2σ Guide

第三国法を準拠法に選ぶ
メリットデメリット

日本法でも相手国法でもない第三国法を選ぶ場面について、中立性、予測可能性、交渉上の効果と、強行法規・仲裁・執行・契約条項設計の限界を一体で整理します。

7条 通則法の法選択
36条 仲裁法の準拠法
6条 CISG排除の根拠
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第三国法を準拠法に選ぶ メリットデメリット

中立性だけで判断せず、契約本体、紛争解決、強行法規、執行可能性を同時に見ます。

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第三国法を準拠法に選ぶ メリットデメリット
中立性だけで判断せず、契約本体、紛争解決、強行法規、執行可能性を同時に見ます。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 第三国法を準拠法に選ぶ メリットデメリット
  • 中立性だけで判断せず、契約本体、紛争解決、強行法規、執行可能性を同時に見ます。

POINT 1

  • 第三国法を準拠法に選ぶメリットデメリットの全体像
  • 1. 取引の中心を確認:当事者、履行地、資産所在地、データ処理地、契約言語を整理します。
  • 2. 排除できない法を洗い出す:強行法規、公序、規制法、物権、会社法、税務、知財を確認します。
  • 3. 第三国法を選ぶ理由を明確にする:中立性、市場標準、判例蓄積、専門家供給、仲裁との相性を説明できる状態にします。
  • 4. 紛争解決と実行体制を合わせる:仲裁地、管轄、手続言語、執行地、翻訳、専門家意見まで一体で設計します。

POINT 2

  • 第三国法を準拠法に選ぶ場面と基本用語
  • 第三国法、準拠法、法廷地法、仲裁地法を分けて理解します。
  • 第三国法とは何を指すか
  • 準拠法・法廷地法・仲裁地法の違い
  • 準拠法とは、契約の成立、効力、解釈、履行、違反時の救済などを判断する法です。

POINT 3

  • 第三国法を準拠法に選ぶ法的基礎と限界
  • 当事者自治は広く認められますが、強行法規や公序で制限されます。
  • 当事者自治の原則
  • EU法域と仲裁の考え方
  • 国際契約における準拠法選択の根底には、当事者自治の考え方があります。

POINT 4

  • 第三国法を準拠法に選ぶメリット
  • 中立性、予測可能性、交渉の着地点、仲裁との相性を整理します。
  • 中立性を確保しやすい
  • 予測可能性を高めやすい
  • 交渉上の妥協点になります

POINT 5

  • 第三国法を準拠法に選ぶデメリットと注意点
  • 法廷地・仲裁地との不整合
  • 準拠法、裁判管轄、仲裁地、規則、手続言語、証拠所在地、執行地が分かれると、手続が複雑化します。
  • 物権・担保・登記
  • 資産所在地法や登録地法が問題になりやすく、通則法13条のように所在地法を重視する規律もあります。

POINT 6

  • 第三国法を準拠法に選ぶ契約類型別の検討
  • 売買、代理店、知財、SaaS、M&A、金融、労働、消費者取引で論点が変わります。
  • 第三国法の合理性は契約類型によって変わります。
  • 国際売買契約では、第三国法を選ぶだけでCISGが当然に外れるわけではありません。
  • 販売代理店では、第三国法上は有効に見える条項でも、販売地域国の競争法や代理店保護で問題になることがあります。

POINT 7

  • 第三国法を準拠法に選ぶ場合の裁判・仲裁・執行
  • 1. 準拠法と紛争解決を一体で設計します:第三国法、管轄・仲裁、仲裁地、手続言語、執行地、保全手段を同時に整理します。
  • 2. 外国法の内容を確認します:外国法弁護士の意見書、法令・判例・実務書、翻訳、比較法的説明の準備が必要になります。
  • 3. 選択法の解釈を主張します:裁判所または仲裁廷に、選択法の内容、公序・強行法規との関係、証拠の意味を説明します。
  • 4. 資産所在地で実効性を確認します:判決や仲裁判断を相手方資産の所在地で承認・執行できるかを確認します。

