2σ Guide

適時開示の対象事実と判断基準
上場会社が直ちに開示すべき会社情報を見極める

上場規程の列挙項目、軽微基準、バスケット条項、TDnet実務、インサイダー取引規制との接点を、企業法務・IR・経理が同じ目線で確認できるよう整理します。

3視点 列挙項目・軽微基準・実質的重要性
30% 利益・純資産などで現れる主要な目安
12手順 開示要否を運用する確認順序
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適時開示の対象事実と判断基準 上場会社が直ちに開示すべき会社情報を見極める

結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。

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適時開示の対象事実と判断基準 上場会社が直ちに開示すべき
会社情報を見極める
結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。
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  • 適時開示の対象事実と判断基準 上場会社が直ちに開示すべき会社情報を見極める
  • 結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。

POINT 1

  • 適時開示の対象事実と判断基準の全体像
  • 結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。
  • 列挙項目、軽微基準、実質的重要性を同時に見る
  • 開示項目の入口を分類する
  • 軽微基準を過信しない

POINT 2

  • 適時開示の対象事実は上場会社本体と子会社等で整理する
  • 対象情報の分類を誤ると、参照すべき軽微基準、開示様式、開示時期もずれます。
  • 適時開示制度は、重要な会社情報を上場会社から投資者へ広く、迅速かつ公平に届けるための取引所規則上の制度です。
  • 有価証券報告書や臨時報告書などの法定開示とは重なる場面がありますが、即時性と市場への情報提供という役割が異なります。
  • 東証の上場規程に定められた内容は最低限の要件であり、それを満たすだけで情報提供として十分とは限りません。

POINT 3

  • 適時開示の決定事実と発生事実は時点の見極めが重要
  • 1. 会社の意思決定かを確認:自社が行うこと又は行わないことを実質的に決めた情報かを整理します。
  • 2. 外部的な事実の発生かを確認:災害、訴訟、行政処分、取引停止、監査意見など、会社の意思決定ではない事実を区別します。
  • 3. 確定情報を開示資料へ:理由、概要、見通し、業績影響、未定事項を切り分けます。
  • 4. 未定事項を明示:全部が分かるまで待つのではなく、判明事実と今後の確認予定を示します。

POINT 4

  • 適時開示の軽微基準とバスケット条項をどう使い分けるか
  • 軽微基準は開示不要の安全地帯ではなく、投資判断への影響を確認するための制度的フィルターです。
  • 軽微基準は、投資者の投資判断に与える影響が軽微なものを開示義務の対象外とするための基準です。
  • ただし、項目ごとに比較対象や計算方法が異なり、量的基準だけでは定性的に重要な情報を捉えきれません。
  • 次の横棒グラフは、適時開示でしばしば参照される量的な目安を並べたものです。

POINT 5

  • 適時開示の業績予想修正と決算情報は数値基準だけで終わらない
  • 連結・単体と会計基準
  • 連結財務諸表作成会社か、単体のみか、日本基準・IFRS・米国基準の違いを確認します。
  • 利益項目の選択
  • 営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益など、比較対象となる利益項目を確認します。

POINT 6

  • 適時開示の判断基準はインサイダー取引規制・FDルール・臨時報告書と連動する
  • TDnetの公表時点、選択的開示、EDINET提出との整合性を同時に管理します。
  • TDnetとウェブサイト掲載
  • 適時開示は、インサイダー取引規制と密接に関係します。
  • 担当部署が分かれるほど判断漏れが起きやすいため重要であり、同じ事実をどの制度で確認するかを読み取ります。

POINT 7

  • 適時開示の時期と開示資料の品質をどう管理するか
  • 1. 会議時刻と開示作業を合わせる:取締役会・経営会議の開始時刻を、TDnet開示に間に合う時間帯へ設計します。
  • 2. 会議終了を待たずに登録準備:開示対象議案の承認が得られた段階で、必要な確認と登録作業を進めます。
  • 3. TDnetを先行させる:決算短信、記者発表、社内通知、取引先説明、英文開示の順序を明確にします。
  • 4. 経過・変更・訂正を管理する:未確定事項が判明した場合や内容が変わった場合は、後続開示で補充します。

