2σ Guide

種類株式とは
会社法108条から実務まで

種類株式を、9類型、定款設計、発行手続、登記、税務評価、会計、スタートアップ投資、事業承継、M&A・IPOまで横断して整理します。

9類型会社法108条1項
5つ設計前の問い
2週間変更登記の目安
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種類株式とは 会社法108条から実務まで

種類株式を、9類型、定款設計、発行手続、登記、税務評価、会計、スタートアップ投資、事業承継、M&A・IPOまで横断して整理します。

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種類株式とは 会社法108条から実務まで
種類株式を、9類型、定款設計、発行手続、登記、税務評価、会計、スタートアップ投資、事業承継、M&A・IPOまで横断して整理します。
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  • 種類株式とは 会社法108条から実務まで
  • 種類株式を、9類型、定款設計、発行手続、登記、税務評価、会計、スタートアップ投資、事業承継、M&A・IPOまで横断して整理します。

POINT 1

  • 種類株式の全体像と実務上の位置づけ
  • 会社の支配・経済的分配・出口を、株式の内容でどう設計するかを先に押さえます。
  • 種類株式は「数」ではなく「内容」で利害を調整します
  • 経済的分配
  • 支配・ガバナンス

POINT 2

  • 種類株式の定義と会社法上の基礎
  • 会社法108条を中心に、名称ではなく定款で定める権利内容を見ることが出発点です。
  • 名称を「A種株式」や「優先株式」とするだけでは足りません。
  • 定款により会社法上の効力を持つ権利内容が明確に定められていて、はじめて実務上意味を持ちます。
  • なぜ重要かというと、同じ「種類株式」という言葉でも、配当優先、拒否権、取得・転換など機能が大きく異なるためです。

POINT 3

  • 会社法108条が定める種類株式の9類型
  • 9類型を、条文上の分類と実務上の機能の両方から整理します。
  • 経済的権利を調整する種類株式
  • ガバナンス・支配権を調整する種類株式
  • 出口・転換・回収を調整する種類株式

POINT 4

  • 種類株式と普通株式・会社法107条・属人的定めの違い
  • 株式の種類に権利を付けるのか、全株式または人に着目するのかを分けて理解します。
  • 普通株式とは、通常、配当、残余財産分配、議決権について標準的な権利を有する株式を指します。
  • なぜ重要かというと、全株式に同じ内容を付けるのか、特定種類だけに異なる内容を付けるのかで手続と登記の整理が変わるためです。
  • 対象、典型例、登記の違いを読み取ってください。

POINT 5

  • 種類株式を設計する前に決める5つの問い
  • 誰に経済的利益を与えたいか
  • 誰に議決権・支配権を持たせたいか
  • いつ、誰が、どの対価で取得・転換できるか
  • 将来の資金調達・M&A・IPOを妨げないか
  • 定款で定めるか、株主間契約で足りるか
  • 条項のひな形より先に、経済的利益、支配権、取得・転換、将来イベント、定款と契約の役割を決めます。

POINT 6

  • 種類株式の各類型の詳細と実務論点
  • 拒否権事項の広げすぎ
  • 定款変更、新株発行、重要借入れ、組織再編、配当政策などを広く入れすぎると、日常経営まで停止しやすくなります。
  • 死亡・相続・判断能力低下
  • 拒否権者が死亡、認知症、所在不明となると、承認が取れず重要事項を進めにくくなります。

POINT 7

  • 種類株主総会と拒否権の実務
  • 法定の種類株主保護と定款上の拒否権を混同しないことが重要です。
  • 種類株主総会とは、特定の種類の株式を有する株主によって構成される株主総会です。
  • 種類株主総会には、会社法が要求するものと、定款で定めた拒否権として機能するものがあります。
  • なぜ重要かというと、似たように「種類株主総会の承認」が出てきても、根拠、機能、排除可能性、リスクが異なるためです。

POINT 8

  • 種類株式の導入・発行・変更手続
  • 1. 目的と設計方針の決定
  • 2. 定款変更案の作成
  • 3. 株主総会の特別決議:種類株式を新たに設けるには、通常、定款変更の株主総会特別決議が必要です。
  • 4. 登記:種類株式の内容、発行可能種類株式総数等は登記事項です。
  • 5. 募集株式発行:種類株式の枠を定款に設けるだけでは発行済みになりません。

まとめ

  • 種類株式とは 会社法108条から実務まで
  • 種類株式の全体像と実務上の位置づけ:会社の支配・経済的分配・出口を、株式の内容でどう設計するかを先に押さえます。
  • 種類株式の定義と会社法上の基礎:会社法108条を中心に、名称ではなく定款で定める権利内容を見ることが出発点です。
  • 会社法108条が定める種類株式の9類型:9類型を、条文上の分類と実務上の機能の両方から整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

種類株式の全体像と実務上の位置づけ

会社の支配・経済的分配・出口を、株式の内容でどう設計するかを先に押さえます。

種類株式は、普通株式だけでは調整しにくい支配、経済的分配、出口の問題を、株式の内容によって設計する制度です。剰余金配当、残余財産分配、議決権、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権、役員選任権などを組み合わせ、資金調達、事業承継、M&A、IPO、ジョイントベンチャー、従業員持株会などの場面に対応します。

このページでは、種類株式が何を変える制度なのか、会社法108条の9類型をどう読むのか、導入手続や登記、税務評価、会計、スタートアップ投資、事業承継、M&A・IPOでどのような確認が必要かを横断して整理します。個別の定款条項や税務・会計処理は会社の事情で結論が変わるため、具体的な対応は資料を整理したうえで弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、証券会社、監査法人等の専門家へ確認することが大切です。

次の要点は、種類株式が調整する3つの領域を表しています。読者にとって重要なのは、株数だけでは見えない利害の差を把握できる点です。ここでは、どの領域を変える制度なのかを読み取り、後続の章で詳しい条項に進んでください。

種類株式は「数」ではなく「内容」で利害を調整します

同じ1株でも、配当、議決権、残余財産の受取順位、取得・転換条件、拒否権の有無によって経済価値と支配力は大きく変わります。

次の一覧は、種類株式で再設計される3つの領域を並べたものです。なぜ重要かというと、資金調達・承継・売却のいずれでも、この3領域のバランスが崩れると将来の紛争や取引遅延につながるためです。各項目から、自社の課題が経済面、支配面、出口面のどこにあるかを読み取ってください。

