2σ Guide

財産目録の作り方と
Excelテンプレート

相続財産を漏れなく調べ、評価額・証拠資料・分割案・税務区分・登記情報まで一体で整理するための実務設計を解説します。

3か月 相続放棄
10か月 相続税申告
3年 相続登記
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財産目録の作り方と Excelテンプレート

相続財産を漏れなく調べ、評価額・証拠資料・分割案・税務区分・登記情報まで一体で整理するための実務設計を解説します。

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財産目録の作り方と Excelテンプレート
相続財産を漏れなく調べ、評価額・証拠資料・分割案・税務区分・登記情報まで一体で整理するための実務設計を解説します。
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  • 財産目録の作り方と Excelテンプレート
  • 相続財産を漏れなく調べ、評価額・証拠資料・分割案・税務区分・登記情報まで一体で整理するための実務設計を解説します。

POINT 1

  • 要旨
  • まず全体像、重要期限、確認資料を押さえます。
  • データ層
  • 一覧で先に把握することが重要なのは、本文の長い手続や数値を、目的、期限、確認資料に分けて読み進められるためです。
  • 各項目から、まず確認する軸を読み取ってください。

POINT 2

  • 1. 財産目録とは何か
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 1.1 財産目録の定義
  • 1.2 「財産目録」と「遺産目録」と「相続税申告用明細」の違い
  • 1.3 財産目録は「一度作って終わり」ではない

POINT 3

  • 2. 財産目録が必要になる相続の場面
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 2.1 遺産分割協議
  • 2.2 遺産分割調停、審判
  • 2.3 相続税申告

POINT 4

  • 3. 財産目録作成の法的、税務的前提
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 3.1 相続開始、相続人、相続財産
  • 3.3 遺産分割対象と相続税対象はずれる
  • 3.4 価額には目的がある

POINT 5

  • 4. Excelテンプレートの設計思想
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 4.1 財産目録のExcelは「見た目の表」ではなく「監査可能なデータベース」にする
  • 4.2 推奨ブック構成
  • 4.3 中核テーブルの列設計

POINT 6

  • 5. 財産カテゴリ別の作り方
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 5.1 預貯金
  • 5.2 現金
  • 5.3 不動産

POINT 7

  • 6. Excelテンプレートで使う数式
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 6.1 合計の基本
  • 6.2 分類別集計
  • 6.3 相続人名の参照

POINT 8

  • 7. 財産目録作成の実務手順
  • 相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 7.1 手順1 ― 作業用フォルダを作る
  • 7.2 手順2 ― 被相続人と相続人の基本情報を記録する
  • 7.3 手順3 ― 財産の手掛かりを集める

まとめ

  • 財産目録の作り方と Excelテンプレート
  • 要旨:まず全体像、重要期限、確認資料を押さえます。
  • 1. 財産目録とは何か:相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 2. 財産目録が必要になる相続の場面:相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

要旨

まず全体像、重要期限、確認資料を押さえます。

次の3つの項目は、このページの読み方を整理したものです。一覧で先に把握することが重要なのは、本文の長い手続や数値を、目的、期限、確認資料に分けて読み進められるためです。各項目から、まず確認する軸を読み取ってください。

LEGAL

法律層

相続人、遺産分割対象財産、遺言、遺留分、相続放棄、調停や審判を整理します。

TAX

税務層

相続税評価額、みなし相続財産、非課税財産、債務控除、申告期限を整理します。

DATA

データ層

財産ID、分類、名義、評価額、証拠資料、取得予定者、争点、確認状況を管理します。

相続における財産目録は、被相続人の財産と債務を一覧化するだけの表ではありません。相続人間の協議では「何が遺産か」「いくらで見るか」「誰が取得するか」が問題となり、相続税申告では「相続税評価額」「債務控除」「みなし相続財産」「非課税財産」「特例の適用」が問題となります。家庭裁判所で遺産分割調停を行う場合には、裁判所が土地、建物、現金、預貯金、株式等の遺産目録書式を公開している。相続税では、課税価格から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算する考え方が基本であり、基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

また、2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっており、不動産を相続したことを知った日等から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく義務を怠った場合には10万円以下の過料の対象となる可能性があります。 したがって、財産目録の作成は、相続人間の話し合いの準備であり、税務、登記、金融機関、裁判所、将来の紛争予防のための基礎資料です。

このページでは、財産目録の作り方とExcelテンプレートを、次の三層で設計する。

  1. 法律層 ― 相続人、遺産分割対象財産、遺言、遺留分、特別受益、寄与分、相続放棄、利益相反、調停、審判を整理する層。
  2. 税務層 ― 相続税がかかる財産、みなし相続財産、非課税財産、債務控除、葬式費用、評価方法、申告期限、税額軽減を整理する層。
  3. データ層 ― Excelで、財産ID、分類、名義、評価額、評価根拠、証拠資料、取得予定者、争点、確認状況を管理する層。

この三層を分けずに一枚の表に詰め込むと、相続人間の合意用の価額と税務申告用の価額が混同され、生命保険金や死亡退職金の扱いを誤り、不動産の特定事項が不足し、債務や葬式費用の控除判断が曖昧になります。財産目録は、相続の入口で作る「仮説表」であり、証拠収集と専門家確認によって「実務で使える確定表」へ育てる必要があります。

Section 01

1. 財産目録とは何か

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

1.1 財産目録の定義

財産目録とは、相続に関係する財産、債務、評価額、権利関係、証拠資料、確認状況を、相続手続で利用できる形に整理した一覧です。一般には「遺産の一覧表」と説明されるが、実務上は少なくとも次の情報を含む必要があります。

次の表は「1. 財産目録とは何か」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

項目内容重要性
財産の特定口座番号、不動産の所在地番、証券口座、保険証券番号など同じ種類の財産が複数ある場合に混同を防ぐ
名義被相続人名義、共有名義、家族名義、法人名義など遺産性、名義預金、共有持分の検討に関わる
財産分類預貯金、不動産、有価証券、保険、動産、債権、事業用資産など評価方法と証拠資料が変わる
評価額相続人協議用価額、相続税評価額、時価、帳簿価額など遺産分割、相続税、遺留分、代償金の前提になる
評価基準日死亡日、協議日、売却見込日、鑑定日などどの時点の価額かを明確にする
証拠資料残高証明書、通帳、登記事項証明書、固定資産評価証明書など説明責任と裁判所、税務署、金融機関対応に必要
確認状況未確認、確認中、証拠入手済、専門家確認済など作業漏れを防ぐ
争点名義預金疑い、使途不明金、不動産評価争いなど弁護士や税理士へ渡す論点整理になる

相続税の世界では、相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その取得した財産にかかる。国税庁は、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋のほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものを財産に含める考え方を示している。

1.2 「財産目録」と「遺産目録」と「相続税申告用明細」の違い

相続では似た言葉が混在する。実務上は、目的別に言葉を使い分けると誤解が減る。

次の表は「1. 財産目録とは何か」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

用語主な目的対象価額の考え方利用場面
財産目録相続全体の把握財産、債務、みなし財産、争点、証拠複数の価額を併記初期整理、専門家相談、相続人説明
遺産目録遺産分割対象の特定遺産分割の対象となる財産協議用価額、時価、評価合意額遺産分割協議、調停、審判
相続税申告用財産明細相続税の課税価格計算課税対象財産、非課税、債務控除等相続税評価額税理士相談、相続税申告
金融機関提出用一覧解約、払戻し、名義変更当該金融機関の口座や商品残高、商品ごとの基準銀行、証券会社、保険会社の手続
登記用不動産一覧相続登記土地、建物、持分登録免許税、不動産の特定情報法務局、司法書士への依頼

重要なのは、遺産分割の対象になる財産と、相続税の対象になる財産が完全に一致するとは限らないことです。典型例は死亡保険金です。死亡保険金は受取人固有の権利とされる場面がある一方、税務では被相続人が保険料を負担していた生命保険金等について、一定の場合に相続等により取得したものとみなして相続税の課税対象とする。相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。

