株数が増えるという見た目だけでは、どちらの制度を使うべきかは判断できません。会社法、自己株式、種類株式、登記、会計税務、上場開示を横断して、実務で確認すべき違いを整理します。
株数が増えるという見た目だけでは、どちらの制度を使うべきかは判断できません。
まず、両制度の結論と実務で迷いやすい論点を一望します。
株式分割は、既存株式を同じ種類の株式として割合的に細分化する制度です。株式無償割当ては、株主に新たな払込みをさせず、会社の株式を割合的に割り当てる制度です。普通株式100株が200株になるという結果は似ていても、会社法上の構造、自己株式、種類株式、基準日、発行可能株式総数、登記、会計税務、上場開示では違いが出ます。
次の一覧は、実務で最初に押さえるべき4つの違いを示しています。どの制度を使うかは、手続の好みではなく、同じ種類の株式を増やすだけなのか、種類株式や自己株式を含む資本政策なのかを見極めるために重要です。各項目から、後続の章で重点的に確認すべき論点を読み取ってください。
株式分割では、分割対象と同じ種類の株式が増えます。株式無償割当てでは、制度上、異なる種類の株式を割り当てる設計も検討対象になります。
株式分割では自己株式も分割効果を受けます。株式無償割当てでは会社自身は割当対象から除かれ、自己株式を交付する設計が別途問題になります。
株式分割では会社法上、基準日が決定事項です。株式無償割当てでは明文の決定事項ではありませんが、実務上は対象者確定のため設定することが多くあります。
株式分割には発行可能株式総数の増加特則があります。株式無償割当てには同じ一般的特則がないため、定款変更の要否がより問題になりやすい構造です。
次の強調表示は、全体を貫く実務上の結論です。株数の増加だけで判断すると、定款変更、登記、会計税務、開示の見落としにつながるため、目的と手続を結び付けて読むことが重要です。
ただし、具体的な結論は定款、株主構成、自己株式数、種類株式、上場の有無、税務属性、会計基準、既存契約によって変わります。
会社法183条から187条の役割と、関連する基本用語を整理します。
株式とは、株式会社における株主としての権利義務を単位化したものです。発行済株式総数は会社がすでに発行している株式の総数で、自己株式も原則として含まれます。発行可能株式総数は会社が発行できる株式数の上限で、株式分割や株式無償割当ての前に必ず余裕を確認します。
次の一覧は、制度理解の前提となる用語をまとめたものです。どの数値が変わるかを誤ると、決議事項、登記、会計税務の処理が連鎖的にずれるため重要です。各用語が、株数、上限、自己株式、権利内容のどれを指すかを読み取ってください。
議決権、配当、残余財産分配、少数株主権などの基礎となる株主の地位の単位です。
権利単位すでに発行されている株式数です。変動すれば変更登記の要否を検討します。
登記事項会社が発行できる上限です。分割後または割当て後の発行済株式総数が超過しないかを確認します。
定款確認会社が自社株式を保有している状態です。株式分割と株式無償割当てで扱いが大きく異なります。
資本政策配当、残余財産、議決権、取得請求権、取得条項などの内容が異なる株式です。
権利内容株式分割は会社法183条・184条が中心です。会社はその都度、分割により増加する株式総数の割合、基準日、効力発生日、種類株式発行会社では分割対象株式の種類を定めます。基準日に株主名簿に記載・記録されている株主は、効力発生日に、基準日に有する株式数に分割割合を乗じて得た数の株式を取得します。
株式無償割当ては会社法185条・186条・187条が中心です。株主に新たな払込みをさせず、会社の株式を割り当てる制度であり、割当株式の数または算定方法、効力発生日、種類株式発行会社では割当てを受ける株主の有する株式の種類を定めます。会社自身は割当対象から除かれ、効力発生日後には割当株式数を株主および登録株式質権者へ通知する必要があります。
次の比較表は、会社法上の決定事項を並べたものです。決議書や議事録で何を定めるべきかを確認する場面で重要です。左列は制度名、中央列以降は決議・効力発生に直結する要素を示しており、基準日の有無と種類株式の扱いを読み取ってください。
| 制度 | 中心条文 | 主な決定事項 | 効力発生日の効果 |
|---|---|---|---|
| 株式分割 | 会社法183条・184条 | 増加割合、基準日、効力発生日、分割する株式の種類 | 基準日の株主が、保有株式数に割合を乗じた株式を取得します。 |
