2σ Guide

退職勧奨の
スクリプト作成

退職勧奨を単なる面談台本ではなく、任意性、正確性、相当性、透明性、記録可能性を整える企業法務上の手続として設計するための実務整理です。

9部基本構成
30-60分初回面談の目安
13項目合意書の確認軸
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退職勧奨の スクリプト作成

退職勧奨を単なる面談台本ではなく、任意性、正確性、相当性、透明性、記録可能性を整える企業法務上の手続として設計するための実務整理です。

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退職勧奨の スクリプト作成
退職勧奨を単なる面談台本ではなく、任意性、正確性、相当性、透明性、記録可能性を整える企業法務上の手続として設計するための実務整理です。
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  • 退職勧奨の スクリプト作成
  • 退職勧奨を単なる面談台本ではなく、任意性、正確性、相当性、透明性、記録可能性を整える企業法務上の手続として設計するための実務整理です。

POINT 1

  • 退職勧奨のスクリプト作成の全体像
  • 会社の提案を明確に伝えつつ、労働者の自由な意思決定を妨げない面談設計が出発点です。
  • 中心命題は説得ではなく、任意性と検証可能性の確保です
  • 退職勧奨のスクリプト作成は、従業員に退職を促す言い回しを整える作業にとどまりません。
  • 任意の意思形成を妨げたり名誉感情を害したりする言動は、不法行為となる場合があります。

POINT 2

  • 退職勧奨のスクリプト作成で区別すべき基礎概念
  • 退職勧奨、退職強要、合意退職、解雇を混同すると、文言全体が危険な方向に傾きます。
  • 退職勧奨
  • 退職強要
  • 合意退職

POINT 3

  • 退職勧奨のスクリプト作成前に行う事前審査
  • 1. 目的と背景を確認:組織再編、職務適合性、非違行為、健康状態など、提案理由を特定します。
  • 2. 対象者選定を確認:差別、報復、内部通報、組合活動との関係を確認します。
  • 3. 資料と規程を確認:就業規則、評価記録、業務改善指導、再配置検討、退職金規程を確認します。
  • 4. 健康情報や配慮事項があるか:病歴、休復職、障害、産業医意見が関係する場合は取扱い範囲を絞ります。
  • 5. 文案作成へ進む:任意性、検討期間、拒否可能性、条件提示、記録方法を入れた文案に進みます。

POINT 4

  • 退職勧奨のスクリプト作成における基本構造と文例
  • 1. 面談の目的説明:今後の雇用関係について会社から一つの提案を伝え、意見を伺う場であることを説明します。
  • 2. 任意性・検討機会の明示:この場で退職を決めるものではなく、応じるかどうかは本人が判断できることを明示します。
  • 3. 会社側の事情説明:組織再編、業務量、評価経緯、配置可能性などを、人格評価と切り分けて説明します。
  • 4. 事実・提案・条件案:本人に関する事実と評価、合意退職の提案、退職日や特別退職金等の条件案を順に説明します。
  • 5. 意見聴取と終了文言:本人の意見を聴取し、回答期限、次回手続、保留時・拒否時の終了文言を明確にします。

POINT 5

  • 退職勧奨のスクリプト作成と面談運営・条件設計
  • 人数、時間、場所、録音、再面談、退職条件、離職票、退職合意書まで一体で整えます。
  • 退職条件案に含める項目
  • 雇用保険・離職票の説明
  • 退職合意書と退職届の使い分け

POINT 6

  • 退職勧奨のスクリプト作成を社内ガバナンスに組み込む
  • 1. 対象者・法的論点・外部レビュー:人事が背景事情を整理し、法務が論点を確認し、必要に応じて外部弁護士レビューを受けます。
  • 2. 予算・資料・リハーサル:退職条件の予算承認、文案・資料・合意書の最終確認、担当者へのリハーサルを行います。
  • 3. 面談・記録・回答対応:面談を実施し、議事録を作成し、質問や条件交渉に対応し、合意書締結または面談終了処理を行います。

POINT 7

  • 退職勧奨のスクリプト作成チェックリストと完成版テンプレート
  • 事前、面談中、事後に分けて確認し、最後に汎用文案へ落とし込みます。
  • 汎用テンプレート
  • チェックリストは、退職勧奨のスクリプト作成が言葉だけに偏っていないかを確認するためのものです。
  • 退職勧奨のスクリプト作成で最も重要なのは、会社の提案を明確に伝えながら、労働者の自由な意思決定を妨げないことです。

