2σ Guide

労災隠し・未加入の
リスクを防ぐ実務

未報告、虚偽報告、健康保険処理への誘導、労働保険の未手続は、労働者保護だけでなく企業統治と信用を揺るがすリスクです。

2025年電子申請義務化
40%/100%費用徴収の目安
10%追徴金の目安
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労災隠し・未加入の リスクを防ぐ実務

未報告、虚偽報告、健康保険処理への誘導、労働保険の未手続は、労働者保護だけでなく企業統治と信用を揺るがすリスクです。

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労災隠し・未加入の リスクを防ぐ実務
未報告、虚偽報告、健康保険処理への誘導、労働保険の未手続は、労働者保護だけでなく企業統治と信用を揺るがすリスクです。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 労災隠し・未加入の リスクを防ぐ実務
  • 未報告、虚偽報告、健康保険処理への誘導、労働保険の未手続は、労働者保護だけでなく企業統治と信用を揺るがすリスクです。

POINT 1

  • 労災隠し・未加入のリスクの全体像
  • 刑事・行政、財務、民事、取引、統治の問題として捉えます
  • 未手続は最大2年の遡及保険料、10%の追徴金、40%または100%の費用徴収につながる場合があります
  • 労災隠し・未加入のリスクは、労災保険の書類を出し忘れたという範囲にとどまりません。
  • 特に重要なのは、労災保険が労働者保護の制度であり、会社が未手続であっても労働者側の救済が直ちに失われるものではない点です。

POINT 2

  • 労災隠し・未加入のリスクを理解する基本概念
  • 労災、労災保険、未手続、隠蔽行為を分けます
  • 成立手続の未了
  • 保険料申告納付の漏れ
  • 対象労働者の誤認

POINT 3

  • 労災隠し・未加入のリスクを生む法制度の骨格
  • 報告義務、給付請求、健康保険処理、費用徴収を分けます
  • 2025年1月1日以降、労働者死傷病報告など一部手続は電子申請が義務化されています
  • 制度の機能を取り違えると、報告義務を保険給付の判断書類のように扱ってしまいます。
  • 列は「制度の役割」「会社の注意点」「誤った対応」に分けています。

POINT 4

  • 労災隠し・未加入のリスクが会社へ広がる経路
  • 刑事・行政
  • 労働者死傷病報告の未提出・虚偽報告、休業日数や事故原因の偽装、監督署の是正、送検、公表が問題になります。
  • 財務
  • 遡及保険料、10%の追徴金、保険給付額の40%または100%の費用徴収、調査費用、訴訟費用が問題になります。

POINT 5

  • 業種別に見る労災隠し・未加入のリスク
  • 事故類型と取引への波及を業種ごとに確認します
  • 労災隠し・未加入のリスクは、業種ごとに発生しやすい場面が異なります。
  • 建設、製造、運送、飲食・小売、医療・介護・保育、スタートアップ・ITでは、事故類型、関係者、証拠、取引への波及が変わります。
  • 成立届、概算・確定保険料申告書、事業所別・現場別の適用状況を確認します。

POINT 6

  • 労災隠し・未加入のリスクが発覚した場合の初動対応
  • 1. 被災者の治療・生活確保:救護、医療機関、家族連絡、休業中の窓口を整えます
  • 2. 事実確認と証拠保全:事故日時、場所、作業内容、指示者、休業見込み、記録を保全します
  • 3. 健康保険処理や未手続はあるか:処理状況と成立手続を確認します
  • 4. 是正手続を確認:医療機関、保険者、監督署、労働局、社労士へ相談します
  • 5. 通常手続を継続:報告、請求協力、再発防止へ進みます
  • 6. 経営・法務・労務・広報の連携:重大事案では外部専門家も含めて対応を統合します
  • 7. 再発防止と経営報告:暫定措置、本格措置、教育、設備改善、監査確認を行います

POINT 7

  • 労災隠し・未加入のリスクを防ぐ内部統制
  • 三線モデル、RACI、規程、教育で隠さない仕組みを作ります
  • 事故報告基準
  • 電子申請と控え保存
  • 記録改変・申請妨害の禁止