| 株式無償割当て | 会社法185条・186条・187条 | 割当株式数または算定方法、効力発生日、対象株主の有する株式の種類 | 割当てを受けた株主が、効力発生日に当該株式の株主になります。 |
法的性質から登記・会計税務・上場開示まで、違いを横断的に確認します。
株式分割は「同じ株式を細かくする」制度で、株式無償割当ては「払込みなしで株式を割り当てる」制度です。次の表は、実務で判断を誤りやすい項目を横断的に整理しています。どの列が自社の目的に合うか、どの項目で追加手続が必要になるかを読み取るために重要です。
| 比較項目 | 株式分割 | 株式無償割当て |
|---|---|---|
| 法的性質 | 既存株式を割合的に細分化する制度です。 | 株主に払込みをさせず、会社の株式を割り当てる制度です。 |
| 決議機関 | 株主総会。取締役会設置会社では取締役会です。 | 株主総会。取締役会設置会社では取締役会です。ただし定款に別段の定めがある場合は別途検討します。 |
| 基準日 | 会社法上、決定事項として明示されています。 | 会社法186条の決定事項には列挙されません。ただし実務上は設定することが多くあります。 |
| 株式の種類 | 原則として同じ種類の株式が増えます。 | 同じ種類の株式も、異なる種類の株式も割当ての検討対象になります。 |
| 自己株式 | 分割効果により自己株式数も増えると整理されます。 | 会社自身は割当対象から除かれます。自己株式を交付財源とする設計は別途問題になります。 |
| 発行可能株式総数 | 会社法184条2項の特則があります。 | 株式分割と同じ一般的特則はありません。 |
| 発行済株式総数 | 原則として増加します。 | 新株発行型では増加します。自己株式交付型では増加しない場合があります。 |
| 登記 | 発行済株式総数や発行可能株式総数等が変われば変更登記を検討します。 | 発行済株式総数等が変われば変更登記を検討します。自己株式のみの交付では登記不要となる余地があります。 |
| 会計税務 | 資本金を直接増やす制度ではなく、1株当たり情報や取得価額調整が問題になります。 | 同種株式なら株式分割に近い扱いがあり、自己株式処分型や異種株式では個別検討が重要です。 |
| 上場会社 | 決定次第直ちに適時開示が必要で、軽微基準はありません。 | 決定次第直ちに適時開示が必要で、軽微基準はありません。 |
株式分割では、会社全体の価値が同じであれば1株当たり理論価値は分割比率に応じて下がります。たとえば1株1万円相当の株式を1株につき2株に分割すれば、理論上は1株5,000円相当になります。もっとも市場株価は需給、期待、流動性、投資単位、成長性で変動するため、機械的に半分になるだけではありません。
株式無償割当ては、普通株主に普通株式を割り当てるだけでなく、種類株式や自己株式の交付を含む設計を検討できる点に特徴があります。この柔軟性は便利ですが、株主平等、種類株主保護、支配権、公正性、税務、会計、上場規則との整合性を同時に確認する必要があります。
種類株式発行会社と自己株式がある会社では、両制度の差が特に大きくなります。
種類株式発行会社で株式分割を行う場合、分割する株式の種類を定めます。普通株式だけを分割するなら普通株式の数が増え、A種優先株式は分割対象でなければ増えません。普通株主にA種種類株式を取得させる設計は、株式分割では実現できません。
次の一覧は、種類株式を使う場面で確認する観点を示しています。異なる種類の株式を割り当てる設計は権利内容を変えるため重要です。定款、上限、既存種類株主、株主間契約、上場規則のどこに影響が出るかを読み取ってください。
当該種類株式の配当、残余財産、議決権、取得請求権、取得条項などが適切に定められているかを確認します。
割当て後の種類株式数が定款上の上限に収まるかを確認します。
既存の種類株主に損害を及ぼすおそれや種類株主総会の要否を検討します。
株主平等、支配権、公正発行、税務評価、投資家説明、上場会社の株主権保護を確認します。
次の比較表は、自己株式がある会社で両制度の結果がどう変わるかを示しています。自己株式の数が変わるかどうかは、議決権、保有比率、登記、会計処理、資本政策に影響するため重要です。発行済株式総数と自己株式数が別々にどう動くかを読み取ってください。
| 前提 | 株式分割 | 株式無償割当て |
|---|---|---|
