2σ Guide

相続時精算課税で贈与した財産は
相続時にどう精算されるか

贈与時に終わった話ではなく、贈与者の死亡時に相続税の計算へつなぎ直す制度です。贈与時価額、110万円基礎控除、既払贈与税の控除、民法上の扱いを分けて確認します。

2,500万円 特別控除の累積限度
110万円 令和6年以後の年基礎控除
10か月 相続税申告の基本期限
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相続時精算課税で贈与した財産は 相続時にどう精算されるか

贈与時に終わった話ではなく、贈与者の死亡時に相続税の計算へつなぎ直す制度です。

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相続時精算課税で贈与した財産は 相続時にどう精算されるか
贈与時に終わった話ではなく、贈与者の死亡時に相続税の計算へつなぎ直す制度です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 相続時精算課税で贈与した財産は 相続時にどう精算されるか
  • 贈与時に終わった話ではなく、贈与者の死亡時に相続税の計算へつなぎ直す制度です。

POINT 1

  • 相続時精算課税で贈与した財産の全体像
  • 贈与時と相続時を切り離さず、税務上の精算と民法上の扱いを分けて理解します。
  • 税務上は相続税計算へ接続し、民法上は別に検討する
  • 死亡時に課税価格へ加算
  • 既払贈与税を控除

POINT 2

  • 相続時精算課税で押さえるべき基本用語
  • 制度の対象者、財産、控除、価額の基準を先にそろえると、後の計算を読み違えにくくなります。
  • いったん選択すると、その特定贈与者からの以後の贈与は原則としてこの制度に乗り、暦年課税へ戻すことはできません。
  • 用語ごとに対象者、財産、控除、価額の基準が違うため、どの言葉が計算のどこに関わるかを読み取ってください。

POINT 3

  • 相続時精算課税が相続時に精算される理由
  • 1. 相続時精算課税を選択:特定贈与者ごとに選択し、以後の贈与は原則としてこの制度で扱います。
  • 2. 贈与時に贈与税を計算:年110万円基礎控除、特別控除2,500万円、20%税率などを確認します。
  • 3. 贈与者が死亡:相続税の課税価格へ、相続時精算課税適用財産を加算して再計算します。
  • 4. 既払贈与税を相続税から控除:相続税より既払贈与税が大きい場合は、申告により還付が問題になります。

POINT 4

  • 相続時精算課税で贈与した財産の計算順序
  • 1. 相続税に加算する金額を確定
  • 2. 相続財産と合算:相続又は遺贈で取得した財産と、相続時精算課税適用財産の加算額を合算し、必要に応じて債務や葬式費用を控除します。
  • 3. 相続税の総額を計算:課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を引き、法定相続分 課税方式で相続税の総額を計算します。
  • 4. 既払贈与税相当額を控除:相続時精算課税分の贈与税相当額を各人の相続税額から差し引きます。
  • 5. 申告・納付・還付の期限を確認:相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

POINT 5

  • 令和6年改正後の相続時精算課税と110万円基礎控除
  • 令和6年以後の贈与では、年110万円の基礎控除が相続時の加算額にも影響します。
  • 毎年少額の資産移転
  • 暦年課税との比較
  • 単純な有利不利ではない

POINT 6

  • 相続時精算課税の精算を具体例で確認する
  • 3,300万円贈与の例、値下がり株式、死亡年贈与、評価誤りを順に見ます。
  • 3,300万円を贈与し、相続財産が1,500万円しかない例
  • 値下がりした株式を贈与した例
  • 贈与した年に贈与者が死亡した例

POINT 7

  • 相続時精算課税と暦年課税の違い
  • 110万円、加算期間、撤回可否、税率を混同しないための比較です。
  • 相続時精算課税と暦年課税は、どちらも生前贈与に関係しますが、選択の要否、税率、相続時の加算範囲が違います。
  • 同じ被相続人との間で、過去の暦年課税贈与と、その後の相続時精算課税贈与が混在することもあります。
  • 相続時にどの贈与が加算されるかを誤ると、申告書作成や税額見込みがずれます。

