2σ Guide

家族信託を
始めるまでのステップ
相談から信託契約まで
流れ

相談前の準備、専門家面談、信託設計、家族間調整、税務と登記の確認、公正証書化、信託契約締結後の実行手続までを、一般情報として整理します。

10段階実行準備
3年以内申請義務
10か月申告期限
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家族信託を 始めるまでのステップ 相談から信託契約まで 流れ

相談前の準備、専門家面談、信託設計、家族間調整、税務と登記の確認、公正証書化、信託契約締結後の実行手続までを、一般情報として整理します。

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家族信託を 始めるまでのステップ 相談から信託契約まで 流れ
相談前の準備、専門家面談、信託設計、家族間調整、税務と登記の確認、公正証書化、信託契約締結後の実行手続までを、一般情報として整理します。
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  • 家族信託を 始めるまでのステップ 相談から信託契約まで 流れ
  • 相談前の準備、専門家面談、信託設計、家族間調整、税務と登記の確認、公正証書化、信託契約締結後の実行手続までを、一般情報として整理します。

POINT 1

  • 家族信託を始めるまでの全体像
  • 契約前の準備から信託契約後の実行準備まで、10段階で流れを確認します。
  • ただし、家族信託は契約書を作れば終わりという制度ではありません。
  • どの段階で何を確認するかを先に把握すると、相談前の資料準備や家族説明の抜け漏れを減らせます。

POINT 2

  • 家族信託の基本定義と相続対策で注目される理由
  • 委託者、受託者、受益者、信託財産、信託目的の意味を押さえます。
  • 法律上、家族信託という独立した法律名があるわけではなく、通常は信託法に基づく信託契約として構成されます。
  • 家族信託では、誰が財産を託し、誰が管理し、誰が利益を受け、何のために財産を使うのかを分けて考えます。
  • 次の用語一覧では、契約書を読む前に確認すべき基本概念と典型例を整理しています。

POINT 3

  • 家族信託で解決しやすい問題と解決しにくい問題
  • 身上監護全般の代替ではない
  • 相続争いを自動的に消す制度ではない
  • 受託者となる子への不信があると、使い込み疑い、説明請求、遺留分侵害額請求、受託者解任請求につながることがあります。

POINT 4

  • 家族信託の相談前に整理すべき事項
  • 目的、資料、参加者を先に整理すると、専門家相談の精度が上がります。
  • 初回相談の前に重要なのは、何となく家族信託をしたいという状態から、何が起きると困るのかを具体的に文章化することです。
  • 次の比較一覧では、抽象的な不安を専門家へ伝えやすい形へ変換する視点を整理しています。
  • 相談資料は、本人確認、家族関係、財産、税務、介護、遺言、会社関係に分けて準備します。

POINT 5

  • 家族信託に関わる専門職ごとの役割
  • 紛争、登記、税務、書類整理、公証、不動産実務の役割を分けます。
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 不動産関連専門職

POINT 6

  • 家族信託の相談から信託契約までの詳細ステップ
  • 相談目的を確定する
  • 家族関係と推定相続人を確定する
  • 財産を棚卸しする
  • 本人の意思能力を確認する
  • 受託者を選ぶ
  • 受託者の権限を具体的に定める
  • 受益者の利益給付ルールを定める
  • 監督、報告、帳簿を設計する
  • 税務、遺留分、相続税申告を確認する
  • 契約書案を作成し、公正証書化する
  • 目的の確定から公正証書化まで、契約前に詰めるべき10項目を追います。

POINT 7

  • 家族信託契約書で特に注意すべき条項
  • 信託目的は具体的に書く
  • 財産管理と円滑な承継だけでは不十分です。
  • 不動産売却権限は条件を明確にする
  • 施設入所、医師の診断、要介護認定、配偶者の居住、売却前通知、売却代金の使途、譲渡所得税の申告支援などを検討します。

POINT 8

  • 家族信託と遺言・任意後見・法定後見の比較
  • 生前管理、身上監護、死後承継、裁判所監督の違いを整理します。
  • 家族信託は他制度と競合するだけでなく、併用して設計することも多い制度です。
  • 次の比較一覧では、遺言、任意後見、法定後見との違いを制度ごとに確認できます。
  • 任意後見との違いは、開始時期と身上監護の扱いに表れます。

まとめ

  • 家族信託を 始めるまでのステップ 相談から信託契約まで 流れ
  • 家族信託を始めるまでの全体像:契約前の準備から信託契約後の実行準備まで、10段階で流れを確認します。
  • 家族信託の基本定義と相続対策で注目される理由:委託者、受託者、受益者、信託財産、信託目的の意味を押さえます。
  • 家族信託で解決しやすい問題と解決しにくい問題:財産管理には強みがありますが、身上監護、相続争い、税務、意思能力には限界があります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

家族信託を始めるまでの全体像

契約前の準備から信託契約後の実行準備まで、10段階で流れを確認します。

家族信託は、本人が判断能力を十分に有する時期に、信頼できる家族等へ財産管理の権限を託し、生活、介護、医療、住まい、不動産管理、相続、事業承継を設計するための民事上の信託です。典型例では、高齢の親が委託者兼受益者となり、子を受託者として、預貯金や不動産を信託財産に組み入れ、生活費、医療費、施設利用料、固定資産税、修繕費、不動産管理費などの支払いを続けられるようにします。

