2σ Guide

環境・税務・労務に関する表明保証を
M&A契約実務から整理する

対象会社の過去の環境、税務、労務リスクは、買収後に行政対応、追徴、未払賃金、是正費用として顕在化し得ます。このページでは、表明保証、デューデリジェンス、開示別紙、補償、責任制限、PMIを一体で設計する考え方を整理します。

3分野 環境・税務・労務を横断
1,500kl エネルギー起源CO2報告の目安
60日 フリーランス報酬支払の原則
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環境・税務・労務に関する表明保証を M&A契約実務から整理する

対象会社の過去の環境、税務、労務リスクは、買収後に行政対応、追徴、未払賃金、是正費用として顕在化し得ます。

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環境・税務・労務に関する表明保証を M&A契約実務から整理する
対象会社の過去の環境、税務、労務リスクは、買収後に行政対応、追徴、未払賃金、是正費用として顕在化し得ます。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 環境・税務・労務に関する表明保証を M&A契約実務から整理する
  • 対象会社の過去の環境、税務、労務リスクは、買収後に行政対応、追徴、未払賃金、是正費用として顕在化し得ます。

POINT 1

  • 環境・税務・労務に関する表明保証の全体像
  • 過去の事実が将来に現れる
  • 土壌汚染、未払残業代、過年度税務処理の誤りは、買収後に行政対応、訴訟、追徴、追加支出として顕在化します。
  • 第三者と行政の影響が大きい
  • 行政庁、税務署、労働基準監督署、労働者、退職者、近隣住民、処理業者など、当事者外の行動がリスクを左右します。

POINT 2

  • 環境・税務・労務に関する表明保証の基本概念
  • 表明保証は、一定時点の事実確認と、違反時のリスク配分をつなぐ条項です。
  • 日本法上、表明保証は民法に直接定義された典型契約ではないため、効果は契約書の書き方によって大きく変わります。
  • 読者にとって重要なのは、表明保証だけを読んでも責任範囲は決まらず、補償や責任制限と合わせて読む必要があることです。
  • 各行から、どの条項がどの機能を担うかを確認できます。

POINT 3

  • 環境・税務・労務に関する表明保証を特別扱いする理由
  • 潜在債務、行政責任、長い時間軸、抽象条項の限界を整理します。
  • 対象範囲
  • 重要性基準
  • 開示別紙

POINT 4

  • 環境に関する表明保証の設計ポイント
  • 土壌・地下水、廃棄物、化学物質、温室効果ガス、近隣対応を具体化します。
  • 土壌汚染と旧用途の確認
  • 廃棄物と排出事業者責任
  • PRTR、化学物質、温室効果ガス

POINT 5

  • 税務に関する表明保証の設計ポイント
  • 過年度申告、消費税、源泉税、移転価格、組織再編、税務補償を整理します。
  • 消費税、インボイス、電子帳簿保存
  • 移転価格と国際税務
  • 組織再編税制と繰越欠損金

POINT 6

  • 労務に関する表明保証の設計ポイント
  • 未払残業代、ハラスメント、安全衛生、社会保険、業務委託を確認します。
  • 未払残業代と労働時間
  • ハラスメント、安全衛生、メンタルヘルス
  • フリーランス、業務委託、派遣、請負

POINT 7

  • 環境・税務・労務に関する表明保証の横断的設計
  • 定義、重要性、認識限定、開示別紙、補償期間、責任上限を組み合わせます。
  • 横断的な設計で最初に整えるべきなのは定義です。
  • 定義が曖昧だと、同じ条項でも、どの法令、どの損害、誰の認識、どの開示を意味するかが後日争点になります。
  • 読者にとって重要なのは、定義が補償範囲と責任制限の土台になることです。

POINT 8

  • 環境・税務・労務に関する表明保証のDDチェックリスト
  • 資料請求と調査項目を、契約条項へ落とし込む前提として整理します。
  • デューデリジェンスでは、表明保証に書くべき事実と例外を把握します。
  • 資料が存在しない場合も、それ自体がリスクになるため、確認資料の有無、欠落理由、代替資料、証跡の信頼性を見ます。
  • 項目と資料の対応から、開示別紙に転記すべき論点を読み取れます。

まとめ

  • 環境・税務・労務に関する表明保証を M&A契約実務から整理する
  • 環境・税務・労務に関する表明保証の全体像:契約文言だけでなく、調査、開示、補償、価格、PMI まで接続して考えます。
  • 環境・税務・労務に関する表明保証の基本概念:表明保証は、一定時点の事実確認と、違反時のリスク配分をつなぐ条項です。
  • 環境・税務・労務に関する表明保証を特別扱いする理由:潜在債務、行政責任、長い時間軸、抽象条項の限界を整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

環境・税務・労務に関する表明保証の全体像

契約文言だけでなく、調査、開示、補償、価格、PMIまで接続して考えます。

環境・税務・労務に関する表明保証は、M&A契約、株式譲渡契約、事業譲渡契約、出資契約、合弁契約、融資契約、重要な業務委託契約などで、対象会社または売主が抱える潜在的リスクを誰が負担するかを決める中核条項です。

表明保証は、相手方に安心感を与えるだけの宣言ではありません。違反があると、補償、損害賠償、解除、クロージング条件不成就、価格調整、エスクロー、表明保証保険、特別補償などに接続し得ます。

次の重要ポイントは、このページ全体の読み方を示します。なぜ重要かというと、環境・税務・労務の問題は取引後に損害化しやすく、単純な法令遵守条項では対応しきれないためです。ここでは、表明保証を定型文ではなくリスク配分の仕組みとして読むことが大切だと分かります。

表明保証はリスク管理プロセスです

デューデリジェンスで発見した事実を、開示別紙、補償、責任制限、クロージング条件、誓約事項、PMIに反映してはじめて、環境・税務・労務に関する表明保証は実務上機能します。

環境・税務・労務を特に慎重に扱うべき理由を、5つの観点に分けて整理します。読者にとって重要なのは、各リスクがいつ、誰から、どの形で現れるかが違うため、条項の広さだけでなく設計の細かさが結果を左右する点です。以下から、抽象的な保証を避けるべき理由を読み取れます。

