J-SOX対応を期末後の文書作成にしないために、評価範囲、証跡、不備評価、監査人対応、取締役会報告、EDINET提出を年間工程として整理します。
法定期限からではなく、評価可能性から逆算します
法定期限からではなく、評価可能性から逆算します
内部統制報告書は、決算後に急いで文章を作る書類ではありません。事業年度開始前後から評価範囲を定め、業務プロセスを文書化し、整備状況評価、運用状況評価、不備の識別、是正、経営者評価、監査人対応、取締役会・監査役等への報告、EDINET提出までを進める年間プロジェクトです。
この重要ポイントは、内部統制報告書の作成スケジュールを締切管理ではなくガバナンス設計として捉える理由を示します。年度中の証跡と期末後の開示判断が結びつくため重要です。提出期限だけでなく、証拠をいつ、どの順番で積み上げるかを読み取ってください。
3月31日決算会社では、内部統制報告書は有価証券報告書と併せて通常6月末に提出されます。ただし、法定期限当日を到達点にするのではなく、少なくとも数営業日前に完成版を固定する設計が安全です。
次の逆算一覧は、提出日から年初の評価設計までを戻って考える順番を表します。読者にとって重要なのは、期末後の3か月だけでは十分な証跡を作れない点です。上から下へ逆算し、どの時点で経営者評価、監査人対応、年度内評価が必要になるかを確認してください。
法定期限、休日、提出可能時間、システム稼働状況を確認します。
有価証券報告書、内部統制報告書、確認書、監査報告書等を固定します。
取締役会、監査役等、経営会議、代表者・CFO承認、監査人の報告書発行準備を行います。
開示すべき重要な不備、是正措置、後発事象、評価結論を確認します。
運用評価、整備評価、ウォークスルー、不備是正、評価範囲決定、文書化、年間計画を前倒しで進めます。
このページは一般的な情報提供です。個別会社の提出要否、期限延長、虚偽記載リスク、監査意見、訂正報告、行政対応は、会社の属性や事実関係で変わります。具体的には、監査人、弁護士、公認会計士、所管財務局等へ確認する必要があります。
J-SOX制度、有価証券報告書、評価結果の関係を整理します
内部統制報告書は、経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その評価結果を外部へ報告する法定開示書類です。制度の中核は、金融商品取引法、内部統制府令、企業会計審議会の内部統制基準・実施基準にあります。
次の一覧は、内部統制報告書の主要項目と実務上の意味を整理したものです。スケジュール上、文章作成よりも評価範囲、評価手続、証跡、不備評価に時間がかかるため重要です。項目ごとに、どの資料が必要になるかを読み取ってください。
| 項目 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項 | 代表者・CFO等の責任、準拠した基準、内部統制の限界などを記載します。 |
| 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項 | 評価した拠点、プロセス、勘定科目、IT、範囲決定の手順、基準日、評価手続を説明します。 |
| 評価結果に関する事項 | 内部統制が有効か、有効でないか、または評価結果を表明できないかを示します。 |
| 付記事項 | 後発事象、期末日後に実施された是正措置、前年度の重要な不備の是正状況などを記載します。 |
| 特記事項 | 評価に関して特に説明すべき事項を記載します。 |
内部統制報告書は有価証券報告書と同じ時期に提出されます。したがって、有価証券報告書、決算短信、会社法計算書類、監査報告、定時株主総会、取締役会、監査役会・監査等委員会、監査人の内部統制監査報告書、EDINET提出準備と一体で設計します。
法定期限、評価範囲、EDINET実務を早期に組み込みます
法定提出期限だけを起点にすると、内部統制評価の実態に合わないスケジュールになります。年度中の運用証跡、金額的重要性と質的重要性を踏まえた評価範囲、改訂制度で重視される決定理由の開示を、早い段階から設計する必要があります。2024年4月以後に開始する事業年度に適用される改訂制度では、評価範囲の決定理由、前年度の開示すべき重要な不備の是正状況、訂正内部統制報告書の経緯・理由がより重視されます。2026年公表の有価証券報告書レビューでも、評価範囲の決定事由がない、または不明瞭な記載が課題として示されています。