ただし、家族信託は契約書を作れば終わりという制度ではありません。信託目的、受託者の権限、受益者保護、税務、登記、金融機関の口座開設、遺留分、相続人間の説明、成年後見制度との役割分担、受託者交代、信託終了後の残余財産まで、複数領域を横断して検討します。

次の一覧は、家族信託を始めるまでの10段階を、手続、主な担当者、判断事項で整理したものです。どの段階で何を確認するかを先に把握すると、相談前の資料準備や家族説明の抜け漏れを減らせます。

段階手続主な担当者重要な判断事項
1課題の整理本人、家族、FP、弁護士等認知症対策、相続対策、不動産管理、事業承継のどれが主目的か
2初回相談弁護士、司法書士、税理士等家族信託が適切か、成年後見、任意後見、遺言、贈与で足りるか
3財産と家族関係の調査司法書士、税理士、行政書士等不動産、預貯金、株式、保険、借入、推定相続人の把握
4本人の意思能力確認弁護士、公証人、医師等契約時点で本人が内容を理解し判断できるか
5信託設計弁護士、司法書士、税理士等信託目的、受託者、受益者、財産、権限、監督、終了事由
6税務と相続リスクの検討税理士、弁護士等贈与税、相続税、所得税、遺留分、特別受益、相続税申告
7家族説明と合意形成本人、家族、弁護士等受託者への不信、使い込み疑い、情報共有方法
8契約書案の作成弁護士、司法書士等条項の過不足、金融機関や登記実務に耐える内容か
9公正証書化公証人、専門家本人確認、意思確認、原本保管、証明力の強化
10契約締結後の実行準備司法書士、金融機関、税理士等信託登記、信託口口座、財産移転、帳簿、定期報告

家族信託の成否は、契約締結日そのものではなく、契約後に受託者が信託目的に沿って財産を管理し、受益者と相続人に説明できる記録を残せるかで決まります。

要点家族信託は、本人の生前の財産管理と死亡後の承継をつなぐ設計です。早い段階で目的、財産、受託者、税務、登記、家族説明を同時に確認することが重要です。
Section 01

家族信託の基本定義と相続対策で注目される理由

委託者、受託者、受益者、信託財産、信託目的の意味を押さえます。

家族信託とは、民事信託の一類型として、本人の財産を家族等に託し、あらかじめ定めた目的に従って管理、運用、処分してもらう仕組みを指します。法律上、家族信託という独立した法律名があるわけではなく、通常は信託法に基づく信託契約として構成されます。

家族信託では、誰が財産を託し、誰が管理し、誰が利益を受け、何のために財産を使うのかを分けて考えます。次の用語一覧では、契約書を読む前に確認すべき基本概念と典型例を整理しています。

用語意味家族信託での典型例
委託者財産を信託する人高齢の親
受託者信託財産を管理、処分する人子、親族、専門家法人等
受益者信託財産から利益を受ける人高齢の親、障害のある子、配偶者等
信託財産信託の対象となる財産金銭、自宅、賃貸不動産、株式等
信託目的何のために財産を管理するか生活費支払い、介護費支払い、不動産管理、資産承継等
受益権受益者が利益を受ける権利生活費を受け取る権利、賃料収益を受ける権利等
残余財産帰属権利者信託終了後の残りの財産を取得する人委託者死亡後の子、配偶者、孫等
信託監督人受益者のために受託者を監督する人弁護士、司法書士、親族等
受益者代理人受益者の権利行使を代理する人判断能力低下が見込まれる受益者の代理者

相続対策は、死亡後の分配だけではありません。死亡前の判断能力低下、介護費用の支払い、不動産管理、空き家化、賃貸物件の修繕、施設入所時の自宅売却、障害のある子の生活保障、会社経営者の株式承継など、本人が生きている期間の財産管理も重要です。

遺言は原則として死亡後に効力を発揮します。成年後見制度は判断能力が不十分になった後の本人保護に強みがありますが、家庭裁判所の監督を受ける制度です。任意後見は判断能力が十分な時期に契約できますが、効力発生は任意後見監督人が選任された後です。家族信託は、本人が判断能力を有する時点で契約し、契約後から受託者による財産管理を開始できる点に特徴があります。

Section 02

家族信託で解決しやすい問題と解決しにくい問題

財産管理には強みがありますが、身上監護、相続争い、税務、意思能力には限界があります。

家族信託の向き不向きを最初に分けておくと、成年後見、任意後見、遺言、贈与など他制度との使い分けを考えやすくなります。次の比較一覧では、家族信託で設計しやすい課題と典型的な設計例を確認できます。

問題家族信託での設計例
親が認知症になった後も介護費を支払いたい子を受託者とし、信託口口座から生活費、医療費、施設費を支払う
親の自宅を将来売却して施設費に充てたい受託者に売却権限を明記し、不動産を信託財産に入れる
賃貸不動産の管理を子に任せたい賃貸借契約、修繕、賃料回収、納税資金支払いを受託者権限に入れる
障害のある子の生活費を長期的に守りたい親を委託者、親族を受託者、子を受益者として支給ルールを定める
二次相続以降の承継先まで考えたい受益者連続型信託や残余財産帰属先を慎重に設計する
相続人間の使い込み疑いを予防したい受託者の帳簿、領収書保管、定期報告、監督人を定める