POINT 8

  • 労災隠し・未加入のリスクに関するFAQ
  • 一般情報として整理し、個別判断に見えない表現にします
  • 労災申請をすると会社が全面的に非を認めたことになりますか
  • 従業員本人が労災にしなくてよいと言った場合、会社は何もしなくてよいですか
  • アルバイトの軽いけがでも労災保険は問題になりますか

まとめ

  • 労災隠し・未加入の リスクを防ぐ実務
  • 労災隠し・未加入のリスクの全体像:刑事・行政、財務、民事、取引、統治の問題として捉えます
  • 労災隠し・未加入のリスクを理解する基本概念:労災、労災保険、未手続、隠蔽行為を分けます
  • 労災隠し・未加入のリスクを生む法制度の骨格:報告義務、給付請求、健康保険処理、費用徴収を分けます
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

労災隠し・未加入のリスクの全体像

刑事・行政、財務、民事、取引、統治の問題として捉えます

労災隠し・未加入のリスクは、労災保険の書類を出し忘れたという範囲にとどまりません。未報告、虚偽報告、健康保険処理への誘導、成立手続の放置は、刑事・行政、財務、民事、労務、取引、ガバナンス、信用の各領域へ連鎖します。

特に重要なのは、労災保険が労働者保護の制度であり、会社が未手続であっても労働者側の救済が直ちに失われるものではない点です。未加入・未手続の不利益は、最終的に会社側へ遡及保険料、追徴金、費用徴収、信用低下として戻ってくる可能性があります。

次の比較表は、労災隠し・未加入のリスクを7つの類型に分けたものです。左列でリスクの種類を確認し、右列で会社にどのような負担が生じるかを読み取ってください。複数の行が同時に発生しやすい点が、このテーマの怖さです。

リスク類型主な内容
刑事・行政リスク労働者死傷病報告の未提出・虚偽報告、監督署の是正、送検、公表、手続未履行への指導
財務リスク遡及保険料、追徴金、未手続事業主への費用徴収、休業補償、損害賠償、調査費用
民事リスク安全配慮義務違反、使用者責任、後遺障害・死亡事故に伴う損害賠償
労務リスク従業員の不信、退職、内部通報、労働組合対応、採用難、士気低下
取引・金融リスク取引先監査、サプライチェーン調査、公共工事、許認可、入札、金融機関評価への影響
ガバナンスリスク取締役の善管注意義務、内部統制不備、監査指摘、M&Aでの表明保証違反
信用リスク報道、SNS拡散、行政公表、顧客・求職者・投資家からの信頼低下

次の重要ポイントは、未手続時に数字として特に押さえるべき負担をまとめたものです。2年、10%、40%、100%という数字は、未加入を「後で払えばよい」と考える危険を示しています。

未手続は最大2年の遡及保険料、10%の追徴金、40%または100%の費用徴収につながる場合があります

公的資料では、成立手続を怠っていた事業主に対し、最大2年間さかのぼった保険料と追徴金、さらに未手続中の事故について保険給付額の一部または全部に相当する費用徴収が問題になるとされています。

Section 01

労災隠し・未加入のリスクを理解する基本概念

労災、労災保険、未手続、隠蔽行為を分けます

労災隠し・未加入のリスクを理解するには、労災、労災保険、未加入、労災隠しを分ける必要があります。会社が「アルバイトだから対象外」「本人の不注意だから労災ではない」「民間保険があるから足りる」と考えると、初動から誤った方向に進みます。

次の比較表は、4つの基本概念を分けて示したものです。各行の「会社の誤解」欄を見ることで、どの認識が隠蔽や未手続につながりやすいかを確認できます。

概念意味会社の誤解正しい整理
労災業務上または通勤途上の負傷、疾病、障害、死亡本人の不注意なら労災ではない過失の有無だけで決まらず、業務起因性や通勤該当性を見ます
労災保険労働者や遺族に療養、休業、障害、遺族等の給付を行う制度正社員だけの制度であるパート、アルバイト、契約社員なども労働実態に応じて問題になります
未加入・未手続成立手続、保険料申告、対象者把握が適切に行われていない状態未加入なら労災保険は使えない労働者保護は問題となり、会社側に費用徴収等の負担が生じ得ます
労災隠し未報告、虚偽報告、健康保険処理誘導、記録改変など申請を止めれば監督署に知られない医療記録、内部通報、家族、取引先、SNSなどから発覚し得ます

