入院がない交通事故の入通院慰謝料について、自賠責基準と弁護士基準を分けて整理します。月数表で読める部分と、通院日数や120万円上限で変わる部分を先に見分けることが重要です。
入院がない 交通事故の入通院慰謝料について、自賠責基準と弁護士基準を分けて整理します。
まず、よく使われる月数別の目安と、自賠責基準の読み方を並べて確認します。
交通事故で入院せずに外来通院だけで治療が進んだ場合、慰謝料の金額は「何か月通ったか」だけでは決まりません。弁護士基準は月数別の一覧で読みやすい一方、自賠責基準は実通院日数と治療期間を使う日数式で計算されます。
次の比較表は、通院1か月から6か月までの代表的な目安を並べたものです。自賠責欄は1か月を30日、月15回以上通院した場合の理論上の慰謝料成分を示しており、弁護士基準の列との差を見ることで、保険会社の提示額がどの基準に近いかを読み取れます。
| 通院期間 | 自賠責の理論上の上限目安 | 弁護士基準 別表II | 弁護士基準 別表I |
|---|---|---|---|
| 1か月 | 12.9万円 | 19万円 | 28万円 |
| 2か月 | 25.8万円 | 36万円 | 52万円 |
| 3か月 | 38.7万円 | 53万円 | 73万円 |
| 4か月 | 51.6万円 | 67万円 | 90万円 |
| 5か月 | 64.5万円 | 79万円 | 105万円 |
| 6か月 | 77.4万円 | 89万円 | 116万円 |
自賠責欄は、実際の支払額そのものではありません。治療費、通院交通費、文書料、休業損害なども同じ120万円枠を使うため、通院が長くなるほど、慰謝料だけを表で読んでも実態とずれる可能性があります。
入通院慰謝料を、死亡慰謝料や後遺障害慰謝料と混同しないことが出発点です。
ここでいう「通院のみ」とは、入院を伴わず、整形外科、脳神経外科、リハビリ科、接骨院等への外来通院で治療経過が進んだケースを指します。問題になるのは、初診日から治癒日または症状固定日までの期間、実際に通院した日数、傷病の内容や他覚所見の有無です。
交通事故の慰謝料は、死亡慰謝料、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料に分けて考えられます。このページの中心は、怪我をして通院したこと自体の精神的苦痛を評価する入通院慰謝料であり、示談書では「傷害慰謝料」とまとめて表示されることもあります。
次の一覧は、通院のみの場合に出てくる3つの基準の性質を並べたものです。どの基準で提示されているかによって金額差が大きくなるため、提示書を読む前に、計算の土台が最低限の自賠責なのか、保険会社内部の基準なのか、裁判実務を意識した弁護士基準なのかを見分けることが重要です。
最低限の被害者救済を目的とする基準です。慰謝料は1日4,300円を基礎に対象日数を掛け、傷害部分全体で被害者1人につき120万円の上限があります。
各保険会社が内部的に用いる基準です。対外的に公開されていないのが通常で、提示額だけを見ても社内基準なのか自賠責相当なのか分かりにくいことがあります。
裁判実務や示談実務で参照される算定表を基礎にする考え方です。通院のみでは別表Iと別表IIのどちらを使うかが大きな分岐になります。
症状固定は、治療を続けてもそれ以上症状の改善が望めない状態を意味します。完全に事故前の状態へ戻ったことではなく、症状固定後は原則として入通院慰謝料の問題から後遺障害の問題へ論点が移ります。
他覚所見のないむち打ち、軽い打撲、軽い挫創などで問題になりやすい表です。
別表IIは、むち打ち症で他覚所見がない場合、軽い打撲、軽い挫創などの通院のみケースで参照されやすい表です。月数が増えても金額の伸び方は次第に緩やかになるため、1か月、3か月、6か月、12か月の目安を押さえると、提示額の位置づけを読み取りやすくなります。
| 通院期間 | 通院のみの慰謝料目安 |
|---|---|
| 1か月 | 19万円 |
| 2か月 | 36万円 |
| 3か月 | 53万円 |
| 4か月 | 67万円 |
| 5か月 | 79万円 |
| 6か月 | 89万円 |
| 7か月 | 97万円 |
| 8か月 | 103万円 |
| 9か月 | 109万円 |
| 10か月 | 113万円 |