1.3 財産目録は「一度作って終わり」ではない

財産目録は、次のように段階的に精度を上げる資料です。

次の表は「1. 財産目録とは何か」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

段階名称内容主な利用者
第1段階仮目録家族が把握している財産を洗い出す相続人、FP、行政書士
第2段階証拠付き目録残高証明書、登記事項証明書、評価証明書を紐付ける弁護士、司法書士、税理士
第3段階評価目録税務評価、時価、鑑定評価、売却見込額を整理する税理士、不動産鑑定士、宅建業者
第4段階分割案目録取得予定者、代償金、共有、売却予定を記載する相続人、弁護士、司法書士
第5段階手続完了目録解約、名義変更、登記、申告、納付の完了状況を記録する全員

この段階管理がないと、古い目録を見て協議した相続人と、更新後の評価資料を見ている相続人の間で認識のずれが生じます。Excelでは「版数」「更新日」「更新者」「変更内容」を必ず残する必要があります。

Section 02

2. 財産目録が必要になる相続の場面

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

2.1 遺産分割協議

遺産分割協議では、相続人全員が、どの財産を誰が取得するかについて合意する。合意内容は遺産分割協議書にまとめられることが多い。協議書を作る前に、財産目録が不十分であれば、合意後に財産が見つかる、評価額が違う、債務を見落とす、代償金が払えない、という問題が起こります。

協議用の財産目録では、相続税評価額だけではなく、相続人が納得しやすい時価や売却見込額を併記することが重要です。例えば、土地の相続税評価額は路線価方式や倍率方式を基礎にすることが多いが、相続人間で売却前提の協議をするなら、仲介査定や鑑定評価も必要になり得る。

2.2 遺産分割調停、審判

相続人間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停や審判が問題となります。裁判所は、遺産分割調停の申立書に加え、土地遺産目録、建物遺産目録、現金、預貯金、株式等遺産目録の書式を公開している。

家庭裁判所で重要なのは、財産の特定と証拠です。土地なら所在、地番、地目、地積、持分を登記事項証明書どおりに記載する。建物なら所在、家屋番号、種類、構造、床面積を確認します。預貯金なら金融機関名、支店名、種別、口座番号、基準日残高を確認します。Excelテンプレートを作る段階で、裁判所書式に転記しやすい列を用意しておくと、調停移行時の負担が大きく下がる。

2.3 相続税申告

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっている。申告期限までに申告しなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告した場合には、加算税や延滞税がかかる場合があります。

相続税の要否を判断する初期段階では、正味の遺産額が基礎控除額を超えるかを確認します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。 ただし、税務判断では、相続時精算課税適用財産、暦年課税に係る生前贈与加算、生命保険金、死亡退職金、債務控除、葬式費用、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減などの確認が必要になります。財産目録には、税務上の処理区分を記録する列を設ける必要があります。

2.4 相続登記

不動産が相続財産に含まれる場合、財産目録は登記手続の入口にもなる。2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まり、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。遺産分割が成立した場合にも、遺産分割成立日から3年以内にその内容を踏まえた登記を申請する追加的義務があります。

Excelテンプレートでは、不動産について次の列を設ける必要があります。

次の表は「2. 財産目録が必要になる相続の場面」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

内容
不動産種別土地、建物、区分所有建物、借地権、共有持分など
登記所在登記事項証明書どおりの所在
地番、家屋番号住所ではなく登記上の番号
持分共有の場合の分子、分母
固定資産評価額登録免許税、税務評価の資料になる
相続登記予定者誰の名義にするか
登記完了日手続管理用
司法書士確認要、済、対象外

2.5 金融機関、証券会社、生命保険会社の手続

預貯金や証券口座は、死亡の事実が金融機関に伝わると取引が制限されることが多い。手続には、戸籍、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書、印鑑証明書、相続届、残高証明書などが必要になります。金融機関ごとに書式が異なるため、財産目録には「提出済」「不足書類」「払戻完了日」「入金先」を記録しておくとよい。

法定相続情報証明制度を利用する場合、戸籍関係書類と法定相続情報一覧図を法務局に提出し、認証文付きの写しの交付を受けることができます。これは各種相続手続で戸籍束の代わりに利用できる場面があります。

Section 03

3. 財産目録作成の法的、税務的前提

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

3.1 相続開始、相続人、相続財産

民法上、相続は死亡によって開始する。相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは承継されない。

この「権利義務を承継する」という点が重要です。相続財産には、預貯金、不動産、有価証券のようなプラスの財産だけでなく、借入金、未払医療費、未払税金、保証債務の問題、事業上の未払金のようなマイナスの要素も関係する。もっとも、税務上の債務控除の対象になるかは別問題であり、国税庁は、相続税を計算するときは被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができると説明しています。

3.2 相続の3つの期限

財産目録作成では、次の期限を意識する必要があります。

次の表は「3. 財産目録作成の法的、税務的前提」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

期限起算点内容財産目録との関係
3か月自己のために相続の開始があったことを知った時相続放棄の申述期間債務超過かどうかを早急に把握する
10か月被相続人が死亡したことを知った日の翌日相続税申告、納税課税価格と評価資料を整える
3年不動産取得を知った日、または遺産分割成立日相続登記申請義務不動産一覧と登記予定者を確定する

相続放棄は、民法により自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないとされており、裁判所も相続の放棄の申述手続でこの期間を案内している。

3.3 遺産分割対象と相続税対象はずれる

実務上、最も多い誤りは「相続税の財産一覧」と「遺産分割の対象一覧」を同一視することです。

次の表は「3. 財産目録作成の法的、税務的前提」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

財産、権利遺産分割での位置付け相続税での位置付けExcel上の扱い
被相続人名義の預貯金原則として分割対象課税対象財産明細に記載
被相続人名義の不動産原則として分割対象課税対象不動産明細に記載
受取人指定の死亡保険金受取人固有財産と整理される場面ありみなし相続財産になり得る遺産分割対象フラグと税務対象フラグを分ける
死亡退職金支給規程や受取人指定により判断みなし相続財産になり得る退職金シートで別管理
墓地、仏壇等祭祀財産として別問題非課税財産になる場合ありメモまたは非課税財産欄
名義預金疑い実質的に遺産か争点課税対象とされる可能性争点欄と証拠欄を必ず設ける
生前贈与原則として既に移転済み加算、特別受益、遺留分で問題生前移転管理シートに記載

このずれをExcelで管理するため、各財産行には、少なくとも次の2列を置く必要があります。

遺産分割対象区分 ― 対象、対象外、要確認、争点
相続税対象区分 ― 本来の相続財産、みなし相続財産、非課税、債務控除、対象外、要税理士確認

3.4 価額には目的がある

財産目録で「評価額」とだけ書くのは危険です。評価額には目的があります。

次の表は「3. 財産目録作成の法的、税務的前提」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

価額の種類目的
相続開始日残高預貯金、有価証券、債務の基準死亡日時点の残高証明書
相続税評価額相続税申告路線価評価、固定資産税評価額、上場株式評価
遺産分割協議用価額相続人間の公平不動産鑑定評価、仲介査定、合意評価
売却見込額売却して分ける場合査定価格、想定手取額
清算後手取額税金、仲介手数料、解体費等控除後不動産売却後の分配計算
帳簿価額事業、法人、会計分析会社の貸借対照表上の価額

国税庁は、宅地は路線価方式または倍率方式で評価し、家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額によって評価すると説明しています。賃貸されている土地や家屋については権利関係に応じて評価額が調整される。 上場株式については、原則として課税時期の最終価格で評価し、課税時期の属する月、その前月、その前々月の毎日の最終価格の月平均額のうち一定の最も低い価額を参照する仕組みがあります。