過去の事実が将来に現れる

土壌汚染、未払残業代、過年度税務処理の誤りは、買収後に行政対応、訴訟、追徴、追加支出として顕在化します。

第三者と行政の影響が大きい

行政庁、税務署、労働基準監督署、労働者、退職者、近隣住民、処理業者など、当事者外の行動がリスクを左右します。

調査しなければ見えにくい

偶発債務、行政指導、労務慣行、委託先の不適正処理、移転価格リスク、フリーランス取引は財務諸表だけでは把握しにくい領域です。

契約だけで行政責任は消えない

当事者間で売主負担と定めても、法令上の義務者や行政処分の対象者が当然に変わるとは限りません。

抽象的な条項は紛争化しやすい

法令遵守とだけ記載すると、対象法令、時点、重要性、例外、補償期間、責任上限が曖昧になりやすくなります。

実務上の注意環境・税務・労務に関する表明保証は、定型文として挿入するのではなく、デューデリジェンス、開示別紙、補償条項、責任制限、クロージング条件、誓約事項、PMIを一体で設計する必要があります。
Section 01

環境・税務・労務に関する表明保証の基本概念

表明保証は、一定時点の事実確認と、違反時のリスク配分をつなぐ条項です。

表明保証とは、契約当事者の一方が他方に対し、一定の時点で、ある事実が真実かつ正確であることを述べ、その内容を保証する契約条項です。M&Aでは、売主または対象会社が、株式、資産、負債、契約、許認可、訴訟、税務、労務、環境、知的財産、反社会的勢力排除、個人情報、財務諸表などについて表明保証することが多くあります。

日本法上、表明保証は民法に直接定義された典型契約ではないため、効果は契約書の書き方によって大きく変わります。次の表は、関連条項ごとの役割を整理したものです。読者にとって重要なのは、表明保証だけを読んでも責任範囲は決まらず、補償や責任制限と合わせて読む必要があることです。各行から、どの条項がどの機能を担うかを確認できます。

関連条項役割
表明保証条項一定時点の事実の真実性と正確性を表明し保証します。
補償条項表明保証違反により生じた損害、費用、税負担等を誰が負担するかを定めます。
クロージング条件クロージング時点でも表明保証が正確であることを取引実行条件にします。
誓約事項契約締結後クロージングまで、またはクロージング後の行為義務を定めます。
開示別紙表明保証から除外される既知の事実、例外、リスクを特定します。
責任制限補償期間、責任上限、免責額、重要性基準、請求手続を定めます。
特別補償特定の既知リスクについて、一般的な責任制限とは別に処理します。

表明保証とデューデリジェンスの関係は、代替ではなく接続です。デューデリジェンスで発見した論点を、契約上どのように処理するかを決める手段として表明保証を使います。未払残業代の可能性が見つかった場合、未払残業代の推計額、対象期間、対象者、時効、資料の完全性、補償上限、請求手続、従業員対応、PMI後の勤怠制度変更まで含めて設計する必要があります。

表明保証違反の効果は複数あり、契約書で明示しなければ実効性が弱くなります。次の比較表は、違反時に接続し得る効果と注意点を示します。なぜ重要かというと、同じ違反でも、補償、解除、価格調整のどれで処理するかにより交渉と紛争対応が変わるためです。各効果がどの局面で問題になるかを読み取ってください。

効果内容実務上の注意
補償損害、追徴税額、専門家費用、是正費用等を補填します。税金、罰金、調査費用、逸失利益を含めるかが重要です。
損害賠償債務不履行または契約上の損害賠償として請求します。故意・過失、因果関係、予見可能性の扱いが問題になります。
解除重大な違反がある場合に契約終了を検討します。クロージング前後で実効性が異なります。
クロージング条件不成就クロージング時点の正確性を取引実行条件にします。軽微な違反まで対象にするか、重大性で限定するかを決めます。
価格調整負債、運転資本、純資産等に反映します。補償との二重回収を防ぐ必要があります。
エスクロー譲渡代金の一部を一定期間預託します。税務・労務・環境リスクの潜伏期間に合わせます。
表明保証保険一定の表明保証違反リスクを保険会社に移転します。DDレポート、免責事項、既知リスクの除外を確認します。
Section 02

環境・税務・労務に関する表明保証を特別扱いする理由

潜在債務、行政責任、長い時間軸、抽象条項の限界を整理します。

環境・税務・労務のリスクは、貸借対照表に明確に載っていないことが多くあります。土壌汚染、産業廃棄物の不適正処理、過年度税務処理、移転価格、源泉徴収漏れ、未払残業代、安全衛生義務違反、ハラスメント調査不備などは、取引時点ではまだ請求や行政処分になっていない状態で存在し得ます。

行政法規と私法契約が交差する点も重要です。たとえば、産業廃棄物処理を処理業者に委託していても、排出事業者の処理責任が当然に消えるわけではありません。税務でも、契約で過去の税務リスクを売主負担と定めても、課税処分の名宛人や納税義務者が契約だけで変わるわけではありません。労務でも、従業員や退職者の請求権、監督署の監督、社会保険の加入・納付義務は、当事者間の補償合意とは別に問題となります。

次の表は、各分野で確認すべき時間軸を比較します。読者にとって重要なのは、取引実行時点だけを見ても足りず、過去の操業、申告、労務管理が将来損害につながる点です。各行から、補償期間や資料保管義務をどのリスクに合わせるべきかを読み取れます。

分野時間軸の例
環境過去の工場操業、旧所有者による汚染、廃棄物処理、行政指導、許認可更新、排出実績。
税務過年度申告、税務調査、更正・決定、移転価格、組織再編、繰越欠損金、消費税処理。
労務未払賃金、労働時間管理、退職者請求、ハラスメント、労災、安全衛生、社会保険加入。

環境・税務・労務では、「対象会社は法令を遵守している」とだけ書く条項は、表面的には広く見えても実務上は危険です。読者にとって重要なのは、広さよりも、対象法令、対象期間、対象者、重要性、例外、補償範囲、請求手続を具体化することです。以下の一覧から、条項作成時に分解すべき要素を確認できます。

