2σ Guide

税務訴訟で国に勝てる可能性は
どのくらいあるか

国税庁・国税不服審判所の公表統計を起点に、低い勝訴率の読み方、審査請求との違い、争点と証拠で見通しを検討する方法を整理します。

4.8% 令和6年度の国側敗訴割合
17.9% 審査請求の認容割合
3か月 処分後の基本期限
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税務訴訟で国に勝てる可能性は どのくらいあるか

国税庁・国税不服審判所の公表統計を起点に、低い勝訴率の読み方、審査請求との違い、争点と証拠で見通しを検討する方法を整理します。

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税務訴訟で国に勝てる可能性は どのくらいあるか
国税庁・国税不服審判所の公表統計を起点に、低い勝訴率の読み方、審査請求との違い、争点と証拠で見通しを検討する方法を整理します。
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  • 税務訴訟で国に勝てる可能性は どのくらいあるか
  • 国税庁・国税不服審判所の公表統計を起点に、低い勝訴率の読み方、審査請求との違い、争点と証拠で見通しを検討する方法を整理します。

POINT 1

  • 税務訴訟で国に勝てる可能性の全体像
  • 令和6年度統計を起点に、平均値だけでは判断できない理由を整理します。
  • 国側敗訴割合は4.8%、ただし統計だけで諦める数字ではありません
  • 次の重要ポイントは、統計上の平均値と、相談時に読み取るべき実務上の意味をまとめたものです。
  • 読者にとって重要なのは、訴訟だけを見るのではなく、行政段階で認められる可能性や、母数の違いを読み分けることです。

POINT 2

  • 税務訴訟で国に勝つ意味と事件区分
  • 全部取消し、一部取消し、課税関係訴訟の違いを先に分けます。
  • 読者にとって重要なのは、統計上の勝敗だけでなく、税額減額や重加算税部分の取消しなど、現実的な利益を読み取ることです。
  • 次の割合比較は、再調査、審査請求、訴訟の数字を視覚的に並べたものです。
  • 棒の高さは割合の大きさを示し、審査請求の認容割合が訴訟の国側敗訴割合より高いことを読み取れます。

POINT 3

  • 税務訴訟までの手続と期限
  • 1. 処分通知書と受領日を確認:更正処分、決定処分、加算税賦課決定処分など対象処分を特定します。
  • 2. 3か月期限内かを確認:期限を過ぎると入口で争えない危険があります。
  • 3. 再調査または審査請求を設計:争点と証拠を整理して提出内容を固めます。
  • 4. 例外や別手続を確認:個別事情で結論が変わるため、早急な専門家確認が必要です。

POINT 4

  • 税務訴訟で国側敗訴割合が低い理由
  • 行政段階で事件が選別される
  • 審査請求で納税者の主張が認められた事件は、訴訟まで進まないことがあります。
  • 課税庁は処分前に資料を集めている
  • 調査資料、申告書、帳簿、反面調査資料、質問応答記録などが既に存在することが多く、反証には客観資料が必要です。

POINT 5

  • 税務訴訟の勝訴可能性を左右する主要因
  • 勝率ではなく、争点・証拠・調査段階の発言・費用対効果を分解します。
  • 法律問題か事実問題か
  • 証拠が後付けに見えないか
  • 税務調査段階の説明と矛盾しないか

POINT 6

  • 税務訴訟で勝ち筋が見えやすい事件と見えにくい事件
  • 前向きに検討できる類型と慎重判断が必要な類型を分けます。
  • 勝ち筋の見えやすさは、統計ではなく争点と証拠の形で判断します。

POINT 7

  • 税務訴訟で専門家に相談すべきタイミングと質問
  • 税理士と弁護士の役割を分け、相談時の質問を具体化します。
  • 税務訴訟は、訴訟になってから相談すればよいとは限りません。
  • 読者にとって重要なのは、処分後だけでなく、税務調査の初動から勝訴可能性が形成されることを読み取ることです。
  • 仮装・隠蔽の評価は信用や将来対応に影響します。

