一部譲渡、買主側の事業全部譲受け、子会社株式譲渡、事業全部の賃貸・経営委任等、事後設立類似取得を区別します。

第二に、譲渡対象が事業の有機的一体か、単なる資産売買かを実体で判断します。第三に、帳簿価額、総資産額、純資産額、対価の帳簿価額、定款上の割合を正確に計算します。第四に、会社法468条の例外、取締役会決議、反対株主の株式買取請求、契約上の前提条件、許認可・労務・税務・会計を総合的に確認します。

必要な株主総会特別決議を欠いた事業譲渡は、契約の有効性そのものに重大な問題を生じさせます。事業譲渡を検討する企業は、早い段階で法務・会計・税務・商事法務・M&A実務の関係者を集め、手続要否を文書化し、取締役会・株主総会・契約・クロージングのスケジュールを一体として設計することが重要です。

Reference

参考法令・判例・公式資料

制度確認では、条文名と判例名を起点に確認します。

法令

  • 会社法467条「事業譲渡等の承認等」
  • 会社法468条「事業譲渡等の承認を要しない場合」
  • 会社法309条2項11号
  • 会社法319条「株主総会の決議の省略」
  • 会社法362条4項1号「重要な財産の処分及び譲受け」
  • 会社法469条・470条「反対株主の株式買取請求」「株式の価格の決定等」
  • 会社法21条「譲渡会社の競業の禁止」
  • 会社法22条・23条・23条の2
  • 会社法施行規則134条以下

判例

  • 最高裁昭和40年9月22日判決
  • 最高裁昭和61年9月11日判決