POINT 8

  • 相続時精算課税で使う価額は贈与時の価額
  • 値下がりしても加算額が下がらない
  • 生前に高値で贈与した株式や不動産が相続時に値下がりしていても、一般にはその低い時価では精算されません。
  • 値上がりしても加算額が上がらない
  • 贈与後に大きく値上がりした場合も、原則として相続税に加算されるのは贈与時価額ベースです。

まとめ

  • 相続時精算課税で贈与した財産は 相続時にどう精算されるか
  • 相続時精算課税で贈与した財産の全体像:贈与時と相続時を切り離さず、税務上の精算と民法上の扱いを分けて理解します。
  • 相続時精算課税で押さえるべき基本用語:制度の対象者、財産、控除、価額の基準を先にそろえると、後の計算を読み違えにくくなります。
  • 相続時精算課税が相続時に精算される理由:生前贈与を相続税の外へ出す制度ではなく、贈与時と相続時を接続する制度です。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続時精算課税で贈与した財産の全体像

贈与時と相続時を切り離さず、税務上の精算と民法上の扱いを分けて理解します。

相続時精算課税で贈与した財産は、贈与者が死亡した時点で、相続税の課税価格に加算して精算されます。制度の核心は、贈与税と相続税を別々に完結させるのではなく、贈与時から相続時までを一体で見る点にあります。

贈与時には相続時精算課税のルールで贈与税を計算し、贈与者死亡時にはその贈与財産の価額を相続税側へ持ち込み、最後に既に納めた贈与税相当額を相続税から控除します。令和6年1月1日以後の贈与では、各年分の贈与価額合計から110万円を控除した後の残額が、原則として相続税の課税価格へ加算されます。

次の重要ポイントは、相続時精算課税で何が精算され、何が別問題として残るのかを表しています。早い段階で読み分けておくことが重要です。相続税計算に入る金額、贈与税控除、民法上の遺産分割や遺留分が、それぞれ別の検討軸であることを確認してください。

税務上は相続税計算へ接続し、民法上は別に検討する

相続時精算課税で贈与した財産は、税務上は相続税計算のために加算されますが、当然に現物が遺産へ戻るわけではありません。共同相続人間では、特別受益や遺留分が別途問題になる可能性があります。

結論を整理すると、相続時精算課税の相続時処理は5つの確認で把握できます。順番を誤ると、相続税がかかるか、還付があるか、民事上の紛争があるかを混同しやすいため、各項目が何を意味するかを読み取ってください。

Point 01

死亡時に課税価格へ加算

相続時精算課税適用財産は、贈与者の死亡時に相続税の課税価格へ加算します。令和6年以後の贈与は、年110万円控除後の残額が原則です。

Point 02

既払贈与税を控除

相続税を計算した後、既に納めた相続時精算課税分の贈与税相当額を控除します。相続税がゼロで過納があれば、申告により還付が問題になります。

Point 03

民法上の扱いは別

税務上の加算は、遺産分割や遺留分の結論をそのまま決めるものではありません。特別受益や遺留分は別のルールで確認します。

Section 01

相続時精算課税で押さえるべき基本用語

制度の対象者、財産、控除、価額の基準を先にそろえると、後の計算を読み違えにくくなります。

相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母又は祖父母などから、18歳以上の子又は孫などへ贈与した場合に選択できる贈与税制度です。いったん選択すると、その特定贈与者からの以後の贈与は原則としてこの制度に乗り、暦年課税へ戻すことはできません。

次の一覧は、相続時精算課税で頻出する用語と、相続時の精算でなぜ重要になるかを表しています。用語ごとに対象者、財産、控除、価額の基準が違うため、どの言葉が計算のどこに関わるかを読み取ってください。

