2σ Guide

家族信託の受託者に
適切な人がいない場合の対処法

受託者候補がいない、能力や信頼性に不安がある、親族間対立がある場面で、家族信託を使うことが重要か、別制度へ切り替えることが重要かを整理します。

10対処法の選択肢
3最初に確認する前提
16契約条項の確認点
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家族信託の受託者に 適切な人がいない場合の対処法

制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。

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家族信託の受託者に 適切な人がいない場合の対処法
制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。
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  • 家族信託の受託者に 適切な人がいない場合の対処法
  • 制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。

POINT 1

  • 家族信託の受託者問題を全体像で整理
  • 制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。
  • 受託者がいない問題は、契約書作成ではなく制度選択の問題です
  • 次の重要ポイントは、受託者に適切な人がいない場面で最初に押さえる結論をまとめたものです。
  • 信頼できる受託者がいないまま家族信託を作ると、分別管理、説明責任、税務資料、金融機関対応、不動産処分で破綻しやすくなります。

POINT 2

  • 家族信託とは何か
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 1.1 家族信託は法律上の正式名称ではない
  • 1.2 典型的な当事者
  • 1.3 受託者は単なる管理人ではない

POINT 3

  • 家族信託の受託者問題 ― 「受託者に適切な人がいない」とは何を意味するか
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 2.1 主な類型
  • 2.2 「いない」のか「いるが設計不足」なのかを分ける
  • 適切な対処法は、その原因によって大きく変わる。

POINT 4

  • 家族信託の受託者問題 ― 受託者に不適切な人を選ぶ危険
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 3.1 受託者の権限は大きい
  • 3.2 「親が信頼しているから大丈夫」では足りない
  • 受託者の行動は、本人の生活資金、家族の住まい、相続人間の公平、税務申告に直結する。

POINT 5

  • 家族信託の受託者問題 ― まず確認することが重要三つの前提
  • 4.1 本人に契約締結能力があるか
  • 4.2 信託する財産は本当に信託に向いているか
  • 4.3 家族信託が目的達成に必要か
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

POINT 6

  • 家族信託の受託者問題 ― 対処法1 受託者候補を広げて再評価する
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 5.1 親族の範囲を機械的に狭めない
  • 5.2 受託者候補者への事前説明が不可欠
  • 家族信託では、長男、長女、同居の子などが最初の候補になりやすい。

POINT 7

  • 家族信託の受託者問題 ― 対処法2 受託者の能力不足を監督設計で補う
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 6.1 信託監督人を置く
  • 6.2 受益者代理人を置く
  • 6.3 監督設計で補える場合と補えない場合

POINT 8

  • 家族信託の受託者問題 ― 対処法3 共同受託者を検討する
  • 受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 7.1 一人に集中させない設計
  • 7.2 共同受託者の実務上の問題
  • 受託者候補が一人では不安な場合、複数人を共同受託者とすることがある。

まとめ

  • 家族信託の受託者に 適切な人がいない場合の対処法
  • 家族信託の受託者問題を全体像で整理:制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。
  • 家族信託とは何か:受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 家族信託の受託者問題 ― 「受託者に適切な人がいない」とは何を意味するか:受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

家族信託の受託者問題を全体像で整理

制度選択の順序と、最初に押さえることが重要注意点を整理します。

次の重要ポイントは、受託者に適切な人がいない場面で最初に押さえる結論をまとめたものです。制度選択を誤ると財産管理や相続紛争に直結するため重要で、無理に信託契約へ進む前に、受託者の有無、補える不足、別制度の適合性を読み取ります。

受託者がいない問題は、契約書作成ではなく制度選択の問題です

信頼できる受託者がいないまま家族信託を作ると、分別管理、説明責任、税務資料、金融機関対応、不動産処分で破綻しやすくなります。候補者を広げる、監督設計で補う、任意後見や遺言へ切り替えるという順番で検討します。

次の選択肢の一覧は、受託者候補が弱いときに比較する主な対処法を整理したものです。家族関係や財産内容によって向く方法が変わるため重要で、各項目を見比べると、信託を続ける案と別制度へ切り替える案の境目を読み取れます。

1

候補者を広げる

親族の範囲、法人、信託会社などを含めて再評価します。

再評価
2

監督設計で補う

信託監督人、受益者代理人、専門職支援で能力不足を補えるか確認します。

監督
3

共同・予備を置く

共同受託者や第二、第三受託者を設計し、不在リスクを下げます。

承継
4

信託銀行等を比較

営業として信託を引き受ける主体の取扱範囲、費用、条件を確認します。

法人
5

後見制度へ切替

本人の生活支援や判断能力低下後の代理が中心なら任意後見や法定後見を検討します。

後見
6

遺言を中心にする

死亡後の承継が目的なら、遺言と遺言執行者で足りるか確認します。

遺言

家族信託は、親などの財産を、家族などの受託者に託し、本人や配偶者などの受益者のために管理、処分、給付を行う仕組みです。高齢期の財産管理、認知症対策、共有不動産の管理、事業承継、二次相続対策などで利用されることがある。しかし、家族信託は「信頼できる受託者」が存在することを前提とする制度です。したがって、受託者に適切な人がいない場合に、形式だけの受託者を置いて契約を作ることは、制度の本質に反する。

結論からいえば、家族信託の受託者に適切な人がいない場合の対処法は、次の順序で検討することが重要です。

  1. まず、家族信託を使う目的を明確にする。
  2. 次に、受託者候補を親族内外に広げて再評価する。
  3. 受託者候補が未熟なだけであれば、信託監督人、受益者代理人、専門職による事務支援、予備的受託者の指定で補えるかを検討します。
  4. 受託者が存在しない、または紛争リスクが高い場合は、信託銀行、信託会社などの利用可能性を確認します。
  5. 信託の目的が、本人の生活支援や判断能力低下後の代理で足りるなら、任意後見、法定後見、財産管理委任契約などに切り替える。
  6. 死亡後の財産承継だけが目的なら、遺言、遺言執行者、自筆証書遺言書保管制度、公正証書遺言を中心に再設計する。

家族信託は万能ではない。受託者がいないなら、家族信託を断念することが正しい結論になることもある。専門家の実務上、最も危険なのは「誰でもよいので受託者にする」という発想です。受託者は、信託財産を管理する名義人になり、契約、売却、金銭管理、帳簿作成、報告、税務資料の整理、金融機関対応、相続人対応を担う。善管注意義務、忠実義務、分別管理義務、公平義務などを負うため、単なる名義貸しでは済まない。

このページでは、家族信託の受託者に適切な人がいない場合の対処法について、法律、登記、税務、成年後見、遺言、不動産、紛争予防の観点から、実務で使える判断枠組みを提示する。