POINT 8

  • 税務訴訟の勝訴可能性を上げる実務チェックリスト
  • 取引当時に作成された客観資料
  • 処分、争点、証拠、税目別注意点を一つずつ確認します。

まとめ

  • 税務訴訟で国に勝てる可能性は どのくらいあるか
  • 税務訴訟で国に勝てる可能性の全体像:令和6年度統計を起点に、平均値だけでは判断できない理由を整理します。
  • 税務訴訟で国に勝つ意味と事件区分:全部取消し、一部取消し、課税関係訴訟の違いを先に分けます。
  • 税務訴訟までの手続と期限:3か月、1か月、6か月の期限を落とさないための流れです。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

税務訴訟で国に勝てる可能性の全体像

令和6年度統計を起点に、平均値だけでは判断できない理由を整理します。

税務訴訟で国に勝てる可能性を考えるときは、まず公表統計の低さと、個別事件では争点・証拠・手続経過で見通しが変わることを同時に押さえる必要があります。次の重要ポイントは、統計上の平均値と、相談時に読み取るべき実務上の意味をまとめたものです。

国側敗訴割合は4.8%、ただし統計だけで諦める数字ではありません

令和6年度の国税関係訴訟は終結168件、そのうち国側敗訴は8件です。一部敗訴3件、全部敗訴5件という内訳を踏まえると、全部取消しだけでなく一部取消しや実質的な減額も分けて検討する必要があります。

次の比較表は、再調査の請求、審査請求、訴訟という各段階の公表統計を並べたものです。読者にとって重要なのは、訴訟だけを見るのではなく、行政段階で認められる可能性や、母数の違いを読み分けることです。割合の列では、審査請求の17.9%と訴訟の4.8%を単純比較せず、手続ごとの役割の違いとして見てください。

手続・見方件数納税者側に有利な結果割合読み方
再調査の請求処理1,752件認容91件5.2%処分庁自身に見直しを求める初期段階です。迅速ですが認容率は低めです。
審査請求処理3,872件認容693件17.9%国税不服審判所で争う行政不服審査です。訴訟前の重要な勝負所になります。
国税関係訴訟全体終結168件国側敗訴8件4.8%国税庁公表の広い意味での国税関係訴訟です。
課税関係訴訟に限る見方終結142件国側敗訴8件約5.6%課税処分そのものを争う事件に近い見方です。
実体判断に近い母数棄却126件と国側敗訴8件国側敗訴8件約6.0%取下げ・却下を除いて、実体判断に近づけた見方です。
注意4.8%はその年度に終結した事件の集計です。法律解釈の争いか、事実認定の争いか、証拠が残っているか、審査請求でどの主張をしたかにより、個別事件の見通しは変わります。
Section 01

税務訴訟で国に勝つ意味と事件区分

全部取消し、一部取消し、課税関係訴訟の違いを先に分けます。

税務訴訟で国に勝つ意味は一つではありません。この比較表は、全部取消し、一部取消し、判決統計に表れにくい実質的な解決を分けて示します。読者にとって重要なのは、統計上の勝敗だけでなく、税額減額や重加算税部分の取消しなど、現実的な利益を読み取ることです。

表現意味納税者にとっての効果
全部勝訴・全部取消し課税処分等が全部取り消される争っていた税額・加算税等が原則として全面的に消えます。
一部勝訴・一部取消し課税処分等の一部が取り消される税額の一部が減ります。事件によっては経済的利益が大きくなります。
実質的な解決訴訟前後に処分の見直し、取下げ、関連手続での調整が生じる判決上の勝訴率には表れにくいものの、実務上は重要な場合があります。

次の割合比較は、再調査、審査請求、訴訟の数字を視覚的に並べたものです。棒の高さは割合の大きさを示し、審査請求の認容割合が訴訟の国側敗訴割合より高いことを読み取れます。ただし、母集団が違うため、どちらが簡単かを示す図ではなく、どの段階で争点整理を厚くすべきかを見るための図です。

5.2%
再調査
17.9%
審査請求
4.8%
国税訴訟
約5.6%
課税関係

国税庁の訴訟統計では、令和6年度の終結状況は課税関係142件、徴収関係18件、審判所関係8件で、国側敗訴8件はいずれも課税関係に計上されています。税務調査後の更正処分、決定処分、加算税賦課決定処分を争う場合は、課税関係訴訟として見ると実態に近づきます。