用語意味精算時の注意点
相続時精算課税一定の父母又は祖父母などから、一定の子又は孫などへの贈与で選択できる制度です。選択後は、同じ特定贈与者からの贈与について暦年課税へ戻せません。
特定贈与者相続時精算課税を選択した相手方の贈与者です。父について選択しても、母について選択していなければ母からの贈与は別処理です。
相続時精算課税適用財産特定贈与者からこの制度で取得した財産です。現金、不動産、上場株式、非上場株式など、財産の種類に一般的な制限はありません。
贈与時の価額相続税の課税価格へ加算する基準となる価額です。原則として相続開始時ではなく、贈与時の価額を基礎にします。
特別控除2,500万円贈与税計算上の累積限度額です。毎年使える控除ではなく、期限内申告が重要です。
年110万円基礎控除令和6年1月1日以後の相続時精算課税に新設された控除です。暦年課税の110万円とは別枠ですが、同じ特定贈与者からの贈与に暦年課税の控除は使えません。
Section 02

相続時精算課税が相続時に精算される理由

生前贈与を相続税の外へ出す制度ではなく、贈与時と相続時を接続する制度です。

相続時精算課税は、贈与税と相続税を完全に切断する制度ではありません。贈与時にはいったん贈与税を計算し、最終的には贈与者の死亡時に相続税へ再接続します。生前に贈与したから相続時には無関係になる、という理解は不正確です。

次の判断の流れは、贈与から相続時の精算までの制度構造を表しています。なぜ重要かというと、各段階で見る税目と価額が変わるからです。贈与時に終わる部分と、相続時に再計算される部分を読み分けてください。

贈与時から相続時までの基本構造

相続時精算課税を選択

特定贈与者ごとに選択し、以後の贈与は原則としてこの制度で扱います。

贈与時に贈与税を計算

年110万円基礎控除、特別控除2,500万円、20%税率などを確認します。

贈与者が死亡

相続税の課税価格へ、相続時精算課税適用財産を加算して再計算します。

既払贈与税を相続税から控除

相続税より既払贈与税が大きい場合は、申告により還付が問題になります。

この構造を誤解すると、110万円以下なら相続時にも完全に無関係、値下がりしたから相続開始時の低い時価でよい、税務上の加算があるなら遺産分割でも当然に戻る、といった判断になりがちです。いずれも制度の確認が必要です。

Section 03

相続時精算課税で贈与した財産の計算順序

加算額、課税価格、相続税総額、贈与税控除、期限を順に確認します。

相続時精算課税で贈与した財産の精算は、最初に相続税へ加算する金額を確定し、次に相続財産と合算して課税価格を出し、相続税総額を計算したうえで、既に納めた贈与税相当額を控除します。

次の時系列は、相続時精算課税の計算で確認する順番を表しています。順番が重要なのは、110万円控除、相続税の基礎控除、贈与税控除、還付の判断がそれぞれ別の段階にあるからです。どの段階で何を差し引くかを読み取ってください。

第1段階

相続税に加算する金額を確定

令和5年12月31日以前の贈与は原則として贈与時価額そのもの、令和6年1月1日以後の贈与は年110万円控除後の残額を基礎にします。

第2段階

相続財産と合算

相続又は遺贈で取得した財産と、相続時精算課税適用財産の加算額を合算し、必要に応じて債務や葬式費用を控除します。

第3段階

相続税の総額を計算

課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を引き、法定相続分課税方式で相続税の総額を計算します。

第4段階

既払贈与税相当額を控除

相続時精算課税分の贈与税相当額を各人の相続税額から差し引きます。相続税より既払贈与税が大きいときは還付が問題になります。

第5段階

申告・納付・還付の期限を確認

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。還付を求める場合には別途5年以内の申告が問題になります。

令和6年以後の一般式は、各年分の相続時精算課税適用財産の贈与時価額合計から、相続時精算課税に係る基礎控除110万円を控除する形で整理できます。同一年に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合は、この110万円を特定贈与者ごとの課税価格で按分します。

計算式相続税の課税価格に加算される額 = 各年分の相続時精算課税適用財産の贈与時価額合計 - 相続時精算課税に係る基礎控除110万円

ここでいう加算は、最後の3年又は7年だけを足すという意味ではありません。相続時精算課税は、選択後の贈与を相続時に精算する制度であり、暦年課税の相続開始前3年又は7年加算とは制度設計が違います。