一方で、家族信託が当然に代替できない領域もあります。限界を見落とすと、契約後に本人保護、家族間紛争、税務、意思能力の問題が表面化するため、次の4点を分けて確認します。

身上監護全般の代替ではない

医療同意、介護契約、施設入所契約などの法律行為代理が必要な場面では、成年後見、任意後見、委任契約との併用を検討します。

相続争いを自動的に消す制度ではない

受託者となる子への不信があると、使い込み疑い、説明請求、遺留分侵害額請求、受託者解任請求につながることがあります。

節税商品ではない

委託者と受益者が同じ自益信託では設定時の贈与税が問題になりにくい一方、他益信託では贈与税や相続税の検討が必要です。

意思能力を失った後の万能策ではない

契約時点で内容を理解できない状態であれば、信託契約が無効となる危険があります。判断能力があるうちの検討が前提です。

Section 03

家族信託の相談前に整理すべき事項

目的、資料、参加者を先に整理すると、専門家相談の精度が上がります。

初回相談の前に重要なのは、何となく家族信託をしたいという状態から、何が起きると困るのかを具体的に文章化することです。次の比較一覧では、抽象的な不安を専門家へ伝えやすい形へ変換する視点を整理しています。

抽象的な不安専門家に伝えるべき具体化
認知症が心配どの財産が凍結すると困るか。預金か、不動産か、会社株式か
相続でもめたくない誰と誰が対立しそうか。遺留分を主張しそうな人は誰か
親の自宅を守りたい住み続けるのか、施設入所時に売るのか、空き家管理するのか
障害のある子が心配誰が日常管理し、どの財源で、いつまで支えるのか
賃貸物件がある修繕、契約更新、売却、借入、税務申告を誰が行うのか
会社を承継したい株式の議決権、配当、後継者、相続税納税資金をどうするか

相談資料は、本人確認、家族関係、財産、税務、介護、遺言、会社関係に分けて準備します。不動産や税務が関係する案件では、登記事項証明書と固定資産税資料がないと設計の精度が大きく落ちるため、優先して集めます。

分野資料
本人確認本人、候補受託者、推定相続人の本人確認資料
家族関係戸籍、家族関係図、推定相続人一覧、過去の離婚、養子、認知の有無
不動産登記事項証明書、固定資産税納税通知書、名寄帳、賃貸借契約書、測量図、境界資料
預貯金金融機関名、支店、残高概算、定期預金の有無
有価証券証券口座、上場株式、投資信託、非上場株式の資料
借入住宅ローン、事業借入、担保設定、保証債務
保険生命保険証券、受取人、解約返戻金の有無
税務過去の確定申告書、相続税試算、贈与履歴、不動産所得資料
介護要介護認定、診断書、施設入所予定、医療費、介護費の見込み
遺言既存の遺言書、公正証書遺言、自筆証書遺言保管制度の利用有無
会社定款、株主名簿、決算書、事業承継計画、後継者候補

相談参加者は、本人の意思確認と将来の不信防止に直結します。本人抜きで子だけが相談しても最終設計には限界があるため、誰を同席させるべきかを理由とともに整理します。

参加者参加理由
委託者候補本人本人の意思確認が信託契約の核心であるため
受託者候補実際に管理義務を負うため
主要な推定相続人将来の不信や遺留分紛争を減らすため
配偶者生活費、居住、介護、二次相続に直結するため
税理士相続税、贈与税、所得税の判断が必要なため
司法書士不動産信託登記、相続登記、法務局手続の確認のため
弁護士相続人間の対立、遺留分、使い込み疑い、交渉の予防のため

本人が家族全員に財産内容を開示したくない場合もあります。その場合は、まず本人と専門家が面談し、どの範囲を誰に説明するかを慎重に決めます。

Section 04

家族信託に関わる専門職ごとの役割

紛争、登記、税務、書類整理、公証、不動産実務の役割を分けます。

家族信託は、法律、登記、税務、金融、不動産、福祉が重なるため、専門職の役割を分けて考えることが重要です。次の一覧では、どの専門職がどの場面で確認すべきかを整理しています。

LAW

弁護士

相続人間の対立、遺留分、使い込み疑い、再婚や前婚の子、会社支配権、利益相反など、争いがあるまたは争いが生じる可能性が高い場面で、説明過程、議事録、同意書、報告体制を含めた紛争予防を検討します。

REGISTER

司法書士

不動産を信託財産に含める場合に、所有権移転登記、信託登記、信託目録、相続登記の未了、抵当権、共有持分、未登記建物、農地などを確認します。2024年4月1日から相続登記が義務化された点も重要です。

TAX

税理士

贈与税、相続税、所得税、固定資産税、登録免許税、消費税を確認します。相続税申告期限は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内であり、信託を組んでも期限は延びません。

DOCS

行政書士

紛争、税務代理、登記申請を除く範囲で、相続関係説明図、財産目録、遺産分割協議書、任意後見契約や遺言作成支援に関連する書類整理を補助することがあります。

NOTARY

公証人

公正証書化の場面で本人確認、意思確認、原本保管、契約内容の証明力を支えます。ただし、公正証書にしても意思能力や契約内容の適法性が絶対に争われないわけではありません。

REAL ESTATE

不動産関連専門職

不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、不動産仲介業者、建築士、施工業者が、価格、境界、分筆、売却、賃貸、修繕、建替えなどの実務を支えます。