POINT 8

  • 第三国法を準拠法に選ぶ契約条項の設計例
  • 抵触法除外、CISG、仲裁、強行法規、関連契約の整合を明確にします。
  • 以下は一般的なドラフト例です。
  • 実際の契約では、法域、取引類型、相手方属性、強行法規、紛争解決地、仲裁規則、関連契約との整合性に応じて修正が必要です。
  • 個別の条項判断は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

まとめ

  • 第三国法を準拠法に選ぶ メリットデメリット
  • 第三国法を準拠法に選ぶメリットデメリットの全体像:中立性だけで判断せず、契約本体、紛争解決、強行法規、執行可能性を同時に見ます。
  • 第三国法を準拠法に選ぶ場面と基本用語:第三国法、準拠法、法廷地法、仲裁地法を分けて理解します。
  • 第三国法を準拠法に選ぶ法的基礎と限界:当事者自治は広く認められますが、強行法規や公序で制限されます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

第三国法を準拠法に選ぶメリットデメリットの全体像

中立性だけで判断せず、契約本体、紛争解決、強行法規、執行可能性を同時に見ます。

国際契約では、日本企業と海外企業が契約を結ぶ場合でも、日本法でも相手国法でもない第三国法を準拠法として選ぶことがあります。典型例は、双方にとって中立的な法、国際取引で利用実績が多い法、金融・M&A・ライセンス・商社取引・海事・保険・IT取引などで市場参加者が読み慣れている法を選ぶ場面です。

第三国法を準拠法に選ぶ魅力は、中立性、予測可能性、交渉上の受け入れやすさ、国際仲裁との相性、グローバル標準契約との整合性にあります。一方で、外国法調査・翻訳・専門家意見のコスト、法廷地や仲裁地との不整合、強行法規・公序・消費者保護・労働者保護・物権・会社法・倒産法・知財・規制法の限界が残ります。

結論第三国法の選択は「中立だから安全」とは限りません。契約本体、紛争解決条項、強行法規、履行地、資産所在地、当事者属性、関連契約、証拠・言語・執行可能性を一体で設計して初めて機能します。

次の重要ポイントは、第三国法を選ぶ判断を大きく左右する要素を表しています。どの要素も契約末尾の定型文ではなく、紛争時の費用・時間・実効性に直結するため、各項目の役割と限界を読み取ることが重要です。

準拠法はリスク配分そのものです

同じ契約文言でも、準拠法が変わると成立、解釈、損害賠償、解除、時効、表明保証、補償、不可抗力、譲渡制限、保証、担保の扱いが変わる可能性があります。

次の判断順序は、第三国法を検討するときに確認する作業の流れを表しています。順番に整理すると、第三国法の利点だけでなく、現地法や執行地で残る論点を早い段階で見つけやすくなります。

第三国法を検討する順序

取引の中心を確認

当事者、履行地、資産所在地、データ処理地、契約言語を整理します。

排除できない法を洗い出す

強行法規、公序、規制法、物権、会社法、税務、知財を確認します。

第三国法を選ぶ理由を明確にする

中立性、市場標準、判例蓄積、専門家供給、仲裁との相性を説明できる状態にします。

紛争解決と実行体制を合わせる

仲裁地、管轄、手続言語、執行地、翻訳、専門家意見まで一体で設計します。

Section 01

第三国法を準拠法に選ぶ場面と基本用語

第三国法、準拠法、法廷地法、仲裁地法を分けて理解します。

第三国法とは何を指すか

このページでいう第三国法とは、契約当事者の本国法、主たる営業拠点所在地法、または主要履行地法ではない国・地域の法を、契約の準拠法として選ぶ場合を指します。たとえば、日本企業とインド企業が、タイで製造される部品の長期供給契約について、シンガポール法、英国法、ニューヨーク州法、スイス法などを選ぶ場面が典型です。