Section 04

令和6年改正後の相続時精算課税と110万円基礎控除

令和6年以後の贈与では、年110万円の基礎控除が相続時の加算額にも影響します。

令和6年改正後、相続時精算課税には毎年110万円の基礎控除が入りました。従前は少額贈与であっても、将来の相続税計算へ全面的に持ち込まれる色彩が強くありました。改正後は、毎年110万円までは相続時精算課税でも課税価格から控除され、その分は相続時の加算額からも外れる形になりました。

次の一覧は、令和6年改正で実務上どのような見方が変わるかを表しています。少額移転、暦年課税との比較、家族構成による有利不利がそれぞれ違うため、どの場面で判断が変わるかを読み取ってください。

Small Gifts

毎年少額の資産移転

令和6年以後は110万円分が毎年加算対象から外れるため、従前より柔軟に使える場面があります。

Comparison

暦年課税との比較

暦年課税は相続開始前3年又は7年加算が中心です。相続時精算課税は制度全体として相続時精算を予定し、令和6年以後は110万円控除も加わります。

Caution

単純な有利不利ではない

贈与額、将来の相続財産、受贈者の立場、他の相続人、不動産や自社株の有無で結論が変わります。

同じ年に複数の特定贈与者から相続時精算課税適用財産を受けた場合、110万円は特定贈与者ごとの課税価格で按分されます。また、相続時精算課税を選択した同じ特定贈与者からの贈与に、暦年課税の110万円を重ねて使うことはできません。

Section 05

相続時精算課税の精算を具体例で確認する

3,300万円贈与の例、値下がり株式、死亡年贈与、評価誤りを順に見ます。

3,300万円を贈与し、相続財産が1,500万円しかない例

国税庁の改正後の計算例では、相続時精算課税を適用した贈与財産が3,300万円、相続財産が1,500万円、法定相続人が配偶者1人・子2人のケースが示されています。

次の比較表は、贈与時と相続時でどの金額が動くかを表しています。重要なのは、贈与税を納めて終わりではなく、相続税側で再精算される点です。贈与時の138万円が、相続時の基礎控除判定後にどう扱われるかを読み取ってください。

段階計算内容金額
贈与時贈与額3,300万円
贈与時相続時精算課税に係る基礎控除110万円
贈与時基礎控除後の課税価格3,190万円
贈与時特別控除2,500万円
贈与時残額690万円
贈与時贈与税額690万円×20%=138万円
相続時相続財産1,500万円
相続時相続時精算課税による加算額3,190万円
相続時合計4,690万円
相続時法定相続人3人の基礎控除額4,800万円

このケースでは、相続税の基礎控除額4,800万円を下回るため相続税はゼロです。しかし、贈与時に138万円を納めているため、相続税の申告により138万円の還付が生じる可能性があります。

値下がりした株式を贈与した例

令和6年に父から上場株式2,000万円相当の贈与を受け、相続時精算課税を選択した後、相続開始時に株価が1,200万円へ下落していたとしても、原則として相続税の課税価格へ加算されるのは相続開始時の1,200万円ではありません。令和6年以後の贈与なら、通常は2,000万円-110万円=1,890万円が加算の出発点になります。

贈与した年に贈与者が死亡した例

相続時精算課税の適用を受けている者について、贈与者がその贈与をした年に死亡した場合、その年の相続時精算課税適用分の贈与財産は、贈与税ではなく相続税の課税対象となるため、贈与税の申告は不要とされています。ただし、その死亡した贈与者からの贈与について初めて相続時精算課税の適用を受けようとする場合には、別途一定の手続が必要です。

評価誤りが後で判明した例

令和6年に父から株式の贈与を受け、当初は100万円と認識して相続時精算課税選択届出書だけを提出したものの、後で正当額が500万円だったと判明した事例では、相続時精算課税の適用自体は維持される一方、期限内申告書がないため特別控除2,500万円は使えないとされています。その結果、贈与税額は(500万円-110万円-0円)×20%=78万円となります。