次の比較一覧は、期限だけを見る設計と、評価可能性から逆算する設計の違いを示します。後者は監査人対応や開示リスクを下げるため重要です。左右を比較し、どの作業を期末前に済ませる必要があるかを読み取ってください。
| 観点 | 期限だけを見る設計 | 評価可能性から逆算する設計 |
|---|---|---|
| 運用証跡 | 期末後に資料を集めます。 | 年度中に承認、レビュー、例外処理、ログを残します。 |
| 評価範囲 | 前年踏襲や量的基準だけで決めがちです。 | 金額的重要性、質的重要性、事業変化、過年度不備を記録します。 |
| 制度改正 | 文言修正だけで対応します。 | 評価範囲の決定理由、是正状況、訂正経緯まで意識します。 |
| EDINET | 期限日の提出時間だけを見ます。 | 事前チェック、仮登録、PDF表示、タグ、添付書類を前倒しで確認します。 |
次の期限目安は、EDINET提出実務に余裕を持たせる考え方を示します。提出集中期には事前チェック・仮登録に時間を要する場合があるため重要です。日数は法定期限からの逆算として読み、会社の承認日程や監査人対応に合わせて前倒ししてください。
主要な開示文言、不備評価、経営者評価の論点を固めます。
監査人、監査役等、取締役会事務局、開示担当、法務担当の確認を終えます。
事前チェック、仮登録、PDF表示確認、タグ・添付書類確認を終えます。
緊急差替えを除き、提出できる状態を確保します。
EDINETは、定期保守等の計画停止期間を除き稼働するシステムとされています。ただし、事前チェック・仮登録は土日を含めて可能とされる一方、本登録の提出時間は平日9時から17時15分までとされているため、期限日の夕方に初めて作業する設計は避ける必要があります。
3月31日決算会社の標準工程を月別に把握します
3月31日決算会社では、通常6月末提出に向けて、4月から翌年6月まで連続的に作業を進めます。会社の規模、事業、監査人の方針、グループ構成、海外子会社、IT環境、前年度不備の状況により調整が必要です。
次の年間工程表は、時期、主な工程、成果物、関与部門を一体で示します。スケジュール遅延の原因は成果物や関与者の未確定にあることが多いため重要です。左から右へ読み、各月で何を残すべきかを確認してください。
| 時期 | 主な工程 | 主要成果物 | 関与部門・専門家 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 年間計画の立案、前年度振返り、制度改正確認 | J-SOX年間計画、課題管理表、前年度不備の是正計画 | 経営者、CFO、内部統制担当、内部監査、経理、法務、監査人 |
| 5月 | 評価範囲の仮決定、重要拠点・重要プロセスの選定 | 評価範囲メモ、重要性判断メモ | 内部統制担当、経理、経営企画、監査人 |
| 6月 | 取締役会・監査役等への計画報告、監査人との協議 | 年間評価計画承認資料、監査人協議メモ | 取締役会、監査役等、監査人、法務 |
| 7月〜8月 | 業務記述書、業務の流れ図、RCM更新、IT全般統制確認 | 文書化3点セット、RCM、ITGC評価計画 | 業務部門、IT、経理、内部統制担当 |
| 9月 | ウォークスルー、整備状況評価、統制設計の改善 | ウォークスルー記録、整備評価調書、不備一覧 | 内部統制担当、内部監査、監査人 |
| 10月〜12月 | 運用状況評価の中間実施、サンプルテスト、是正 | 運用評価調書、サンプル一覧、不備是正計画 | 内部監査、業務部門、経理、IT |
| 1月〜2月 | 期末前の是正完了確認、評価範囲見直し、決算統制準備 | 是正完了証跡、期末前レビュー資料 | 経理、内部統制担当、監査人 |
| 3月 | 期末日統制、棚卸、締め処理、アクセス権確認、決算統制 | 期末統制証跡、決算チェックリスト | 経理、事業部、IT、内部監査 |
| 4月 | 期末後運用評価、決算・連結・開示統制評価 | 期末後評価調書、連結決算統制証跡 | 経理、開示、法務、監査人 |
| 5月 | 不備評価、経営者評価案、内部統制報告書ドラフト | 不備評価メモ、経営者評価書、報告書草案 | 経営者、CFO、内部統制、法務、監査人 |