Section 01

家族信託とは何か

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

1.1 家族信託は法律上の正式名称ではない

「家族信託」は、一般に、家族や親族などを受託者として利用する民事信託を指す実務上の呼称です。信託法上の正式な制度名として「家族信託」という制度があるわけではない。法律上は、信託契約、遺言、自己信託などの信託行為によって設定される信託の一類型として理解される。

信託の基本構造は、委託者が信頼できる受託者に財産を移転し、受託者が受益者のためにその財産を管理、運用、処分するというものです。信託協会も、信託は財産を信頼できる人または専門機関に託し、特定の目的に従って管理、運用してもらう制度だと説明している。

1.2 典型的な当事者

家族信託には、通常、次の三者が登場する。

次の一覧は、家族信託とは何かで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

当事者 役割 典型例
委託者 財産を信託する人 高齢の親
受託者 財産を預かり、管理、処分、給付を行う人 子、親族、法人、信託会社など
受益者 信託財産から利益を受ける人 委託者本人、配偶者、障害のある子など

たとえば、父が自宅と賃貸不動産を子に信託し、父自身を受益者とする場合、父が委託者兼受益者、子が受託者となる。父の判断能力が低下しても、信託契約に従って子が賃料管理、修繕契約、売却などを行えるようにすることが目的となる。

1.3 受託者は単なる管理人ではない

受託者は、信託財産を自分の財産とは分けて管理する。形式的には不動産や預金等の管理権限を持つが、経済的利益は受益者に帰属する。したがって、受託者は「名義を持つが、自分のためには使えない」という特殊な地位に立つ。

受託者には、善管注意義務、忠実義務、利益相反行為の制限、競業行為の制限、分別管理義務、公平義務、帳簿作成義務、報告義務、書類保存義務などが課される。信託協会も、受託者の主な義務として、善良な管理者の注意をもって事務処理を行う義務、受益者のため忠実に行動する義務、信託財産と固有財産を分けて管理する義務などを掲げている。

この義務の重さを理解しないまま受託者を選ぶと、後に「使い込みではないか」「説明がない」「親の財産を勝手に売った」「兄弟間で不公平だ」といった紛争が発生しやすい。

Section 02

家族信託の受託者問題 ― 「受託者に適切な人がいない」とは何を意味するか

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

家族信託の相談で「受託者に適切な人がいない」と言われる場合、事情は一つではない。適切な対処法は、その原因によって大きく変わる。

2.1 主な類型

次の一覧は、「受託者に適切な人がいない」とは何を意味するかで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

類型 具体例 基本的な方向性
親族がいない 子がいない、兄弟姉妹も高齢、頼れる親族がいない 信託銀行、信託会社、任意後見、遺言中心設計を検討
親族はいるが不仲 兄弟間の対立、相続争い、使い込み疑い 弁護士による紛争整理を優先し、信託は慎重に検討
親族はいるが能力不足 会計、税務、不動産管理が難しい 監督人、専門職支援、管理財産の限定を検討
親族はいるが遠方 受託者候補が海外や遠隔地に居住 金融機関対応、本人確認、税務、郵送管理の実務可否を確認
親族はいるが利害対立 受託者候補が将来の相続人でもある 報告義務、監督人、共同受託者、弁護士関与を検討
親族はいるが信用できない 借金、浪費、過去の金銭トラブル 原則として受託者にしない
受託者候補が未成年または判断能力に問題 将来の承継者が未成年、候補者自身が高齢 現時点の受託者としては不適切。別制度を検討
金融機関が対応しない 信託口口座が開設できない、融資が難しい 契約前に金融機関と協議。信託設計を修正

2.2 「いない」のか「いるが設計不足」なのかを分ける

受託者問題では、最初に次の問いを分ける必要があります。

  • 本当に受託者候補が存在しないのか。
  • 候補者はいるが、知識や経験が不足しているだけなのか。
  • 候補者はいるが、家族間の不信感が強く、紛争化が予想されるのか。
  • 候補者はいるが、財産規模や不動産の複雑さに照らして一人では重すぎるのか。
  • 候補者を置くよりも、任意後見や遺言のほうが目的に合っているのか。

この切り分けをしないと、過剰な信託設計や危険な名義貸しにつながる。

Section 03

家族信託の受託者問題 ― 受託者に不適切な人を選ぶ危険

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

3.1 受託者の権限は大きい

信託契約の内容によるが、受託者は、信託不動産の管理、修繕、賃貸、売却、信託金銭の支払、受益者への給付、保険、税金、金融機関対応などを行うことがある。受託者の行動は、本人の生活資金、家族の住まい、相続人間の公平、税務申告に直結する。

したがって、受託者に不適切な人を選ぶと、次のような問題が発生する。

  • 信託財産と個人財産を混同する。
  • 領収書や帳簿を残さない。
  • 受益者や他の家族に説明しない。
  • 自分に有利な支出や取引を行う。
  • 不動産を安く売る、または売却時期を誤る。
  • 税務申告に必要な資料を整理できない。
  • 受益者の生活費、医療費、介護費の支払が遅れる。
  • 相続開始後に他の相続人から損害賠償、返還請求、遺留分侵害額請求などを受ける。

3.2 「親が信頼しているから大丈夫」では足りない

家族信託で重要なのは、本人の信頼だけではない。信託は長期間続くことがある。本人の判断能力が低下した後、受益者本人が監視できなくなることもある。相続人や受益者が複数いる場合には、受託者の説明責任が特に重くなる。

親が元気なときには問題なく見えても、介護費用が増えた時期、不動産を売却する時期、本人の死亡後、二次相続の時期に、利害対立が表面化することがある。受託者の適格性は、人格、能力、財務状況、健康状態、継続性、説明力、他の相続人との関係を総合して判断する必要があります。

Section 04

家族信託の受託者問題 ― まず確認することが重要三つの前提

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

4.1 本人に契約締結能力があるか

家族信託を契約で設定するには、委託者が契約内容を理解し、意思表示できることが前提です。すでに認知症が進み、財産管理や契約の意味を理解できない状態であれば、信託契約そのものが無効と争われる可能性がある。

この場合、家族信託の受託者に適切な人がいるかどうか以前に、契約を締結できるかが問題となります。判断能力が不十分な場合は、法定後見、保佐、補助の利用を検討します。厚生労働省の成年後見制度に関する説明でも、成年後見制度は認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人を法的に保護し、支援する制度とされている。

4.2 信託する財産は本当に信託に向いているか

すべての財産を家族信託に入れる必要はない。むしろ、信託に向く財産と向かない財産を分けることが重要です。

次の一覧は、まず確認することが重要三つの前提で確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

財産 信託で検討しやすい場面 注意点
自宅 本人の居住継続、将来売却して施設費に充てる 居住権、配偶者の生活、売却条件を明確にする
賃貸不動産 賃料管理、修繕、将来売却 借入金、担保、金融機関同意、税務が重要
現金 医療費、介護費、生活費の支払 分別管理、信託口口座、支払基準が重要
株式 事業承継、議決権行使 会社法、税務、後継者問題が絡む
共有不動産 管理処分の一元化 他の共有者、共有解消、遺産分割との関係に注意