| 発行済普通株式1,000株、自己株式100株、外部株主900株 | 1株を2株に分割すると、発行済株式総数2,000株、自己株式200株、外部株主1,800株になります。 | 外部株主900株に1株につき1株を割り当てると、新株発行型では発行済株式総数1,900株、自己株式100株のままです。 |
| 自己株式の交付を目的にする場合 | 自己株式を株主へ交付する制度ではありません。 | 自己株式を株主へ交付する設計を検討できます。発行済株式総数は変わらず、自己株式が減少する場合があります。 |
株式無償割当てで自己株式を交付する場合、単に「登記が少ない」だけで判断するべきではありません。自己株式の帳簿価額、その他資本剰余金、税務、株主名簿、上場会社の開示、証券代行事務まで確認する必要があります。
誰を対象にするか、どの機関で決めるかは、スケジュール設計の出発点です。
株式分割では、会社法183条2項1号により基準日を定める必要があります。非上場会社でも、株主名簿、譲渡承認、名義書換、基準日公告、効力発生日、登記予定日を踏まえて日程を組みます。上場会社では、権利付最終日、権利落ち日、基準日、効力発生日、振替制度、証券代行事務と連動します。
次の時系列は、株式分割や同種株式の無償割当てを進める際に確認する順番を示しています。日付のずれは株主確定、登記、開示、会計税務に波及するため重要です。上から下へ進む順番で、決議日、基準日、効力発生日、登記・通知の関係を読み取ってください。
株主総会または取締役会で、分割割合、基準日、効力発生日、種類株式の対象などを定めます。
株式分割では基準日が必須です。株式無償割当てでも実務上、対象者確定のため基準日を置くことがあります。
株式分割では基準日の株主が追加株式を取得し、株式無償割当てでは割当てを受けた株主が当該株式の株主になります。
発行済株式総数等が変わる場合は変更登記を検討し、株主名簿、会計税務、開示資料を整合させます。
次の表は、決議機関の違いを整理したものです。取締役会設置会社かどうか、定款に別段の定めがあるかで手続が変わるため重要です。制度ごとの原則と例外を読み取ってください。
| 制度 | 原則的な決議機関 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 株式分割 | 株主総会。取締役会設置会社では取締役会。 | 上場会社や大企業では取締役会決議が中心になります。基準日と効力発生日を明確にします。 |
| 株式無償割当て | 株主総会。取締役会設置会社では取締役会。 | 会社法186条3項に、定款に別段の定めがある場合の例外があります。ただし株主平等、種類株主保護、濫用防止を確認します。 |
授権枠、発行済株式総数、種類株式数の変更は登記実務に直結します。
株式分割には、会社法184条2項の発行可能株式総数増加特則があります。現に二以上の種類の株式を発行している会社を除き、株主総会決議によらず、分割割合に応じた範囲で発行可能株式総数を増やす定款変更を行える場合があります。株式無償割当てには同じ一般的特則がないため、発行済株式総数が発行可能株式総数を超えないかを事前に確認します。
次の比較表は、発行可能株式総数と登記の確認ポイントを示しています。授権枠不足は決議や効力発生後の登記不備につながるため重要です。新株発行型か自己株式交付型かで、発行済株式総数が変わるかを読み取ってください。
| 論点 | 株式分割 | 株式無償割当て |
|---|---|---|
| 発行可能株式総数の余裕 | 特則を使えるかを確認します。例として発行可能株式総数1,000株、発行済800株を1株2株に分割するなら、発行済は1,600株になります。 | 新株発行型では発行済株式総数が増えます。余裕がなければ定款変更が問題になります。 |
| 変更登記 | 発行済株式総数が増えるため、変更登記が必要になります。発行可能株式総数も変更するならその登記も必要です。 | 新株発行型では発行済株式総数の変更登記を検討します。自己株式のみの交付では、発行済株式総数が変わらない場合があります。 |
| 種類株式 | 種類ごとの発行済株式数や発行可能種類株式総数を確認します。 | 異なる種類株式を割り当てる場合、定款、種類株主総会、登記添付書面の確認が必要です。 |
1株当たり情報、自己株式処理、取得日・取得価額を切り分けます。
株式分割は株式数を増やす制度であり、株主から払込みを受ける制度ではありません。会社の資産が増えるわけではなく、資本金の額が当然に増えるわけでもありません。会計上は、1株当たり当期純利益、潜在株式調整後1株当たり当期純利益、1株当たり純資産、配当性向、株価指標への影響を確認します。