ECONOMICS

経済的分配

配当、残余財産、清算時優先分配、参加・非参加、累積・非累積などを調整します。投資家の回収、非後継者への経済的利益、金融商品性の設計に関わります。

CONTROL

支配・ガバナンス

議決権制限、拒否権、種類株主総会、役員選任権、重要事項承認などを調整します。少数株主保護、後継者支配、JVの共同支配に関わります。

EXIT

出口・流動性

取得請求権、取得条項、普通株式への転換、M&A時の取扱い、IPO時の自動転換などを調整します。将来の資本政策と取引実行に関わります。

Section 01

種類株式の定義と会社法上の基礎

会社法108条を中心に、名称ではなく定款で定める権利内容を見ることが出発点です。

種類株式とは、会社法108条1項各号に掲げられた事項について、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合における各種類の株式です。会社法上は「種類株式発行会社」という概念があり、剰余金の配当その他会社法108条1項各号の事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社を指します。

名称を「A種株式」や「優先株式」とするだけでは足りません。定款により会社法上の効力を持つ権利内容が明確に定められていて、はじめて実務上意味を持ちます。

次の比較表は、代表的な種類株式の内容と利用場面を整理したものです。なぜ重要かというと、同じ「種類株式」という言葉でも、配当優先、拒否権、取得・転換など機能が大きく異なるためです。種類名だけで判断せず、典型的な内容と使われる場面を対応させて読んでください。

種類典型的な内容主な利用場面
普通株式標準的な配当・議決権・残余財産分配権です。通常の会社、創業者株式です。
A種優先株式優先配当、残余財産優先分配、普通株式への転換権、一定事項の拒否権を組み合わせます。スタートアップ投資、再生投資で使われます。
無議決権配当優先株式議決権を制限し、配当を優先します。事業承継、従業員持株会、資金調達で検討されます。
拒否権付種類株式重要事項について種類株主総会の承認を求めます。事業承継、JV、創業者保護、政策目的で使われます。
取得条項付種類株式一定事由で会社が取得できる内容を定めます。IPO前の普通株式転換、償還類似設計で使われます。
取得請求権付種類株式株主が会社に取得を請求できる内容を定めます。投資家保護、普通株式転換、プット類似設計で使われます。

次の比較表は、種類株式を設計するときに確認する主要条文を整理したものです。読者にとって重要なのは、会社法108条だけで制度が完結しない点です。条文ごとに、権利内容、手続、種類株主保護、登記のどこに関わるかを読み取ってください。

条文主な内容種類株式との関係
会社法105条株主の基本的権利です。配当、残余財産、議決権の基本構造を確認します。
会社法107条発行する全部の株式の内容です。全株式共通の譲渡制限・取得請求権・取得条項を整理します。
会社法108条異なる種類の株式です。種類株式の中心規定です。
会社法109条株主平等原則・属人的定めです。種類株式と属人的株式の区別を確認します。
会社法111条種類株式の内容変更に関する特則です。既発行株式の権利変更時の同意・種類株主総会を確認します。
会社法115条公開会社の議決権制限株式の制限です。議決権制限株式の数量制限を確認します。
会社法199条以下募集株式の発行等です。種類株式の発行手続に関わります。
会社法309条株主総会決議です。定款変更・募集株式発行等の決議要件を確認します。
会社法322条種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会です。種類株主保護の中心規定です。
会社法324条種類株主総会の決議です。種類株主総会の決議要件を確認します。
会社法911条・915条登記事項・変更登記です。種類株式の内容、発行可能種類株式総数等の登記に関わります。

種類株式は、資本政策、株主総会実務、登記、税務、会計、金融商品性、上場規則、株主間契約、相続法務が連動する制度です。設計段階から複数の専門領域を横断して確認することが、後の手続不備や取引遅延を避ける近道です。

Section 02

会社法108条が定める種類株式の9類型

9類型を、条文上の分類と実務上の機能の両方から整理します。

会社法108条1項は、種類株式として内容を異ならせることができる事項を9つ列挙しています。実務では、これらを単独で使うこともあれば、複数を組み合わせて「A種優先株式」や「B種種類株式」を設計することもあります。

次の比較表は、会社法108条1項の9類型を条文番号、法的な類型、実務上の呼称に分けて示しています。なぜ重要かというと、条文上の類型と契約実務上の呼び方がずれると、定款・登記・投資契約の整合性を失いやすいためです。どの条項がどの会社法上の類型に根拠を持つかを読み取ってください。

会社法108条1項類型実務上の呼称・機能
1号剰余金の配当配当優先株式、優先株式、非参加型優先株式です。
2号残余財産の分配残余財産優先株式、清算優先権、liquidation preferenceです。
3号株主総会で議決権を行使できる事項議決権制限株式、無議決権株式です。
4号譲渡による取得に会社承認を要すること種類別譲渡制限株式です。
5号株主が会社に取得を請求できること取得請求権付種類株式、転換請求権付株式です。
6号会社が一定事由で取得できること取得条項付種類株式、強制転換条項、償還条項です。
7号株主総会決議で全部を取得できること全部取得条項付種類株式です。
8号一定事項につき種類株主総会決議を要すること拒否権付種類株式、黄金株、veto rightです。
9号種類株主総会で取締役・監査役を選任すること役員選任権付種類株式、class board rightsです。

次の一覧は、9類型を実務上の機能で3つに分けたものです。なぜ重要かというと、条文順に眺めるだけでは、自社の目的に必要な条項を選びにくいためです。経済的権利、支配・ガバナンス、出口・転換・回収のどこを変える制度なのかを読み取ってください。

GROUP 1

経済的権利を調整する種類株式

剰余金配当と残余財産分配が中心です。投資家の優先回収、非後継者相続人への経済的利益、金融商品としての利回り設計に使われます。

GROUP 2

ガバナンス・支配権を調整する種類株式

議決権制限、拒否権、役員選任権が中心です。経営権の集中、少数株主保護、JV当事者間の共同支配、投資家保護に使われます。

GROUP 3

出口・転換・回収を調整する種類株式

取得請求権、取得条項、全部取得条項が中心です。普通株式への転換、IPO時の整理、一定事由による会社取得、全株式の整理に使われます。

Section 03

種類株式と普通株式・会社法107条・属人的定めの違い

株式の種類に権利を付けるのか、全株式または人に着目するのかを分けて理解します。

普通株式とは、通常、配当、残余財産分配、議決権について標準的な権利を有する株式を指します。会社法上「普通株式」という独立した定義規定があるわけではありませんが、実務では特別の優先権・制限・取得条項等が付されていない株式を普通株式と呼びます。