金融商品、農地、借入付き不動産、会社株式などは、制度上または実務上の制約が大きい。受託者が未熟な場合は、信託財産を限定し、難しい財産は別制度で扱うことがある。

4.3 家族信託が目的達成に必要か

家族信託の目的は、しばしば次の目的と混同される。

  • 認知症対策
  • 相続税対策
  • 遺言代用
  • 遺産分割対策
  • 不動産管理
  • 介護費用の支払
  • 家族間の紛争予防
  • 障害のある子の生活支援

しかし、これらの目的のすべてに家族信託が最適とは限らない。死亡後の承継だけなら遺言で足りることがある。本人の判断能力低下後の代理だけなら任意後見が合うことがある。税務対策が中心なら、税理士による相続税試算や生前贈与、遺産分割設計が先です。

Section 05

家族信託の受託者問題 ― 対処法1 受託者候補を広げて再評価する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

5.1 親族の範囲を機械的に狭めない

家族信託では、長男、長女、同居の子などが最初の候補になりやすい。しかし、適切な人がいないと思っている場合でも、次の範囲まで検討すると候補が見つかることがある。

  • 子の配偶者
  • 甥、姪
  • 兄弟姉妹
  • 信頼できる親族法人
  • 家族が関与する資産管理会社
  • 信託会社、信託銀行

ただし、血縁が近いことと受託者適格性は同じではない。実務では、次の観点で候補者を評価する。

次の一覧は、対処法1 受託者候補を広げて再評価するで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

評価項目 確認事項
誠実性 本人の利益を優先できるか、過去に金銭トラブルがないか
管理能力 収支管理、通帳管理、契約書管理、税務資料整理ができるか
継続性 年齢、健康状態、居住地、職業上の多忙さ
説明能力 他の相続人、受益者、専門家に説明できるか
利害関係 自分の相続分や生活費と信託財産が混同されないか
金融実務 金融機関窓口、本人確認、送金、口座管理に対応できるか
不動産実務 管理会社、賃借人、修繕業者、仲介会社とやり取りできるか
紛争耐性 疑いを受けたときに記録と説明で対応できるか

5.2 受託者候補者への事前説明が不可欠

受託者候補がいる場合でも、本人だけで決めてはいけない。候補者に対し、次の事項を説明し、引受意思を確認する必要があります。

  • 受託者が負う法的義務
  • 管理することが重要財産の内容
  • 想定される業務量
  • 帳簿作成と資料保存の必要性
  • 報酬の有無
  • 他の相続人から説明を求められる可能性
  • 税務資料の整理
  • 不動産の売却や修繕の判断
  • 辞任、死亡、病気の際の後任者

「親に頼まれたから何となく引き受ける」という状態は危険です。受託者候補が業務内容を理解していないなら、適切な人がいない場合と同じリスクがある。

Section 06

家族信託の受託者問題 ― 対処法2 受託者の能力不足を監督設計で補う

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

6.1 信託監督人を置く

受託者候補に誠実性はあるが、法律、会計、不動産管理に不安がある場合、信託監督人を置くことが考えられる。信託監督人は、受益者のために受託者を監督する役割を担う。弁護士、司法書士、税理士などが関与することもある。

信託監督人を置くと、次の効果が期待できる。

  • 受託者の独断を抑制する。
  • 受益者本人が判断能力を失った後も監督機能を維持できる。
  • 他の相続人に対する説明の客観性が高まる。
  • 重要な不動産売却や多額支出について、事前承認の仕組みを作れる。
  • 帳簿、領収書、通帳、契約書の保存を促せる。

もっとも、信託監督人は受託者の代わりに全事務を行う人ではない。受託者本人の最低限の管理能力と協力姿勢は必要です。

6.2 受益者代理人を置く

受益者が高齢、認知症、障害、未成年などで自ら権利行使しにくい場合には、受益者代理人を置く設計も考えられる。受益者代理人は、受益者に代わって受益者としての権利を行使する者です。

たとえば、母を受益者、子を受託者とする信託で、母の判断能力低下が予想される場合、別の親族や専門職を受益者代理人とすることがある。これにより、受託者への報告請求や重要事項への関与を制度的に確保しやすくなる。

6.3 監督設計で補える場合と補えない場合

監督設計は有効だが万能ではない。次のように分けて考えることが重要です。

次の一覧は、対処法2 受託者の能力不足を監督設計で補うで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

状況 監督設計の有効性 判断
候補者は誠実だが会計が苦手 高い 専門職支援と監督人で補える可能性あり
候補者は遠方だが協力的 中程度 業務を限定し、管理会社や専門職を併用
候補者に浪費や借金がある 低い 原則として受託者にしない
候補者が他の相続人と激しく対立 低い 弁護士関与、信託以外の制度を検討
候補者が責任を理解していない 低い 引受意思と教育がない限り危険
候補者が高齢で後任もいない 中から低 予備的受託者、法人、信託会社を検討
Section 07

家族信託の受託者問題 ― 対処法3 共同受託者を検討する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

7.1 一人に集中させない設計

受託者候補が一人では不安な場合、複数人を共同受託者とすることがある。たとえば、長男と長女を共同受託者とし、重要な不動産処分には両名の合意を必要とする設計です。

共同受託者には、次の長所がある。

  • 一人の独断を防ぎやすい。
  • 兄弟姉妹間の不信感を軽減しやすい。
  • 役割分担ができる。
  • 会計担当と不動産担当を分けられる。
  • 受託者死亡時の業務停止リスクを抑えられる。

7.2 共同受託者の実務上の問題

共同受託者には、次の短所もある。

  • 意見が分かれると業務が止まる。
  • 金融機関の手続が複雑になる。
  • どちらが帳簿を作るか不明確になりやすい。
  • 不動産売却時の意思確認が煩雑になる。
  • 共同受託者間で責任の押し付け合いが起こる。

共同受託者を置くなら、契約書に次の事項を明確に定める必要があります。

  • 日常支出は単独でできるか。
  • 一定額以上の支出は全員一致か多数決か。
  • 不動産売却、担保設定、借入、建替えはどのように決めるか。
  • 帳簿作成担当者は誰か。
  • 金融機関への届出代表者は誰か。
  • 一人が死亡、辞任、病気になった場合どうするか。
  • 意見対立が解消できない場合の処理方法。
Section 08

家族信託の受託者問題 ― 対処法4 予備的受託者を厚く設計する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

8.1 受託者不在は信託終了リスクになる

信託法上、受託者が欠け、新受託者が就任しない状態が一定期間継続すると、信託終了の問題が生じる。信託は、受託者が信託財産を管理する制度のため、受託者が不在のまま長期間存続することは想定されていない。