次の比較表は、実務で「第三国法」と呼ばれる法の使われ方を整理したものです。どの観点で選ぶかによって、交渉上の意味や調査すべきリスクが変わるため、左列の分類と右列の内容を対応させて読むことが重要です。

観点内容
中立法どちらの当事者の本拠地法でもない法です。
取引標準法金融、海事、保険、M&A、国際売買などで広く使われる法です。
仲裁向けの法国際仲裁人や代理人が扱いやすい商事法体系です。
金融機関が受け入れやすい法融資、担保、社債、株式取得、保証、補償条項などの解釈が安定していると評価される法です。
妥協法当事者双方が自国法を主張して折り合えない場合の折衷案です。

準拠法・法廷地法・仲裁地法の違い

準拠法とは、契約の成立、効力、解釈、履行、違反時の救済などを判断する法です。法廷地法とは、訴訟が提起された裁判所の所在地の法で、手続についてはその国の民事訴訟法などが問題になります。仲裁地法とは、仲裁手続の法的な本拠地の仲裁法であり、実際の審問場所とは別に考えます。

準拠法条項は「どの法で判断するか」を定め、管轄条項・仲裁条項は「どこで、どの手続で紛争を解決するか」を定めます。裁判所選択だけで当然にその地の法を選んだことにはならないため、契約書では別々に明確に書く必要があります。

注意日本の裁判所が第三国法を適用することは理論上あり得ますが、外国法の内容を調査し、主張・立証し、翻訳や専門家意見を準備する負担が生じます。
Section 03

第三国法を準拠法に選ぶメリット

中立性、予測可能性、交渉の着地点、仲裁との相性を整理します。

第三国法の最も分かりやすい利点は中立性です。日本企業が日本法を希望し、海外企業が自国法を希望する場合、第三国法を選べば一方の「ホーム法」になることを避けられます。相手国法に関する情報格差を小さくし、双方が外部専門家を起用することで一定の対等性を確保しやすくなります。

次の一覧は、第三国法を選ぶ代表的な利点を並べたものです。利点ごとに効く場面が異なるため、どの効果を狙うのかを読み分けることが、過剰な期待を避けるうえで重要です。

Neutrality

中立性を確保しやすい

どちらか一方の本拠地法を避け、交渉上の公平感を作りやすくなります。相手国法への不信や情報格差を下げる目的で使われます。

Predictability

予測可能性を高めやすい

国際金融、M&A、国際売買、ライセンス、SaaSなどで利用実績が多い法を選ぶと、条項解釈の前提を揃えやすくなります。

Compromise

交渉上の妥協点になります

売主国法と買主国法の対立が続く場合に、取引を前に進めるための折衷案として機能することがあります。

Arbitration

国際仲裁と相性があります

選択法に詳しい仲裁人を含めやすく、英語手続、専門家意見、証拠提出を柔軟に設計しやすい点があります。

Standard

標準契約と整合しやすい

多国籍企業の購買基本契約、販売店契約、ライセンス契約、SaaS利用規約、M&A契約などで管理基準を揃えやすくなります。

Multi-country

複数国取引をまとめやすい

製造地、納入地、データ処理地、保証人所在地、担保資産所在地が分散する場合、契約上の基本ルールを統一しやすくなります。

第三国法の利点は、選ぶ法域に国際商事契約の判例、実務書、契約雛形、仲裁判断例、専門家証人の供給がある場合に強く出ます。一方で、第三国法なら何でもよいわけではなく、対象取引に関する法令・判例・専門家・裁判所または仲裁実務が整備されているかを確認する必要があります。

補足グループ標準契約を第三国法で統一しても、現地の消費者法、労働法、代理店保護法、独禁法、データ保護法、輸出管理、税務、許認可、製品安全、表示規制の確認は残ります。
Section 04

第三国法を準拠法に選ぶデメリットと注意点

外国法対応コスト、強行法規、規制法、CISG、関連契約の分裂を確認します。

外国法調査・翻訳・専門家意見の負担

第三国法を選ぶ最大のデメリットはコストです。第三国法に詳しい弁護士の起用、法律意見書や専門家意見書の取得、判例・法令・実務書の調査、契約書・証拠・法令・判例の翻訳、社内決裁者への説明、紛争時の外国法主張・立証、法改正のモニタリングが必要になることがあります。

