2σ Guide

N-3期からN期までの
標準的IPOスケジュール

上場準備を、監査対象期間に入る前の土台作りから、主幹事審査、取引所審査、公募・売出し、上場後の開示体制まで一続きの工程として整理します。

2期間 申請直前の監査証明
2か月 グロース市場の審査期間目安
4段階 N-3期以前からN期まで
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N-3期からN期までの 標準的IPOスケジュール

上場準備を、監査対象期間に入る前の土台作りから、主幹事審査、取引所審査、公募・売出し、上場後の開示体制まで一続きの工程として整理します。

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N-3期からN期までの 標準的IPOスケジュール
上場準備を、監査対象期間に入る前の土台作りから、主幹事審査、取引所審査、公募・売出し、上場後の開示体制まで一続きの工程として整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • N-3期からN期までの 標準的IPOスケジュール
  • 上場準備を、監査対象期間に入る前の土台作りから、主幹事審査、取引所審査、公募・売出し、上場後の開示体制まで一続きの工程として整理します。

POINT 1

  • N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールの全体像
  • 1. N-3期以前:監査法人が受け入れられる資料、人材、制度、統制を整える
  • 2. N-2期:監査対象期間1期目として月次決算、規程、決裁、取締役 会、内部統制を使う
  • 3. N-1期:上場会社水準の運用証跡を期首から積み上げ、申請書類を検証可能な形にする
  • 4. N期:主幹事、取引所、投資家に対して運用実態を説明する

POINT 2

  • IPOスケジュールで使うN期・N-1期・N-2期・N-3期の意味
  • 申請期から逆算する呼び方をそろえると、監査、内部統制、法務DD、開示準備の責任分担が明確になります。
  • 国内会社の東証IPO
  • 市場・会社形態の違い
  • 形式要件だけでは足りない

POINT 3

  • IPO準備の標準スケジュールは四つの審査から逆算する
  • 会計監査・内部統制
  • 主幹事引受審査
  • 取引所上場審査
  • 開示・募集売出し
  • 会計監査、主幹事引受審査、取引所上場審査、金融商品取引法上の開示手続を分けて管理します。

POINT 4

  • N-3期以前のIPOスケジュールは監査対象期間に入る前の土台作り
  • 監査法人が受け入れられる会社にするため、資料、人材、制度、統制、課題管理を整えます。
  • ショートレビューと課題管理
  • 監査法人の選任と監査受入体制
  • 会社・事業・組織

POINT 5

  • N-2期のIPOスケジュールは監査対象期間1期目として制度を使う
  • 1. 対象業務を決める:販売、購買、在庫、固定資産、人件費、経費、財務、決算、IT全般統制を対象にする
  • 2. 業務記述書・業務手順図・RCMを作る:リスクと統制を、実務担当者が説明できる粒度で整理する
  • 3. 実務と一致しているか確認する:規程、承認、システム権限、例外処理が現場の実態とずれていないかを見る
  • 4. 運用証跡を残す:N-1期以降の評価に耐えるよう、承認、照合、レビュー、是正の記録を蓄積する

POINT 6

  • N-1期のIPOスケジュールは上場会社水準の運用を証明する時期
  • 2期目監査、申請書類ドラフト、事業計画、独立役員、開示・内部者取引管理を実務として動かします。
  • Iの部・IIの部と事業計画
  • 独立役員、適時開示、内部通報、情報セキュリティ
  • N-1期は、上場準備の中核です。

POINT 7

  • N期のIPOスケジュールは上場申請、審査、公開価格形成、上場後体制への移行
  • 1. 主幹事引受審査:会社内容、内部管理体制、業績見通し、資本政策、リスク情報を証跡で回答する
  • 2. 取引所上場審査:Iの部・IIの部、質問回答、ヒアリング、追加資料で上場適格性を確認する
  • 3. 上場承認前後の開示手続:有価証券届出書、目論見書、訂正届出書、仮条件、ブックビルディングを管理する
  • 4. 公開価格・上場後体制:公開価格決定、公募・売出し、払込、受渡し、上場後の継続開示へ移行する

POINT 8

  • N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールで企業法務が見る重点論点
  • 会社法、金融商品取引法、契約、労務、知財・データ、税務・組織再編を工程に落とします。
  • ガバナンス
  • 開示・内部者取引
  • 重要契約と取引法務

まとめ

  • N-3期からN期までの 標準的IPOスケジュール
  • N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールの全体像:上場申請書類を作るだけでなく、上場会社として説明責任を果たせる運用実績を積み上げる工程です。
  • IPOスケジュールで使うN期・N-1期・N-2期・N-3期の意味:申請期から逆算する呼び方をそろえると、監査、内部統制、法務DD、開示準備の責任分担が明確になります。
  • N-3期以前のIPOスケジュールは監査対象期間に入る前の土台作り:監査法人が受け入れられる会社にするため、資料、人材、制度、統制、課題管理を整えます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールの全体像

上場申請書類を作るだけでなく、上場会社として説明責任を果たせる運用実績を積み上げる工程です。

IPO準備は、経営、会計、法務、税務、労務、知財、情報管理、内部統制、開示、投資家対応を横断する制度設計です。上場準備会社、経営者、法務担当、企業内弁護士、外部専門家、監査法人、主幹事証券会社、内部監査担当、取締役会事務局が同じ工程表を見ながら進める必要があります。

東京証券取引所の説明では、上場申請までに申請直前2期間分の監査証明が必要とされ、グロース市場の上場審査期間は2か月とされています。日本公認会計士協会のIPO事前準備ガイドブックも、申請期の直前2期間について監査法人による監査証明が必要となるため、金融商品取引法に準ずる監査契約を締結して会計監査を受ける必要があると整理しています。

この重要ポイントは、N-3期以前からN期までの準備で何を最優先にすべきかを表しています。読者にとって重要なのは、N期の作業量だけを見るのではなく、監査対象期間に入る前から運用実績を作る必要があると読み取ることです。

N期に体制を作るのではなく、N-2期首から運用していた事実を残す

N-3期以前に監査・内部管理・資本政策・ガバナンスの土台を作り、N-2期とN-1期で監査対象期間として決算・統制・開示体制を実際に運用し、N期で主幹事審査、取引所審査、公募・売出し、上場後の開示体制への移行を完了させます。