POINT 8

  • 適時開示の対象事実と判断基準を12ステップで運用する
  • 情報の発生源を特定する
  • 情報の状態を分類する
  • 決定事実・発生事実・決算情報を分ける
  • 上場規程の個別項目を確認する
  • 軽微基準を確認する
  • 軽微と明確にいえるか確認する
  • バスケット条項を検討する
  • 周辺制度を並行確認する
  • 開示時期を決める
  • 開示資料を作成する
  • 東証への事前説明を行う
  • 後続開示・訂正・変更を管理する
  • 情報発生源から後続開示まで、同じ順序で確認できる一次判定プロセスを整備します。

まとめ

  • 適時開示の対象事実と判断基準 上場会社が直ちに開示すべき
  • 適時開示の対象事実と判断基準の全体像:結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。
  • 適時開示の対象事実は上場会社本体と子会社等で整理する:対象情報の分類を誤ると、参照すべき軽微基準、開示様式、開示時期もずれます。
  • 適時開示の決定事実と発生事実は時点の見極めが重要:取締役 会決議の有無だけでなく、実質的な決定、発生の認識、未確定情報の扱いを確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

適時開示の対象事実と判断基準の全体像

結論は、形式的な項目該当性だけではなく、投資者から見た情報価値まで確認することです。

適時開示の対象事実と判断基準は、上場会社又はその子会社等に関する会社情報が、決定事実、発生事実、決算情報、業績予想・配当予想の修正、その他の重要情報に該当するかを判定する枠組みです。個別項目に当たるか、軽微基準で除外できるか、さらにバスケット条項により実質的な重要性があるかを順に確認します。

実務では、単なる一覧表の照合で終わらせると危険です。企業価値、将来キャッシュ・フロー、市場価格、情報管理リスク、投資者の期待形成に影響する情報は、個別項目や数値基準だけでなく、開示した場合と開示しない場合の市場への影響まで検討する必要があります。

次の重要ポイントは、開示要否を判定するときに最初に押さえるべき考え方を表しています。各項目は、なぜ投資者保護に重要なのか、どこで判断漏れが起きやすいのかを読み取るための入口になります。

列挙項目、軽微基準、実質的重要性を同時に見る

適時開示は、上場規程の個別項目に当たるかだけでなく、軽微基準の明確性と、投資判断への実質的な影響を合わせて判断します。迷う場合は、影響額が未定であることを示したうえで段階的に開示する発想が重要です。

以下の一覧は、実務で確認すべき5つの論点を並べたものです。法務・経理・IR・事業部門で見る観点が分かれるため重要であり、各担当がどの段階で関与すべきかを読み取れます。

POINT 01

開示項目の入口を分類する

決定事実、発生事実、決算情報、業績予想修正、子会社等情報のどれに当たるかを最初に整理します。

POINT 02

軽微基準を過信しない

数値基準に収まるように見えても、投資者の判断に重要ならバスケット条項で開示対象となる可能性があります。

POINT 03

決定時点と認識時点を分ける

決定事実は実質的な意思決定時点、発生事実は会社として認識した時点が問題になります。

POINT 04

未確定でも判明事実を切り分ける

全容が未判明でも、確定情報、未定事項、今後の見通しを分けて開示する運用が求められます。

POINT 05

制度を横断して確認する

適時開示、臨時報告書、インサイダー取引規制、FDルール、自社株売買管理を同時に確認します。

Section 01

適時開示の対象事実は上場会社本体と子会社等で整理する

対象情報の分類を誤ると、参照すべき軽微基準、開示様式、開示時期もずれます。

適時開示制度は、重要な会社情報を上場会社から投資者へ広く、迅速かつ公平に届けるための取引所規則上の制度です。有価証券報告書や臨時報告書などの法定開示とは重なる場面がありますが、即時性と市場への情報提供という役割が異なります。