Section 02

税務訴訟までの手続と期限

3か月、1か月、6か月の期限を落とさないための流れです。

国税に関する処分に不服がある場合、税務訴訟はいきなり始められるとは限りません。次の時系列は、税務調査から訴訟までの順番と期限を示します。読者にとって重要なのは、どの段階にいるかを確認し、3か月、1か月、6か月という期限を読み落とさないことです。

税務調査・指摘

修正申告か処分かを見極める

調査官の指摘、提出資料、質問応答の内容が後の不服申立てや訴訟に影響します。

処分通知後3か月以内

再調査の請求または審査請求

処分の通知を受けた日の翌日から原則3か月以内に、再調査の請求または直接の審査請求を検討します。

再調査決定後1か月以内

審査請求への移行

再調査決定に不服がある場合は、決定書謄本の送達を受けた日の翌日から原則1か月以内です。

裁決後6か月以内

地方裁判所への取消訴訟

裁決を受けてもなお不服がある場合、裁決があったことを知った日の翌日から原則6か月以内に訴訟提起を検討します。

次の判断の流れは、期限管理と手続選択の入口を示します。上から順に確認することで、まず処分通知と受領日を特定し、次に行政段階で何を選ぶか、最後に訴訟提起期限を確認する構造を読み取れます。

税務争訟の入口確認

処分通知書と受領日を確認

更正処分、決定処分、加算税賦課決定処分など対象処分を特定します。

3か月期限内かを確認

期限を過ぎると入口で争えない危険があります。

期限内
再調査または審査請求を設計

争点と証拠を整理して提出内容を固めます。

期限に問題
例外や別手続を確認

個別事情で結論が変わるため、早急な専門家確認が必要です。

Section 03

税務訴訟で国側敗訴割合が低い理由

統計の低さを、事件の選別、証拠、立証責任、法解釈から読み解きます。

国側敗訴割合が低い理由は、裁判所が一方に甘いという単純な話ではありません。次の要素一覧は、訴訟に至る前の選別、課税庁の資料収集、立証責任の限界、法解釈の構造を整理したものです。どの要素が自分の事件に当てはまるかを読むことで、平均値より個別評価が重要だと分かります。

行政段階で事件が選別される

審査請求で納税者の主張が認められた事件は、訴訟まで進まないことがあります。訴訟統計は全紛争の母集団ではありません。

課税庁は処分前に資料を集めている

調査資料、申告書、帳簿、反面調査資料、質問応答記録などが既に存在することが多く、反証には客観資料が必要です。

立証責任の理解には限界がある

課税要件事実は原則として課税庁が立証すると整理されますが、納税者側に資料が近い領域では具体的証拠がないと不利になります。

条文・判例・制度趣旨が重い

納得できないという気持ちだけでは足りず、法令、通達、判例、立法経緯、事実へのあてはめを精密に示す必要があります。

読み方必要経費、損金、貸倒損失、租税特別措置、税額控除、推計課税への実額反証などは、納税者側が資料を持つことが多い領域です。説明だけでなく、契約書、請求書、帳簿、メール、金融記録などの客観資料が重要になります。
Section 04

税務訴訟の勝訴可能性を左右する主要因

勝率ではなく、争点・証拠・調査段階の発言・費用対効果を分解します。

税務訴訟の見込みは、単純な勝率ではなく、どの争点で、どの証拠により、どの法的効果を狙うかで決まります。次の比較一覧は、勝訴可能性を左右する代表的な検討項目を並べたものです。各列から、法的議論と証拠整理を同時に進める必要があることを読み取ってください。

Issue

法律問題か事実問題か

法律問題では条文、制度趣旨、判例、裁決例が中心です。事実問題では契約書、請求書、金融記録、メール、第三者資料が重要になります。

Evidence

証拠が後付けに見えないか

紛争後の説明資料だけでなく、取引当時の社内稟議、議事録、納品記録、支払記録などが説得力を持ちます。

Statement

税務調査段階の説明と矛盾しないか

質問応答記録、提出資料、調査官への説明は後の手続で重視されます。曖昧な説明や修正の多い主張は信用性を下げることがあります。

Cost

争訟コストに見合うか

争う税額、将来年度への影響、役員責任、信用、上場審査、M&A、重加算税の影響まで総合的に見ます。

次の一覧は、争う意義が金額だけで決まらない場面を示します。読者にとって重要なのは、同じ論点が将来年度へ波及するか、企業信用や相続・事業承継に影響するかを読み取ることです。