強行法規と公序の限界

第三国法を選んでも、消費者保護法、労働法、独占禁止法・競争法、下請・優越的地位濫用規制、個人情報保護・データ保護法、輸出管理・経済制裁、贈収賄防止、金融・証券規制、製品安全、環境法、税法、外国投資規制、倒産法上の制限は残ります。日本の通則法11条・12条やRome I規則6条・8条も、消費者・労働者保護を確保する構造を置いています。

次の注意要素の一覧は、第三国法を選んだときに見落としやすいリスクを表しています。各項目は、契約条項で整えられる問題と、別途現地法確認が必要な問題を切り分けるために重要です。

法廷地・仲裁地との不整合

準拠法、裁判管轄、仲裁地、規則、手続言語、証拠所在地、執行地が分かれると、手続が複雑化します。

物権・担保・登記

資産所在地法や登録地法が問題になりやすく、通則法13条のように所在地法を重視する規律もあります。

会社法・M&A・組織再編

対象会社の機関、株式、合併、少数株主保護、役員責任、開示、外資規制、税務は別途確認します。

CISGの適用可能性

国際物品売買でCISG締約国法を選ぶ場合、CISGを適用するのか排除するのかを明確にします。

現地規制・行政法・刑事法

薬機法、食品表示、広告規制、輸出入、反贈収賄、競争法、製品安全などは各国の適用範囲に従います。

契約全体の分裂

主契約は第三国法、担保は所在地法、保証は保証人所在地法、雇用は就労地法という分裂が起きます。

国際物品売買では、CISGが特に重要です。CISGは国際売買契約の成立や売主・買主の権利義務を統一的に規律する条約で、選択した第三国が締約国の場合に問題になり得ます。CISGを排除したい場合は明示的な排除条項を置き、適用したい場合はCISGで規律されない事項に適用される補充法を明確にします。

重要契約上の第三国法は、国家の規制権限そのものを排除するものではありません。販売先国、就労地、データ主体所在地、資産所在地、登録国、税務上の関連国で残る規制を個別に確認します。
Section 05

第三国法を準拠法に選ぶ契約類型別の検討

売買、代理店、知財、SaaS、M&A、金融、労働、消費者取引で論点が変わります。

第三国法の合理性は契約類型によって変わります。次の比較表は、各契約類型で確認すべき論点を表しており、どの類型でCISG、強行法規、知財、データ、担保、労働者・消費者保護が強く出るかを読み取るために重要です。

契約類型第三国法を選ぶときの確認事項
国際売買契約CISG、インコタームズ、引渡し、危険移転、検査・通知、不適合救済、損害賠償、制裁・輸出管理、製品規制を確認します。
販売代理店・ディストリビューター契約販売地域国の代理店保護法、競争法、消費者保護、製品安全、広告規制、データ保護、契約終了時の補償を確認します。
ライセンス・共同開発・知財契約ロイヤルティ、秘密保持、成果帰属、補償、監査権に加え、登録国・保護国法、職務発明、オープンソース、データ利用権を確認します。
SaaS・IT・AI・データ契約ユーザー所在地、データ主体所在地、保存地、委託先所在地、サービス提供者所在地、決済処理地、サイバーセキュリティ規制地を確認します。
M&A・投資契約表明保証、補償、価格調整、クロージング条件だけでなく、会社法、外資規制、証券規制、独禁法、労務、税務、知財移転、データ移転を確認します。
金融・保証・担保契約ローン、社債、保証、インタークレディター、デリバティブでは国際金融市場の標準法が使われますが、担保は資産所在地法が重要です。
労働契約・役員契約就労地法、労働者の常居所地法、社会保険、税務、移民法、労災、安全衛生を確認します。通則法12条も問題になります。
消費者向け契約・利用規約常居所地法、消費者保護法、返品、解約、定期課金、広告、未成年者、個人情報、クーリングオフ、不当条項、行政制裁を確認します。

