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家族信託と遺言書を併用する場合の
優先順位と注意点

信託財産は信託契約、信託外財産は遺言書を中心に考えます。ただし、遺留分、税務、登記、受託者と遺言執行者の権限まで含めて整理しなければ、安全な承継設計にはなりません。

2分類 信託財産と信託外財産
10か月 相続税申告・納税の目安
2024年4月 相続登記申請義務化の開始
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家族信託と遺言書を併用する場合の 優先順位と注意点

信託財産は信託契約、信託外財産は遺言書を中心に考えます。

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家族信託と遺言書を併用する場合の 優先順位と注意点
信託財産は信託契約、信託外財産は遺言書を中心に考えます。
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  • 家族信託と遺言書を併用する場合の 優先順位と注意点
  • 信託財産は信託契約、信託外財産は遺言書を中心に考えます。

POINT 1

  • 家族信託と遺言書を併用する場合の優先順位の全体像
  • 1. 財産目録を作る:不動産、預貯金、受益権、保険、株式、債務、デジタル資産を一覧化します。
  • 2. 信託財産かを確認する:契約書の記載、登記、口座、帳簿、分別管理の有無を見ます。
  • 3. 信託契約を中心に確認:受益者、残余財産、終了事由、受託者権限を読みます。
  • 4. 遺言書を中心に確認:遺言がなければ法定相続または遺産分割協議へ進みます。
  • 5. 遺留分・税務・登記を重ねて確認:文書間で整合していても、外部制度により紛争や手続停止が起こることがあります。

POINT 2

  • 家族信託と遺言書を併用する前に押さえる用語
  • 制度名が似ていても、成立時期と法的な働きは異なります。
  • 家族信託とは何か
  • 遺言書とは何か
  • 遺言代用信託と遺言による信託

POINT 3

  • 家族信託と遺言書の優先順位を財産別に整理する
  • 信託財産、信託外財産、受益権、残余財産のどれに当たるかで読み方が変わります。
  • 第一原則 ― 信託財産は信託契約に従う
  • 第二原則 ― 信託外財産は遺言書に従う
  • 日付が新しい方が優先するという理解の限界

POINT 4

  • 家族信託と遺言書を併用する場合の遺留分・税務・登記の注意点
  • 財産集中
  • 高額な受益権
  • 推定相続人の一人だけに高額な受益権を承継させると、受益権評価と遺留分算定が争点になりやすくなります。

POINT 5

  • 家族信託と遺言書を併用するときの権限整理
  • 遺言書の方式、検認、受託者と遺言執行者の役割を分けて確認します。
  • 自筆証書遺言と公正証書遺言の位置づけ
  • 受託者と遺言執行者を混同しない
  • 金融機関や信託銀行の商品名にも注意する

POINT 6

  • 家族信託と遺言書を併用すべき場面
  • 生前管理と死亡後承継の両方を整える必要がある場面で、併用の意味が大きくなります。
  • 一方、死亡時に残る信託外預金、動産、還付金、未収年金、葬儀費用精算、信託していない不動産には遺言書が必要になります。
  • 借入金、収益力、修繕負担、固定資産税、譲渡時の税金も合わせて見ます。
  • 財産を一括で渡すのではなく、受託者が生活費、医療費、施設費などを支払う設計を検討することがあります。

POINT 7

  • 家族信託と遺言書の併用で起きやすい失敗例
  • 財産移転をしていない
  • 信託契約書だけ作り、不動産登記や金銭管理を実行していないと、本当に信託財産になっていたのかが争点になります。
  • 全財産という遺言を書く
  • 家族信託後に全財産を特定の相続人へ相続させる遺言を書くと、信託財産と信託外財産の区別が不明確になります。

POINT 8

  • 家族信託と遺言書を併用する設計手順
  • 1. 財産目録を作る:不動産、預貯金、有価証券、非上場株式、生命保険、債務、デジタル資産を一覧化します。
  • 2. 信託する財産を選ぶ:認知症後も管理、売却、修繕、賃貸が必要か、共有にしたくない財産か、受託者が管理できるかを確認します。
  • 3. 信託契約書を作る:信託目的、信託財産、受託者権限、受益者、後継受託者、終了事由、残余財産帰属、変更権限、監督を明確にします。
  • 4. 遺言書を作る:信託財産を除外する文言、信託外預金・不動産・動産・未収金・還付金の承継先、遺言執行者、債務や費用を整理します。
  • 5. 税務試算と登記確認をする:相続税、贈与税、受益権評価、信託登記、相続登記、信託目録、名義変更の実行可能性を確認します。
  • 6. 契約後も管理と見直しを続ける:帳簿、領収書、報告、税務資料、家族構成や財産変動、法律改正への対応を継続します。

まとめ

  • 家族信託と遺言書を併用する場合の 優先順位と注意点
  • 家族信託と遺言書を併用する場合の優先順位の全体像:最初に、信託財産と信託外財産を分けて考える基本構造を押さえます。
  • 家族信託と遺言書を併用する前に押さえる用語:制度名が似ていても、成立時期と法的な働きは異なります。
  • 家族信託と遺言書の優先順位を財産別に整理する:信託財産、信託外財産、受益権、残余財産のどれに当たるかで読み方が変わります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

家族信託と遺言書を併用する場合の優先順位の全体像

最初に、信託財産と信託外財産を分けて考える基本構造を押さえます。

家族信託と遺言書を併用する場合の基本は、信託財産は信託契約で承継先と管理方法を定め、信託外財産は遺言書で承継先を定めるという整理です。もっとも、相続実務ではこの一文だけで結論が決まるわけではありません。