金額以外に見る要素確認すべき影響
将来年度への反復同じ会計処理や取引が毎期問題になるかを確認します。
税務方針全体への影響会社の申告方針、会計処理、内部統制に波及するかを見ます。
信用・説明責任役員責任、株主説明、金融機関対応、上場審査、M&Aへの影響を検討します。
重加算税・不正認定企業信用や刑事・行政リスクへの波及を慎重に見ます。
相続税評価家族関係、事業承継、財産分配全体への影響を確認します。
Section 05

税務訴訟で勝ち筋が見えやすい事件と見えにくい事件

前向きに検討できる類型と慎重判断が必要な類型を分けます。

勝ち筋の見えやすさは、統計ではなく争点と証拠の形で判断します。次の比較表は、平均的な国側敗訴割合より前向きに検討できることがある類型を示します。左列で事件類型を確認し、右列でどの資料や法的根拠が検討の中心になるかを読み取ってください。

類型典型例検討ポイント
課税庁の法解釈に疑義がある条文の適用範囲、租税特別措置、組織再編税制、源泉徴収義務など判例、裁決例、立法趣旨、通達との整合性
事実認定が証拠と合わない実際の取引、資金移動、役務提供、名義と実質の関係当時資料、第三者資料、金融記録、メール
評価・計算に誤りがある相続税評価、不動産評価、移転価格、棚卸資産評価など鑑定、評価意見書、計算過程の再現性
処分理由・手続に重大な問題がある理由付記、調査手続、処分範囲、除斥期間など手続違法が処分取消しに結びつく重大性
審査請求で一部有利な判断がある裁決で一部認容、または裁決理由に国側の弱点が示された訴訟で争点を絞れるか

次の比較表は、慎重な検討が必要な類型を示します。読者にとって重要なのは、不利な事情が一つでもあれば争えないという意味ではなく、どの弱点を補う資料が必要かを読み取ることです。

類型難しくなりやすい理由
証拠がほとんどない裁判所は納税者の説明だけで課税処分を覆しにくい傾向があります。
税務調査での説明と訴訟での主張が矛盾する供述の信用性が問題になりやすくなります。
帳簿・請求書・契約書の保存に大きな欠陥がある経費性、仕入税額控除、実額反証などで不利になりやすいです。
税額が高すぎる、納得できないという不満が中心違法性の主張ではなく、感情的な不満に見えやすくなります。
専門家の意見が分かれる評価問題で鑑定が弱い評価の合理性を裁判所へ説明しにくくなります。
修正申告後に争おうとしている更正処分を争う場合と異なり、更正の請求など別ルートが問題になることがあります。
Section 06

税務訴訟で専門家に相談すべきタイミングと質問

税理士と弁護士の役割を分け、相談時の質問を具体化します。

税務訴訟は、訴訟になってから相談すればよいとは限りません。次の一覧は、早期相談を検討しやすい場面をまとめたものです。読者にとって重要なのは、処分後だけでなく、税務調査の初動から勝訴可能性が形成されることを読み取ることです。

1

重加算税を示唆されている

仮装・隠蔽の評価は信用や将来対応に影響します。

早期確認
2

更正処分・決定処分が見込まれる

処分通知後は3か月の期限管理が始まります。

期限管理
3

追徴税額が高額で影響が大きい

会社経営、相続財産、金融機関対応への波及を見ます。

費用対効果
4

事実認定に明確な違和感がある

反論できる資料と調査段階の説明を整えます。

証拠整理
5

裁決後の6か月が進んでいる

出訴期間を踏まえて訴状、証拠、主張構成を検討します。

出訴期限

次の質問一覧は、相談先の専門性を見極めるためのものです。質問の順番には意味があり、争点、証拠、手続、目標、費用対効果の順に聞くと、勝訴可能性を数字だけでなく構造として把握しやすくなります。