普通株式1株とA種優先株式1株が同じ「1株」であっても、経済的価値、議決権、M&A時の受取額、IPO時の転換条件は大きく異なる場合があります。そのため、種類株式発行会社では発行済株式総数だけで支配や経済価値を判断せず、種類ごとの株式数、議決権数、潜在株式、取得・転換条件、清算優先権、拒否権、株主間契約を併せて確認します。

次の比較表は、会社法107条の全株式共通の内容と、会社法108条の種類ごとの内容を整理したものです。なぜ重要かというと、全株式に同じ内容を付けるのか、特定種類だけに異なる内容を付けるのかで手続と登記の整理が変わるためです。対象、典型例、登記の違いを読み取ってください。

比較項目会社法107条会社法108条
対象発行する全部の株式です。2以上の種類の株式です。
典型例全株式譲渡制限です。普通株式とA種優先株式です。
内容譲渡制限、取得請求権、取得条項です。9類型です。
登記発行する株式の内容等です。発行可能種類株式総数、各種類の株式の内容等です。
実務上の使い方非公開会社の標準設計です。資金調達、事業承継、JV、M&A、再生投資で使います。

次の比較表は、種類株式と属人的定めの違いを整理したものです。なぜ重要かというと、中小企業の事業承継では、株式の種類に権利を結びつけるか、特定の人に異なる取扱いを結びつけるかで、相続・譲渡時の安定性が変わるためです。権利が株式に付くのか、人に付くのかを読み取ってください。

観点種類株式属人的定め
権利が結びつく対象株式の種類です。株主本人です。
利用可能会社株式会社一般です。ただし一部制限があります。公開会社でない株式会社に限られます。
登記原則として種類株式の内容が登記事項です。通常、種類株式のような登記構造ではありません。
譲渡時株式の内容が移転先に承継されやすいです。人に着目するため設計上の注意が必要です。
使いやすい場面投資、事業承継、JV、優先分配です。同族会社の人的関係に基づく調整です。
注意点複雑化、登記、将来ラウンド・IPOへの影響があります。相続・譲渡・後継者変更時の不確実性があります。

中小企業の事業承継では、種類株式で設計するか、属人的定めで設計するか、信託や株主間契約で設計するかを比較することが重要です。制度の知名度だけで選ばず、将来の譲渡・相続・後継者変更まで含めて選択します。

Section 04

種類株式を設計する前に決める5つの問い

条項のひな形より先に、経済的利益、支配権、取得・転換、将来イベント、定款と契約の役割を決めます。

種類株式の設計では、条文やひな形から入ると失敗しやすくなります。最初に決めるべきなのは、会社が何を解決したいのかです。

次の判断の流れは、種類株式の条項を作る前に決める5つの問いを順番に示しています。なぜ重要かというと、目的を曖昧にしたまま定款条項を作ると、過剰な拒否権や不足する出口設計が生じるためです。上から順に、経済的利益、支配権、取得・転換、将来イベント、定款と契約の役割分担を読み取ってください。

種類株式を設計する前の5つの問い

誰に経済的利益を与えたいか

配当優先、残余財産優先、投資回収、普通株式と同じアップサイドのどれを重視するかを決めます。

誰に議決権・支配権を持たせたいか

後継者、投資家、JV当事者、先代経営者など、支配権を持つ人と経済的利益を受ける人を分けて検討します。

いつ、誰が、どの対価で取得・転換できるか

IPO、M&A、期間経過、相続、退職、重大な契約違反など、発動事由と対価を明確にします。

将来の資金調達・M&A・IPOを妨げないか

後続ラウンド、分配順位、普通株式転換、創業者退任、従業員持株会、倒産・再生まで想定します。

定款で定めるか、株主間契約で足りるか

会社法上の効力が必要な事項は定款に、当事者間の義務で足りる事項は契約に置く役割分担を基本にします。

現在の株主間調整だけを考えた種類株式は、将来の第三者にとって理解しにくい負債のように見えることがあります。過度な拒否権、複雑な取得価額調整、清算優先権の重なり、相続人に渡る黄金株、会社の裁量で取得できない株式は、投資家、買主、監査法人、証券会社、取引所、金融機関に懸念を与えます。

定款に定めるメリットは、会社法上の対世的効力、公示、第三者承継性です。デメリットは、変更に株主総会・種類株主総会・登記が必要になり、柔軟性が下がることです。契約に定めるメリットは、柔軟性と秘密保持です。デメリットは、原則として契約当事者間の効力にとどまり、株式の譲受人や会社機関決定に対して当然に会社法上の効力を持つわけではないことです。

Section 05

種類株式の各類型の詳細と実務論点

配当、残余財産、議決権、譲渡制限、取得・転換、拒否権、役員選任権を個別に確認します。

剰余金配当に関する種類株式

剰余金配当に関する種類株式は、普通株式より先に配当を受ける株式、一定額以上の配当を受けない株式、配当不足分を翌期以降に累積する株式などです。スタートアップ投資では配当より残余財産優先分配や転換権が重視されることが多く、事業承継、金融機関向け優先株式、上場優先株、社債型種類株式では配当設計が重要になります。

次の比較表は、配当条項でよく出る論点と実務上の注意を整理しています。なぜ重要かというと、配当優先といっても分配可能額、累積、参加、固定・変動の設計で普通株主と投資家の経済的関係が大きく変わるためです。各論点が配当の受取順序、持越し、追加参加、利回りのどこに影響するかを読み取ってください。

論点意味実務上の注意
優先配当普通株式に先立ち一定額の配当を受けます。分配可能額がなければ配当できません。
累積型ある期に優先配当が不足した場合、翌期以降に不足分が累積します。累積額が将来の普通株式配当を圧迫します。
非累積型不足分は翌期以降に持ち越しません。投資家保護は弱くなります。
参加型優先配当後、普通株式と一緒に追加配当に参加します。普通株主の取り分が減ります。
非参加型優先配当を超える配当を受けません。社債類似・安定利回り型に近づきます。
固定配当年○円、払込額の○%などで定めます。金利変動・業績変動との関係を検討します。
変動配当指標金利、利益水準等に連動します。条項が複雑化しやすくなります。