そのため、家族信託では、当初受託者だけでなく、第二受託者、第三受託者、受託者候補者の選任方法をあらかじめ定めることが重要です。

8.2 予備的受託者の設計例

予備的受託者の設計には、次のような方法がある。

次の一覧は、対処法4 予備的受託者を厚く設計するで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

設計 内容 注意点
第二受託者を指定 当初受託者が死亡、辞任、解任された場合に就任する者を指定 候補者の承諾を事前に得る
第三受託者まで指定 長期信託や高齢受託者の場合に複数段階で指定 候補者の年齢、居住地、関係性を確認
受益者代理人が選任 受託者不在時に受益者代理人が新受託者を指定 利害関係と監督機能を整理
専門職推薦条項 弁護士会、司法書士会、税理士、信託会社等への相談を予定 実際に引受可能か事前確認が必要
裁判所選任を想定 協議不能時に法的手続を利用 時間と費用がかかる可能性

8.3 「後任者の名前だけ」では不十分

後任受託者を契約書に書くだけでは十分ではない。後任者が就任を承諾しないこともある。後任者が死亡、認知症、海外居住、破産、親族対立などで就任できなくなることもある。

実務上は、次の点を確認します。

  • 後任者本人の承諾があるか。
  • 後任者は受託者の義務を理解しているか。
  • 後任者の年齢、健康、職業、居住地に問題はないか。
  • 後任者の報酬をどうするか。
  • 当初受託者から後任者への帳簿、通帳、契約書の引継ぎ方法は明確か。
  • 後任者就任時に不動産登記、金融機関届出をどう行うか。
Section 09

家族信託の受託者問題 ― 対処法5 専門職に「受託者」ではなく「支援者」として関与してもらう

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

9.1 専門職の役割を誤解しない

受託者に適切な人がいない場合、すぐに「弁護士や司法書士や税理士に受託者になってもらえばよい」と考える人がいる。しかし、専門職が当然に受託者になれる、または受託者になることが重要だとは限らない。

信託の引受けを営業として行う場合には、信託業法上の免許または登録の問題がある。金融庁は、信託業を「信託の引受けを行う営業」と説明し、運用型信託業には免許、管理型信託業には登録が必要と説明している。

そのため、専門職に相談する場合は、専門職が受託者になるのか、受託者を支援するのか、監督人になるのか、契約書作成や登記、税務申告を行うのかを分けて考える必要があります。

9.2 専門職が支援者として関与する具体例

次の一覧は、対処法5 専門職に「受託者」ではなく「支援者」として関与してもらうで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

専門職 主な役割 受託者不在問題との関係
弁護士 紛争予防、契約設計、利益相反、遺留分、交渉、調停、訴訟 家族間対立がある場合の中心職
司法書士 不動産信託登記、相続登記、登記書類、裁判所提出書類作成 不動産がある信託では不可欠になりやすい
税理士 相続税、贈与税、所得税、信託税務、税務調査対応 信託設定時と終了時の税務判断が重要
行政書士 紛争、税務、登記申請を除く書類整理、遺産分割協議書作成支援 争いのない書類整備に有用
公証人 公正証書遺言、任意後見契約公正証書など 信託以外の代替制度で重要
不動産鑑定士 不動産評価 遺産分割、遺留分、売却条件で重要
土地家屋調査士 境界、分筆、表示登記 土地を分ける、境界を確定する場面で重要
宅地建物取引士、不動産仲介業者 売却、賃貸、重要事項説明 信託不動産の処分実務で重要
公認会計士 非上場株式、会社財務、事業承継 会社株式を信託する場合に重要
中小企業診断士 事業承継計画、後継者育成 家業承継と信託を組み合わせる場合に有用
ファイナンシャル・プランナー 家計、保険、老後資金、全体設計 専門家につなぐ入口として有用
社会保険労務士 遺族年金、年金周辺手続 相続そのものではなく死亡後周辺手続で有用

9.3 支援契約を具体化する

専門職を支援者にする場合は、口頭相談だけでは不十分です。次のような契約や運用ルールを用意する。

  • 信託契約書作成支援契約
  • 信託登記手続の委任契約
  • 税務顧問契約
  • 年次会計チェック契約
  • 不動産管理会社との管理委託契約
  • 受託者から監督人への定期報告ルール
  • 重要取引時の事前相談ルール
  • 相続発生時の引継ぎルール

これにより、受託者が一人で抱え込む危険を減らせる。

Section 10

家族信託の受託者問題 ― 対処法6 信託銀行または信託会社を検討する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

10.1 営業として信託を引き受ける主体

親族に適切な受託者がいない場合、信託銀行、信託会社などの利用を検討することがある。信託協会は、信託を利用するには、信託銀行、信託会社、信託契約代理店などに相談する方法があると説明している。

金融庁は、免許、登録を受けている事業者一覧を公表しており、信託兼営金融機関や信託会社の一覧も確認できる。 実際に依頼する場合は、金融庁の登録状況、取扱商品、最低財産額、報酬、対象財産、解約条件、倒産隔離、苦情対応などを確認します。

10.2 信託銀行等を利用する長所

信託銀行や信託会社を検討する長所は、次のとおりです。

  • 制度的な管理体制がある。
  • 個人受託者の死亡、病気、浪費リスクを避けやすい。
  • 帳簿、報告、分別管理の体制が整っている。
  • 一定規模以上の財産管理に対応できることがある。
  • 家族間で中立的な管理者として機能する可能性がある。

10.3 信託銀行等を利用する限界

一方で、次の限界がある。

  • すべての家族信託を受けるわけではない。
  • 最低財産額、報酬、対象財産の制限がある。
  • 不動産の個別管理、介護施設費の細かな支払などに対応しにくい場合がある。
  • 家族の希望に柔軟に対応できるとは限らない。
  • 受益者や相続人との人間関係調整は別途弁護士等が必要になる場合がある。

信託銀行等の利用は有力な選択肢だが、「親族に受託者がいないから必ず解決する」というものではない。事前相談と見積りが必要です。

Section 11

家族信託の受託者問題 ― 対処法7 任意後見を利用する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

11.1 任意後見が向く場面

受託者に適切な人がいない場合でも、目的が「本人の判断能力低下後に財産管理や介護契約を支援すること」であれば、任意後見契約が適している場合がある。

日本公証人連合会は、任意後見契約について、本人の判断能力が不十分になった後に、本人に代わって財産管理、療養看護、介護契約、施設入所契約、医療契約、要介護認定申請等を行う代理権を任意後見人に与える契約だと説明している。

