会社法上の業務執行権と代表権、善管注意義務・忠実義務、競業避止・利益相反、損害賠償責任、登記・定款設計まで、企業法務の観点から整理します。
会社法上の業務執行権と代表権、善管注意義務・忠実義務、競業避止・利益相反、損害賠償責任、登記・定款設計まで、企業法務の観点から整理します。
業務執行権、代表権、有限責任、登記、定款設計を分けて見ると、合同会社の統治構造が整理しやすくなります。
合同会社の業務執行社員とは、会社法上の社員、つまり出資者・構成員のうち、会社の業務を執行する権限を持つ者をいいます。日常用語の従業員とは異なり、定款に別段の定めがなければ、原則として社員が業務を執行します。
社員が複数いる場合、業務の決定は原則として社員の過半数で行います。一方、日常的・通常的な業務は各社員が単独で行える余地があります。ただし、完了前に他の社員が異議を述べた場合や、定款・社内規程で承認を要するとされた事項では、単独判断に依存しない整理が必要です。
業務執行社員は強い権限を持つ一方で、善良な管理者の注意義務、忠実義務、報告義務、競業避止義務、利益相反取引の承認取得などの責任を負います。有限責任社員であっても、職務上の任務懈怠や悪意・重大な過失による第三者損害まで当然に免れるわけではありません。
次の重要ポイントは、合同会社の業務執行社員の責任と権限を読むうえで最初に押さえるべき関係を示しています。読者にとって重要なのは、内部の業務執行権、外部の代表権、職務上の責任を混同しないことであり、各項目から制度設計上の論点を読み取れます。
合同会社の社員は原則として出資額を超える会社債務を負いませんが、業務執行社員として任務を怠った場合の会社への損害賠償責任、悪意又は重大な過失による第三者責任、個人保証や不法行為責任は別に問題となります。
次の一覧は、合同会社の業務執行社員の責任と権限を3つの視点に分けたものです。権限だけを見ると運営しやすく見えますが、責任・登記・承認手続と合わせて読むことで、設計漏れになりやすい箇所を把握できます。
会社の目的達成のための経営行為を決定・実行する権限です。定款に別段の定めがなければ全社員が関与し、複数社員の場合は原則として過半数で決定します。
原則として業務執行社員が会社を代表します。代表社員を定めると対外窓口を集約できますが、内部の承認ルールと登記の整合が重要です。
善管注意義務、忠実義務、報告義務、競業避止、利益相反規制に違反すると、会社や第三者への責任が問題となります。
同じ「社員」という語でも、会社法上の社員、従業員、代表社員、職務執行者は役割が異なります。
合同会社における「社員」は、雇用契約に基づいて働く従業員ではなく、会社法上の構成員である出資者を意味します。この区別を誤ると、誰が契約締結や重要事項決定に関与できるのかを誤解しやすくなります。
業務執行社員とは、合同会社の業務を執行する社員です。定款に別段の定めがなければ、A、B、Cの3名が社員である場合、3名全員が業務執行権を持ちます。他方、定款でAだけを業務執行社員と定めれば、BとCは出資者ではあっても、原則として業務執行権を持ちません。
代表社員とは、合同会社を代表する社員です。原則として業務執行社員が会社を代表しますが、定款又は定款に基づく互選によって、業務執行社員の中から代表社員を定めることができます。
次の比較表は、合同会社で混同されやすい地位を整理したものです。読者にとって重要なのは、出資者としての地位、経営を動かす地位、会社を外部に代表する地位、法人社員の実務担当者を切り分けることであり、各行から権限と登記の違いを読み取れます。
| 地位 | 意味 | 主な権限・役割 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|
| 社員 | 会社法上の出資者・構成員 | 定款に別段の定めがなければ業務を執行 | 従業員とは異なる |
| 業務執行社員 | 合同会社の業務を執行する社員 | 経営判断、契約方針、資金管理、重要事項の実行 | 義務違反があると責任追及の対象となる |
| 代表社員 | 会社を代表する社員 | 対外的な契約締結、金融機関・行政機関対応 | 代表権制限は善意の第三者に対抗できない場合がある |
| 職務執行者 | 法人が業務執行社員・代表社員である場合に職務を行う自然人 | 法人社員に代わり意思決定・書類押印・交渉を担う | 選任、通知、登記、交代管理が必要となる |