司法書士が不動産の登記名義を確認する場面では、契約書と信託目録の整合性が重要です。現在の名義、抵当権、共有持分、未登記建物、農地、将来の売却や担保設定に必要な権限を確認します。

確認事項理由
現在の登記名義委託者が本当に所有者かを確認するため
抵当権、根抵当権金融機関の承諾や借入条項が必要となるため
共有持分共有者の同意、管理処分権限が問題となるため
未登記建物信託財産に含める方法、登記の必要性を検討するため
農地農地法上の許可や届出が問題となるため
信託目録将来の売却、賃貸、担保設定に必要な権限を記録するため

税理士が確認する税目は、受益者が誰か、収益が誰に帰属するか、信託終了後に誰が財産を取得するかで変わります。税務上の承継や節税を意味するわけではない点を前提にします。

税目問題となる場面
贈与税委託者以外の者を受益者にする場合
相続税受益者死亡時、受益権承継時、残余財産帰属時
所得税信託不動産の賃料収入、譲渡所得、受益者課税
固定資産税不動産所有名義や納付管理
登録免許税信託登記、所有権移転登記等
消費税事業用不動産、課税売上がある場合
Section 05

家族信託の相談から信託契約までの詳細ステップ

目的の確定から公正証書化まで、契約前に詰めるべき10項目を追います。

家族信託の設計は、目的を一文で定めるところから始まり、家族関係、財産、意思能力、受託者、権限、給付、監督、税務、契約書案へ進みます。次の時系列は、各段階で読み取るべき判断事項を順番に示しています。

ステップ1

相談目的を確定する

相続対策、認知症対策、家族でもめないためといった抽象的な目的ではなく、自宅管理、固定資産税支払い、介護施設費用、賃貸収入、障害のある子の生活費など、契約条項に落とせる目的にします。

ステップ2

家族関係と推定相続人を確定する

前婚の子、認知した子、養子、疎遠な相続人、障害や債務のある相続人、未成年者、成年後見等を利用している家族、過去の多額贈与を確認します。

ステップ3

財産を棚卸しする

自宅、賃貸不動産、預貯金、上場株式、非上場株式、生命保険、年金、農地、借入付き不動産について、信託に入れる財産と入れない財産を分けます。

ステップ4

本人の意思能力を確認する

本人が財産、契約相手、名義移転の効果、目的、取消しや変更、相続への影響を理解しているかを確認し、必要に応じて診断書や面談記録を残します。

ステップ5

受託者を選ぶ

信頼性、事務能力、中立性、継続性、金銭感覚、コミュニケーション、利益相反を確認し、親思いであるだけでなく記録と報告を続けられる人を選びます。

ステップ6

受託者の権限を具体的に定める

金銭管理、不動産管理、不動産処分、借入、税務対応、専門家委託、訴訟対応、保険対応を具体化します。売却権限は条件、代金使途、報告、税務対応まで定めます。

ステップ7

受益者の利益給付ルールを定める

定期給付、実費精算、臨時支出、支払先、支出制限、報告方法を決め、受託者が好きなように財産を使う状態を避けます。

ステップ8

監督、報告、帳簿を設計する

年1回の収支報告書、領収書保管、信託監督人、受益者代理人、複数承認、会計分離、解任条項を検討します。

ステップ9

税務、遺留分、相続税申告を確認する

自益信託、他益信託、受益者連続型、不動産信託、事業承継信託の税務と、遺留分侵害額請求の支払原資を確認します。

ステップ10

契約書案を作成し、公正証書化する

前文、信託目的、委託者、受託者、受益者、信託財産、受託者権限、義務、給付、監督、報酬、費用、変更、終了、残余財産、紛争解決を定めます。

信託に入れる財産は、全部である必要はありません。次の比較一覧では、財産ごとに信託対象にするかを判断する主な観点を整理しています。

財産信託に入れるかの判断
自宅将来売却、管理、固定資産税支払いが必要なら検討
賃貸不動産管理、修繕、賃料回収、売却予定があるなら有力
預貯金生活費や維持費支払いの原資として必要額を検討
上場株式金融機関対応、証券会社対応、税務を確認
非上場株式議決権、配当、会社法、税務、事業承継を確認
生命保険受取人指定で足りる場合もある
年金原則として本人固有の受給権であり信託財産化は慎重
農地農地法の制約を確認
借入付き不動産金融機関の承諾、担保、期限の利益喪失条項を確認

本人の意思能力は、診断名だけで判断するものではありません。次の確認項目から、契約内容を理解し、自分の意思で決めた過程を説明できるかを見ます。

確認項目実務上の観点
財産の理解自分がどの不動産、預金を持っているか理解しているか
契約相手の理解誰を受託者にするか理解しているか
効果の理解財産名義が受託者へ移ることを理解しているか
目的の理解なぜ信託するのか説明できるか
取消しや変更の理解契約後に自由に戻せない場合があることを理解しているか
相続への影響死亡後の承継先や他の相続人への影響を理解しているか

受託者選びは、信頼だけでなく実務を継続できるかが重要です。次の評価軸では、受託者候補を比較するときに確認したい項目を示しています。

評価軸確認内容
信頼性本人の利益を最優先できるか
事務能力通帳管理、支払い、記帳、領収書保管ができるか
中立性他の相続人から極端に不信を持たれていないか
継続性年齢、健康、居住地、仕事の状況から長期対応できるか
金銭感覚借金、浪費、事業失敗、税金滞納がないか
コミュニケーション定期報告や説明を継続できるか
利益相反自分も相続人である場合に公正さを保てるか
Section 06