未加入という言葉には複数の状態が含まれます。次の一覧は、成立手続、保険料、対象労働者、事業所・現場単位の手続、民間保険との混同を分けたものです。どの分類に該当するかを読み取ることで、是正すべき部署と資料が明確になります。

未手続 1

成立手続の未了

労働保険の成立手続をしていない状態です。新規事業、支店、店舗、工事現場で起こりやすい論点です。

未手続 2

保険料申告納付の漏れ

概算保険料や確定保険料の申告納付が適切でない状態です。経理・労務連携の不足が背景になり得ます。

未手続 3

対象労働者の誤認

アルバイト、短時間労働者、派遣、委託、一人親方、役員、家族従事者の区分管理が曖昧な状態です。

未手続 4

民間保険との混同

雇用保険、社会保険、民間傷害保険で足りると誤解している状態です。公的労災保険とは別制度です。

注意労災隠しは、被災労働者の権利救済を遅らせるだけでなく、同じ危険源を放置し、再発事故を招く危険があります。企業法務では、単なる手続違反ではなく、危機管理と内部統制の問題として扱います。
Section 02

労災隠し・未加入のリスクを生む法制度の骨格

報告義務、給付請求、健康保険処理、費用徴収を分けます

労災隠し・未加入のリスクは、労働者死傷病報告、労災保険給付の請求、健康保険処理、未手続事業主への費用徴収という4つの制度が重なるところで発生します。制度の機能を取り違えると、報告義務を保険給付の判断書類のように扱ってしまいます。

次の比較表は、法制度の骨格を4つに分けたものです。列は「制度の役割」「会社の注意点」「誤った対応」に分けています。報告、請求、切替、費用負担の違いを読み取ることで、どの義務を先に処理すべきかが分かります。

制度役割会社の注意点誤った対応
労働者死傷病報告行政への事故報告、安全衛生行政の基礎資料死亡または休業4日以上と4日未満で提出時期・様式が異なります給付支給の判断書類と誤解し、提出を遅らせる
労災保険給付の請求被災労働者または遺族への公的給付会社は証明・資料提供に協力し、見解は別途整理します会社が労災ではないと考えて請求を妨げる
健康保険からの切替誤って健康保険を使った場合の是正医療機関、保険者、労基署に確認します会社都合で健康保険のままにする
未手続時の費用徴収成立手続を怠った事業主への負担遡及保険料、追徴金、40%または100%の徴収が問題になります未加入だから労災にしないと判断する

電子申請義務化は、責任所在の可視化にもつながります。次の重要ポイントは、2025年1月1日以降の労働安全衛生関係手続を意識した体制整備の要点です。入力、承認、添付資料、控え保存のどこに責任があるかを確認してください。

2025年1月1日以降、労働者死傷病報告など一部手続は電子申請が義務化されています

電子申請では、アカウント、権限管理、入力責任者、承認手順、添付資料、控えの保管、法務・労務・現場の連携が必要です。紙の様式を出せる担当者がいるだけでは不十分です。

労災隠しが疑われる場合、事故直後の記録改変、後追いの書類作成、関係者への口裏合わせ依頼は事案を悪化させます。医療機関の記録、勤怠、現場写真、チャット、消防や警察の記録などから、隠蔽意図が推認される可能性があります。

Section 03

労災隠し・未加入のリスクが会社へ広がる経路

行政、財務、民事、役員責任、信用を同時に管理します

労災隠し・未加入のリスクは、事故発覚後に同時多発的に広がります。行政調査だけでなく、民事賠償、会計・税務、役員責任、和解交渉、報道対応が重なり、会社の対応力そのものが問われます。

次のリスク一覧は、刑事・行政、財務、民事、役員・管理職、信用という観点で重要項目を整理したものです。各項目は単独ではなく連鎖しやすいため、どの部門が関与すべきかを読み取ることが重要です。

刑事・行政

労働者死傷病報告の未提出・虚偽報告、休業日数や事故原因の偽装、監督署の是正、送検、公表が問題になります。

財務

遡及保険料、10%の追徴金、保険給付額の40%または100%の費用徴収、調査費用、訴訟費用が問題になります。

民事

安全配慮義務違反、使用者責任、治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、葬儀費用、遅延損害金が争点になります。

