2σ Guide

倫理規程と
コンプラ規程の使い分け

企業が大切にする価値を示す倫理規程と、法令・社内ルール・契約・業界基準を守る仕組みを定めるコンプラ規程を、企業法務・内部統制・労務・監査の視点から整理します。

2文書 理念規範と統制規範
7段階 棚卸しから改定まで
301人 内部通報体制の重要基準
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倫理規程と コンプラ規程の使い分け

名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。

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倫理規程と コンプラ規程の使い分け
名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。
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  • 倫理規程と コンプラ規程の使い分け
  • 名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。

POINT 1

  • 倫理規程とコンプラ規程の使い分けは理念と統制の分担です
  • 名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。
  • 倫理規程は会社の価値を示し、コンプラ規程は価値を動かす仕組みを定めます
  • 倫理規程
  • 行動規範

POINT 2

  • 倫理規程とコンプラ規程の定義を分けて理解します
  • 倫理規程
  • 主語は「私たちは」になじみます。
  • コンプラ規程
  • 主語は「会社は」「責任者は」「役職員は」になじみます。

POINT 3

  • 倫理規程とコンプラ規程の背景にある法制度とガバナンス
  • 1. 会社法と会社法施行規則:法令・定款適合性と業務の適正を確保する体制が、コンプラ規程の骨格とつながります。
  • 2. コーポレートガバナンス・コード:投資家、株主、社外役員への説明責任が、倫理規程とコンプラ規程の実効性を問います。
  • 3. 公益通報者保護制度:従業員数301人以上の企業等では 内部通報 体制の整備が特に重要になり、文化と手続の両方が必要になります。
  • 4. 内部統制報告制度:リスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリング、改善が、文書だけで終わらない運用を求めます。
  • 5. ISO 37301・ISO 37001・OECD指針:コンプライアンス、反贈収賄、人権・環境・労働を含む責任ある企業行動を、リスクベースで管理する視点を補います。

POINT 4

  • 倫理規程とコンプラ規程の使い分けを判断表で確認します
  • 1. 価値判断を示す論点か:誠実性、公正性、人権、透明性、社会的責任を扱う場合は倫理規程へ置きます。
  • 2. 日常場面へ翻訳が必要か:贈答接待、SNS、情報管理、ハラスメント相談などは行動規範で具体化します。
  • 3. 責任者・期限・記録が必要か:手続や証跡が必要な場合はコンプラ規程または個別規程に移します。
  • 4. 個別規程へ展開:独禁法、個人情報、反贈収賄、ハラスメント、AI利用などは詳細ルールを置きます。
  • 5. コンプラ規程で管理:委員会、教育、通報、調査、是正、取締役会報告の共通手続へ組み込みます。

POINT 5

  • 倫理規程とコンプラ規程を文書体系の中で設計します
  • 1. 価値を決めます:倫理規程で、人の尊厳、公正な競争、顧客への誠実性、記録を偽らない姿勢、声を上げる文化を示します。
  • 2. 体制を組みます:コンプラ規程で、責任者、委員会、リスク評価、内部通報、調査、是正、モニタリングを定めます。
  • 3. 個別規程へ落とします:独禁法、個人情報、反贈収賄、ハラスメント、AI、営業秘密、輸出管理などの詳細手続を置きます。
  • 4. 証跡から見直します:研修受講記録、通報傾向、監査指摘、法令改正、重大インシデントをもとに改定します。

POINT 6

  • 倫理規程の標準構成と条項例を押さえます
  • 短く、経営トップの言葉として読め、行動規範へ展開できる設計にします。
  • 誠実性・公正性・透明性
  • 人権尊重・多様性・心理的安全性
  • 公正な競争・腐敗防止・利益相反

POINT 7

  • コンプラ規程の標準構成は運用と証跡から逆算します
  • 例外承認
  • 重大案件報告
  • 経営層が関与する疑義では、通常ラインだけでは足りない場合があります。

POINT 8

  • 倫理規程とコンプラ規程の使い分けを具体例で確認します
  • 倫理規程がスローガンだけになります
  • 価値だけで終わらせず、行動規範とケーススタディ研修へ展開します。
  • コンプラ規程が禁止事項だけになります
  • 相談窓口、承認手続、判断の流れ、例外処理、記録様式まで整備します。

まとめ

  • 倫理規程と コンプラ規程の使い分け
  • 倫理規程とコンプラ規程の使い分けは理念と統制の分担です:名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。
  • 倫理規程とコンプラ規程の定義を分けて理解します:倫理規程、行動規範、就業規則まで混同しないことが重要です。
  • 倫理規程とコンプラ規程の背景にある法制度とガバナンス:内部統制、上場会社の説明責任、公益通報、国際基準が設計の土台になります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

倫理規程とコンプラ規程の使い分けは理念と統制の分担です

名称よりも、文書が果たす機能を先に決めることが出発点になります。

倫理規程とコンプラ規程の使い分けは、単なる文書名の違いではありません。倫理規程は、企業が何を大切にし、顧客・従業員・取引先・株主・地域社会へどのような姿勢で向き合うかを示す理念規範です。コンプラ規程は、法令、定款、社内規程、契約、許認可条件、業界基準、上場規則、当局指針などを守るための体制と手続を定める統制規範です。

結論は、倫理規程が「なぜ守るのか」「どのような会社でありたいのか」を示し、コンプラ規程が「何を、誰が、どの手続で、どの水準まで守るのか」を定める、という整理です。この違いを曖昧にすると、理念は美しくても運用されない、または手続は細かくても社員が納得しない、という二重の失敗につながります。