信託契約や遺言の効力、遺留分、税務、登記、受託者・受益者・帰属権利者・遺言執行者・相続人の権限が同時に関係します。そのため、どちらが常に優先するかではなく、どの財産について、どの時点で、どの権限が働くかを設計する視点が重要です。

次の一覧は、併用設計で必ず分けて確認したい3つの層を表しています。読者にとって重要なのは、文書の名前だけで判断せず、財産の帰属、権限、外部制度の制約を順番に確認することです。

Layer 01

財産の範囲

信託契約で特定され、移転や分別管理が完了した財産か、死亡時に本人の相続財産として残る財産かを分けます。

Layer 02

権限の発動時点

家族信託は生前管理と死亡後承継をまたいで働き、遺言書は原則として死亡時に効力を生じます。

Layer 03

外部の制約

遺留分、税務、登記、意思能力、利益相反、信託業規制などは、信託契約と遺言書の双方を制約します。

全体の判断順序は、財産の種類、信託の成立状況、遺言書の対象、強行法規や税務の制約を重ねて確認する形になります。次の判断の流れでは、どの段階で信託契約を読み、どの段階で遺言書や遺産分割を確認するかを把握することが大切です。

優先順位を確認する基本の順番

財産目録を作る

不動産、預貯金、受益権、保険、株式、債務、デジタル資産を一覧化します。

信託財産かを確認する

契約書の記載、登記、口座、帳簿、分別管理の有無を見ます。

信託財産
信託契約を中心に確認

受益者、残余財産、終了事由、受託者権限を読みます。

信託外財産
遺言書を中心に確認

遺言がなければ法定相続または遺産分割協議へ進みます。

遺留分・税務・登記を重ねて確認

文書間で整合していても、外部制度により紛争や手続停止が起こることがあります。

注意家族信託は相続税対策や遺留分対策を万能に実現する制度ではありません。信託契約に強い文言を書いても、遺留分権利者の権利や税務上の取扱いを当然に消せるわけではない点を前提にします。
Section 01

家族信託と遺言書を併用する前に押さえる用語

制度名が似ていても、成立時期と法的な働きは異なります。

家族信託とは何か

一般に家族信託とは、親などの財産を信頼できる家族などに託し、本人や家族の生活、介護、財産承継のために管理、運用、処分してもらう信託の通称です。法律上は信託法に基づく信託であり、家族信託という独立した法律類型があるわけではありません。

信託の当事者は、財産を出す人、管理する人、利益を受ける人、信託終了後に財産を受け取る人に分かれます。この違いは、遺言書の対象財産と混同しないために重要で、次の表では各当事者がどの役割を担うかを読み取ります。

当事者意味家族信託での典型例
委託者財産を信託する人です。高齢の親
受託者財産を託され、信託目的に従って管理、処分する人です。子、親族、法人
受益者信託から利益を受ける人です。当初は親、親の死亡後は子など
帰属権利者・残余財産受益者信託終了後に残った財産を取得する人です。特定の子、複数の相続人、法人など

家族信託の中核は、財産の名義と管理権限を受託者に移しつつ、利益は受益者に帰属させる点にあります。不動産では所有権移転登記と信託登記、預金では信託口口座や専用管理口座、信託財産としての分別管理などが実務上の要点になります。

遺言書とは何か

遺言書は、本人が死亡後の財産承継や身分関係等について一定の法律効果を発生させるために作成する法律文書です。相続実務では主に自筆証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言、公正証書遺言が使われます。

遺言書の方式ごとの違いは、家族信託と併用するときの安定性に直結します。次の比較表では、費用や保管だけでなく、形式不備、検認、内容の安定性をどう見るかを確認します。

遺言の種類概要実務上の位置づけ
自筆証書遺言遺言者が原則として全文、日付、氏名を自書し押印する方式です。財産目録は一定要件のもと自書でなくてもよいとされています。費用は抑えやすい一方、形式不備、紛失、偽造、内容不明確のリスクがあります。
法務局保管の自筆証書遺言自筆証書遺言を法務局で保管する制度です。紛失や改ざん防止に有用で、家庭裁判所の検認が不要になります。ただし、内容の有効性が保証されるわけではありません。
公正証書遺言公証人が関与し、公正証書として作成する遺言です。形式面の安定性、保管、検索可能性が高く、重要案件で多用されます。

遺言書は、原則として遺言者の死亡時に効力を生じます。生前の資産凍結、介護費用の支払、不動産売却、事業用資産の管理には、遺言書だけでは対応できないため、家族信託、任意後見、財産管理委任、法人化、生前贈与などとの比較が必要になります。

遺言代用信託と遺言による信託

家族信託と遺言書の関係では、遺言代用信託、遺言による信託、金融機関の商品名としての遺言信託が混同されやすいです。次の表では、名称が似ていても契約型か死亡時発効か、信託法上の信託かを区別して読みます。

用語意味注意点
遺言代用信託信託契約で、委託者の死亡後に受益権や残余財産を誰に帰属させるかを定める設計です。契約であり、遺言書そのものではありません。
遺言による信託遺言書の中で信託を設定する方式です。遺言の効力発生時、すなわち死亡時に信託が成立します。生前管理には使えません。
商品名としての遺言信託遺言書作成支援、保管、遺言執行などのサービス名として使われることがあります。信託法上の信託とは限らないため、商品内容の確認が必要です。
前提このページでは、生前に信託契約を締結し、財産を受託者へ移転して管理する契約型の民事信託を中心に扱います。
Section 02

