2σ Guide

遺産分割協議書で
不動産の名義変更をする記載例

土地、建物、マンション、共有持分、代償分割、換価分割まで、相続登記で使う遺産分割協議書の書き方を整理します。

3年 相続登記の基本期限
1,000分の4 登録免許税の基本税率
10か月 相続税申告の基本期限
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遺産分割協議書で 不動産の名義変更をする記載例

土地、建物、マンション、共有持分、代償分割、換価分割まで、相続登記で使う 遺産分割協議 書の書き方を整理します。

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遺産分割協議書で 不動産の名義変更をする記載例
土地、建物、マンション、共有持分、代償分割、換価分割まで、相続登記で使う 遺産分割協議 書の書き方を整理します。
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  • 遺産分割協議書で 不動産の名義変更をする記載例
  • 土地、建物、マンション、共有持分、代償分割、換価分割まで、相続登記で使う 遺産分割協議 書の書き方を整理します。

POINT 1

  • 遺産分割協議書と不動産名義変更の基本用語
  • 相続人全員の合意、不動産の特定、取得者と持分を最初に確認します。
  • 抽象的な「自宅を長男へ」だけでは足りないことがあります
  • 2.1 被相続人
  • 2.2 相続人

POINT 2

  • 遺産分割協議書による不動産名義変更の法的枠組み
  • 被相続人、相続人、登記原因証明情報などの意味を整理します。
  • 被相続人
  • 遺産分割協議書
  • 3.1 遺産分割協議の根拠

POINT 3

  • 遺産分割協議書を使う不動産名義変更の手順
  • 1. 相続登記の義務化:相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が基本になります。
  • 2. 結果に基づく登記:遺産分割で不動産を取得した場合は、その日から3年以内に登記します。
  • 3. 調停または審判:話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の手続を利用することがあります。

POINT 4

  • 遺産分割協議書に書く不動産を調査する要点
  • 調査、協議書作成、相続登記、完了確認までを順番に見ます。
  • 5.1 登記事項証明書を取得する
  • 5.2 固定資産評価証明書を確認する
  • 5.3 不動産の漏れを防ぐ

POINT 5

  • 不動産名義変更の遺産分割協議書に必ず入れる事項
  • 登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳を確認します。
  • 6.1 表題
  • 6.2 被相続人の表示
  • 6.3 相続人全員の表示

POINT 6

  • 不動産名義変更で使う遺産分割協議書の基本記載例
  • 被相続人、不動産表示、取得者、協力条項を確認します。
  • 7.1 記載例1 土地建物を長男が単独取得する場合
  • 7.2 記載例2 土地は長男、建物は配偶者が取得する場合
  • 7.3 記載例3 相続人2名が共有で取得する場合

POINT 7

  • 代償分割で不動産名義変更をする遺産分割協議書の記載例
  • 単独取得、土地建物の分離、共有、異なる持分を比較します。
  • 8.1 代償分割とは
  • 8.2 記載例5 長男が不動産を取得し、弟へ代償金を支払う場合
  • 8.3 代償金を分割払いにする場合

POINT 8

  • 換価分割で不動産名義変更をする遺産分割協議書の記載例
  • 代償金の金額、期限、支払方法、未払いリスクを整理します。
  • 9.1 換価分割とは
  • 9.2 記載例6 不動産を売却して代金を分ける場合
  • 換価分割とは、不動産を売却して金銭に換え、その売却代金を相続人間で分ける方法です。

まとめ

  • 遺産分割協議書で 不動産の名義変更をする記載例
  • 遺産分割協議書と不動産名義変更の基本用語:相続人全員の合意、不動産の特定、取得者と持分を最初に確認します。
  • 遺産分割協議書による不動産名義変更の法的枠組み:被相続人、相続人、登記原因証明情報などの意味を整理します。
  • 遺産分割協議書を使う不動産名義変更の手順:民法、不動産登記法、家庭裁判所手続の関係を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺産分割協議書と不動産名義変更の基本用語

相続人全員の合意、不動産の特定、取得者と持分を最初に確認します。

次の強調欄は、この章の結論を整理したものです。最初に押さえるべき判断軸として重要で、どの点を優先して確認するかを読み取ってください。

抽象的な「自宅を長男へ」だけでは足りないことがあります

法務局の登記実務では、所在、地番、家屋番号、床面積、取得者、持分、押印、印鑑証明書、添付書類との整合性が確認されます。

2.1 被相続人

亡くなった人をいいます。不動産登記では、登記簿上の所有者であった人が被相続人です。登記簿上の住所と最後の住所が一致しない場合、住民票の除票や戸籍の附票などで同一人であることをつなぐ必要があります。

2.2 相続人

法律上、被相続人の権利義務を承継する人です。配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など、相続人の範囲と順位は民法によって決まります。遺産分割協議は、原則として共同相続人全員の参加と合意が必要です。

2.3 遺産分割協議書

被相続人の遺産を、相続人間でどのように分けるかを記録した書面です。相続登記で用いる場合には、不動産を取得する相続人を明らかにする役割を持ちます。法務局の登記手続ハンドブックも、遺産分割協議等により不動産を相続した場合の登記申請手続を案内しています。