残余財産分配と清算優先権

残余財産分配とは、会社が清算する際に債権者への弁済後に残った財産を株主に分配することです。スタートアップ投資の清算優先権やliquidation preferenceは、この残余財産分配の設計と密接に関係します。投資契約では法的清算だけでなくM&Aや事業譲渡をみなし清算として扱うこともあるため、定款と契約の分配条項を整合させます。

次の比較表は、残余財産優先分配の設計要素を示しています。なぜ重要かというと、M&A価格別の受取額や後続投資家との優先順位に直結するためです。1倍・1.5倍などの倍率、参加型か非参加型か、同順位か先順位かを読み取ってください。

設計要素内容
優先分配額払込金額の1倍、1.5倍、未払配当相当額加算などです。
参加型・非参加型優先分配後に普通株式と一緒に追加分配を受けるかを定めます。
優先順位A種、B種、C種のどれが先順位か、同順位かを定めます。
転換権との関係普通株式転換を選んだ方が有利な場合の選択権を定めます。
みなし清算M&A、支配権移転、重要資産譲渡を清算類似に扱うかを定めます。
分配不能時法的清算で残余財産が不足する場合の按分方法を定めます。

議決権制限株式・無議決権株式

議決権制限株式は、株主総会で議決権を行使できる事項を制限した種類株式です。すべての事項について議決権を認めないものは、一般に無議決権株式と呼ばれます。事業承継、従業員持株会、投資家保護、上場優先株式や社債型種類株式で使われます。

ただし、議決権を制限しても、種類株主保護のための種類株主総会が問題になることがあります。「無議決権株式だから会社意思決定に一切関係しない」と単純化せず、会社法または定款に基づく種類株主総会の要否を確認します。公開会社で議決権制限株式を発行する場合は、会社法上の数量制限や上場規則上の投資者保護も確認します。

譲渡制限種類株式

譲渡制限種類株式は、特定の種類の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要するものです。全株式に譲渡制限を付ける場合は会社法107条の全株式共通の設計として整理されることが多く、ある種類だけに付ける場合は会社法108条1項4号の種類株式になります。

承認機関、みなし承認、相続・合併・会社分割・株式交換による移転、先買権、共同売却権、強制売却権、担保取得時の承認手続を定めます。種類ごとに異なる承認機関や承認条件を設けると、将来の投資・M&A・事業承継における株式移転が複雑になります。

取得請求権付種類株式

取得請求権付種類株式は、株主が会社に対して、その種類株式を取得するよう請求できる株式です。普通株式への転換請求権は、IPOやM&A前、または投資家の判断で優先株式を普通株式化するために使われます。金銭による取得請求権はプット・オプションに近い経済効果を持ちますが、自己株式取得、分配可能額、債権者保護、みなし配当等に注意します。

次の比較表は、取得請求権付種類株式で精密に定めるべき論点を整理しています。なぜ重要かというと、請求期間や対価、転換比率、端数処理が曖昧だと出口局面で紛争が生じるためです。請求する人、手続、対価、法令制限の順に確認してください。

論点設計ポイント
請求期間いつからいつまで請求できるかを定めます。
請求手続書面、電子通知、効力発生日、撤回可否を定めます。
対価普通株式、金銭、社債、新株予約権等を定めます。
転換比率1対1か、調整式を置くかを定めます。
端数処理1株未満端数をどう処理するかを定めます。
調整事由株式分割、併合、無償割当て、低価発行、組織再編を定めます。
法令制限分配可能額、自己株式取得規制、税務を確認します。

取得条項付種類株式・全部取得条項付種類株式

取得条項付種類株式は、一定事由が生じたことを条件として会社がその株式を取得できる株式です。株主の請求ではなく、会社側の取得である点が取得請求権付種類株式と異なります。代表例はIPO時の強制転換です。事業承継では、拒否権付株式の保有者が死亡・退任・一定年齢到達・後継者育成完了となった場合に会社が取得できる設計が考えられます。

全部取得条項付種類株式は、株主総会決議によって、その種類の株式全部を会社が取得できる株式です。かつて少数株主のスクイーズアウト手法として重要でしたが、現在は特別支配株主の株式等売渡請求、株式併合、株式交換等も比較します。全部取得条項を新たに付す場合は、会社法111条や種類株主総会の手続を慎重に確認します。

拒否権付種類株式・役員選任権付種類株式

拒否権付種類株式は、株主総会または取締役会等で決議すべき事項について、その決議に加えて当該種類株主総会の決議を求める株式です。1株しか保有していなくても、定款で定められた事項について拒否できる場合があるため、強力なガバナンス手段です。

次の一覧は、拒否権付種類株式で特に注意すべき危険をまとめています。なぜ重要かというと、拒否権は会社を守るだけでなく、死亡・相続・濫用・所在不明により会社を止める原因にもなるためです。権利者の変動と会社の重要決議がどこで衝突するかを読み取ってください。

拒否権事項の広げすぎ

定款変更、新株発行、重要借入れ、組織再編、配当政策などを広く入れすぎると、日常経営まで停止しやすくなります。

死亡・相続・判断能力低下

拒否権者が死亡、認知症、所在不明となると、承認が取れず重要事項を進めにくくなります。

契約上の同意事項との矛盾

定款上の拒否権と株主間契約上の同意事項がずれると、会社法上の効力と契約違反の整理が難しくなります。

役員選任権付種類株式は、当該種類株主総会で取締役または監査役を選任できる株式です。JV、合弁会社、同族会社、投資家保護で有用ですが、指名委員会等設置会社および公開会社は会社法108条1項ただし書により9号の定めがある種類株式を発行できません。将来のIPOを視野に入れる会社では、普通株式転換や権利消滅の条件も検討します。

Section 06

種類株主総会と拒否権の実務

法定の種類株主保護と定款上の拒否権を混同しないことが重要です。

種類株主総会とは、特定の種類の株式を有する株主によって構成される株主総会です。普通株主総会が全株主または議決権を有する株主を対象とするのに対し、種類株主総会は、ある種類株主の利害に関わる事項について、その種類株主だけで決議します。