家族信託と遺言書の優先順位を財産別に整理する

信託財産、信託外財産、受益権、残余財産のどれに当たるかで読み方が変わります。

第一原則 ― 信託財産は信託契約に従う

信託契約書に不動産、金銭、有価証券などが記載され、必要な移転、登記、分別管理が行われていれば、その財産は原則として信託契約の定めに従って管理、処分、承継されます。たとえば、自宅を長男へ信託し、父死亡後の第2受益者や残余財産帰属先を長男と定めた場合、自宅は遺言書ではなく信託契約の定めが中心になります。

後日、自宅を二男に相続させる遺言書が作成されても、すでに信託財産として受託者名義に移り、信託目的に拘束されている財産を、通常の相続財産として自由に処分できるとは限りません。ただし、信託契約の無効、取消し、解除、詐害性、意思能力、移転未了、遺留分侵害などが問題になる余地は残ります。

第二原則 ― 信託外財産は遺言書に従う

家族信託を作っても、すべての財産が自動的に信託財産になるわけではありません。信託契約で指定されていない財産、移転手続が完了していない財産、信託後に本人が取得した財産、日常生活用の預貯金、動産、未収金、還付金などは、信託外財産として残ることがあります。

信託外財産について遺言書がなければ、法定相続または遺産分割協議で承継先を決めます。相続人間の関係が悪い場合、わずかな預貯金や還付金でも紛争になることがあるため、家族信託を導入するほど、信託外財産用の遺言書が重要になります。

財産別の優先関係は、表の左列で財産の性質を確認し、中央列で中心になる文書や制度を確認し、右列で追加チェックを読むと整理しやすくなります。信託財産か信託外財産かだけでなく、受益権や未移転財産のような中間領域を見落とさないことが重要です。

財産または権利の種類原則的に中心となる文書・制度注意点
信託契約で特定され、移転済みの不動産信託契約所有権移転登記、信託登記、受託者権限、信託終了条項を確認します。
信託口口座または分別管理された信託金銭信託契約受託者の分別管理、帳簿、領収書、支出根拠が重要です。
信託契約に記載されたが移転手続が未了の財産個別判断信託設定意思、移転義務、第三者対抗要件、相続開始時の状態を確認します。
信託外の預貯金遺言書、なければ遺産分割金融機関の相続手続、遺言執行者の権限、相続人の同意が問題になります。
信託外の不動産遺言書、なければ遺産分割相続登記義務化により、放置リスクが大きくなっています。
委託者兼受益者が有する受益権信託契約と遺言書の双方受益権の相続性、消滅、次順位受益者、帰属権利者の定めを確認します。
受託者の地位信託契約受託者の死亡、辞任、解任時に備え、後継受託者を明確にします。
信託終了後の残余財産信託契約残余財産受益者や帰属権利者の指定がないと紛争化しやすくなります。
生命保険金保険契約受取人固有の権利と扱われることが多い一方、税務、特別受益、遺留分との関係は個別検討が必要です。
非上場株式・事業用資産信託契約、遺言書、会社法上の手続議決権、譲渡制限、事業承継税制、後継者問題を同時に検討します。
デジタル資産契約規約、遺言書、管理情報暗号資産、クラウド資産、アカウント、パスワード管理が実務上の障害になります。

日付が新しい方が優先するという理解の限界

遺言書だけを比較する場面では、後の遺言が前の遺言と抵触する部分を撤回するという考え方が重要です。しかし、家族信託と遺言書は同じ種類の文書ではありません。日付の前後だけでなく、財産が信託財産になっているか、信託が有効か、移転が完了しているかを確認する必要があります。

次の時系列は、信託と遺言の作成順序が異なる2つの場面を表しています。読者にとって重要なのは、新しい文書だけを見るのではなく、先に行われた生前処分や信託財産化の効果を合わせて読むことです。

先に家族信託、後に遺言書

2026年1月に自宅を信託し、2026年5月に別人へ相続させる遺言を作る

自宅が有効に信託財産になっていれば、後の遺言書だけで通常の相続財産として処分することは困難と考えられます。ただし、信託の無効、取消し、移転未了、遺留分などは別途検討します。

先に遺言書、後に家族信託

2026年1月に自宅を長女へ相続させる遺言を作り、2026年5月に自宅を長男へ信託する

後の信託契約が有効で、財産移転も完了していれば、遺言書の自宅に関する部分は実現不能または抵触状態になる可能性があります。旧遺言を放置しない見直しが必要です。

重要実務上の予防策は、同じ財産について別々の承継先を書かないことです。遺言書では、信託財産を除く財産を対象にする文言を検討し、受益権、帰属権利、未収金、信託外預金、税金、管理費、負債まで確認します。
Section 03

家族信託と遺言書を併用する場合の遺留分・税務・登記の注意点

信託契約と遺言書が整合していても、外部制度で止まることがあります。

遺留分は家族信託でも消えない

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の相続利益です。兄弟姉妹には遺留分がありませんが、配偶者、子、直系尊属などには遺留分があります。遺言や生前贈与、一定の信託設計によって特定の人に財産を集中させると、遺留分侵害額請求が問題になり得ます。