東証の上場規程に定められた内容は最低限の要件であり、それを満たすだけで情報提供として十分とは限りません。事業環境の急変、不祥事、サイバーインシデント、重要取引先の破綻などは、個別項目だけでなく市場がどう受け止めるかを含めて判断します。

次の比較表は、上場会社本体に関する対象事実の入口を示しています。分類ごとに確認すべき資料と判断時点が変わるため重要であり、まず自社の情報がどの行に近いかを読み取ります。

類型内容の概要実務上の典型例
上場会社の決定事実業務執行を決定する機関が、一定の事項を行うこと又は行わないことを決定した場合募集株式発行、自己株式取得、株式分割、配当、合併事業譲渡、業務提携、新規事業、代表者異動、借入・社債、定款変更
上場会社の発生事実会社の意思決定ではなく、外部要因又は事実状態として発生・認識された重要事実災害・事故損害、主要株主異動、訴訟、行政処分、破産申立て、取引停止、債務免除、期限の利益喪失、監査意見、提出遅延
決算情報決算短信、中間期決算短信、第1・第3四半期決算短信通期・中間・四半期決算短信、決算発表遅延、訂正、監査レビュー上の問題
業績予想・配当予想の修正等業績予想の修正、予想値と決算値との差異、配当予想又は配当予想の修正業績上方修正、下方修正、赤字転落、黒字転換、増配、減配、無配
その他の情報投資単位引下げ、財務会計基準機構への加入状況、MSCB等、支配株主等、非上場親会社決算、成長可能性、上場維持基準関連グロース市場の事業計画、上場維持基準への適合計画、支配株主との関係情報

適時開示の対象は上場会社本体だけではありません。子会社、孫会社、海外子会社、持分法適用会社、JV、SPCで発生した事象も、親会社の連結業績、企業価値、内部統制、信用に影響するなら親会社の開示判断対象になります。

注意子会社側で「単体の問題」と見える行政処分、税務調査、品質不正、データ改ざん、重要契約の解除でも、親会社の投資者から見れば重要な会社情報となることがあります。
Section 02

適時開示の決定事実と発生事実は時点の見極めが重要

取締役会決議の有無だけでなく、実質的な決定、発生の認識、未確定情報の扱いを確認します。

決定事実は、業務執行を決定する機関が一定の行為を行うこと又は行わないことを決定した場合に問題となります。取締役会だけでなく、代表取締役、執行役、経営会議、投資委員会、事業本部長などに実質的な決定権限がある場合、その決定時点が開示時期に影響します。

相手方の取締役会決議、当局認可、株主総会決議、独占禁止法上のクリアランス、金融機関同意などが残っていても、自社として行為を決定した時点で開示が必要となる場合があります。その場合は、条件が未了であることを開示資料に明記する設計が重要です。

次の判断の流れは、決定事実と発生事実で見るべき時点の違いを表しています。開示遅延を防ぐために重要であり、どの段階でIR・法務・経理へ連携すべきかを読み取ります。

決定・発生・未確定情報の判断順序

会社の意思決定かを確認

自社が行うこと又は行わないことを実質的に決めた情報かを整理します。

外部的な事実の発生かを確認

災害、訴訟、行政処分、取引停止、監査意見など、会社の意思決定ではない事実を区別します。

判明している
確定情報を開示資料へ

理由、概要、見通し、業績影響、未定事項を切り分けます。

未判明が残る
未定事項を明示

全部が分かるまで待つのではなく、判明事実と今後の確認予定を示します。

決定事実で問題となりやすい局面

  • M&A、業務提携、共同開発、資本業務提携、大型ライセンス契約で、相手方決議や当局認可が未了の場面
  • 不祥事調査、品質問題、サイバーインシデント、訴訟で、損害額や影響範囲の全容が分からない場面
  • 個別項目に直接当てはまらない借入、社債、有価証券売却、大規模受注、繰延税金資産の計上又は取崩しなどの場面