| 11か月 | 117万円 |
| 12か月 | 119万円 |
| 13か月 | 120万円 |
| 14か月 | 121万円 |
| 15か月 | 122万円 |
別表IIが問題になりやすい典型例は、追突事故後の頸椎捻挫、腰椎捻挫、軽い打撲、画像上明確な骨傷が確認できない軟部組織損傷です。ただし、むち打ちという診断名だけで常に別表IIになるわけではありません。
骨折や脱臼など、比較的重い傷害や客観資料を伴うケースで検討されます。
別表Iは、骨折、脱臼、画像や神経学的所見を伴う比較的重い傷害などで問題になる表です。同じ通院月数でも別表IIより高額になるため、保険会社の提示が軽傷表を前提にしていないかを確認する意味があります。
| 通院期間 | 通院のみの慰謝料目安 |
|---|---|
| 1か月 | 28万円 |
| 2か月 | 52万円 |
| 3か月 | 73万円 |
| 4か月 | 90万円 |
| 5か月 | 105万円 |
| 6か月 | 116万円 |
| 7か月 | 124万円 |
| 8か月 | 132万円 |
| 9か月 | 139万円 |
| 10か月 | 145万円 |
| 11か月 | 150万円 |
| 12か月 | 154万円 |
| 13か月 | 158万円 |
| 14か月 | 162万円 |
| 15か月 | 164万円 |
次の一覧は、別表Iを検討する際に見られやすい資料や事情を整理したものです。客観資料があるかどうかで慰謝料評価が変わる可能性があるため、診断名だけでなく、画像、神経学的所見、治療経過のどこに裏づけがあるかを読み取ることが大切です。
骨折、脱臼、明確な骨傷などが確認できる場合は、軽傷表だけで処理してよいかが争点になりやすいです。
神経根症状、筋力低下、反射異常、可動域制限など、第三者が確認できる所見が重要になります。
画像所見があっても、事故との因果関係、症状との整合性、医師の記載、治療経過が総合的に見られます。
通院のみでも、画像上明確な骨折がある、脱臼がある、神経学的所見を伴う、症状の重さが客観資料で裏づけられるといった事情があれば、別表Iの検討が重要になります。
自賠責基準は、4,300円と対象日数で計算する日数式です。
自賠責基準の慰謝料は、原則として4,300円に対象日数を掛けて計算します。対象日数は「治療期間」と「実通院日数×2」の少ない方で見るため、同じ3か月通院でも、月8回、月10回、月15回以上で金額が変わります。
次の判断の流れは、自賠責基準で何を先に確認するかを順番に整理したものです。月数だけで読まないことが重要なので、治療期間、実通院日数、120万円上限の順に確認すると、提示額の理由を理解しやすくなります。
初診日から治癒日または症状固定日までの期間を見ます。
実際に通った日数を2倍し、治療期間と比べます。
慰謝料成分の理論値を計算します。
治療費、交通費、休業損害なども同じ枠に入る点を見落とさないようにします。
次の表は、1か月を30日として固定し、治療費等の他費目をいったん除いて慰謝料成分だけを計算した理論値です。列は月ごとの通院回数の違いを表しており、同じ月数でも実通院日数が少ないと金額が下がること、月15回以上ではその月の治療期間に達しやすいことを読み取れます。
| 通院期間 | 月8回通院 | 月10回通院 | 月12回通院 | 月15回以上通院 |
|---|---|---|---|---|
| 1か月 | 6.88万円 | 8.60万円 | 10.32万円 | 12.90万円 |
| 2か月 | 13.76万円 | 17.20万円 | 20.64万円 | 25.80万円 |
| 3か月 | 20.64万円 | 25.80万円 | 30.96万円 | 38.70万円 |
| 4か月 | 27.52万円 | 34.40万円 | 41.28万円 | 51.60万円 |
| 5か月 | 34.40万円 | 43.00万円 | 51.60万円 | 64.50万円 |
| 6か月 | 41.28万円 | 51.60万円 | 61.92万円 | 77.40万円 |
月15回以上通院すると、その月の自賠責慰謝料は頭打ちになりやすくなります。1か月30日のうち実通院日数15日なら2倍で30日となり、それ以上通っても「治療期間」の方が短くなるためです。