| 6月上旬 | 監査人最終手続、監査役等報告、取締役会付議準備 | 監査人質問回答、最終ドラフト、承認資料 | 監査人、監査役等、取締役会事務局 |
| 6月中旬 | 最終報告、EDINET事前チェック | 承認済み報告書、提出データ、事前チェックログ | 取締役会、監査役等、開示担当 |
| 6月下旬 | 有価証券報告書と併せて提出 | EDINET本登録、提出完了確認 | 開示担当、法務、経理、監査人 |
年度開始後できるだけ早期に、評価対象会社、拠点、プロセス、全社統制、決算統制、IT全般統制、評価範囲の根拠、前年度不備の是正計画、監査人協議、取締役会・監査役等への報告時期、海外子会社や新規システムの扱いを確定または仮確定します。
評価範囲、文書化、評価、不備、監査人対応を分解します
内部統制報告書の作成スケジュールは、前年度振返りから監査人対応まで複数のフェーズに分かれます。それぞれの成果物を年度中に積み上げることで、期末後の3か月を評価結論と開示書類作成に集中できます。
次の時系列は、フェーズごとの目的と注意点を並べたものです。順番を誤ると期末後に証跡不足や評価範囲不足が発覚するため重要です。上から下へ、どの段階で何を決めるべきかを読み取ってください。
監査人指摘、内部監査指摘、証跡不備、ITログ不足、制度改正、監査人方針変更を整理します。
どの統制が、誰により、どの頻度で、どの証跡に基づいて行われるかを明確にします。
取引発生から記録、承認、会計処理、開示までを実際の証跡で追跡します。
サンプリング、再実施、証跡確認、質問、観察、ログレビューで統制の運用を検証します。
潜在的影響、金額的重要性、質的重要性、補完統制、是正後運用実績を整理します。
経営者評価、報告書草案、監査人提出資料、取締役会・監査役等への報告をまとめます。
次の不備評価一覧は、開示すべき重要な不備に該当するかを検討する際の観点です。不備を単に「修正済み」と扱うと、後日の訂正報告や行政レビューで説明が難しくなるため重要です。各項目を不備評価メモの記載項目として確認してください。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| 不備の内容と原因 | 何が起き、なぜ発生したかを事実と原因に分けます。 |
| 財務報告への潜在的影響 | 重要な虚偽表示が発生し得たかを検討します。 |
| 金額的重要性と質的重要性 | 金額だけでなく、経営者関与、不正、開示項目、規制業種性を見ます。 |
| 補完統制 | 他の統制でリスクを防止または発見できたかを確認します。 |
| 是正措置 | 内容、完了日、是正後運用実績、責任部署を記録します。 |
| 評価結果への影響 | 期末日現在の評価結果や付記事項への影響を確認します。 |
経営者、取締役会、法務、内部監査、監査人の責任を分けます
内部統制報告書の作成スケジュールには、多数の専門職が関与します。責任が曖昧なまま進めると、提出直前に評価範囲、不備評価、開示文言、監査人対応が滞留します。
次のRACI一覧は、典型的な責任分解を示します。提出直前の混乱を防ぐため重要です。Responsibleは実行、Accountableは最終責任、Consultedは協議、Informedは報告先として読み、誰が決めるかを確認してください。
| 項目 | Responsible 実行 | Accountable 最終責任 | Consulted 協議 | Informed 報告先 |
|---|---|---|---|---|
| 年間J-SOX計画 | 内部統制担当 | 経営者・CFO | 内部監査、監査人、法務 | 監査役等、取締役会 |
| 評価範囲決定 | 内部統制担当、経理 | 経営者 | 監査人、内部監査、法務 | 監査役等 |
| 業務プロセス文書化 | 業務部門、内部統制担当 | 各部門長 | 経理、IT、法務 | CFO |
| IT全般統制評価 | IT部門、内部統制担当 | CIOまたはCFO | 監査人、情報セキュリティ | 経営者 |
| 不備評価 | 内部統制担当、内部監査、経理 | 経営者・CFO | 監査人、法務 | 監査役等、取締役会 |
| 内部統制報告書作成 | 内部統制担当、開示担当、経理 | 代表者・CFO | 法務、監査人 | 取締役会、監査役等 |
| EDINET提出 | 開示担当 | 代表者または開示責任者 | 経理、法務、IT | 経営者、監査役等 |