質問確認したいこと
この事件の争点は法律問題ですか、事実問題ですか集めるべき資料と主張の組み立てが変わります。
国側の主張を崩す証拠は何ですかどの証拠で、どの事実を、どの程度示すかを確認します。
審査請求と訴訟の見通しを分けて評価できますか行政段階で認容を狙うか、訴訟を見据えるかを整理します。
全部取消しと一部取消しのどちらを現実的目標にしますか税額減額、重加算税取消し、評価減など複数のゴールを見ます。
費用、時間、社内負担、将来年度への影響をどう見ますか法的見通しと経済合理性を一体で確認します。
Section 07

税務訴訟の勝訴可能性を上げる実務チェックリスト

処分、争点、証拠、税目別注意点を一つずつ確認します。

勝訴可能性を上げるには、主張を強く言うより、処分・期限・争点・証拠を整理することが先です。次の表は、争点表に記載すべき項目を示します。左列で整理項目を確認し、右列で何を書き出すべきかを読み取ってください。

項目記載すべき内容
処分の内容税目、年度、税額、加算税、延滞税への影響
国側の主張更正通知書、理由附記、調査官説明、答弁書等から整理します。
納税者側の反論法律解釈、事実認定、計算、手続違法に分けます。
必要証拠契約書、請求書、帳簿、メール、金融資料、鑑定書等を対応させます。
弱点証拠不足、過去説明との矛盾、保存義務違反などを隠さず整理します。
目標全部取消し、一部取消し、重加算税取消し、評価減などを設定します。

次の優先順位は、証拠の質を並べたものです。順番が上にあるほど、当時性、客観性、第三者性が強くなりやすい点が重要です。下位の資料が無意味ということではなく、上位資料を補うものとして読むと実務に使いやすくなります。

優先1

取引当時に作成された客観資料

契約書、請求書、納品記録、支払記録など、当時の自然な記録です。

優先2

第三者・金融機関・公的機関の資料

相手先保有資料、金融記録、登記、公的資料などは客観性が高い資料です。

優先3

会計帳簿と社内記録

申告書、総勘定元帳、補助簿、社内稟議、議事録、業務報告書を対応させます。

優先4

陳述書と紛争後資料

説明資料として意味はありますが、客観資料を補う位置づけとして扱います。

次の税目別一覧は、争点になりやすい項目をまとめたものです。税目によって必要証拠の種類が違うため、該当する行から、どの資料を重点的に集めるべきかを読み取ってください。

税目・論点注意点
所得税・法人税売上計上漏れ、架空経費、役員給与、寄附金、交際費、貸倒損失、減価償却、棚卸資産、組織再編、同族会社の行為計算否認などが争点になりやすいです。
消費税仕入税額控除、帳簿・請求書等の保存、課税仕入れ該当性、輸出免税、居住用賃貸建物、インボイス関連の証憑が問題になりやすいです。
相続税・贈与税財産評価、名義預金、名義株、低額譲渡、みなし贈与、同族会社株式評価、国外財産、債務控除などを長期間の資料で確認します。
源泉所得税給与該当性、報酬・料金、非居住者への支払、使用人と外注先の区別、役員退職金などを精密に検討します。
重加算税単なる申告誤りや解釈誤りと、仮装・隠蔽行為の違いを資料で明確にする必要があります。
Section 08

税務訴訟で国に勝てる可能性に関するFAQ

一般的な制度説明として、統計、専門家、証拠、期間の疑問を整理します。

Q1. 税務訴訟で国に勝てる可能性は4.8%なら、争う意味はありませんか。

一般的には、争う意味がないとは限りません。4.8%は令和6年度の国税関係訴訟全体における国側敗訴割合です。ただし、個別事件の見通しは、争点、証拠、金額、審査請求の状況、過去の裁決・判例との近さによって変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 審査請求と税務訴訟では、どちらが重要ですか。

一般的には、どちらも重要とされています。審査請求は争点整理と証拠提出の重要な段階であり、訴訟を視野に入れる場合にも影響することがあります。ただし、処分内容や期限、証拠関係によって位置づけは変わるため、具体的には専門家に確認する必要があります。