種類株主総会には、会社法が要求するものと、定款で定めた拒否権として機能するものがあります。会社法322条は、種類株式発行会社が一定の行為をする場合に、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、原則として当該種類株主総会の決議がなければ効力を生じないと定めています。

対象行為には、株式の種類の追加、株式の内容変更、発行可能株式総数または発行可能種類株式総数の増加、株式併合・株式分割、株式無償割当て、株主割当てによる募集株式発行、新株予約権の募集・無償割当て、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付などが含まれます。

次の比較表は、会社法322条の法定保護と、108条1項8号の定款上の拒否権を分けて整理しています。なぜ重要かというと、似たように「種類株主総会の承認」が出てきても、根拠、機能、排除可能性、リスクが異なるためです。法定の不利益防止か、任意に設計した重要事項承認かを読み取ってください。

区分会社法322条会社法108条1項8号
根拠法定の種類株主保護です。定款自治による拒否権設計です。
発動場面損害を及ぼすおそれのある法定行為です。定款で定めた事項です。
目的種類株主の不利益防止です。投資家・創業者・先代経営者等の重要事項承認権です。
排除可能性定款で不要とする定めが可能な場合があります。定款で定めた内容に従います。
実務リスク必要決議漏れによる無効リスクです。拒否権濫用・経営停止リスクです。

種類株式の設計で多い誤りは、法定の種類株主総会と任意の拒否権を混同することです。どの種類株主に損害のおそれがあるか、会社法322条2項の排除定めを置いているか、排除定めを置く際に既存種類株主全員の同意が必要かを確認します。

Section 07

種類株式の導入・発行・変更手続

定款変更、特別決議、登記、募集株式発行、既存株式の変更を分けて確認します。

種類株式の実務は、設計だけでなく手続が重要です。手続を誤ると、定款変更、株式発行、登記、M&A、資金調達の有効性に疑義が生じます。

次の時系列は、まだ種類株式を発行していない会社が導入する典型的な流れを示しています。なぜ重要かというと、定款に種類株式の枠を設けることと、実際に株式を発行することは別の手続だからです。目的決定、定款変更、総会決議、登記、募集株式発行の順番を読み取ってください。

ステップ1

目的と設計方針の決定

資金調達、事業承継、従業員持株会、JV、金融機関向け優先株、M&A・再生投資、創業者支配維持など、導入目的を明確にします。

ステップ2

定款変更案の作成

会社法108条2項に従い、発行可能種類株式総数と各種類株式の内容を定款に定め、投資契約、株主間契約、登記事項、資本政策表、会計・税務処理と整合させます。

ステップ3

株主総会の特別決議

種類株式を新たに設けるには、通常、定款変更の株主総会特別決議が必要です。ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合は、種類株主総会も確認します。

ステップ4

登記

種類株式の内容、発行可能種類株式総数等は登記事項です。変更が生じた場合、本店所在地で2週間以内に変更登記を申請します。

ステップ5

募集株式発行

種類株式の枠を定款に設けるだけでは発行済みになりません。会社法199条に基づき、募集株式の数、種類、払込金額、払込期日、資本金・資本準備金に関する事項などを定めます。

既存普通株式を種類株式化する場合

普通株式だけの会社で一部株主の株式を種類株式化したい場合、既存株式を単純に名称変更するだけでは足りません。定款変更、株主の同意、種類株主総会、株式取得・再発行、合意書、登記などを組み合わせます。普通株式100株のうち特定株主の50株だけを拒否権付株式にしたいという場面では、既存株主の権利内容変更になるため、全株主・種類株主・対象株主の同意関係を慎重に整理します。

次の比較表は、発行済み種類株式の内容を変更する場合の注意点を整理しています。なぜ重要かというと、既にその種類株式を取得した株主の期待権・財産権に影響するためです。単なる定款変更決議だけで足りるとは限らず、種類株主総会、全員同意、契約上の同意、登記、税務・会計確認が必要になる点を読み取ってください。

変更内容主な注意点
取得条項を新たに付す当該種類株主全員の同意が問題になります。
譲渡制限を新たに付す種類株主総会の特殊決議等が問題になります。
全部取得条項を新たに付す種類株主総会の特別決議等が問題になります。
会社法322条2項の排除定めを後から設ける当該種類株主全員の同意が問題になります。
優先配当額・転換比率の変更不利益変更として種類株主総会・個別合意を検討します。
拒否権事項の削除投資家・種類株主の同意、契約違反の有無を確認します。
Section 08

種類株式の登記実務と定款条項の関係

定款に書けることと登記事項として記録されることは同じではありません。

種類株式は、商業登記実務と密接に関係します。特に、スタートアップ投資や事業承継で作成された複雑な種類株式条項は、定款上は意味が通っていても、登記事項としてそのまま移記できない場合があります。

株式会社の登記事項には、発行可能株式総数、発行する株式の内容、種類株式発行会社における発行可能種類株式総数および各種類の株式の内容、発行済株式の総数ならびに種類および種類ごとの数などが含まれます。会社法108条2項各号に定める事項、会社法322条2項の定め、会社法108条3項後段の要綱、変更年月日等も整理します。

定款には、投資契約との関係、定義規定、手続規定、通知規定、計算式、みなし清算条項、譲渡制限、株主間契約への参照など、多数の条項が含まれる場合があります。しかし、登記簿に記録されるのは会社法上の登記事項として必要な範囲です。

次の比較表は、登記実務で確認する項目を整理しています。なぜ重要かというと、定義語の内部参照や長大な計算式が登記事項として不明確になると、クロージングや投資実行のスケジュールが遅れやすいためです。名称、数、配当、残余財産、議決権、取得、拒否権、添付書面を順に読み取ってください。

チェック項目実務上の確認
発行可能種類株式総数各種類ごとの上限が定款・登記に整合しているかを確認します。
種類株式の名称普通株式、A種優先株式、B種優先株式等の名称が統一されているかを確認します。
配当条項優先配当額、累積・非累積、参加・非参加が明確かを確認します。
残余財産条項優先順位、分配額、参加可否が明確かを確認します。
議決権条項どの事項で議決権を有するか、無議決権かが明確かを確認します。
取得請求・取得条項取得事由、対価、算定方法、手続が明確かを確認します。
拒否権対象事項と種類株主総会要否が明確かを確認します。
会社法322条2項種類株主総会を不要とする定めの有無が整理されているかを確認します。
変更年月日登記申請上の変更日が明確かを確認します。
添付書面株主総会議事録、種類株主総会議事録、同意書、株主リスト等が揃うかを確認します。