Section 04

4. Excelテンプレートの設計思想

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

4.1 財産目録のExcelは「見た目の表」ではなく「監査可能なデータベース」にする

相続の財産目録をExcelで作る場合、見やすい表を作るだけでは不十分です。後から専門家、相続人、裁判所、税務署、金融機関に説明できるよう、次の原則を守る。

  1. 一財産一行 ― 一つの口座、一筆の土地、一棟の建物、一銘柄の株式を原則として一行で記録します。
  2. IDを付ける ― 財産ID、証拠ID、相続人ID、債務IDを付け、資料と紐付ける。
  3. 名義と実質を分ける ― 名義人、実質帰属の疑い、共有持分を別列にする。
  4. 価額を分ける ― 相続税評価額、協議用価額、売却見込額、帳簿価額を分ける。
  5. 証拠を必ず記録する ― 証拠資料名、発行日、基準日、ファイル保管場所を記録します。
  6. 確認状況を可視化する ― 未確認、請求中、資料入手済、専門家確認済を選択式にする。
  7. 税務と分割を分ける ― 遺産分割対象区分と相続税対象区分を別列にする。
  8. 変更履歴を残す ― 更新日、更新者、変更内容を記録します。
  9. 数式セルを保護する ― 入力欄と計算欄を分ける。
  10. 印刷提出用と作業用を分ける ― 家族共有用、専門家提出用、裁判所転記用を分ける。

4.2 推奨ブック構成

財産目録の作り方とExcelテンプレートでは、次のシート構成を推奨する。

次の表は「4. Excelテンプレートの設計思想」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

シート名目的主な利用者
00_README使い方、注意、版管理全員
01_基本情報被相続人、死亡日、作成者、相続税期限等相続人、専門家
02_相続人相続人、法定相続分、連絡先、代理人弁護士、司法書士、税理士
03_財産明細全財産の統合一覧全員
04_不動産詳細土地、建物、区分所有、借地権司法書士、税理士、不動産鑑定士
05_預貯金詳細金融機関、支店、口座、残高相続人、税理士
06_有価証券詳細上場株式、投信、債券、非上場株式税理士、公認会計士
07_保険退職金死亡保険金、死亡退職金税理士、保険会社担当
08_債務葬式費用借入金、未払金、葬式費用税理士、相続人
09_生前移転特別受益生前贈与、貸付、立替、使途不明金弁護士、税理士
10_評価根拠証拠資料、発行日、保管先全員
11_分割案取得予定者、代償金、共有、売却弁護士、相続人
12_税務概算課税価格、基礎控除、概算税理士確認前の暫定用
13_手続進捗銀行解約、登記、申告、納付相続人、専門家
14_チェックリスト漏れ防止全員
99_設定入力規則リスト、分類マスタ作成者

Excelではテーブル機能を使うと、列名による構造化参照が利用できます。Microsoftは、Excelテーブルで列ヘッダー名を用いた構造化参照が可能で、データの追加や削除に応じて参照が調整されると説明しています。 財産目録では行が増え続けるため、通常のセル範囲よりもテーブル化が有効です。

4.3 中核テーブルの列設計

財産目録の中核は「03_財産明細」です。推奨列は次のとおり。

次の表は「4. Excelテンプレートの設計思想」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

列名入力例解説
財産IDA-0001全シートで使う一意の番号
大分類不動産不動産、預貯金、有価証券、保険、動産、債権、事業、その他
小分類宅地宅地、建物、普通預金、上場株式など
財産名自宅土地相続人が理解しやすい名称
名義人被相続人被相続人、配偶者、子、共有、法人など
実質帰属被相続人、要確認名義預金等の検討欄
特定情報東京都〇〇区〇〇地番口座番号下4桁、不動産地番、証券銘柄など
数量100面積、株数、口数、個数など
単位円、㎡、株、口、個など
評価基準日2026/1/10死亡日、評価日など
相続税評価額30000000税務用
協議用価額35000000分割協議用
売却見込額34000000売却前提の場合
債務控除対象対象外債務の場合に対象、対象外、要確認
遺産分割対象区分対象対象、対象外、要確認、争点
相続税対象区分本来の相続財産本来、みなし、非課税、対象外、要確認
取得予定者IDH-001分割案と連動
証拠IDE-0001評価根拠シートと連動
確認状況資料入手済未確認、請求中、資料入手済、専門家確認済
争点なし名義、評価、使途不明金など
備考固定資産税通知書あり自由記述

CSVヘッダーとしてExcelに貼り付ける場合は、次を使います。

財産ID,大分類,小分類,財産名,名義人,実質帰属,特定情報,数量,単位,評価基準日,相続税評価額,協議用価額,売却見込額,債務控除対象,遺産分割対象区分,相続税対象区分,取得予定者ID,証拠ID,確認状況,争点,備考

4.4 入力規則の推奨値

入力ミスを減らすには、Excelのデータの入力規則を使います。Microsoftは、データ検証を使ってセルに入力できる値を制限でき、ドロップダウンリストも作成できると説明しています。

推奨リストは次のとおりです。

大分類,不動産,預貯金,現金,有価証券,保険,退職金,動産,債権,事業用資産,知的財産,デジタル資産,債務,葬式費用,生前移転,その他
遺産分割対象区分,対象,対象外,要確認,争点,分割済
相続税対象区分,本来の相続財産,みなし相続財産,非課税財産,債務控除,葬式費用,対象外,要税理士確認
確認状況,未確認,請求中,資料入手済,評価中,専門家確認済,手続完了,保留
争点区分,なし,名義,評価,使途不明金,特別受益,寄与分,遺留分,債務,不動産境界,事業承継,その他
Section 05

5. 財産カテゴリ別の作り方

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

5.1 預貯金

預貯金は相続財産の中で最も見つけやすい一方、争いにもなりやすい。死亡直前の引出し、家族による管理、名義預金、解約済口座、ネット銀行、外貨預金、定期預金の経過利息が問題になります。

入力する列

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

金融機関名〇〇銀行
支店名新宿支店
口座種別普通、定期、外貨、貯蓄
口座番号下4桁1234
名義人被相続人
死亡日残高5,000,000
既経過利息12,000
残高証明書発行日2026/2/1
取引履歴取得範囲2023/1/1から死亡日まで
解約完了日2026/4/10
払戻金入金先相続財産管理口座

証拠資料

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

資料目的
残高証明書死亡日時点の残高確認
通帳、Web明細入出金、直前引出し確認
定期預金明細元本、利息、満期確認
取引履歴使途不明金、名義預金、贈与の検討
金融機関の相続届解約手続管理

実務上の注意

預貯金は、通帳に見える残高だけを記載してはいけない。定期預金、積立、外貨預金、投資信託、公共債、貸金庫、金融機関内の別支店口座があります。死亡前後の大口出金がある場合は、「財産明細」と別に「取引履歴分析」シートを作り、日付、金額、出金方法、引出者、使途、証拠を記録します。

5.2 現金

現金は証拠化が難しい。自宅、金庫、財布、貸金庫、事務所、店舗、仏壇周辺などで発見されることがあります。現金は、発見日、発見場所、発見者、立会人、写真、保管者を記録します。

推奨列

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

内容
現金IDC-0001
発見日2026/1/12
発見場所自宅金庫
金額800,000
発見者長男
立会人配偶者、長女
写真有無あり
保管者配偶者
入金先相続財産管理口座

現金は、後で「誰かが抜いた」「もっとあったはず」と疑われやすい。発見時に封筒、紙幣束、金庫内の状態を写真で残し、複数人で確認するのが望ましい。

5.3 不動産

不動産は、相続財産の中で最も評価と特定が難しい。土地は所在、地番、地目、地積、持分、利用状況、借地借家関係、私道、境界、都市計画、固定資産評価、路線価、倍率、貸宅地、貸家建付地などを確認します。建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積、築年数、固定資産評価、賃貸状況、未登記部分を確認します。