同じ通院のみでも、傷病、他覚所見、通院頻度で差額の見え方が変わります。
次の比較表は、このページで扱う3つの典型例を、自賠責基準と弁護士基準で並べたものです。金額差だけでなく、なぜその差が出るのかを読むことが重要で、むち打ちでは通院頻度、骨折では別表Iを検討する資料が焦点になります。
| ケース | 自賠責基準の目安 | 弁護士基準の目安 | 差額 |
|---|---|---|---|
| むち打ちで3か月通院、月10回、他覚所見なし | 25.8万円 | 別表II 53万円 | 27.2万円 |
| むち打ちで6か月通院、月12回、他覚所見なし | 61.92万円 | 別表II 89万円 | 27.08万円 |
| 骨折で6か月通院、画像所見あり | 77.4万円 | 別表I 116万円 | 38.6万円 |
通院3か月で25万円前後の提示であれば、自賠責相当またはそれに近い計算の可能性があります。一方、通院3か月で53万円前後であれば、他覚所見のないむち打ち等に対する弁護士基準の別表IIを意識した計算と読む余地があります。
骨折や明確な他覚所見があるのに別表IIで処理されると、賠償評価が大きく下がる可能性があります。金額だけを見るのではなく、傷病名、画像所見、診断書、治療内容、リハビリ経過をあわせて確認することが大切です。
長く通えば自動的に高額になるわけではなく、実通院日数や症状固定が影響します。
次の一覧は、通院期間が長いのに慰謝料が思ったほど伸びない主な理由を整理したものです。どの事情があるかによって、月数表をそのまま読めるのか、実通院日数や医療記録で調整されるのかが変わるため、減額されやすいポイントを先に確認できます。
長期通院でも実際の通院回数が少ない場合、軽傷では実通院日数の3倍程度、重傷では3.5倍程度を算定期間の目安にすることがあります。
むち打ち等で別表IIが使われると、6か月通院でも89万円が目安です。別表Iの116万円とは27万円の差があります。
症状固定が早いと、入通院慰謝料の対象期間そのものが短くなります。ただし、単なる保険会社都合で決まるものではありません。
整骨院だけだと、診断書、画像検査、医師管理下の治療、後遺障害診断書の面で不利に評価される可能性があります。
治療費の打切りと、賠償上の治療必要性は同じではありません。主治医が治療継続の必要性を認めている場合、その後の治療費や慰謝料の評価余地が問題になることがあります。
整骨院通院自体が直ちに否定されるわけではありませんが、施術の必要性、有効性、内容の合理性、期間の合理性、費用の相当性が見られます。医師の指示があると評価されやすい一方、医師の指示があれば常に全額が認められるとは限りません。
通院のみのケースほど、医療記録と提示額の読み方が金額差につながります。
次の時系列は、事故直後から示談前までに、慰謝料評価と関係しやすい確認事項を並べたものです。順番に見ることで、初診、症状の一貫性、検査、治療内容、保険会社提示額のどこで資料不足が起きやすいかを把握できます。
症状が軽く見えても、後から頸部痛、頭痛、めまい、しびれが強くなることがあります。初診が遅れると、事故と症状の関係が争点になりやすくなります。
頸部痛、上肢のしびれ、腰痛、可動域制限、頭痛、吐き気などの部位や性質は、カルテ、画像、リハビリ記録、神経学的所見で見られます。
骨折、脱臼、椎間板病変、神経根症状、筋力低下、反射異常などが疑われるときは、検査の精度が別表の選択や後遺障害の検討に関係します。
自賠責相当、任意保険社内基準、弁護士基準のどれを見据えているかを確認し、項目が分かれていない提示書では入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の混同に注意します。
次の一覧は、通院のみの慰謝料で特に見落とされやすい実務上の確認事項です。いずれも、単に通院回数を増やす話ではなく、治療の必要性と資料の整合性を説明できるかに関係します。
漫然と通っているのか、症状改善のために合理的な治療を受けているのかは、通院頻度だけでなく治療内容でも見られます。
医療記録自賠責の120万円は慰謝料だけではなく、治療費、文書料、交通費、休業損害を合算した傷害全体の上限です。
自賠責打切り後も治療が必要とされる場合、主治医の意見、健康保険利用、自己負担通院の記録が後日の評価に関係することがあります。