POINT 8

  • 退職勧奨のスクリプト作成に関するFAQ
  • よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。個別案件の結論は事情により変わります。
  • Q1. 退職勧奨は解雇と同じですか
  • Q2. 退職勧奨を拒否された後も面談できますか
  • Q3. 退職条件は口頭で伝えれば足りますか

まとめ

  • 退職勧奨の スクリプト作成
  • 退職勧奨のスクリプト作成の全体像:会社の提案を明確に伝えつつ、労働者の自由な意思決定を妨げない面談設計が出発点です。
  • 退職勧奨のスクリプト作成で区別すべき基礎概念:退職勧奨、退職強要、合意退職、解雇を混同すると、文言全体が危険な方向に傾きます。
  • 退職勧奨のスクリプト作成前に行う事前審査:面談直前に台本だけを作るのではなく、対象者選定、法的根拠、証拠、健康情報を先に確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

退職勧奨のスクリプト作成の全体像

会社の提案を明確に伝えつつ、労働者の自由な意思決定を妨げない面談設計が出発点です。

退職勧奨のスクリプト作成は、従業員に退職を促す言い回しを整える作業にとどまりません。企業法務上は、会社の課題、評価や配置の事情、組織再編の背景、退職条件、再就職支援、面談運営、証跡管理を一体で整えるリスク管理手続です。

厚生労働省の整理では、退職勧奨は使用者が自発的な退職意思の形成を働きかける行為であり、勧奨を受ける者は理由を問わず拒否できるものとされています。任意の意思形成を妨げたり名誉感情を害したりする言動は、不法行為となる場合があります。

次の重要ポイントは、退職勧奨のスクリプト作成で最初に押さえるべき評価軸を示しています。面談文言だけを見直すのではなく、目的、資料、条件、記録まで整っているかを読むことが重要です。

中心命題は説得ではなく、任意性と検証可能性の確保です

よいスクリプトは、退職させる成功率を上げる台本ではありません。後から検証されても、会社の提案が公正で、任意で、相当だったと説明できる面談の設計図です。

退職勧奨のスクリプト作成で想定すべきリスクを一覧にします。各列は、問題となる言動、紛争化した場合の主な争点、会社側で事前に抑えるべき管理点を対応づけています。

リスク類型典型例主な結果
退職強要応じなければ解雇する、今日中に退職届を書けと迫る退職意思表示の無効、取消し、損害賠償、地位確認請求
不法行為侮辱、威圧、長時間面談、反復面談、孤立化慰謝料、会社と担当者への責任追及
パワーハラスメント優越的関係を背景に必要かつ相当な範囲を超える言動をするハラスメント申告、行政対応、再発防止措置、信用毀損
解雇紛争化実質的には解雇なのに合意退職として処理する解雇権濫用、バックペイ、復職請求
個人情報・健康情報病歴、メンタルヘルス、家族事情を不用意に取得・共有する個人情報保護、プライバシー侵害、安全配慮義務上の問題
雇用保険・離職票退職勧奨なのに自己都合として処理する離職理由の異議、ハローワーク対応、労使対立
注意企業側に必要なのは、辞めさせるための話法ではなく、違法な心理的圧迫を避けながら会社の提案を明確に伝え、労働者に検討機会を保障する面談設計です。
Section 01

退職勧奨のスクリプト作成で区別すべき基礎概念

退職勧奨、退職強要、合意退職、解雇を混同すると、文言全体が危険な方向に傾きます。

退職勧奨は、会社が従業員に対して退職を選択肢として提案し、合意退職を目指す働きかけです。解雇のように会社が一方的に労働契約を終了させるものではなく、労働者の自由意思に基づく合意が前提になります。

次の一覧は、退職勧奨のスクリプト作成で混同しやすい4つの概念を並べたものです。どの概念に当たるかで、許される文言、必要な資料、書面化の方法が変わるため、面談前に区別して読む必要があります。