Scope

対象範囲

対象法令、対象会社・子会社、事業所、資産、過去期間、契約類型を具体化します。

Materiality

重要性基準

軽微な違反と重大な行政処分・金銭負担を分け、項目ごとに限定の有無を検討します。

Disclosure

開示別紙

既知の例外を項目別に記載し、資料室への大量掲載だけで済ませない設計にします。

Remedy

違反時の処理

補償、価格調整、特別補償、エスクロー、表明保証保険との接続を明確にします。

Section 03

環境に関する表明保証の設計ポイント

土壌・地下水、廃棄物、化学物質、温室効果ガス、近隣対応を具体化します。

環境に関する表明保証は、対象会社または対象資産が、環境法令、許認可、排出規制、廃棄物処理、土壌・地下水汚染、化学物質管理、温室効果ガス算定・報告、公害防止協定、近隣対応などに関して、重大な未開示リスクを抱えていないことを確認する条項です。

製造業、化学、金属、食品、物流、建設、不動産、産業廃棄物、エネルギー、半導体、医薬、インフラ、農業関連、研究施設、倉庫、旧工場跡地の取引では特に重要です。オフィス型企業でも、賃借物件の原状回復、アスベスト、PCB、廃棄物管理、温室効果ガス開示、サプライチェーン環境DDが問題になり得ます。

次の表は、環境表明保証で対象にすべき確認事項を分解したものです。読者にとって重要なのは、環境法令遵守という一文では、土壌、廃棄物、化学物質、開示データ、近隣対応を十分に特定できないことです。列ごとに、何を確認し、どの条項上の論点につなげるかを読み取れます。

項目確認事項表明保証上の論点
環境法令遵守大気、水質、土壌、廃棄物、化学物質、騒音、振動、悪臭、温暖化関連法令。全て遵守か、重要な点で遵守かを決めます。
許認可・届出必要な許認可、届出、更新、変更届、自治体協定。有効性、取消し、停止、更新拒絶のおそれを確認します。
行政対応立入検査、指導、命令、勧告、報告徴求。過去および現在の行政手続を開示対象にします。
土壌・地下水汚染、調査義務、区域指定、浄化義務、過去用途。既知汚染、旧所有者リスク、用途変更をどう扱うかが論点です。
廃棄物委託契約、マニフェスト、処理業者確認、不適正処理。排出事業者責任を踏まえた補償設計が必要です。
化学物質PRTR、SDS、毒劇物、危険物、化審法、労安法化学物質管理。届出、管理、表示、保管、教育の証跡を確認します。
温室効果ガス算定・報告・公表制度、エネルギー使用量、排出量データ。開示保証、データ正確性、将来対応コストが論点です。
近隣・第三者苦情、訴訟、調停、公害防止協定、自治体協議。紛争の有無だけでなく潜在苦情も確認します。

土壌汚染と旧用途の確認

土壌汚染は、環境に関する表明保証の中でも高額化しやすいリスクです。不動産や工場を含むM&Aでは、対象会社が土地を所有しているか、賃借しているか、過去に有害物質使用特定施設を使用していたか、土地の形質変更予定があるか、自治体条例があるかを確認します。

条項設計売主が地中の状態を完全に把握できない場合は、「売主の知る限り」「重大な費用負担を生じさせる汚染」「開示別紙記載の調査報告書」などを組み合わせ、既知汚染は特別補償、価格控除、浄化完了条件で処理する方法があります。

廃棄物と排出事業者責任

廃棄物は、外部委託しているから安全とは限りません。委託契約書、マニフェスト、処理業者許可、委託基準、保管基準、実地確認、委託先の不適正処理情報への対応を確認し、委託先の不適正処理をどこまで売主が保証するかを交渉します。

PRTR、化学物質、温室効果ガス

PRTRでは、対象事業者かどうかを、業種、従業員数、対象物質の年間取扱量、特別要件施設などから判定します。常時使用する従業員数21人以上、第一種指定化学物質の年間取扱量1トン以上、特定第一種指定化学物質0.5トン以上などが判定要素として示されています。

温室効果ガスでは、一定の特定排出者に排出量の算定・報告が求められます。エネルギー起源CO2では、全事業所のエネルギー使用量合計が原油換算1,500kl/年以上の事業者などが対象とされています。上場会社や上場準備会社、サプライチェーン上で開示要請を受ける会社では、環境データの正確性、内部統制、集計手続も表明保証の対象になり得ます。

環境分野の条項例を、確認対象ごとに一覧化します。重要なのは、法令遵守、行政対応、土壌・地下水、廃棄物、環境情報開示を別々に確認し、開示別紙の例外と結びつける点です。以下から、どの論点を独立した文言にするかを読み取れます。

環境法令と許認可

対象会社は、開示別紙記載事項を除き、環境法令を重要な点で遵守し、必要な環境関連の許認可、届出、登録、承認を有効に保有していると整理します。

法令遵守

行政対応

行政処分、措置命令、改善命令、報告徴求、立入検査に基づく未履行の是正指導、これらに準ずる通知の有無を確認します。

行政リスク

土壌・地下水

重大な費用負担または事業停止を生じさせる土壌汚染、地下水汚染、廃棄物埋設その他の環境汚染を対象にします。

高額化注意

廃棄物処理

保管、収集運搬、処分、委託について、適用される廃棄物関連法令を重要な点で遵守しているかを確認します。

委託管理

環境情報開示

温室効果ガス排出量、環境表示、環境情報開示について、重大な請求、苦情、調査、紛争がないかを確認します。

開示統制
Section 04

税務に関する表明保証の設計ポイント

過年度申告、消費税、源泉税、移転価格、組織再編、税務補償を整理します。

税務に関する表明保証は、対象会社の過年度申告、納税、源泉徴収、消費税、地方税、関税、印紙税、固定資産税、移転価格、組織再編税制、繰越欠損金、税務調査、税務訴訟、税務上の会計処理、電子帳簿保存、インボイス対応などについて、買主が想定外の税務負担を負わないようにする条項です。

税務リスクでは、取引後に過去の税務処理が否認され、追徴課税、延滞税、加算税が生じることがあります。また、繰越欠損金、消費税還付、税額控除、減価償却、グループ通算、組織再編税制の適格性は価格評価に影響します。契約上の補償と、税法上の納税義務が一致しない点にも注意が必要です。

次の表は、税務表明保証で確認すべき項目を示します。読者にとって重要なのは、税務申告が正確という一文だけでは、源泉税、消費税、電子帳簿保存、移転価格、繰越欠損金のような個別論点を拾いきれない点です。確認事項と条項上の論点を対応させて読み取ってください。