次の一覧は、代表社員の定め方によって内部権限と外部権限がどう変わるかをまとめています。代表社員を置くかどうかは、契約権限・印章管理・金融機関対応に直結するため、どの類型に当たるかを確認することが重要です。
| 類型 | 内部の業務執行権 | 外部の代表権 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 全社員が業務執行社員で代表社員なし | 全社員 | 全業務執行社員 | 小規模な共同経営会社 |
| 特定社員だけを業務執行社員にする | 業務執行社員のみ | 原則として業務執行社員 | 出資者と経営者を分ける会社 |
| 業務執行社員から代表社員を定める | 業務執行社員 | 代表社員のみ | 対外窓口を一本化する会社 |
| 法人が代表社員になる | 法人である社員 | 法人代表社員。実務上は職務執行者が行為 | グループ会社、SPC、合弁会社 |
合同会社は持分会社であり、株式会社より定款自治が広く、出資者と経営者の関係を柔軟に設計できます。
合名会社、合資会社、合同会社は会社法上「持分会社」と総称されます。合同会社はそのうち社員全員が有限責任社員である会社です。定款には、目的、商号、本店所在地、社員の氏名又は名称及び住所、社員が有限責任社員であること、出資の目的及び価額又は評価の標準などを記載します。
合同会社は、社員間の信頼関係、出資関係、業務分担、代表権、承認要件を定款で柔軟に設計できます。家族会社、スタートアップ、投資用SPC、不動産保有会社、合弁会社、士業・コンサルティング系会社では、出資者の一部だけが業務を担う設計も少なくありません。
「合同会社版の取締役」という説明は入門的には分かりやすいものの、厳密には同じではありません。合同会社の業務執行社員は社員であることが前提であり、株式会社の取締役のように株主でなくても就任できる地位とは異なります。
次の比較表は、業務執行社員と株式会社の取締役の制度上の差を示します。読者にとって重要なのは、任期・登記・代表権・出資者性が異なる点であり、同じ「経営者」と見えても規律の出発点が違うことを読み取れます。
| 比較項目 | 合同会社の業務執行社員 | 株式会社の取締役 |
|---|---|---|
| 地位の基礎 | 社員、つまり出資者であることが前提 | 株主である必要はない |
| 権限の根拠 | 会社法及び定款 | 会社法、定款、株主総会・取締役会決議 |
| 代表権 | 原則として業務執行社員が代表。代表社員を定められる | 代表取締役等が代表 |
| 任期 | 会社法上の取締役任期のような制度はない | 原則として任期あり |
| 登記 | 業務執行社員の氏名又は名称、代表社員の氏名又は名称及び住所等 | 取締役、代表取締役等を登記 |
| 規律の特徴 | 定款自治が広く、社員間の人的関係が重視される | 機関法的規律が詳細で、株主保護・債権者保護が制度化される |
次の一覧は、合同会社の制度設計で特に誤解が生じやすい要素をまとめたものです。会社の規模や出資者構成が変わるほど、この一覧の各項目を定款・社員間契約・登記で整合させる必要が高まります。
業務執行社員、代表社員、承認要件、持分譲渡、競業例外などを柔軟に定められる反面、曖昧な定款は紛争の原因になります。
業務執行社員は社員であるため、経営判断、利益配当、持分価値、責任追及が同じ人間関係の中で交錯しやすくなります。
代表社員や職務執行者の登記が現実の権限とずれると、取引先・金融機関・許認可庁との関係で混乱が生じます。
重要事項の決定、日常業務の実行、代表社員の設定、非業務執行社員の調査権を一体で整理します。
業務とは、営業方針の決定、契約の締結方針、採用、資金繰り、仕入、販売、外注、資産管理、会計資料の確認、許認可対応、訴訟方針、知的財産管理、情報セキュリティ対応など、会社目的の達成に必要な経営行為全般を指します。
実務では、業務の「決定」と「実行」を分けて考えることが重要です。1億円の借入、主要事業の売却、新規事業参入、代表社員の変更などは重要な意思決定です。他方、通常の請求書発行、既存契約に基づく履行、軽微な支払、日常的な顧客対応などは常務として単独で行える余地があります。
次の判断の流れは、ある行為を誰が決定し、誰が外部に表示できるかを確認する順番を示しています。読者にとって重要なのは、日常業務か重要事項か、代表社員の定めがあるか、承認証跡が残っているかを順に見ることで、権限逸脱のリスクを早めに発見できる点です。