次の判断の流れは、IPO準備で確認される実態を時系列で表しています。なぜ重要かというと、申請期の直前になって未整備項目が見つかると、監査、審査、価格形成に連鎖して影響するためです。上から下へ、準備、運用、証跡、説明の順番で成熟度を確認してください。

IPO準備で求められる成熟の順番

N-3期以前

監査法人が受け入れられる資料、人材、制度、統制を整える

N-2期

監査対象期間1期目として月次決算、規程、決裁、取締役会、内部統制を使う

N-1期

上場会社水準の運用証跡を期首から積み上げ、申請書類を検証可能な形にする

N期

主幹事、取引所、投資家に対して運用実態を説明する

前提実際の工程は、市場区分、会社規模、業種、資本政策、海外株主、規制業種該当性、会計基準、M&A履歴、ストックオプション設計、監査法人・主幹事証券会社・取引所との協議結果によって変わります。ここでは一般的な整理を示しており、個別案件の法的助言、監査意見、税務判断、証券引受判断、上場可否判断ではありません。
Section 01

IPOスケジュールで使うN期・N-1期・N-2期・N-3期の意味

申請期から逆算する呼び方をそろえると、監査、内部統制、法務DD、開示準備の責任分担が明確になります。

IPO実務では、上場申請を行う事業年度をN期または申請期、その1期前をN-1期または直前期、2期前をN-2期または直前々期、3期前またはそれ以前の準備期間をN-3期以前と呼ぶことが多くあります。日本公認会計士協会のガイドブックも、N-3以前、N-2、N-1、Nという区分で、ショートレビュー、監査対象期間、財務諸表監査、内部統制報告制度対応、申請書類準備、証券会社審査、取引所審査を図示しています。

次の比較表は、各期の呼称、位置づけ、中心課題を整理したものです。読者にとって重要なのは、N-2期から監査対象期間に入るため、N-3期以前の準備不足がそのまま上場時期に影響する点です。左から右へ、時期ごとの呼び方と中心課題を対応させて読んでください。

区分一般的な呼称典型的な位置づけ中心課題
N-3期以前準備期間、直前々期以前監査対象期間に入る前の整備期間ショートレビュー、監査法人・主幹事候補との接点、資本政策、内部管理体制の骨格整備、法務・税務・労務・知財の棚卸し
N-2期直前々期監査対象期間の1期目準金商法監査、月次決算、内部統制設計、規程整備、取締役会運営、関連当事者・反社・許認可・労務の是正
N-1期直前期監査対象期間の2期目2期目監査、内部統制運用、主幹事審査準備、Iの部・IIの部ドラフト、事業計画、上場審査論点の解消
N期申請期上場申請・審査・上場実行期主幹事引受審査、取引所審査、上場承認、有価証券届出書、目論見書、ブックビルディング、公募・売出し、上場後開示

この対象範囲の一覧は、日本国内会社が東京証券取引所への新規上場を目指す標準的ケースで、どこまでを前提に読むべきかを表しています。なぜ重要かというと、市場区分や会社形態が変わると、要件、審査、提出書類、工程が変わるためです。該当する前提と、別途検討が必要なケースを読み分けてください。

主な想定

国内会社の東証IPO

スタートアップ・成長企業がグロース市場を目指すケースを中心に、スタンダード市場、プライム市場でも共通しやすい準備項目を扱います。

別途検討

市場・会社形態の違い

地方取引所、TOKYO PRO Market、外国会社、既上場会社の市場区分変更、上場子会社化、カーブアウトIPO、SPC・投資法人等では、要件や審査が異なります。

審査の重心

形式要件だけでは足りない

株主数や流通株式比率などの数値要件に加え、開示、経営の健全性、ガバナンス、内部管理体制、事業計画の合理性が確認されます。

グロース市場の形式要件には、上場時見込みで株主数150人以上、流通株式数1,000単位以上、流通株式時価総額5億円以上、流通株式比率25%以上、公募500単位以上、1か年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること、登録上場会社等監査人による監査、株式事務代行機関の設置、単元株式数100株、株式譲渡制限を行っていないことまたは上場時までに制限を行わない見込みがあることなどが含まれます。

ただし、標準的IPOスケジュールは数値要件を満たすためだけの工程表ではありません。上場会社としての組織能力を証明するための工程表として、開示の適切性、企業経営の健全性、コーポレートガバナンス・内部管理体制、事業計画の合理性、公益・投資者保護を継続的に整える必要があります。

Section 02

IPO準備の標準スケジュールは四つの審査から逆算する

会計監査、主幹事引受審査、取引所上場審査、金融商品取引法上の開示手続を分けて管理します。

IPO準備を工程管理しやすくするには、監査法人による会計監査・内部統制対応、主幹事証券会社による引受審査、取引所による上場審査、金融商品取引法上の開示・募集売出し手続という四つの確認プロセスに分解するのが有効です。

次の一覧は、四つの確認プロセスが何を見ているかを表しています。読者にとって重要なのは、法務だけ、会計だけ、証券手続だけを個別に進めても、N期では相互に整合した説明が求められる点です。それぞれの項目がどの審査・手続で問題になるかを読み取ってください。

Audit

会計監査・内部統制

申請直前2期間の財務諸表監査、N-2期首残高、会計方針、収益認識、棚卸、固定資産、税効果、連結範囲、関連当事者、ストックオプション会計などが早期に問題になります。

Securities

主幹事引受審査

資本政策、会社内容、内部管理体制、ガバナンス、収益計画、開示体制、公募・売出し設計、価格形成、ロックアップ、反社会的勢力排除などを確認します。

Exchange

取引所上場審査

申請書類、質問回答、ヒアリング、追加資料を通じて、パブリックカンパニーとしての適格性を確認します。グロース市場では審査期間が2か月と説明されています。

Disclosure

開示・募集売出し

有価証券届出書、目論見書、訂正届出書、仮条件、ブックビルディング、公開価格決定、公募・売出し、払込、株式受渡し、上場後の継続開示へ進みます。

次の工程表は、N-3期以前からN期までに、経営・事業、会計・監査、法務・ガバナンス、内部統制・管理、証券・開示がどのように進むかを表しています。なぜ重要かというと、各領域の遅れはほかの領域の審査回答や開示内容にも波及するからです。横方向に同じ時期の作業を、縦方向に同じ領域の成熟を追ってください。