登記を意識した定款条項作成では、司法書士と早期に連携します。投資契約・定款の作成後、クロージング直前に登記を依頼すると、登記事項の調整でスケジュールが遅れる場合があります。

Section 09

種類株式の税務・評価・会計・開示

事業承継の評価、5%調整、みなし配当、IFRS、上場優先株の説明まで確認します。

種類株式は会社法上の制度ですが、実務上は税務の影響が極めて大きくなります。非上場会社の事業承継では、相続税・贈与税評価、法人税、所得税、みなし配当、譲渡所得、組織再編税制、事業承継税制との関係を確認します。

国税庁は、中小企業の事業承継で活用が想定される典型的な種類株式として、配当優先の無議決権株式、社債類似株式、拒否権付株式の3類型について評価方法を示しています。配当優先の無議決権株式については、原則として議決権の有無を考慮せずに評価しつつ、一定条件を満たす場合には、無議決権株式の評価額から5%を控除し、その控除額を議決権のある株式の価額に加算して申告する調整計算を選択できる取扱いが示されています。

社債類似株式については、経済的実質が社債に類似していると認められる場合、一定条件のもとで発行価額により評価する取扱いが示されています。拒否権付株式については、拒否権を考慮せずに評価する取扱いが示されています。ただし、複雑な優先分配、取得条項、複数種類間の優先順位、特殊な拒否権、属人的定め、株主間契約が絡む場合は、個別の検討が必要です。

次の比較表は、事業承継で種類株式を使う場合の税務論点を整理しています。なぜ重要かというと、議決権と経済的利益を分けても、税負担・納税資金・みなし配当・評価否認の問題が残るためです。相続税評価、贈与税、みなし配当、譲渡所得、法人税、事業承継税制のつながりを読み取ってください。

論点内容
相続税評価非上場株式の評価方式、議決権制限の評価反映、国税庁取扱いを確認します。
贈与税後継者への株式移転時の評価、みなし贈与の有無を確認します。
みなし配当会社が株式を取得する際の資本金等の額との差額を確認します。
譲渡所得株主が会社または第三者へ譲渡する場合の譲渡益を確認します。
法人税自己株式取得、資本取引、組織再編時の処理を確認します。
事業承継税制対象株式、議決権要件、後継者要件との整合性を確認します。
同族会社行為計算否認不自然な評価引下げ・利益移転のリスクを確認します。

種類株式は株式ですが、その経済的実質は普通株式、社債、転換証券、オプション、プット・コール付き金融商品に近づくことがあります。日本基準では会社法上の株式として資本取引に扱われることが多い一方、IFRSを適用する会社や将来IFRS適用を見込む会社では、契約上の現金支払義務等の有無により資本性金融商品か金融負債かの分類が問題になり得ます。

次の強調表示は、税務・会計・開示を分けずに検討する理由をまとめています。なぜ重要かというと、会社法上は株式でも、投資者説明や監査上は社債類似・金融負債類似の性格が問題になる場合があるためです。法的名称ではなく経済的実質を見る姿勢を読み取ってください。

種類株式は税務・会計・開示と同時に確認します

優先配当、金銭取得義務、転換条項、デリバティブ的調整条項がある場合、税務評価だけでなく、表示、注記、投資者説明、金融商品取引法上の開示も検討します。

Section 10

スタートアップ投資・事業承継での種類株式

優先株式の典型条項、後続ラウンド、IPO時転換、配当優先無議決権株式、黄金株のリスクを整理します。

スタートアップ投資では、創業者、エンジェル投資家、VC、事業会社、役職員、ストックオプション保有者など、多数の利害関係者が存在します。創業者は経営の自由度を保ちたい一方、投資家はリスクに見合った優先権とガバナンス権を求めます。将来のIPOでは、複雑な権利を普通株式に整理します。

次の比較表は、スタートアップ優先株式の典型条項を整理しています。なぜ重要かというと、定款条項と投資契約・株主間契約が一体として機能し、後続ラウンドやIPO時の整理に影響するためです。条項ごとに、会社法上の種類株式に入れるべきか、契約で足りるかを読み取ってください。

条項内容注意点
残余財産優先分配投資額の1倍等を普通株主に先立ち回収します。M&A時のみなし清算条項との整合性を確認します。
普通株式転換権投資家が普通株式へ転換できます。転換比率・調整式が重要です。
IPO時強制転換適格上場時に普通株式へ転換します。適格上場の定義、証券会社要請との整合性を確認します。
希薄化防止低価発行時に転換価額を調整します。フルラチェットか加重平均か、後続投資への影響を確認します。
拒否権重要事項に投資家承認を求めます。定款事項か契約事項かを整理します。
情報提供権月次・四半期資料を提供します。通常は契約で定めることが多いです。
取締役指名権投資家が取締役を指名します。種類株式化するか契約上の指名権にするかを整理します。
共同売却権創業者売却時に投資家も売却参加します。通常は契約で定めます。
強制売却権一定条件で全株主にM&A売却を求めます。契約・定款・会社法手続の整合性を確認します。

A種優先株式の後にB種優先株式、C種優先株式を発行する場合、B種がA種に優先するのか、A種とB種が同順位か、すべての優先株式が投資額按分で優先分配を受けるのか、後続投資家が既存投資家の拒否権を上書きできるのか、既存投資家の同意なしに新優先株を発行できるのかを確認します。

次の一覧は、事業承継で種類株式を使う典型的な設計と注意点を示しています。なぜ重要かというと、経営の承継と財産の承継を分けられる一方、配当原資、遺留分相続税評価、拒否権者の死亡・判断能力低下が残るためです。後継者、非後継者、先代、従業員持株会の役割を読み取ってください。