国際売買契約では、第三国法を選ぶだけでCISGが当然に外れるわけではありません。販売代理店では、第三国法上は有効に見える条項でも、販売地域国の競争法や代理店保護で問題になることがあります。SaaSやAIの契約では、データ主体所在地やデータ保存地の規制が契約準拠法と別に重なります。

次の選択肢一覧は、複数国にまたがる契約で準拠法以外に分けて確認する領域を表しています。タグは主に問題になる法領域を示しており、契約類型ごとのレビュー範囲を読み取るために重要です。

1

主契約

取引全体の成立、解釈、履行、解除、損害賠償、責任制限を第三国法で整えます。

実体法
2

担保・保証

担保資産所在地、保証人所在地、対抗要件、登記、優先順位を別途確認します。

所在地法
3

知財・データ

登録国、保護国、データ主体所在地、保存地、再委託先所在地の規制を確認します。

登録国法
4

労働・消費者

就労地、常居所地、消費者保護、労働者保護、不当条項規制を切り離して確認します。

強行法規
Section 06

第三国法を準拠法に選ぶ場合の裁判・仲裁・執行

準拠法だけでなく、どこで判断し、どこで執行するかを設計します。

第三国法を選ぶなら、紛争解決条項も一体で設計する必要があります。準拠法だけを第三国法にし、裁判管轄、仲裁地、規則、手続言語、執行地を深く検討しない契約は、紛争時に費用と不確実性を増やしやすくなります。

次の比較表は、第三国法を選ぶときに準拠法と一緒に決めるべき紛争対応項目を表しています。各列ではなく各行を横に読むと、実体判断、手続、言語、執行、保全、費用が連動していることを確認できます。

項目検討事項
準拠法契約の実体問題をどの法で判断するか、抵触法を含めるか除外するかを決めます。
管轄・仲裁裁判か仲裁か、専属管轄か非専属管轄か、仲裁機関・規則は何かを決めます。
仲裁地仲裁法、取消訴訟、公序、裁判所支援、暫定措置の実効性を確認します。
手続言語契約言語、証拠言語、役員・従業員・専門家の対応可能性を確認します。
執行地相手方資産がどこにあり、判決・仲裁判断の承認執行が可能かを確認します。
保全仮差押え、仮処分、証拠保全、緊急仲裁人、暫定措置の使いやすさを確認します。
コスト弁護士費用、翻訳費、専門家証人、仲裁費用、裁判費用を見積もります。

国際仲裁を選ぶ場合、ニューヨーク条約の加盟国間では、外国仲裁判断の承認・執行に関する共通枠組みがあります。ただし、加盟国であっても、仲裁合意の有効性、仲裁可能性、適正手続、公序、取消判断、翻訳・認証要件、現地裁判所の実務により、執行が争われることがあります。

次の時系列は、日本の裁判所で第三国法が問題になる場合に生じやすい作業を表しています。手続が進むほど翻訳や専門家意見の負担が大きくなるため、契約時点でどの段階まで準備できるかを読み取ることが重要です。

契約交渉

準拠法と紛争解決を一体で設計します

第三国法、管轄・仲裁、仲裁地、手続言語、執行地、保全手段を同時に整理します。

紛争初期

外国法の内容を確認します

外国法弁護士の意見書、法令・判例・実務書、翻訳、比較法的説明の準備が必要になります。

審理・仲裁

選択法の解釈を主張します

裁判所または仲裁廷に、選択法の内容、公序・強行法規との関係、証拠の意味を説明します。

執行

資産所在地で実効性を確認します

判決や仲裁判断を相手方資産の所在地で承認・執行できるかを確認します。

Section 07

第三国法を準拠法に選ぶ契約条項の設計例

抵触法除外、CISG、仲裁、強行法規、関連契約の整合を明確にします。

以下は一般的なドラフト例です。実際の契約では、法域、取引類型、相手方属性、強行法規、紛争解決地、仲裁規則、関連契約との整合性に応じて修正が必要です。個別の条項判断は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