時期経営・事業会計・監査法務・ガバナンス内部統制・管理証券・開示
N-3期以前IPO方針、上場市場仮決定、資本政策、事業計画原型ショートレビュー、監査法人候補選定、会計方針棚卸し定款・株式・契約・知財・労務・許認可・関連当事者の棚卸し規程体系、職務分掌、決裁権限、月次決算、内部監査構想主幹事候補との接点、IPOストーリー、資料基盤
N-2期事業計画運用、KPI管理、組織強化1期目監査、期首残高、月次決算締切、連結・税効果取締役会・監査役等の運営、規程施行、SO・株主整理J-SOX設計、三点セット、IT統制、反社・内部通報主幹事選定、審査論点リスト化
N-1期予算実績管理、上場後成長計画、投資家説明準備2期目監査、監査指摘解消、決算短信トライアル独立役員、CG報告書、Iの部・IIの部法務確認内部統制運用評価、内部監査、適時開示手順引受審査準備、申請書類ドラフト、ロックアップ
N期上場申請、審査対応、ロードショー申請期決算・半期情報対応、監査レビュー取締役会決議、届出書、目論見書、上場契約上場会社としての開示・内部者取引管理取引所審査、上場承認、ブックビルディング、公開価格、上場

次の時系列は、標準スケジュールを段階ごとに並べたものです。なぜ重要かというと、どの時期に何を完了していないと次の段階が苦しくなるかを一目で確認できるためです。上から順に、整備、運用、証明、実行へ進む流れを読み取ってください。

N-3期以前

土台作り

ショートレビュー、監査法人候補との協議、資本政策、法務DD、労務・知財・許認可の棚卸し、規程体系の骨格整備を進めます。

N-2期

監査対象期間1期目

月次決算、取締役会、内部統制、三様監査、主幹事候補との協議を実際に運用し、証跡を残します。

N-1期

運用水準の証明

2期目監査、Iの部・IIの部ドラフト、事業計画、独立役員、適時開示・内部者取引管理の模擬運用を固めます。

N期

審査と市場への説明

主幹事引受審査、取引所審査、有価証券届出書、目論見書、価格形成、上場後体制への移行を進めます。

Section 03

N-3期以前のIPOスケジュールは監査対象期間に入る前の土台作り

監査法人が受け入れられる会社にするため、資料、人材、制度、統制、課題管理を整えます。

N-3期以前は助走期間に見えますが、実務上は最も重要です。ここで監査法人が監査を受け入れられる水準の資料・人材・制度・統制を整えられない場合、N-2期から監査対象期間に入ることが難しくなります。成功条件は、いつかIPOしたいという意思表明ではなく、N-2期首から監査対象期間として耐えられる会社になることです。

次の一覧は、N-3期以前に取締役会または経営会議で確認すべき項目を表しています。なぜ重要かというと、CFOや管理部長だけに上場準備を任せると、事業、法務、労務、知財、情報システム、内部監査、外部専門家の前提がずれやすいからです。各項目が誰の責任で、どの証跡に残るかを読み取ってください。

01

IPO方針と目的

資金調達、人材採用、信用力向上、既存株主の流動性、M&A戦略、創業者承継など、上場の目的を明文化します。

経営
02

市場と時期の仮説

グロース、スタンダード、プライム、地方市場、TOKYO PRO Marketなどの候補と、N期上場を目標とする場合の決算期、監査対象期間、申請時期を確認します。

工程
03

資本政策と費用

発行済株式、種類株式、SO、優先株、VC、創業者持株、資金需要、希薄化、ロックアップ、監査・主幹事・法律・税務・内部統制・IR費用を整理します。

資本
04

重大論点

赤字、継続企業、関連当事者取引、親子上場、規制業種、海外子会社、M&A履歴、不祥事、労務、知財帰属、情報漏えい、個人情報、反社チェックを洗い出します。

注意

ショートレビューと課題管理

ショートレビューは、IPO準備の診断です。会計、税務、内部統制、ガバナンス、法務、労務、知財、IT、情報セキュリティ、関連当事者、資本政策、事業計画、予算管理、開示能力を横断的に点検します。監査対象期間に入ってから過去にさかのぼる監査を依頼することは難しい場合が多いため、N-3期以前に課題を発見し、期限・責任者・証跡・再発防止策を定めて解消することが重要です。

次の比較表は、ショートレビューで発見されやすい課題とN-3期以前の対応を表しています。読者にとって重要なのは、課題を見つけるだけでは足りず、上場審査で説明できる形でクローズする必要がある点です。領域ごとに、何を証拠として残すべきかを読み取ってください。

領域典型課題N-3期以前に必要な対応
会計収益認識、原価計算、棚卸、固定資産、減損、税効果、連結範囲、資本性金融商品会計方針書、証憑整備、月次決算、監査証跡、会計論点メモ
法務契約書未整備、口頭取引、競業避止、知財帰属不明、許認可漏れ契約台帳、重要契約レビュー、知財棚卸し、許認可確認
労務未払残業、裁量労働・固定残業不備、就業規則未整備、ハラスメント労務DD、就業規則改定、勤怠管理、36協定、研修
ガバナンス取締役会議事録不備、利益相反取引未承認、親族取引議事録整備、関連当事者台帳、職務権限規程、利益相反ルール
内部統制職務分掌なし、承認証跡なし、システム権限過大業務手順、RCM、権限管理、IT全般統制の設計
税務役員報酬、SO課税、移転価格、消費税、組織再編税制税務論点メモ、税理士レビュー、過年度修正要否判断
情報管理個人情報台帳なし、委託先管理不備、漏えい対応未整備個人情報規程、委託契約、PMS、インシデント対応手順
反社・コンプライアンス取引先・株主・役職員チェック未実施反社チェック基準、調査記録、取引開始時の確認手順

監査法人の選任と監査受入体制

監査法人の選任は、N-3期以前の最重要タスクです。上場に際して監査人は登録上場会社等監査人である必要があり、2023年4月1日以降、監査法人または公認会計士が上場会社等の会計監査を行う際は上場会社等監査人名簿への登録が必要とされています。監査法人を探すだけでなく、監査法人が受けられる会社にすることが本質です。