2.4 不動産の名義変更

一般には「名義変更」と呼ばれますが、法律実務上は、被相続人名義の土地や建物について、相続を原因とする所有権移転登記を申請することを意味します。相続による所有権移転登記は、相続登記とも呼ばれます。

2.5 登記原因証明情報

登記申請において、なぜ所有権が移転したのかを示す情報です。遺産分割協議による相続登記では、戸籍関係書類、遺産分割協議書、印鑑証明書などが組み合わさって、相続の発生、相続人、合意内容を示します。

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Section 01

遺産分割協議書による不動産名義変更の法的枠組み

被相続人、相続人、登記原因証明情報などの意味を整理します。

次の一覧は、この章の主要ポイントを並べたものです。似た概念を取り違えないために重要で、各項目の役割と違いを読み取ってください。

TERM 01

被相続人

亡くなった人をいいます。不動産登記では登記簿上の所有者であった人です。

TERM 02

相続人

法律上、被相続人の権利義務を承継する人です。

TERM 03

遺産分割協議書

遺産を相続人間でどう分けるかを記録した書面です。

3.1 遺産分割協議の根拠

民法907条は、共同相続人が協議で遺産を分割できることを前提としています。また、協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求できる枠組みです。民法909条は、遺産分割の効力について、相続開始時にさかのぼって効力を生ずると定めています。ただし、第三者の権利を害することはできません。

このため、不動産を誰が取得するかを決める遺産分割協議は、相続人間の内部合意にとどまらず、その後の登記、税務、売却、担保設定、賃貸管理にも影響します。

3.2 相続登記の義務化

不動産登記法の改正により、2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まりました。法務局の登記手続ハンドブックの案内ページも、同日から相続登記の申請が義務化されたことを明記しています。

法務省のQ&Aによると、2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、相続登記がされていないものも義務化の対象となり、原則として2027年3月31日までに登記をする必要があります。

3.3 遺産分割後の3年ルール

遺産分割が成立した場合、不動産を取得した相続人は、遺産分割の日から3年以内に、その結果に基づく登記をする必要があります。正当な理由なく登記をしない場合、10万円以下の過料の対象となることがあります。法務省は、登記官による催告、裁判所への通知、裁判所での過料判断という流れも説明しています。

3.4 話合いがまとまらない場合

相続人間で話合いがつかない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できます。裁判所は、遺産分割調停について、相続人の間で話合いがつかない場合に家庭裁判所の調停または審判を利用でき、調停不成立の場合には自動的に審判手続が開始されると案内しています。

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Section 03

遺産分割協議書に書く不動産を調査する要点

調査、協議書作成、相続登記、完了確認までを順番に見ます。

5.1 登記事項証明書を取得する

遺産分割協議書に記載する不動産の表示は、固定資産税納税通知書の表記だけでなく、登記事項証明書の表題部を確認して作成します。土地であれば所在、地番、地目、地積が重要です。建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積が重要です。

5.2 固定資産評価証明書を確認する

登録免許税の課税標準となる不動産の価額は、原則として市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格です。国税庁の登録免許税の税額表も、不動産の価額の注記としてこの点を説明しています。

5.3 不動産の漏れを防ぐ

被相続人が所有していた不動産を漏らすと、後で追加の遺産分割協議や追加登記が必要になります。市区町村の名寄帳、固定資産税納税通知書、権利証、登記識別情報通知、売買契約書、過去の相続書類などを確認します。

2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度が施行されています。法務省は、この制度を、登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化して証明書として交付する制度と説明しています。

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Section 04

不動産名義変更の遺産分割協議書に必ず入れる事項

登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳を確認します。

6.1 表題

通常は「遺産分割協議書」とします。登記だけを目的とする場合でも、相続財産全体の分割協議書として作る場合でも、表題だけで効力が決まるわけではありませんが、分かりやすさのために明確にします。

6.2 被相続人の表示

被相続人を特定するため、次の事項を記載します。

次の表は、この章の確認項目を整理したものです。名義変更の準備で見落としを防ぐために重要で、各列の項目と目的を対応させて読み取ってください。

項目記載例
氏名被相続人 甲野太郎
最後の住所東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
本籍東京都千代田区霞が関一丁目1番
生年月日昭和20年1月1日
死亡日令和6年5月1日

登記簿上の住所と最後の住所が異なる場合、単に最後の住所だけを書くと登記簿上の名義人とのつながりが分かりにくいことがあります。その場合は、協議書中に登記簿上の住所も併記するか、添付書類で住所の沿革を示します。

6.3 相続人全員の表示

協議書の末尾に、相続人全員の住所、氏名を記載し、実印を押印します。印鑑証明書は、遺産分割協議書に押された印影が実印であることを示すために添付します。

6.4 不動産の表示

不動産は、登記事項証明書の表題部に合わせて正確に書きます。

土地の基本型

不動産の表示
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

建物の基本型

不動産の表示
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

敷地権付き区分建物の基本型

マンションの場合は、土地だけ、建物だけを単純に書けばよいとは限りません。登記事項証明書に「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」がある場合、それに合わせて記載します。

一棟の建物の表示
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
建物の名称 霞が関ハイツ

専有部分の建物の表示
家屋番号 霞が関一丁目1番1の101
建物の名称 101号
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分 65.00平方メートル