土地シートの推奨列

財産ID,所在,地番,地目,地積㎡,持分分子,持分分母,利用状況,権利区分,路線価,倍率,固定資産評価額,相続税評価額,協議用価額,評価方法,境界確認,賃貸借有無,証拠ID,司法書士確認,税理士確認,不動産鑑定要否,備考

建物シートの推奨列

財産ID,所在,家屋番号,種類,構造,床面積㎡,持分分子,持分分母,固定資産評価額,相続税評価額,賃貸状況,未登記有無,火災保険,住宅ローン,証拠ID,司法書士確認,税理士確認,備考

証拠資料

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

資料取得先、確認先目的
登記事項証明書法務局所在、地番、地目、持分、抵当権確認
固定資産評価証明書市区町村固定資産評価額確認
名寄帳市区町村見落とし不動産の確認
公図、地積測量図法務局位置、形状、境界の参考
賃貸借契約書自宅、管理会社貸家、貸宅地、敷金確認
固定資産税納税通知書自宅所有不動産の手掛かり
路線価図、評価倍率表国税庁相続税評価の基礎
仲介査定書不動産業者売却見込額、協議用価額
不動産鑑定評価書不動産鑑定士争いがある場合の評価根拠

国税庁の財産評価基準書は、令和7年1月1日から12月31日までの間に相続、遺贈、贈与により取得した財産に係る相続税および贈与税の評価に適用される基準を掲載している。

実務上の注意

住所と地番は違うことがあります。財産目録に住所だけを書くと、登記手続や調停資料として不十分になります。相続登記や裁判所提出を意識するなら、登記事項証明書の表記をそのまま転記する列を用意する。

未登記建物、増築部分、私道持分、共有道路、農地、山林、崖地、借地権、底地、賃貸中不動産、被相続人が実質的に所有するが名義が古い不動産は、専門家確認が必要です。

5.4 上場株式、投資信託、債券

証券会社の残高報告書、取引報告書、特定口座年間取引報告書、保有銘柄一覧を確認します。上場株式は、国税庁のタックスアンサーで、課税時期の最終価格を原則としつつ、課税時期の属する月、前月、前々月の毎日の最終価格の月平均額も関係すると説明されている。

推奨列

財産ID,証券会社,支店,口座区分,銘柄コード,銘柄名,数量,単価,死亡日終値,死亡月平均,前月平均,前々月平均,採用単価,相続税評価額,協議用価額,証拠ID,税理士確認,備考

実務上の注意

証券口座には、株式だけでなく、投資信託、MRF、外貨建MMF、債券、外国株、信用取引、貸株、未受領配当金が含まれることがあります。相続税評価額の計算は、商品ごとに異なるため、税理士確認欄を設ける。

5.5 非上場株式、会社持分、事業用資産

被相続人が会社経営者、役員、同族株主、個人事業主である場合、財産目録は一気に難しくなります。非上場株式は、取引相場のない株式として、会社規模、株主区分、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式などの評価問題が生じます。国税庁は、取引相場のない株式の評価について、同族株主以外の株主が取得した株式では原則的評価方式に代えて配当還元方式で評価する場合があると説明しています。

推奨列

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

内容
会社名株式会社〇〇
法人番号任意
株式数1000株
発行済株式数10000株
持株割合10%
株主区分同族株主、少数株主など
評価方式要税理士確認
直近決算書有無あり
株主名簿有無あり
定款有無あり
事業承継論点後継者未定

非上場株式は、家族だけで評価するのは危険です。税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士、事業承継に詳しい金融機関の連携が必要な領域です。

5.6 生命保険金、死亡退職金

生命保険金は、遺産分割対象かどうかと相続税対象かどうかを分けて考える。国税庁は、被相続人の死亡によって取得した生命保険金等で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になると説明しています。相続人が受け取った死亡保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。

死亡退職金についても、相続人が取得した退職手当金等には、500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。

保険シートの推奨列

財産ID,保険会社,証券番号,契約者,被保険者,保険料負担者,受取人,保険種類,死亡保険金額,非課税枠適用,課税対象額,遺産分割対象区分,相続税対象区分,請求状況,入金日,証拠ID,税理士確認,備考

注意点

保険は契約者、被保険者、保険料負担者、受取人の組合せで税務が変わります。財産目録では「保険金額」だけでなく、契約構造を列として持つ必要があります。

5.7 動産、貴金属、自動車、美術品

動産は、家族が軽視しがちだが、高価な時計、宝石、金地金、美術品、骨董、車両、船舶、コレクション、会員権がある場合は相続税と遺産分割の対象になり得る。

推奨列

次の表は「5. 財産カテゴリ別の作り方」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

内容
品目腕時計、金地金、自動車など
ブランド、型番〇〇
数量1
保管場所自宅金庫
証拠写真、鑑定書、購入証明
評価方法買取査定、鑑定、相場
協議用価額1,000,000
相続税評価額要確認

高価な動産は、写真を撮る、査定書を取る、保管者を記録する、勝手に売却しないという管理が重要です。

5.8 貸付金、未収金、損害賠償請求権、知的財産

被相続人が誰かに貸していた金銭、事業上の売掛金、役員貸付金、未収賃料、未収配当、損害賠償請求権、著作権、特許権、商標権も財産になり得る。国税庁は、財産には特許権や著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものが含まれると説明しています。

推奨列

財産ID,権利種類,相手方,契約日,元本,利率,未収額,回収可能性,証拠資料,時効論点,弁護士確認,税理士確認,備考

回収可能性が低い債権を額面どおりに載せると、相続人間の協議や税務で問題になります。契約書、入金履歴、相手方の状況、時効、回収見込みを確認します。

5.9 デジタル資産、ネット銀行、暗号資産

近年は、ネット銀行、ネット証券、電子マネー、ポイント、暗号資産、クラウド会計、サブスクリプション収入、電子書籍印税、SNS収益、アフィリエイト報酬が相続財産に関係する。暗号資産については、国税庁が暗号資産等に関する税務上の取扱いFAQを公表している。

デジタル資産では、アクセス情報の扱いが問題になります。パスワードそのものを相続人間の共有Excelに書くのは危険です。Excelには「サービス名」「口座の存在」「管理者」「照会先」「証拠資料」「アクセス権確認状況」を書き、パスワードや秘密鍵は安全な別管理にする。

5.10 債務、未払金、保証、葬式費用

債務は、相続放棄判断と相続税計算に大きく影響する。国税庁は、相続税を計算するとき、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができると説明しています。 ただし、保証債務などは原則として債務控除の対象にならない場面があるため、税理士確認が必要です。

債務シートの推奨列

債務ID,債権者,債務種類,契約番号,元本,未払利息,合計額,死亡日残高,担保有無,保証人有無,証拠資料,債務控除対象区分,支払予定者,支払日,税理士確認,弁護士確認,備考

葬式費用シートの推奨列

費用ID,支払先,内容,支払日,支払者,金額,領収書有無,葬式費用控除区分,香典充当有無,証拠ID,税理士確認,備考

葬式費用は、領収書と支払者を明確にします。香典返し、法要、墓石、仏壇などは税務上の扱いが異なる可能性があるため、税理士確認欄を設ける。

Section 06

6. Excelテンプレートで使う数式

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

6.1 合計の基本

財産明細をExcelテーブル tblAssets にした場合、総額は次のように計算できます。

=SUM(tblAssets[相続税評価額])

遺産分割対象だけを集計する場合は、次のようにする。

=SUMIFS(tblAssets[協議用価額],tblAssets[遺産分割対象区分],"対象")

Microsoftは、SUMIFS関数について、複数の検索条件に一致するすべての引数を合計する関数と説明しています。

6.2 分類別集計

不動産だけを集計する。

=SUMIFS(tblAssets[相続税評価額],tblAssets[大分類],"不動産")