1

後継者への議決権集中

後継者には議決権のある普通株式を承継させ、他の相続人には経済的利益を持たせる設計が考えられます。

承継
2

配当優先無議決権株式

非後継者に経営関与ではなく配当を通じた経済的利益を与える設計です。配当余力と買取資金の計画が不可欠です。

分配
3

先代の一時的拒否権

後継者を監督するために先代が拒否権付種類株式を持つ設計です。死亡時取得条項、信託、遺言、任意後見まで一体で検討します。

注意
4

従業員持株会の経済参加

配当優先・議決権制限株式を使い、経営支配を維持しながら従業員の経済的参加を設計する場合があります。

参加

種類株式だけで事業承継が完成するわけではありません。遺言、遺留分対策、家族信託・民事信託、株主間契約、生命保険、退職金設計、持株会社化、従業員持株会、事業承継税制、役員退任・顧問契約、金融機関との合意を組み合わせます。

Section 11

M&A・組織再編・上場会社・IPOにおける種類株式

買主DD、売主側整理、3層の同意、上場審査・普通株式転換を確認します。

M&Aで対象会社が種類株式発行会社の場合、買主は普通株式だけの会社より詳細なデューデリジェンスを行います。確認すべき資料には、定款、登記事項証明書、株主名簿、種類株主名簿、投資契約、株主間契約、新株予約権原簿、資本政策表、過去の株主総会・種類株主総会議事録、取締役会議事録、登記申請書類、税務申告書・株式評価資料、優先分配シミュレーションがあります。

次の比較表は、種類株式がM&A価格やクロージング条件に与える影響を整理しています。なぜ重要かというと、売却対価の分配、必要同意、普通株式化、譲渡承認、少数株主対応が取引実行に直結するためです。各論点が価格、承認、実行条件のどこに影響するかを読み取ってください。

論点M&Aへの影響
残余財産優先分配売却対価の分配に影響します。
みなし清算条項M&Aを清算類似として投資家優先回収が発動します。
拒否権M&A承認に種類株主の同意が必要になる場合があります。
取得・転換条項クロージング前に普通株式化できるかを確認します。
譲渡制限株式譲渡承認が必要です。
ドラッグアロング少数株主に売却を求められるかを確認します。
タグアロング少数株主が同条件売却参加を請求できるかを確認します。
種類株主総会組織再編で法定決議が必要かを確認します。

売主側は、M&Aプロセスに入る前に種類株式を整理します。種類株式の内容一覧、M&A時の分配ウォーターフォール、必要な株主総会・種類株主総会・個別同意、投資家同意事項、IPO時・M&A時の普通株式転換条項、取得条項の実行可能性、みなし配当・譲渡所得の試算を準備します。

次の判断の流れは、組織再編で確認する3層の同意を示しています。なぜ重要かというと、会社法上の機関決定、種類株主総会、契約上の同意を混同すると、決議はあるのに契約違反が残る、または契約同意はあるのに法定決議が欠ける状態になり得るためです。上から順に、会社法、種類株主、契約の承認を切り分けてください。

組織再編で確認する3層の同意

会社法上の株主総会・取締役会決議

合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付、事業譲渡などの法定決議を確認します。

会社法上または定款上の種類株主総会決議

損害を及ぼすおそれがあるか、定款上の拒否権事項に該当するかを確認します。

投資契約・株主間契約上の同意

投資家の事前書面承諾、ドラッグアロング、タグアロング、情報提供義務などを確認します。

上場会社または上場準備会社が種類株式を発行する場合、会社法に加えて金融商品取引法、取引所規則、コーポレートガバナンス、少数株主保護、投資者説明が問題になります。IPO準備会社では、既存の優先株式を普通株式へ転換し、取締役指名権、拒否権、情報提供権、優先交渉権などの特殊権利をどう解消するかを確認します。

Section 12

種類株式の定款条項チェックリストと失敗事例

条項設計の確認事項と、黄金株・優先株・配当・登記・契約で起きやすい失敗をまとめます。

種類株式の定款条項では、総論、配当、残余財産、議決権、取得請求権・取得条項、拒否権、登記・手続を分けて確認します。複数の項目を一度に見ようとすると抜け漏れが起きやすいため、条項ごとに確認するのが実務的です。

次の一覧は、定款条項を設計するときの主要確認事項を領域別にまとめたものです。なぜ重要かというと、条項の一部だけが精密でも、配当・転換・登記・税務・契約のどこかが不整合になると制度全体が機能しないためです。各領域で何を明確にすべきかを読み取ってください。

A

総論

導入目的、普通株式との関係、発行可能株式総数と発行可能種類株式総数、会社法108条・111条・322条、将来の資金調達・M&A・IPO・相続を確認します。

全体
B

配当・残余財産

優先配当額、累積・非累積、参加・非参加、分配可能額、優先分配額、未払配当、優先順位、みなし清算、M&A価格別シミュレーションを確認します。

経済
C

議決権・拒否権

完全無議決権か事項限定か、議決権を有する事項、公開会社の数量制限、拒否権事項、金額基準、緊急時例外、死亡・相続・譲渡・退任時の処理を確認します。

支配
D

取得・転換・登記

請求権者、取得権者、発動事由、対価、算定方法、普通株式交付時の発行可能株式総数、金銭対価時の分配可能額、端数処理、登記事項、議事録、同意書を確認します。

出口

次の一覧は、種類株式で生じやすい失敗事例と教訓を整理しています。なぜ重要かというと、制度の強さはそのまま紛争や取引遅延の強さにもなり得るためです。相続、後続投資、配当原資、登記、契約と定款の役割分担を読み取ってください。

黄金株が相続され会社が動かない

拒否権付種類株式には、死亡時取得条項、信託、遺言、相続人間合意、会社買取り、期限設定を組み込みます。

A種優先株式が後続投資を阻害する

初回ラウンドでも、後続ラウンドを想定した標準的・説明可能な条項にします。

無議決権配当優先株式なのに配当できない

配当優先株式は、配当原資、配当政策、買取資金、相続人への説明とセットで設計します。

登記事項が不明確で遅れる

種類株式の定款条項は、司法書士と早期に連携し、登記事項として自己完結した文言に整えます。

株主間契約と定款の拒否権が矛盾する

会社法上の効力を持たせたい拒否権は定款に、当事者間義務で足りるものは契約に置きます。

Section 13

専門家別に見る種類株式の検討ポイント

法務・登記・税務・会計・M&A・経営の担当者が、同じ資本政策表と定款案で確認します。

種類株式は、1つの専門領域だけで完結しません。法務、登記、税務、会計、商事法務、M&A、経営の視点を統合し、同じ資本政策表と定款案を見ながら検討します。

次の一覧は、専門家・担当者ごとの確認ポイントをまとめたものです。なぜ重要かというと、同じ種類株式でも、弁護士は会社法と契約、司法書士は登記、税理士は評価、会計士は資本・負債分類、M&A担当は売却対価と同意条件を見るためです。誰がどの論点を確認するかを読み取ってください。