項目確認事項表明保証上の論点
申告・納税法人税、消費税、地方税、事業税、固定資産税、源泉税。期限内申告・納付、申告書の正確性を確認します。
税務調査過去の調査、進行中の調査、指摘事項、修正申告。未解決事項と再発可能性を確認します。
税務債務未払税金、引当不足、偶発債務。貸借対照表への反映と価格調整との関係が論点です。
源泉徴収役員報酬、給与、退職金、外注費、非居住者支払。外注・雇用分類との連動を確認します。
消費税課税・非課税・不課税、仕入税額控除、インボイス。登録、保存要件、経過措置が論点です。
電子帳簿保存電子取引データ、スキャナ保存、帳簿書類。税務調査時の証憑提出可能性を確認します。
移転価格国外関連者取引、ローカルファイル、価格設定。追徴、二重課税、文書化が論点です。
組織再編適格要件、繰越欠損金、簿価引継ぎ。スキーム前提が崩れるリスクを確認します。
税務優遇補助金、税額控除、特別償却。要件違反、返還、修正リスクを確認します。

消費税、インボイス、電子帳簿保存

2023年10月1日から適格請求書等保存方式が開始され、一定事項が記載された帳簿および適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされています。税務DDでは、適格請求書発行事業者登録、売上側の記載事項、仕入側の保存、経過措置、海外取引、非課税売上、共通対応仕入、電子取引データの保存を確認します。

移転価格と国際税務

クロスボーダー取引や外資系企業では、国外関連者との取引が独立企業間価格に基づくか、移転価格文書、ローカルファイル、ベンチマーク分析が整備されているかを確認します。ロイヤルティ、マネジメントフィー、金融取引、費用分担契約、税務調査、相互協議、APA、PE認定、源泉税、租税条約適用届出も確認対象です。

組織再編税制と繰越欠損金

合併、会社分割、株式交換、株式移転、現物出資、グループ内再編を伴う案件では、適格要件、支配関係、みなし共同事業要件、特定資産譲渡等損失などにより、繰越欠損金や税務上の便益が期待どおり使えない可能性があります。売主が無限定に将来利用を保証することは通常難しいため、税務DD、価格評価、補償設計、前提条件の明確化が必要です。

税務補償条項では、買主側と売主側の関心が鋭く分かれます。次の表は、クロージング前期間に係る税務債務を特別補償として処理する際の調整軸を示します。重要なのは、本税だけでなく加算税、延滞税、専門家費用、調査対応、税メリット、価格調整との二重回収を同時に設計することです。各行から、交渉で明確化すべき項目を読み取れます。

論点買主側の視点売主側の視点実務的調整
対象期間クロージング前の全期間を対象にしたい。税務時効や資料保存期間を踏まえて限定したい。税目ごとに期間を設定します。
対象税目本税、加算税、延滞税、地方税、源泉税を含めたい。故意・重過失がない加算税等は除外したい。税務当局指摘に基づくものを対象化します。
専門家費用税理士・弁護士費用を含めたい。過大な費用を制限したい。合理的費用に限定します。
税務調査対応買主が主導したい。売主も防御に関与したい。通知、協議、同意手続を定めます。
税メリット追徴後の還付や損金算入を調整したい。二重取りを防ぎたい。税効果調整条項を設定します。
価格調整との関係補償も請求したい。二重回収を防ぎたい。純資産調整済み項目を除外します。
Section 05

労務に関する表明保証の設計ポイント

未払残業代、ハラスメント、安全衛生、社会保険、業務委託を確認します。

労務に関する表明保証は、対象会社の従業員、役員、退職者、労働時間、賃金、社会保険、労働安全衛生、ハラスメント、労働組合、就業規則、雇用契約、派遣・請負・業務委託、フリーランス取引、労働紛争などに関する潜在的リスクを把握し、契約上の責任分担を定める条項です。

労務リスクは、買収後の統合、従業員の士気、離職、採用、評判、行政対応、訴訟に直結します。特に未払残業代、名ばかり管理職、固定残業代の不備、36協定の不備、労働時間記録の不正確性、社会保険未加入、偽装請負、派遣法違反、ハラスメント調査不備、メンタルヘルス対応不備は、買収後の大きな負担になり得ます。

次の表は、労務表明保証で確認すべき領域を示します。読者にとって重要なのは、従業員だけでなく、退職者、派遣労働者、業務委託先、フリーランスまでリスクが広がることです。確認事項から、条項で何を分けて書くべきかを読み取れます。

項目確認事項表明保証上の論点
雇用契約契約書、労働条件通知書、雇用形態、試用期間。実態と契約の不一致を確認します。
就業規則届出、周知、賃金規程、退職金規程、在宅勤務規程。未届・未周知の場合の有効性が問題になります。
労働時間勤怠記録、36協定、管理監督者、裁量労働、変形労働。未払残業代、違法残業が論点です。
賃金基本給、固定残業代、賞与、手当、最低賃金、退職金。固定残業代の明確性、控除の適法性を確認します。
社会保険健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険。未加入、過少申告、遡及徴収が論点です。
安全衛生健康診断、ストレスチェック、産業医、労災。行政指導、損害賠償、休職対応を確認します。
ハラスメント相談窓口、調査、懲戒、再発防止。未解決事案、二次被害、評判への影響が論点です。
業務委託・派遣偽装請負、労働者性、フリーランス法対応。雇用認定、行政処分、未払賃金が論点です。

未払残業代と労働時間

未払残業代は、労務表明保証の代表的リスクです。勤怠システムを導入していても、実労働時間を正確に記録していなければリスクは残ります。PCログ、入退館記録、メール送信時刻、チャット履歴、申請残業時間の乖離が問題になることがあります。

重要論点「重大な未払賃金債務」とは何かを定義する必要があります。少額の計算誤差、一定金額以上の請求、サンプリング調査からの推計、時効期間、退職者請求、付加金・遅延損害金・社会保険影響を切り分けます。

ハラスメント、安全衛生、メンタルヘルス

ハラスメントでは、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児介護休業等に関するハラスメントへの防止措置を確認します。2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策および求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化が予定されています。

メンタルヘルスでは、2015年からストレスチェック制度が導入され、2025年5月公布の改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェック実施が義務化される方向です。健康診断、産業医面談、安全衛生委員会、労災申請、長時間労働、休職復職対応の運用も確認します。