敷地権の表示
所在及び地番 東京都千代田区霞が関一丁目1番1
地目 宅地
地積 1000.00平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 100000分の6500

6.5 誰が取得するか

相続登記で最も重要な本文は、「誰が取得するか」です。

相続人甲野一郎は、下記不動産を取得する。

共有にする場合は、持分割合を明確にします。

相続人甲野一郎は持分2分の1、相続人甲野花子は持分2分の1の割合で、下記不動産を取得する。

6.6 協議日

遺産分割の日は、相続登記の義務履行期間の起算点にも関係します。協議成立日を明確に記載します。

令和6年10月15日

6.7 登記手続への協力条項

相続登記の申請は不動産取得者が中心となって行いますが、他の相続人の印鑑証明書や追加書類が必要になることがあります。協力条項を置くと実務上便利です。

相続人全員は、本協議に基づく相続登記その他必要な名義変更手続に協力し、必要書類の取得、署名押印その他必要な行為を行う。

6.8 後日判明財産条項

不動産の漏れが心配な場合は、後日判明した遺産の取扱いを定めます。

本協議書に記載のない遺産が後日判明したときは、相続人全員で別途協議する。

または、特定の相続人が取得する設計もあります。

本協議書に記載のない遺産が後日判明したときは、相続人甲野一郎が取得する。ただし、相続人全員が別段の合意をした場合はこの限りでない。

税務や紛争予防の観点では、金額が大きい財産まで包括的に一人へ帰属させる条項は慎重に検討すべきです。

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Section 05

不動産名義変更で使う遺産分割協議書の基本記載例

被相続人、不動産表示、取得者、協力条項を確認します。

以下の記載例は、実務の検討用サンプルです。実際に使う場合は、登記事項証明書、戸籍、相続人関係、遺言の有無、評価額、税務、相続人の意思能力、利益相反の有無を確認してください。

7.1 記載例1 土地建物を長男が単独取得する場合

遺産分割協議書

被相続人甲野太郎(本籍 東京都千代田区霞が関一丁目1番、最後の住所 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号、令和6年5月1日死亡)の相続について、共同相続人である甲野花子、甲野一郎及び甲野二郎は、本日、被相続人の遺産について協議し、次のとおり遺産分割協議を成立させた。

第1条 相続人甲野一郎は、下記不動産を取得する。

不動産の表示
1 土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

2 建物
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

第2条 相続人全員は、前条に基づく相続登記その他必要な手続に協力する。

第3条 本協議書に記載のない遺産が後日判明したときは、相続人全員で別途協議する。

以上の協議成立を証するため、本協議書を3通作成し、相続人各自が署名押印のうえ、各1通を保有する。

令和6年10月15日

住所 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
相続人 甲野花子 実印

住所 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号
相続人 甲野一郎 実印

住所 東京都文京区本郷三丁目1番1号
相続人 甲野二郎 実印

解説 ― 土地建物を一人が単独取得する最も典型的な記載です。法務局での相続登記では、誰が取得するか、不動産の表示が登記事項証明書どおりか、相続人全員の署名押印と印鑑証明書が揃うかが重要です。

7.2 記載例2 土地は長男、建物は配偶者が取得する場合

土地と建物の取得者を分けることもできます。ただし、利用関係、将来売却、相続税、固定資産税、居住権、担保設定を考えると、後のトラブルが起きやすい設計です。

第1条 相続人甲野一郎は、下記土地を取得する。

土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

第2条 相続人甲野花子は、下記建物を取得する。

建物
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

第3条 相続人甲野一郎及び甲野花子は、前2条の不動産の利用、管理、固定資産税等の負担について、別途誠実に協議する。

解説 ― 土地所有者と建物所有者が別になると、使用貸借、賃貸借、地代、建替え、売却時の同意などが問題になります。高齢の配偶者の居住確保が目的であれば、配偶者居住権や代償金を含め、弁護士、司法書士、税理士に確認する価値があります。

7.3 記載例3 相続人2名が共有で取得する場合

第1条 相続人甲野一郎及び相続人甲野二郎は、下記不動産を次の持分割合で取得する。

甲野一郎 持分2分の1
甲野二郎 持分2分の1

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

建物
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

解説 ― 共有は一見公平ですが、将来の売却、賃貸、建替え、担保設定、共有者の死亡による次世代相続で複雑化しやすい形式です。共有にするなら、管理費用、固定資産税、利用方法、売却条件を別途合意しておくとよいでしょう。

7.4 記載例4 持分を異なる割合で取得する場合

第1条 相続人甲野花子、甲野一郎及び甲野二郎は、下記不動産を次の持分割合で取得する。

甲野花子 持分2分の1
甲野一郎 持分4分の1
甲野二郎 持分4分の1

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

解説 ― 法定相続分どおりでも、遺産分割協議によって持分を定める場合は、協議書上で明確に書きます。持分の合計が1になるかを必ず確認します。

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Section 06

代償分割で不動産名義変更をする遺産分割協議書の記載例

単独取得、土地建物の分離、共有、異なる持分を比較します。

8.1 代償分割とは

代償分割とは、特定の相続人が不動産などを取得する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う分割方法です。自宅を一人が取得し、他の相続人へ現金を支払って公平を図る場面で使われます。