次の一覧は、監査法人候補に説明するために会社側が準備すべき資料を表しています。なぜ重要かというと、過年度会計、急成長、赤字、資金繰り、証憑不足、複雑な資本政策、関連当事者取引、海外子会社、収益認識の複雑性が監査工数を押し上げるからです。監査人がリスクを判断できる情報がそろっているかを読み取ってください。

Business

会社・事業・組織

会社概要、事業内容、主要KPI、組織図、株主構成、資本政策、内部管理体制、職務分掌、決裁規程、会議体、稟議、契約管理を準備します。

Accounting

財務・会計資料

過去3期程度の試算表、決算書、税務申告書、月次推移表、主要契約、収益認識手順、請求・入金・売上計上ルールを整理します。

Risk

重要論点資料

棚卸資産、固定資産、無形資産、のれん、投資有価証券、貸付金、関連当事者取引、ストックオプション、種類株式、監査対応人員を示します。

資本政策、法務DD、労務・人事制度

N-3期以前に資本政策を誤ると、N期で修正することは難しくなります。種類株式を普通株式へ転換する時期、優先株主の権利、投資契約の上場時終了条項、ストックオプションの税制適格性、行使条件、退職時取扱い、費用計上、株式分割、単元株式数100株化、譲渡制限撤廃、名義株・所在不明株主・退職者保有株式、株式事務代行機関との契約または内諾を工程化します。

法務DDでは、会社が上場会社として投資家に説明できる法的基盤を持っているかを検証します。重要契約では、チェンジ・オブ・コントロール条項、上場時通知義務、独占・最恵待遇、競業避止、解除条項、反社条項、情報管理、個人情報、再委託、監査権、損害賠償上限、準拠法・管轄、知財帰属、共同開発、ライセンス、サブスクリプション解約条項、取引基本契約の有無を確認します。

知財では、創業者・役職員・業務委託先・共同研究先から会社への権利帰属、職務発明規程、商標登録、特許出願、OSS利用、AI生成物、ソースコード管理、ライセンス違反、模倣品対応を確認します。許認可・規制では、金融、医療・薬機、食品、建設、不動産、労働者派遣・職業紹介、運送、通信、電気通信、資金決済、古物、個人情報、輸出管理、外為法、独禁法、下請法、景品表示法、環境法、業界自主規制を確認します。

労務は、未払残業、固定残業代、管理監督者性、裁量労働制、フレックスタイム、36協定、休職・復職、メンタルヘルス、ハラスメント、退職勧奨、業務委託と雇用の偽装、外国人雇用、社会保険未加入、就業規則未届出、賃金規程不備がコンプライアンス論点になり得ます。社会保険労務士と弁護士が連携し、労務DD、未払賃金リスクの定量化、規程改定、勤怠システム導入、承認経路、相談窓口、ハラスメント研修を進めます。

次の到達基準は、N-2期首までに会社がどの状態に達しているべきかを表しています。なぜ重要かというと、この基準を満たさないまま監査対象期間に入ると、N-2期の運用証跡が弱くなり、N-1期以降の審査準備が後ろ倒しになるためです。各項目を、着手済みではなく運用可能かという観点で確認してください。

項目N-3期以前の到達基準
監査法人監査契約または契約に向けた具体的協議が進んでいる
決算月次決算が一定期間内に締まり、証憑・承認・会計方針が説明できる
内部管理職務分掌、決裁権限、稟議、契約、購買、販売、人事、経費の基本手順がある
法務重要契約、知財、許認可、関連当事者、訴訟・紛争、反社チェックが棚卸し済みである
労務就業規則、勤怠、36協定、未払残業、ハラスメント対応が整理されている
資本政策株主構成、SO、種類株式、投資契約、株式分割、譲渡制限撤廃の工程が見えている
ガバナンス取締役会・監査役等の運営、議事録、利益相反承認、関連当事者管理が始まっている
IPO管理課題管理表、責任者、期限、外部専門家、会議体、報告ラインが定着している
Section 04

N-2期のIPOスケジュールは監査対象期間1期目として制度を使う

作った制度を棚に置かず、決裁、契約、決算、取締役会、内部監査の証跡を残します。

N-2期は、監査対象期間の1期目です。N-3期以前に作った制度を、実際の業務の中で使い始める時期です。重要なのは、社内規程を印刷して保管することではなく、決裁、契約、販売、購買、経費、採用、勤怠、棚卸、請求、入金、情報管理、取締役会、内部監査、監査役監査が証跡を残しながら運用されることです。

1期目監査と期首残高

N-2期の会計監査では、期首残高が重要です。監査対象期間の最初の期首残高が不確かであれば、その後の損益や純資産の信頼性にも影響します。棚卸資産、固定資産、投資、有価証券、貸付金、売掛金、引当金、税効果、資本取引、未払費用、前受金、収益認識に関する期首残高は、N-2期首時点で監査証跡が必要になります。

次の時系列は、N-2期に監査対象期間1期目として進める作業を表しています。なぜ重要かというと、監査法人に資料を出すたびに説明が変わる状態は、上場審査以前に監査継続のリスクになるからです。上から順に、決算、会計論点、監査指摘、説明資料の整備が連動していることを読み取ってください。

期首

期首残高と証跡の確認

棚卸資産、固定資産、債権、引当金、税効果、資本取引、前受金、収益認識の期首証跡をそろえます。

毎月

月次決算の締切とレビュー

締切日、レビュー者、承認者を明確にし、差異分析を取締役会報告につなげます。

四半期・年度

会計論点の整理

収益認識、棚卸実査、固定資産実査、連結範囲、税効果、ストックオプション会計を検討します。

通期

監査指摘の課題管理

監査法人からの指摘事項を課題管理表に入れ、期限と責任者を明確にします。

内部統制の設計と文書化

金融庁の内部統制基準は、内部統制を、業務の有効性及び効率性、報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守、資産の保全という四つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスと定義しています。構成要素として、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応が示されています。

次の判断の流れは、内部統制を文書作成で終わらせず、日常業務に組み込む順番を表しています。なぜ重要かというと、三点セットは目的ではなく、重要な虚偽表示、法令違反、不正、資産流出、情報漏えい、権限濫用を防止・発見する仕組みの説明資料だからです。上から下へ、文書化、運用、証跡、評価の順番を確認してください。