契約、借入、支払、採用、資産処分、訴訟対応など、行為の種類と金額を確認します。
会社規模、過去の運用、定款、社内規程、金額基準で判断します。
社員又は業務執行社員の過半数、全員一致、特別多数、拒否権の有無を確認します。
異議、金額上限、取引類型、印章・電子契約権限を確認します。
対外的に誰が会社を代表できるかを、定款、互選書、決定書、登記事項証明書で整合させます。
定款で業務執行社員を定めた場合、業務執行社員が2人以上いるときは、定款に別段の定めがない限り、業務は業務執行社員の過半数で決定されます。それでも常務は各業務執行社員が単独で行える余地がありますが、支配人の選任・解任など重要な代理権者の扱いは社員全体の関与が問題となります。
業務執行社員でない社員は業務執行権を持ちません。しかし、会社の業務及び財産の状況を調査する権利を持ちます。定款で一定の制限を置くことはできますが、事業年度終了時又は重要な事由があるときの調査を制限する定めはできません。
次の比較表は、代表社員を置く方法ごとの効果を示します。代表社員の指定方法は、登記のしやすさ、変更時の柔軟性、法人社員の管理に影響するため、メリットだけでなく変更時の手続も読み取る必要があります。
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 定款で代表社員を直接指定 | 明確で登記しやすい | 変更時に定款変更が必要となる場合がある |
| 定款で互選方法を定めて選ぶ | 人事変更に柔軟 | 互選書、決定書、議事録の整備が必要 |
| 法人を代表社員にし職務執行者を選任 | グループ会社・SPCで使いやすい | 選任、通知、登記、交代管理が必要 |
権限の裏側には、善管注意義務、忠実義務、報告義務、受任者類似の義務があります。
業務執行社員は、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を負います。単なる主観的な誠実さでは足りず、地位、職務、会社規模、事業内容、専門性に照らして通常期待される注意を尽くす必要があります。
善管注意義務違反が問題となり得る例として、資金繰りを把握しない高額支出、契約書確認を怠った違約金リスク、許認可が必要な事業の無許可開始、個人情報管理措置の放置、税務申告・社会保険・登記・行政届出の長期放置、会社財産と個人財産の混同が挙げられます。
次の一覧は、業務執行社員が負う主要義務と実務上の管理ポイントを並べたものです。読者にとって重要なのは、抽象的な義務名だけでなく、どの資料・承認・報告で義務履行を示すかを読み取ることです。
資金繰り、契約、許認可、情報管理、税務・労務・登記期限を確認し、会社規模に応じた管理水準を維持します。
管理水準会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図らない義務です。会社の取引機会、顧客情報、資金、関連会社取引で問題化しやすくなります。
利益帰属会社又は他の社員から請求があるときは職務執行状況を報告し、職務終了後は経過と結果を遅滞なく報告します。
情報共有会社のために受け取った金銭、書類、権利、預り金、顧客データ、知的財産資料などの引渡し・報告・精算が問題となります。
証跡管理報告義務は、非業務執行社員の調査権と並び、合同会社内部の監督機能を支えます。月次又は四半期の業務報告書、資金繰り表、試算表、契約一覧、訴訟・クレーム一覧、利益相反・競業可能性のある取引の事前申告、社員会議又は業務執行社員会議の議事録を整えることが有効です。
次の一覧は、義務違反につながりやすい運用上の弱点を整理しています。各項目は、事故が起きた後に「なぜ防げなかったか」と問われやすい領域であり、早い段階で規程・承認・記録の有無を確認することが重要です。
役員報酬、立替経費、貸付金、保証料などの承認と証跡がないと、忠実義務・利益相反・税務上の問題が生じます。
許認可、税務、労務、個人情報、知的財産などで専門家確認を行わず進めると、善管注意義務違反が争点になります。
口頭だけの合意や資料未共有は、後の責任追及や調査請求の場面で立証を難しくします。
副業、関係会社取引、個人貸付、保証、別会社への発注は、承認手続と情報開示が中心論点になります。