次の比較表は、第三国法を使う契約でよく検討する条項を表しています。英語例と日本語例を並べることで、どの文言が抵触法、CISG、仲裁、強行法規、関連契約のどの論点に対応しているかを読み取るために重要です。

条項文言例と確認ポイント
基本的な準拠法条項This Agreement and any non-contractual obligations arising out of or in connection with it shall be governed by and construed in accordance with the substantive laws of [Chosen Jurisdiction], without regard to its conflict of laws rules.
日本語では、本契約および関連する契約上・非契約上の義務について、抵触法規則を除き、選択法域の実体法に準拠する旨を明確にします。
CISGを排除する条項The United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods shall not apply to this Agreement or any purchase order issued under it.
国際物品売買では、CISGを適用するか排除するかを明示します。
準拠法と仲裁条項This Agreement shall be governed by the substantive laws of [Chosen Jurisdiction], excluding its conflict of laws rules. Any dispute arising out of or in connection with this Agreement shall be finally resolved by arbitration under the rules of [Arbitral Institution]. The seat of arbitration shall be [Seat]. The language of the arbitration shall be English.
準拠法、仲裁機関、仲裁規則、仲裁地、手続言語を一体で定めます。
強行法規を意識した条項Nothing in this Agreement shall exclude or limit the application of any mandatory laws that cannot be excluded by agreement and that are applicable to the parties or the transaction.
この条項だけで安全になるわけではなく、どの国のどの強行法規が適用されるかを事前に洗い出します。
関連契約の整合マスター契約は第三国法、個別注文は同一法または納入地法、担保契約は資産所在地法、保証契約は保証人所在地法または主債務と同一法、知財譲渡は登録国法、データ処理契約はデータ保護規制地を踏まえて整理します。

契約書では、準拠法、仲裁機関、仲裁規則、仲裁地、手続言語に加えて、仲裁人の人数、緊急仲裁人、暫定措置、秘密保持、併合、複数契約・複数当事者、費用負担も検討します。複数契約がある場合は、本契約と関連契約に矛盾がある場合の優先順位を定めることも重要です。

条項設計「第三国法」と書くだけでは足りません。抵触法規則を除くか、CISGをどう扱うか、非契約上の義務を含めるか、強行法規をどう位置付けるか、関連契約とどう整合させるかまで確認します。
Section 08

第三国法を準拠法に選ぶ実務チェックリスト

選びやすい場面、避ける場面、社内承認用の比較軸を確認します。

第三国法を選ぶ前に、最低限の質問に答える必要があります。次の一覧は、社内決裁前に確認すべき基本質問を表しており、質問ごとの理由を読むことで、単なる好みではなくリスク配分として判断できます。

質問確認すべき理由
その取引は本当に国際契約か国内取引なのに第三国法を選ぶと、強行法規や公序で問題になりやすくなります。
当事者は対等な商人か消費者・労働者・中小事業者保護が問題になる場合があります。
なぜその第三国法なのか中立性、判例蓄積、専門家供給、市場標準などの合理的理由が必要です。
その法に詳しい専門家を確保できるか契約レビュー・紛争対応で不可欠です。
紛争解決地はどこか準拠法と管轄・仲裁地の不整合がコストを増やします。
相手方資産はどこにあるか判決・仲裁判断の執行可能性を確認する必要があります。
強行法規はどこの国のものが問題になるか労働、消費者、競争、データ、金融、輸出管理、制裁などを確認します。
物権・担保・知財・会社法問題はあるか契約準拠法とは別法で決まることが多いためです。
契約言語と証拠言語は何か翻訳費用・手続遅延に直結します。
関連契約との整合はあるか主契約、保証、担保、個別契約で法が分裂しやすいためです。