次の強調表示は、このページ全体の読み方を表しています。読者にとって重要なのは、倫理規程とコンプラ規程を上下関係だけでなく役割分担として読み、価値・行動・体制・証跡のどこが不足しているかを確認することです。

倫理規程は会社の価値を示し、コンプラ規程は価値を動かす仕組みを定めます

倫理規程、行動規範、コンプラ規程、個別規程、研修、通報、監査、取締役会報告を一体で設計すると、違反予防と組織文化づくりを同時に進めやすくなります。

次の3つの項目は、文書を分けるときの基本視点を表しています。なぜ重要かというと、社内規程は読む人と使う場面で必要な粒度が変わるからです。各項目から、理念・行動・統制のどこに書く内容かを読み取ってください。

Value

倫理規程

誠実性、公正性、人権尊重、透明性、顧客本位、声を上げる文化など、会社の価値判断の軸を示します。

Conduct

行動規範

贈答接待、利益相反、情報管理、ハラスメント、SNS利用など、日常業務で迷いやすい場面へ翻訳します。

Control

コンプラ規程

責任者、委員会、リスク評価、通報、調査、是正、研修、監査、取締役会報告を具体化します。

一般情報このページは企業法務・ガバナンス実務に関する一般的な解説です。就業規則、懲戒、公益通報、個人情報、独禁法、海外贈収賄、金融規制、グループ会社統制などは、業種・会社規模・労使関係・海外法で結論が変わる可能性があります。
Section 01

倫理規程とコンプラ規程の定義を分けて理解します

倫理規程、行動規範、就業規則まで混同しないことが重要です。

倫理規程とは、企業および役職員が事業活動で従うべき倫理的価値、判断原則、社会的責任を定める社内規程です。民間企業すべてに「倫理規程」という名称の文書を義務づける一般法はありませんが、コーポレートガバナンス、内部統制、労務管理、危機管理、ESG、人権尊重、サステナビリティ、レピュテーションリスクの観点から、多くの会社が同種の文書を整備しています。

コンプラ規程とは、コンプライアンス体制を構築・運用するための社内規程です。ここでいうコンプライアンスは、法令遵守にとどまらず、定款、社内規程、契約、許認可、業界基準、上場規則、行政指針、国際基準、社会的要請まで含めて管理する考え方です。

次の比較表は、企業理念から個別マニュアルまでの文書の役割を整理しています。読者にとって重要なのは、各文書が誰に向けて、どの粒度で、どのように運用されるかを分けて確認することです。列ごとに、文書名、主な役割、典型的な内容、運用の中心を読み比べてください。

文書主な役割典型的な内容運用の中心
企業理念・パーパス存在意義を示します使命、価値創造、社会的役割経営陣
倫理規程価値判断基準を示します誠実、公正、人権、透明性、社会的責任経営陣、法務、人事、サステナビリティ
行動規範価値を日常行動へ翻訳します贈答接待、利益相反、情報管理、ハラスメント、通報法務、コンプライアンス
コンプラ規程遵守体制と管理手続を定めます委員会、責任者、リスク評価、教育、通報、調査、是正、監査コンプライアンス部門、法務、内部監査
個別規程・マニュアル領域別の詳細ルールを示します個人情報、独禁法、反贈収賄、輸出管理、反社、労務、会計各主管部門

次の一覧は、混同しやすい文書の違いを補足しています。なぜ重要かというと、懲戒や調査の根拠を抽象的な倫理条項だけに置くと、就業規則との整合性や手続の公正性が問題になりやすいからです。どの文書が価値を示し、どの文書が義務や手続を支えるかを読み取ってください。

倫理規程

主語は「私たちは」になじみます。命令よりも原則を示し、迷ったときの判断軸、研修の土台、経営メッセージとして機能します。

コンプラ規程

主語は「会社は」「責任者は」「役職員は」になじみます。責任、期限、記録、報告ラインまで監査可能な形にします。

就業規則・懲戒規程

社員に不利益な効果をもたらす場面では、周知、合理性、手続の公正性、個別禁止規程との整合性が重要になります。

使い分け倫理規程は価値を定め、行動規範は価値を日常行動に翻訳し、コンプラ規程は日常行動を支える体制・手続・統制を定めます。
Section 02

倫理規程とコンプラ規程の背景にある法制度とガバナンス

内部統制、上場会社の説明責任、公益通報、国際基準が設計の土台になります。

会社法は、一定の場合に、取締役の職務執行が法令・定款に適合することを確保する体制や、企業集団の業務の適正を確保する体制の整備を求めます。コンプラ規程は、こうした内部統制システムを具体化する文書になり得ます。一方、倫理規程は、内部統制の土台である統制環境を支えます。

上場会社では、コーポレートガバナンス・コードとの関係も重要です。倫理規程は、企業価値、サステナビリティ、ステークホルダーとの関係を説明する文書になります。コンプラ規程は、リスク管理、内部統制、取締役会監督、内部監査、危機対応の根拠文書になります。

次の時系列は、倫理規程とコンプラ規程に影響する制度・基準の位置づけを整理しています。読者にとって重要なのは、文書作成だけでなく、通報・監査・取締役会報告・国際基準までつなげて運用する必要がある点です。上から順に、制度背景がどの実務へつながるかを読み取ってください。

