相続税申告の要否、期限、財産、特例、紛争、専門家連携を初回面談で整理するために、聞かれやすい質問と準備すべき情報を体系的にまとめます。
相続税申告の要否、期限、財産、特例、紛争、専門家連携を初回面談で整理するために、聞かれやすい質問と準備すべき情報を体系的にまとめます。
料金相談だけでなく、相続全体の初期診断として位置づけます。
相続に関する税理士との初回面談は、単なる申告書作成の受付ではありません。相続税申告の要否、申告期限、納税資金、遺産分割の進捗、名義預金の有無、生前贈与、土地評価、特例適用、準確定申告、相続登記、家族間の対立、税務調査リスクを同時に整理する初期診断の場です。
最初に押さえたいのは、相続税の申告期限は、一般的には被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内とされる点です。正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納税が必要になる可能性があります。基礎控除額は、3,000万円に600万円と法定相続人の数を掛けた金額を加えて計算します。
次の一覧は、初回面談で同時に確認されやすい期限と役割をまとめたものです。期限ごとに担当専門家や必要資料が変わるため、どの手続が近いのかを早めに把握することが、申告漏れや専門家選びの遅れを防ぐうえで重要です。
借金が多い、保証債務がある、財産より債務が大きい可能性がある場合は、税理士面談と並行して弁護士や司法書士への確認が必要になることがあります。
亡くなった人に給与、年金、不動産所得、事業所得、配当、譲渡所得などがあった場合、所得税の準確定申告が必要になる可能性があります。
遺産分割が未了でも、申告期限が原則として到来する点に注意します。納税資金、特例、添付書類を早い段階で整理します。
相続登記の申請義務や、申告期限後3年以内の分割見込書に関わる論点を、税務と登記の両面から確認します。
税理士との初回面談で重要なのは、税額をいくら下げられるかより先に、期限までに、正確な前提事実を、どの専門家の守備範囲で処理するかを決めることです。税理士は税務代理、税務書類の作成、税務相談の専門家ですが、相続人間の代理交渉や訴訟、相続登記の申請実務は別の専門職の領域になります。
次の3つの視点で初回面談を準備すると、税理士が相続全体のリスクを把握しやすくなります。分類ごとに、伝えるべき情報の性質が違うため、未確定情報も含めて整理することが大切です。
死亡日、死亡を知った日、申告期限、準確定申告、相続放棄、相続登記の期限を同時に確認します。
相続人、遺言、遺産分割、財産、債務、生前贈与、名義財産、不動産評価を洗い出します。
税務は税理士、紛争は弁護士、登記は司法書士、不動産評価や境界は専門職と分担します。
死亡日、相続人、遺言、遺産分割の状況は、申告期限と特例判断の出発点です。
相続は死亡によって開始します。税務上は、相続税の申告期限を計算するため、被相続人が死亡したことを知った日が重要です。通常は死亡日と一致しますが、疎遠な親族、海外居住者、後から相続人であることを知った人では、死亡を知った日が別に問題になることがあります。
次の表は、税理士が最初に確認する基本事項と持参資料を対応させたものです。どの資料が期限、所轄、戸籍収集に関係するかを読み取ると、初回面談前の優先順位をつけやすくなります。
| 事項 | 税理士が確認する理由 | 持参すべき資料 |
|---|---|---|
| 死亡日 | 申告期限、評価時点、所得計算の基準になる | 死亡診断書の写し、除籍謄本、住民票の除票 |
| 死亡を知った日 | 10か月期限、4か月期限、3か月期限の起算点に関係する | 通知書、連絡記録、戸籍取得日など |
| 最後の住所 | 所轄税務署、家庭裁判所、法務局手続に影響する | 住民票の除票、戸籍の附票 |
| 本籍地 | 戸籍収集、相続人確定に必要 | 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 |