遺留分制度では金銭請求が中心となるため、不動産そのものを取り戻すというより、侵害額に相当する金銭の請求が問題になります。ただし、評価額、基礎財産、生前贈与、特別受益、寄与分的事情、信託受益権や信託財産の評価が争点になり、紛争が軽くなるわけではありません。

次の一覧は、遺留分や受託者義務違反が問題になりやすい設計を整理したものです。どの設計が危険かを知ることは、取得者を変えるためではなく、説明資料、評価資料、支払原資、本人意思の記録を準備するために重要です。

財産集中

長男を受託者、第2受益者、残余財産帰属先にして自宅と賃貸不動産の大半を集中させると、他の相続人から遺留分侵害、使い込み、受託者義務違反を主張されやすくなります。

高額な受益権

推定相続人の一人だけに高額な受益権を承継させると、受益権評価と遺留分算定が争点になりやすくなります。

信託外財産も同一人へ集中

遺言書で信託外財産も同じ相続人へ集中させると、信託と遺言を合わせた全体で不公平感が増します。

支払原資の不足

遺留分相当額を支払う現金がないと、請求を受けた際に不動産売却、借入、代償金調整が必要になることがあります。

意思形成の記録不足

本人の意思形成過程の記録がないと、認知症、誘導、囲い込み、意思能力不足の主張を招きやすくなります。

安全設計では、財産全体の評価額を把握し、各相続人の遺留分相当額を概算し、信託財産、信託外財産、生命保険金、贈与済財産を一覧化します。そのうえで、財産を取得しない相続人に対する代償金、保険金、現金、収益分配、本人が配分を望む理由、相続開始後の交渉窓口を整理します。

税務上の注意点

家族信託は財産管理と承継の制度であり、それ自体が相続税を当然に減らす制度ではありません。受益者課税、受益権評価、みなし相続、みなし贈与、受益者連続型信託の特例などにより、税負担が発生することがあります。

次の表は、受益者や帰属権利者の設定によって税務上の確認点が変わることを示します。名義が受託者へ移ったかだけでなく、誰が経済的利益を受けるかを読むことが重要です。

設計税務上の主な確認点
父が委託者、父が受益者、長男が受託者自益信託として、設定時課税がどう扱われるかを確認します。
父が委託者、長男が受益者受益権の無償移転として贈与税が問題になり得ます。
父死亡後に長男が第2受益者相続税の対象関係、受益権評価を確認します。
長男死亡後に孫が第3受益者受益者連続型信託の税務、期間制限、評価、課税時期を確認します。
信託終了時に残余財産を特定人へ帰属帰属権利者の課税関係を確認します。

相続税の申告が必要な場合、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告、納税を行う必要があります。基礎控除額は一般に「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。この数値は期限管理と資料整理の出発点になるため、早めに確認することが重要です。

相続税申告では信託だけを見ない

申告判断では、信託財産、信託受益権、信託外財産、生命保険金、過去の贈与、債務、葬式費用を統合して確認します。受託者の帳簿がないと、税務申告だけでなく相続人間の不信感も増大します。

相続税申告に向けては、信託契約書、変更契約書、受託者の帳簿、信託財産の明細、不動産評価資料、預金残高、収益、支出、受益者変更日、死亡日、信託終了日、遺言書、遺言執行者資料、信託外財産の財産目録、生前贈与、生命保険、債務、葬式費用を集めます。

不動産と登記の注意点

不動産を家族信託する場合、契約書を作るだけでは不十分です。所有権移転登記と信託登記を行い、第三者から見てその不動産が信託財産であることを明らかにする必要があります。信託目録が曖昧だと、売却、担保設定、賃貸管理、相続時の説明で問題になります。

2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっています。家族信託を使っていても、信託外の不動産が残っていれば相続登記の問題が生じ、信託終了後に残余財産が帰属する場合は信託終了に伴う登記手続が必要です。

不動産評価では、相続税評価額、固定資産税評価額、実勢価格、不動産鑑定評価額、収益還元価格が異なります。どの評価を基準にするかで相続人間の利害が大きく変わるため、司法書士だけでなく、必要に応じて不動産鑑定士、税理士、宅地建物取引業者、土地家屋調査士の関与が有益です。

Section 04

家族信託と遺言書を併用するときの権限整理

遺言書の方式、検認、受託者と遺言執行者の役割を分けて確認します。

自筆証書遺言と公正証書遺言の位置づけ

自筆証書遺言は費用を抑えやすい一方、方式不備や内容不明確のリスクがあります。家族信託と併用する場合は、信託財産を遺言書で重ねて処分していないか、信託外財産が具体的に特定されているか、遺言執行者が指定されているか、受益権や帰属権利に触れているか、遺言者の意思能力に疑義がないかを確認します。

公正証書遺言は、公証人が関与し、原本が公証役場に保管されるため、形式面の安定性が高い方式です。ただし、遺言能力、錯誤、遺留分、信託契約との抵触、税務上の不利は別問題です。公証人は中立の公証事務を担いますが、相続税申告、登記、紛争代理、家族信託の継続管理まで一括して責任を負うわけではありません。

検認は、遺言書の状態を確認し、偽造や変造を防止するための手続です。遺言の有効性を確定する手続ではありませんが、検認が必要な遺言書を検認なしで金融機関や登記に使おうとすると、手続が止まることがあります。