内部統制

会社法と会社法施行規則

法令・定款適合性と業務の適正を確保する体制が、コンプラ規程の骨格とつながります。

上場会社

コーポレートガバナンス・コード

投資家、株主、社外役員への説明責任が、倫理規程とコンプラ規程の実効性を問います。

通報制度

公益通報者保護制度

従業員数301人以上の企業等では内部通報体制の整備が特に重要になり、文化と手続の両方が必要になります。

財務報告

内部統制報告制度

リスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリング、改善が、文書だけで終わらない運用を求めます。

国際基準

ISO 37301・ISO 37001・OECD指針

コンプライアンス、反贈収賄、人権・環境・労働を含む責任ある企業行動を、リスクベースで管理する視点を補います。

次の一覧は、個別法令・個別リスクがどちらの文書に関係するかを表しています。なぜ重要かというと、独禁法、個人情報、ハラスメントなどは、法令遵守の問題であると同時に、企業倫理の問題でもあるからです。各項目から、価値として書く部分と手続として書く部分の両方を読み取ってください。

01

独占禁止法

倫理規程では公正な競争を掲げ、コンプラ規程・個別規程では競合接触、業界団体参加、相談窓口、監査を定めます。

公正競争個別規程
02

個人情報・プライバシー

倫理規程では人格・プライバシー尊重を示し、コンプラ規程では取得、利用目的、第三者提供、安全管理、漏えい対応を管理します。

信頼記録管理
03

ハラスメント

倫理規程では尊厳・多様性・心理的安全性を示し、コンプラ規程や防止規程では相談、調査、不利益取扱い禁止、再発防止を定めます。

人権尊重調査手続
Section 03

倫理規程とコンプラ規程の使い分けを判断表で確認します

目的、読者、監査可能性、例外処理、違反時対応が分かれます。

倫理規程とコンプラ規程を分ける理由は、目的、読者、監査可能性、例外処理、違反時対応が異なるためです。倫理規程は組織文化と価値判断を共有する文書であり、コンプラ規程は違反を予防し、早期発見し、是正し、再発防止するための文書です。

次の比較表は、実務で判断しやすい軸をまとめたものです。読者にとって重要なのは、同じテーマでも、倫理規程では価値として、コンプラ規程では義務・権限・手順・期限・記録として書き分ける点です。左列の判断軸ごとに、どちらへ記載する内容かを読み取ってください。

判断軸倫理規程に書く事項コンプラ規程に書く事項
目的信頼、誠実性、公正性、社会的責任を示します。違反予防、早期発見、是正、再発防止を実現します。
読者役職員、取引先、顧客、株主、社会も読みます。管理職、法務、コンプラ、内部監査、役員が実務で使います。
表現原則、価値、宣言、判断軸が中心です。義務、権限、手順、期限、記録、報告が中心です。
典型条項人権尊重、公正取引、顧客本位、誠実な記録、利益相反回避を扱います。委員会、責任者、リスク評価、教育、通報、調査、是正、懲戒連携を扱います。
違反時教育、評価、組織風土改善を通じ、重大な場合は調査へつなぎます。調査、証拠保全、是正、懲戒、当局対応、開示、再発防止へ進みます。
改定契機パーパス変更、社会的期待、不祥事、ESG課題を反映します。法令改正、監査指摘、違反事例、組織変更、M&A、当局対応を反映します。

次の判断の流れは、ある論点を倫理規程・行動規範・コンプラ規程・個別規程のどこに置くかを表しています。なぜ重要かというと、抽象的な価値だけでは現場が動けず、細かい手続だけでは社員が納得しにくいからです。順番に沿って、文書の置き場所を読み取ってください。

文書を分ける判断の流れ

価値判断を示す論点か

誠実性、公正性、人権、透明性、社会的責任を扱う場合は倫理規程へ置きます。

日常場面へ翻訳が必要か

贈答接待、SNS、情報管理、ハラスメント相談などは行動規範で具体化します。

責任者・期限・記録が必要か

手続や証跡が必要な場合はコンプラ規程または個別規程に移します。

高リスク
個別規程へ展開

独禁法、個人情報、反贈収賄、ハラスメント、AI利用などは詳細ルールを置きます。

共通事項
コンプラ規程で管理

委員会、教育、通報、調査、是正、取締役会報告の共通手続へ組み込みます。

注意倫理規程に「品位を保つこと」とだけ書き、それを重い懲戒の直接根拠にする設計は慎重な検討が必要です。懲戒は、就業規則、懲戒規程、個別禁止規程、周知、事実認定、処分相当性、手続の公正性と整合させます。
Section 04

倫理規程とコンプラ規程を文書体系の中で設計します

上位文書ほど抽象的に、下位文書ほど具体的にします。

企業の規程体系は、企業理念・パーパス、倫理規程、行動規範、コンプラ規程、個別コンプライアンス規程、実務マニュアル、記録様式の順で設計すると安定します。上位文書ほど外部にも示しやすく、下位文書ほど社内運用と証跡管理に使います。

次の表は、推奨される文書階層を表しています。読者にとって重要なのは、倫理規程を上位に置いて価値観を固定し、コンプラ規程を中核に置いて各個別規程を束ねることです。抽象から具体へ、どの段階で何を定めるかを読み取ってください。

階層文書設計のポイント
1企業理念・パーパス事業の存在意義と社会への価値提供を示します。
2倫理規程・企業行動憲章人権、公正性、透明性、誠実性など、変えにくい価値を示します。
3行動規範役職員が日常業務で判断できるよう、場面別の行動基準へ翻訳します。
4コンプラ規程委員会、責任者、教育、通報、調査、是正、報告を中核として定めます。
5個別規程個人情報、独禁法、反贈収賄、輸出管理、反社、労務、会計などへ展開します。
6マニュアル・チェックリスト現場が迷わないように、申請、承認、記録、例外処理を具体化します。
7記録様式・ワークフロー研修、承認、通報、調査、是正、監査の証跡を残します。