注意点110万円以下だと思っていたことは、特別控除2,500万円を保全する理由にはなりません。非上場株式、私募ファンド持分、自社株、評価の難しい不動産では、評価と申告要否を慎重に確認する必要があります。
Section 06

相続時精算課税と暦年課税の違い

110万円、加算期間、撤回可否、税率を混同しないための比較です。

相続時精算課税と暦年課税は、どちらも生前贈与に関係しますが、選択の要否、税率、相続時の加算範囲が違います。同じ被相続人との間で、過去の暦年課税贈与と、その後の相続時精算課税贈与が混在することもあります。

次の比較表は、混同しやすい項目だけを並べたものです。相続時にどの贈与が加算されるかを誤ると、申告書作成や税額見込みがずれます。選択の有無、110万円の位置づけ、相続時の加算範囲を読み取ってください。

項目相続時精算課税暦年課税
選択の要否必要です。贈与者ごとに選択し、いったん選ぶと原則撤回できません。不要です。
贈与時の税率基礎控除・特別控除後の残額に原則20%です。累進税率です。
毎年の110万円令和6年以後はあります。あります。
相続時の扱い相続時精算課税適用財産を相続税へ加算して精算します。相続開始前3年又は7年の贈与を加算します。
加算額の基準原則として贈与時価額です。令和6年以後は年110万円控除後残額です。贈与時価額です。
制度の混在過去の暦年課税贈与が別途加算対象になることがあります。通常どおり、暦年課税の加算ルールで確認します。

相続時精算課税の適用を受ける年分の財産について加算額がゼロでも、その前に受けた暦年課税贈与が相続税の課税価格へ加算されることがあります。混在処理は申告ミスが多い領域です。

Section 07

相続時精算課税で使う価額は贈与時の価額

値下がり・値上がり・評価誤りの影響を、相続開始時価額とは分けて考えます。

相続時精算課税では、相続税の課税価格に加算される価額は、原則として相続開始時の時価ではなく、贈与時の価額です。これは不動産でも株式でも同じ発想です。

次の注意事項の一覧は、贈与時価額を基準にすることで起こりやすい結果を表しています。価格変動や評価誤りがある財産では税額見込みが大きく変わるため、値下がり、値上がり、評価誤りのどこにリスクがあるかを読み取ってください。

値下がりしても加算額が下がらない

生前に高値で贈与した株式や不動産が相続時に値下がりしていても、一般にはその低い時価では精算されません。

値上がりしても加算額が上がらない

贈与後に大きく値上がりした場合も、原則として相続税に加算されるのは贈与時価額ベースです。

評価誤りが相続時まで尾を引く

最初の評価を誤ると、その誤りが相続時の加算額や申告内容に影響します。評価が難しい財産では特に注意が必要です。

相続時精算課税は、値上がり益の将来移転に使われることがありますが、その適否は相続財産総額、他の相続人の公平感、遺留分紛争の可能性と一体で検討する必要があります。

Section 08

相続時精算課税の例外・特殊論点

災害、不動産、自社株、非課税特例、受贈者死亡、孫への贈与では一般論だけで足りません。

相続時精算課税は、一般的な現金贈与だけでなく、不動産、非上場株式、住宅取得等資金、教育資金、孫への贈与にも関わります。これらの場面では、単純に贈与時価額を足すだけでは済まない場合があります。

次の一覧は、一般論だけで判断すると危険な特殊論点を表しています。財産の種類や家族関係によって適用要件や税額が変わるため、どの場面で個別確認が必要になるかを読み取ってください。