保険対応端数期間では、月数表をそのまま読むのではなく日割りの考え方を使います。
通院20日、45日、135日など、ちょうど1か月や3か月で終わらないケースでは、月数表の数字をそのまま当てはめることができません。実務では、1か月を30日として日割計算する考え方が使われます。
次の判断の流れは、別表IIを例に端数期間をどう読むかを整理したものです。30日を1か月として扱うため、20日は1か月未満として按分し、45日は1か月と2か月の間を15日分だけ按分して考える点を読み取れます。
月数表の基準点を日数へ置き換えます。
別表IIなら、1か月19万円を30日で割り、20日を掛けて約12万6,667円と考えます。
1か月19万円と2か月36万円の間を、15日分だけ按分して考えます。
交通事故では、1か月ぴったり、3か月ぴったりで治療が終わる事案の方が少ないため、端数期間の処理は実務上とても重要です。保険会社の提示額を見る際も、月数表の数字と実際の治療日数がずれていないかを確認する必要があります。
個別の結論は事故態様や資料で変わるため、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、症状固定後に後遺障害等級が認定された場合、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が問題になるとされています。ただし、症状、検査結果、医療記録、等級認定の結果によって結論が変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、治療期間と実通院日数×2の比較では、月15回でその月の上限側に達しやすいとされています。ただし、傷害全体で120万円の上限があり、治療費や休業損害も同じ枠に入るため、慰謝料がそのまま受け取れるとは限りません。具体的な計算は、費目ごとの内訳を確認する必要があります。
一般的には、合理的な治療として認められる場合、整骨院への通院日も評価対象になる可能性があります。ただし、医師の指示、整形外科との併用、施術内容や期間の合理性によって評価が変わります。個別の扱いは、医療記録や施術記録を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、89万円は他覚所見のないむち打ち等について、通院6か月をそのまま別表IIで評価した場合の目安とされています。ただし、実通院日数が少ない、症状固定が早い、事故との因果関係に争いがある、医療記録が薄いなどの事情で評価が変わる可能性があります。
一般的には、骨折がある場合、別表Iの検討が問題になることがあります。ただし、画像、診断書、治療内容、リハビリ経過、事故との因果関係によって評価は変わります。提示額の妥当性は、保険会社の書面だけで判断せず、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
月数表だけで終わらせず、基準、通院頻度、症状固定、医療記録を順番に確認します。
通院のみの場合の慰謝料について、弁護士基準では月数別一覧表が使いやすく、軽傷の中心は別表II、重傷や他覚所見を伴うケースの中心は別表Iです。一方、自賠責基準は月数だけでは決まらず、実通院日数と120万円上限が重要になります。
次の判断の流れは、示談前に確認する順番をまとめたものです。表の金額にすぐ当てはめるのではなく、別表の選択、通院期間、実通院日数、提示額の基準、症状固定や後遺障害の有無という順に見ることで、どこに争点があるかを整理できます。
むち打ち等の軽傷扱いか、骨折等の客観資料を伴う傷害かを見ます。
初診日から治癒日または症状固定日までを確認します。
低頻度通院の場合、月数表どおりに読めない可能性があります。
自賠責相当、任意保険基準、弁護士基準のどれに近いかを確認します。
症状固定、後遺障害、整骨院通院、治療費打切りが絡む場合は資料を分けて検討します。
交通事故の慰謝料は、単なる相場表だけでは理解しきれません。法律、医療、保険、証拠評価が同時に関わるため、通院のみのケースこそ、医療記録と算定基準の差がそのまま金額差になることがあります。
公的資料と中立的な交通事故相談資料を中心に、法律実務解説は論点名へ一般化しています。