業務執行社員は、当該社員以外の社員全員の承認を受けなければ、自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をしてはならないとされています。また、同種事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務執行社員となることも制限されます。ただし、定款に別段の定めがある場合はその定めが問題になります。
競業に当たるかは、形式的な事業目的だけでなく、実質的な競争関係で判断されます。定款上の目的、実際の事業、顧客層、地域、販売チャネル、商品・サービスの代替性、準備中の事業かどうか、内部情報の利用、会社の機会喪失が重要です。
次の比較表は、競業と利益相反で確認すべき視点を分けたものです。読者にとって重要なのは、相手方や取引形式が異なっても、会社利益と個人・第三者利益が衝突する構造を見逃さないことです。
| 論点 | 典型例 | 承認・管理の視点 |
|---|---|---|
| 競業避止 | 同種事業の別会社運営、競合取引への関与、会社の商談機会の個人利用 | 事業範囲、期間、地域、顧客範囲、情報利用、利益配分を明確にする |
| 直接取引型の利益相反 | 業務執行社員が会社から借入、自己所有不動産を会社へ賃貸、会社財産の購入 | 価格、利率、期間、市場比較、代替手段、利害関係人の扱いを開示する |
| 第三者利益型の利益相反 | 業務執行社員の別会社へ業務委託、親族会社から高額購入、個人債務の保証 | 相手方関係、必要性、条件合理性、担保措置、事後報告を記録する |
| 民法上の利益相反 | 自己契約、双方代理、利益相反行為 | 会社法上の承認手続を適切に行い、取引安定性を確保する |
利益相反取引の承認では、取引当事者、利益相反の内容、取引目的、価格・利率・手数料・保証範囲・期間、市場価格又は第三者比較、会社にとっての必要性、代替手段、リスクと担保措置、承認権者、議決要件、利害関係人の扱い、事後報告方法を具体的に示す必要があります。
次の判断の流れは、競業又は利益相反の疑いがある取引を進める前に確認する順番を示しています。分岐の意味は、競争関係・個人利益・第三者利益のいずれかがある場合に承認と証跡を厚くする点にあります。
業務執行社員本人、親族、別会社、親会社・子会社、投資家、業務委託先が関係するかを確認します。
顧客層、地域、商品・サービス、内部情報、準備中の事業との関係を確認します。
条件の合理性、代替手段、リスク、利害関係人の扱いを具体化します。
後日の疑義を避けるため、事前申告、簡易な承認、議事録化を検討します。
定款に別段の定めがあるか、当該社員以外の社員の承認が必要かを確認します。
会社への責任、第三者への責任、会社自身の責任、辞任・解任・退社の手続をまとめます。
業務執行社員は、その任務を怠ったときは、持分会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。善管注意義務、忠実義務、報告義務、競業避止義務、利益相反取引規制、法令・定款違反などが責任原因となります。
第三者責任も重要です。業務を執行する有限責任社員が職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該有限責任社員が連帯して第三者に生じた損害を賠償する責任を負い得ます。会社債務についての有限責任と、職務上の不法・不当な行為に基づく責任は別に考える必要があります。
次の比較表は、有限責任で当然に免れるものと、別途責任が問題となるものを整理しています。読者にとって重要なのは、「会社の借金」と「業務執行社員自身の職務上の責任」を分けて読むことです。
| 責任の種類 | 有限責任で当然に免れるか | 説明 |
|---|---|---|
| 出資履行後の会社債務 | 原則として免れる | 合同会社では設立登記までに出資全額を履行する必要があります |
| 任務懈怠による会社への損害賠償 | 免れない | 業務執行社員としての会社法上の責任が問題となります |
| 悪意・重大過失による第三者損害 | 免れない | 第三者に対する会社法上の責任が問題となります |
| 個人保証 | 免れない | 保証契約に基づく個人責任です |
| 不法行為責任 | 免れない | 民法上の責任が問題となり得ます |
| 税務・労務・許認可上の個別責任 | 免れない場合がある | 個別法令により責任が生じることがあります |