任意後見の特徴は、本人が元気なうちに、将来の後見人候補と代理権の内容を決めておける点にある。

11.2 任意後見と家族信託の違い

次の一覧は、対処法7 任意後見を利用するで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

項目 家族信託 任意後見
主目的 信託財産の管理、処分、給付 本人の財産管理と身上保護の代理
開始時期 契約で定めた時点から開始可能 判断能力低下後、任意後見監督人選任で効力発生
財産の名義 信託財産は受託者名義で管理 本人名義の財産を代理人が管理
監督 契約設計による。監督人等を置くことも可能 家庭裁判所が任意後見監督人を選任
死後承継 信託契約で残余財産帰属を定められる 原則として死亡後の承継は遺言等で対応
身上保護 直接の中心機能ではない 中心機能の一つ

11.3 受託者がいないときの任意後見活用

受託者候補はいないが、任意後見人候補としてなら専門職や親族が関与できる場合がある。たとえば、次のような組合せが考えられる。

  • 任意後見契約
  • 見守り契約
  • 財産管理委任契約
  • 死後事務委任契約
  • 公正証書遺言
  • 遺言執行者の指定

この組合せにより、生前の生活支援、判断能力低下後の代理、死亡後の事務、財産承継を分けて設計できる。

Section 13

家族信託の受託者問題 ― 対処法9 遺言と遺言執行者で対応する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

13.1 死亡後の承継だけなら遺言が中心

受託者に適切な人がいない相談の中には、実は家族信託ではなく遺言で足りるものがある。たとえば、次のような目的です。

  • 自宅を長男に相続させたい。
  • 預金を特定の割合で分けたい。
  • 障害のある子に一定の財産を残したい。
  • 相続人間の遺産分割協議を避けたい。
  • 死後に不動産を売却して分配したい。

死亡後の承継だけなら、公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、遺言執行者の指定を検討します。

法務省は、自筆証書遺言書保管制度について、法務局で自筆証書遺言書を保管する制度として案内している。 また、公証実務では、公正証書遺言は方式不備による無効リスクを下げ、保管面でも安全性が高い方法として利用される。

13.2 遺言執行者の重要性

遺言を作っても、執行する人がいなければ手続が止まることがある。遺言執行者を指定しておくと、遺言内容を実現するための手続を進めやすくなる。弁護士、司法書士、信託銀行等が遺言執行者になる場合もある。

受託者に適切な人がいない場合でも、遺言執行者であれば専門職や信託銀行等が対応できる可能性がある。受託者として長期管理を引き受けることと、死亡後の一定期間に遺言を執行することは、業務の性質が異なるためです。

Section 14

家族信託の受託者問題 ― 対処法10 財産を分けて制度を組み合わせる

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

14.1 全財産を一つの制度に入れない

家族信託の失敗例では、全財産を一つの信託に入れようとすることがある。しかし、受託者候補が弱い場合は、制度を組み合わせるほうが安全です。

次の一覧は、対処法10 財産を分けて制度を組み合わせるで確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

財産または課題 適した制度の例
本人の生活費、医療費、介護費 任意後見、財産管理委任、信託の金銭給付条項
将来売却予定の自宅 家族信託、任意後見、不動産売却委任の検討
賃貸不動産 家族信託、不動産管理会社、税理士顧問
死亡後の承継 遺言、遺言執行者
障害のある子の生活支援 信託、任意後見、福祉制度、生命保険、遺言
相続税 税理士による試算、生前贈与、遺産分割設計
紛争予防 弁護士による説明書面、合意書、遺留分対策

14.2 組合せ例

例1 受託者候補がいない高齢単身者

  • 任意後見契約を専門職と締結する。
  • 見守り契約を併用する。
  • 死後事務委任契約を締結する。
  • 公正証書遺言を作成し、遺言執行者を指定する。
  • 財産が大きい場合は信託銀行等のサービスを比較する。

例2 子はいるが兄弟仲が悪い

  • 弁護士が家族関係と紛争リスクを整理します。
  • 家族信託を利用する場合は、信託監督人と定期報告義務を置く。
  • 重要な不動産売却には監督人の承認を必要とする。
  • 遺留分を試算し、遺言と信託の整合性を取る。
  • 税理士が相続税と贈与税の影響を確認します。

例3 不動産はあるが受託者候補が会計に不慣れ

  • 不動産管理会社を利用する。
  • 税理士を年次確認に入れる。
  • 司法書士が信託登記を行う。
  • 信託監督人を置く。
  • 信託する財産を不動産と必要資金に限定する。
Section 15

家族信託の受託者問題 ― 不動産がある場合の特別な注意点

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

15.1 信託登記と相続登記

不動産を信託する場合、所有権移転登記と信託登記が問題となります。司法書士の関与が重要になる。信託契約書の文言が不動産登記に適していないと、登記申請で問題が生じることがある。

また、相続不動産については、相続登記の義務化にも注意が必要です。法務省は、相続登記の申請義務化が2024年4月1日から始まったこと、相続によって不動産を取得した相続人は取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があること、正当な理由なく申請しない場合には10万円以下の過料の適用対象となることを案内している。

家族信託を作る前に、対象不動産の名義、共有状態、抵当権、相続登記未了、境界問題、借地借家関係を確認しなければならない。

15.2 不動産評価と売却条件

相続で争いになりやすいのは、不動産の価格です。受託者が不動産を売る場合、価格が安すぎると他の相続人から疑われる。高すぎる価格で売れないまま放置しても、受益者の生活費確保に支障が出る。

必要に応じて、不動産鑑定士、宅地建物取引士、不動産仲介業者、土地家屋調査士を関与させる。契約書には、売却できる条件、売却代金の使途、複数査定の要否、受益者代理人または監督人の承認を定めることが望ましい。

15.3 借入付き不動産

賃貸物件に借入金や抵当権がある場合、家族信託は特に慎重に設計する必要があります。金融機関の承諾、債務引受、担保、融資契約上の制限、賃料入金口座、火災保険、修繕資金などを確認します。

受託者候補が金融機関対応に不慣れであれば、家族信託よりも不動産管理会社、任意後見、遺言、法人化などの別案を比較する必要があります。

Section 16

家族信託の受託者問題 ― 税務上の注意点

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

16.1 家族信託は相続税対策そのものではない

家族信託は、財産管理と承継設計の制度であり、それ自体が当然に相続税を減らす制度ではない。信託の設定、受益者の変更、信託終了、受益権の移転、受益者連続型信託などでは、贈与税、相続税、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、消費税などの検討が必要になる場合がある。

国税庁は、適正な対価を負担せずに信託受益権等を取得した場合には贈与税が課されること、受益者が存在しない信託等では受託者に法人税が課されることがあると説明している。

16.2 税理士が確認することが重要論点

税理士が確認することが重要主な論点は次のとおりです。

  • 信託設定時に贈与税が生じるか。
  • 受益者を誰にするか。
  • 受益権の評価額はいくらか。
  • 不動産の賃料所得を誰が申告するか。
  • 受益者死亡時に相続税がどう課されるか。
  • 受益者連続型信託で課税関係がどうなるか。
  • 信託終了時の残余財産帰属に課税が生じるか。
  • 税務署提出書類や調書の要否。
  • 遺留分対策と税務評価の整合性。