役員・管理職

取締役の善管注意義務、内部統制システム構築義務、現場管理職の指示や口止め発言が責任追及につながる可能性があります。

会計・税務・監査

偶発債務、引当金、適時開示、損金算入時期、見舞金や和解金の性質、監査対応が問題になります。

信用・採用・取引

報道、SNS、行政公表、取引先監査、公共調達、採用活動、従業員の信頼低下に波及します。

管理職の発言は、労災隠しの意図を推認させる重要な資料になることがあります。次の比較表は、避けるべき発言と、事故直後に使うべき説明を対比したものです。左列のような言い方を避け、右列のように治療、報告、協力、再発防止へつなげる読み方をしてください。

避けるべき発言適切な初動説明
労災にすると会社が困るまず治療を優先してください。業務中の事故として会社に報告します。
自分の不注意だから私傷病にして事故状況を確認し、必要な労災保険手続について人事労務から説明します。
健康保険で受診して労災に該当する可能性があるため、医療機関にもその可能性を伝えてください。
元請に言わないで契約や安全衛生上の報告要否を確認し、必要な相手に正確に報告します。
書類上は別の日にして事実関係を確認し、記録改変や後付け作成をしない形で整理します。
申請すると評価に響く会社として必要な書類作成に協力し、権利行使を妨げる扱いはしません。
重要事故後に隠蔽を重ねると、元の事故よりも会社対応の悪質性が重く評価される可能性があります。記録改変、口裏合わせ、虚偽説明、不当な口止めは、最優先で禁止すべき行為です。
Section 04

業種別に見る労災隠し・未加入のリスク

事故類型と取引への波及を業種ごとに確認します

労災隠し・未加入のリスクは、業種ごとに発生しやすい場面が異なります。建設、製造、運送、飲食・小売、医療・介護・保育、スタートアップ・ITでは、事故類型、関係者、証拠、取引への波及が変わります。

次の比較表は、業種ごとの典型リスクと重点管理項目を示したものです。左列で業種を確認し、中央列で事故や未手続が起きやすい場面、右列で優先して整備すべき証拠と管理策を読み取ってください。

業種典型的な問題重点管理項目
建設業元請・下請・一人親方・短期作業者が混在し、墜落、重機、熱中症、石綿が問題現場入場管理、特別加入、労働者性、元請報告、KY活動、教育記録
製造業・倉庫業機械巻き込まれ、挟まれ、切創、フォークリフト、化学物質、夜勤設備保全、作業手順、安全装置、保護具、教育、監視映像
運送業・物流業交通事故、荷役災害、腰痛、長時間労働、過労運転、委託運転者点呼、アルコールチェック、勤怠、運行管理、第三者行為災害
飲食・小売・サービス業学生アルバイト、外国人スタッフ、火傷、転倒、切創、深夜労働店長教育、事故時説明、シフト管理、労働保険手続、店舗単位の報告
医療・介護・保育腰痛、感染症、針刺し、暴力、夜勤、メンタルヘルス、介助中事故インシデント報告、感染対策、現場責任者・労務・法務の情報共有
スタートアップ・IT長時間労働、メンタルヘルス、リモートワーク、業務委託との境界、役員の労働者性勤怠、労働保険手続、産業医、安全衛生体制、IPO向け労務点検

M&A、取引審査、IPOでは、労災隠し・未加入は単独の労務ミスではなく、未払残業代、偽装請負、派遣法違反、内部通報制度不備と併発する重大指摘になり得ます。次の一覧は、買主や審査側が確認しやすい資料をまとめたものです。

1

労働保険の適用資料

成立届、概算・確定保険料申告書、事業所別・現場別の適用状況を確認します。

適用状況
2

事故・報告資料

過去5年程度の労災事故一覧、労働者死傷病報告の控え、会社証明履歴を確認します。

事故履歴
3

安全衛生・通報資料

安全衛生委員会議事録、行政指導、是正勧告、内部通報・労務相談記録を確認します。

統制確認
4

紛争・取引資料

訴訟、和解、示談資料、元請・取引先への事故報告記録を確認します。

表明保証
Section 05

労災隠し・未加入のリスクが発覚した場合の初動対応

隠蔽を重ねず、被災者保護と是正手続を同時に進めます

労災隠し・未加入が発覚した場合に最も重要なのは、隠蔽を重ねないことです。治療・生活確保、事実確認、証拠保全、必要な報告、労災請求への協力、再発防止を同時に進める必要があります。