家族信託契約書で特に注意すべき条項

信託目的、売却権限、後継受託者、報酬、残余財産を曖昧にしないことが重要です。

信託契約書案では、前文、信託目的、委託者、受託者、受益者、信託財産、受託者権限、受託者義務、給付方法、監督、報酬、費用、変更、終了、残余財産、紛争解決を定めます。次の一覧は、契約書に最低限入れるべき項目と内容を整理しています。

条項内容
前文契約の背景、本人の希望、制度趣旨
信託目的生活支援、介護費支払い、不動産管理、資産承継等
委託者財産を託す人
受託者管理する人、後継受託者
受益者当初受益者、第二次受益者、受益者変更の有無
信託財産金銭、不動産、株式等の特定
受託者権限管理、処分、売却、賃貸、修繕、借入、専門家委託等
受託者義務善管注意、忠実、分別管理、報告、帳簿作成
給付方法生活費、医療費、介護費、施設費等の支払い方法
監督信託監督人、受益者代理人、承認事項
報酬受託者報酬の有無、計算方法
費用信託事務費用、税金、専門家費用の負担
変更変更できる者、変更条件、本人判断能力低下後の扱い
終了死亡、目的達成、期間満了、合意終了等
残余財産信託終了後に誰が取得するか
紛争解決管轄、協議、専門家関与

特に注意すべき条項は、抽象的に書くほど後の説明が難しくなります。次の重要ポイントでは、目的、売却権限、後継受託者、報酬、終了後財産の考え方を整理しています。

信託目的は具体的に書く

財産管理と円滑な承継だけでは不十分です。生活費、医療費、介護費、施設入所費、居住用不動産の維持管理費、公租公課など、支出の基準を説明できる目的にします。

不動産売却権限は条件を明確にする

施設入所、医師の診断、要介護認定、配偶者の居住、売却前通知、売却代金の使途、譲渡所得税の申告支援などを検討します。

後継受託者を定める

受託者の死亡、病気、認知症、辞任、解任、破産に備え、第一順位から第三順位まで定めることが望まれます。

受託者報酬を定める

無報酬、定額報酬、実費精算、管理収入連動、重要業務報酬を明確にし、勝手に費用を取ったという誤解を防ぎます。

残余財産を明確にする

終了時に相続財産へ戻るのか、特定の人が取得するのか、遺言と矛盾しないかを明確にします。

受託者報酬は親族間では曖昧になりがちですが、長期の賃貸不動産管理や帳簿作成がある場合は負担が大きくなります。次の比較一覧で報酬方式を確認します。

方式内容
無報酬親族間で負担が軽い場合
定額報酬月額または年額を定める
実費精算交通費、郵送費、証明書取得費等を支払う
管理収入連動賃料収入の一定割合を報酬とする
重要業務報酬売却、建替え、大規模修繕時に別途定める

終了事由は、委託者兼受益者の死亡、受益者全員の死亡、信託目的の達成、信託財産の消滅、信託期間満了、委託者と受益者の合意、受託者と受益者の合意などが典型です。

Section 07

家族信託と遺言・任意後見・法定後見の比較

生前管理、身上監護、死後承継、裁判所監督の違いを整理します。

家族信託は他制度と競合するだけでなく、併用して設計することも多い制度です。次の比較一覧では、遺言、任意後見、法定後見との違いを制度ごとに確認できます。

比較項目家族信託遺言
効力発生時期契約で定めた時点から原則として死亡後
生前の財産管理可能原則不可
死後の承継指定可能可能
受託者による継続管理可能遺言執行後は終了しやすい
形式契約、公正証書が多い自筆証書、公正証書等
紛争予防設計次第形式、内容、遺留分が争点になり得る

任意後見との違いは、開始時期と身上監護の扱いに表れます。家族信託で信託財産を管理し、任意後見で身上監護や信託外財産を補う併用が検討されます。

比較項目家族信託任意後見
開始時期契約で定めた時点任意後見監督人選任後
対象信託財産契約で定めた本人の法律行為
財産管理柔軟に設計可能監督人の監督下で本人保護中心
身上監護原則として直接は扱わない介護契約等の代理が可能
家庭裁判所の関与原則なし監督人を通じて関与
死後承継設計可能原則として死亡で終了

法定後見との違いは、本人が判断能力を有するうちに準備できるか、管理者を本人が選べるか、裁判所監督があるかにあります。判断能力がすでに不十分で契約できない場合は、法定後見の検討が必要です。

比較項目家族信託法定後見
利用開始本人が判断能力を有する時期に契約判断能力が不十分になった後に申立て
誰が管理者を選ぶか本人が契約で選ぶ家庭裁判所が選任する
管理目的信託目的に従う本人保護が中心
裁判所監督原則なしあり
積極的運用契約設計次第制約が大きい
身上監護限定的あり

信託に入れていない財産については遺言が必要になることが多く、家族信託だけで相続対策を完結させる発想は危険です。

Section 08

家族信託で起こりやすい失敗と事前対策

契約書作成後に機能しない、説明不足で不信を招く、税務を後回しにする失敗を避けます。

家族信託の失敗は、制度そのものよりも、契約後の実行、金融機関調整、税務、家族説明、受託者交代、遺言との整合性を確認しなかったことから生じやすいです。次の一覧は、代表的な失敗と読み取るべき対策を整理しています。