受託者に適切な人がいない案件では、税務資料の整理ができないこと自体が大きなリスクになる。税理士の年次関与を最初から設計することが望ましい。

Section 17

紛争がある場合は家族信託より先に弁護士へ相談する

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

17.1 家族信託は紛争を消す制度ではない

家族信託を作れば相続争いがなくなる、と説明されることがある。しかし、これは不正確です。家族信託は、財産管理と承継の仕組みを作る制度であり、家族間の不信感や遺留分問題を自動的に解消する制度ではない。

次のような場合は、信託契約の作成よりも先に弁護士へ相談することが重要です。

  • 兄弟姉妹間ですでに争いがある。
  • ある相続人が親の預金を使い込んでいる疑いがある。
  • 特定の子だけが親と同居し、財産管理をしている。
  • 親の判断能力について意見が分かれている。
  • 遺留分侵害が明らかに予想される。
  • 遺産の大部分が一人に集中する設計です。
  • 不動産の評価をめぐって対立がある。
  • 会社株式や事業承継をめぐる対立がある。

17.2 弁護士が確認する論点

弁護士は、次の論点を確認します。

  • 契約締結能力
  • 利益相反
  • 受託者の忠実義務違反リスク
  • 遺留分侵害リスク
  • 将来の損害賠償請求リスク
  • 受託者の解任、辞任、後任選任条項
  • 相続人への説明方法
  • 遺言との整合性
  • 調停、審判、訴訟になった場合の見通し

家族信託を紛争の火種にしないためには、信託契約書だけでなく、説明資料、家族会議の記録、医師の診断書、財産目録、税務試算、遺留分試算などを整えることが重要です。

Section 18

すでに家族信託を作った後で受託者が不適切になった場合

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

18.1 発生しやすい場面

家族信託を設定した後に、受託者が不適切になることもある。

  • 受託者が死亡した。
  • 受託者が病気になった。
  • 受託者が認知症になった。
  • 受託者が遠方へ転居した。
  • 受託者が信託財産を私的に使った疑いがある。
  • 受託者が帳簿や報告を怠っている。
  • 受託者が他の相続人と対立した。
  • 受託者が破産した。

18.2 取ることが重要対応

この場合は、契約書と信託法に従って、次の順序で対応する。

  1. 信託契約書の受託者交代条項を確認します。
  2. 予備的受託者の指定があるか確認します。
  3. 受託者の辞任、解任、死亡時の手続を確認します。
  4. 帳簿、通帳、領収書、契約書、不動産関係書類を保全する。
  5. 信託監督人、受益者代理人がいる場合は報告を求める。
  6. 不正や損害が疑われる場合は弁護士へ相談する。
  7. 不動産がある場合は司法書士に登記変更の要否を確認します。
  8. 税務申告や調書に影響がある場合は税理士へ相談する。
  9. 後任受託者が決まらない場合は、裁判所手続の可能性を検討します。

18.3 受託者の不正が疑われる場合

受託者の不正が疑われる場合、感情的な追及だけでは証拠が散逸する。まず、次の資料を確認します。

  • 信託契約書
  • 財産目録
  • 信託口口座の通帳、入出金明細
  • 領収書、請求書
  • 不動産賃貸借契約書
  • 管理会社の報告書
  • 売買契約書、査定書
  • 税務申告書
  • 受託者から受益者への報告書
  • 家族会議の記録

不正が疑われる場合は、弁護士を通じて説明請求、資料開示、損害賠償請求、解任手続等を検討します。

Section 19

家族信託を使わないほうがよい典型例

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

受託者に適切な人がいない場合、次のような案件では、家族信託を使わない判断が合理的ですことが多い。

次の一覧は、家族信託を使わないほうがよい典型例で確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

典型例 理由 代替案
すでに本人の判断能力が大きく低下 契約無効リスクがある 法定後見
親族間で深刻な争いがある 受託者への不信が紛争化しやすい 弁護士相談、遺言、調停、後見
受託者候補が浪費、借金、不正歴あり 忠実義務違反や使い込みリスク 信託銀行等、後見、遺言
財産が少なく制度費用が重い 費用対効果が悪い 遺言、任意後見、委任契約
目的が死亡後の分配だけ 信託でなく遺言で足りることがある 公正証書遺言、遺言執行者
目的が本人の身上保護中心 信託は介護契約や医療同意の万能制度ではない 任意後見、法定後見
金融機関が信託口口座や融資に対応しない 実務運用が止まる 設計見直し、別制度
不動産に未解決の境界、共有、借入問題がある 管理処分が複雑 事前整理、専門家関与
Section 20

家族信託の受託者問題 ― 実務チェックリスト

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

20.1 受託者候補チェック

  • 候補者は受託者になる意思があるか。
  • 候補者は受託者の義務を理解しているか。
  • 候補者に借金、浪費、破産歴、金銭トラブルがないか。
  • 候補者は帳簿や領収書を管理できるか。
  • 候補者は他の相続人に説明できるか。
  • 候補者は本人の生活を優先できるか。
  • 候補者は遠方、海外、病気、高齢などで実務困難ではないか。
  • 候補者が死亡した場合の後任は決まっているか。
  • 候補者に報酬を支払うか。
  • 候補者の配偶者や家族が信託財産に影響を及ぼさないか。

20.2 契約書チェック

  • 信託目的が明確か。
  • 信託財産が特定されているか。
  • 受益者と受益権の内容が明確か。
  • 受託者の権限が過不足なく定められているか。
  • 不動産売却、借入、担保設定、建替えの条件が明確か。
  • 生活費、医療費、介護費の給付基準が明確か。
  • 帳簿作成、報告、資料保存の義務が明確か。
  • 信託監督人、受益者代理人を置くか。
  • 受託者報酬を定めるか。
  • 受託者の辞任、解任、死亡時の手続があるか。
  • 第二受託者、第三受託者を定めているか。
  • 信託終了事由と残余財産帰属権利者が明確か。
  • 遺言、任意後見、生命保険、遺産分割方針と矛盾しないか。

20.3 税務チェック

  • 信託設定時に贈与税が生じないか。
  • 受益者変更時に課税が生じないか。
  • 受益権評価をどう行うか。
  • 賃料収入の申告者は誰か。
  • 相続税申告に必要な資料を誰が保管するか。
  • 税務署への提出書類の要否を確認したか。
  • 受益者連続型信託の課税を確認したか。
  • 遺留分と税務評価の関係を確認したか。