8.2 記載例5 長男が不動産を取得し、弟へ代償金を支払う場合

第1条 相続人甲野一郎は、下記不動産を取得する。

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

建物
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

第2条 甲野一郎は、前条の不動産を取得する代償として、甲野二郎に対し、金500万円を令和6年12月31日限り、甲野二郎指定の金融機関口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲野一郎の負担とする。

第3条 甲野一郎が前条の支払を遅滞したときは、支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

解説 ― 代償金条項では、金額、支払期限、支払方法、振込手数料、遅延損害金を明確にします。代償金の支払能力がないまま不動産を取得すると、相続人間の紛争や差押えの原因になります。税務上の評価や相続税申告への影響も確認してください。

8.3 代償金を分割払いにする場合

第2条 甲野一郎は、前条の不動産を取得する代償として、甲野二郎に対し、金600万円を次のとおり分割して支払う。

1 令和6年12月31日限り 金200万円
2 令和7年6月30日限り 金200万円
3 令和7年12月31日限り 金200万円

2 前項の各支払は、甲野二郎指定の金融機関口座に振り込む方法により行い、振込手数料は甲野一郎の負担とする。

解説 ― 分割払いは未払いリスクが高くなります。必要に応じて、公正証書、抵当権設定、連帯保証、期限の利益喪失条項を検討します。これらは法的効果が大きいため、弁護士または司法書士に相談するのが安全です。

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Section 07

換価分割で不動産名義変更をする遺産分割協議書の記載例

代償金の金額、期限、支払方法、未払いリスクを整理します。

9.1 換価分割とは

換価分割とは、不動産を売却して金銭に換え、その売却代金を相続人間で分ける方法です。相続人の誰も不動産を利用しない場合、公平に現金化したい場合、代償金を用意できない場合に検討されます。

9.2 記載例6 不動産を売却して代金を分ける場合

第1条 相続人全員は、下記不動産を売却し、売却代金から売却に要する仲介手数料、測量費、登記費用、譲渡に伴う租税公課その他売却に必要な費用を控除した残額を、次の割合で取得することに合意する。

甲野花子 2分の1
甲野一郎 4分の1
甲野二郎 4分の1

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

建物
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
家屋番号 1番1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
    2階 50.00平方メートル

第2条 相続人全員は、前条の不動産の売却手続を甲野一郎に委任し、売買契約の締結、媒介契約の締結、売買代金の受領、所有権移転登記その他売却に必要な手続に協力する。

第3条 前条の売却手続を行うために必要な相続登記の方法、登記費用、司法書士報酬その他の費用負担については、相続人全員が協議して定める。

解説 ― 換価分割では、売却前に誰の名義へ相続登記するか、売買契約の当事者を誰にするか、売却費用をどのように負担するかを設計する必要があります。代表者一人に形式的に不動産を取得させて売却代金を分配する設計では、税務上の説明や契約上の権限が問題になり得ます。税理士、司法書士、宅地建物取引業者との連携が重要です。

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Section 08

マンションの不動産名義変更で使う遺産分割協議書の記載例

売却して現金で分ける場合の権限、費用、分配割合を確認します。

10.1 敷地権付き区分建物は表記が長い

マンションは、専有部分だけでなく敷地権の表示を含めて特定する必要があります。登記事項証明書の表題部をそのまま確認し、誤字、桁違い、割合の誤記に注意します。

10.2 記載例7 マンションを配偶者が取得する場合

第1条 相続人甲野花子は、下記区分建物を取得する。

不動産の表示
一棟の建物の表示
所在 東京都千代田区霞が関一丁目1番地1
建物の名称 霞が関ハイツ

専有部分の建物の表示
家屋番号 霞が関一丁目1番1の101
建物の名称 101号
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分 65.00平方メートル

敷地権の表示
符号 1
所在及び地番 東京都千代田区霞が関一丁目1番1
地目 宅地
地積 1000.00平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 100000分の6500

解説 ― 敷地権割合は桁数が多く、誤記が起きやすい箇所です。登記事項証明書の記載を転記し、固定資産税課税明細書の表記だけで済ませないようにします。

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Section 09

共有持分だけを相続する不動産名義変更の記載例

敷地権付き区分建物の一棟、専有部分、敷地権を分けて記載します。

被相続人が不動産全部ではなく、共有持分だけを持っていた場合、相続の対象はその共有持分です。

第1条 相続人甲野一郎は、被相続人甲野太郎が有していた下記不動産の共有持分3分の1を取得する。

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

被相続人の持分 3分の1

解説 ― 被相続人が持っていた持分を明記します。相続人甲野一郎が取得するのは、土地全体ではなく「被相続人の持分3分の1」です。登記上は、被相続人持分全部移転の形になります。

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Section 10

一部の不動産だけ先に名義変更する遺産分割協議書の記載例

被相続人の持分を明確にし、土地全体との違いを整理します。

次の強調欄は、この章の結論を整理したものです。最初に押さえるべき判断軸として重要で、どの点を優先して確認するかを読み取ってください。

取得するのは土地全体ではなく被相続人の持分

協議書では、被相続人が有していた共有持分を取得する旨を明記します。

相続財産全体の分割がまとまらなくても、不動産だけ先に分割することがあります。民法は遺産の全部または一部の分割を前提としていますが、税務や他財産との公平に影響するため慎重に進めます。