未確認の財産額を集計する。

=SUMIFS(tblAssets[相続税評価額],tblAssets[確認状況],"未確認")

争点がある財産を集計する。

=SUMIFS(tblAssets[協議用価額],tblAssets[遺産分割対象区分],"争点")

6.3 相続人名の参照

tblHeirs に相続人IDと氏名を登録し、財産明細に取得予定者IDを入力する場合、XLOOKUPで氏名を表示できます。Microsoftは、XLOOKUP関数について、範囲または配列を検索し、最初に見つかった一致に対応する項目を返す関数と説明しています。

=XLOOKUP([@取得予定者ID],tblHeirs[相続人ID],tblHeirs[氏名],"未設定")

6.4 基礎控除の概算

相続税の基礎控除額は、次のように計算できます。ここで 法定相続人数 は相続人シートで集計する。

=30000000+6000000*法定相続人数

ただし、相続放棄者がいる場合の法定相続人の数、養子の人数制限など、税務上の人数計算には専門的判断が必要です。国税庁も、法定相続人の数は相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいうと説明しています。

6.5 入力漏れ警告

評価根拠が未入力なら警告する。

=IF([@証拠ID]="","証拠未登録","")

相続税対象なのに評価額が0なら警告する。

=IF(AND([@相続税対象区分]<>"対象外",[@相続税評価額]=0),"評価額確認","")

取得予定者が未設定なら警告する。

=IF(AND([@遺産分割対象区分]="対象",[@取得予定者ID]=""),"取得者未設定","")

6.6 共有持分の計算

不動産共有持分の評価額を計算する場合、全体評価額に持分割合を掛ける。

=[@全体評価額]*[@持分分子]/[@持分分母]

持分分母が空欄の場合にエラーを避ける。

=IFERROR([@全体評価額]*[@持分分子]/[@持分分母],"")

6.7 代償金の概算

相続人ごとの取得額と法定相続分との差額を見たい場合、次のような考え方で集計する。

取得額=SUMIFS(tblAssets[協議用価額],tblAssets[取得予定者ID],[@相続人ID])
法定相続分額=遺産分割対象総額*[@法定相続割合]
差額=取得額-法定相続分額

ただし、代償金は単なる算式だけで決めるものではありません。不動産を取得する人の資力、税金、売却可能性、居住継続、遺言、特別受益、寄与分、遺留分などを考慮する必要があります。

Section 07

7. 財産目録作成の実務手順

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

7.1 手順1 ― 作業用フォルダを作る

まず、電子データと紙資料の保管ルールを決める。

推奨フォルダ構成は次のとおり。

相続_被相続人氏名_YYYYMMDD死亡
  00_管理
  01_戸籍法定相続情報
  02_財産目録Excel
  03_預貯金
  04_不動産
  05_証券保険
  06_債務葬式費用
  07_税務
  08_登記
  09_遺産分割協議
  10_調停裁判
  99_旧版

ファイル名には日付と版数を付ける。

property_inventory_v01_2026-02-01.xlsx
property_inventory_v02_2026-02-15.xlsx
property_inventory_v03_tax_review_2026-03-01.xlsx

7.2 手順2 ― 被相続人と相続人の基本情報を記録する

最初に、被相続人の氏名、住所、生年月日、死亡日、本籍、最後の住所地、職業、事業の有無、遺言の有無を記録します。相続人については、氏名、続柄、生年月日、住所、連絡先、法定相続分、代理人、未成年者、成年後見、行方不明、相続放棄予定の有無を記録します。

相続人が未成年者や成年被後見人であり、共同相続人との間で利益相反がある場合、特別代理人等の問題が起こり得る。相続人シートに「利益相反確認」列を設けるとよい。

7.3 手順3 ― 財産の手掛かりを集める

財産調査では、次の資料を確認します。

次の表は「7. 財産目録作成の実務手順」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

資料見つかる可能性のある財産
通帳、キャッシュカード預貯金、定期預金
郵便物証券、保険、税金、借入、会員権
固定資産税納税通知書不動産
確定申告書不動産所得、配当、事業、貸付金
源泉徴収票勤務先、退職金
保険証券生命保険、損害保険
スマートフォン、メールネット銀行、ネット証券、暗号資産
金庫、貸金庫現金、権利証、貴金属
登記識別情報、権利証不動産
契約書賃貸借、貸付、売買、保証
会社資料非上場株式、役員貸付金、事業承継

この段階の財産目録は不完全でも構いません。重要なのは、未確認欄を残し、調査中であることを可視化することです。

7.4 手順4 ― 証拠資料を取得する

次に、各財産の証拠資料を取得する。預貯金なら残高証明書、取引履歴、不動産なら登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳、有価証券なら残高証明書、取引明細、保険なら保険金支払通知書、債務なら借入残高証明書、請求書、領収書です。

Excelでは、証拠資料を「E-0001」のようにID管理します。

証拠ID,資料名,発行者,発行日,基準日,対象財産ID,原本保管者,電子ファイル名,確認者,備考
E-0001,〇〇銀行残高証明書,〇〇銀行,2026/2/1,2026/1/10,A-0001,長男,03_預貯金/E-0001.pdf,税理士,死亡日残高

7.5 手順5 ― 評価額を入力する

評価額は目的別に入力します。相続税評価額、協議用価額、売却見込額を分ける。税務評価は税理士の確認を受ける。不動産の協議用価額は、不動産鑑定士や不動産仲介業者の査定を参考にすることがあります。境界、面積、私道、借地借家、共有、農地、建築制限がある場合は、土地家屋調査士、不動産鑑定士、司法書士、不動産業者の確認が必要になります。

7.6 手順6 ― 分割案を作る

財産ごとに取得予定者を入力し、相続人ごとの取得額を集計する。代償金が必要な場合は、支払者、受取者、金額、支払期限、担保、遅延時の扱いを整理します。

分割案シートの例は次のとおり。

分割案ID,財産ID,財産名,協議用価額,取得予定者ID,取得方法,代償金支払者ID,代償金受取者ID,代償金額,支払期限,条件,合意状況,備考
P-0001,A-0001,自宅土地,35000000,H-001,単独取得,H-001,H-002,10000000,2026/8/31,登記完了後30日以内,協議中,

7.7 手順7 ― 専門家レビュー

財産目録は、次の順番でレビューすると効率的です。

  1. 税理士レビュー ― 相続税申告が必要か、評価方法、特例、債務控除、保険、退職金、生前贈与を確認します。
  2. 司法書士レビュー ― 不動産の特定、相続登記、法定相続情報、戸籍、登記原因証明情報を確認します。
  3. 弁護士レビュー ― 遺産分割争い、遺留分、特別受益、寄与分、使途不明金、代理人交渉、調停、審判を確認します。
  4. 不動産専門家レビュー ― 評価、境界、売却、分筆、賃貸、空き家、農地、借地借家を確認します。
  5. 会計、事業承継レビュー ― 非上場株式、役員貸付金、個人事業、会社支配権を確認します。

7.8 手順8 ― 相続人へ説明する

財産目録を相続人へ説明するときは、Excelの作業シートをそのまま送るのではなく、次のような「説明用サマリー」を作る。

次の表は「7. 財産目録作成の実務手順」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

区分評価額確認状況主な論点
預貯金12,000,000残高証明書取得済死亡前出金あり
不動産50,000,000評価中自宅評価、共有持分
有価証券8,000,000証券会社確認済評価日確認
保険15,000,000請求済受取人固有、税務確認
債務4,000,000残高証明取得済債務控除確認

相続人に共有する版では、口座番号の全文、マイナンバー、ログイン情報、過度な個人情報は伏せる。争いがある場合は、弁護士に共有方法を確認します。

Section 08

8. 争いがある相続での財産目録

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

8.1 使い込み疑い、使途不明金

死亡前後に大きな出金がある場合、相続人間で使い込み疑いが起こることがあります。この場合、財産目録に単に「預金残高」を書くだけでは足りません。別シートで取引履歴を管理します。