フリーランス、業務委託、派遣、請負

フリーランス・事業者間取引適正化等法は2024年11月1日に施行され、取引条件の明示、給付受領日から原則60日以内の報酬支払、ハラスメント対策の体制整備等が求められます。対象会社がフリーランスを多数利用している場合、契約条件、報酬支払、解除・発注取消し、買いたたき、労働者性、指揮命令の実態を確認します。

労務分野の確認項目を、契約・時間・安全・外部人材の4つに分けて整理します。重要なのは、どの部署の資料だけでは足りないかを把握し、法務、人事、経理、現場、内部通報の情報を横断して確認することです。以下の一覧から、労務DDで拾うべき資料とリスクを読み取れます。

Contract

契約・規程

雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、退職金規程、育児介護規程、在宅勤務規程を確認します。

Time

労働時間・賃金

勤怠データ、36協定、残業申請、PCログ、管理監督者一覧、固定残業代、最低賃金、賞与、退職金を確認します。

Safety

安全衛生・通報

健康診断、ストレスチェック、産業医、安全衛生委員会、労災、ハラスメント相談記録、調査報告を確認します。

Outsourcing

外部人材

業務委託契約、派遣契約、請負の実態、フリーランス取引、指揮命令の有無、報酬支払期日を確認します。

Section 06

環境・税務・労務に関する表明保証の横断的設計

定義、重要性、認識限定、開示別紙、補償期間、責任上限を組み合わせます。

横断的な設計で最初に整えるべきなのは定義です。定義が曖昧だと、同じ条項でも、どの法令、どの損害、誰の認識、どの開示を意味するかが後日争点になります。

次の表は、環境・税務・労務に関する表明保証で先に定義すべき語を整理したものです。読者にとって重要なのは、定義が補償範囲と責任制限の土台になることです。各定義について、どこまで含めるかを契約上明確にする必要があります。

定義設計上の注意
環境法令国法だけでなく自治体条例、許認可条件、公害防止協定、行政命令を含めるかを決めます。
租税公課国税、地方税、関税、印紙税、源泉税、延滞税、加算税を含めるかを決めます。
労働関連法令労基法、労安法、労契法、派遣法、均等法、育児介護休業法、フリーランス法等を含めるかを決めます。
損害本税、追徴金、是正費、専門家費用、調査費用、逸失利益、信用毀損を含めるかを決めます。
売主の認識売主個人、役員、法務・経理・人事責任者、工場長、子会社役員の認識を含めるかを決めます。
重大金額基準、事業影響、行政処分、刑事罰、社会的信用を基準にするかを決めます。
開示資料室、期限、別紙、具体性の水準を決めます。

「重要な点において」や「重大な悪影響を及ぼすものを除き」という限定は、項目ごとに使い分けます。税務申告書の提出、許認可の保有、就業規則の作成など基本的な存在確認では限定を弱め、違反の不存在では軽微な違反を除くために限定を使うことがあります。未払残業代、土壌汚染、税務調査などの特定リスクは、金額基準または特別補償で処理します。

「売主の知る限り」は、誰の認識か、合理的調査義務を含むかを明確にします。売主、対象会社の代表取締役、財務責任者、人事責任者、法務責任者、環境管理責任者、工場長その他開示別紙に記載された者が、合理的な調査を行った後に知り、または知り得べき範囲を意味する、と定義する方法があります。

開示別紙は、表明保証違反を防ぐための例外リストですが、大量の資料を資料室に置くだけでは不十分です。次の比較は、抽象的な開示と具体的な開示の違いを示します。重要なのは、どの表明保証項目に対するどの例外なのかを、金額、期間、資料番号まで対応させることです。良い開示から、後日の紛争で何が明確になるかを読み取れます。

開示の型記載例評価
抽象的な開示資料室に開示された一切の資料をもって開示済みとする。どの資料のどの記載がどの例外か不明確で、免責として機能しにくい可能性があります。
具体的な開示労務紛争に関する例外として、退職者から特定期間の割増賃金請求を受けている事実、請求額、会社回答、勤怠資料を別添で示す。該当条項、事実、金額、期間、資料が対応し、当事者の認識をそろえやすくなります。

補償期間は、分野ごとの潜伏期間に合わせます。次の比較表は、一般表明保証、税務、労務、環境、基本事項で異なる考え方を示します。読者にとって重要なのは、一律の12か月や24か月では拾いにくいリスクがあることです。各分野の時間軸を見て、期間と責任上限を分ける必要性を確認できます。

分野補償期間の考え方
一般表明保証12か月から24か月程度など、DD後の通常発見期間を基準にすることが多くあります。
税務法定の更正・決定期間、税務調査可能期間、移転価格リスクを踏まえます。
労務賃金請求権の時効、退職者請求、労災・安全配慮義務リスクを踏まえます。
環境土壌汚染、廃棄物、行政処分は長期化し得るため、特別補償を長めにすることがあります。
基本事項株式の所有権、権限、反社、詐欺等は長期または無期限とすることがあります。

責任上限、バスケット、デミニミスは、売主の予測可能性を確保しつつ、重大な隠れリスクをどう扱うかを決める仕組みです。重要なのは、不正、意図的隠蔽、重大な法令違反、既知リスクの未開示では、一般的な上限を適用しない設計もあり得ることです。次の比較から、少額除外と総額上限の違いを読み取れます。

制限内容注意点
Cap補償総額の上限。譲渡代金の一定割合、または全額を基準にします。
Basket一定額を超えた場合に請求可能。超過額のみか、最初の1円からかを明確化します。
De minimis少額請求の排除。多数の少額未払賃金では危険な場合があります。
Survival請求可能期間。税務、環境、労務は一般より長くすることがあります。
Exclusion免責事項。開示済み事項、価格反映済み事項、買主帰責事項などを整理します。
二重回収防止未払残業代引当金などが価格調整で反映済みの場合、同じ項目を補償請求すると二重回収になります。反映済み金額は除外し、超過部分だけ補償対象にする、税務上の損金算入、保険金、第三者回収を控除する、といった整理が必要です。
Section 07