税理士は、相続人の人数を確認しなければ基礎控除額を計算できません。法定相続人の数は、死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額にも影響し、死亡保険金の非課税限度額は500万円に法定相続人の数を掛けて計算されます。
次の一覧は、相続人に関して初回面談で聞かれやすい項目です。法定相続人の数だけでなく、連絡不能者、未成年者、後見関係の有無が手続の進み方に影響する点を確認します。
| 確認項目 | 具体例 | 重要になる理由 |
|---|---|---|
| 配偶者の有無 | 法律上の配偶者、内縁関係 | 法定相続分、配偶者税額軽減、遺産分割に影響 |
| 子の有無 | 実子、養子、前婚の子、認知された子 | 法定相続人の数、戸籍調査、争いの可能性に影響 |
| 直系尊属の有無 | 父母、祖父母 | 子がいない場合の相続人判定に影響 |
| 兄弟姉妹の有無 | 兄弟姉妹、代襲相続人 | 子も直系尊属もいない場合に問題になる |
| 相続放棄の有無 | 申述済みの人、検討中の人 | 税務上の法定相続人の数、債務整理、家庭裁判所手続に影響 |
| 連絡不能者 | 行方不明、海外在住、絶縁状態 | 遺産分割、申告書の共同提出、資料収集に影響 |
| 未成年者、成年後見利用者 | 親と子が共同相続人など | 特別代理人や後見関係の確認が必要 |
税理士は、財産を誰が取得するかを知らなければ相続税申告書を完成できません。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、誰がどの財産を取得するかと密接に関係します。申告期限までに分割されていない財産は、特例の適用で不利になることがあります。
遺言と分割状況は、検認の要否、遺言執行者、相続人の合意状況、遺留分の争いまで広がります。次の項目を事前に整理すると、税理士が申告作業と弁護士連携の必要性を判断しやすくなります。
公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、法務局保管の有無を確認します。
家庭裁判所の検認が必要な遺言書か、検認不要の資料かを区別します。
遺産分割協議が未開始、協議中、合意済み、紛争ありのどれかを伝えます。
相続人全員が連絡に応じているか、署名押印できる見込みがあるかを確認します。
預貯金、不動産、保険、債務、生前贈与は、税務調査時の説明にもつながります。
税理士が最初に確認する財産は、現金、預貯金、有価証券です。残高証明書、取引履歴、通帳、証券会社の年間取引報告書、保有銘柄明細などで確認しますが、死亡日時点の残高だけでは足りません。
次の表は、金融資産について聞かれる質問と、依頼者側が伝えるべき実態を対応させたものです。口座名義だけで判断せず、資金の原資、管理者、引き出しの使途まで説明することが重要です。
| 聞かれること | 伝えるべきこと |
|---|---|
| 銀行口座はいくつあるか | 普段使っていた銀行、休眠口座、ネット銀行、農協、信用金庫、外貨預金を含めて伝える |
| 死亡前に大きな引き出しがあったか | 医療費、施設費、葬儀準備、家族への送金、現金保管などの使途を説明する |
| 家族名義の預金があるか | 原資、通帳管理者、印鑑管理者、贈与契約の有無、本人が自由に使えたかを伝える |
| 証券口座があるか | 上場株式、投資信託、国債、外債、NISA口座、特定口座、一般口座を伝える |
| 現金が自宅にあるか | 金庫、仏壇、貸金庫、事業用現金、封筒管理の有無を伝える |
隠すべきでない典型例は、死亡直前に親族が引き出した現金です。引き出し自体が直ちに違法という意味ではありませんが、使途不明のままでは、相続財産、贈与、預け金、使途不明金として説明が必要になる可能性があります。引き出した日、金額、使途、領収書の有無、残った現金の所在を伝えます。
相続財産に不動産がある場合、税理士の初回面談は一段階複雑になります。相続税評価、遺産分割、相続登記、売却、固定資産税、賃貸収入、空き家、借地借家、境界問題が同時に発生するためです。