Concept 01

退職勧奨

会社から合意退職を提案する行為です。応じるか拒否するかは労働者が自由に判断できることが前提です。

Concept 02

退職強要

形式は勧奨でも、実際には自由な意思決定を妨げ、退職を事実上強制する行為です。

Concept 03

合意退職

会社と労働者が合意により労働契約を終了させることです。退職条件と意思確認の書面化が重要です。

Concept 04

解雇

会社が労働者の意思にかかわらず一方的に労働契約を終了させる行為です。労働契約法16条の制約を受けます。

退職強要と評価されやすい典型例

  • 拒否した者に対し、合理的根拠なく解雇を告げる。
  • 長時間または多数回の面談を繰り返し、精神的に追い詰める。
  • 複数名で囲み、退職届の作成を迫る。
  • 退職しない限り仕事を与えない、異動先はないと断定する。
  • 能力、人格、病歴、家庭事情を侮辱する。
  • 退職に応じないことを理由に嫌がらせや孤立化を行う。

合意退職を有効に近づける確認事項

  1. 労働者が退職しない選択肢を理解している。
  2. 退職条件、退職日、金銭、社会保険、離職票、有給休暇等を理解している。
  3. 会社が虚偽説明、威迫、人格攻撃、過度な反復面談をしていない。
  4. 検討期間が確保されている。
  5. 書面化された内容が、実際の合意内容と一致している。

次の比較表は、事実、評価、提案、条件をどのように分けて表現するかを示します。列ごとの差は、発言が人格攻撃や強制に傾いていないかを確認するために重要です。

区分望ましい表現問題になりやすい表現
事実2025年4月から9月までの評価面談で、納期遅延が合計5件記録されています何をやってもだめです
評価期待している職務水準との乖離が大きいと会社は判断しています会社に不要です
提案合意退職という選択肢を提案します辞めるしかありません
条件特別退職金として○円を提案します今日署名すれば払うが、拒否すれば何もない
重要この提案を受けなければ解雇です、といった表現は、解雇が法的に成立し得る客観的資料、就業規則上の根拠、手続相当性がある場合を除き避けるべき表現です。
Section 02

退職勧奨のスクリプト作成前に行う事前審査

面談直前に台本だけを作るのではなく、対象者選定、法的根拠、証拠、健康情報を先に確認します。

退職勧奨のスクリプト作成では、目的、対象者選定、面談方法、頻度、人数、場所、所要時間、条件提示の内容が相当であることが求められます。パワーハラスメント指針でも、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動は問題となり得ます。

対象者選定の審査

  • 性別、年齢、国籍、障害、病歴、妊娠・出産、育児・介護、労働組合活動、内部通報、ハラスメント相談、労基署申告等を理由にしていないかを確認します。
  • 過去の評価記録、業務改善指導、配置転換検討、組織再編資料と整合しているかを確認します。
  • 同種事案との均衡があり、対象者だけが不自然に厳しく扱われていないかを確認します。

解雇・懲戒・雇止めとの関係審査

退職勧奨が、実質的な解雇、懲戒、雇止めを隠すために使われていないかを確認します。整理解雇に近い局面では、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の妥当性に相当する説明資料が存在するかも確認します。

証拠・資料の審査

低パフォーマンスを理由とする場合は、職務記述書、役割定義、期待成果、評価制度、評価シート、評価面談記録、業務改善指導書、PIP、注意指導メール、教育機会や配置転換検討の有無を整理します。組織再編を理由とする場合は、組織再編の決定資料、人員計画、職務廃止・縮小の根拠、代替配置可能性、対象者選定基準を確認します。

次の判断の流れは、退職勧奨のスクリプト作成に入る前に止めるべき案件と、文案作成に進める案件を分けるためのものです。上から順に確認し、途中で資料不足や差別的要素が見つかれば、面談文言より先に事実整理をやり直す必要があります。

事前審査の判断の流れ

目的と背景を確認

組織再編、職務適合性、非違行為、健康状態など、提案理由を特定します。

対象者選定を確認

差別、報復、内部通報、組合活動との関係を確認します。

資料と規程を確認

就業規則、評価記録、業務改善指導、再配置検討、退職金規程を確認します。

健康情報や配慮事項があるか

病歴、休復職、障害、産業医意見が関係する場合は取扱い範囲を絞ります。

文案作成へ進む

任意性、検討期間、拒否可能性、条件提示、記録方法を入れた文案に進みます。

健康情報や休復職が関係する案件では、次の注意要素を個別に確認します。各項目は、退職理由と健康情報の取扱いを混同しないために重要で、会社側の説明が職務上の事実と必要な配慮に限定されているかを読み取ります。