次の時系列は、文書が抽象から具体へ展開され、運用で再び見直される動きを表しています。なぜ重要かというと、文書は作成時点だけで完結せず、研修・通報・監査・取締役会報告によって改善されるからです。順番から、規程体系が循環的に更新されることを読み取ってください。

上位

価値を決めます

倫理規程で、人の尊厳、公正な競争、顧客への誠実性、記録を偽らない姿勢、声を上げる文化を示します。

中核

体制を組みます

コンプラ規程で、責任者、委員会、リスク評価、内部通報、調査、是正、モニタリングを定めます。

現場

個別規程へ落とします

独禁法、個人情報、反贈収賄、ハラスメント、AI、営業秘密、輸出管理などの詳細手続を置きます。

改善

証跡から見直します

研修受講記録、通報傾向、監査指摘、法令改正、重大インシデントをもとに改定します。

Section 05

倫理規程の標準構成と条項例を押さえます

短く、経営トップの言葉として読め、行動規範へ展開できる設計にします。

倫理規程は、前文、適用範囲、基本価値、利益相反、声を上げる責任と報復禁止、経営陣の責任で構成すると整理しやすくなります。細かすぎると読まれにくく、抽象的すぎると行動に結びつきません。

次の一覧は、倫理規程に入れる代表的な価値を表しています。読者にとって重要なのは、単なる美しい言葉ではなく、研修・評価・通報・不祥事対応で繰り返し参照できる価値にすることです。それぞれの項目が、どの行動領域へ展開されるかを読み取ってください。

Core

誠実性・公正性・透明性

顧客、取引先、従業員、株主、地域社会からの信頼に応えるため、法令の形式的な遵守を超えた判断軸にします。

Human

人権尊重・多様性・心理的安全性

差別、ハラスメント、強制労働、児童労働、報復を許さない姿勢を明確にします。

Market

公正な競争・腐敗防止・利益相反

競合他社、行政、公務員等、取引先、親族関係など、判断を歪める可能性がある関係を管理します。

Trust

記録・開示・プライバシー

正確な記録、適切な開示、個人情報とプライバシーの尊重を、顧客信頼の土台として示します。

次の表は、倫理規程の条項例を読みやすい表現で整理しています。なぜ重要かというと、条項はそのまま掲げるだけでなく、自社の事業特性・既存規程・労務制度に合わせて調整する必要があるからです。各行から、条項の狙いと運用上の接続先を読み取ってください。

条項読みやすい表現例接続先
目的当社が社会から信頼される企業として価値を創造するため、役職員が実践する基本的な倫理原則を定めます。経営メッセージ、研修
誠実な行動役職員は、顧客、取引先、従業員、株主、地域社会からの信頼に応えるため、誠実かつ公正に行動します。行動規範、評価制度
人権の尊重役職員は、すべての人の尊厳と多様性を尊重し、差別やハラスメントを防ぐ行動をとります。人事制度、ハラスメント防止規程
公正な競争役職員は、公正かつ自由な競争を尊重し、競争を不当に制限する行為を避けます。独禁法遵守規程、研修
相談・通報と報復禁止違法・不正・不適切な行為またはその疑いを認識した場合、適切に相談・報告・通報します。会社は誠実に声を上げた人への報復を許しません。内部通報規程、調査規程
経営陣倫理規程で最も重要なのは、一般社員だけではなく経営陣です。取締役・執行役員・管理職が率先して語り、必要な資源を配分し、問題提起を歓迎する姿勢を示します。
Section 06

コンプラ規程の標準構成は運用と証跡から逆算します

美しい文章よりも、実際に動き、記録が残り、監査できることが重要です。

コンプラ規程は、目的、定義、適用範囲、組織体制、リスク評価、教育、内部通報・相談、調査・是正・再発防止、懲戒・人事評価との接続、モニタリング・内部監査・取締役会報告で構成します。特に、内部監査部門を運用責任者にせず、独立した評価者として位置づけることが重要です。

次の一覧は、コンプラ規程で役割を明確にするべき主な関係者を表しています。なぜ重要かというと、責任者と評価者が混同されると、運用状況を独立して確認しにくくなるからです。各項目から、誰が実行し、誰が監督し、誰が評価するかを読み取ってください。

01

取締役会・監査役等

重大リスク、重大違反疑義、是正措置、内部監査結果を受け、経営監督を行います。

監督
02

CCO・コンプライアンス委員会

リスク評価、年次計画、教育、通報対応、是正進捗、取締役会報告を束ねます。

統括
03

法務・人事・経理・IT・事業部門

個別リスクの主管部門として、具体的な規程、承認、記録、研修、相談対応を担います。

実行
04

内部監査部門

独立した立場から、コンプライアンス体制と重要リスクへの対応状況を評価します。

独立評価

次の表は、コンプラ規程に入れる標準項目を整理しています。読者にとって重要なのは、各項目が「誰が、いつ、何を、どこへ報告し、どの記録を残すか」につながる点です。項目ごとに、監査可能性を高める記載を読み取ってください。