受託者と遺言執行者を混同しない

受託者と遺言執行者は、根拠となる文書、対象財産、権限の範囲が異なります。次の表では、信託財産を扱う人と相続財産を扱う人を分け、同一人物にする場合でも職務ごとの帳簿と説明責任が必要であることを読み取ります。

役割根拠主な権限対象財産
受託者信託契約、遺言による信託、信託法信託目的に従い、信託財産を管理、処分します。信託財産
遺言執行者遺言書、家庭裁判所選任遺言内容を実現するために必要な手続を行います。遺言の対象財産、主に相続財産
相続人民法遺産分割、相続手続、債務承継等に関与します。相続財産
帰属権利者信託契約信託終了後の残余財産を取得します。残余信託財産

受託者は信託財産について強い管理権限を持ちますが、信託外財産について当然に管理権限を持つわけではありません。遺言執行者は遺言を実現する権限を持ちますが、すでに信託財産となっている財産について、信託契約を無視して処分できるわけではありません。

受託者と遺言執行者を同一人物にする設計もありますが、職務ごとの帳簿、説明責任、利益相反の管理が必要です。特定の相続人を受託者兼遺言執行者にすると、他の相続人から自分に有利な処理をしたと疑われることがあります。

金融機関や信託銀行の商品名にも注意する

金融機関や信託銀行が提供する遺言信託、家族信託サポート、相続サポートは、商品ごとに内容が異なります。名称だけで法的性質を判断せず、信託法上の信託を設定する商品か、遺言書の作成・保管・執行支援サービスかを確認します。

次の比較表は、商品や専門家サービスを使う前に確認すべき項目を整理しています。手数料だけでなく、受託者、対応できる財産、紛争時対応、税務申告、登記、訴訟代理の担当者を確認することが重要です。

確認項目見るべき内容
商品の法的性質信託法上の信託か、遺言書の作成・保管・執行支援かを確認します。
受託者誰が受託者になるのか、家族なのか金融機関なのかを確認します。
手数料体系初期費用、保管費用、執行報酬、管理報酬の内訳を確認します。
対象財産不動産、非上場株式、特殊財産を扱えるかを確認します。
紛争時対応相続人間で紛争が生じた場合にどこまで対応できるかを確認します。
周辺業務税務申告、登記、訴訟代理を誰が担当するかを確認します。
変更や撤回中途解約、変更、撤回の条件を確認します。
確認信託業や信託契約代理業には規制があります。専門家や事業者へ依頼する場合は、資格、登録、業務範囲、報酬、利益相反を確認する必要があります。
Section 05

家族信託と遺言書を併用すべき場面

生前管理と死亡後承継の両方を整える必要がある場面で、併用の意味が大きくなります。

家族信託と遺言書の併用が必要になりやすいのは、認知症対策、不動産承継、長期的な生活支援、事業承継のように、生前から死亡後まで財産管理が続く場面です。次の一覧では、各場面で家族信託が担う部分と遺言書が補う部分を読み分けます。

1

認知症対策と死亡後承継を同時に整えたい場合

高齢の親が不動産や預貯金を持ち、将来の資産凍結を防ぎたい場面では、受託者である子が信託目的の範囲で不動産管理、賃貸借、修繕、売却、介護費用支払を行いやすくなります。一方、死亡時に残る信託外預金、動産、還付金、未収年金、葬儀費用精算、信託していない不動産には遺言書が必要になります。

生前管理信託外財産
2

不動産を一人に承継させ、他の相続人には金銭で調整したい場合

賃貸不動産や自宅を長男に承継させたいが、他の相続人の遺留分にも配慮したい場合、家族信託で管理承継の流れを作り、遺言書、生命保険、代償金で調整する設計が考えられます。借入金、収益力、修繕負担、固定資産税、譲渡時の税金も合わせて見ます。

不動産承継代償金
3

障害のある子や浪費傾向のある相続人を支えたい場合

財産を一括で渡すのではなく、受託者が生活費、医療費、施設費などを支払う設計を検討することがあります。ただし、受託者の負担、監督体制、成年後見制度との関係、福祉制度への影響、税務、信託期間、残余財産の帰属を慎重に検討します。

長期支援監督体制
4

事業承継を伴う場合

同族会社の株式、事業用不動産、役員貸付金、知的財産、営業資産がある場合、株式の議決権、後継者の経営権、非後継者の遺留分、会社法上の譲渡制限、事業承継税制を同時に検討します。

会社承継総合設計

専門職の関与も、場面によって中心が変わります。相続人間に不仲がある、使い込み疑いがある、遺留分が問題になる場面では弁護士、不動産を信託する場面では司法書士、相続税や受益者連続型信託、非上場株式がある場面では税理士の関与が重要になります。

複数の専門職の守備範囲は、誰に何を確認するかを誤らないために重要です。次の表では、紛争、登記、税務、公証、評価、会社承継をどの専門職に確認するかを整理します。

専門職主な役割特に相談すべき場面
弁護士遺留分、相続紛争、交渉、調停、審判、訴訟、信託契約の紛争予防。相続人間に不仲がある、使い込み疑いがある、遺留分が問題になる。
司法書士信託登記、相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記書類作成。不動産を信託する、相続登記が必要、遺言に基づく登記をする。
税理士相続税、贈与税、所得税、信託税務、税務申告。相続税が発生しそう、受益者連続型信託、非上場株式がある。
行政書士紛争、税務、登記申請を除く範囲の書類作成支援。争いのない相続書類、遺言作成支援、財産目録整理。
公証人公正証書遺言、信託契約の公正証書化。重要な遺言書を安定的に作成したい。
遺言執行者遺言内容の実現。遺言に基づく預金解約、名義変更、受遺者への引渡しが必要。
信託銀行等遺言関連サービス、財産承継サービス。金融機関の商品、保管、執行支援を使いたい。
不動産鑑定士不動産評価。評価額をめぐり相続人間で争いが予想される。
土地家屋調査士境界、分筆、表示登記。土地を分ける、境界不明、地積更正が必要。
公認会計士会社価値、非上場株式、財務分析。会社承継、株式評価、事業承継計画。
FP家計、保険、老後資金、専門家連携。全体設計を整理したい。
Section 06