第1条 相続人全員は、被相続人甲野太郎の遺産のうち、本協議書記載の不動産についてのみ、次のとおり分割することに合意する。

第2条 相続人甲野一郎は、下記不動産を取得する。

不動産の表示
土地
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

第3条 本協議書に記載のない遺産については、相続人全員が別途協議する。

解説 ― 不動産だけ急いで名義変更したい事情がある場合の例です。たとえば売却、融資、建替え、相続登記期限への対応が必要な場合です。ただし、預金、株式、債務、代償金を後回しにすると、後日紛争化することがあります。

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Section 11

未成年者や後見利用者がいる不動産名義変更の記載例

一部分割の可否と残る遺産の扱いを確認します。

次の判断の流れは、確認する順番を整理したものです。手続の抜け漏れを防ぐために重要で、上から順にどの確認を終えてから次へ進むかを読み取ってください。

一部分割を検討する順番

不動産の登記や売却が急ぎか確認

期限、融資、売却、建替えなどの必要性を整理します。

他財産との公平に影響しないか確認

預金、株式、債務、代償金を後回しにした場合の不公平を検討します。

残る遺産の扱いを明記

協議書に記載のない遺産は別途協議する条項を入れます。

13.1 利益相反に注意する

未成年者と親権者がともに相続人である場合、親が子を代理して遺産分割協議をすると利益相反になることがあります。また、成年被後見人と成年後見人が共同相続人として遺産分割協議をする場合も利益相反が問題になります。

裁判所は、成年被後見人等と後見人等が共同相続人として遺産分割協議をする場合など、本人と後見人等の間の利益相反行為については、後見人等に代わって裁判所が選任した特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人が本人を代理すると案内しています。

13.2 記載例8 特別代理人が署名押印する場合

住所 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
相続人 甲野花子 実印

住所 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号
相続人 甲野一郎 実印

住所 東京都文京区本郷三丁目1番1号
未成年者甲野三郎特別代理人 乙野次郎 実印

解説 ― 実際には、家庭裁判所の特別代理人選任審判書、特別代理人の印鑑証明書などが必要になることがあります。家庭裁判所に提出した協議書案から大きく変更する場合は、再確認が必要です。

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Section 12

数次相続や代襲相続がある不動産名義変更の記載例

利益相反と特別代理人の署名押印を確認します。

次の判断の流れは、確認する順番を整理したものです。手続の抜け漏れを防ぐために重要で、上から順にどの確認を終えてから次へ進むかを読み取ってください。

未成年者や後見利用者がいる場合の確認順

相続人の年齢と判断能力を確認

未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の有無を確認します。

代理人との利益相反を確認

親権者や後見人も共同相続人の場合、利益相反が問題になります。

特別代理人等の選任を検討

家庭裁判所が選任した特別代理人などが本人を代理する場面があります。

14.1 数次相続とは

被相続人Aの相続登記をしないまま、相続人Bも亡くなった場合のように、相続が重なっている状態を数次相続と呼びます。協議書の当事者が増え、Aの相続人だけでなくBの相続人も関与することがあります。

14.2 単純な記載では足りない場合

数次相続では、「Aの遺産を誰が取得するか」と「Bの相続分を誰が承継するか」を整理する必要があります。協議書を一通でまとめるか、相続ごとに分けるかは、事案によって異なります。

第1条 相続人全員は、被相続人甲野太郎の遺産である下記不動産について、甲野一郎が取得することに合意する。

第2条 なお、甲野二郎は令和6年8月1日に死亡しており、甲野二郎の相続人である乙野春子及び乙野夏子は、甲野二郎が甲野太郎の相続について有していた権利義務を承継した者として、本協議に参加する。

解説 ― 数次相続は戸籍関係が複雑で、登記原因や添付書類も難しくなります。本人申請よりも司法書士に依頼するのが現実的です。

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Section 13

遺産分割協議書と相続登記申請書の関係

複数の相続が重なる場合の当事者と権利承継を整理します。

次の強調欄は、この章の結論を整理したものです。最初に押さえるべき判断軸として重要で、どの点を優先して確認するかを読み取ってください。

数次相続では当事者と相続関係の整理が中心

先の相続登記をしないまま次の相続が起きた場合、誰がどの権利を承継したかを整理します。

遺産分割協議書は、それだけで名義変更が完了する書類ではありません。法務局へ所有権移転登記の申請を行う必要があります。

15.1 登記申請書の基本イメージ

登記申請書

登記の目的 所有権移転

原因 令和6年5月1日相続

相続人 被相続人 甲野太郎

住所 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号
甲野一郎

添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 代理権限証明情報

課税価格 金12,345,000円
登録免許税 金49,300円

不動産の表示
所在 東京都千代田区霞が関一丁目
地番 1番1
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

注意 ― 登記申請書の記載方法は、申請する不動産、持分、課税価格、添付書類、管轄法務局によって変わります。法務局の様式や司法書士の確認を利用してください。法務省Q&Aでも、不明な点は法務局の登記手続案内や司法書士等への相談が案内されています。

15.2 原因日はいつか

登記原因は通常「相続」であり、原因日は被相続人の死亡日です。遺産分割協議日ではありません。協議日が登記義務の期間計算で重要になる場面はありますが、所有権移転の登記原因日とは区別します。