発生事実で問題となりやすい局面

発生事実は、災害損害、主要株主異動、訴訟、行政処分、破産申立て、手形不渡り、債権取立不能、取引停止、債務免除、資源発見、財務上の特約違反、提出遅延、監査意見などが典型です。実務上は、社長や取締役会が正式に報告を受けた時点だけでなく、会社組織として認識し、開示担当部署へ伝達されるべき状態になったかが問題になります。

重要品質保証部門、海外子会社、法務部、経理部、監査法人からの情報が開示担当部署に届かない運用は、開示遅延の主要原因になります。
Section 03

適時開示の軽微基準とバスケット条項をどう使い分けるか

軽微基準は開示不要の安全地帯ではなく、投資判断への影響を確認するための制度的フィルターです。

軽微基準は、投資者の投資判断に与える影響が軽微なものを開示義務の対象外とするための基準です。ただし、項目ごとに比較対象や計算方法が異なり、量的基準だけでは定性的に重要な情報を捉えきれません。

次の横棒グラフは、適時開示でしばしば参照される量的な目安を並べたものです。利益、純資産、売上高など比較対象が異なるため重要であり、数字の大小だけでなく、何と比べる基準なのかを読み取ります。

連結純資産
30%
連結売上高
10%
連結経常利益
30%
親会社株主利益
30%
数値は本文で扱う代表的な開示目安です。個別項目、会計基準、連結・単体、直近予想の有無により判定方法は変わります。

軽微基準に該当するか明らかでない場合にも、適時開示を行うことが求められる点が実務上の核心です。影響額が未定であれば、未定であること、判明次第速やかに開示することを示し、後続開示で補う運用が考えられます。

次の比較表は、バスケット条項で総合すべき判断軸を示しています。個別項目や数値だけでは拾いきれない重要性を把握するために重要であり、投資者が何を材料に判断を変えるのかを読み取ります。

判断軸検討内容
将来キャッシュ・フロー売上、利益、資産、負債、投資、資金繰り、配当余力、事業継続性への影響
企業価値収益構造、事業ポートフォリオ、競争優位、知財、許認可、ブランド、人的資本、顧客基盤への影響
市場価格公表されれば株価、債券価格、信用リスク評価、レーティング等に影響し得るか
情報の確度決定済み、合意済み、通知受領済み、発生確認済み、調査中、見込み、報道・噂等のいずれか
定量的重要性純資産、売上高、利益、総資産、投資額、損害額、受注額等との比較
定性的重要性許認可、上場維持、内部統制、経営陣の信用、不祥事、コンプライアンス、ESG、データ保護等への影響
情報管理リスク社内外に知る者が多いか、漏えい、選択的開示、インサイダー取引リスクが高いか
投資者の期待形成中期計画、業績予想、成長戦略、資本政策との整合性が変わるか
判断軸主力製品の安全性問題、主要取引先からの契約解除、許認可取消しのおそれ、重大な情報漏えい、経営陣の不祥事などは、短期的な数値影響が未確定でも重要情報となる可能性があります。
Section 04

適時開示の業績予想修正と決算情報は数値基準だけで終わらない

業績予想、レンジ開示、修正理由、決算短信の品質は、投資者の理解に直結します。

決算短信等は、投資者が業績、財政状態、キャッシュ・フロー、今後の見通しを理解する基礎資料です。決算短信の遅延、訂正、監査レビュー上の問題、継続企業の前提、内部統制の重要な不備は、経理処理だけでなく適時開示・上場管理・投資者保護の問題になります。

業績予想修正では、直近公表予想値がゼロの場合、新たな予想値を算出した場合、決算取りまとめで差異を把握した場合、利益項目の正負が逆転する場合に注意が必要です。レンジ形式では、売上高が0.9超1.1未満、利益項目が0.7超1.3未満の範囲にないときに開示が問題となります。

次の一覧は、業績予想修正で実務担当者が並行して確認する論点を整理したものです。単純な売上10%・利益30%の暗記では足りないため重要であり、どの前提が変わったかを読み取ります。