次の表は、不動産について持参すると診断精度が上がる資料をまとめたものです。資料ごとに使途が違うため、所在や評価額だけでなく、道路、境界、賃貸、共有、農地などの論点を読み取る必要があります。
| 資料 | 使途 |
|---|---|
| 固定資産税納税通知書、課税明細書 | 不動産の所在、地番、家屋番号、固定資産税評価額の把握 |
| 登記事項証明書 | 所有者、共有持分、抵当権、地目、地積の確認 |
| 公図、地積測量図、建物図面 | 形状、道路接道、面積、境界の把握 |
| 賃貸借契約書 | 貸宅地、貸家建付地、借家権、賃料収入の確認 |
| 住宅地図、現況写真 | 利用状況、私道、セットバック、がけ地、不整形地の把握 |
| 農地関係資料 | 農地評価、納税猶予、農地法手続の確認 |
| 共有者情報 | 共有解消、売却、分割、登記に影響 |
生命保険金は、民法上の遺産分割対象財産と税務上の相続税対象財産の関係がずれやすい財産です。受取人固有の権利とされる場面でも、相続税法上はみなし相続財産として課税対象になり得ます。
保険関係は、契約者、被保険者、受取人、保険料負担者を分けて確認することが重要です。次の項目をそろえると、非課税枠、入金口座、未収保険金、死亡退職金の整理がしやすくなります。
保険会社名、証券番号、保険種類、契約者、被保険者、受取人を伝えます。
保険料を誰が実質的に負担していたか、通帳履歴や契約内容から確認します。
支払われた保険金の金額、入金口座、入院給付金、未収保険金、解約返戻金を整理します。
相続税の計算では、一定の債務と葬式費用を遺産総額から差し引けることがあります。プラスの財産だけでなく、借入金、未払税金、医療費、施設費、保証債務、事業債務を必ず伝える必要があります。
次の表は、控除や相続放棄の検討につながる債務と費用の整理です。死亡時点で確実に存在した債務か、死亡後に支払った費用か、領収書やメモがあるかを読み分けます。
| 区分 | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 借入金 | 住宅ローン、事業借入、個人向けローン | 団体信用生命保険で消滅するか確認 |
| 未払税金 | 所得税、住民税、固定資産税 | 納付書、通知書を持参 |
| 医療費、施設費 | 入院費、介護施設利用料 | 死亡時点で未払か、死亡後に支払ったかを分ける |
| 葬式費用 | 通夜、告別式、火葬、納骨までの一定費用 | 領収書がない支払はメモを残す |
| 保証債務 | 連帯保証、根保証 | 弁護士、金融機関との確認が必要 |
| 事業債務 | 買掛金、未払給与、リース債務 | 個人事業の承継、廃業と連動 |
税理士は、亡くなった人から相続人や受遺者への過去の贈与を確認します。令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与では、相続開始前7年以内が加算対象期間になる点が重要です。ただし、相続開始日の時期に応じた経過措置があり、令和8年12月31日以前の相続開始では加算対象期間は相続開始前3年以内とされています。
配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、未分割申告は、事実関係の確認が結論を左右します。
配偶者の税額軽減は、一般に「配偶者なら相続税がかからない」と誤解されやすい制度です。正確には、配偶者が遺産分割や遺贈によって実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税がかからない制度です。
次の比較は、特例の前提として税理士へ伝えるべき事実を整理したものです。単に税額が下がる制度としてではなく、誰が取得し、いつ分割され、二次相続でどう影響するかを読み取ることが大切です。
| 確認事項 | 初回面談で伝える内容 |
|---|---|
| 取得予定財産 | 配偶者が実際に取得する予定の財産と金額 |