家族信託と遺言書の併用で起きやすい失敗例

契約書を作るだけではなく、移転、帳簿、遺言書の整合、税務確認まで必要です。

家族信託と遺言書を併用しても、信託契約書、登記、口座、帳簿、財産目録、遺言書の内容が一致していなければ、相続開始後に紛争化しやすくなります。次の一覧は、どこでつまずくかを事前に把握し、同じ失敗を避けるための確認項目です。

財産移転をしていない

信託契約書だけ作り、不動産登記や金銭管理を実行していないと、本当に信託財産になっていたのかが争点になります。

全財産という遺言を書く

家族信託後に全財産を特定の相続人へ相続させる遺言を書くと、信託財産と信託外財産の区別が不明確になります。

受益権の承継を書かない

当初受益者死亡時に、受益権が消滅するのか、次順位受益者が取得するのか、相続財産として承継されるのかが不明確になります。

後継受託者がいない

受託者が死亡、認知症、破産、辞任、解任となった場合、後継受託者がいなければ信託の運用が停止します。

支出記録がない

親の生活費、医療費、介護費、修繕費、税金を支払う場合、領収書や帳簿がないと使い込みを疑われやすくなります。

税務確認をしない

受益者連続型信託は、税務、期間制限、遺留分、受益権評価が難しく、ひな形だけで作るとリスクが高くなります。

危険信号は、ひな形利用を避けるべき事情を見つけるために重要です。次の表では、紛争化しやすい家族関係、財産構成、能力、税務、受託者管理の問題を確認します。

危険信号なぜ注意が必要か
相続人の一部が強く反対している相続開始後に遺留分、意思能力、説明不足、利益相反が争われやすくなります。
親の判断能力に不安がある信託契約や遺言書の有効性そのものが争点になる可能性があります。
財産の大半が不動産で現金が少ない遺留分や代償金の支払原資が不足し、売却や借入が必要になることがあります。
推定相続人の一人だけに財産を集中させる不公平感が強くなり、遺留分や受託者義務違反の主張につながりやすくなります。
先妻の子、後妻、養子、認知した子など関係者が多い相続人、遺留分権利者、説明先、利害関係の整理が複雑になります。
会社、非上場株式、事業用資産がある議決権、会社法、税務、後継者の経営権を一体で確認する必要があります。
借入金、保証、担保不動産がある債務、担保、納税資金、金融機関対応を見落とすと設計が崩れます。
障害のある子、未成年者、成年後見利用者がいる福祉制度、成年後見、利益相反、特別代理人などの検討が必要です。
受益者連続型信託を使いたい税務、期間制限、評価、課税時期、遺留分が複雑です。
信託契約書と遺言書を別々に作り、整合性を確認していない同じ財産を二重に処分したり、受益権や残余財産の扱いが噛み合わなかったりします。
受託者が帳簿を付ける意思や能力を持っていない受託者の説明責任を果たせず、使い込み疑い、税務資料不足、手続停止につながります。
警告初期費用を抑えるために専門家確認を省くと、後の訴訟、税務修正、登記補正、相続人間の断絶という大きなコストを招くことがあります。
Section 07

家族信託と遺言書を併用する設計手順

財産目録から契約、遺言書、税務・登記確認、見直しまで一体で進めます。

設計手順は、財産の全体像を把握し、信託する財産と信託外に残す財産を分け、契約書と遺言書の文言を整合させ、税務と登記を確認する順番で進めます。次の時系列では、どの順番で作業すると抜け漏れを抑えられるかを読み取ります。

Step 01

財産目録を作る

不動産、預貯金、有価証券、非上場株式、生命保険、債務、デジタル資産を一覧化します。

Step 02

信託する財産を選ぶ

認知症後も管理、売却、修繕、賃貸が必要か、共有にしたくない財産か、受託者が管理できるかを確認します。

Step 03

信託契約書を作る

信託目的、信託財産、受託者権限、受益者、後継受託者、終了事由、残余財産帰属、変更権限、監督を明確にします。

Step 04

遺言書を作る

信託財産を除外する文言、信託外預金・不動産・動産・未収金・還付金の承継先、遺言執行者、債務や費用を整理します。

Step 05

税務試算と登記確認をする

相続税、贈与税、受益権評価、信託登記、相続登記、信託目録、名義変更の実行可能性を確認します。

Step 06

契約後も管理と見直しを続ける

帳簿、領収書、報告、税務資料、家族構成や財産変動、法律改正への対応を継続します。

財産目録で確認する項目

財産目録が不正確だと、信託財産と信託外財産を分けることができません。次の表では、財産ごとに確認すべき情報を並べ、あとで契約書、遺言書、税務申告、登記に転記できる粒度で整理することが重要です。