20.4 不動産チェック

  • 登記名義は現在の所有者と一致しているか。
  • 相続登記未了の不動産はないか。
  • 共有者は誰か。
  • 抵当権、根抵当権、借入金はないか。
  • 境界問題はないか。
  • 賃貸借契約書は整っているか。
  • 管理会社との契約は確認したか。
  • 将来売却時の査定方法を決めているか。
  • 修繕費の支出基準を決めているか。
Section 21

家族信託の受託者問題 ― 専門家に相談する順序

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

受託者に適切な人がいない場合、相談先を誤ると、制度の選択を間違える。次の順序で整理するとよい。

次の一覧は、専門家に相談する順序で確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

状況 最初に相談することが重要専門家 理由
親族間で争いがある 弁護士 紛争、遺留分、使い込み疑い、交渉、調停、訴訟を扱う
不動産が中心 司法書士、弁護士、税理士 信託登記、相続登記、権利関係、税務が絡む
相続税が発生しそう 税理士 課税関係と相続税申告を確認する
争いはなく書類整理中心 司法書士、行政書士 戸籍、書類、遺産分割協議書、登記書類に対応する
遺言を作りたい 公証人、弁護士、司法書士 公正証書遺言、自筆証書遺言書保管制度、遺言執行者を検討する
判断能力低下が心配 弁護士、司法書士、社会福祉士、公証人 任意後見、法定後見を検討する
信託銀行等を使いたい 信託銀行、信託会社、弁護士、税理士 取扱範囲、費用、税務、契約条件を比較する
会社株式がある 弁護士、税理士、公認会計士、中小企業診断士 事業承継、株価、議決権、後継者問題を検討する
不動産価格が争点 不動産鑑定士、弁護士、税理士 評価、遺留分、遺産分割、税務に影響する
境界や分筆が必要 土地家屋調査士、司法書士 表示登記、境界確認、分筆に対応する
Section 22

家族信託の受託者問題 ― 契約書に入れることが重要主要条項

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

家族信託を使う場合、受託者に適切な人がいないリスクを下げるため、契約書には次の条項を検討します。

次の一覧は、契約書に入れることが重要主要条項で確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

条項 目的
信託目的条項 受託者の判断基準を明確にする
信託財産特定条項 何を信託するかを明確にする
受託者権限条項 管理、売却、賃貸、修繕、支払の権限を明確にする
支払基準条項 生活費、医療費、介護費、施設費の支払基準を決める
報告義務条項 受託者が誰に、いつ、何を報告するかを決める
帳簿保存条項 領収書、通帳、契約書の保存義務を定める
利益相反制限条項 受託者の自己取引や親族取引を制限する
重要行為承認条項 売却、借入、担保設定などに承認を求める
信託監督人条項 受託者の監督体制を作る
受益者代理人条項 受益者が権利行使できない場合に備える
受託者報酬条項 無償か有償か、報酬額を明確にする
辞任、解任条項 不適切な受託者を交代できるようにする
後任受託者条項 第二、第三の受託者を指定する
信託終了条項 いつ終了するかを明確にする
残余財産帰属条項 終了時に誰へ財産を移すかを決める
専門家相談条項 税務、登記、訴訟、不動産処分時の相談義務を定める
Section 23

家族信託と家庭裁判所関係者の関与

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

受託者に適切な人がいない場合、家庭裁判所の制度と接点が生じることがある。特に、法定後見、任意後見監督人、未成年者や後見利用者を含む相続、遺産分割調停などです。

家庭裁判所では、裁判官、家事調停官、家事調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、鑑定人、専門委員などが関与することがある。未成年者や後見利用者と他の相続人との利益が相反する遺産分割では、特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人が必要になる場合もある。

家族信託を作る時点で、将来の相続人に未成年者、障害のある人、後見利用者が含まれる可能性がある場合は、信託、遺言、後見、遺産分割の関係を一体で検討する必要があります。

Section 24

家族信託の受託者問題 ― 公的手続と周辺実務

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

相続や家族信託は、契約書だけでは完結しない。実務では、次の担当者や機関と関わる。

次の一覧は、公的手続と周辺実務で確認する内容を項目ごとに整理したものです。判断や準備の漏れを防ぐために重要で、各行を横に見比べると、どの項目で追加確認や専門家確認が必要になりやすいかを読み取れます。

担当者または機関 関与場面
遺言書保管官 法務局の自筆証書遺言書保管制度
市区町村の戸籍担当窓口 死亡届、戸籍、除籍、改製原戸籍の取得
医師、検案医 死亡診断書、死体検案書
銀行、信託銀行、生命保険会社の相続手続担当 預金払戻し、保険金請求、契約確認
税務署 相続税、贈与税、所得税、信託関連書類
法務局 不動産登記、商業登記、遺言書保管
家庭裁判所 後見、遺産分割、特別代理人、遺言執行者選任など

受託者がこれらの窓口に一人で対応できない場合は、専門職と役割分担する設計が必要です。

Section 25

家族信託の受託者問題 ― よくある誤解

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

25.1 「家族信託を作れば認知症になっても何でもできる」

誤りです。信託契約で定めた信託財産と権限の範囲で受託者が行動できるだけです。医療同意、身上保護、本人の全財産管理、年金手続、施設契約などは、任意後見や法定後見、委任契約、親族の支援と組み合わせる必要があります。

25.2 「受託者は長男なら当然よい」

誤りです。長男かどうかではなく、受託者としての誠実性、能力、継続性、説明力が重要です。

25.3 「専門職なら誰でも受託者になれる」

誤りです。信託の引受けを営業として行う場合には、信託業法上の免許または登録の問題がある。専門職の関与方法は、受託者、監督人、代理人、契約書作成者、登記代理人、税務代理人などに分けて検討することが重要です。

25.4 「家族信託は相続税を減らす」

単純化しすぎです。家族信託は税務上の効果を持つ場合があるが、節税制度そのものではない。課税関係を誤ると、贈与税や相続税の問題が生じる。

25.5 「遺言があれば家族信託は不要」

これも単純化しすぎです。遺言は主に死亡後の承継を定める。判断能力低下後の生前財産管理には、遺言だけでは対応できない。逆に、生前管理が不要で死亡後の承継だけが目的なら、遺言で足りることがある。

Section 26

家族信託の受託者問題 ― 判断判断の流れ

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

次の判断の流れは、本人の契約締結能力から制度選択までを順番に確認するためのものです。最初の分岐を誤ると無効リスクや紛争につながるため重要で、上から順に進めると、家族信託を使う場面と別制度を選ぶ場面を読み取れます。