契約書だけ作り、口座や登記を実行しない

信託財産の移転、信託登記、信託口口座の開設、会計管理を行わなければ実務上は機能しません。

金融機関との事前調整をしない

信託口口座は金融機関ごとに取扱いが異なります。契約書案の段階で予定金融機関に確認することが望まれます。

税務を後回しにする

他益信託、受益者連続型、収益受益権と元本受益権を分ける設計、非上場株式を信託する設計は事前確認が不可欠です。

他の相続人への説明を怠る

本人と受託者だけで契約を作ると、財産を囲い込まれたと感じられることがあります。説明範囲、時期、資料、議事録を検討します。

受託者の交代を想定しない

子が先に死亡する、病気になる、遠方へ転居する、受託者自身が認知症になる事態に備えます。

遺言との整合性を確認しない

同じ自宅について遺言と信託契約の残余財産帰属先が矛盾すると、紛争の火種になります。

遺留分リスクは、信託で完全に回避する発想ではなく、支払原資、生命保険、遺言、家族説明、財産評価、代償金の準備と合わせて検討します。次の一覧に該当する場合は、特に慎重な確認が必要です。

遺留分リスクが高まりやすい事情確認したい対策
長男だけを受託者とし、残余財産も長男に帰属させる他の相続人への説明、代償金、生命保険などを検討
他の子にはほとんど財産が残らない財産評価、遺留分侵害額の支払原資を確認
信託財産の大半が不動産で現金が少ない売却可能性、換価方法、納税資金を確認
生前贈与の履歴がある特別受益や持戻しの可能性を整理
介護をした子としなかった子の感情対立がある寄与分や特別寄与料、説明記録を検討
後妻と前婚の子がいる推定相続人の利害調整と説明方法を検討
事業承継で後継者に株式を集中させる株式評価、支払原資、承継計画を確認

既存の遺言がある場合は、信託財産と遺言対象財産を整理し、遺言を作り直すべきか、補充遺言を作るべきかを検討します。

Section 09

家族信託契約を公正証書化する流れ

公証役場での事前相談、本人確認、署名押印、正本・謄本の受領までを確認します。

信託契約は、法律上必ず公正証書でなければ成立しないわけではありません。ただし、本人確認、意思確認、証明力、原本保管、金融機関対応、紛争予防の観点から、公正証書で作成する実務上のメリットは大きいとされています。

次の手順一覧は、公正証書化の一般的な流れを示しています。順番を把握しておくと、契約書案、本人確認資料、財産資料をどの段階でそろえるべきかを読み取れます。

手順内容
1専門家が契約書案を作成する
2公証役場へ事前相談する
3公証人が契約内容、資料、本人確認を確認する
4必要に応じて条項を修正する
5作成日時を予約する
6委託者、受託者等が公証役場で内容確認する
7署名押印し、公正証書を作成する
8正本、謄本を受け取り、登記や口座開設に使う

提出資料は、公証役場や契約内容によって異なります。次の一覧では、一般に準備対象になりやすい資料をまとめています。

資料確認の目的
信託契約書案契約内容を公証人が確認するため
委託者、受託者の本人確認資料当事者本人であることを確認するため
印鑑証明書署名押印に関する確認のため
戸籍、住民票家族関係や住所を確認するため
不動産登記事項証明書不動産の名義と権利関係を確認するため
固定資産評価証明書不動産評価や費用の確認に使うため
財産目録信託財産を特定するため
金融資産の資料預貯金や有価証券を確認するため
会社資料会社株式を信託する場合に確認するため
委任状代理人が関与する場合に確認するため

本人の意思能力に不安がある場合は、診断書や面談記録を準備することもあります。ただし、公証人が医療判断をするわけではないため、医師、弁護士、家族、専門家がそれぞれの立場で確認を重ねる必要があります。

Section 10

家族信託契約締結後に必要な実行手続

金銭移転、信託登記、帳簿、年次報告まで行って初めて実務で機能します。

家族信託は契約締結で終わりではありません。次の時系列では、金銭移転、不動産の信託登記、帳簿と報告を、実務で確認すべき順番に整理しています。

金銭の移転

信託口口座または専用口座で管理する

委託者の個人口座から受託者が管理する口座へ移し、入金額、入金日、原資、目的を記録します。

不動産の信託登記

登記事項証明書と信託目録を確認する

不動産を信託財産に含める場合、司法書士が登記申請を行い、契約書と信託目録が整合しているか確認します。

帳簿と年次報告

記録を残して受益者と受託者を守る

入出金明細、領収書、財産目録、報告書、税務資料を保存し、必要に応じて受益者、監督人、家族へ報告します。

金銭を信託財産に入れる場合は、後から原資や目的を説明できる記録が必要です。次の一覧は、入金時に残すべき事項を整理しています。

記録事項確認内容
入金日信託財産へ移した日
入金額信託口口座または専用口座へ移した金額
委託者名誰の財産を信託財産へ組み入れたか
信託契約名どの信託契約に基づく入金か
信託財産への組入れであること贈与や貸付ではないことの説明
通帳コピー入出金の客観資料
受託者の受領記録受託者が受け取ったことの記録