| 協議の進捗 | 遺産分割協議が進んでいるか、対立があるか |
| 二次相続 | 配偶者固有財産、年齢、生活費、子の将来負担を考慮したいか |
| 名義財産 | 配偶者名義の財産と被相続人名義の財産の実質関係 |
小規模宅地等の特例は、土地評価を大きく下げる可能性がある一方で、要件確認が複雑です。自宅の土地、事業用の土地、貸付用の土地では、限度面積、減額割合、取得者要件、居住継続要件、保有継続要件が異なります。
次の一覧は、土地の種類ごとに税理士が確認する実態をまとめたものです。土地の名前や評価額だけでなく、誰が住み、誰が取得し、申告期限までどう使う予定かを読み取る必要があります。
被相続人が死亡直前にどこに住んでいたか、老人ホーム等への入所があったか、その前の自宅を誰が使っていたかを伝えます。
配偶者、同居親族、別居親族のどなたが取得するか、申告期限まで居住や保有を続ける予定かを確認します。
貸付事業の開始時期、賃貸借契約、空室状況、事業継続の予定を整理します。
相続人間で協議がまとまらない場合でも、相続税の申告期限は原則として延びません。未分割のまま申告する場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が直ちに使えない、または手続上の見込書が必要になることがあります。
次の判断の流れは、分割がまとまらないときに初回面談で整理する順番を表しています。上から順に確認し、争いの有無、納税資金、後日適用のための書類管理を切り分けます。
預金、不動産、保険、会社株式など、争いがある財産とない財産を分けます。
調停予定、弁護士相談、相手方の主張、署名押印の見込みを伝えます。
納税資金と特例を後日適用する書類を確認します。
取得者、特例、二次相続、登記実務の整合性を見ます。
税務、紛争、登記、評価、事業承継を混ぜずに整理します。
税理士の中心業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談です。相続税申告の作成、税務署への対応、税務調査対応、相続税額の試算、特例の税務判断は税理士の領域です。一方、相続人どうしの代理交渉、遺留分、使い込み疑い、遺産分割調停、審判、訴訟、相続登記は別の専門職が中心になります。
次の一覧は、税理士との初回面談で「誰に引き継ぐ論点か」を判断するための整理です。専門家ごとの守備範囲を早めに分けることで、申告期限と紛争対応、登記期限がずれたまま進むリスクを下げられます。
相続税申告、税額試算、特例判断、税務調査対応、準確定申告を中心に扱います。
税務使い込み疑い、遺留分、遺言の有効性、遺産分割調停、審判、訴訟、代理交渉を扱います。
紛争相続登記、戸籍収集、登記原因証明情報、不動産名義変更の実務を担います。
登記時価評価、境界、分筆、地積、表示登記など、不動産評価と現況確認で関わります。
不動産非上場株式、事業承継、会社価値、後継者問題、金融機関対応で関わることがあります。
事業相続人間に争いがある場合、税理士より先に、または税理士と並行して弁護士相談が必要になることがあります。税理士には争いを隠さず伝え、申告上の処理と法的紛争の処理を分けます。
不動産がある場合、税理士は相続税評価を行いますが、相続登記の申請実務は司法書士が中心となります。先代名義の不動産、共有、抵当権、登記簿上の地目と現況の違い、住所変更登記の未了などは早めに伝えます。
行政書士は、争いのない範囲で遺産分割協議書や相続関係説明図などの作成支援をする場面があります。ただし、紛争性のある交渉、税務相談、登記申請代理は別の資格領域です。公証人は公正証書遺言、不動産鑑定士は時価評価、土地家屋調査士は境界や分筆、宅地建物取引士と不動産業者は売却実務で関わります。
完成した説明よりも、未確定情報と不明点がリスク判定に役立ちます。
一般読者は、初回面談に整理済みの資料だけを持っていこうとしがちです。しかし、税理士にとって重要なのは、不明点、矛盾点、資料不足、不利な事情、親族間で認識が違う点です。最初に把握できれば、調査の優先順位を決めやすくなります。