次の一覧は、会計税務で確認すべき主要論点を整理しています。制度選択が財務表示、株主側の取得管理、自己株式処分差額に影響するため重要です。どの論点が株式分割に近く、どの論点が株式無償割当て固有なのかを読み取ってください。
株式分割や同一種類株式の無償割当てなど、株式分割と同様の効果を有する事象では、普通株式の期中平均株式数の調整が問題になります。
会計表示株式無償割当てで自己株式を処分する場合、自己株式の帳簿価額、その他資本剰余金、株主資本等変動計算書への影響を確認します。
資本剰余金株式分割により取得した株式は基因となった株式の取得日によるとされます。株式無償割当ても原則は同様ですが、異なる種類の株式等では効力発生日が問題になります。
税務投資総額が同じで株数が増える場合、1株当たり取得費の配分・調整が問題になります。異種株式では時価やみなし配当等の確認が必要です。
個別確認次の表は、会計税務担当者が分担して確認すべき事項をまとめています。会社側処理と株主側処理を混同しないために重要です。列ごとに、会計表示、税務、資本取引への影響を読み取ってください。
| 確認事項 | 主な観点 | 特に注意する設計 |
|---|---|---|
| 株式分割か株式無償割当てか | 同一種類株式の割合的増加なら経済的効果は近いことがあります。 | 異なる種類株式の割当て、自己株式交付型 |
| 1株当たり情報 | 遡及調整、配当予想、1株当たり配当額、株価指標への反映を確認します。 | 決算短信、有価証券報告書、会社法計算書類 |
| 株主側税務 | 取得日、取得価額、譲渡所得、法人株主処理、みなし配当を確認します。 | 異種株式、同族会社、法人株主、非居住者株主 |
| 資本政策との連動 | ストックオプション、役員報酬、従業員インセンティブ、M&A、組織再編との整合性を確認します。 | 株式交換、株式交付、スクイーズアウト、自己株式交付 |
適時開示、配当予想、投資単位、市場混乱防止をまとめます。
上場会社では、会社法手続だけでは足りません。株式分割も株式無償割当ても、決定した場合は直ちに開示が必要とされ、軽微基準はありません。配当予想修正、基準日と効力発生日、東証提出書類、投資単位、株主権の不当制限、流通市場への影響を同時に確認します。
次の一覧は、上場会社が追加で確認すべき項目を示しています。投資家保護と市場実務に直結するため重要です。各項目が、開示、日程、市場影響、提出書類のどこに関わるかを読み取ってください。
株式分割も株式無償割当ても、決定次第直ちに開示が必要です。軽微基準はありません。
1株当たり配当を分割比率・割当比率に応じて調整するか、配当総額が増えるかを説明します。
同一種類株式の株式無償割当てを含め、基準日等の翌日を効力発生日とする実務上の要請に注意します。
投資単位50万円未満への移行・維持や、1株当たり株価が極端に低くなる設計を確認します。
流通市場に混乱をもたらすおそれ、株主利益を侵害するおそれがある設計を避けます。
適時開示とは別に、取引所への所定書類提出が必要となる場合があります。
配当との関係では、1株当たり配当を比率に応じて下げれば配当金総額は大きく変わらない可能性があります。一方、1株当たり配当を下げなければ配当金総額は増える可能性があり、実質的な増配として投資家説明が必要になります。
同種株式の単純な増加か、種類株式・自己株式を含む設計かで切り分けます。
次の判断の流れは、制度選択を迷ったときの確認順序を示しています。早い段階で目的と制約を切り分けることが、不要な定款変更、登記漏れ、税務・会計の手戻りを避けるために重要です。上から順に、同種株式、種類株式、自己株式、授権枠、上場会社対応のどこで分岐するかを読み取ってください。
該当するなら株式分割が第一候補になります。
該当するなら株式無償割当てを検討し、種類株主保護・定款・税務を確認します。
自己株式も増やしたいなら株式分割、自己株式を株主に交付したいなら株式無償割当てを検討します。
余裕がない場合、株式分割の特則を使えるか、株式無償割当てなら定款変更が必要かを確認します。
適時開示、基準日、効力発生日、配当予想、提出書類、投資単位を確認します。
定款、株主名簿、議事録、登記、既存契約を整合させます。
普通株式、同種株式無償割当て、自己株式交付、種類株式割当てを数値で比べます。