次の判断の流れは、事故または未手続が発覚した後の基本的な対応順を示しています。上から下へ進むほど、被災者保護、証拠、報告、是正、再発防止へ移ります。分岐部分では、健康保険処理や未手続の有無に応じて追加対応が必要になります。

発覚後の初動手順

被災者の治療・生活確保

救護、医療機関、家族連絡、休業中の窓口を整えます

事実確認と証拠保全

事故日時、場所、作業内容、指示者、休業見込み、記録を保全します

健康保険処理や未手続はあるか

処理状況と成立手続を確認します

問題あり
是正手続を確認

医療機関、保険者、監督署、労働局、社労士へ相談します

問題なし
通常手続を継続

報告、請求協力、再発防止へ進みます

経営・法務・労務・広報の連携

重大事案では外部専門家も含めて対応を統合します

再発防止と経営報告

暫定措置、本格措置、教育、設備改善、監査確認を行います

事故発生直後は、具体的な担当と対応内容を漏れなく並べることが必要です。次の表は、救護、安全確保、証拠保全、速報、事実確認、手続確認、対外対応、再発防止を段階別に示します。各段階の順番と記録対象を読み取り、責任者を割り当ててください。

段階対応内容
救護救急搬送、応急処置、医療機関への説明、家族連絡
安全確保機械停止、現場隔離、二次災害防止、危険源除去
証拠保全現場写真、動画、設備状態、作業記録、勤怠記録、関係者メモ
速報経営、人事労務、法務、コンプライアンス、安全衛生責任者へ報告
事実確認事故日時、場所、作業内容、指示者、原因、休業見込み、診断内容
手続確認労働者死傷病報告、労災保険請求、健康保険使用、第三者行為の有無
対外対応監督署、元請・取引先、保険会社、顧問弁護士・社労士との連携
再発防止暫定措置、本格措置、教育、設備改善、手順見直し
是正の視点過去の未提出、虚偽提出、健康保険使用、未手続が判明した場合は、放置せず、事実調査、証拠保全、監督署・労働局への相談、被災者対応、再発防止策を検討します。過去の隠蔽を重ねることが最も危険です。
Section 06

労災隠し・未加入のリスクを防ぐ内部統制

三線モデル、RACI、規程、教育で隠さない仕組みを作ります

労災隠し・未加入を防ぐには、現場任せでは足りません。現場、人事労務・法務・安全衛生、内部監査・監査役がそれぞれ独立した役割を持ち、事故情報を経営に上げる仕組みが必要です。

次の比較表は、三線モデルに沿って役割を整理したものです。第1線、第2線、第3線の列を読み、現場だけに事故対応を閉じ込めないための統制ポイントを確認してください。

担当役割
第1線現場、店長、工場長、支店長事故予防、初動報告、現場保全、労働者対応
第2線人事労務、法務、コンプライアンス、安全衛生、リスク管理ルール整備、教育、手続確認、監督署対応、再発防止支援
第3線内部監査、監査役、監査等委員独立評価、未手続・未報告の検出、経営への報告

責任分担が曖昧だと、事故時に誰も最終判断をしない状態になります。次のRACI表は、実行、最終責任、相談、報告を業務別に分けたものです。横方向に読むことで、誰が手を動かし、誰が責任を持ち、誰へ相談・報告するかを確認できます。

業務実行最終責任相談報告
事故発生時の救護現場責任者事業所長安全衛生担当人事労務・法務
労働者死傷病報告人事労務・安全衛生労務責任者社労士・法務経営・内部監査
労災保険請求支援人事労務労務責任者社労士・弁護士本人・上長
重大事故の調査法務・安全衛生経営陣外部弁護士・専門家監査役・取締役会
再発防止策現場・安全衛生事業部長労務・法務全社
未加入点検人事労務・経理管理部門責任者社労士・税理士経営・監査

社内規程には、事故定義、報告基準、電子申請、請求協力、健康保険処理の是正、記録改変禁止、元請・派遣先との連絡、取締役会報告基準まで入れる必要があります。次の一覧は、規程と教育で特に確認すべき要素を並べています。