内部統制を運用に落とす順番

対象業務を決める

販売、購買、在庫、固定資産、人件費、経費、財務、決算、IT全般統制を対象にする

業務記述書・業務手順図・RCMを作る

リスクと統制を、実務担当者が説明できる粒度で整理する

実務と一致しているか確認する

規程、承認、システム権限、例外処理が現場の実態とずれていないかを見る

運用証跡を残す

N-1期以降の評価に耐えるよう、承認、照合、レビュー、是正の記録を蓄積する

規程体系、取締役会、三様監査、主幹事選定

N-2期には、定款、取締役会規程、監査役会規程または監査等委員会関連規程、職務権限規程、稟議規程、組織規程、業務分掌規程、経理規程、販売管理規程、購買管理規程、与信管理規程、固定資産管理規程、棚卸規程、契約管理規程、文書管理規程、印章管理規程、情報管理規程、内部監査規程、リスク管理規程、コンプライアンス規程、内部通報規程、反社会的勢力排除規程、インサイダー取引防止規程、適時開示規程、個人情報保護規程、情報セキュリティ規程、委託先管理規程、就業規則、賃金規程、育児介護休業規程、ハラスメント防止規程などを実際に運用します。

取締役会では、月次業績、予算実績差異、資金繰り、重要契約、投資、採用、組織変更、リスク、コンプライアンス、内部監査、監査法人指摘、関連当事者取引、利益相反取引を適切に付議・報告します。IIの部記載要領では、監査役監査、内部監査、公認会計士または監査法人による監査の連携状況について、定期会合の開催頻度、日常の意見交換状況、監査項目・監査結果の共有状況等の記載が求められています。

主幹事証券会社は、上場戦略、資本政策、審査、投資家マーケティング、公開価格、証券手続の中心です。主幹事選定では、業種理解、投資家基盤、同種IPO実績、海外販売能力、審査方針、必要資料、想定スケジュール、公開価格形成、資本政策、ロックアップ、売出し、追加売出し枠、上場市場の選択、流通株式比率、共同主幹事、シ団構成、監査法人・取引所との調整経験を確認します。

次の到達基準は、N-2期末時点でどの運用が機能しているべきかを表しています。なぜ重要かというと、N-1期は整備ではなく上場会社水準の運用を証明する時期だからです。各項目について、資料があるだけでなく、実務上動いているかを読み取ってください。

項目N-2期末の到達基準
監査1期目監査の主要論点が洗い出され、重要な監査指摘の解消計画がある
決算月次・四半期・年度決算のスケジュールとレビュー体制が機能している
内部統制三点セットが主要プロセスで作成され、実務との整合性確認が進んでいる
ガバナンス取締役会、監査役等、内部監査、三様監査が定期運用されている
法務重要契約、関連当事者、反社、許認可、労務、知財の重大不備が是正方針に乗っている
主幹事主幹事候補との協議が進み、審査論点と提出資料の方向性が見えている
開示事業内容、リスク情報、KPI、事業計画の説明資料が作成され始めている
Section 05

N-1期のIPOスケジュールは上場会社水準の運用を証明する時期

2期目監査、申請書類ドラフト、事業計画、独立役員、開示・内部者取引管理を実務として動かします。

N-1期は、上場準備の中核です。N-2期で設計した制度を期首から安定的に運用し、監査・内部統制・主幹事審査・取引所審査に耐えられる証跡を蓄積します。N-1期にこれから整備しますという項目が多い会社は、N期上場に間に合わない可能性が高くなります。

次の比較表は、N-1期で特に重くなる確認領域を表しています。なぜ重要かというと、N-2期の不備が改善されたかどうかが、N期の申請書類や主幹事審査でそのまま論点になるからです。各領域で、会計処理の結論だけでなく、統制改善、開示、取締役会での説明まで一体で処理する必要があると読み取ってください。

領域N-1期の重点確認すべき証跡
監査収益認識、見積り、税効果、棚卸資産評価、固定資産減損、ソフトウェア資産、SO費用、連結決算契約、検収、承認、実査記録、将来計画、監査法人との論点メモ
申請書類Iの部・IIの部、主要な事業活動の前提、分布状況表、独立役員届出書ドラフト、CG報告書事業・法務・会計の整合確認、版管理、質問回答、証跡資料
事業計画市場規模、競争環境、KPI、粗利率、人件費、研究開発費、広告宣伝費、運転資本予算実績差異、差異原因分析、取締役会報告、業績予想修正基準
ガバナンス機関設計、社外取締役、独立役員、指名・報酬委員会、役員報酬、後継者計画独立性確認、取引関係・人的関係・資本関係、取締役会議事録
開示・IR適時開示体制、内部情報管理、内部者取引防止、IRポリシー、フェアディスクロージャー開示チェックリスト、重要事実管理簿、売買禁止期間、研修記録
コンプライアンス内部通報、反社会的勢力排除、情報セキュリティ、個人情報保護、外部専門家連携通報受付・調査・是正記録、反社チェック記録、セキュリティ規程、委託先管理

Iの部・IIの部と事業計画

N-1期には、新規上場申請のための有価証券報告書であるIの部・IIの部のドラフトを作成します。Iの部は投資家向けの開示資料としての性格が強く、IIの部は取引所審査における詳細説明資料としての性格が強い資料です。ドラフト作成は文章作成ではなく、会社の実態を投資家、証券会社、取引所、監査法人が検証可能な形で言語化する作業です。

事業計画では、市場規模、競争環境、顧客セグメント、成長要因、売上KPI、単価、解約率、継続率、受注残、パイプライン、広告効率、粗利率、人件費、研究開発費、広告宣伝費、設備投資、運転資本、主要顧客依存、サプライヤー依存、規制、技術、知財、訴訟、為替、予算実績差異の把握方法、業績予想の作成・修正・公表手順を整備します。

次の一覧は、N-1期に書類作成と運用準備を同時に進める領域を表しています。なぜ重要かというと、開示資料、取引所回答、主幹事回答、監査資料の記載が相互に矛盾すると、審査対応の信頼性が落ちるためです。各項目について、誰が作成し、誰がレビューし、どの証跡とつながるかを読み取ってください。