病名を退職理由にしない

診断名や治療内容の詳細ではなく、就業状況、必要な配慮、職務との適合性を分けて説明します。

要配慮情報を限定する

健康情報は必要最小限の範囲で、産業医や限定された人事担当者により取り扱う前提を整えます。

配慮検討を記録する

就業可能性、合理的配慮、配置可能性、復職支援の検討を、退職提案と区別して記録します。

文案例本日の面談では、健康情報の詳細に立ち入ることを目的としていません。会社としては、現在の就業状況、必要な配慮、今後の職務との適合性について、既に共有されている範囲の情報を前提にお話しします。
Section 03

退職勧奨のスクリプト作成における基本構造と文例

面談開始、任意性、会社事情、提案、意見聴取、保留・拒否時の終了文言を順番に設計します。

実務で使いやすい退職勧奨スクリプトは、9部構成で整理します。各段階の順番は、労働者が何を聞き、何を検討し、どこで回答を保留できるかを理解するために重要です。

Step 01

面談の目的説明

今後の雇用関係について会社から一つの提案を伝え、意見を伺う場であることを説明します。

Step 02

任意性・検討機会の明示

この場で退職を決めるものではなく、応じるかどうかは本人が判断できることを明示します。

Step 03

会社側の事情説明

組織再編、業務量、評価経緯、配置可能性などを、人格評価と切り分けて説明します。

Step 04-06

事実・提案・条件案

本人に関する事実と評価、合意退職の提案、退職日や特別退職金等の条件案を順に説明します。

Step 07-09

意見聴取と終了文言

本人の意見を聴取し、回答期限、次回手続、保留時・拒否時の終了文言を明確にします。

面談開始の基本文例

  • 本日はお時間をいただきありがとうございます。本日の面談は、今後の雇用関係について、会社から一つの提案をお伝えし、ご意見を伺うためのものです。
  • 最初に確認しますが、本日の話は会社からの提案であり、この場で退職を決めていただくものではありません。応じるかどうかは、ご自身で判断いただけます。
  • 説明後、資料をお渡しします。必要であれば、ご家族、専門家、労働組合等に相談していただいて構いません。

会社事情の説明文例

組織再編型では、事業の収益低下、業務量減少、部門縮小、配置転換や業務再配分の検討状況を説明します。低パフォーマンス型では、評価面談、業務改善に関する話し合い、担当業務の状況を踏まえ、現在の職務で期待している水準との乖離が継続しているという会社の判断を説明します。

退職提案と本人意見の文例

  • 以上の状況を踏まえ、会社としては、合意退職という選択肢を提案します。これは会社からの提案であり、応じる義務はありません。
  • 退職に応じていただく場合の条件案は、退職日を○年○月○日、特別退職金を○円、未消化有給休暇の取扱いを○○、再就職支援を○○とする内容です。
  • ここまでの説明について、事実関係や会社の認識に違う点があれば教えてください。
  • 退職条件について確認したい点、追加で検討してほしい点があれば伺います。

保留時・拒否時の終了文例

保留時は、提案内容を伝えるところまでで区切り、資料を持ち帰って検討できること、回答期限、質問方法を案内します。拒否時は、退職提案には応じない意思を確認し、退職提案に関する面談を終了します。拒否するなら解雇、後悔する、居場所はないと続けることは避けます。

典型場面別の違いは、会社事情の説明と注意すべきリスクに表れます。次の一覧では、各場面で何を説明し、どこに踏み込みすぎないかを対応づけています。

1

組織再編・事業縮小型

部門縮小、業務量減少、配置転換や業務再配分の検討状況を資料に沿って説明します。

事業背景人選注意
2

職務適合性・パフォーマンス型

評価期間、改善項目、面談日、職務水準との乖離を、人格評価から切り離して説明します。

評価記録人格攻撃禁止
3

非違行為・懲戒検討型

調査、弁明機会、就業規則上の根拠、懲戒相当性を確認し、退職提案と懲戒判断を分けて説明します。

調査強迫注意
4

健康状態・休復職関連型

診断名や治療内容の詳細ではなく、就業状況、必要な配慮、職務継続の可能性を中心に扱います。

配慮健康情報
5

希望退職・早期退職制度型

制度への応募は任意であり、応募しないことを理由に不利益に扱わないことを説明します。

制度説明平等性

次の比較表は、退職勧奨のスクリプト作成で避けるべき言い回しと、より相当性を保ちやすい言い換えを示しています。左列の論点ごとに、圧迫や誤認につながる表現を右側の表現へ置き換えることが重要です。