15.3 添付情報の考え方

遺産分割協議による相続登記では、概ね次の書類が関係します。

次の表は、この章の確認項目を整理したものです。名義変更の準備で見落としを防ぐために重要で、各列の項目と目的を対応させて読み取ってください。

書類目的
被相続人の出生から死亡までの戸籍等相続人を確定する
被相続人の住民票除票または戸籍附票登記簿上の所有者と被相続人の同一性を示す
相続人の戸籍相続人が現在存在することを示す
不動産取得者の住民票新名義人の住所を示す
遺産分割協議書不動産を誰が取得するかを示す
印鑑証明書実印による合意を示す
固定資産評価証明書等登録免許税の課税価格を示す
委任状司法書士等が代理申請する場合に必要
相続関係説明図または法定相続情報一覧図戸籍の整理、原本還付、手続負担軽減に役立つ

法定相続情報証明制度では、被相続人と相続人を一覧にした図を作成し、登記所へ申出を行います。法務局は、同制度の手続を、必要書類の収集、法定相続情報一覧図の作成、申出書の記入と登記所への申出という流れで案内しています。

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Section 14

不動産名義変更にかかる登録免許税の計算

1,000分の4の税率、課税価格、免税措置を確認します。

16.1 税率

相続による不動産の所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額に対し1,000分の4です。国税庁の税額表では、土地の所有権移転登記について、相続、法人の合併または共有物の分割の税率を1,000分の4とし、建物についても相続または法人の合併による所有権移転の税率を1,000分の4としています。

16.2 計算例

固定資産評価額が12,345,678円の土地を相続登記する場合の基本計算は、次のとおりです。

固定資産評価額 12,345,678円
課税価格 12,345,000円
登録免許税 12,345,000円 × 4/1000 = 49,380円
100円未満切捨て後 49,300円

実務では、同一申請書で複数不動産を申請する場合の合算、免税措置、最低税額、評価額のない不動産などを確認します。

16.3 免税措置

国税庁は、相続により土地の所有権を取得した個人が、その土地の相続登記を受ける前に死亡した場合や、一定の少額土地について、令和9年3月31日までの免税措置を案内しています。

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Section 15

不動産名義変更の遺産分割協議書と相続税の関係

相続税申告期限、評価、分割方法の税務影響を確認します。

次の強調欄は、この章の結論を整理したものです。最初に押さえるべき判断軸として重要で、どの点を優先して確認するかを読み取ってください。

相続登記の登録免許税は原則1,000分の4

相続による不動産の所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額に対し1,000分の4です。

相続登記と相続税申告は別の手続です。ただし、不動産評価、代償分割、換価分割、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例などが絡むと、協議書の文言が税務に影響することがあります。

国税庁は、相続税の申告について、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うと説明しています。

したがって、相続登記の3年期限だけを見ていると、相続税申告の期限に間に合わないことがあります。相続税が発生する可能性がある場合、協議書作成の段階から税理士に相談すべきです。

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Section 16

不動産名義変更の遺産分割協議書でよくある誤り

表示の誤り、相続人漏れ、押印、遺言、抵当権を確認します。

18.1 不動産の表示があいまい

「自宅」「実家」「千代田区の土地」だけでは、どの不動産か特定できません。登記事項証明書の所在、地番、家屋番号などを確認します。

18.2 地番と住所を混同する

住居表示の住所と登記上の地番は異なることがあります。固定資産税通知書、登記事項証明書、公図、地積測量図を照合してください。

18.3 相続人の一人が参加していない

遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意が必要です。戸籍調査で相続人を確定せずに協議書を作ると、後で無効や作り直しの問題が生じます。

18.4 実印と印鑑証明書が一致しない

協議書に押印した印鑑が印鑑証明書の印影と異なると、登記で問題になります。押印前に印鑑を確認します。

18.5 協議成立後に相続人が死亡した

協議成立後に相続人が死亡した場合と、協議成立前に相続人が死亡した場合では処理が異なります。協議書の日付、死亡日、署名押印のタイミングを確認します。

18.6 遺言書を確認していない

遺言書がある場合、遺産分割協議の要否や登記手続が変わります。自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言の有無を確認します。

18.7 抵当権や借入金を見落とす

不動産に抵当権が付いている場合、相続登記で抵当権が消えるわけではありません。住宅ローン、事業借入、団体信用生命保険の有無、債務承継、金融機関手続を確認します。

18.8 農地、山林、私道を軽視する

農地は農地法、山林は境界や管理、私道は持分や通行掘削承諾などの問題が生じます。売却予定がある場合、不動産業者、土地家屋調査士、行政書士、司法書士の連携が必要です。

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Section 17

不動産名義変更の遺産分割協議書に関わる専門職

弁護士、司法書士、税理士などの役割を切り分けます。

次の一覧は、問題になりやすい確認項目を整理したものです。後から補正や再協議にならないために重要で、どの不備がどの手続に影響するかを読み取ってください。

不動産の表示があいまい

「自宅」「実家」だけでは特定できません。登記事項証明書の所在、地番、家屋番号などを確認します。

相続人の一人が参加していない

相続人全員の合意が必要です。戸籍調査で相続人を確定します。

実印と印鑑証明書が一致しない

協議書に押印した印鑑が印鑑証明書の印影と異なると、登記で問題になります。

19.1 弁護士

相続人間で争いがある場合、遺留分、使い込み疑い、寄与分、特別受益、不動産評価の対立、交渉、調停、審判、訴訟対応では弁護士が中心になります。協議書の文言も、将来の紛争を見据えて作る必要があります。