次の一覧は、取締役会・監査役等への望ましい報告タイミングを示します。提出直前の形式報告だけでは実質的な監督が難しいため重要です。三つの時点ごとに、報告すべき内容が変わることを確認してください。
年間評価計画、評価範囲、前年度課題の是正計画を報告します。
整備状況評価、中間運用評価、不備の発生状況を報告します。
経営者評価結果、開示すべき重要な不備の有無、報告書案、監査人の見解を報告します。
法務担当・弁護士は、金融商品取引法、開示府令、内部統制府令、会社法、取引所規則との整合、不備評価、訂正、提出遅延、取締役会報告、子会社や委託先からの証跡取得権限を確認します。内部監査部門が評価作業に深く関与する場合でも、最終的な評価責任は経営者にある点を明確にします。
成熟企業、IPO直後、海外子会社、IT依存企業で前倒し項目が変わります
内部統制報告書の作成スケジュールは、企業類型によってリスクの置き所が変わります。前年踏襲でよい会社もあれば、IPO直後、海外子会社、IT依存度の高さによって大幅な前倒しが必要な会社もあります。
次の比較一覧は、企業類型ごとの注意点と前倒しすべき作業を整理したものです。自社の状況に合わせた工程調整に使えるため重要です。左の類型に近いほど、右列の作業を年度前半に寄せる必要があります。
| 企業類型 | 主なリスク | 前倒しすべき作業 |
|---|---|---|
| 安定した上場会社 | 前年踏襲により新規事業、海外売上、見積り項目、M&A、決算体制変更、不正・通報を見落とすリスクです。 | 評価範囲の鮮度確認、事業変化の洗い出し、監査人との早期協議です。 |
| IPO直後の会社 | 上場準備時の文書と実運用の乖離、承認権限・職務分掌の未成熟、監査免除の誤解です。 | 上場会社としての実運用に合わせた文書再設計、開示・IRとの接続です。 |
| 海外子会社を持つ会社 | 証跡取得、言語、時差、現地制度、監査人間コミュニケーションが遅れるリスクです。 | 海外子会社の評価範囲確定、現地語証跡レビュー、子会社サブ証明の早期設定です。 |
| IT依存度の高い会社 | アクセス権不備、変更管理不備、クラウド委託先確認不足は期末後に回復しにくいリスクです。 | 年度前半のIT全般統制、特権ID、アクセス棚卸、変更管理、バックアップ確認です。 |
IT統制では、重要システムの一覧、システムオーナーと業務オーナー、特権ID管理、ユーザーアクセス棚卸、変更管理、本番環境への直接修正、インターフェース処理、マスタ管理、委託先保証報告書、障害・復旧手順を年度前半に確認します。
重要な不備、訂正、M&A、システム変更は通常より早めます
開示すべき重要な不備、有価証券報告書の訂正リスク、M&A・組織再編、基幹システム変更がある年度は、通常より大幅に前倒しする必要があります。評価結果、付記事項、有価証券報告書、監査人意見、取締役会・監査役等への報告、投資家説明が関係するためです。
次の一覧は、特殊事象ごとの追加工程を整理したものです。通常工程のまま進めると、期末後に開示判断や監査人協議が集中するため重要です。各行で、どの部門を早期に巻き込むべきかを読み取ってください。
事実認定、影響項目、重要性評価、補完統制、是正計画、期末日までの是正状況、評価結果案、監査人協議、法務確認、取締役会報告を前倒しします。
訂正原因が評価範囲内か、どの統制で防止・発見されるべきだったか、重要な不備に該当するかを検討します。
新規取得子会社の評価範囲、取得後の統制評価時点、会計システム、承認権限、PMI、のれん、連結仕訳を確認します。
移行データ、並行稼働、権限設計、承認ワークフロー、インターフェース、マスタ移行、手作業補正、変更管理の証跡を確認します。
システム変更年度の判断の流れは、ITプロジェクトとJ-SOX評価を同じ管理表で見る考え方を示します。プロジェクトだけが先行すると統制証跡が不足するため重要です。上から下へ、開発・移行・運用・監査人レビューがつながることを確認してください。
プロジェクト管理表に評価、監査人レビュー、証跡保存を明記します。
移行データの完全性・正確性、権限設計、承認経路、マスタ管理を確認します。
変更後の統制が年度内に実際に運用され、証跡が残る状態にします。
期末後に設計不備を初めて発見する状態を避けます。
年度初め、年度中、期末後、提出直前を分けて確認します