辞任・解任・退社では、業務執行社員の地位が社員の地位と結びつく点が重要です。次の時系列は、地位変更が生じた場合に確認すべき順番を表します。前から順に見ることで、定款変更、社員決定、代表権、登記のずれを防ぎやすくなります。
定款で業務執行社員を定めた場合、辞任・解任には正当事由や他の社員の一致が問題となります。
退社や持分譲渡がある場合、業務執行社員・代表社員の変更だけでなく、持分、利益配当、競業、秘密保持にも影響します。
金融機関、取引先、許認可庁に誰が代表者として説明するかを、決定書、互選書、登記と整合させます。
業務執行社員、代表社員、法人代表社員の職務執行者に変更がある場合、原則として2週間以内の変更登記が問題となります。
登記事項と定款条項を連動させることが、取引安全と内部統制の土台になります。
合同会社の設立登記では、目的、商号、本店及び支店の所在場所、資本金の額、業務執行社員の氏名又は名称、代表社員の氏名又は名称及び住所、代表社員が法人であるときの職務執行者の氏名及び住所などを登記します。
登記が遅れると、旧代表社員が外部から代表者に見える、新代表社員の権限証明ができない、契約締結・融資・補助金申請・許認可変更・口座変更に支障が出る、過料リスクが生じる、社員間紛争で代表権が争われる、といった問題が起こります。
次の比較表は、登記される地位と住所登記の有無を整理しています。読者にとって重要なのは、業務執行社員、代表社員、法人代表社員の職務執行者で登記情報の粒度が違う点です。
| 地位 | 登記事項 | 住所登記の有無 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 業務執行社員 | 氏名又は名称 | 原則として住所は登記されない | 法人もなれます |
| 代表社員 | 氏名又は名称及び住所 | あり | 法人代表社員の場合は名称・住所の整理に注意します |
| 法人代表社員の職務執行者 | 氏名及び住所 | あり | 職務執行者は自然人です |
| 業務執行社員でない社員 | 通常、合同会社の登記事項ではない | なし | 定款には社員情報が必要です |
定款は、合同会社の業務執行社員の責任と権限を制御する中心文書です。次の比較表は、少なくとも検討すべき条項を並べています。各項目は、肩書だけでは解決できない権限境界を明文化するために重要です。
| 項目 | 検討事項 |
|---|---|
| 業務執行社員の範囲 | 全社員か、特定社員か、選任方法か |
| 代表社員 | 代表社員を定めるか、互選にするか、単独代表か複数代表か |
| 業務決定方法 | 過半数、全員一致、特別多数、拒否権、金額基準 |
| 常務の範囲 | 日常業務の金額上限、契約類型、支払権限 |
| 重要事項 | 借入、保証、資産売却、M&A、採用、訴訟、知財処分、関連当事者取引 |
| 競業・利益相反 | 承認機関、利害関係人の除外、価格妥当性資料、情報遮断 |
| 報告義務・調査権 | 月次報告、資料範囲、会計データアクセス、秘密保持、専門家同席 |
| 辞任・解任・持分譲渡 | 正当事由、通知、暫定代表、登記、譲渡承認、相続、競業者への譲渡禁止 |
| デッドロック・紛争解決 | 調停、専門家決定、買取、解散、仲裁、管轄 |
多くの合同会社定款では「社員Aを業務執行社員とする」「代表社員はAとする」という程度で終わりがちです。しかし、実際の紛争は、Aが1,000万円の借入を単独でできるのか、Bが会計帳簿を閲覧できるのか、Cの別会社への発注に承認が必要か、代表社員Aが病気になった場合に誰が契約するのか、といった権限の境界で生じます。
法人が代表社員になる場合、会計・税務・労務、内部統制、紛争時の代表者選定まで横断的に確認します。
法人が業務執行社員又は代表社員になる場合、その法人自身は自然人ではないため、現実に意思決定・書類押印・説明・交渉・管理を行う自然人を選任する必要があります。これが職務執行者です。職務執行者には、業務執行社員に関する義務や責任追及の規律が準用されます。
親会社が合同会社の代表社員となり、親会社の役員又は従業員が職務執行者となる場合、親会社の利益と合同会社の利益が常に一致するとは限りません。親会社への業務委託費、ブランド使用料、資金貸付、保証、知的財産ライセンス、グループ内再編では、利益相反と条件合理性の検証が必要です。
次の一覧は、法人社員と職務執行者を置く場合の管理ポイントを整理したものです。読者にとって重要なのは、親会社側の稟議と合同会社としての意思決定を別々に残し、職務執行者の交代や登記にも対応できるようにすることです。