Q3. 税理士に相談すれば足りますか。それとも弁護士が必要ですか。

一般的には、税務申告、税務調査、会計資料、税法実務の検討では税理士の役割が重要です。一方、訴訟代理、訴状・準備書面、証拠申出、尋問、控訴・上告判断などでは弁護士の訴訟技術が重要になることがあります。事件の内容によって結論は変わるため、共同体制も含めて相談する必要があります。

Q4. 税務調査の段階で弁護士に相談するのは早すぎますか。

一般的には、早すぎるとは限りません。特に、重加算税、高額追徴、役員責任、刑事告発リスク、上場会社・金融機関対応、M&Aへの影響がある場合は、税務調査段階から法的観点を入れる価値があります。ただし、具体的な対応方針は資料と状況によって変わります。

Q5. 税務署の指摘に納得できないだけでも争えますか。

一般的には、争うこと自体は可能な場合があります。ただし、課税処分を取り消すには、違法性を法律と証拠で示す必要があります。納得できない、税額が重い、調査官の態度が不満という事情だけでは足りない可能性があるため、証拠関係を確認する必要があります。

Q6. 一部勝訴でも意味がありますか。

一般的には、一部勝訴でも経済的意味がある場合があります。所得金額、評価額、加算税、年度、税目の一部が取り消されるだけで大きな減額につながることがあります。ただし、費用対効果や将来年度への影響を含め、個別に検討する必要があります。

Q7. 税務訴訟にかかる期間はどのくらいですか。

一般的には、事件の複雑さ、証拠量、審級、鑑定・尋問の有無によって大きく異なります。国税不服審判所は審査請求の標準審理期間を1年とし、令和6年度の1年以内処理件数割合は99.4%と公表しています。具体的な期間は、手続段階と事件内容に応じて確認する必要があります。

Section 09

税務訴訟で争うべきかを判断する枠組み

争う方向と慎重判断に傾く事情を、最後に確認します。

税務訴訟を進めるかどうかは、勝てる可能性だけでなく、費用対効果、社内負担、将来年度への影響で決まります。次の比較一覧は、争う方向に傾きやすい事情と、慎重判断に傾きやすい事情を並べたものです。左右を比較し、どちらの事情が多いかだけでなく、証拠で補える弱点があるかを読み取ってください。

争う方向に傾きやすい場合慎重判断に傾きやすい場合
追徴税額が高額で、争訟コストを上回る争う金額が小さく、費用倒れの可能性が高い
同一論点が将来年度にも影響する客観証拠が乏しい
重加算税や不正認定を争う必要がある税務調査段階の説明と現在の主張が矛盾している
課税庁の事実認定に明確な証拠上の弱点がある法令・判例・裁決例が明確に納税者側に不利である
類似の裁決例・判例が納税者側に有利である争訟により社内負担や信用リスクが過大になる
処分理由や手続に重大な疑義がある一部取消しを得ても経済的効果が限定的である

最後の重要ポイントは、統計ではなく争点と証拠で判断するという考え方をまとめたものです。読者にとって重要なのは、国相手だから勝てないと決めつけることも、正しいから必ず勝てると考えることも避けることです。

低いが、ゼロではない。勝負は統計ではなく争点と証拠です

令和6年度統計では国側敗訴割合は4.8%です。一方で審査請求の認容割合は17.9%であり、税務争訟全体では訴訟前に主張が認められる余地もあります。期限、争点、証拠を順に整理することが現実的な戦略です。

要点3か月、1か月、6か月の期限を逃さないこと、法律問題・事実問題・計算問題・手続問題を分けること、納得感ではなく法令・判例・証拠で語ることが重要です。
Reference

この記事の参考情報源

公的統計・制度資料

  • 国税庁「令和6年度における訴訟の概要」
  • 国税不服審判所「令和6年度における審査請求の概要」
  • 国税庁「令和6年度における再調査の請求の概要」
  • 国税庁「No.7200 税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続」
  • 国税庁「国税庁70年史 第7章 権利救済」

法令・研究資料

  • 国税庁 税務大学校「税務訴訟における立証責任 ― 裁判例の検討を通して」
  • 国税不服審判所「裁決要旨検索システム」
  • 国税不服審判所「代理人と総代」
  • e-Gov法令検索「弁護士法」