項目記載する内容運用上の注意
目的・定義法令、定款、社内規程、契約、許認可、業界基準などを管理対象にします。通報対象や調査権限が曖昧にならないようにします。
適用範囲単体会社、連結子会社、海外拠点、派遣社員、代理店、サプライヤーへの適用範囲を整理します。現地法、少数株主、労使関係にも配慮します。
リスク評価売上規模、地域、許認可、顧客属性、代理店、データ量、過去の違反、通報、監査指摘を見ます。重大性と発生可能性に応じて対応を優先します。
教育・研修全社員、管理職、役員、営業、人事、IT、海外子会社、通報窓口、調査担当者に分けます。受講状況と理解度確認を記録します。
通報・調査窓口、匿名通報、利益相反排除、秘密保持、探索禁止、不利益取扱い禁止、是正、記録保存を定めます。通報件数だけでなく、相談しやすさや重大度も見ます。
報告・監査重要リスクKPI、通報統計、重大違反、是正進捗、法令改正、内部監査結果を報告します。件数だけでなく、傾向、原因、未完了リスク、経営判断事項を示します。

次の一覧は、コンプラ規程で弱くなりやすい要素を表しています。なぜ重要かというと、文書が存在しても、責任・期限・証跡・報告が曖昧なままでは上場審査、監査、M&Aデューデリジェンス、不祥事調査で弱点になりやすいからです。各要素から、補強すべき管理点を読み取ってください。

例外承認

贈答接待の上限超過、特定国の代理店起用、個人データの国外移転、業界会合参加などは、承認者、理由、低減策、保存期間を定めます。

重大案件報告

経営層が関与する疑義では、通常ラインだけでは足りない場合があります。監査役等への直接報告や独立調査の要否を定めます。

懲戒連携

違反認定後は、就業規則、懲戒規程、役員規程、委任契約、報酬規程などと整合させて処理します。

Section 07

倫理規程とコンプラ規程の使い分けを具体例で確認します

贈答接待、ハラスメント、個人情報、独禁法、不正会計、AIで書き方が変わります。

同じテーマでも、倫理規程とコンプラ規程では書き方が変わります。たとえば「贈収賄をしない」というテーマは、倫理規程では透明性と公正性の価値として示し、コンプラ規程では金額上限、事前承認、証憑保存、違反時報告として定めます。

次の比較表は、主要リスクごとの書き分けを表しています。読者にとって重要なのは、価値としての記載と手続としての記載を両方そろえることです。左から順に、領域、倫理規程で扱う価値、コンプラ規程・個別規程で扱う管理手続を読み比べてください。

領域倫理規程で示す価値コンプラ規程・個別規程で定める手続
贈答接待公正な判断を歪めるおそれのある利益授受を避けます。金額上限、事前承認、禁止先、公務員等の定義、記録保存、違反時報告を定めます。
ハラスメント人の尊厳、多様性、心理的安全性を尊重します。定義、相談窓口、調査手続、プライバシー保護、不利益取扱い禁止、再発防止、懲戒連携を定めます。
個人情報人格、プライバシー、透明性を尊重します。取得、利用目的、第三者提供、委託、国外移転、安全管理、漏えい対応、本人請求対応を定めます。
独占禁止法公正で自由な競争を尊重します。競合接触、業界団体参加、価格・数量・顧客配分の禁止、退席ルール、相談窓口、監査を定めます。
不正会計・記録改ざん正確な記録と透明な報告を重視します。職務分掌、承認、証憑、棚卸、決算手続、内部統制評価、内部監査、是正を定めます。
AI・データ利用人間中心、公平性、透明性、説明責任、プライバシー尊重を示します。利用禁止情報、入力禁止データ、出力検証、著作権、個人情報、セキュリティ、ログ、例外承認を定めます。

次の一覧は、使い分けで起きやすい失敗を表しています。なぜ重要かというと、規程の文言だけでなく、評価制度、報酬制度、通報制度、監査、海外展開まで一体で見ないと実効性が弱くなるからです。各項目から、改善策まで読み取ってください。

倫理規程がスローガンだけになります

価値だけで終わらせず、行動規範とケーススタディ研修へ展開します。

コンプラ規程が禁止事項だけになります

相談窓口、承認手続、判断の流れ、例外処理、記録様式まで整備します。

評価制度と矛盾します

顧客第一や通報者保護を掲げる場合、営業目標、人事評価、報酬制度も整合させます。

社外役員・監査役等へ届きません

重大案件の報告基準、直接報告、外部専門家起用基準、独立調査の要否判断を定めます。

海外子会社へ翻訳だけで配ります

現地法、文化、通報者保護、贈答慣行、データ保護を踏まえたローカル手続を作ります。

法務部だけの作業になります

法務、コンプラ、内部監査、人事、経理、IT、営業、海外、子会社を巻き込みます。

Section 08

会社規模別に倫理規程とコンプラ規程の使い分けを調整します

スタートアップ、中小企業、上場会社、規制業種、グローバル企業で必要な深さが変わります。

すべての会社が最初から大企業並みの規程体系を作る必要はありません。ただし、倫理規程とコンプラ規程の発想は早期に入れると、資金調達、採用、個人情報、知財、業務委託、ハラスメント、会計、取締役会運営で問題が拡大しにくくなります。

次の表は、会社規模・事業特性ごとの設計を整理しています。読者にとって重要なのは、文書の厚さを会社のリスクに比例させることです。会社規模ごとに、別冊化の要否と重点論点を読み取ってください。