19.2 司法書士

相続登記、不動産の名義変更、戸籍収集、登記申請書、相続関係説明図、法務局への申請では司法書士が中心です。不動産がある相続では、協議書の不動産表示や登記申請との整合性を司法書士に確認する意義が大きいです。

19.3 税理士

相続税申告、相続財産評価、代償分割、換価分割、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、譲渡所得税の見通しでは税理士が重要です。相続税申告の期限は原則10か月であり、登記期限より早く到来します。

19.4 行政書士

紛争、税務、登記申請の代理を除く範囲で、遺産分割協議書、相続人関係説明図、遺言作成支援などに関わります。争いがない書類整理では有用ですが、登記申請そのものは司法書士の業務領域です。

19.5 不動産鑑定士

不動産価格が争点になる場合、鑑定評価が重要になります。代償分割で代償金額を決めるとき、換価分割で最低売却価格を検討するとき、収益物件や広大地があるときに関与します。

19.6 土地家屋調査士

境界確認、分筆、建物表題登記、滅失登記、未登記建物の調査で関与します。相続不動産を売る前に境界問題を解消する必要がある場合もあります。

19.7 宅地建物取引士と不動産仲介業者

換価分割や相続不動産の売却では、価格査定、媒介契約、重要事項説明、売買契約、引渡しを担います。相続登記が完了しないと売却決済が難しいことが多いため、司法書士との連携が必要です。

19.8 家庭裁判所で関わる人

遺産分割調停や審判では、裁判官、家事調停官、家事調停委員、裁判所書記官、必要に応じて鑑定人や専門委員が関わります。裁判所の案内によれば、調停では事情聴取や資料提出、必要に応じた鑑定などを通じて合意を目指し、調停不成立の場合は審判へ移行します。

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Section 18

遺産分割協議書で不動産名義変更をするチェックリスト

作成前、作成時、押印後の確認事項を整理します。

20.1 協議書作成前

  • 被相続人の死亡日を確認したか。
  • 遺言書の有無を確認したか。
  • 相続人全員を戸籍で確定したか。
  • 相続放棄の有無を確認したか。
  • 未成年者、成年被後見人、行方不明者がいないか。
  • 不動産の登記事項証明書を取得したか。
  • 固定資産評価証明書または課税明細書を確認したか。
  • 共有持分、抵当権、差押え、仮登記を確認したか。
  • 農地、私道、未登記建物、境界問題を確認したか。

20.2 協議書作成時

  • 被相続人の氏名、本籍、最後の住所、死亡日を記載したか。
  • 相続人全員の氏名住所を記載したか。
  • 不動産の表示を登記事項証明書どおり記載したか。
  • 誰が取得するかを明確に書いたか。
  • 共有の場合は持分割合を明確にしたか。
  • 代償金がある場合は金額、期限、方法を明確にしたか。
  • 換価分割の場合は売却権限、費用控除、分配割合を明確にしたか。
  • 後日判明財産の取扱いを決めたか。
  • 登記手続への協力条項を入れたか。
  • 協議成立日を記載したか。

20.3 押印後

  • 全員が実印で押印したか。
  • 印鑑証明書を取得したか。
  • 印鑑証明書の氏名住所と協議書の表示に矛盾がないか。
  • 登記申請書の不動産表示と協議書の不動産表示が一致しているか。
  • 登録免許税の計算を確認したか。
  • 管轄法務局を確認したか。
  • 原本還付を希望する書類のコピーを準備したか。
  • 登記完了後の登記事項証明書を確認したか。

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Section 20

遺産分割協議書で不動産名義変更をする場合のFAQ

一般的な制度説明として、よくある疑問を整理します。

遺産分割協議書があれば、自動的に不動産の名義は変わりますか。

一般的には、遺産分割協議書は相続人間の合意を示す書類であり、それだけで登記名義が自動的に変わるわけではないとされています。不動産の名義を変えるには、法務局へ相続による所有権移転登記を申請する必要があります。具体的な申請内容は、不動産や相続関係によって変わるため、司法書士等の専門家へ相談する必要があります。

遺産分割協議書には実印が必要ですか。

一般的には、相続登記に使う場合、実印で押印し、印鑑証明書を添付する実務が基本とされています。ただし、必要書類や扱いは申請内容や提出先の確認事項によって変わる可能性があります。具体的には、資料を整理したうえで司法書士等へ相談する必要があります。

不動産の表示は固定資産税納税通知書から写せばよいですか。

一般的には、固定資産税納税通知書だけでなく登記事項証明書を確認する必要があるとされています。住所と地番、家屋番号、敷地権割合などは誤りが起きやすい箇所です。具体的な転記方法は、不動産の種類や登記記録によって変わるため、専門家へ確認する必要があります。