受託者不在時の判断の流れ

本人に契約締結能力があるか

ない場合は法定後見を検討します。

目的は生前管理か死亡後承継か

死亡後承継だけなら遺言を中心に考えます。

受託者候補はいるか

いない場合は信託銀行等、任意後見、遺言の組合せを比較します。

補える
監督設計を追加

監督人、代理人、専門職支援で限定的に設計します。

補えない
信託を再検討

無理に受託者を置かず、別制度を検討します。

文章で整理すると、次の順序で判断する。

  1. 本人に契約締結能力があるか。
  2. ない場合は、法定後見を検討します。
  3. ある場合は次へ進む。
  4. 家族信託の目的は生前管理か、死亡後承継か。
  5. 死亡後承継だけなら遺言を中心に検討します。
  6. 生前管理が必要なら次へ進む。
  7. 受託者候補はいるか。
  8. いない場合は、信託銀行等、任意後見、遺言の組合せを検討します。
  9. いる場合は次へ進む。
  10. 候補者は誠実で管理能力があるか。
  11. ない場合は、原則として受託者にしない。
  12. あるが不安が残る場合は次へ進む。
  13. 監督人、受益者代理人、専門職支援で補えるか。
  14. 補える場合は、限定的な信託設計を検討します。
  15. 補えない場合は、信託を断念または信託銀行等を検討します。
  16. 税務、登記、金融機関対応が可能か。
  17. 可能なら契約書作成に進む。
  18. 不可能なら制度設計を修正する。
Section 27

ケース別の結論

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

27.1 子がいない夫婦

子がいない夫婦では、受託者候補がいないことが多い。この場合、甥姪などを受託者にする前に、任意後見、遺言、死後事務委任、信託銀行等を比較する。配偶者の生活保障と、夫婦双方の死亡後の承継先を分けて考える必要があります。

27.2 子がいるが全員遠方

遠方の子が受託者になる場合、金融機関手続、不動産管理、介護費用支払、郵便物管理が問題になる。不動産管理会社、税理士、司法書士、信託監督人を併用し、オンライン報告や定期報告の仕組みを作る。

27.3 子が一人だけ親の近くにいる

近くの子を受託者にすることは実務上自然だが、他の子から使い込みを疑われることがある。定期報告、監督人、領収書保存、家族会議記録、税理士確認を入れることで、後日の紛争を減らせる。

27.4 長男が借金を抱えている

長男が親の面倒を見ていても、借金や浪費がある場合は受託者にしないことが重要ですことが多い。信託財産の混同、横領、差押えとの関係、家族間紛争のリスクが高い。別の受託者、信託銀行等、任意後見、遺言を検討します。

27.5 障害のある子のために財産を残したい

障害のある子の生活支援では、信託が有用な場合がある。しかし、長期にわたり安定した管理者が必要です。受託者に適切な人がいない場合、親族受託者だけでなく、信託会社、任意後見、福祉制度、生命保険、遺言を組み合わせる必要があります。

27.6 会社経営者の事業承継

会社株式を信託する場合、議決権行使、後継者、株式評価、遺留分、相続税、会社法、金融機関対応が絡む。受託者に適切な人がいない場合、家族信託だけでなく、種類株式、持株会社、遺言、生命保険、事業承継税制、株主間契約などを比較する必要があります。

Section 28

家族信託の受託者問題 ― 受託者選任に関する専門家別の観点

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

28.1 弁護士の観点

弁護士は、受託者候補が他の相続人から訴えられる可能性、遺留分侵害、利益相反、説明義務、使い込み疑い、調停や訴訟の見通しを検討します。争いがある相続では、家族信託の設計段階から弁護士が関与することが望ましい。

28.2 司法書士の観点

司法書士は、信託登記、相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記用書類、裁判所提出書類作成を扱う。不動産がある家族信託では、契約書が登記実務に適合するかが重要です。

28.3 税理士の観点

税理士は、信託設定時、受益者変更時、信託終了時、相続発生時の課税関係を確認します。受託者に税務資料整理能力がない場合は、信託開始後の運用が破綻しやすい。

28.4 行政書士の観点

行政書士は、紛争、税務、登記申請を除く範囲で、書類作成や相続関係説明の支援を行う。争いのない案件で、遺言、遺産分割協議書、相続関係説明図などの整理に有用です。

28.5 公証人の観点

公証人は、公正証書遺言、任意後見契約公正証書などで重要な役割を担う。受託者に適切な人がいない場合、信託よりも任意後見や公正証書遺言を中心にする設計が有力になることがある。

28.6 不動産専門職の観点

不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、不動産仲介業者は、不動産評価、境界、分筆、売却、賃貸管理で関与する。受託者に不動産知識がない場合、これらの専門職の関与が不可欠です。

28.7 会計、事業承継専門職の観点

公認会計士、中小企業診断士は、会社財務、非上場株式評価、事業承継計画、後継者育成で関与する。会社株式を信託する場合、受託者は単なる財産管理者ではなく、議決権行使や経営承継に影響する立場になる。

Section 29

最終結論

受託者候補の適格性、代替制度、専門家関与を確認します。

家族信託の受託者に適切な人がいない場合の対処法として最も重要なのは、「それでも家族信託を作る」ことではなく、「家族信託を使うことが重要条件が整っているか」を冷静に判断することです。

家族信託は、信頼できる受託者がいて初めて機能する。受託者がいない、受託者候補が信用できない、親族間の対立が激しい、本人の判断能力がすでに低下している、税務や登記の対応ができないといった場合には、家族信託を無理に作ることは避ける必要があります。

一方で、候補者が誠実で、能力不足を専門職支援や監督人で補える場合には、限定的な家族信託が有効に機能することがある。信託銀行や信託会社、任意後見、法定後見、遺言、遺言執行者、不動産管理会社、税理士顧問、司法書士による登記支援などを組み合わせれば、受託者不在問題を解決できる場合もある。

実務上の結論は、次の一文に集約できる。

受託者がいない家族信託は、信託契約書を作る問題ではなく、財産管理と相続承継の制度選択をやり直す問題です。

そのため、家族信託の受託者に適切な人がいない場合には、弁護士、司法書士、税理士を中心に、必要に応じて公証人、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関、家庭裁判所関係制度を横断的に検討する必要があります。形式的な受託者を置くのではなく、本人の生活、財産の安全、相続人間の公平、税務と登記の適正、将来の紛争予防を同時に満たす設計を選ぶことが、最も重要な対処法です。

Reference

参考資料

このページの制度説明で参照した公的資料、法令、実務資料名を整理します。

  • 一般社団法人信託協会「信託の仕組み」
  • 一般社団法人信託協会「受託者の義務」
  • 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」
  • e-Gov法令検索「信託法」
  • 金融庁「改正信託業法が施行されました」
  • 一般社団法人信託協会「信託を利用するには?」
  • 金融庁「免許、許可、登録等を受けている事業者一覧」
  • 厚生労働省 成年後見はやわかり「成年後見制度の種類」
  • 日本公証人連合会「任意後見契約」
  • 裁判所「後見ポータルサイト」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか?」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 国税庁「信託に関する受益者別、委託者別調書、同合計表」