論点避けるべき表現推奨される表現
任意性辞めてもらうことは決定です会社から合意退職を提案します。応じるかどうかはご判断いただけます
解雇応じなければ解雇です本提案に応じない場合の取扱いは、法令・就業規則・業務上の必要性に基づき別途検討します
人格評価会社に不要です現在の職務で期待される水準との乖離があると会社は判断しています
長時間圧迫納得するまで終わりません本日は○分程度を予定しています。必要に応じて休憩や次回面談を設定します
退職届今ここで退職届を書いてください合意する場合は、内容を確認したうえで退職合意書を作成します
体調病気だから辞めてください健康情報の詳細には立ち入らず、就業可能性と必要な配慮について別途適切に確認します
Section 04

退職勧奨のスクリプト作成と面談運営・条件設計

人数、時間、場所、録音、再面談、退職条件、離職票、退職合意書まで一体で整えます。

面談運営は、スクリプトの任意性を実際に支える部分です。会社側は原則2名程度とし、1名は説明担当、もう1名は記録担当とします。初回面談は30分から60分程度を目安にし、説明、質疑、本人意見、検討期間の案内で終了します。

次の比較表は、面談運営の主要項目ごとに、望ましい設定と避けたい設定を整理したものです。人数、時間、場所、記録の扱いは、労働者が圧迫を受けたと感じるかどうかに直結するため、各行の違いを確認します。

項目望ましい設計避けたい設計
面談人数説明担当と記録担当の2名程度1対4、1対5など圧迫を感じやすい人数
面談時間初回は30分から60分程度を目安にし、必要に応じて休憩を入れる休憩なしに長時間説得を続ける
場所閉鎖的・威圧的にならない会議室を選ぶ逃げ場のない小部屋、周囲から見える場所、同僚に聞こえる場所
録音・議事録録音されても問題のない発言を前提に、日時、参加者、説明内容、本人発言、交付資料を記録する録音禁止を強く迫る、議事録を残さない
再面談質問、新条件、誤解の補足、本人の再検討希望がある場合に限る拒否後も同じ理由と条件で説得を繰り返す

退職条件案に含める項目

  • 退職日、退職理由の記載方法、通常退職金、特別退職金または解決金。
  • 未払賃金、残業代、賞与、インセンティブ、未消化年次有給休暇の取扱い。
  • 在籍中の業務引継ぎ、競業避止、秘密保持、会社財産返還。
  • 貸与品、データ、アカウントの返却・削除、社宅、通勤手当、福利厚生、社会保険、健康保険任意継続。
  • 離職票、源泉徴収票、退職証明書、再就職支援、口外禁止・非誹謗条項、清算条項。
金銭条件通常退職金は退職金規程に基づき算定し、会社からの提案に応じて合意退職する場合の特別退職金を別枠で提示します。未払賃金や残業代など法令・社内規程に基づく支払義務があるものは、退職条件案とは別に適切に支払う前提で説明します。

雇用保険・離職票の説明

ハローワークは、特定受給資格者の範囲の一つとして、事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者を掲げています。ただし、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等への応募による離職は、別の整理になります。

そのため、退職勧奨による合意退職であるにもかかわらず、形式的に一身上の都合とする退職届を求めると、後日の離職理由争いを招きやすくなります。離職票の離職理由は、実際の退職経緯に基づき、法令とハローワークの取扱いに従って記載するという説明に寄せます。

退職合意書と退職届の使い分け

退職勧奨の場面では、原則として退職届ではなく退職合意書を検討します。退職届は労働者が自ら退職意思を表明する一方的書面であり、退職勧奨の実態とずれると、会社から退職を迫られたのに自己都合とされたという争いを招きます。

退職合意書で確認すべき条項は多岐にわたります。次の一覧は、退職日から任意意思の確認まで、抜けがあると後日の紛争につながりやすい項目を順に並べています。

A

退職と金銭

退職日、退職の性質、最終出勤日、賃金、退職金、特別退職金、年次有給休暇を確認します。

条件
B

手続と返還

社会保険・雇用保険手続、貸与物、機密情報、データ、アカウントの返還・削除を定めます。

手続
C

退職後の義務

秘密保持、競業避止、勧誘禁止、誹謗中傷禁止、清算条項の射程を確認します。

退職後
D

任意意思の確認

署名日、検討期間、第三者相談の機会、自由な意思に基づく合意であることを確認します。

任意性

再就職支援会社を利用する場合

退職提案を行う主体は会社であり、再就職支援会社ではありません。再就職支援会社は、退職を決めた者または制度説明を希望する者に対し、支援内容を説明する立場にとどめ、退職強要に該当する行為やそのためのマニュアル提供に関与させない設計が必要です。