取引ID,金融機関,口座番号下4桁,日付,入出金区分,金額,摘要,取引方法,推定実行者,使途,証拠,確認状況,弁護士確認,備考
T-0001,〇〇銀行,1234,2025/12/15,出金,2000000,ATM,カード,長男,医療費と説明,領収書未提出,確認中,要,

使途不明金は、相続財産そのものの問題だけでなく、不当利得、損害賠償、特別受益、遺留分、税務上の贈与認定の問題にもつながる。相続人どうしで感情的に追及する前に、証拠を時系列に整理することが重要です。

8.2 名義預金

名義預金とは、名義は配偶者や子であっても、実質的には被相続人の財産と評価される可能性がある預金です。財産目録では、被相続人名義以外の口座を無視するのではなく、実質帰属が問題になり得る口座を「要確認」として記録します。

確認ポイントは次のとおりです。

次の表は「8. 争いがある相続での財産目録」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

観点確認内容
原資誰の収入から入金されたか
管理通帳、印鑑、カードを誰が管理していたか
利用名義人が自由に使っていたか
贈与贈与契約、贈与税申告、受贈者の認識があるか
取引履歴定期的な資金移動があるか

8.3 不動産評価争い

不動産評価は、相続人間の紛争で中心争点になりやすい。自宅を取得したい相続人は低く評価したい傾向があり、代償金を受け取りたい相続人は高く評価したい傾向があります。相続税評価額、固定資産評価額、仲介査定、鑑定評価はそれぞれ目的が違う。

財産目録には、複数の評価を併記する。

次の表は「8. 争いがある相続での財産目録」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

評価種類金額作成者作成日目的
固定資産評価額20,000,000市区町村2026/4/1税、登記資料
相続税評価額28,000,000税理士2026/5/1相続税申告
仲介査定額35,000,000不動産会社2026/5/15売却見込
鑑定評価額33,000,000不動産鑑定士2026/6/1争点整理

8.4 特別受益、寄与分、遺留分

生前贈与、住宅取得資金、学費、事業資金援助、借金肩代わり、家業への貢献、介護、療養看護、遺言による偏った配分がある場合、特別受益、寄与分、遺留分が問題になることがあります。

財産目録本体に混ぜると見にくくなるため、別に「生前移転、特別受益、寄与分」シートを作る。

論点ID,相続人ID,区分,日付,金額,内容,証拠,主張者,相手方見解,法的評価,弁護士確認,備考
I-0001,H-002,生前贈与,2020/6/1,5000000,住宅取得資金,振込記録あり,H-001,贈与ではなく貸付と主張,要確認,要,
Section 09

9. 相続税申告を意識した財産目録

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

9.1 相続税がかかる財産

国税庁は、相続税がかかる財産として、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋のほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものを挙げている。 財産目録では「金銭価値があるもの」を広く拾い、その後に税理士が課税対象、非課税、評価不要、対象外を判断する流れが安全です。

9.2 債務控除と葬式費用

債務控除では、被相続人の債務で確実と認められるものを整理します。借入金、未払税金、未払医療費、未払公共料金、クレジットカード未払金、事業上の未払金などが候補になります。ただし、すべてが自動的に控除できるわけではありません。証拠と税理士確認が必要です。

9.3 配偶者の税額軽減

国税庁は、配偶者の税額軽減について、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない制度と説明しています。申告期限までに分割されていない財産は原則として税額軽減の対象にならないが、一定の手続により後日対象になる場合があります。

財産目録では、配偶者が取得する財産だけを抽出できるようにしておくと、税理士との打合せが効率化する。

9.4 小規模宅地等の特例

居住用や事業用の宅地等には、小規模宅地等の特例が関係することがあります。国税庁は、小規模宅地等について、相続税の課税価格に算入する価額の計算上、一定の区分ごとに一定割合を減額する制度を説明しています。

Excelでは、不動産シートに次の列を設ける。

小規模宅地候補,用途区分,被相続人居住有無,同居親族有無,取得予定者,保有継続要件,事業継続要件,適用可否,税理士確認

特例は要件が複雑であり、自己判断で確定させない。財産目録では「候補」として表示し、税理士確認欄を必ず設ける。

9.5 相続税申告に向けたExcelサマリー

税理士へ渡すサマリーは次の形式が使いやすい。

次の表は「9. 相続税申告を意識した財産目録」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

区分相続税評価額非課税、控除課税対象額証拠状況
預貯金12,000,000012,000,000残高証明あり
不動産50,000,000小規模宅地候補要確認評価中
上場株式8,000,00008,000,000評価明細作成中
生命保険15,000,00015,000,0000非課税枠確認中
債務-4,000,000債務控除候補-4,000,000残高証明あり
Section 10

10. 相続登記を意識した財産目録

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

10.1 不動産の特定が最優先

相続登記では、住所ではなく登記記録上の情報が重要です。土地は所在、地番、地目、地積、持分、建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積、持分を正確に入力します。

10.2 相続人申告登記

法務省は、期限内に相続登記の申請をすることが難しい場合に、簡易に相続登記の申請義務を履行する仕組みとして相続人申告登記が設けられたと説明しています。ただし、相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではなく、売却や抵当権設定には別途相続登記が必要であり、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできません。

財産目録では、不動産ごとに次の進捗を管理します。

財産ID,登記必要,相続人申告登記検討,遺産分割成立日,相続登記期限,登記申請日,登記完了日,司法書士,登録免許税概算,備考

10.3 所有不動産の漏れを防ぐ

不動産の漏れは深刻です。固定資産税通知書に記載された物件だけでなく、名寄帳、権利証、過去の売買契約書、相続したまま未登記の不動産、共有持分、私道持分、地方の山林、農地、墓地周辺の土地を確認します。

Section 11

11. 専門職ごとの役割

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

11.1 中核専門職

次の表は「11. 専門職ごとの役割」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

専門職財産目録での役割相談する場面
弁護士紛争、遺留分、使い込み疑い、交渉、調停、審判、訴訟相続人間で対立がある、情報開示に応じない、使途不明金がある
司法書士相続登記、戸籍収集、法定相続情報、登記申請、裁判所提出書類作成不動産がある、相続登記が必要、相続人が多い
税理士相続税申告、財産評価、税務代理、税務調査対応基礎控除を超えそう、不動産や株式がある、特例を使いたい
行政書士紛争、税務、登記申請を除く書類作成支援争いがない遺産分割協議書、相続関係説明図などを整理したい
公証人公正証書遺言生前対策、遺言作成
遺言執行者遺言内容の実現遺言に執行者指定がある、遺言執行が必要
信託銀行等遺言信託、保管、執行、相続手続支援財産規模が大きい、長期管理が必要

11.2 不動産がある場合の専門職

次の表は「11. 専門職ごとの役割」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

専門職役割
不動産鑑定士適正価格、鑑定評価、遺産分割の評価争い対応
土地家屋調査士境界確認、測量、分筆、表示登記
宅地建物取引士、不動産仲介業者相続不動産の売却、査定、重要事項説明、売買契約

11.3 家庭裁判所で関わる人

次の表は「11. 専門職ごとの役割」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

関係者役割
裁判官、家事調停官調停、審判の進行と判断
家事調停委員当事者の話を聴き、合意形成を支援
裁判所書記官調書、記録、手続進行の実務を支える
家庭裁判所調査官必要な事情調査を行う場合がある
鑑定人、専門委員不動産、会社価値、医学、建築等の専門知見を補う
特別代理人等未成年者、後見利用者と共同相続人の利益相反に対応