相続登記の期限はいつですか。

一般的には、2024年4月1日以降に不動産を相続で取得したことを知った場合、その日から3年以内が基本とされています。遺産分割で不動産を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に結果に基づく登記をする必要があります。2024年4月1日より前に取得を知っていた未登記不動産については、原則として2027年3月31日までに登記が必要とされています。個別の期限判断は事情により変わるため、専門家へ相談する必要があります。

相続人申告登記をすれば、遺産分割協議書は不要ですか。

一般的には、相続人申告登記は遺産分割がまとまらない場合などに期限内の義務履行を支える制度とされています。ただし、不動産を誰が取得するかを確定して名義を移す登記とは異なります。遺産分割が成立した後は、その結果に基づく登記が必要になるため、具体的な手続は専門家へ確認する必要があります。

相続人が遠方にいる場合、協議書を一通にまとめる必要がありますか。

一般的には、一通の遺産分割協議書を回覧して全員が署名押印する方法のほか、同一内容の遺産分割協議証明書を相続人ごとに作る実務もあります。ただし、登記申請で利用できる形式かどうかは書類の内容や提出先で確認が必要です。具体的には、司法書士または法務局の案内で確認する必要があります。

相続人の一人が認知症の場合はどうなりますか。

一般的には、意思能力がない人は有効に遺産分割協議をすることができないとされています。成年後見制度の利用、特別代理人の選任、家庭裁判所の関与が必要になる可能性があります。個別の判断は本人の状態や相続関係によって変わるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

協議書を作った後に不動産が見つかった場合はどうしますか。

一般的には、後日判明財産条項がある場合はその条項を確認し、条項がない場合は相続人全員で追加協議を行うことが考えられます。登記が必要な不動産であれば、追加の相続登記も必要になる可能性があります。具体的な処理は協議書の文言や相続関係によって変わるため、専門家へ相談する必要があります。

住宅ローンが残っている不動産を相続する場合、協議書には何を書きますか。

一般的には、不動産の取得者と債務負担者を混同しないことが重要とされています。相続人間では負担割合を合意できる場合がありますが、金融機関との関係で債務者変更や免責が当然に認められるわけではありません。団体信用生命保険、抵当権、保証人、金融機関の承諾などを確認し、具体的には専門家へ相談する必要があります。

自分で相続登記できますか。

一般的には、本人申請も可能とされています。ただし、不動産が複数ある、相続人が多い、住所変更がある、数次相続がある、未成年者や後見人がいる、マンションや共有持分がある、売却予定がある場合は、手続が複雑になる可能性があります。具体的な申請可否や必要書類は、司法書士等へ相談する必要があります。

Section 21

不動産名義変更で使う遺産分割協議書の文言まとめ

単独取得、共有、代償分割、換価分割の中核文言を確認します。

次の比較表は、不動産名義変更で使う遺産分割協議書の中核文言を場面別に整理したものです。分割方法によって登記、税務、支払、売却実務への影響が変わるため重要です。読者は、どの場面で取得者、持分、代償金、売却代金、後日判明財産を明確にする必要があるかを読み取ってください。

場面中核文言
単独取得相続人Aは、下記不動産を取得する。
共有取得相続人Aは持分2分の1、相続人Bは持分2分の1の割合で、下記不動産を取得する。
共有持分の相続相続人Aは、被相続人が有していた下記不動産の共有持分3分の1を取得する。
代償分割Aは、不動産取得の代償として、Bに金〇円を令和〇年〇月〇日限り支払う。
換価分割相続人全員は、下記不動産を売却し、費用控除後の残額を〇割合で取得する。
一部分割本協議書記載の不動産についてのみ、次のとおり分割する。
後日判明財産本協議書に記載のない遺産が後日判明したときは、相続人全員で別途協議する。
登記協力相続人全員は、本協議に基づく相続登記その他必要な手続に協力する。

遺産分割協議書を使って不動産の名義変更をする場合の記載例は、単なる文章例として理解するだけでは不十分です。登記のためには、書かれた内容が次の条件を満たす必要があります。

  • 相続人全員が正しく確定されていること。
  • 相続人全員の合意が存在すること。
  • 不動産が登記上の表示で特定されていること。
  • 取得者と持分が明確であること。
  • 添付書類と矛盾しないこと。
  • 登録免許税の計算と申請書の記載が一致していること。
  • 税務、将来売却、居住、債務、共有管理まで見通していること。

特に、不動産は金額が大きく、相続人の生活の基盤になることがあります。協議書の一文が、将来の売却可否、税負担、兄弟間の対立、次世代相続に影響します。争いがある場合は弁護士、不動産登記は司法書士、相続税は税理士、不動産評価は不動産鑑定士、境界や分筆は土地家屋調査士、売却は宅地建物取引士と連携し、専門職の役割を切り分けて進めることが、最も確実な予防法です。

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Reference

この記事の参考情報源

公的機関、法令、裁判所、国税庁などの資料名を整理しています。

  • 法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A
  • 法務局 相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ 登記手続ハンドブック
  • 法務局 相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等
  • e-Gov法令検索 民法
  • e-Gov法令検索 不動産登記法
  • 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
  • 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
  • 法務局 法定相続情報証明制度の具体的な手続について
  • 裁判所 遺産分割調停
  • 裁判所 成年被後見人等に関する特別代理人等の選任
  • 法務省 所有不動産記録証明制度について