Section 05

退職勧奨のスクリプト作成を社内ガバナンスに組み込む

人事だけで抱えず、法務、社労士、コンプライアンス、内部監査、プライバシー担当と役割を分けます。

退職勧奨は、人事部だけの案件ではありません。法務リスク、労務手続、個人情報、健康情報、内部通報、ハラスメント、予算承認、証拠管理が交差するため、関係者の役割を事前に定義します。

次の表は、退職勧奨のスクリプト作成に関わる社内外の関係者と役割を整理したものです。どの部署が何を確認するかを明確にすることで、面談担当者がその場で無理に判断するリスクを下げます。

関係者主な役割
人事労務担当事実整理、面談運営、退職条件、社会保険・雇用保険手続
法務担当・企業内弁護士違法リスク、合意書、証拠、紛争対応、面談文言レビュー
外部弁護士高リスク案件の法的評価、交渉方針、訴訟・労働審判対応
社会保険労務士就業規則、労務手続、離職票、労働保険・社会保険実務
コンプライアンス担当ハラスメント、差別、内部通報との関係確認
内部監査担当対象者選定や手続の適正性、証跡管理の検証
プライバシー担当個人情報、健康情報、録音・議事録、外部委託管理
経営層事業上の必要性、組織再編方針、予算承認、説明責任

承認手順は、対象者の整理から面談後の記録確認まで続きます。次の時系列は、退職勧奨を単発の面談ではなく、社内統制されたプロセスとして扱うための確認順序を示しています。

01-03

対象者・法的論点・外部レビュー

人事が背景事情を整理し、法務が論点を確認し、必要に応じて外部弁護士レビューを受けます。

04-06

予算・資料・リハーサル

退職条件の予算承認、文案・資料・合意書の最終確認、担当者へのリハーサルを行います。

07-10

面談・記録・回答対応

面談を実施し、議事録を作成し、質問や条件交渉に対応し、合意書締結または面談終了処理を行います。

担当者訓練

  • 台本から外れて脅し文句を言わない。
  • 反論されても人格攻撃をしない。
  • 沈黙を過度に埋めようとしない。
  • 本人の発言を遮らない。
  • 体調不良が見られたら面談を中断する。
  • 想定問答を超える質問は、その場で無理に答えず確認すると伝える。

AI利用時の注意

生成AIは、一般的な構成案、チェックリスト、言い換え案、想定問答の初稿作成には有用です。ただし、対象者の氏名、病歴、評価、懲戒疑義、内部通報情報を外部AIに入力すること、AIが作った強い説得表現をそのまま使うこと、法令・判例・社内規程の確認を省略することは避けるべきです。

次の一覧は、実務上の失敗例と修正方針を並べたものです。問題点と修正後の方向性をセットで確認し、同じ失敗が面談文言や運用に入り込んでいないかを読み取ります。

失敗例問題点修正方針
面談冒頭で退職は決定と言う合意退職の提案ではなく、解雇または退職強要と受け止められる会社から合意退職を提案します。応じるかどうかはご判断いただけます、と言い換える
退職届をその場で書かせる検討期間がなく、任意性に疑義が生じる退職条件案を交付し、検討期間を設け、合意する場合は退職合意書を作成する
上司が感情的に人格否定する名誉感情侵害、パワーハラスメント、不法行為のリスクが高い人事・法務が主導し、発言を事実、職務、条件に限定する
拒否後も毎週面談する多数回・長期・執拗な勧奨と評価されるリスクがある拒否意思を記録し、新条件や本人希望がない限り再面談しない
メンタル不調者に病気だから退職と言う差別的取扱い、健康情報の不適切利用、安全配慮義務違反の疑いが生じる健康情報の詳細に立ち入らず、就業可能性、必要な配慮、産業医意見、配置可能性を整理する

内部統制としての位置づけ

大企業、上場準備企業、金融・医薬・IT・ヘルスケア等の規制業種では、退職勧奨を単発の労務対応ではなく内部統制の対象とします。実施基準、対象者選定理由、ハラスメント・内部通報・労組活動との関係、担当者教育、報告ルート、法務レビュー、証拠方針、個人情報権限、保存期間、予算承認を文書化します。