内部統制報告書の作成スケジュールでは、時期ごとに見るべき事項が異なります。チェックリストは、作業完了だけでなく、証跡と承認の残し方を確認するために使います。
次の一覧は、四つの時期に分けた実務確認項目です。読者にとって重要なのは、期末後に初めて着手する項目を減らすことです。各時期で未了項目がある場合、次の工程へどの影響が出るかを読み取ってください。
前年度報告書、監査人指摘、内部監査指摘、制度改正、金融庁レビュー、年間評価計画、評価範囲、重要拠点、重要プロセス、監査人協議、取締役会・監査役等報告、子会社依頼文を確認します。
業務記述書、業務の流れ図、RCM、ウォークスルー、整備状況評価、IT全般統制、中間運用評価、不備一覧、是正期限、是正後証跡、評価範囲変更、監査人追加依頼を確認します。
期末日現在の評価、決算・財務報告プロセス、連結・注記・開示統制、不備評価メモ、重要な不備、期末日後是正、後発事象、経営者評価書、報告書草案、レビューを確認します。
有価証券報告書、確認書、監査報告書、内部統制監査報告書との整合、最終報告、代表者・CFO承認、EDINETデータ、事前チェック、本登録、提出完了証跡、次年度改善メモを確認します。
チェックリストは、単に印を付けるためのものではありません。誰が、何を、どの資料に基づき、どの例外を検討し、どのような判断をしたかが分かる証跡を残すことが大切です。
期限、評価範囲、証跡、IT統制、法務レビュー、監査役等報告を見直します
内部統制報告書の作成スケジュールで失敗が起きる原因は、提出期限の直前だけにあるわけではありません。年度初めの評価範囲、年度中の証跡、IT統制、法務レビュー、監査役等への報告タイミングに原因が残っていることがあります。
次の一覧は、頻発する失敗と回避策を対比したものです。自社の工程を点検するため重要です。左列の兆候がある場合、右列の対応をどの時点に組み込むかを確認してください。
| 失敗 | 問題点 | 回避策 |
|---|---|---|
| 期限から逆算しすぎる | 年度内の運用証跡が不足します。 | 提出期限ではなく、統制が運用される時点から設計します。 |
| 評価範囲を前年踏襲する | 事業変化や質的重要性を見落とします。 | 前年から変化がない理由も記録します。 |
| 証跡の質を軽視する | 承認印やチェックだけでは判断過程が分かりません。 | 資料、例外、判断、レビュー内容が分かる証跡を残します。 |
| IT統制を後回しにする | 権限や変更管理の不備は期末後に回復しにくいです。 | 年度前半にIT全般統制を評価し、是正期間を確保します。 |
| 法務レビューを提出直前にする | 不備評価、訂正、提出遅延、取締役責任に間に合いません。 | 不備評価、開示判断、取締役会報告の段階から関与させます。 |
| 監査役等への報告が遅い | 実質的な監査・監督が難しくなります。 | 年度初め、中間、提出前の三段階で報告します。 |
一般的な制度説明として、個別判断を避けて整理します
一般的には、内国会社の有価証券報告書は事業年度経過後3か月以内に提出され、内部統制報告書も有価証券報告書と併せて提出されます。3月31日決算会社では通常6月末が重要な目安になります。ただし、会社の属性、提出期限延長、行政機関の休日、EDINETの提出可能時間等により確認が必要です。
一般的には、期末後だけで十分に整えることは難しいとされています。文章作成はできても、年度中の運用証跡、不備是正、評価範囲決定の根拠、監査人対応を後から適切に整えることは難しいため、年度開始前後から年間計画を策定する必要があります。
一般的には、評価範囲の決定責任は経営者にあります。監査人との協議は実務上重要ですが、監査人に丸投げするものではありません。経営者は金額的重要性と質的重要性を踏まえ、評価範囲の決定方法と根拠を文書化する必要があります。
一般的には、直ちにそうなるとは限りません。開示すべき重要な不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制上の不備であり、財務諸表の誤謬そのものとは概念が異なります。ただし、訂正、監査意見、投資家対応へ発展する可能性があるため、具体的には監査人や弁護士等へ相談する必要があります。