11.4 会社、特殊財産がある場合の専門職

次の表は「11. 専門職ごとの役割」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

専門職役割
公認会計士非上場株式、財務分析、事業承継、会社価値分析
中小企業診断士後継者育成、経営改善、承継計画
弁理士特許、商標等の知的財産の名義変更、特許庁手続
FP家計、保険、老後資金、全体設計、専門家連携
社会保険労務士遺族年金等、死亡後の社会保険手続

財産目録は、これらの専門職間の共通言語になります。専門家ごとに別々の資料を作るのではなく、同じ財産IDを参照できるようにすると、連携が容易になります。

Section 12

12. セキュリティ、個人情報、証拠保全

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

12.1 Excelファイルの共有リスク

財産目録には、住所、金融機関、口座情報、資産額、家族関係、病歴に近い支出、借入、保険、争点など、非常にセンシティブな情報が含まれる。共有方法を誤ると、相続人間の不信、漏えい、なりすまし、金融犯罪のリスクがあります。

12.2 推奨管理方法

次の表は「12. セキュリティ、個人情報、証拠保全」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

管理項目推奨
ファイル名被相続人名を短縮し、日付と版数を付ける
パスワードExcelファイルに読み取りパスワードを設定する
共有範囲相続人、代理人、専門家に限定する
口座番号家族共有版では下4桁表示にする
原本誰が保管するか記録する
変更履歴更新履歴シートに記録する
バックアップ暗号化された場所に保存する
ログイン情報Excelに書かず、別の安全な方法で管理する

12.3 原本とコピーの扱い

通帳、証券、権利証、登記識別情報、遺言書、保険証券、印鑑証明書、戸籍、固定資産評価証明書は、原本管理が重要です。スキャンデータは便利だが、原本の提出が必要になる場面があります。財産目録の証拠シートに「原本保管者」「原本提出先」「返却日」を記録します。

Section 13

13. よくある失敗と回避策

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

13.1 預金残高だけを見て相続税の要否を判断する

不動産、生命保険、死亡退職金、生前贈与、名義預金、貸付金、未収金を見落とすと、相続税の要否判断を誤る。財産目録は、最初から広いカテゴリで作る。

13.2 住所だけで不動産を記載する

登記手続や調停では、地番、家屋番号、持分が重要になります。住所だけでは不十分です。

13.3 相続税評価額をそのまま遺産分割価額にする

相続税評価額と市場価格は異なる。相続人が納得する価額が必要な場合、不動産鑑定や査定が必要になります。

13.4 生命保険金を遺産分割表にそのまま混ぜる

生命保険金は、受取人、契約者、保険料負担者により法律上、税務上の扱いが変わります。遺産分割対象区分と相続税対象区分を分ける。

13.5 債務を控除できると決めつける

債務控除には要件があります。保証債務、団体信用生命保険付き住宅ローン、香典返し、法要費用などは慎重に確認します。

13.6 ファイルを上書きして履歴を消す

財産目録は更新履歴が重要です。版数管理を徹底する。

13.7 未確認財産を空欄にする

空欄は「存在しない」のか「未確認」なのか分からない。未確認は未確認と入力します。

Section 14

14. 実務サンプル ― 最小構成のExcelテンプレート

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

以下は、最小構成のテンプレートです。まずこの構成で作り、必要に応じて詳細シートを追加する。

14.1 01_基本情報

項目,内容,備考
被相続人氏名,,戸籍どおり
死亡日,,相続税申告期限の起算に関係
最後の住所,,税務署、家庭裁判所、登記で関係
本籍,,戸籍収集の起点
遺言の有無,,自筆、公正証書、法務局保管など
相続税申告期限,,死亡を知った日の翌日から10か月
相続登記期限,,不動産取得を知った日等から3年
作成者,,
版数,V01,
更新日,,

14.2 02_相続人

相続人ID,氏名,続柄,生年月日,住所,法定相続分,相続放棄予定,代理人,未成年成年後見,利益相反確認,連絡状況,備考
H-001,,,,,,,,,,,
H-002,,,,,,,,,,,

14.3 03_財産明細

財産ID,大分類,小分類,財産名,名義人,実質帰属,特定情報,数量,単位,評価基準日,相続税評価額,協議用価額,売却見込額,債務控除対象,遺産分割対象区分,相続税対象区分,取得予定者ID,証拠ID,確認状況,争点,備考
A-0001,預貯金,普通預金,〇〇銀行普通預金,被相続人,被相続人,新宿支店1234,1,口座,,0,0,0,対象外,対象,本来の相続財産,,E-0001,未確認,なし,
A-0002,不動産,宅地,自宅土地,被相続人,被相続人,東京都〇〇区〇〇地番,100,㎡,,0,0,0,対象外,対象,本来の相続財産,,E-0002,未確認,評価,

14.4 08_債務葬式費用

ID,区分,支払先または債権者,内容,金額,支払者,支払日,証拠ID,債務控除または葬式費用区分,税理士確認,備考
L-0001,債務,〇〇銀行,住宅ローン残高,0,,,E-0101,要確認,要,
F-0001,葬式費用,〇〇葬儀社,葬儀費用,0,,,E-0201,要確認,要,

14.5 10_評価根拠

証拠ID,資料名,発行者,発行日,基準日,対象財産ID,原本保管者,電子ファイル名,確認者,備考
E-0001,残高証明書,〇〇銀行,,,A-0001,,,
E-0002,登記事項証明書,法務局,,,A-0002,,,

14.6 11_分割案

分割案ID,財産ID,財産名,協議用価額,取得予定者ID,取得方法,代償金額,合意状況,備考
P-0001,A-0001,〇〇銀行普通預金,0,,按分,0,未協議,
P-0002,A-0002,自宅土地,0,,単独取得,0,未協議,
Section 15

15. 詳細チェックリスト

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

15.1 初期確認

次の表は「15. 詳細チェックリスト」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

チェック内容
死亡日、最後の住所、本籍を確認した
遺言の有無を確認した
相続人の範囲を戸籍で確認中である
相続放棄を検討する債務の有無を確認した
相続税申告期限を記録した
不動産の有無を確認した
相続登記期限を記録した

15.2 財産調査

次の表は「15. 詳細チェックリスト」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

チェック内容
主要銀行の通帳、カード、郵便物を確認した
ネット銀行、ネット証券を確認した
証券会社の残高報告書を確認した
生命保険証券を確認した
固定資産税通知書を確認した
名寄帳を取得した、または取得予定である
登記事項証明書を取得した
車両、貴金属、美術品を確認した
事業用資産、会社株式を確認した
貸付金、未収金を確認した
暗号資産、電子マネー、ポイントを確認した

15.3 債務、費用

次の表は「15. 詳細チェックリスト」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

チェック内容
借入金の残高証明を取得した
クレジットカード未払金を確認した
未払医療費を確認した
未払税金を確認した
保証債務の有無を確認した
葬式費用の領収書を整理した
香典、香典返し、法要費用を分けて記録した

15.4 評価、税務

次の表は「15. 詳細チェックリスト」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

チェック内容
相続税評価額と協議用価額を分けた
小規模宅地等の特例候補を確認した
生命保険金の非課税枠を確認した
死亡退職金の非課税枠を確認した
配偶者の税額軽減の検討が必要か確認した
生前贈与、相続時精算課税を確認した
税理士確認が必要な行にフラグを立てた

15.5 紛争予防

次の表は「15. 詳細チェックリスト」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

チェック内容
すべての相続人に同じ版の資料を共有した
未確認項目を明示した
財産の証拠IDを付けた
使途不明金を別シートで整理した
名義預金疑いを別シートで整理した
不動産評価を複数の観点で整理した
争いがあるため弁護士相談を検討した
Section 16

16. FAQ

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

Q1. 財産目録はいつ作り始めるべきですか。

一般的には、死亡後できるだけ早く着手する必要があります。相続放棄の検討期間は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内であり、相続税申告期限は通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。債務の有無、不動産の有無、相続税の要否を早めに把握することが重要です。