財務・会計面では、特別退職金や解決金の予算承認、退職給付会計、引当、税務処理を事前に確認します。大規模な希望退職制度や組織再編を伴う場合は、開示、適時開示、業績影響、監査対応も関係するため、面談文案だけでなく経営判断と証跡管理を一体で整えることが重要です。

Section 06

退職勧奨のスクリプト作成チェックリストと完成版テンプレート

事前、面談中、事後に分けて確認し、最後に汎用文案へ落とし込みます。

チェックリストは、退職勧奨のスクリプト作成が言葉だけに偏っていないかを確認するためのものです。次の表では、面談前、面談中、面談後に分けて、抜けると任意性や記録性に影響しやすい項目を整理しています。

段階確認項目
事前目的、対象者選定、解雇・懲戒・雇止め・配置転換との関係、就業規則、退職金規程、評価制度、過去記録、健康情報、組合活動、内部通報、弁護士・社労士・法務レビュー、条件案、合意書案、離職票方針、再就職支援会社の役割、面談担当、時間、場所、想定問答、拒否時対応を確認します。
面談中冒頭で任意性を説明し、この場で結論を求めないこと、会社事情と本人に関する事実を分けること、人格攻撃をしないこと、解雇・懲戒を不当に示唆しないこと、長時間面談にしないこと、本人意見を聴取すること、質問に無理に即答しないこと、退職届をその場で書かせないこと、資料を交付することを確認します。
事後議事録、交付資料、本人からの質問と回答、条件交渉時の法務確認、退職合意書の検討期間、合意しない場合に通常の人事管理へ戻す方針、退職拒否を理由とする不利益取扱いの禁止、離職票、社会保険、貸与品、最終給与、有給休暇を確認します。

汎用テンプレート

前提次の文案は一般的なたたき台です。個別事情、就業規則、社内規程、証拠関係、対象者の健康状態、労働組合の有無、地域慣行等により修正が必要です。
本日はお時間をいただきありがとうございます。
本日の面談は、今後の雇用関係について、会社から一つの提案をお伝えし、ご意見を伺うためのものです。

最初に確認しますが、本日の話は会社からの合意退職に関する提案であり、解雇通知ではありません。
この場で結論を出していただく必要はなく、応じるかどうかはご自身で判断いただけます。
必要であれば、ご家族、専門家、労働組合等に相談していただいて構いません。

会社としては、[組織再編・業務量減少・職務適合性・評価経緯等]を踏まえ、現在の雇用関係を今後も同じ形で継続することは難しい課題があると考えています。
具体的には、[客観的事実を簡潔に説明]です。

会社は、人格やこれまでの努力を否定するものではありません。
しかし、[職務上の期待水準との乖離/業務量の減少/配置可能性の限界]を踏まえ、合意退職という選択肢を提案します。

退職に応じていただく場合の条件案は、次のとおりです。
退職日 ― [年月日]
特別退職金 ― [金額または算定式]
通常退職金 ― [規程に基づく]
有給休暇 ― [取扱い]
再就職支援 ― [内容]
社会保険・雇用保険 ― [手続説明]
その他 ― [貸与品返還、秘密保持等]

本日は、提案内容をお伝えする場です。
ここまでの説明について、事実関係や会社の認識に違う点、確認したい点があれば教えてください。

[本人発言を聴取]

ご意見ありがとうございます。
本日の資料を持ち帰ってご検討ください。
回答期限は[年月日]を予定していますが、確認事項がある場合はご連絡ください。

なお、本提案に応じない場合の今後の業務上・人事上の取扱いは、就業規則、人事制度、業務上の必要性に基づき別途検討します。
本提案を拒否したことだけを理由に不利益に取り扱うものではありません。
本日の面談は以上です。

結論

退職勧奨のスクリプト作成で最も重要なのは、会社の提案を明確に伝えながら、労働者の自由な意思決定を妨げないことです。よいスクリプトは、冒頭で任意性を明示し、事実と評価を分け、人格攻撃を避け、解雇・懲戒を不当に示唆せず、条件案を文書化し、検討期間を与え、拒否されたら面談を終了し、健康情報・個人情報を必要最小限に扱います。

Section 07

退職勧奨のスクリプト作成に関するFAQ

よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。個別案件の結論は事情により変わります。

Q1. 退職勧奨は解雇と同じですか

一般的には、退職勧奨は会社から合意退職を提案する行為であり、解雇通知とは区別されるとされています。ただし、面談の態様、発言内容、退職条件、拒否時の取扱いによっては、退職強要や実質的な解雇として争われる可能性があります。具体的な評価は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 退職勧奨を拒否された後も面談できますか