規程

事故報告基準

休業の有無にかかわらない社内報告基準、死亡・重傷・報道可能性がある場合の緊急報告基準を定めます。

手続

電子申請と控え保存

担当部署、期限、承認者、添付資料、控えの保管、権限管理を明確にします。

禁止

記録改変・申請妨害の禁止

口裏合わせ、後付け資料作成、健康保険処理誘導、評価への報復を明確に禁止します。

統治

経営・監査への報告

重大事故、隠蔽疑義、未手続判明時に、取締役会、監査役、内部監査へ報告する基準を設けます。

Section 07

労災隠し・未加入のリスクに関するFAQ

一般情報として整理し、個別判断に見えない表現にします

ここでは、労災隠し・未加入のリスクについて、企業実務で誤解されやすい質問を一般情報として整理します。個別の事故態様、雇用形態、就業実態、報告期限、監督署対応、既払金の性質、過去の対応履歴によって結論は変わるため、具体的な対応は専門家へ確認する必要があります。

労災申請をすると会社が全面的に非を認めたことになりますか

一般的には、労災保険給付の請求と会社の民事上の安全配慮義務違反の有無は別問題とされています。ただし、会社が確認した事実や提出資料は後の紛争で参照される可能性があります。事実関係と会社見解を分けて整理する必要があります。

従業員本人が労災にしなくてよいと言った場合、会社は何もしなくてよいですか

一般的には、労働者死傷病報告は一定の死亡・休業事案について事業者に課される報告義務であり、本人の希望だけで免れるものではありません。事故記録、再発防止、請求協力の要否も別途確認する必要があります。

アルバイトの軽いけがでも労災保険は問題になりますか

一般的には、労働者として使用されている場合、アルバイトであることだけを理由に対象外とはされません。ただし、業務上の負傷か、治療や休業の有無、報告義務の要否によって実務対応が変わります。事故後の休業見込みと医療記録を確認する必要があります。

会社が労災保険に未手続の場合、従業員は給付を受けられませんか

一般的には、事業主が成立手続をしていない場合でも、被災労働者に対する給付は問題となります。一方で、未手続の事業主には遡及保険料、追徴金、保険給付額の一部または全部の費用徴収が課される可能性があります。

健康保険で受診してしまった後でも労災に切り替えられますか

一般的には、業務上または通勤による負傷・疾病であることが判明した場合、健康保険から労災保険への切替、医療費の返還、労災保険への請求が必要となる可能性があります。医療機関、保険者、労基署へ早期に確認する必要があります。

休業4日未満なら労災隠しにはなりませんか

一般的には、休業4日未満でも労働者死傷病報告の提出が必要となる場合があります。死亡または休業4日以上の事案とは提出時期・様式が異なるため、休業日数だけで報告不要と決めつけることは避ける必要があります。

一人親方・フリーランスは労災保険の対象外ですか

一般的には、一人親方、フリーランス、事業主、役員などは通常の労働者とは異なる扱いになる場合があります。ただし、実態として指揮命令下で労務提供している場合は労働者性が問題となります。特別加入制度の確認も必要です。

過去の労災隠しが判明した場合、今から修正できますか

一般的には、過去の未提出、虚偽提出、健康保険使用、未手続が判明した場合、放置せず、事実調査、証拠保全、関係者ヒアリング、監督署・労働局への相談、被災者対応、再発防止策を検討する必要があります。対応方針は事案ごとに変わります。

Reference

労災隠し・未加入のリスクの参考資料

参考資料は、公的機関の資料を中心に整理しています。実務で利用する場合は、最新の法令、通達、様式、所轄労働基準監督署・労働局の案内を確認してください。

主要な公的資料

  • 厚生労働省「労災補償」
  • 山口労働局「いわゆる労災かくしの排除について」
  • 厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」
  • 岡山労働局「労働保険の成立手続を怠っている事業主に対する費用徴収制度」
  • 長崎労働局「会社が労災保険に加入していない場合の労災補償」
  • 福井労働局「労災保険と使用者の災害補償責任」
  • 厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」
  • 厚生労働省「労災保険給付の概要」
  • 厚生労働省「労災保険への特別加入」
  • 厚生労働省「労災保険への加入について」