Q2. Excelで作るだけで法的に有効ですか。

一般的には、Excelの財産目録そのものが遺産分割協議書になるわけではありません。Excelは、協議書、相続税申告、相続登記、金融機関手続、調停申立ての基礎資料です。最終的な合意は、遺産分割協議書や調停調書、審判、遺言執行手続などで形になります。

Q3. 財産目録に相続人全員の同意は必要ですか。

一般的には、調査段階の目録に全員の同意までは不要と考えられます。ただし、分割案や評価額を確定資料として使う場合は、相続人間の合意形成が重要です。争いがある場合は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相続税がかからないなら財産目録は不要ですか。

一般的には、相続税がかからない場合でも財産目録は役立ちます。遺産分割、相続登記、預貯金解約、保険請求、債務整理、将来の相続トラブル予防に関係するためです。

Q5. 不動産は固定資産税評価額だけ書けばよいですか。

一般的には、固定資産税評価額だけでは不十分な場合があります。遺産分割では時価や売却見込額、相続税では路線価方式、倍率方式、貸家、貸宅地、小規模宅地等の特例などが問題になります。不動産の状況に応じて専門家確認が必要です。

Q6. 預金は通帳残高でよいですか。

一般的には、死亡日時点の残高証明書を取得することが望ましいとされています。定期預金、経過利息、外貨預金、別支店口座、ネット口座、死亡直前の大口出金も確認対象になります。

Q7. 生命保険金は財産目録に入れますか。

一般的には、生命保険金も一覧に入れておく必要があります。ただし、遺産分割対象区分と相続税対象区分を分けて記録します。受取人、契約者、被保険者、保険料負担者も確認対象になります。

Q8. 借金も財産目録に入れますか。

一般的には、借入金、未払医療費、未払税金、クレジットカード債務、事業債務、保証債務も整理します。相続放棄の判断にも関係します。

Q9. 相続人の一人が資料を見せてくれません。

一般的には、どの資料が不足しているかを一覧化し、金融機関、法務局、市区町村などから取得できる資料を確認します。争いがある場合は、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q10. 名義預金かどうかはExcelで判断できますか。

Excelだけでは判断できません。Excelでは、名義人、原資、管理者、通帳保管者、贈与契約、入出金履歴、名義人の認識を整理します。判断は税理士や弁護士の確認を受ける。

Q11. 財産が後から見つかった場合はどうしますか。

財産目録の版を更新し、発見日、発見者、証拠、評価額、分割への影響、税務申告への影響を記録します。すでに遺産分割協議が成立している場合は、協議書の記載や専門家判断が重要になります。

Q12. Excelの行を削除してよいですか。

原則として削除しない。誤登録の場合も「取消」「対象外」として残し、変更履歴に理由を書く。削除すると、後から説明できなくなる。

Q13. マクロを使うべきですか。

通常は不要です。相続人や専門家がファイルを開けない、セキュリティ警告が出る、改ざん疑いが生じるリスクがあります。基本はテーブル、入力規則、SUMIFS、XLOOKUPで十分です。

Q14. Googleスプレッドシートでもよいですか。

共同編集には便利だが、個人情報、アクセス権、変更履歴、ダウンロード版の管理に注意が必要です。争いがある相続では、誰が何を変更したかを記録できる管理体制が重要です。

Q15. 遺産分割調停にExcelをそのまま出せますか。

裁判所の指定書式や運用に合わせる必要があります。裁判所は遺産分割調停の申立書や土地、建物、現金、預貯金、株式等の遺産目録書式を公開しているため、Excelテンプレートを裁判所書式に転記しやすい列設計にしておくとよい。

Q16. 相続登記のために財産目録で特に必要な情報は何ですか。

土地の所在、地番、地目、地積、持分、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、持分です。住所だけでは足りません。相続登記の義務化も踏まえ、登記予定者と登記期限を管理します。

Q17. 相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらない場合はどうなりますか。

税務上は未分割のまま申告が必要になる場合があります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の扱いに影響することがあるため、税理士に早急に相談します。

Q18. 財産目録を専門家に渡すときのコツはありますか。

財産ID、証拠ID、未確認事項、争点、質問事項を整理して渡す。専門家は、数字だけでなく根拠資料と判断未了の論点を必要とする。

Q19. 相続人が多い場合のExcel設計はどうしますか。

相続人IDを必ず使います。氏名を手入力で繰り返すと表記揺れが起こります。取得予定者、代償金支払者、受取者はIDで入力し、XLOOKUPで氏名を表示する。

Q20. 財産目録の完成とは何ですか。

相続では、完全な意味での完成は手続の進行に応じて変わります。実務上の完成は、財産と債務が網羅され、評価額の根拠があり、相続人間で確認され、税務、登記、金融機関、協議または裁判所手続に使える状態をいう。

Section 17

17. 専門家へ依頼する際の資料セット

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

専門家へ相談する際は、次の資料をセットにする。

次の表は「17. 専門家へ依頼する際の資料セット」の内容を整理したものです。表として確認することが重要なのは、項目ごとの違い、期限、金額、証拠、手続上の意味を見比べやすくするためです。左から順に分類と確認事項を読み取り、未確認の列や資料を把握してください。

資料説明
財産目録Excel最新版、版数付き
証拠資料フォルダ財産ID、証拠IDに対応
戸籍、法定相続情報相続人確認用
遺言書原本、検認、保管制度通知など
固定資産税資料通知書、評価証明、名寄帳
金融機関資料残高証明、通帳、取引履歴
証券資料残高報告書、取引明細
保険資料保険証券、支払通知書
債務資料借入契約、残高証明、請求書
葬式費用資料領収書、支払者メモ
争点メモ使い込み、特別受益、評価争いなど

初回相談では「何をしてほしいか」を明確にします。例えば、弁護士には「相手方に財産開示を求めたい」「使途不明金を検討したい」、税理士には「相続税申告が必要か見てほしい」、司法書士には「相続登記に必要な不動産情報を確認してほしい」と伝える。

Section 18

18. 結論

相続実務で確認するポイントを、制度、期限、資料、注意点に分けて整理します。

財産目録の作り方とExcelテンプレートの核心は、表の美しさではなく、相続実務に耐える情報設計にある。相続では、財産の存在、名義、評価、証拠、取得者、税務区分、登記区分、紛争論点が複雑に絡み合う。したがって、財産目録は、次の条件を満たする必要があります。

  1. 財産と債務を広く洗い出している。
  2. 遺産分割対象区分と相続税対象区分を分けている。
  3. 相続税評価額、協議用価額、売却見込額を分けている。
  4. 財産IDと証拠IDで根拠資料に紐付いている。
  5. 不動産は登記情報どおりに特定できます。
  6. 預貯金は死亡日残高と取引履歴を確認できます。
  7. 保険、退職金、生前贈与、名義預金、債務を別管理できます。
  8. 未確認、争点、専門家確認の状態が明示されている。
  9. 版管理と変更履歴が残っている。
  10. 相続人、専門家、裁判所、税務署、金融機関のいずれにも展開しやすい。

相続は、時間制限のある手続です。3か月、10か月、3年という期限を意識しながら、Excelで作った財産目録を「家族のメモ」から「証拠に基づく手続資料」へ引き上げることが、相続トラブルの予防と円滑な手続の第一歩です。

Reference

この記事の参考資料

主要資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続人申告登記について」
  • 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
  • 裁判所「遺産分割調停の申立書」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」
  • 国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
  • 国税庁「No.4632 上場株式の評価」
  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」
  • 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
  • 国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
  • 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」
  • 国税庁「財産評価基準書」
  • 国税庁「財産評価基本通達」
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについてFAQ」
  • Microsoft Support「Excel テーブルでの構造化参照の使い方」
  • Microsoft Support「セルにデータの入力規則を適用する」
  • Microsoft Support「SUMIFS 関数」
  • Microsoft Support「XLOOKUP 関数」