I

Iの部

投資家向けに事業内容、リスク情報、財務情報、資本政策、役員、重要契約、KPIを説明します。

開示
II

IIの部

適時開示体制、IR体制、有価証券報告書作成体制、内部情報管理、内部者取引防止、反社、内部通報、情報セキュリティなどを詳細に説明します。

審査
CG

ガバナンス資料

独立役員、社外役員の独立性、取締役会構成、機関設計、CG報告書、スキルマトリックス、役員報酬方針を整理します。

統治
IR

IR・適時開示

決定事実、発生事実、決算情報ごとの情報収集・分析・公表手順、IR活動方針、沈黙期間、個別面談ルールを準備します。

投資家

独立役員、適時開示、内部通報、情報セキュリティ

N-1期には、上場時の機関設計、取締役会構成、監査役会または監査等委員会、社外取締役、独立役員、任意の指名・報酬委員会、スキルマトリックス、取締役会評価、役員報酬、後継者計画の方向性を固めます。独立役員は、知名度ではなく、会社の事業、リスク、資本政策、少数株主保護、関連当事者取引、利益相反、内部統制、不祥事対応に対して実質的に監督できるかが重要です。

適時開示・内部者取引管理では、適時開示規程、情報取扱責任者、開示委員会、開示チェックリスト、重要事実管理簿、情報隔壁、役職員売買ルール、売買禁止期間、事前届出・承認制度、決算短信、決算説明資料、業績予想修正、発生事実開示の模擬演習、IRポリシー、フェアディスクロージャー、沈黙期間、個別面談ルールを準備します。

内部通報制度では、社内窓口、経営陣から独立した通報窓口、通報受付・調査・是正・再発防止の手順、通報者保護、社員への周知、通報件数が確認されます。反社会的勢力排除では、基本方針、社内体制、チェックの方針・基準、新規・既存取引先、株主、役員、従業員に対する確認方法が求められます。情報セキュリティでは、管理体制、社内ルール、研修、クラウドベンダー、ISO27001やプライバシーマーク、脆弱性調査などが論点になります。

次の到達基準は、N-1期末にN期の申請・審査へ移れる状態を表しています。なぜ重要かというと、N期に重大な未解決事項が残ると、上場申請、届出書、投資家説明、価格形成のすべてに影響するためです。各項目を、見込みではなく審査で説明できる状態かという観点で確認してください。

項目N-1期末の到達基準
監査2期分の監査証明に向けた主要論点が解消され、監査報告に重大な障害がない
決算・開示決算短信・有報・Iの部・IIの部の作成体制が実務的に動いている
内部統制主要統制が期首から運用され、運用証跡と評価資料が蓄積されている
主幹事引受審査資料が整い、審査論点の回答方針が確定している
ガバナンス独立役員候補、機関設計、取締役会運営、監査役等、CG報告書の骨子が固まっている
法務重大契約・許認可・労務・知財・関連当事者・反社・内部通報・情報管理の重大不備がない
事業計画投資家に説明可能な成長戦略、KPI、予算実績管理、リスク情報が整備されている
Section 06

N期のIPOスケジュールは上場申請、審査、公開価格形成、上場後体制への移行

準備してきた体制を外部審査に提出し、市場に説明する時期です。

N期は、書類作成のピークであり、主幹事審査、取引所審査、監査対応、開示書類、有価証券届出書、目論見書、ロードショー、ブックビルディング、上場承認、上場契約、株式事務、IR、広報、人事、情報管理が同時進行します。N期に新たな重大不備が発見されると、上場スケジュール延期、公募・売出し中止、届出書訂正、投資家説明の混乱につながります。

次の判断の流れは、N期に進む主要手続の順番を表しています。なぜ重要かというと、主幹事回答、取引所回答、届出書・目論見書、IR資料の整合が崩れると、訂正や説明追加が連鎖しやすいためです。上から下へ、審査対応と開示手続が同時に進むことを読み取ってください。

N期の主要手続

主幹事引受審査

会社内容、内部管理体制、業績見通し、資本政策、リスク情報を証跡で回答する

取引所上場審査

Iの部・IIの部、質問回答、ヒアリング、追加資料で上場適格性を確認する

上場承認前後の開示手続

有価証券届出書、目論見書、訂正届出書、仮条件、ブックビルディングを管理する

公開価格・上場後体制

公開価格決定、公募・売出し、払込、受渡し、上場後の継続開示へ移行する

主幹事引受審査と取引所審査

主幹事証券会社の引受審査では、会社の沿革、事業内容、ビジネスモデル、競争優位性、KPI、業績推移、成長性、収益性、財務健全性、資金使途、経営者、役員、独立役員、監査役等、内部管理体制、内部統制、内部監査、リスク管理、コンプライアンス、会計監査、監査指摘、重要な会計方針、継続企業の前提、反社会的勢力、関連当事者取引、利益相反、親会社・大株主との関係、訴訟・紛争、行政指導、法令違反、情報漏えい、不祥事、資本政策、SO、ロックアップ、売出し、公募、株主構成、開示内容、リスク情報、投資家説明、価格形成が確認されます。

取引所審査では、形式要件と実質審査基準の双方が確認されます。グロース市場の場合、形式要件には株主数、流通株式、流通株式時価総額、流通株式比率、公募、事業継続年数、監査意見、登録上場会社等監査人、株式事務代行機関、単元株式数、株式譲渡制限、振替機関取扱い等があります。実質審査では、開示の適切性、企業経営の健全性、コーポレートガバナンス・内部管理体制、事業計画の合理性、公益・投資者保護が確認されます。

次の一覧は、取引所審査で質問が集中しやすい領域を表しています。なぜ重要かというと、質問は会社の弱点に集中し、回答品質はN-3期からN-1期に蓄積した証跡の品質で決まるためです。各項目について、口頭説明ではなく資料・議事録・規程・契約・証憑・取締役会決議・監査法人確認・専門家見解で回答できるかを読み取ってください。

事業計画の合理性

主要KPIと売上成長の関係、顧客依存、競争環境、成長前提、計画未達時の見直し方法が問われます。

ガバナンスの実効性

取締役会の実質的議論、代表取締役への権限集中の牽制、独立役員の役割が確認されます。

関連当事者・利益相反

取引条件の公正性、承認手続、必要性、代替可能性、解消方針、開示方針が確認されます。

反社・内部通報・情報管理

反社チェック範囲、内部通報制度の機能、情報セキュリティ事故時の開示判断が確認されます。

過去不備への対応

法令違反、不祥事、会計誤り、労務不備などについて、原因分析と再発防止策の運用が問われます。

上場申請書類、有価証券届出書、目論見書、価格形成

N期には、上場申請時書類、上場承認までの書類、公募・売出し関係書類、第三者割当・SO関連書類等を提出します。書類管理で重要なのは版管理です。Iの部、IIの部、有価証券届出書、目論見書、決算短信、事業計画、成長可能性資料、コーポレートガバナンス報告書、適時開示資料、IR資料、プレスリリース、社内説明資料、主幹事回答、取引所回答の内容が相互に矛盾しないよう、開示統制を行います。