環境・税務・労務に関する表明保証のDDチェックリスト

資料請求と調査項目を、契約条項へ落とし込む前提として整理します。

デューデリジェンスでは、表明保証に書くべき事実と例外を把握します。資料が存在しない場合も、それ自体がリスクになるため、確認資料の有無、欠落理由、代替資料、証跡の信頼性を見ます。

次の表は、環境DDで確認する主な資料を示します。読者にとって重要なのは、許認可や届出だけでなく、土壌、廃棄物、化学物質、温室効果ガス、近隣苦情、設備投資まで、契約後の費用につながる資料を拾うことです。項目と資料の対応から、開示別紙に転記すべき論点を読み取れます。

環境DD項目主な確認資料
事業所一覧所有・賃借不動産一覧、工場・倉庫・研究所一覧。
許認可・届出大気、水質、騒音、振動、悪臭、廃棄物、危険物、化学物質関連の届出。
行政対応立入検査記録、行政指導、改善命令、報告書、自治体協議記録。
土壌・地下水地歴調査、土壌調査報告書、土地売買契約、旧施設情報、区域指定情報。
廃棄物委託契約書、マニフェスト、処理業者許可証、実地確認記録。
化学物質PRTR届出、SDS、保管台帳、危険物管理、毒劇物管理。
温室効果ガスエネルギー使用量、排出量算定資料、報告書、取引先提出データ。
苦情・紛争近隣苦情、騒音・臭気対応、訴訟、調停、和解書。
設備投資排水処理設備、排ガス設備、老朽化設備、是正見積。

次の表は、税務DDで確認する主な資料を示します。重要なのは、申告書の有無だけでなく、調査対応、消費税、源泉税、移転価格、組織再編、電子帳簿保存まで、追徴や証憑提出に直結する資料を確認することです。各項目から、税務表明保証と特別補償に反映すべき範囲を読み取れます。

税務DD項目主な確認資料
申告法人税、消費税、地方税、事業税、固定資産税申告書。
納税納付書、未払税金明細、滞納・延滞の有無。
税務調査調査通知、指摘事項、修正申告、更正通知、税理士意見書。
消費税インボイス登録、課税区分、仕入税額控除、経過措置資料。
源泉税給与、役員報酬、退職金、外注費、海外支払。
移転価格国外関連者取引、契約書、価格算定、ローカルファイル。
組織再編過去の合併・分割・株式交換、適格要件検討資料。
繰越欠損金別表、利用制限、支配関係、買収後利用可能性。
電子帳簿保存電子取引データ、保存ルール、検索要件、システム対応。

次の表は、労務DDで確認する主な資料を示します。読者にとって重要なのは、就業規則や雇用契約だけでなく、勤怠データ、PCログ、ハラスメント相談記録、退職者請求、業務委託契約まで横断的に確認することです。項目ごとに、表明保証、開示別紙、PMIのどこへ反映するかを読み取れます。

労務DD項目主な確認資料
従業員従業員一覧、雇用形態、賃金、勤続年数、退職金対象者。
契約雇用契約書、労働条件通知書、業務委託契約、派遣契約。
就業規則就業規則、賃金規程、退職金規程、育児介護規程、在宅勤務規程。
労働時間勤怠データ、36協定、残業申請、PCログ、管理監督者一覧。
賃金固定残業代、手当、控除、最低賃金、賞与、退職金。
社会保険加入状況、算定基礎、労働保険申告、未加入者。
安全衛生健康診断、ストレスチェック、産業医、安全衛生委員会、労災。
ハラスメント相談記録、調査報告、懲戒、再発防止、研修資料。
労使関係労働組合、団体交渉、労使協定、ユニオン対応。
紛争労働審判、訴訟、退職者請求、解雇・退職勧奨記録。
Section 08

環境・税務・労務に関する表明保証の交渉戦略

買主、売主、中小M&Aで重視すべき交渉ポイントを分けます。

買主側は、DDで発見できないリスクを表明保証で補完しつつ、表明保証だけに依存せず、資料請求、専門家レビュー、現地確認を行います。既知リスクは特別補償に切り出し、補償期間を分野別に設定し、開示別紙の具体性を求め、PMIでの是正費用を見積もります。

売主側は、過大な表明保証責任を避けるため、DD前にセルサイドレビューを行い、開示別紙を丁寧に作成します。重要性、認識、期間、上限を適切に設定し、既知リスクは価格調整または特別補償で明確化し、買主のDD結果との整合性を確認します。

次の比較一覧は、買主側と売主側の視点を並べたものです。読者にとって重要なのは、同じリスクでも、買主は保護範囲の明確化を求め、売主は予測可能性と責任制限を求める点です。左右の違いから、合意しやすい調整方法を読み取れます。

Buyer

買主側の視点

未発見リスクを補完し、既知リスクを特別補償に切り出し、補償期間を分野別に設定し、PMIでの是正費用を価格に反映します。

Seller

売主側の視点

セルサイドレビューでリスクを洗い出し、開示別紙を具体化し、重要性、認識、期間、責任上限を設定します。

SME M&A

中小M&Aの視点

個人オーナー売主や資料未整備を踏まえ、重要項目に絞り、未整備事項はクロージング後の是正計画へ落とし込みます。

中小M&Aでは、無期限・無制限・不明確な表明保証条項は紛争化しやすくなります。重要項目に絞る、低リスク項目を「売主の知る限り」で限定する、未整備事項をPMI誓約に落とす、補償上限を譲渡代金の一定割合に設定する、税務・労務・環境の既知リスクを別紙で具体化する、経営者保証や金融機関対応、許認可承継、従業員説明と連動させる、といった調整が有効です。

Section 09

環境・税務・労務に関する表明保証の実践モデル

一般表明保証、分野別表明保証、特別補償、責任制限、PMIに分けます。

環境・税務・労務に関する表明保証は、複数の層に分けると整理しやすくなります。重要なのは、一般条項に全てを押し込むのではなく、具体的な分野別条項、既知リスクの特別補償、責任制限、クロージング後の対応を順番に設計することです。次の判断の流れから、条項の重ね方を読み取れます。