区分確認項目
不動産所在、地番、家屋番号、共有者、抵当権、賃貸状況、評価額、境界問題。
預貯金金融機関、支店、残高、使途、生活費口座、凍結時の影響。
有価証券証券会社、銘柄、評価額、相続時の換金性。
非上場株式株主構成、譲渡制限、議決権、後継者、評価額。
生命保険契約者、被保険者、受取人、保険金額、税務区分。
債務借入金、保証、連帯債務、担保、未払税金。
デジタル資産暗号資産、ネット銀行、証券アプリ、クラウド契約、パスワード。

信託契約書で明確にする条項

信託契約書では、誰に何を任せるかだけでなく、どの範囲で売却や賃貸ができ、いつ信託が終わり、残った財産を誰が受け取るかまで定めます。次の表では、後の遺言書と矛盾しないように特に確認したい条項を整理します。

条項確認事項
信託目的生活支援、介護費支払、不動産管理、円滑承継などを具体化します。
信託財産不動産の表示、金銭額、追加信託の方法を明確にします。
受託者権限売却、賃貸、修繕、借入、担保設定、建替え、保険契約などの範囲を定めます。
受益者当初受益者、次順位受益者、受益権割合、受益内容を明確にします。
受託者義務分別管理、帳簿、報告、利益相反取引、費用償還を定めます。
後継受託者死亡、辞任、解任、認知症時の後任を決めます。
信託終了事由受益者死亡、期間満了、目的達成、合意終了などを定めます。
残余財産帰属誰に、どの割合で、どの財産を帰属させるかを明確にします。
変更権限誰が、どの範囲で、どの手続により変更できるかを定めます。
監督信託監督人、受益者代理人、報告先を検討します。

遺言書と信託契約の文言設計

遺言書では、信託外財産を中心に定めることが重要です。信託財産を除外する文言、信託外預金、信託外不動産、動産、未収金、還付金、遺言執行者、祭祀承継、葬儀費用、債務、未払費用、遺留分に配慮した付言事項、受託者と遺言執行者の関係を整理します。

文言例として、遺言における財産には別途締結した信託契約に基づく信託財産を含まないとし、死亡時に有する信託受益権、帰属権利その他信託に関連する権利は信託契約に従い、定めのない範囲で遺言の定めを適用する、といった整理が考えられます。ただし、受益権が相続財産に含まれる設計か、受益者死亡で消滅して次順位受益者が取得する設計かによって書き方は変わります。

信託契約側では、委託者死亡時に受益権が消滅するか承継されるか、次順位受益者、残余財産受益者、帰属権利者、遺言書と抵触した場合の解釈、追加信託の対象と手続、受託者の報告義務、帳簿閲覧、監督方法を明確にします。

Section 08

家族信託と遺言書の優先順位を事例で確認する

典型場面では、信託の成立、遺言の対象、遺留分、帳簿、税務を順番に確認します。

典型事例では、誰が正しいかを一足飛びに決めるのではなく、財産が信託財産になっているか、後の文書が何を処分しようとしているか、外部制度の問題があるかを順番に確認します。次の表では、各事例で検討すべき中心論点を読み取ります。

事例検討の中心実務上の確認事項
自宅を信託し、後の遺言で別人に相続させた自宅が有効に信託財産となっていれば、遺言で通常の相続財産として処分することは困難です。信託契約書、登記簿、信託目録、本人の意思確認資料、遺言作成時の状況、財産全体の評価を確認します。
遺言書を作った後に同じ不動産を信託した後の信託契約が有効なら、遺言書の不動産に関する部分は抵触または実現不能になる可能性があります。遺言書作成後に家族信託を導入する場合は、必ず遺言書を見直します。
家族信託だけ作り、遺言書を作らなかった信託財産は信託契約に従いますが、信託外財産は遺産分割の対象になります。信託外財産用の遺言書を同時に作成します。
受託者の支出が疑われた受託者は信託財産を分別管理し、信託目的に従って支出し、説明できる状態にしておく必要があります。信託専用口座、帳簿、領収書、介護費支払記録、修繕見積書、定期報告を整備します。
受益者連続型信託で税務リスクが顕在化した父から長男、長男から孫へ利益を順番に承継させる設計では、税務上の特例、評価、課税時期、相続税申告への影響が複雑です。契約前に税理士による試算を行い、税務上の不利益、申告書類、納税資金を確認します。

家庭裁判所手続に進む場面も、信託財産と相続財産を区別できる資料があるかで進み方が変わります。次の比較表では、どの手続がどの典型場面で問題になるかを整理します。

手続典型場面
遺産分割調停・審判信託外財産について遺産分割協議がまとまらない場合。
遺言書検認自筆証書遺言などの検認が必要な場合。
遺言執行者選任遺言執行者がいない、または職務遂行できない場合。
特別代理人選任未成年者、成年被後見人と他の相続人の利益が相反する場合。
受託者解任・信託管理人等の問題受託者の義務違反、管理不能、利益相反がある場合。
遺留分侵害額請求に関する訴訟・調停特定相続人への財産集中に不満がある場合。

家庭裁判所では、調停委員、裁判官、家事調停官、裁判所書記官、必要に応じて鑑定人や専門委員が関与します。信託財産と遺産分割対象財産を区別できない資料状態だと、手続が長期化しやすくなります。