連結・単体と会計基準

連結財務諸表作成会社か、単体のみか、日本基準・IFRS・米国基準の違いを確認します。

利益項目の選択

営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益など、比較対象となる利益項目を確認します。

直近予想と前期実績

直近公表予想値があるか、なければ前期実績を用いるのかを整理します。

予想値の状態

ゼロ、赤字、黒字、レンジ開示のどれに当たるかにより判定の見方が変わります。

算出・把握の時点

新たな予想値を算出した時点、又は決算取りまとめで差異を把握した時点を確認します。

定性的重要性

基準に満たなくても、事業環境変化、継続的修正、特定セグメントの急変を確認します。

修正理由は、抽象的な説明にとどめず、定量的要因の変動、経営施策の進捗、期中の経営成績を踏まえて具体的に示すことが望まれます。主要セグメント、地域、製品、顧客、価格・数量、為替、原価率、販管費、特別損益、税効果、減損、在庫評価、訴訟引当金など、投資者が影響の原因を把握できる粒度を意識します。

Section 06

適時開示の時期と開示資料の品質をどう管理するか

「直ちに」は引け後開示を当然視せず、社内手続が了したタイミングでの速やかな開示を前提にします。

東証は、重要な会社情報の決定又は発生時に直ちに開示することを求めています。立会時間中であるか否かを問わず、社内手続が了したタイミングで速やかに開示することが基本であり、引け後開示を当然の前提にしない運用が重要です。

次の時系列は、開示時刻を設計する際の実務上の順序を示しています。会議、TDnet登録、社内外説明の順番をあらかじめ整えるために重要であり、どの作業が遅れると開示全体が遅延するかを読み取ります。

事前設計

会議時刻と開示作業を合わせる

取締役会・経営会議の開始時刻を、TDnet開示に間に合う時間帯へ設計します。

承認直後

会議終了を待たずに登録準備

開示対象議案の承認が得られた段階で、必要な確認と登録作業を進めます。

公表順序

TDnetを先行させる

決算短信、記者発表、社内通知、取引先説明、英文開示の順序を明確にします。

後続対応

経過・変更・訂正を管理する

未確定事項が判明した場合や内容が変わった場合は、後続開示で補充します。

次の一覧は、開示遅延が生じやすい原因を示しています。法律知識だけでなく、情報収集、権限、部門連携、経営者関与が影響するため重要であり、自社の連絡経路に同じ弱点がないかを読み取ります。

事業部門からの報告不足

悪いニュースが法務・IRに上がらず、初動が遅れることがあります。

子会社情報の滞留

海外子会社や地域統括会社からの情報が親会社の開示担当部署へ届かないことがあります。

重要会議への不参加

経営会議で重要案件が議論されても、開示担当が出席していないと判断が遅れます。

会計・法務の分断

経理は業績影響を把握し、法務は契約上の論点を把握していても、両者が接続されないことがあります。

監査法人指摘の未共有

監査意見、内部統制、決算遅延の兆候が開示担当へ共有されないことがあります。

外部専門家との時間設計不足

契約交渉、調査、会計処理のスケジュールに適時開示の時刻が織り込まれていないことがあります。

開示資料の品質

開示資料には、原則として、決定理由又は発生経緯、概要、今後の見通し、投資判断上重要な事項を記載します。正確性、十分性、明瞭性、中立性、過去開示との整合性、将来見通しの示し方を確認し、投資者が判断できる内容にする必要があります。

Section 07

適時開示の対象事実と判断基準を12ステップで運用する

情報発生源から後続開示まで、同じ順序で確認できる一次判定プロセスを整備します。

開示要否を安定して判定するには、案件ごとに同じ順序で確認する仕組みが必要です。部門ごとの属人的判断を避けるため重要であり、各手順で何を記録し、誰へ連携するかを読み取ります。