信託登記後は、固定資産税、火災保険、賃貸借契約、管理会社、抵当権者や金融機関、将来売却時の権限記載を確認します。特に賃貸不動産では、貸主表示や管理会社への通知が実務上重要です。

帳簿管理は、受益者保護であると同時に受託者自身を守るものです。次の一覧では、管理項目ごとに残すべき方法を整理しています。

管理項目方法
預金信託口口座または信託専用口座で管理
現金できる限り現金管理を避け、口座払いにする
領収書月別、支払先別に保管
帳簿入出金明細、摘要、支払目的を記録
財産目録年1回更新
報告書受益者、監督人、必要に応じて家族へ報告
税務資料確定申告、相続税申告に備えて保存
Section 11

家族信託のケース別設計例

認知症対策、賃貸不動産管理、親なき後問題、事業承継の設計を比較します。

ケース別に見ると、家族信託の目的、信託財産、受託者、監督方法、残余財産の設計が変わります。次の一覧では、4つの典型例から、どの設計要素が重要になるかを読み取れます。

CASE 01

認知症対策型

父が自宅と預貯金を所有し、将来認知症になった場合は自宅を売却して施設費に充てたい場面です。長男を受託者、父を受益者とし、自宅と一定額の金銭を信託財産に入れ、長女へ年1回収支報告する設計が考えられます。

CASE 02

賃貸不動産管理型

母が賃貸マンションを所有し、高齢で管理が難しい場面です。長女を受託者、母を受益者とし、賃貸マンションと修繕用資金を信託財産に入れ、賃貸借契約、修繕、管理会社契約、売却、建替え検討の権限を定めます。

CASE 03

親なき後問題型

障害のある子がまとまった財産を直接管理することが難しい場面です。親を委託者、兄または専門家法人を受託者、障害のある子を受益者とし、生活費、医療費、福祉サービス費の安定給付を目的にします。

CASE 04

事業承継型

父が非上場会社の株式の大半を保有し、後継者である長男に議決権行使を安定させたい場面です。非上場株式を信託財産とし、議決権、配当、会社法、株式評価、相続税、贈与税、事業承継税制を確認します。

認知症対策型では、長女に説明しないまま長男だけが受託者になると不信が生じます。収支報告、売却前通知、残余財産の帰属割合を明確にすることが重要です。

賃貸不動産管理型では、賃借人、管理会社、金融機関、保険会社、税務署への対応が必要です。受託者の権限を信託目録に適切に反映させることが重要です。

親なき後問題型では、福祉制度、成年後見、障害年金、生活保護、相続税、贈与税との関係を確認します。財産管理だけでなく、生活支援者、医療福祉関係者、後見制度との連携が必要です。

事業承継型では、会社法、税務、相続、経営支配、金融機関対応が絡みます。弁護士、税理士、公認会計士、中小企業診断士等の連携が必要です。

Section 12

家族信託を始める前によくある質問

制度の一般的な考え方を整理します。個別事情で結論は変わるため、具体的には専門家への確認が必要です。

Q1. 家族信託はいつ始めるべきですか

一般的には、本人が契約内容を理解し、自分の意思で判断できる時期に検討する制度とされています。ただし、診断名だけでなく、契約時点で信託の内容、財産、受託者、効果を理解できるかによって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 家族全員の同意がないとできませんか

一般的には、常に推定相続人全員の同意が必要とは限らないとされています。ただし、遺留分、残余財産、受託者報酬、不動産売却など他の相続人に大きな影響を与える設計では、説明不足が紛争の原因になる可能性があります。具体的な説明範囲や手続は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 家族信託は公正証書でなければ無効ですか

一般的には、信託契約は必ず公正証書でなければ成立しないわけではないとされています。ただし、本人確認、意思確認、証明力、原本保管、金融機関対応の観点から、公正証書で作成する実務上のメリットは大きいと考えられます。具体的な形式は、契約内容や金融機関対応を踏まえて専門家へ相談する必要があります。

Q4. 家族信託をすれば成年後見は不要ですか

一般的には、家族信託だけで成年後見が常に不要になるわけではないとされています。家族信託は信託財産の管理に強みがありますが、身上監護、信託外財産の管理、本人の法律行為代理が必要な場合には、任意後見または法定後見が必要になる可能性があります。具体的には、本人の生活状況と財産範囲を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q5. 家族信託は節税になりますか

一般的には、家族信託は財産管理と承継設計の制度であり、節税商品ではないとされています。設計によっては贈与税、相続税、所得税が問題となる可能性があります。具体的な税務判断は、財産内容、受益者、受益権の承継方法によって変わるため、税理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 信託した不動産は受託者のものになりますか

一般的には、名義は受託者に移りますが、受託者が自由に自分のために使える財産になるわけではないとされています。受託者は信託目的に従い、受益者のために管理する義務を負い、固有財産と信託財産を分別して管理する必要があります。具体的な権限と制限は、契約書と信託目録で確認する必要があります。

Q7. 受託者が財産を使い込んだらどうなりますか

一般的には、受託者は善管注意義務、忠実義務、分別管理義務などを負うとされています。違反があれば、損失補填、原状回復、解任、損害賠償、場合によっては刑事問題が生じる可能性があります。具体的な対応は証拠関係や契約内容で変わるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q8. 信託契約後に内容を変更できますか