Section 09

家族信託と遺言書を併用するチェックリスト

契約前、契約後、相続開始後、専門家相談時の資料をまとめて確認します。

契約前・契約後・相続開始後の確認

チェックリストは、検討時期ごとに分けると漏れを見つけやすくなります。次の表では、契約前は設計、契約後は管理、相続開始後は手続と期限を中心に読むことが重要です。

時期確認項目
契約前財産目録を作成したか。信託財産と信託外財産を区別したか。家族信託の目的を明確にしたか。受託者が実際に管理できる人か。後継受託者を定めたか。受益者、次順位受益者、帰属権利者を定めたか。遺留分の概算、税務、登記、金融機関対応、遺言書の作成・見直しを検討したか。
契約後不動産の所有権移転登記、信託登記が完了したか。信託金銭を分別管理しているか。受託者が帳簿、領収書、通帳、契約書を保管しているか。年1回以上、受益者または関係者へ報告しているか。税務申告資料を保存しているか。信託外財産の遺言書が最新状態か。家族構成、財産、税制、法律改正に応じて見直しているか。
相続開始後死亡診断書、戸籍、住民票除票などを取得したか。信託契約書、遺言書、財産目録を確認したか。信託財産と相続財産を区別したか。遺言書の検認が必要か確認したか。遺言執行者、受託者、相続人の権限を整理したか。相続税申告の要否と10か月期限を管理したか。相続登記、信託終了登記、名義変更、遺留分請求の可能性、相続人間の連絡窓口を確認したか。

専門家へ相談するときに用意する資料

専門家へ相談するときは、財産と家族関係の全体像を開示できる資料があるほど検討が進みやすくなります。次の表では、資料ごとに何を確認するために使うかを示しているため、手元の資料の不足を見つける目的で確認します。

資料用途
家族関係図相続人、推定相続人、遺留分権利者の確認。
戸籍、住民票、固定資産税納税通知書相続関係、不動産、住所の確認。
登記事項証明書、公図、測量図不動産の権利、担保、境界、面積の確認。
預金通帳、残高証明信託金銭、信託外財産、生活費の確認。
証券口座資料有価証券、評価額、換金性の確認。
生命保険証券受取人、税務、遺留分調整の確認。
借入金資料債務、担保、相続税、納税資金の確認。
既存の遺言書家族信託との抵触確認。
既存の信託契約書遺言書との整合性確認。
介護、医療、生活費の資料信託目的、支出設計の確認。
会社資料株式、役員、議決権、事業承継の確認。

結論としての基本構造

最終的な整理は、単純に家族信託が上、遺言書が上と決めるものではありません。有効に信託された財産は原則として信託契約に従い、信託されていない財産は遺言書に従い、遺言書がなければ法定相続または遺産分割協議に進みます。

一方で、遺留分、税務、登記、信託業規制、意思能力、利益相反は、信託契約と遺言書の双方を制約します。同じ財産を二重に処分せず、信託契約、遺言書、税務申告、登記、受託者管理を一体で設計することが重要です。

結論最も安全な設計は、信託財産、受益権、信託外財産、残余財産、遺留分、税務、登記を一つの財産目録の上で統合し、必要な専門職の役割を適切に組み合わせることです。
Section 10

家族信託と遺言書のよくある質問

個別事案の結論ではなく、制度上の一般的な考え方を整理します。

家族信託を作れば遺言書は不要になりますか

一般的には、信託財産については信託契約が中心になりますが、信託外財産が残る場合は遺言書の役割が残るとされています。ただし、財産の範囲、移転手続、受益権の設計、相続人の関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、財産目録と契約書案を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

後から作った遺言書の方が常に優先しますか

一般的には、遺言書同士では後の遺言が前の遺言と抵触する部分を撤回する考え方があります。しかし、家族信託と遺言書は文書の性質が異なるため、信託が有効に成立し、財産が信託財産になっているかによって判断が変わる可能性があります。具体的な見通しは、登記、口座、信託目録、遺言書の対象を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

家族信託を使えば遺留分の請求を避けられますか

一般的には、家族信託を使っても遺留分の問題が当然になくなるわけではないとされています。特定の相続人に利益を集中させる設計では、信託財産や受益権の評価、信託外財産、生命保険、生前贈与などを含めて遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。具体的な対応は、評価資料と支払原資を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

信託契約書と遺言書は別々の専門家に依頼してもよいですか

一般的には、別々の専門家が関与すること自体はあり得ます。ただし、同じ財産目録と同じ承継方針に基づいて、信託財産、受益権、残余財産、信託外財産、遺言執行者の権限を整合させる必要があります。具体的な対応は、契約書案と遺言書案を横断して確認できる体制を整え、弁護士、司法書士、税理士等へ相談する必要があります。

受託者と遺言執行者は同じ人でもよいですか

一般的には、同じ人が受託者と遺言執行者を兼ねる設計もあります。ただし、職務ごとの対象財産、帳簿、説明責任、利益相反の管理が必要になり、他の相続人から不公平な処理を疑われる可能性もあります。具体的な対応は、権限分担と報告方法を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

この記事の参考資料

公的機関、法令、税務、登記、公証実務に関する資料を中心に整理しています。

法務・登記・裁判所資料

  • 法務省「信託制度 知って活用」
  • e-Gov法令検索「信託法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」

税務・公証・金融規制資料

  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4427 新たに信託の設定等を行った場合」
  • 国税庁「第9条の3 受益者連続型信託の特例 関係」
  • 日本公証人連合会「遺言」
  • 金融庁「改正信託業法が施行されました」