次の表は、税理士に必ず伝えたい事情と、その理由をまとめたものです。表の左側はリスクの入口、右側は税務、紛争、期限、専門家連携にどうつながるかを示しています。
| 伝えるべき事情 | 理由 |
|---|---|
| 家族名義の預金がある | 名義預金として相続財産に含めるべきか検討が必要 |
| 死亡前に多額の引出しがある | 使途、現金残、贈与、貸付、費消の説明が必要 |
| 贈与契約書がない贈与がある | 贈与成立や相続財産性の判断が必要 |
| 相続人が資料を隠している可能性がある | 弁護士連携や金融機関照会が必要 |
| 遺産分割協議がまとまらない | 未分割申告、特例不適用、後日の更正請求に影響 |
| 財産評価に自信がない | 土地評価、不動産鑑定、税務調査リスクに影響 |
| 海外財産、海外居住者がいる | 納税義務、国外財産、資料翻訳、送金確認が必要 |
| 会社経営者だった | 非上場株式、役員貸付金、死亡退職金、事業承継が必要 |
| 借金が財産を上回るかもしれない | 相続放棄、限定承認、債権者対応が必要 |
| 被相続人の判断能力に疑問がある | 遺言、贈与、預金引出しの有効性に関係 |
初回面談では、分からないことを無理に断定しないことも重要です。税理士は、断定情報を前提に申告スケジュールや見積もりを組むため、後から前提が変わると追加資料の収集や申告内容の修正に影響します。
全資料を完璧にそろえるより、あるものとないものを分けて伝えることが重要です。
初回面談で全資料を完璧にそろえる必要はありません。ただし、次の資料があると診断精度が上がります。分類ごとに、どの資料が相続人確定、財産評価、債務控除、準確定申告、事業承継に関わるかを確認します。
| 分類 | 資料 |
|---|---|
| 身分関係 | 被相続人の戸籍、除籍、改製原戸籍、相続人の戸籍、住民票の除票 |
| 相続人整理 | 家族関係図、法定相続情報一覧図、相続人の住所連絡先 |
| 遺言 | 遺言書、遺言書情報証明書、検認済証明書、遺言執行者の資料 |
| 預貯金 | 通帳、残高証明書、取引履歴、ネット銀行情報 |
| 証券 | 証券会社の残高証明書、年間取引報告書、銘柄一覧 |
| 不動産 | 固定資産税課税明細書、登記事項証明書、公図、地積測量図、賃貸借契約書 |
| 保険 | 保険証券、支払通知書、契約内容照会書 |
| 債務 | 借入金残高証明書、納付書、請求書、保証契約書 |
| 葬儀 | 葬儀社の請求書、領収書、支払メモ |
| 贈与 | 贈与契約書、贈与税申告書控え、送金記録 |
| 所得 | 確定申告書控え、源泉徴収票、年金源泉徴収票、医療費領収書 |
| 事業 | 決算書、会社謄本、株主名簿、法人税申告書、役員借入金資料 |
法定相続情報証明制度を利用すると、相続登記、預金払戻し、相続税申告、年金手続などで法定相続情報一覧図の写しを利用できる場合があります。必要書類の収集、一覧図の作成、申出書の記入と登記所への申出を進めます。
資料が不足している場合、初回面談を延期する必要はありません。期限が近い場合は、未収集のまま相談したほうがよいこともあります。何があり、何が未取得で、誰が管理しているのかを分けて伝えます。
相続税申告と混同されやすいものに、亡くなった人の所得税に関する準確定申告があります。準確定申告の期限は、一般的には相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内とされています。
次の表は、準確定申告の要否を判断するために初回面談で聞かれやすい項目です。相続税がかかるか分からない場合でも、被相続人が確定申告者だったか、死亡年の収入資料があるかを確認します。
| 聞かれること | 具体例 |
|---|---|
| 被相続人に所得があったか | 給与、年金、不動産賃貸、事業、配当、譲渡所得 |
| 確定申告をしていたか | 過去の申告書控え、税理士関与の有無 |