会社類型設計方針重点論点
スタートアップ1枚の倫理・行動指針と簡易コンプライアンスポリシーから始めます。資金調達、採用、個人情報、知財、業務委託、反社、ハラスメント、会計
中小企業一体型でも、倫理とコンプライアンス体制の章を分けます。内部通報、調査・是正、教育・記録、懲戒連携
上場会社・上場準備会社倫理規程、行動規範、コンプラ規程、内部通報規程、個別規程を体系化します。上場審査、監査法人対応、主幹事証券対応、内部統制評価、取締役会運営
規制業種コンプラ規程と下位規程を業種別に深掘りします。金融、医薬、建設、IT、人材、教育などの個別規制
グローバル企業倫理規程は共通化し、コンプラ手続はローカル化します。現地法、労使関係、贈答慣行、データ移転、通報者保護

次の一覧は、会社規模別に早めに整えたい実務項目を表しています。なぜ重要かというと、文書体系が過大でも過小でも運用されにくくなるからです。各項目から、自社の段階で優先する規程・手続を読み取ってください。

A

初期段階

倫理・行動指針、簡易コンプライアンスポリシー、通報・相談窓口、個人情報保護、情報セキュリティ、反社チェックを優先します。

軽量設計
B

成長段階

管理職研修、承認権限、ハラスメント対応、稟議・契約承認、記録保存、子会社管理を整えます。

運用強化
C

上場・規制段階

内部通報規程、反社規程、インサイダー取引防止規程、内部監査規程、取締役会報告、重要KPIを整備します。

証跡重視
Section 09

倫理規程とコンプラ規程の導入・改定は7段階で進めます

棚卸し、リスク評価、文書体系、条文、承認・周知、証跡化、改定をつなげます。

規程の導入・改定は、まず社内にある規程、マニュアル、方針、研修資料、通報の手順、懲戒規程、取締役会決議、委員会規程を棚卸しするところから始めます。そのうえで、自社の重要リスクを評価し、倫理規程とコンプラ規程を別冊にするか、一体型にするかを決めます。

次の判断の流れは、導入・改定プロジェクトの進め方を表しています。読者にとって重要なのは、条文作成だけに飛びつかず、現状文書、リスク、承認機関、周知、証跡、改定まで一連の作業として扱うことです。順番から、どの段階で何を確認するかを読み取ってください。

導入・改定プロジェクトの進め方

第1段階 現状文書の棚卸し

倫理規程、コンプラ規程、行動規範、就業規則、内部通報規程、個別法令規程、改定日、主管部門、運用証跡を確認します。

第2段階 リスク評価

業種、規模、国、取引先、顧客、データ、許認可、過去の事故、監査指摘、通報内容、法令改正を見ます。

第3段階 文書体系の決定

別冊型か一体型かを決め、一体型でも倫理とコンプライアンス体制の章を分けます。

第4段階 条文設計

倫理規程は読みやすさ、コンプラ規程は責任・期限・記録・監査可能性を重視します。

第5段階 承認・周知

取締役会、経営会議、社内ポータル、研修、トップメッセージ、管理職説明、Q&A、現地語対応を組み合わせます。

第6段階 運用・証跡化

研修、承認、相談、通報、調査、是正、監査、取締役会報告の記録を保存します。

第7段階 改定

法令改正、監査指摘、重大インシデント、M&A、海外進出、新技術導入、社会的批判を契機に見直します。

次の時系列は、規程を作った後の見直し契機を表しています。なぜ重要かというと、コンプラ規程は運用されて初めて意味を持ち、倫理規程も社会的期待や不祥事経験によって点検が必要になるからです。上から順に、年次・随時・緊急時の見直しを読み取ってください。

年次

少なくとも年1回の見直し

研修、通報、監査、法令改正、未完了是正、取締役会報告をもとに、規程体系を点検します。

随時

組織変更・M&A・海外進出

子会社、海外拠点、新規事業、買収先の文化や現地法に合わせて適用範囲と手続を調整します。

緊急

重大インシデント・社会的批判

報告ライン、調査手続、再発防止策、評価制度、営業目標まで含めて、実効性を検証します。

Section 10

内部監査・経営者・法務人事から見た倫理規程とコンプラ規程

文書の美しさより、実効性と報告の質が問われます。

内部監査や監査役等の視点では、倫理規程とコンプラ規程の使い分けは、文書の完成度よりも実効性の問題です。経営トップが倫理規程を語っているか、短期利益を過度に優先していないか、通報者が不利益を受けていないか、違反者が高業績者でも適切に処理されているかを確認します。

次の表は、内部監査・監査役等が見やすいチェック領域を表しています。読者にとって重要なのは、統制環境、リスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリングを分けて確認することです。各行から、文書と運用のどちらを点検するかを読み取ってください。

領域確認ポイント読み取るべきリスク
統制環境経営トップの発信、管理職の姿勢、通報者保護、高業績者への処分姿勢を確認します。倫理規程が現実の文化と乖離していないかを見ます。
リスク評価重要リスク、法令改正、新規事業、子会社・海外拠点の反映状況を確認します。コンプラ規程の対象リスクが古くなっていないかを見ます。
統制活動承認ルール、例外承認、職務分掌、高リスク取引の追加統制を確認します。手続はあるが記録が残らない状態を見つけます。
情報と伝達規程周知、対象者別研修、海外・現場・非正規社員への伝達、窓口認知を確認します。文書が一部の管理部門だけに閉じていないかを見ます。
モニタリング内部監査、期限内是正、取締役会・監査役等への情報、KPIの妥当性を確認します。件数だけで安心していないかを見ます。