一般的には、財務報告に係る内部統制の評価は連結ベースで行われます。重要な子会社、重要な拠点、重要なプロセスは評価対象になり得ます。量的基準だけでなく、質的重要性、過年度不備、不正リスク、IT環境、規制業種性も考慮する必要があります。
一般的には、事前チェックや仮登録だけでは提出完了ではありません。本登録が必要です。EDINET提出サイトでは、提出時間やシステム稼働状況に注意が必要とされているため、余裕を持って確認する必要があります。
一般的には、前年の振返りと評価範囲の仮決定です。前年度不備、監査人指摘、事業変化、M&A、システム変更、組織変更、海外子会社の状況を踏まえ、年間評価計画を作成します。
4月上旬から提出後までの工程を一覧で確認します
以下は、3月31日決算会社の標準的な内部統制報告書の作成スケジュールです。各社の事情により調整は必要ですが、5月から6月に評価範囲を固め、9月までに整備状況評価を終え、12月までに中間運用評価と是正を進め、期末後は評価結論と開示書類作成に集中する流れが要点です。
次の時系列は、月内の具体的な作業を標準例として示します。細かな締切を置くことで、関係部門と監査人の作業を前倒ししやすくなるため重要です。上から下へ、どの時点までに次工程へ進める状態にするかを確認してください。
4月上旬に前年度振返りと制度改正確認、4月下旬に是正計画確定、5月上旬に評価範囲仮決定、5月下旬に監査人協議、6月上旬に年間計画報告を行います。
7月〜8月に文書化更新とITGC評価準備、9月にウォークスルーと整備状況評価、10月〜11月に中間運用評価、12月に中間不備評価と是正措置を行います。
1月に評価範囲見直し、2月に是正完了確認、3月に期末日統制、4月に期末後評価と連結・開示統制評価を行います。
5月上旬に不備評価と経営者評価案、5月中旬に報告書草案とレビュー、5月下旬に監査役等説明、6月上旬に整合確認、6月中旬に最終報告と事前チェック、6月下旬に本登録と提出完了確認を行います。
提出完了証跡を保存し、次年度改善事項を整理します。
法務、監査人、内部監査、IT、経営者の視点を統合します
内部統制報告書は会計・監査の書類という印象が強い一方、法務、IT、内部監査、経営者、取締役会の視点が欠けると、開示責任や統治能力を十分に説明できません。
次の一覧は、専門職ごとの視点とスケジュール上の重点を整理したものです。関与者ごとの役割を早期に固めるため重要です。各専門職がどの工程で関与すべきかを読み取ってください。
開示責任と取締役責任の交差点として、不備評価、訂正可能性、提出遅延、取締役会報告、監査役等とのコミュニケーションを設計します。
開示責任経営者評価、評価範囲、統制設計、運用証跡、不備評価、内部統制報告書の表示を検討します。
監査対応形式的な証跡収集にとどまらず、統制が実際にリスクを低減しているかを確認し、現場往査、サンプルテスト、是正フォローの時間を確保します。
独立評価アクセス権、変更管理、運用管理、ログ、バックアップ、クラウド委託先、サイバーインシデントを年度前半に評価します。
年度前半投資家に対する財務報告の信頼性の説明責任として、評価範囲、不備、是正、監査人との重要論点を理解します。
監督年度設計、運用証跡、開示判断を一体で機能させます
内部統制報告書の作成スケジュールには、経営者がどのリスクを重要と認識しているか、取締役会がどのように監督しているか、監査役等がどのように検証しているか、内部監査がどの程度機能しているか、法務・経理・IT・事業部門がどれほど連携しているかが表れます。
次の重要ポイントは、適切なスケジュール設計の核心を五つにまとめたものです。提出期限に間に合わせるだけでなく、財務報告の信頼性を支えるため重要です。各項目を年間計画、進捗管理、取締役会報告、監査人対応へ落とし込む視点で読んでください。
評価範囲と年間計画を早期に確定または仮確定します。
文書化、整備評価、IT統制評価を前倒しします。
運用評価と是正を行い、期末後に論点を残さないようにします。
不備評価、経営者評価、監査人対応、開示文言、社内承認を進めます。
法定期限当日ではなく、本登録可能な状態を早めに整えます。
内部統制報告書の作成スケジュールを高度化することは、J-SOX対応を効率化するだけではありません。財務報告の信頼性、投資家保護、取締役会の監督、監査役等の監査、企業法務、リスクマネジメントを一体として機能させるための企業統治そのものの設計です。
法令・金融庁資料・EDINET資料・監査実務資料を整理します