法人が業務執行社員である場合、職務を行う者を選任し、その氏名及び住所を他の社員に通知します。
法人が代表社員である場合、職務執行者の氏名及び住所が登記事項となります。
職務執行者にも善管注意義務、忠実義務、競業、利益相反、責任追及の規律が準用されます。
会計・税務・労務では、業務執行社員への支払が報酬、利益配当、業務委託費、給与、立替経費、貸付金、未払金のどれに当たるかを整理する必要があります。支払時期・金額が定款・社員決定・契約書で明確か、期中の増減に税務上の問題がないか、消費税インボイス・源泉徴収・社会保険の扱いも確認します。
次の一覧は、会計・税務・労務・内部統制で管理すべき項目を示しています。各項目は、会社財産を扱う業務執行社員の責任と直結し、後日の証拠にもなるため、記録と承認の両方を読み取ることが大切です。
報酬、利益配当、業務委託費、給与、立替経費、貸付金を混同しないよう、契約書・決定書・会計処理を一致させます。
銀行口座の権限者と承認者を分け、一定金額以上の支払は複数承認にするなどの管理が有効です。
税務申告、社会保険、許認可、登記の期限を一覧化し、放置による過料・加算税・取引停止リスクを抑えます。
紛争が起きた場合は、報告請求、資料提出請求、業務及び財産状況の調査から始めます。抽象的に求めるのではなく、対象期間、対象資料、目的、方法を示すことが重要です。対象資料には、総勘定元帳、試算表、決算書、預金通帳、契約書、請求書、領収書、社員決定書、電子契約ログ、税務申告書、許認可資料などがあります。
次の一覧は、典型的な場面ごとに問題となる論点を整理しています。具体的な事案では定款、証拠、取引相手の認識、登記、税務・労務の事情で結論が変わるため、ここでは制度上の確認軸として読み取ってください。
代表社員を定めていない場合、各業務執行社員が代表権を持つことがあります。内部承認違反があっても、対外的に会社が拘束される可能性があります。
非業務執行社員は業務を執行しませんが、出資者として業務及び財産状況を調査する権利を持ち得ます。
親会社の社内決裁だけでなく、合同会社としての業務執行決定、利益相反承認、関連当事者取引の条件確認を残す必要があります。
利益相反取引に該当する可能性が高く、同種事業なら競業にも該当し得ます。取引条件と承認手続の具体化が重要です。
合同会社の業務執行社員の責任と権限は、会社法だけでは完結しません。次の比較表は、専門家・担当者ごとの関与領域を示します。どの専門家に何を確認するかを分けることで、定款、登記、税務、労務、知財、内部統制の抜け漏れを減らせます。
| 専門家・担当者 | 主な関与ポイント |
|---|---|
| 弁護士 | 定款、社員間契約、競業・利益相反、責任追及、紛争、訴訟、M&A、不祥事対応 |
| 企業内弁護士・法務担当 | 契約審査、承認手続、社内規程、証跡管理、リスク評価 |
| 司法書士 | 設立登記、業務執行社員・代表社員変更登記、職務執行者登記、定款変更に伴う登記 |
| 税理士・公認会計士 | 役員報酬、利益分配、関連当事者取引、税務申告、内部統制、財務DD、不正調査 |
| 社会保険労務士 | 労働者性、社会保険、雇用保険、労務管理、ハラスメント、就業規則 |
| 弁理士・知財担当 | 知的財産の帰属、ライセンス、共同開発、商標管理、競業リスク |
| 行政書士 | 許認可、行政手続、規制業種の届出 |
| 内部監査・コンプライアンス担当 | 権限規程、証跡、関連当事者取引、通報対応、研修 |
設立時、運営時、紛争時に分けて、定款・証跡・登記・会計を確認します。
次の比較表は、設立時に確認すべき事項を一覧化したものです。最初に制度設計を固めることで、業務執行社員の権限がどこまで及ぶか、代表社員を誰にするか、出資者保護をどう確保するかを読み取れます。
| 設立時の確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 業務執行社員 | 全社員にするか、特定社員に限定するかを決めているか |
| 代表社員 | 代表社員を定めるか、各業務執行社員の各自代表にするかを決めているか |
| 法人社員 | 法人が業務執行社員又は代表社員になる場合、職務執行者を選任しているか |
| 出資履行 | 設立登記前に出資の履行を完了しているか |
| 競業・利益相反 | 関連当事者取引と承認方法を定めているか |