5層で整理する条項設計

第1層 ― 一般表明保証

環境法令、税法、労働関連法令を重要な点で遵守しているかを確認します。

第2層 ― 分野別表明保証

環境、税務、労務ごとに、許認可、申告、労働時間などを具体化します。

第3層 ― 既知リスクの特別補償

未払残業代、税務調査、土壌汚染などを金額、期間、手続で個別処理します。

第4層 ― 責任制限

補償期間、責任上限、免責額、請求手続、二重回収防止、税効果調整を定めます。

第5層 ― PMI・誓約事項

資料提供、税務調査協力、行政対応、従業員対応、環境是正措置を定めます。

まとめ条項では、契約締結日およびクロージング日において、開示別紙記載事項を除き、対象会社が環境法令、税法、労働関連法令を重要な点で遵守していること、環境関連許認可を有効に保有していること、重要な税務申告書を適時に提出し、重要な租税公課を納付していること、重要な賃金・割増賃金・退職金・社会保険料等を支払っていること、重大な請求・行政処分・訴訟・労働審判・団体交渉・行政調査等の当事者ではないことを整理します。

特別補償は、既知または高額化しやすいリスクを一般条項から切り出すために使います。次の一覧は、未払賃金、税務、土壌汚染の典型的な補償対象を示します。読者にとって重要なのは、各リスクで対象期間、控除項目、買主側行為による増加分の扱いが異なることです。各項目から、補償範囲の書き分けを読み取れます。

未払賃金に関する特別補償

クロージング前期間に係る未払賃金、割増賃金、付加金、遅延損害金、社会保険料の追加負担、合理的専門家費用について、開示済み引当額を超える部分を対象にします。

労務

クロージング前税務の特別補償

クロージング前期間に係る租税公課について、税務当局の更正、決定、修正申告、指導等により追加負担が生じた場合の本税、延滞税、加算税、合理的専門家費用を対象にします。

税務

土壌汚染に関する特別補償

クロージング前の事業活動または既存汚染に起因する行政命令、第三者請求、調査、除去、封じ込め、浄化、搬出、処理費用を対象にします。

環境
Section 10

環境・税務・労務に関する表明保証のよくある失敗

抽象条項、開示不足、DDとの不連動、補償手続の欠落を避けます。

環境・税務・労務に関する表明保証では、広い条項を置いたつもりでも、実際には紛争時に機能しにくい失敗が起こります。次の一覧は、典型的な失敗とその理由を整理したものです。読者にとって重要なのは、失敗の多くが文言の不足ではなく、DD結果、開示別紙、補償手続との不連動から生じることです。各項目から、どこを修正すべきかを読み取れます。

法令遵守だけで済ませる

環境・税務・労務を具体的なリスク項目に分けないと、買主の保護も売主の責任限定も曖昧になります。

開示別紙が抽象的

資料室開示済みという記載だけでは、どの資料がどの例外か不明確になりやすくなります。

DD結果と契約が不連動

DDレポートの重要指摘が価格調整、特別補償、クロージング条件、誓約事項に反映されないと争点化します。

補償期間が短すぎる

税務調査、退職者請求、土壌汚染、行政処分は、取引から一定期間後に顕在化することがあります。

認識限定を定義していない

誰の認識か、合理的調査義務を含むか、現場責任者の認識を含むかが不明確だと紛争になります。

税務調査対応手続がない

誰が税務当局と交渉するか、修正申告に同意が必要か、費用負担をどうするかを定めておく必要があります。

労務リスクを人事だけに任せる

勤怠、給与、規程、通報、退職者請求、社会保険は法務、経理、人事、内部統制を横断して確認します。

Section 11

環境・税務・労務に関する表明保証と専門家連携

各専門家のレポートを契約条項、価格、補償、PMIへ翻訳します。

環境・税務・労務に関する表明保証では、単独の専門職だけでは十分でないことがあります。法務、税務、会計、労務、環境、内部統制、経営判断がまたがるため、役割分担を明確にし、指摘事項を契約条項へ翻訳する必要があります。

次の表は、専門家・担当者ごとの主な役割を整理したものです。読者にとって重要なのは、各専門家の調査結果が契約書、価格、補償、PMIに反映されなければ実務効果が薄い点です。各行から、誰の視点をどの論点に接続するかを読み取れます。

専門家・担当者主な役割
弁護士契約条項、責任制限、補償、紛争、行政対応、労務法務、環境法務の設計。
企業内弁護士・法務担当社内調整、契約レビュー、DD質問管理、開示別紙作成、経営判断支援。
税理士税務申告、税務調査、税務DD、組織再編税制、消費税・源泉税確認。
公認会計士財務DD、引当、偶発債務、内部統制、会計処理、価格調整。
社会保険労務士労働時間、就業規則、社会保険、労使協定、安全衛生、労務管理確認。
環境コンサルタント土壌調査、環境許認可、廃棄物、化学物質、排出量算定、現地調査。
内部監査・コンプライアンス担当規程、証跡、通報、統制不備、再発防止策確認。
経営者・CFO・CHRO価格、リスク許容度、PMI、従業員対応、対外説明の判断。
連携の要点環境DDレポート、税務DDレポート、労務DDレポートがあっても、その指摘事項が契約書、価格、補償、PMIに反映されていなければ意味が薄くなります。レポートの論点を、開示別紙、特別補償、クロージング条件、誓約事項に翻訳する作業が重要です。
Section 12

環境・税務・労務に関する表明保証の推奨プロセス

スコープ設定からPMI・モニタリングまで、実務の順番を整理します。

環境・税務・労務に関する表明保証を設計する場合、最初に業種、事業所、資産、従業員数、海外取引、過去の組織再編、許認可、労務体制を把握します。そのうえで、資料請求、リスク分類、条項ドラフト、交渉、クロージング前確認、PMIへ進めます。

次の時系列は、表明保証を作る実務の順番を示します。読者にとって重要なのは、契約文言を最初に作るのではなく、事実確認とリスク分類を経て、条項・価格・補償・PMIに落とし込むことです。各段階から、どのタイミングで何を決めるかを読み取れます。