LEGAL

弁護士・企業内弁護士

会社法108条、111条、199条、322条、324条の適用関係、定款条項、投資契約、株主間契約、少数株主保護、M&A・IPO時の出口設計、拒否権濫用、取締役の善管注意義務・利益相反を確認します。

REGISTRATION

司法書士

発行可能種類株式総数と各種類株式内容の登記、登記すべき事項、株主総会・種類株主総会議事録、株主リスト、種類株主リスト、変更登記期限、文言調整を確認します。

TAX

税理士

相続税・贈与税評価、非上場株式評価、国税庁の種類株式評価取扱い、みなし配当、譲渡所得、自己株式取得の税務、事業承継税制との整合性を確認します。

ACCOUNTING

公認会計士・監査法人

資本・負債分類、株主資本等変動計算書への影響、優先配当・取得条項の注記、IPO準備での特殊権利解消、投資契約・株主間契約の開示影響、企業価値評価を確認します。

BOARD

商事法務担当・取締役会事務局

株主総会招集通知、議案設計、種類株主総会の開催管理、議決権行使書面、電子提供措置、株主名簿、種類株主名簿、定款管理、登記事項証明書との整合性を確認します。

DEAL

M&A・組織再編法務担当

優先分配ウォーターフォール、みなし清算条項、拒否権・同意権、株式譲渡承認、種類株主総会、クロージング前転換、表明保証・補償条項を確認します。

CFO

経営者・CFO

資本政策表、投資家説明、配当余力、納税資金、将来ラウンドへの影響、IPO・M&A戦略、株主間紛争予防を確認します。

Section 14

種類株式のよくある質問

一般情報として整理し、個別事情で結論が変わる点も明示します。

Q1. 種類株式と優先株式は同じですか。

一般的には、優先株式は配当や残余財産分配で普通株式より優先する種類株式を指す実務上の呼称とされています。種類株式には、優先株式のほか、無議決権株式、拒否権付種類株式、取得条項付種類株式、役員選任権付種類株式などが含まれます。具体的な分類は定款上の権利内容によって変わるため、専門家へ確認することが大切です。

Q2. 種類株式を発行すれば、後継者に経営権を集中できますか。

一般的には、後継者に議決権のある普通株式を集中させ、他の相続人には配当優先無議決権株式を持たせる設計が検討されます。ただし、相続税評価、遺留分、配当原資、非後継者の納得、将来の株式買取りによって結論が変わります。具体的な対応は、資本政策表や家族関係を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q3. 黄金株を1株だけ発行すれば会社を守れますか。

一般的には、一定の重要事項について拒否権を持たせる設計は可能とされています。ただし、黄金株は強力であるため、拒否権者の死亡、相続、認知症、濫用、譲渡、所在不明により会社が停止する可能性があります。具体的な条項設計では、取得条項、消滅条項、期限、相続対策を合わせて検討する必要があります。

Q4. 無議決権株式なら株主総会に一切関係しませんか。

一般的には、通常の株主総会で議決権を持たない設計は可能とされています。ただし、会社法または定款に基づく種類株主総会で議決権を有する場合があります。特に、ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある行為では、種類株主総会の要否を個別に確認する必要があります。

Q5. 種類株式の内容は登記されますか。

一般的には、種類株式発行会社では、発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容等が登記事項になります。ただし、定款条項のすべてがそのまま登記されるわけではありません。登記事項として記録可能な文言かどうかは、定款作成段階で司法書士等へ確認する必要があります。

Q6. 株主間契約だけで拒否権を定めれば十分ですか。

一般的には、株主間契約上の拒否権は契約当事者間の義務として機能します。ただし、会社法上の機関決定の効力に当然に影響するとは限りません。会社法上、決議に加えて種類株主総会承認を求めたい場合は、定款上の拒否権付種類株式として設計するかを専門家と検討する必要があります。

Q7. スタートアップの優先株式は必ず必要ですか。

一般的には、初期段階では普通株式、J-KISS型新株予約権、みなし優先株式的な契約、新株予約権付社債等が検討されることもあります。本格的なVC投資では、残余財産優先分配、転換権、希薄化防止、拒否権等を組み込んだ種類株式が使われることが多いです。資金調達の段階や投資家の属性により適切な手段は変わります。

Q8. 種類株式を発行すると税金は安くなりますか。

一般的には、種類株式を発行しても税負担が自動的に下がるわけではありません。国税庁は特定類型の種類株式について評価取扱いを示していますが、適用条件があります。導入目的が税負担軽減だけに偏ると、評価否認、みなし贈与、同族会社行為計算否認等のリスクがあるため、税理士・税務専門家の確認が必要です。

Q9. 既存の普通株式を後から優先株式に変えられますか。

一般的には、一定の方法で可能な場合があります。ただし、既存株主の権利内容を変更するため、定款変更、株主総会、種類株主総会、対象株主の同意、取得・再発行、登記などを慎重に設計する必要があります。普通株式を一方的に不利益な種類株式へ変更することは、重大な紛争リスクを伴います。

Q10. 種類株式は中小企業にも必要ですか。

一般的には、事業承継、同族株主間紛争予防、従業員持株会、後継者への議決権集中、先代の一時的拒否権、金融機関・スポンサーからの資金調達で有効な選択肢になる場合があります。ただし、会社規模に比べて複雑すぎる設計は管理コストと紛争リスクを高めます。具体的な必要性は、株主構成、財務状況、将来の承継・資金調達方針を踏まえて検討します。

Guide

種類株式で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を8件表示しています。

Reference

種類株式の参考資料

法令、公的機関、取引所資料を中心に確認します。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「会社法施行規則」
  • 法務省「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」
  • 国税庁「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」
  • 国税庁「種類株式の評価について(情報)」

取引所・制度解説資料

  • 日本取引所グループ「議決権種類株式の上場制度の整備」
  • 日本取引所グループ「社債型種類株式 ― 概要(優先株等)」
  • 日本取引所グループ「銘柄一覧(優先株等)」

実務上の補助資料

  • 会社法108条に関する条文解説資料