| 死亡年の収入資料があるか | 源泉徴収票、支払調書、賃料明細 |
| 医療費控除の対象資料があるか | 死亡日までに被相続人が支払った医療費 |
| 還付金が生じる可能性があるか | 還付金は相続財産として扱う検討が必要 |
| 個人事業を営んでいたか | 廃業届、消費税、従業員、在庫、売掛金 |
申告書の作成だけでなく、後日説明できるかを見据えて情報を出します。
相続税申告では、税務署に提出する申告書だけでなく、後日の税務調査で説明できるかが重要です。初回面談では、名義預金、死亡前引出し、生前贈与の継続、貸付金、立替金、未収金を早めに伝えます。
次の一覧は、税務調査で説明が求められやすい論点をまとめたものです。各項目について、資金の原資、管理者、使途、契約書、通帳履歴、領収書の有無を確認します。
口座名義が配偶者、子、孫であっても、資金の原資、管理、支配、使用実態から被相続人の財産と評価され得ます。
医療費、介護費、葬儀準備、贈与、生活費、手元現金、使途不明金に分けて説明します。
毎年110万円以下の贈与でも、加算対象期間、贈与の成立、名義財産性を確認します。
親が子に貸した住宅資金、会社への役員貸付金、医療費の立替えなどを資料で確認します。
家族構成や財産内容によって、税理士が重点的に確認する質問は変わります。次の表は、典型的な相続の形ごとに、初回面談で伝えるべき重点情報を整理したものです。
| ケース | 重点質問 | 伝えるべきこと |
|---|---|---|
| 配偶者と子、自宅と預金が中心 | 基礎控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、二次相続 | 配偶者が住み続けるか、同居者、預金取得予定、配偶者固有財産、二次相続対策 |
| 兄弟姉妹間で対立 | 未分割申告、資料不足、納税資金、特例適用 | 主張内容、使い込み疑い、遺言の有効性、調停、弁護士相談、中立的申告の可否 |
| 不動産が多い | 土地評価、相続登記、売却、納税資金、不動産鑑定、共有回避 | 所在地、利用状況、賃貸、空き家、共有予定、境界トラブル、古い登記名義 |
| 会社経営者、個人事業主 | 非上場株式、役員貸付金、死亡退職金、保証債務、事業承継 | 株主名簿、決算書、持株割合、後継者、金融機関借入、連帯保証 |
| 国外財産、海外居住者がいる | 課税財産の範囲、資料収集、送金、外国語書類、現地税制 | 国籍、住所、過去10年の居住状況、海外口座、不動産、外国での納税 |
税理士の資格、経験、報酬、外部専門家費用、申告後対応まで確認します。
税務代理、税務書類の作成、税務相談を行うことができるのは、税理士、税理士法人、国税局長に通知した弁護士および弁護士法人に限られるとされています。税理士であるかは、税理士証票の提示や日本税理士会連合会の税理士情報検索で確認できます。
次の表は、初回面談で確認すべき契約事項です。報酬額だけでなく、土地評価、税務調査対応、外部専門家費用、利益相反時の対応まで見ることで、後から想定外の費用や対応漏れが出るリスクを下げられます。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 相続税申告の経験 | 経験件数、担当体制、土地評価や非上場株式評価の対応力 |
| 土地評価 | 現地確認の有無、評価資料の作成者、特殊な土地への対応 |
| 税務調査対応 | 報酬に含まれるか、書面添付制度を利用するか |
| 専門家連携 | 弁護士、司法書士、不動産鑑定士との連携体制 |
| スケジュール | 申告期限までの工程、資料提出期限、納税資金確認の時期 |
| 報酬と追加費用 | 基本報酬、土地1筆ごとの追加、非上場株式、準確定申告、調査立会い |
| 契約関係 | 契約書、委任状、税務代理権限証書、一部相続人のみの依頼か |
| 利益相反 | 相続人間で対立が生じた場合の対応 |
相続税申告の報酬は、遺産総額、不動産数、非上場株式、相続人の数、土地評価の難易度、準確定申告、税務調査対応、申告期限の近さによって変わります。料金だけを比較すると、必要な評価や調査が省略されるリスクがあります。