一般的には、信託法や契約内容に従って変更できる場合があるとされています。ただし、本人の判断能力が低下した後は、本人の意思確認が難しくなり、変更が困難になる可能性があります。将来変更の可能性がある事項は、契約時に変更権限と手続を設計しておく必要があります。

Q9. 既に遺言がある場合でも家族信託はできますか

一般的には、既存の遺言があっても家族信託を検討することは可能とされています。ただし、信託財産は信託契約に従って承継されるため、同じ財産について遺言と信託契約が矛盾すると紛争の原因になる可能性があります。具体的には、遺言と信託契約の整合性を専門家へ確認する必要があります。

Q10. 相続登記が未了の不動産も信託できますか

一般的には、まず相続登記を行い、現在の所有者を明確にする必要があるとされています。2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっており、過去の相続で取得した不動産も対象となる場合があります。具体的な登記手続は、不動産の名義や相続状況によって変わるため、司法書士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 13

家族信託の実務チェックリスト

相談前、契約書、契約締結後の3段階で抜け漏れを確認します。

チェックリストは、手続を進める順番ごとに分けると使いやすくなります。次の一覧では、相談前、契約書、契約締結後の確認事項をまとめています。

1

相談前に確認すること

家族信託で解決したい問題を一文で書く、本人の意思を直接確認する、推定相続人を一覧化する、不動産登記事項証明書と固定資産税資料を準備する、預貯金、証券、保険、借入を整理する、既存の遺言書と過去の贈与を確認する、相続税の概算と受託者候補の事務能力、他の相続人への説明方針を考えます。

相談前
2

契約書で確認すること

信託目的、信託財産、受託者と後継受託者、受益者と後継受益者、不動産売却権限、生活費や医療費や介護費の支払ルール、帳簿と報告と領収書保管、監督人や承認制度、受託者報酬、税務、遺留分、遺言との整合性、終了事由、残余財産帰属先を確認します。

契約書
3

契約締結後に確認すること

公正証書の正本と謄本を保管する、信託口口座または専用口座を開設する、金銭を信託財産として移す、不動産の信託登記を申請する、信託目録を確認する、固定資産税、保険、管理会社、賃借人へ必要な連絡を行い、帳簿、領収書保管、年次報告、税理士への資料連携を整えます。

締結後

この確認は、家族の信頼だけに依存しない管理体制を作るためのものです。記録、報告、監督を契約と実務に落とし込むことで、本人の生活と家族の将来を守りやすくなります。

Section 14

家族信託の本質は説明可能な管理体制である

信頼を契約、登記、税務、会計、報告、監督へ落とし込むことが重要です。

家族信託は、親の財産を子が管理できる制度という説明だけでは不十分です。本質は、信託目的に従った財産管理を、受益者保護、記録、監督、承継、税務、登記と結び付けて制度化することにあります。

受託者は、財産の名義を持つから強いのではありません。信託目的に拘束され、受益者のために行動し、記録を残し、必要に応じて説明する義務を負うからこそ、信託財産を管理できます。

現代の相続対策では、誰に財産を渡すかだけでなく、死亡前に誰が、どの財産を、どの目的で、どのように管理するかという設計が同じくらい重要です。判断能力低下、高齢者単身世帯、認知症、空き家、不動産共有、事業承継、親なき後問題が重なるほど、この視点は欠かせません。

次の重要ポイントは、家族信託を始める前に最後に確認したい5つの軸です。目的、権限、税務、記録、他制度との併用を同時に見直すことで、契約後に機能する設計へ近づきます。

契約書より先に、説明できる管理体制を作る

本人が判断能力を有するうちに検討し、目的、財産、受託者権限、税務、登記、遺留分、金融機関対応、帳簿、報告、監督を具体化することが、家族信託を実務で機能させる土台です。

最後に、家族信託を始めるまでの重要ポイントを5つに整理します。

  1. 本人が判断能力を有するうちに検討する
  2. 目的を具体化し、信託財産と受託者権限を明確にする
  3. 税務、登記、遺留分、金融機関対応を契約前に確認する
  4. 受託者の帳簿、報告、監督体制を設計する
  5. 遺言、任意後見、成年後見、生命保険、遺産分割対策と併用して考える

家族信託は、家族の信頼を前提とする制度です。しかし、信頼だけに依存する制度ではありません。信頼を契約、登記、税務、会計、報告、監督という実務に落とし込むことによって、本人の生活と家族の将来を守る制度になります。

Reference

家族信託の参考資料

制度、税務、登記、後見、公証に関する公的・中立的な資料名を整理しています。

法令・制度資料

  • e-Gov 法令検索「信託法」
  • e-Gov 法令検索「民法」
  • e-Gov 法令検索「不動産登記法」
  • 法務省「知って活用 信託制度」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「成年後見制度について」
  • 法務省「任意後見制度について」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
  • 法務省「公証制度について」

信託・金融・公証実務

  • 一般社団法人信託協会「信託について」
  • 一般社団法人信託協会「受託者の義務」
  • 日本弁護士連合会「信託口口座開設等に関するガイドライン」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言とは、どのようなものですか」

税務・裁判所資料

  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「第9条の2 贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利 関係」
  • 国税庁「第9条の3 受益者連続型信託の特例 関係」
  • 裁判所「任意後見監督人選任」
  • 裁判所「遺産分割調停」