一般的には、質問対応、新条件の提示、誤解の補足、本人からの再検討希望がある場合には再面談が検討されることがあります。ただし、拒否意思が明確な後に同じ理由と条件で説得を続けると、執拗な勧奨と評価される可能性があります。面談回数、時間、参加者、発言内容によって判断は変わるため、具体的な対応は専門家へ相談する必要があります。

Q3. 退職条件は口頭で伝えれば足りますか

一般的には、退職日、特別退職金、有給休暇、離職票、社会保険、貸与品返還、秘密保持などの条件は書面で整理することが望ましいとされています。口頭説明だけでは、後から認識の違いが生じる可能性があります。実際の条項設計は、就業規則、退職金規程、過去の運用、個別事情によって変わります。

Q4. 退職届と退職合意書はどちらを使いますか

一般的には、退職勧奨による合意退職では、退職届よりも退職合意書で双方の合意内容を確認する方が実態に合いやすいとされています。ただし、退職に至った経緯、本人の意思表示、会社の説明内容によって適切な書面は変わります。具体的な書式や条項は専門家へ相談する必要があります。

Q5. AIで作った退職勧奨スクリプトを使えますか

一般的には、AIは構成案、言い換え案、チェックリスト、想定問答の初稿作成には利用できる可能性があります。ただし、個人情報、健康情報、懲戒疑義、内部通報情報などを外部AIに入力することや、法令・判例・社内規程の確認を省略することはリスクがあります。最終文案は、人事、法務、社労士、弁護士等が確認する必要があります。

Q6. なぜ自分だけなのかと聞かれた場合はどう説明しますか

一般的には、対象者選定の基準、現在の職務、業務量、配置可能性、評価経緯など、本人に関する判断理由を資料に沿って説明する方法が考えられます。ただし、他の従業員の個人情報や比較評価を不用意に開示すると別の問題が生じる可能性があります。具体的な説明範囲は、対象者選定資料と個人情報の取扱いを確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q7. 退職金や条件の増額を求められた場合はどう対応しますか

一般的には、希望として受け止め、会社として検討したうえで回答可能な範囲を文書または次回面談で回答する運用が考えられます。その場で感情的に拒絶したり、即時署名と引き換えに条件を出したりすると任意性に疑義が生じる可能性があります。金額や条件は、規程、予算、同種事案との均衡、税務・会計処理を確認して判断する必要があります。

Q8. 弁護士や労働組合に相談してよいかと聞かれた場合はどう答えますか

一般的には、相談を妨げない姿勢を明確にすることが、任意性を支える運用につながります。この場で結論を出す必要がないこと、資料を持ち帰れること、専門家や労働組合等へ相談できることを説明します。個別事情により回答期限や手続は変わるため、会社側も事前に相談期間と回答方法を整理しておく必要があります。

Q9. 面談を録音したいと言われた場合はどう対応しますか

一般的には、録音の可否や会社側の録音方針は社内規程、個人情報、証跡管理の観点から整理しておく必要があります。いずれの場合も、録音されても問題がない説明内容、態度、時間管理を徹底し、会社側は議事録、交付資料、本人発言、終了時刻を客観的に記録します。具体的な運用は、事案の性質と社内規程を踏まえて専門家へ相談する必要があります。

Q10. 退職勧奨に応じた場合、自己都合退職として扱われますか

一般的には、離職票の離職理由は実際の退職経緯に基づき、法令とハローワークの取扱いに従って記載する必要があります。退職勧奨による合意退職であるにもかかわらず、形式的に一身上の都合とする退職届だけを求めると、後日の離職理由争いにつながる可能性があります。具体的な記載は、退職経緯、合意書、会社説明を整理して確認する必要があります。

Reference

参考資料

公的機関の資料を中心に、退職勧奨、解雇、ハラスメント、雇用保険、健康情報、再就職支援の論点を確認しています。

公的資料・法令

  • 厚生労働省「確かめよう労働条件 裁判例 退職勧奨」
  • 労働契約法第16条
  • 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメント防止に関する指針」
  • ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
  • 個人情報保護委員会「雇用管理分野における健康情報の取扱いに関する留意事項」
  • 厚生労働省「企業が行う退職勧奨に関して職業紹介事業者が提供するサービスに係る留意点について」