次の質問は、依頼者側から確認しておきたい内容です。質問の目的は、相続税申告の必要性、期限、評価、専門家連携、申告後対応を一方通行にしないことです。
相続税申告が必要になる可能性、基礎控除額、申告期限、準確定申告、相続放棄、未分割申告を確認します。
不動産評価、小規模宅地等の特例、名義預金、死亡前引出し、非上場株式や事業用資産を確認します。
弁護士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、公認会計士、金融機関との分担を確認します。
税務調査対応、評価資料の保管、二次相続、後日分割時の更正請求、登記や売却の進め方を確認します。
短時間で全体像を共有するため、空欄や不明点も含めて整理します。
資料が多い相続では、税理士が全体像を短時間で把握できるよう、1枚メモを作ると効果的です。完全である必要はなく、空欄や不明欄があること自体が、初回面談で確認すべき論点になります。
次の表は、1枚メモに入れると実務で使いやすい項目です。左の分類ごとに、分かる内容、不明な内容、資料の有無を分けて書くと、税理士が追加調査の優先順位をつけやすくなります。
| 分類 | 書いておく内容 |
|---|---|
| 被相続人 | 氏名、死亡日、死亡時住所、本籍、職業や事業、過去の確定申告の有無 |
| 相続人 | 配偶者、子、その他相続人、連絡不能者、未成年者、後見利用者、相続放棄予定者 |
| 遺言と分割 | 遺言の有無、種類、法務局保管、協議状況、紛争の有無、弁護士相談の有無 |
| 財産概算 | 預金、証券、不動産、生命保険、死亡退職金、事業や会社株式、その他財産 |
| 債務と費用 | 借入金、未払税金、医療費、施設費、葬式費用、保証債務 |
| 気になる点 | 名義預金、死亡前引出し、生前贈与、争い、海外要素、期限が近い手続 |
初回面談後は、一般に次の順番で進みます。上から順に、申告要否、契約、資料収集、評価、分割、申告、登記や名義変更へ進むため、税理士が主担当となる部分と他専門職が主担当となる部分を分けることが重要です。
依頼する場合は、契約書、委任状、税務代理権限証書などを整えます。
準確定申告が必要な場合は、4か月期限に向けて所得資料を優先します。
遺産分割協議の状況を税務上の期限と照合し、特例の可否を確認します。
二次相続対策や資料保管、税務調査への備えも整理します。
初回面談では、結論を急がず、分かっていることと分からないことを分ける伝え方が有効です。次の例は、税理士が調査範囲を判断しやすい表現です。
相続税、分割、登記、紛争の思い込みを、一般情報として整理します。
相続では、基礎控除、配偶者の税額軽減、名義預金、紛争、相続登記、未分割申告について誤解が生じやすくなります。次の一覧は、初回面談で早めに修正したい代表的な思い込みです。一般的な制度理解として読み、個別の結論は資料を見たうえで専門家へ確認する必要があります。
基礎控除以下かどうかは、財産評価、生前贈与、名義預金、死亡保険金、債務、葬式費用を整理して判断します。
一次相続の税額は下がっても、二次相続で子の税負担が増えることがあります。分割資料や申告も重要です。
名義だけでは決まりません。誰の資金で作られ、誰が管理し、誰が自由に使えたかが重要です。
税理士は税務の専門家です。代理交渉や訴訟代理が必要な紛争は、弁護士の関与が重要です。
相続税評価と相続登記は別です。不動産名義変更は司法書士が中心になります。
遺産分割がまとまらなくても、相続税の申告期限は原則として到来します。未分割申告が問題になります。
同じ相続でも、専門職によって見ているポイントは異なります。次の表は、初回面談でどの情報をどの専門職につなぐかを考えるための整理です。
| 専門職 | 主に見ていること |
|---|---|
| 税理士 | 課税価格、相続税総額、各人の税額、特例適用、納税方法、申告書作成、税務署対応 |