第1段階

スコープ設定

業種、事業所、資産、従業員数、海外取引、組織再編、許認可、労務体制を把握し、重点分野を決めます。

第2段階

資料請求とDD

資料請求リストを作成し、重要資料の欠落を確認します。資料がない場合は、その理由と代替証跡を検討します。

第3段階

リスク分類

発見事項を、問題なし、軽微な問題、金額推計可能な重要問題、重大かつ不確実な問題に分類します。

第4段階

条項ドラフト

一般表明保証、分野別表明保証、特別補償、責任制限、開示別紙を一体で作成します。

第5段階

交渉

買主側は保護範囲を明確化し、売主側は過大責任を制限します。DD結果と金額影響に基づいて調整します。

第6段階

クロージング前確認

契約締結日からクロージング日まで、表明保証が正確であり続けているかを確認し、新たな調査・請求・事故の通知義務を運用します。

第7段階

PMI・モニタリング

勤怠、規程、税務文書化、廃棄物管理、環境データ、ハラスメント体制を統合し、未整備の制度を是正します。

発見事項は、契約上の処理へ分類します。次の表は、問題の重さと契約上の処理を対応させたものです。重要なのは、すべてを同じ表明保証で処理せず、軽微な問題、推計可能な問題、不確実な重大問題で手段を変えることです。各分類から、価格調整、特別補償、取引中止などの選択肢を読み取れます。

分類契約上の処理
問題なし一般表明保証で処理します。
軽微な問題開示別紙、PMI誓約、軽微な価格反映で処理します。
重要だが金額推計可能価格調整、特別補償、エスクローで処理します。
重大かつ不確実クロージング条件、取引中止、保険、追加調査を検討します。
Section 13

環境・税務・労務に関する表明保証のFAQ

一般的な制度説明として、よくある疑問を整理します。

Q1. 環境・税務・労務に関する表明保証は、広く入れれば安全ですか。

一般的には、広いだけの条項は交渉を難しくし、紛争時にも機能しにくいことがあります。ただし、取引規模、業種、DD結果、売主の開示状況によって結論は変わります。具体的な条項設計は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 売主が知らなかったと説明した場合、責任はどうなりますか。

一般的には、契約に「売主の知る限り」という限定があるか、その定義に合理的調査義務が含まれるかが問題になります。ただし、事実関係、開示内容、交渉経緯、対象者の認識範囲によって判断が変わる可能性があります。個別の見通しは弁護士等の専門家に確認する必要があります。

Q3. 税務調査で追徴された場合、売主への請求はどう整理されますか。

一般的には、税務表明保証、クロージング前税務補償、補償期間、通知手続、価格調整との関係、税務当局対応の合意があるかで整理されます。ただし、税目、対象期間、調査内容、申告主体、契約文言によって結論が変わる可能性があります。具体的対応は税理士や弁護士等に相談する必要があります。

Q4. 未払残業代は表明保証で扱えますか。

一般的には、未払残業代は労務表明保証や特別補償の対象として整理されることがあります。ただし、対象期間、対象者、推計方法、既知リスク、引当額、補償上限、退職者請求、付加金・遅延損害金・社会保険影響によって設計は変わります。具体的な対応は専門家へ相談する必要があります。

Q5. 土壌汚染は売主に完全に保証してもらう形が一般的ですか。

一般的には、買主側は広い保護を求めることがありますが、売主が地中リスクを完全に把握できない場合もあります。そのため、地歴調査、既存調査報告書、売主認識、特定物件の特別補償、用途変更による増加費用の扱いを組み合わせることがあります。具体的には専門家の調査と契約レビューが必要です。

Q6. 開示別紙に記載すれば免責として機能しますか。

一般的には、開示の具体性、契約上の開示効果、買主が合理的に理解できる内容か、該当する表明保証との対応関係が重要です。ただし、曖昧な開示や資料室への一括掲載だけでは、免責として十分でない可能性があります。個別の効果は弁護士等に確認する必要があります。

Q7. 表明保証保険を使えば売主責任は不要になりますか。

一般的には、表明保証保険は有効なリスク移転手段ですが、DDレポート、免責事項、既知リスクの除外、保険金額、免責額、保険期間によってカバー範囲が変わります。売主責任をどこまで残すかは契約と保険条件によって異なるため、専門家に確認する必要があります。

Section 14

環境・税務・労務に関する表明保証は文言より設計が重要

事実、証拠、リスク、価格、補償、運用を一体で考えます。

環境・税務・労務に関する表明保証は、契約書の一節ではなく、企業法務、税務、労務、環境管理、内部統制、M&A実務を接続するリスク管理プロセスです。買主にとっては見えないリスクを発見し、価格、補償、PMIに反映するための手段です。売主にとっては過大な責任を避け、開示を通じて取引後の紛争を防ぐための手段です。

最後に、実務上の要点を5つに整理します。重要なのは、環境・税務・労務を一律に扱わず、DD結果と事実証拠に基づいて条項を組み立てることです。以下から、契約レビュー時に優先して確認するポイントを読み取れます。

01

分野ごとに具体化する

環境・税務・労務を一般法令遵守条項に埋め込まず、許認可、申告、労働時間などに分けます。

02

DD結果を契約へ反映する

レポートで終わらせず、表明保証、補償、価格、PMIへ落とし込みます。

03

開示別紙を精密に作る

例外事実を、金額、期間、資料、対象条項と対応させて具体的に記載します。

04

責任制限をリスクに合わせる

税務、環境、労務を一律に扱わず、補償期間、上限、免責を分けて設計します。

05

専門家を横断的に使う

弁護士、税理士、公認会計士、社労士、環境専門家、社内担当が共同で設計します。

環境・税務・労務に関する表明保証を適切に設計できるかどうかは、M&Aや重要契約の成否だけでなく、買収後の企業運営、行政対応、従業員との信頼関係、企業価値維持に直結します。定型文に頼らず、事実、証拠、リスク、価格、補償、運用を一体として考えることが、専門的な企業法務実務の要点です。

Reference

参考文献・公的資料

公的資料と中立的な制度情報を中心に整理しています。

企業法務・M&A

  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」

環境

  • 環境省「排出事業者責任の徹底について」
  • 環境省「環境デュー・ディリジェンス」
  • 環境省「土壌汚染対策法について」
  • 環境省「PRTRインフォメーション広場」
  • 環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」

税務・開示

  • 国税庁「延滞税について」
  • 国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
  • 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
  • 国税庁「移転価格事務運営要領」
  • 国税庁「法人税基本通達 組織再編成」
  • 金融庁「企業情報の開示に関する情報」
  • サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示基準」

労務

  • 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
  • 厚生労働省「労働施策総合推進法等の改正に関する資料」
  • 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
  • 厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」
  • 厚生労働省「育児・介護休業法について」