次の比較表は、N期に管理すべき書類と確認観点を表しています。読者にとって重要なのは、同じ事実が複数書類にまたがって記載されるため、法務・会計・事業・主幹事・監査法人の整合確認が必要になる点です。書類ごとに、どのリスクが表現に反映されるかを読み取ってください。

書類・資料主な内容確認観点
上場申請書類有価証券新規上場申請書、宣誓書、反社確認書、主要な事業活動の前提、分布状況表、独立役員届出書ドラフト提出時点の事実、承認状況、前提条件、取引所回答との整合
Iの部・IIの部投資家向け開示と取引所審査向け詳細説明事業、リスク、KPI、内部管理、開示体制、反社、内部通報、情報セキュリティの整合
有価証券届出書・目論見書募集・売出しに関する法定開示虚偽記載、誤解を生じさせる表示、リスク情報不足、将来見通しの前提不足
IR・成長可能性資料投資家説明、事業計画、成長戦略、資金使途過度に楽観的な表現、競合比較の誇張、顧客名・契約内容の不正確な記載
公募・売出し関係仮条件、ブックビルディング、公開価格、売出株式数、ロックアップ市場環境、投資家需要、訂正届出、売出株式数変更の可能性

日本証券業協会は、2023年10月1日以降の株式IPOについて、公開価格が仮条件の範囲外で設定される可能性、公開価格の設定と同時に売出株式数が変更される可能性、上場までのスケジュール等が変わる旨を公表しています。N期後半では、投資家需要、市場環境、届出書記載、訂正手続、売出株式数変更の可能性を踏まえた管理が必要です。

次の重要ポイントは、上場後の初期対応で誤解されやすい点を表しています。なぜ重要かというと、IPOは上場日で終わらず、継続開示、適時開示、内部者取引管理、株主総会、IR、内部統制報告、監査、取締役会運営、投資家対応が始まるからです。監査免除の有無と内部統制報告書の提出義務を分けて読み取ってください。

上場後3年間の内部統制監査免除があっても、内部統制報告書の提出準備は必要

一定規模以下の新規上場会社は上場後3年間内部統制報告書の監査が免除される場合がありますが、内部統制報告書自体は提出しなければならないとされています。監査免除と提出義務免除は別であり、N-3期から内部統制の整備・運用・評価体制を計画する必要があります。

Section 08

IPOスケジュールを進める専門家・社内担当者の役割分担

情報共有の失敗を防ぐため、責任者、期限、資料室、Q&A管理を一元化します。

N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールを円滑に進めるには、専門家と社内担当者の役割を明確にする必要があります。専門家の数が多いほど、情報共有の失敗が起こりやすくなります。外部弁護士、監査法人、主幹事証券会社、税理士、社会保険労務士、弁理士、司法書士がそれぞれ別々の前提で助言すると、整合性が崩れます。

次の一覧は、IPO準備に関与する主な役割、担当領域、重要な時期を表しています。なぜ重要かというと、誰が何を決めるのかが曖昧なまま進むと、審査回答、開示表現、監査対応の責任が分散するためです。各役割の担当範囲と、関与が濃くなる時期を読み取ってください。

役割主な担当領域重要な時期
CEO・創業者IPO目的、事業戦略、投資家説明、ガバナンス姿勢全期間
CFO・経営企画資本政策、事業計画、主幹事対応、IR、予算管理N-3期からN期
法務担当・企業内弁護士契約、会社法、金商法、開示、規程、リスク管理、審査回答全期間
外部弁護士法務DD、開示レビュー、規制法務、資本政策、紛争・不祥事N-3期からN期
公認会計士・監査法人ショートレビュー、準金商法監査、内部統制、監査証明N-3期からN期
税理士税務申告、税務DD、組織再編税制、SO税務N-3期からN-1期
社会保険労務士就業規則、勤怠、労務DD、社会保険、労務管理N-3期からN-1期
司法書士定款、登記、株式分割、役員変更、譲渡制限撤廃N-3期からN期
弁理士・知財担当特許・商標、職務発明、ライセンス、知財戦略N-3期からN-1期
主幹事証券会社資本政策、引受審査、上場申請支援、価格形成N-2期からN期
株式事務代行機関株主名簿、株式事務、上場後株主対応N-2期からN期
内部監査担当内部監査計画、業務監査、J-SOX評価支援N-2期からN期
情報セキュリティ担当ISMS、アクセス権限、クラウド、脆弱性、事故対応N-3期からN期
監査役等・社外取締役監督、監査、利益相反、内部統制、少数株主保護N-2期からN期

次の判断の流れは、複数の専門家が関与する場合の情報管理を表しています。なぜ重要かというと、前提の違う助言を統合しないまま申請書類や回答書に反映すると、整合性のない説明になるためです。上から下へ、課題、資料、Q&A、意思決定を一元管理する流れを確認してください。

IPO事務局が一元管理する順番

課題管理表

論点、責任者、期限、証跡、再発防止策、ステータスを一元化する

資料室と版管理

申請書類、契約、規程、議事録、監査資料、回答書の最新版を管理する

Q&A管理

主幹事、取引所、監査法人、外部専門家への回答を矛盾なく蓄積する

会社自身の統合判断

助言を受けるだけでなく、経営判断として最終方針を決め、取締役会等に残す

Section 09

N-3期からN期までのIPOスケジュールで起きやすい失敗と予防策

多くの遅延はN期に発生するのではなく、N-3期以前の先送りがN期に表面化して起こります。

IPO準備の典型的な失敗は、監査法人選任の遅れ、月次決算の遅延、規程と実態の乖離、関連当事者取引の整理不足、労務リスクの過小評価、リスク情報の薄さ、N期に新しい論点を発見することです。いずれも、N-3期以前のショートレビューと法務・労務・税務・知財DD、N-2期の内部統制運用、N-1期の審査資料レビューで予防しやすくなります。