Step 1

情報の発生源を特定する

本体、子会社、海外拠点、取引先、金融機関、監査法人、行政庁、裁判所、株主、報道機関のどこから生じたかを確認します。

Step 2

情報の状態を分類する

検討、交渉、内諾、契約締結、決議、通知受領、発生確認、調査中、報道・噂、当局照会などの状態を整理します。

Step 3

決定事実・発生事実・決算情報を分ける

会社の意思決定、外部要因、決算数値・予想値の変化のどれかを判定します。

Step 4

上場規程の個別項目を確認する

開示項目一覧、会社情報適時開示ガイドブック、上場会社向けナビゲーションシステムで該当項目を確認します。

Step 5

軽微基準を確認する

連結・単体、IFRS、純資産、総資産、売上高、利益、資本金、負債総額、過去平均、レンジ予想を誤らないよう確認します。

Step 6

軽微と明確にいえるか確認する

明確に軽微と判断できない場合は、開示を前提に未定事項と後続開示を検討します。

Step 7

バスケット条項を検討する

個別項目に当たらない場合や軽微基準に該当する場合でも、投資判断への著しい影響を確認します。

Step 8

周辺制度を並行確認する

臨時報告書、自社株売買停止、役職員売買管理、情報伝達管理、FDルールの論点を同時に確認します。

Step 9

開示時期を決める

決定事実は実質的な決定時点、発生事実は認識時点、業績予想修正は新たな予想値算出時又は決算取りまとめ時を基準にします。

Step 10

開示資料を作成する

理由・経緯、概要、見通し、業績影響、未確定事項、リスク、手続日程、相手方、会計処理を記載します。

Step 11

東証への事前説明を行う

第三者割当、M&A、TOB、上場廃止が見込まれる株式併合、買収対応方針では早期相談が必要となる場合があります。

Step 12

後続開示・訂正・変更を管理する

事実の進展、未確定事項の判明、中止・変更、訂正が生じた場合は継続的に開示します。

Section 08

適時開示の体制は経営・法務・経理・IR・監査で分担する

上場会社の開示判断は、単独部署の作業ではなく内部統制システムの一部です。

適時開示体制では、経営陣が重要性を認識し、開示担当部署に権限・人員・予算・教育機会を与える必要があります。重要会議に開示担当責任者を参加させ、子会社・海外拠点からの情報連携を制度化することが、開示遅延を防ぐ基盤になります。

次の一覧は、実務部門ごとの主な役割を表しています。担当が分かれるほど情報が分断されるため重要であり、どの部署がどの論点を早期に拾うべきかを読み取ります。

経営

取締役・経営陣

迅速・正確・公平な開示を経営方針として示し、重要会議、子会社管理、開示遅延の検証を主導します。

法務

法務・商事法務

契約、会社法、上場規程、金商法、臨時報告書、FDルール、訴訟、行政処分、不祥事調査を横断します。

会計

経理・財務・公認会計士

業績予想修正、減損、税効果、引当金、資金繰り、財務制限条項、監査意見、内部統制報告を確認します。

IR

IR・広報

投資者、アナリスト、報道機関への情報伝達、質疑応答、英文開示、ウェブサイト掲載、SNS対応を管理します。

監査

内部監査・監査役等

重要会議、契約審査、子会社報告、事故報告、内部通報、監査法人指摘、自社株売買承認制度を監視します。

外部

外部専門家

弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、弁理士、社労士、証券会社、PR会社などが専門領域ごとに関与します。

開示体制のチェックポイント

  • 重要契約、M&A、投資、訴訟、事故、不祥事、子会社情報が開示担当部署に自動的に連携されるか
  • 開示要否判断の責任者と代替者が明確か
  • 上場規程、軽微基準、臨時報告書、インサイダー取引規制を一体で確認する様式があるか
  • 影響額未定の場合の暫定開示・経過開示方針があるか
  • 開示判断の記録、根拠資料、承認履歴を保存しているか
  • 未公表重要情報のアクセス権限、自社株売買停止、外部専門家との秘密保持が連動しているか
  • 内部監査や監査役等が過去の開示判断を振り返り、判断基準を更新しているか

中小上場会社やIPO準備会社では、法務・IR・経理・総務の人員が限られ、同一担当者が複数機能を兼務することが多くなります。開示担当者不在時の滞留、取締役会議案との不連動、会計影響把握の遅れ、自社株売買管理との分断を防ぐため、簡易な重要情報連絡票、一次判定シート、子会社報告テンプレート、開示判断会議体を整備することが有効です。