次の表は、発行済普通株式1,000株、自己株式100株、A株主300株、B株主600株という前提を中心に、4つの設計を比べたものです。数値の動きは自己株式と発行済株式総数の違いを理解するために重要です。どのケースで自己株式が増えるか、どのケースで発行済株式総数が変わらないかを読み取ってください。
| ケース | 前提・内容 | 結果 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 普通株式の1株を2株にする株式分割 | 発行済1,000株、自己株式100株、A株主300株、B株主600株を1株につき2株に分割します。 | 発行済2,000株、A株主600株、B株主1,200株、自己株式200株になります。 | 持分割合は原則として変わらず、自己株式も分割効果を受けます。発行済株式総数の変更登記が必要です。 |
| 普通株式の同種株式無償割当て | 会社以外の株主に、1株につき1株の普通株式を無償割当てします。新株発行型です。 | A株主600株、B株主1,200株、自己株式100株のまま、発行済株式総数1,900株になります。 | 自己株式には割当てがありません。外部株主間では割合が維持されても、自己株式を含む発行済株式総数ベースでは株式分割と違います。 |
| 自己株式を交付する株式無償割当て | A株主・B株主に合計100株の自己株式を比例按分で無償交付します。 | 発行済株式総数1,000株のまま、自己株式0株となり、A株主・B株主の保有株式数が増えます。 | 発行済株式総数の変更登記は不要となる可能性がありますが、自己株式処分、会計税務、株主名簿、上場開示を確認します。 |
| 普通株主にA種種類株式を無償割当て | 普通株式とA種種類株式を発行できる定款を前提に、普通株主へA種種類株式を無償割当てします。 | 普通株主は既存の普通株式に加え、A種種類株式を取得します。 | 株式分割では実現できません。種類株式の内容、発行可能種類株式総数、種類株主総会、税務評価、投資家説明を確認します。 |
次の強調表示は、4つの例から読み取れる実務上の要点です。数値例は単純化されていますが、実案件では定款、株主名簿、自己株式台帳、会計帳簿、税務資料を合わせて確認することが重要です。
自己株式も同じ比率で増やしたいのか、自己株式を外部株主へ交付したいのかで、選ぶ制度と登記・会計税務の確認事項が変わります。
法務、登記、会計税務、開示、契約調整の確認事項をまとめます。
次の表は、担当領域ごとに追加で見るべき項目を整理しています。制度選択の判断は法務だけでは完結せず、登記、会計税務、開示が相互に影響するため重要です。左列の担当と右列の確認事項を対応させて読み取ってください。
| 担当領域 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 上場会社 | 適時開示、軽微基準なし、配当予想修正、基準日等の翌日を効力発生日とする要請、東証提出書類、投資単位50万円未満、TDnet・英文開示・決算短信との整合性を確認します。 |
| 司法書士・登記担当 | 登記すべき事項、効力発生日から2週間以内の申請、議事録、株主リスト、発行可能株式総数・発行可能種類株式総数の定款変更、登録免許税、オンライン申請情報を確認します。 |
| 税理士・公認会計士 | 同一種類株式か異なる種類株式か、1株当たり情報の調整、自己株式処分型の資本剰余金処理、取得日・取得価額、みなし配当、同族会社課税、注記への反映を確認します。 |
次の一覧は、実務上の誤解とリスクを整理しています。見た目が似ている制度ほど、誤解が手続漏れや説明不足につながるため重要です。どの誤解が法務、税務、登記、開示のどのリスクに結びつくかを読み取ってください。
株主の権利、資本政策、登記事項、税務、会計、開示に影響します。
種類株式、価値移転、法人株主、同族会社、時価、みなし配当で課税関係が生じる可能性があります。
会社以外の株主の有する株式数に応じて行う必要があり、特定株主にだけ有利に配る制度ではありません。
株主名簿、基準日公告、効力発生日、議事録、会計税務、契約調整、上場開示、投資家説明が必要です。
会社価値を直接増加させる制度ではなく、業績、成長性、需給、流動性、配当方針によって評価は変わります。
次の表は、社内外の役割分担を示しています。株式分割・株式無償割当ては法務部だけで完結しないため、誰が何を確認するかを早期に分けることが重要です。各担当の主な役割を読み取り、作業漏れを防いでください。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 法務担当・企業内弁護士 | 会社法、定款、決議、株主平等、種類株主保護、契約調整 |