災害で土地・建物が損壊

令和6年1月1日以後に災害で一定の被害を受けた土地又は建物は、承認を条件として被害部分に対応する額を控除できる特例があります。

事業承継税制の非上場株式

贈与税の納税猶予が継続している非上場株式等では、相続時精算課税に係る基礎控除額が控除されない場面があります。

住宅取得等資金や教育資金

贈与税の課税価格に算入しなかった一定額が相続税へ加算されない場合や、死亡時の管理残額がみなし相続財産になる場合があります。

受贈者が先に死亡

相続時精算課税の適用に伴う権利義務が、受贈者の相続人へ承継されることがあります。再承継には限界がある場合もあります。

孫への贈与

孫は代襲相続人である場合などを除き、相続税額の2割加算が問題になりやすい立場です。

不動産を生前贈与した場合、災害で価値が下がったから当然に相続時の加算額も下がるとは限りません。申請と承認を前提にする特例があり、災害減免法との重複なども確認します。

孫への贈与では、相続時に相続税がかかるだけでなく、その税額に2割加算が乗るかまで確認する必要があります。代襲相続人か、養子縁組があるかなどで判断が変わります。

Section 09

相続時精算課税と遺産分割・遺留分は別問題

税務上の加算は、民法上の遺産分割や遺留分の結論を直接決めるものではありません。

相続時精算課税で贈与した財産は、相続時に相続税の課税価格へ加算されます。しかしこれは税額計算のための加算です。税法上、相続又は遺贈により取得したものとみなすとしても、当然にその財産の所有権が被相続人へ戻るわけではありません。

次の比較一覧は、税務上の精算と民法上の検討軸の違いを表しています。相続人間の話し合いでは、税額計算と財産の公平な分け方が混同されやすいため、どの論点がどの制度に属するかを読み取ってください。

Tax

税法上の加算

相続時精算課税適用財産を相続税の課税価格へ加算し、相続税額を計算するための処理です。

Estate

特別受益

共同相続人への生前贈与が、婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与に当たるかが別途問題になります。

Reserved Share

遺留分

遺留分を算定するための財産に算入される贈与の範囲は、税法の加算範囲と一致しません。

相続時精算課税を使った贈与は、他の相続人から見ると生前に先取りした財産に見えることがあります。遺産分割協議、遺留分侵害額請求、説明義務、使い込み疑いなどがある場合、税務だけでなく民事上の整理も必要になります。

Section 10

相続時精算課税で相談先を分ける考え方

税額、登記、評価、紛争、事業承継で必要な専門家が変わります。

相続時精算課税は、税額計算だけで終わらないことがあります。不動産の登記、評価、遺産分割、遺留分、自社株、事業承継が絡むと、相談先を分けて確認する必要があります。

次の一覧は、相談内容ごとに中心となる専門家を表しています。相続発生後は10か月の申告期限があるため、どの論点を誰に確認すべきかを早めに読み取ることが重要です。

税理士

相続時精算課税の選択、贈与税申告、相続税申告、還付、評価誤りの是正、特例の適用可否が中心です。

税額期限

弁護士

遺産分割、遺留分、使い込み疑い、説明義務、交渉など、相続人間の紛争がある場合に中心になります。

紛争民事

司法書士・不動産鑑定士・土地家屋調査士

贈与登記、相続登記、戸籍収集、評価が争いになる場合の価格意見、境界確認、分筆、表示登記を分担します。

不動産登記

公認会計士・中小企業診断士

非上場株式や事業承継税制が絡む場合、会社評価、承継計画、事業用資産の整理で関与することがあります。

自社株承継

相続登記は令和6年4月1日から義務化されています。生前贈与された不動産と、死亡により相続する不動産を整理して管理しないと、税務だけ見ていて登記期限を落とす危険があります。

Section 11

相続時精算課税でよくある質問

個別の結論ではなく、制度の一般的な考え方として整理します。

Q1 相続時精算課税で贈与した財産は、相続時に現物そのものが戻るのですか。

一般的には、戻るのは税額計算上の扱いであり、相続税の課税価格へ加算して精算するとされています。ただし、遺産分割、特別受益、遺留分の扱いは家族関係や贈与の趣旨で変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで税理士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2 令和6年以後は毎年110万円まで完全に無関係ですか。