次の強調表示は、経営者が押さえるべき5つの要点を表しています。なぜ重要かというと、倫理規程とコンプラ規程は法務部門だけの文書整理ではなく、経営判断そのものだからです。ここから、経営者が語る価値と、取締役会が監督する仕組みの両方が必要だと読み取ってください。

経営者は価値を語り、体制に資源を配分し、取締役会は重大リスクを監督します

倫理規程を語らない経営者の下ではコンプラ規程が形式化し、コンプラ規程を整備しない経営者の下では倫理規程がスローガン化します。年1回以上、重大リスク、通報傾向、未完了是正、海外子会社、監査指摘、法令改正、文化上の懸念を確認します。

次の一覧は、法務・コンプライアンス・人事が押さえる役割を表しています。読者にとって重要なのは、規程作成だけで終わらせず、現場が迷ったときに使える状態へ落とし込むことです。各項目から、部門間で連携すべき点を読み取ってください。

Legal

法務・コンプライアンス

倫理規程は短く記憶に残る表現にし、コンプラ規程は責任、期限、証跡を明確にします。取締役会報告では件数だけでなくリスクを伝えます。

HR

労務・人事

評価制度、管理職研修、ハラスメント相談、内部通報者保護、懲戒規程との整合性を確認します。

Audit

内部監査

運用責任者ではなく、独立した評価者として、リスク評価、統制活動、情報伝達、是正状況を確認します。

Section 11

M&A・グループ会社管理・不祥事対応での使い分け

文書の有無だけでなく、運用実態と文化統合まで確認します。

M&Aでは、買収対象会社に倫理規程・行動規範・コンプラ規程・内部通報制度があるかだけではなく、通報・調査の実績、重大違反、行政処分、訴訟、贈収賄、独禁法、個人情報、労務、環境、輸出管理、子会社展開、経営陣の理解を確認します。

次の表は、M&A・グループ管理・不祥事対応で、倫理規程とコンプラ規程が果たす役割を整理しています。読者にとって重要なのは、価値の統合と手続の統合を分けて進めることです。場面ごとに、どちらの文書が何を支えるかを読み取ってください。

場面倫理規程の役割コンプラ規程の役割
M&Aデューデリジェンス対象会社の文化、経営姿勢、通報への姿勢、顧客・従業員への価値観を見ます。通報・調査実績、行政処分、重大違反、個別リスク、子会社展開、証跡を確認します。
PMI本社の価値を押し付けるだけでなく、対象会社の文化・現地法・従業員心理を踏まえて統合します。共通手続とローカル手続を分け、責任者、報告ライン、研修、監査を段階的に整えます。
グループ会社管理グローバル共通の価値基準として、人権、公正性、透明性、声を上げる文化を示します。現地法、少数株主、労使関係、データ移転、贈答慣行に応じた管理手続を作ります。
不祥事対応会社が何を反省し、どの価値に立ち返るかを、社内外へ説明する土台になります。初動、証拠保全、調査、当局対応、開示、是正、処分、再発防止を動かす根拠になります。

次の一覧は、不祥事後に見直すべき要素を表しています。なぜ重要かというと、倫理規程に立派な価値が書かれていても、報告ラインが機能しなければ問題が経営陣や監査役等へ届かないからです。各項目から、再発防止策をどこへ反映するかを読み取ってください。

価値と現実の乖離

倫理規程の価値が営業目標、人事評価、管理職行動と矛盾していなかったかを確認します。

報告ライン

コンプラ規程上の報告ラインが機能し、監査役等や取締役会へ十分な情報が届いたかを確認します。

通報制度の信頼

通報者が保護され、探索、報復、不利益取扱いが防がれていたかを確認します。

調査手続の公正性

証拠保全、利益相反排除、対象者への配慮、外部専門家の関与、記録化が適切だったかを確認します。

制度への反映

再発防止策が規程、システム、研修、評価制度、取締役会報告に反映されたかを確認します。

Section 12

倫理規程とコンプラ規程のFAQ

よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 倫理規程とコンプラ規程は必ず別々に作る必要がありますか。

一般的には、必ず別冊にする必要はないとされています。小規模企業では一体型でも運用できる場合があります。ただし、文書内で「価値を示す部分」と「体制・手続を定める部分」は分ける必要があります。上場会社、上場準備会社、グループ会社が多い会社、規制業種、海外展開企業では、別冊にする方が運用しやすい可能性があります。具体的な文書設計は、会社規模、業種、既存規程、労務制度、海外展開の有無を踏まえて専門家へ相談する必要があります。

Q2. 倫理規程、行動規範、コンプラ規程のどれを先に作るとよいですか。

一般的には、倫理規程または行動規範で価値と基本行動を示し、その後にコンプラ規程で体制を整える流れが分かりやすいとされています。ただし、内部通報、ハラスメント、個人情報など緊急性の高いリスクがある場合は、コンプラ規程や個別規程を先に整備することもあります。優先順位は、リスクの重大性、発生可能性、法令改正、監査指摘、通報状況によって変わります。

Q3. 倫理規程違反だけで懲戒できますか。

一般的には、倫理規程が抽象的な価値を示すだけの場合、それ単独で重い懲戒の根拠にする設計は慎重に検討する必要があります。懲戒は、就業規則、懲戒規程、個別禁止規程、周知、事実認定、処分相当性、手続の公正性との整合が問題になります。具体的な懲戒判断は、個別事情や証拠関係で結論が変わる可能性があるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. コンプラ規程に「法令を遵守する」と書けば足りますか。