| 弁護士 | 相続人間の対立、遺留分、遺言の有効性、使い込み、遺産分割調停、審判、訴訟 |
| 司法書士 | 不動産名義、相続登記、戸籍収集、登記原因証明情報、登記に使える協議書 |
| 行政書士 | 争いのない範囲での書類作成、遺産分割協議書、相続関係説明図、行政手続の整理 |
| 不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士 | 時価評価、境界、分筆、売却実務、相続税評価額と売却価格の違い |
| 公認会計士、中小企業診断士 | 非上場株式、後継者、金融機関対応、経営改善、事業承継計画 |
| 家庭裁判所実務 | 調停、審判、特別代理人、遺言検認、相続放棄と税務申告期限のずれ |
不利な事実と不明な事実を隠さないことが、相続全体の設計につながります。
税理士との初回面談で聞かれることと伝えるべきことの中心は、資料リストの暗記ではありません。相続税申告は、死亡日から10か月という限られた期間の中で、戸籍、財産、債務、評価、遺産分割、特例、納税資金、準確定申告、相続登記、紛争対応を同時に進める総合実務です。
税理士が初回面談で聞くことは、すべて申告要否、税額、特例、期限、税務調査リスクに関係しています。読者が伝えるべきことは、預金、不動産、保険、債務、葬式費用、生前贈与、名義預金、死亡前引出し、遺言、分割協議、紛争、国外要素、会社関係、相続放棄の可能性です。
次の総合チェックリストは、初回面談で聞かれることと、依頼者が伝えるべきことを1つにまとめたものです。大分類ごとに抜けを確認し、該当しない項目は「なし」、分からない項目は「不明」と伝えることが実務上役立ちます。
| 大分類 | 税理士から聞かれること | 依頼者が伝えるべきこと |
|---|---|---|
| 期限 | 死亡日、死亡を知った日 | 10か月、4か月、3か月、3年の各期限に関係する事情 |
| 相続人 | 誰が相続人か | 前婚の子、養子、認知、行方不明、海外居住、未成年者 |
| 遺言 | 遺言書の有無 | 種類、保管場所、検認、遺言執行者、争い |
| 分割 | 協議状況 | 合意済み、協議中、未分割、調停予定、弁護士関与 |
| 預金 | 口座、残高、取引履歴 | ネット銀行、死亡前引出し、家族名義口座 |
| 証券 | 株式、投信、債券 | 口座種類、評価資料、売却予定 |
| 不動産 | 土地建物の所在 | 利用状況、賃貸、空き家、共有、登記未了、売却予定 |
| 保険 | 死亡保険金 | 契約者、被保険者、受取人、保険料負担者 |
| 債務 | 借入金、未払金 | 保証債務、医療費、税金、事業債務 |
| 葬儀 | 葬式費用 | 領収書、支払メモ、香典返しや法事費用との区分 |
| 贈与 | 生前贈与 | 贈与契約書、申告書、送金記録、相続時精算課税 |
| 事業 | 会社、個人事業 | 株主名簿、決算書、役員貸借、後継者 |
| 海外 | 国外財産、海外居住者 | 国籍、住所、国外口座、不動産、外国税務 |
| 紛争 | 争いの有無 | 使い込み、遺留分、遺言無効、資料不開示 |
| 専門家 | 他士業の関与 | 弁護士、司法書士、不動産鑑定士、金融機関担当 |
特に重要なのは、不利な事実と不明な事実を隠さないことです。名義預金かもしれない口座、使途不明の引出し、贈与契約書のない送金、兄弟間の対立、遺言の有効性への疑問、相続人の連絡不能、会社の保証債務などは、初回面談の段階で出すほど対応余地が広がります。
税理士との初回面談は、税額を計算する前に、相続全体の設計を作る場です。依頼者が正確な情報を出し、税理士が税務上の論点を整理し、必要に応じて弁護士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、公認会計士、金融機関担当者と連携することで、相続は申告作業だけでなく、紛争予防、納税資金確保、名義整理、次世代への承継まで含む実務として進められます。
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