一般的には、相続時精算課税に係るその年分の贈与について110万円が基礎控除として機能し、その分は相続時の加算額からも外れるとされています。ただし、過去の暦年課税贈与、複数の特定贈与者、他の特例の有無で結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、贈与年と贈与者ごとの資料を整理したうえで税理士等へ相談する必要があります。

Q3 相続財産が基礎控除以下なら、何も申告しなくてよいですか。

一般的には、課税価格が相続税の基礎控除額以下であれば相続税申告が不要となる場面があります。ただし、相続時精算課税適用財産について既に贈与税を納めていて還付を求める場合など、申告が必要になる可能性があります。具体的な申告要否は、相続財産、加算額、既払贈与税を整理したうえで税理士等へ確認する必要があります。

Q4 相続時精算課税を選んだあとで、暦年課税へ戻せますか。

一般的には、相続時精算課税は特定贈与者ごとに選択する制度であり、選択後はその贈与者からの贈与について暦年課税へ変更できないとされています。ただし、選択した贈与者、贈与年、届出状況によって確認事項が変わる可能性があります。具体的には、提出書類と贈与履歴を整理して税理士等へ相談する必要があります。

Q5 孫が相続時精算課税で贈与を受けていたら、相続時はどうなりますか。

一般的には、孫も相続時精算課税の対象になり得ますが、相続時には相続税額の2割加算が問題になりやすい立場とされています。ただし、代襲相続人かどうか、養子縁組の有無、他の相続関係で結論が変わる可能性があります。具体的な税額見込みは、戸籍関係と贈与資料を整理して税理士等へ相談する必要があります。

Q6 110万円以下だと思って選択届出書だけ出した後で、評価が高かったと分かったらどうなりますか。

一般的には、相続時精算課税の適用自体は維持される方向でも、期限内申告がなかったため特別控除2,500万円が使えない可能性があるとされています。ただし、財産の種類、評価誤りの内容、申告期限との関係で扱いが変わる可能性があります。具体的な対応は、評価資料と提出済み書類を整理して税理士等へ相談する必要があります。

Section 12

相続時精算課税で贈与した財産の精算まとめ

税額計算、還付、民法上の争点、専門家連携をまとめて確認します。

相続時精算課税で贈与した財産は、贈与者死亡時に相続税の課税価格へ接続されます。接続額は原則として贈与時価額であり、令和6年以後の贈与は年110万円控除後残額で確認します。

相続税は相続財産と加算額を合算して計算し、既払贈与税相当額を控除して最終税額を出します。相続税がゼロでも、贈与税を先に払っていれば還付申告が必要になることがあります。

ただし、税務上の精算と民法上の遺産分割・遺留分は一致しません。税理士が税額を設計し、弁護士が民事紛争リスクを見て、司法書士が不動産と登記を整え、必要に応じて不動産鑑定士・公認会計士・土地家屋調査士が補強する体制が現実的です。

最終確認相続時精算課税は、税務上は相続時に再計算される制度であり、民事上の持戻しとは別建てです。贈与時価額、110万円控除、既払贈与税、申告期限、民法上の争点を分けて確認してください。
Reference

参考資料

公的機関・法令を中心に、制度確認に用いられる資料名を整理します。

国税庁の資料

  • 国税庁「No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務」
  • 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
  • 国税庁「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4307 贈与者が贈与をした年に死亡した場合の贈与税及び相続税の取扱い」
  • 国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
  • 国税庁「相続税の申告のしかた」
  • 国税庁「相続税及び贈与税等に関する質疑応答事例(令和5年度税制改正関係)について」
  • 国税庁「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する質疑応答事例について(情報)」
  • 国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
  • 国税庁「相続時精算課税適用財産について評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額」
  • 国税庁「相続時精算課税に係る贈与により取得した財産について贈与税の除斥期間経過後に評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される金額」
  • 国税庁「相続時精算課税における相続税の納付義務の承継等」
  • 国税庁「承継相続人が特定贈与者より先に死亡した場合の再承継」

法令・公的資料

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • e-Gov法令検索「民法 第903条(特別受益者の相続分)」
  • e-Gov法令検索「民法 第1044条」