次の注意点一覧は、標準スケジュールを遅らせる代表的な失敗と予防策を表しています。なぜ重要かというと、N期に重大論点が出ると、上場申請、届出書、投資家説明、公開価格形成に一気に影響するためです。各項目について、どの時期に予防策を打つべきかを読み取ってください。

監査法人選任の遅れ

申請直前2期間の監査証明が必要である以上、N-2期に入ってから監査法人を探すのは危険です。N-3期以前にショートレビューを受け、監査受入体制を整え、複数候補と早期に接点を持ちます。

月次決算が締まらない

月次決算が遅い会社は、予算実績管理、業績予想、適時開示、監査対応、取締役会報告が遅れます。N-3期以前から締切、責任者、レビュー、差異分析を運用します。

規程と実態が乖離している

大量の規程を作っても、実態と合わなければ審査で問題になります。稟議、契約、購買、経費、採用、勤怠、情報管理で実際に使い、例外処理を管理します。

関連当事者取引の整理不足

創業者、役員、親族、関連会社、大株主、VC、役員支配会社との取引は詳細に確認されます。条件の公正性、必要性、代替可能性、承認手続、開示、解消方針を早期に整理します。

労務リスクの過小評価

未払残業やハラスメントは、金額だけでなく企業文化・コンプライアンスの問題として評価されます。N-3期以前に労務DDを行い、勤怠・規程・相談体制を運用します。

リスク情報が薄い

投資家向け開示で一般論だけを並べると不十分です。事業固有のリスク、顧客依存、法規制、競争、技術、セキュリティ、個人情報、知財、人材、資金繰り、KPI、計画の不確実性を具体化します。

N期に新しい論点を発見する

重要契約の解除条項、許認可漏れ、未払残業、SO不備、関連当事者取引、個人情報事故、会計方針誤りがN期に見つかると、上場スケジュールに重大な影響が出ます。

Section 10

N-3期からN期までのIPOスケジュール実務チェックリスト

各期の完了条件を、監査・内部統制・法務・開示・審査対応の観点で確認します。

チェックリストは、単なる作業一覧ではなく、次の期へ進める状態かを確認するためのものです。なぜ重要かというと、N-3期以前の未完了項目はN-2期の運用証跡を弱くし、N-2期の未完了項目はN-1期の審査資料を弱くし、N-1期の未完了項目はN期の上場申請・価格形成に影響するためです。各時期の項目を、完了証跡があるかという観点で読み取ってください。

N3

N-3期以前チェック

IPO目的・想定市場・想定時期、事務局・責任者・会議体・課題管理表、監査法人候補向け資料、ショートレビュー、月次決算、会計方針、証憑保存、承認経路、資本政策、種類株式、SO、株主間契約、投資契約、重要契約、知財、許認可、関連当事者、反社、労務、税務、規程体系、職務分掌、決裁権限、取締役会運営、主幹事候補、株式事務代行機関、外部専門家との接点を確認します。

整備
N2

N-2期チェック

監査契約または監査実施体制、N-2期首残高の監査証跡、月次決算の期限運用、差異分析の取締役会報告、主要業務プロセスの内部統制文書、取締役会・監査役等・内部監査・三様監査、規程に基づく稟議・契約・購買・経費・採用・勤怠、関連当事者、反社、内部通報、情報セキュリティ、主幹事候補との協議を確認します。

運用
N1

N-1期チェック

2期目監査の主要論点、Iの部・IIの部ドラフト、法務・会計・事業の整合確認、事業計画、KPI、予算実績管理、業績予想方針、独立役員候補、CG報告書、機関設計、社外役員体制、内部統制の運用評価、内部監査、改善措置、適時開示、内部者取引管理、IR体制、重大未解決事項の有無、主幹事審査資料、質問回答、証跡資料を確認します。

証明
N

N期チェック

上場申請書類の版管理、主幹事引受審査の証跡回答、取引所審査の質問回答・ヒアリング・追加資料の責任者、有価証券届出書・目論見書・Iの部・IR資料・成長可能性資料の表現整合性、公募・売出し、ロックアップ、売出株式数、価格形成、訂正届出、上場後の適時開示、内部者取引管理、IR、株主総会、内部統制報告書、監査対応を確認します。

実行
Section 11

N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールの結論

上場はゴールではなく、パブリックカンパニーとしての説明責任の始まりです。

N-3期からN期までの標準的IPOスケジュールは、N-3期以前に上場会社としての土台を作り、N-2期から監査対象期間として運用を開始し、N-1期で上場会社水準の運用証跡を蓄積し、N期で主幹事・取引所・投資家に対してその実態を説明する流れです。

次の重要ポイントは、IPO準備で最後までぶれない軸を表しています。なぜ重要かというと、上場準備の失敗はN期に突然発生するのではなく、N-3期以前に準備すべきことを先送りした結果としてN期に表面化することが多いためです。何を早期に始め、何を証跡として残すべきかを読み取ってください。

早期着手と運用証跡が、IPOスケジュールの最も堅実な進め方

監査法人選任、内部管理体制、月次決算、資本政策、関連当事者、労務、知財、許認可、情報セキュリティ、反社、内部通報、適時開示、内部者取引管理は、すべて早期に着手すべき領域です。経営者、法務、会計、税務、労務、知財、内部監査、情報セキュリティ、監査役等、外部専門家、主幹事証券会社、監査法人が同じ工程表を共有し、一貫して運用証跡を積み上げることが重要です。

Reference

参考資料・根拠資料

公的機関・専門機関が公表するIPO、上場審査、内部統制、公開価格形成に関する資料を整理しています。

上場審査・提出書類

  • 日本取引所グループ「上場スケジュール」
  • 日本取引所グループ「上場関係者と役割」
  • 日本取引所グループ「上場審査基準概要(グロース市場)」
  • 日本取引所グループ「提出書類フォーマット(グロース市場)」
  • 日本取引所グループ「新規上場申請のための有価証券報告書(IIの部)記載要領」

監査・内部統制

  • 日本公認会計士協会「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」
  • 金融庁・企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
  • 金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂に関する公表資料」

公開価格形成・審査実務

  • 日本証券業協会「IPOにおける公開価格の設定プロセスの見直しについて」
  • EY Japan「IPOの基礎 2025 第10章 株式上場の審査」