| 業務決定 | 議決要件、重要事項、報酬、費用償還、情報アクセスを定めているか |
| 持分と紛争 | 持分譲渡、相続、退社、解任、デッドロックを定めているか |
| 登記書面 | 定款、決定書、就任承諾、出資履行資料などを整えているか |
次の一覧は、運営時の確認項目です。読者にとって重要なのは、日々の運用で承認・報告・期限管理が途切れると、業務執行社員の責任問題につながる点です。
業務執行社員の決定事項、代表社員が締結した契約、一定金額以上の承認証跡を一覧管理します。
事前申告制度、関連当事者取引台帳、承認資料、市場価格比較を整えます。
月次会計資料、税務申告、社会保険、許認可、登記期限を共有し、担当者を明確にします。
銀行印、電子証明書、クラウド契約権限、職務執行者変更の有無を定期確認します。
次の一覧は、紛争時に最初に整理すべき資料と論点です。順序立てて確認することで、代表者が相手方になる場合の会社代表、60日ルール、登記変更、税務・労務影響を見落としにくくなります。
定款、社員間契約、登記簿、社員名簿、出資資料、社員決定書を確認します。
資料業務執行権、代表権、競業、利益相反、善管注意義務のどれに関係するかを整理します。
論点損害額、因果関係、証拠、報告請求・調査請求の経緯を文書で整理します。
証拠問題の業務執行社員が代表社員である場合、会社を代表する者、責任追及、解任、仮処分、登記変更を検討します。
手続よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。具体的な判断は定款・登記・証拠関係で変わります。
一般的には、業務執行社員は会社を代表するとされています。ただし、定款又は定款に基づく互選によって代表社員を定めた場合は、代表社員が会社を代表します。具体的な権限関係は、定款、互選書、登記、取引実態を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、業務執行社員でない社員は業務執行権を持たないとされています。ただし、出資者として会社の業務及び財産状況を調査する権利が認められる場合があります。事業年度終了時又は重要な事由があるときの調査権など、具体的な範囲は定款と会社法上の要件で変わる可能性があります。
一般的には、合同会社の借入債務について、出資履行後の社員は有限責任の範囲を超える責任を負わないとされています。ただし、個人保証、虚偽説明、支払不能を認識した勧誘、会社財産の流用などがある場合は別途責任が問題となる可能性があります。具体的な見通しは資料を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、副業の内容が会社の事業の部類に属する取引や同種事業への関与に当たる場合、競業避止義務に基づく承認が必要となる可能性があります。競業性がない場合でも、秘密保持、利益相反、会社資産の利用、職務への影響で結論が変わります。具体的な対応は定款と取引内容を確認して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社法、定款、社員間合意上の手続に沿って決める必要があるとされています。税務上は役員給与に類似する損金算入制限、利益分配との区別、源泉徴収、社会保険などが問題となる可能性があります。具体的な処理は税務・労務の専門家にも確認する必要があります。
一般的には、業務執行社員については氏名又は名称が登記事項であり、代表社員については氏名又は名称及び住所が登記事項とされています。代表社員が法人である場合、その職務執行者の氏名及び住所も登記事項になります。個別の登記内容は登記事項証明書と定款で確認する必要があります。
一般的には、業務執行社員は合同会社の登記事項であるため、変更が生じた場合は変更登記が必要となります。代表社員や法人代表社員の職務執行者の変更も登記に影響します。登記期限や添付書面は事案により変わるため、具体的には司法書士等の専門家に確認する必要があります。
一般的には、定款で業務執行社員、代表社員、決定方法、重要事項、競業・利益相反、報酬、調査権、退社・解任を明確にし、社員間契約でデッドロック、買取、情報管理、事業計画、詳細承認を補う方法が考えられます。ただし、会社規模、出資比率、事業内容、税務・労務・許認可で結論が変わるため、具体的な設計は専門家へ相談する必要があります。
会社法、民法、法務省・法務局の公開情報を中心に確認しています。