| 外部弁護士 | 複雑案件、上場会社、M&A、防衛策、種類株式、紛争リスクの検討 |
| 商事法務担当 | 株主総会・取締役会、招集通知、議事録、基準日公告、株主名簿 |
| 司法書士 | 発行済株式総数・発行可能株式総数・種類株式に関する変更登記 |
| 公認会計士・経理 | 1株当たり情報、自己株式処理、計算書類、有価証券報告書、監査対応 |
| 税理士 | 株主側・会社側の税務、取得日・取得価額、みなし配当、同族会社論点 |
| 証券代行機関 | 上場会社・大規模会社の株主名簿、権利処理、株主通知 |
| IR・開示担当 | 適時開示、TDnet、投資家説明、配当予想修正、FAQ作成 |
| 経営企画・CFO | 資本政策、投資単位、株主構成、資金調達、M&A戦略 |
制度選択でよく出る疑問を、一般的な情報として整理します。
一般的には、現行会社法の用語として無償増資という表現は慎重に使うべきとされています。株式分割は株式数を増やす制度であり、資本金が当然に増えるわけではありません。株式無償割当ても、株主に新たな払込みをさせない制度です。具体的な会計・税務上の扱いは、設計や株主属性によって変わる可能性があります。
一般的には、全株主に同じ比率で普通株式を増やす場合、経済的効果が似ることがあります。ただし、自己株式、基準日、発行可能株式総数の特則、決議機関の定款自治、登記、会計税務で差が出る可能性があります。具体的な手続選択は、定款や株主構成を確認して判断する必要があります。
一般的には、同じ種類の株式を単純に増やすだけなら、株式分割の方が整理しやすいことが多いとされています。特に発行可能株式総数の増加特則を利用できる点は重要です。ただし、異なる種類の株式を割り当てる場合や自己株式を交付する場合には、株式無償割当てを検討する必要があります。
一般的には、会社法186条2項により、会社以外の株主の有する株式数に応じて割り当てる内容でなければならないとされています。特定株主にだけ有利な株式交付を検討する場面では、募集株式発行、第三者割当、株式報酬、種類株式、株主割当てなど別手法が問題になります。いずれも既存株主保護、支配権、公正発行、税務、上場規則によって結論が変わる可能性があります。
一般的には、株式分割は分割対象の株式を同じ種類の株式として増やす制度とされています。普通株式の株主にA種種類株式を交付したい場合は、株式無償割当てや募集株式発行等が検討対象になります。具体的には、定款、種類株主総会、税務評価、株主間契約、上場規則を確認する必要があります。
一般的には、一概にはいえません。新株発行型の株式無償割当てで発行済株式総数が増える場合、変更登記が必要になる可能性があります。自己株式のみを交付し、発行済株式総数が変わらない場合には、発行済株式総数の変更登記は不要となる可能性がありますが、発行可能株式総数、種類株式、定款変更、株主名簿、会計税務、上場開示は別途確認が必要です。
一般的には、東証の上場会社向け実務では、株式の分割または併合、株式無償割当てについて軽微基準はなく、決定次第直ちに開示が必要とされています。ただし、具体的な開示内容、提出書類、配当予想修正の要否は、決定内容や会社の状況によって変わる可能性があります。
一般的には、制度自体によって会社価値が増えるわけではありません。株数が増えれば、会社価値が同じである限り、理論上は1株当たり価値が下がります。ただし、上場会社では投資単位の低下、流動性向上、投資家層拡大などへの期待から市場評価が変化する可能性があります。
一般的には、同じとは限りません。株式分割により取得した株式は基因となった株式の取得日によるとされ、株式無償割当ても原則として同様の扱いが示されています。ただし、異なる種類の株式等が割り当てられた場合は、無償割当ての効力発生日によるとされるなど、株主属性・種類株式・評価・みなし配当等で結論が変わる可能性があります。
一般的には、会社の定款、株主名簿、自己株式数、発行可能株式総数、種類株式の内容、既存の株主間契約・投資契約を確認することが出発点とされています。次に、会社法183条から187条、会社法911条・915条、会社計算規則、国税庁資料、ASBJ会計基準、上場会社であれば取引所実務を確認する必要があります。
公的機関、取引所、会計基準、税務資料を中心に整理しています。