Section 09

適時開示の判断基準で誤解しやすい論点と事案別の見方

よくある理解のずれを、一般的な制度説明として整理します。

取締役会決議までは開示不要と考えてよいですか

一般的には、形式的な取締役会決議だけでなく、会社の業務執行を実質的に決定する機関による決定時点が問題になるとされています。ただし、権限規程、案件の成熟度、契約条件、相手方との調整状況によって判断は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

軽微基準に該当すれば開示不要と考えてよいですか

一般的には、個別項目で軽微基準に該当しても、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす情報はバスケット条項により開示対象となる可能性があります。ただし、影響額、情報の確度、事業への影響、情報管理状況によって結論は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

影響額が未定なら開示を待てますか

一般的には、全容が未確定でも、判明している事実と未判明事項を区分して開示し、その後の進展を経過開示する考え方が示されています。ただし、未判明事項の内容、投資判断への影響、誤解防止の必要性によって記載内容は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

子会社の問題は親会社の適時開示から外れますか

一般的には、子会社等の決定事実、発生事実、業績予想の修正等も親会社の適時開示対象となる可能性があります。ただし、連結業績、企業価値、内部統制、信用、レピュテーションへの影響によって判断は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

事前にウェブサーバへ開示資料を置いてもよいですか

一般的には、TDnet開示前に公開ディレクトリへ保存する場合は、外部者が容易にアクセスできないよう管理する必要があるとされています。ただし、サーバ構成、アクセス制御、外部委託先の運用、キャッシュの有無によってリスクは変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

事案別にどのような情報が問題になりますか

次の一覧は、事案ごとに確認しやすい論点を整理したものです。個別事案の結論を決めるものではありませんが、初動で何を集めるべきかを考えるために重要であり、投資判断への影響をどの方向から見るかを読み取ります。

CASE 01

大口受注

受注総額、年度別売上見込み、利益率、契約条件、解除条件、顧客集中リスク、設備投資、運転資金、業績予想への影響を確認します。

CASE 02

サイバー攻撃・情報漏えい

被害範囲、事業停止、顧客影響、行政対応、業績影響、再発防止費用、信用への影響を確認します。

CASE 03

行政処分・当局調査

調査開始、報告徴求、立入検査、処分案、処分決定、課徴金納付命令など、情報の確度と影響を評価します。

CASE 04

重要訴訟

訴額、請求内容、差止め、知財・許認可・主力製品への影響、引当金、和解可能性、業績予想への影響を確認します。

CASE 05

不祥事・内部調査

調査開始、委員会設置、調査報告書、再発防止策、過年度訂正、決算延期、役員処分を段階的に管理します。

CASE 06

財務制限条項・減損

特約違反、期限の利益喪失、金融支援、継続企業の前提、繰延税金資産、固定資産減損、棚卸資産評価を確認します。

まとめ適時開示の対象事実と判断基準は、開示違反を避けるだけでなく、市場に対してどのような姿勢で情報提供するかという企業統治の問題です。迷ったときは、投資者が知れば判断を変える可能性があるか、情報が社内外に滞留してリスクを生まないか、開示資料が正確に理解できる内容かに戻って確認します。
Reference

この記事の参考情報源

取引所・行政機関の資料

  • 日本取引所グループ「会社情報適時開示ガイドブック」
  • 日本取引所グループ「適時開示制度の概要」
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法令・金融行政資料

  • e-Gov 法令検索「金融商品取引法」
  • e-Gov 法令検索「金融商品取引法施行令」
  • e-Gov 法令検索「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」
  • e-Gov 法令検索「企業内容等の開示に関する内閣府令」
  • 金融庁「インサイダー取引規制に関するQ&A」
  • 金融庁「フェア・ディスクロージャー・ルール」
  • 証券取引等監視委員会「金融商品取引法における課徴金事例集 不公正取引編」