一般的には、宣言だけでは十分ではないとされています。コンプラ規程には、誰が、どのリスクを、どの手続で、どのように監視し、違反疑義がある場合にどう対応し、誰へ報告するかを書く必要があります。運用可能な内部統制文書にするには、責任、期限、記録、報告ライン、教育、監査を含めることが重要です。

Q5. 倫理規程は外部公開に向いていますか。

一般的には、倫理規程や行動規範の概要は、顧客、投資家、採用候補者、取引先への説明責任の観点から公開に向くことがあります。ただし、コンプラ規程の詳細手続、通報調査手順、内部監査基準などは、社内文書として管理する方が適する場合があります。公開範囲は、事業特性、リスク、競争上の影響、セキュリティを踏まえて検討する必要があります。

Q6. コンプラ規程の主管は法務部ですか、コンプライアンス部ですか。

一般的には、会社の組織設計によって変わります。法務部が主管する場合も、コンプライアンス部が主管する場合もあります。ただし、内部監査部門は原則として運用主管ではなく、独立評価者として位置づけることが重要です。人事、経理、IT、営業管理、海外部門との連携も必要になります。

Q7. 取締役会承認は必要ですか。

一般的には、会社規模、機関設計、内部統制システム基本方針との関係によって変わります。上場会社、大会社、上場準備会社、重大リスクを抱える会社では、倫理規程やコンプラ規程を取締役会承認または少なくとも取締役会報告事項にすることが望ましい場面があります。具体的には、会社法上の機関設計、既存の職務権限規程、内部統制方針との整合を確認する必要があります。

Q8. 海外子会社にも日本本社の倫理規程を適用できますか。

一般的には、グローバル共通の倫理規程を適用することは可能とされています。ただし、現地法に反してはなりません。特に労務、内部通報、個人情報、データ移転、懲戒、贈答接待、当局対応は現地法確認が必要です。倫理規程は共通化し、コンプラ手続は現地化する設計が基本になります。

Section 13

倫理規程とコンプラ規程の実務チェックリスト

最後に、作成・改定時に確認する項目を一覧化します。

倫理規程とコンプラ規程のチェックでは、価値が明確か、手続が動くか、証跡が残るか、取締役会・監査役等へ届くかを確認します。規程の完成度だけでなく、研修、通報、調査、是正、監査、評価制度との接続を見ます。

次の表は、倫理規程を点検するときの主要項目を表しています。読者にとって重要なのは、価値が社内外に伝わり、行動規範や研修、評価制度へ展開されているかを見ることです。各項目から、不足している文書・運用を読み取ってください。

倫理規程チェック確認内容
理念との整合会社の理念・パーパス、経営トップのメッセージと一致しています。
役員・管理職の責任率先垂範、資源配分、問題提起を歓迎する姿勢が明記されています。
基本価値誠実性、公正性、人権、透明性、顧客本位、プライバシー、声を上げる文化が含まれています。
リスク領域贈収賄、独禁法、個人情報、ハラスメント、利益相反、記録、通報に触れています。
展開可能性社員が理解でき、外部公開に耐え、行動規範や研修へ展開されています。
制度整合通報者保護、報復禁止、評価制度、報酬制度と矛盾していません。

次の表は、コンプラ規程を点検するときの主要項目を表しています。なぜ重要かというと、コンプラ規程は運用証跡がなければ、上場審査、監査、M&A、不祥事対応で説明しにくくなるからです。各項目から、責任・手続・記録・報告の不足を読み取ってください。

コンプラ規程チェック確認内容
定義・適用範囲コンプライアンス、重大違反、通報、調査、是正、グループ会社、海外拠点の扱いが明確です。
体制取締役会、経営陣、CCO、委員会、主管部門、子会社責任者の役割が明確です。
リスク評価・年次計画重要リスク評価、法令改正対応、研修計画、記録管理が定められています。
通報・調査・是正内部通報制度、調査手続、利益相反排除、秘密保持、是正、再発防止が連動しています。
懲戒・労務整合就業規則、懲戒規程、人事評価、役員規程と矛盾していません。
監査・報告内部監査、モニタリング、重大案件の取締役会・監査役等報告基準、記録保存期間が定められています。

次の強調表示は、最終的な結論を表しています。読者にとって重要なのは、倫理規程とコンプラ規程のどちらか一方だけでは足りないという点です。価値、日常行動、体制、証跡、監督がつながっているかを読み取ってください。

価値を示し、行動へ翻訳し、体制・責任・記録へ落とし込み、監査と取締役会報告で検証します

倫理規程だけでは違反を防ぐ仕組みが不足し、コンプラ規程だけでは社員が納得して正しい判断をする文化が育ちにくくなります。両者を分けて連動させることが、企業法務における使い分けの本質です。

Reference

参考資料

制度・ガバナンス・内部統制の確認に用いた公的資料・標準資料です。

法令・公的資料

  • 日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンス・コード」
  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「会社法施行規則」
  • e-Gov法令検索「労働契約法」
  • 金融庁・企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
  • 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」
  • 政府広報オンライン「公益通報者保護法が改正。内部通報制度で不正をストップ」
  • 公正取引委員会「企業における独占禁止法コンプライアンス」
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
  • 経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」

国際基準・企業倫理資料

  • ISO「ISO 37301 Compliance management systems」
  • ISO「ISO 37001 Anti-bribery management systems」
  • U.S. Department of Justice, Criminal Division「Evaluation of Corporate Compliance Programs」
  • OECD「OECD Guidelines for Multinational Enterprises on Responsible Business Conduct」
  • OECD「OECD Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct」
  • 日本経済団体連合会「企業行動憲章」