選びやすい場面と避ける場面

第三国法を選びやすいのは、当事者がいずれも商人・企業で、取引が複数国にまたがり、相手国法を受け入れにくく、選択する第三国法に国際商事法務の蓄積があり、専門家や仲裁人を確保でき、国際仲裁と執行可能性を検討できる場面です。

逆に、消費者向け利用規約、労働契約、実質雇用に近い業務委託、小規模事業者との交渉力格差が大きい契約、国内履行・国内当事者・国内資産だけの取引、規制業種、不動産・担保・知財登録が中心の取引、現地訴訟が不可避な取引、外国法専門家を確保できない取引では、詳細な専門家確認が必要です。

次の比較表は、社内承認で日本法、相手国法、第三国法を比べるための軸を表しています。右端の第三国法だけを見るのではなく、コスト、中立性、強行法規、執行可能性を横並びで読むことが重要です。

比較項目日本法相手国法第三国法
自社の理解度高い低から中中から低
相手方の受容性低い場合があります高い中から高
中立性低いと見られる場合があります低いと見られる場合があります高い
外部専門家費用低から中中から高中から高
国際仲裁との相性高い場合があります
強行法規リスク日本関連は把握しやすいです相手国確認が必要です複数国確認が必要です
執行可能性執行地次第です執行地次第です執行地次第です
契約雛形との整合自社雛形次第です相手方雛形次第です国際雛形と整合しやすい場合があります

最終的には、取引の中心地、履行地、資産所在地、相手方属性を把握し、強行法規、公序、規制法、物権・担保、会社法、税務、知財を洗い出し、第三国法を選ぶ合理的理由と専門家体制を明確にします。そのうえで、紛争解決条項、仲裁地、手続言語、執行地、CISG、抵触法、関連契約、保証・担保、データ・労務・規制を個別に処理します。

Section 09

第三国法を準拠法に選ぶときのFAQ

よくある誤解を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 第三国法を選べば、相手国の強行法規を無視できますか。

一般的には、準拠法条項は契約当事者間の私法上の権利義務を定めるためのものとされています。消費者保護、労働法、独禁法、データ保護、金融規制、輸出管理、制裁、税法、許認可、製品安全、広告規制などの強行法規・規制法を当然に排除するものではありません。具体的な適用関係は、取引類型、履行地、相手方属性、規制地によって変わる可能性があるため、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 第三国法を選んでも、日本の裁判所で裁判できますか。

一般的には、日本の裁判所が通則法に従って外国法を適用する場面はあり得ます。ただし、外国法の内容を裁判所に理解してもらうための主張、立証、翻訳、専門家意見が必要になり、費用と時間が増える可能性があります。具体的な手続対応は、紛争内容と証拠関係によって変わります。

Q3. 準拠法を第三国法にすれば、管轄もその国になりますか。

一般的には、準拠法と管轄・仲裁は別の条項として扱われます。準拠法条項はどの法で判断するかを定め、管轄・仲裁条項はどこで、どの手続で判断するかを定めます。契約書では別々に明確に定める必要があります。

Q4. 第三国法を選ぶなら、必ず国際仲裁にする必要がありますか。

一般的には、国際仲裁が常に必須というわけではありません。ただし、第三国法に詳しい仲裁人を選び、手続言語や証拠提出を柔軟に設計できる点で、国際仲裁との相性がよい場合があります。相手方資産の所在地、ニューヨーク条約加盟状況、仲裁費用、緊急保全、証拠収集、複数当事者・複数契約への対応を総合的に検討する必要があります。

Q5. 国際物品売買で第三国法を選ぶ場合、CISGは自動的に排除されますか。

一般的には、自動的に排除されるとは限りません。選択した第三国法がCISG締約国法であり、CISGの適用要件を満たす場合、CISGが問題になる可能性があります。CISGを排除したい場合は、契約書で明示的に排除する条項を入れる必要があります。

Q6. 第三国法を選ぶと、契約書を英語にする必要がありますか。

一般的には、必ず英語にする必要はありません。ただし、第三国法に関する法令・判例・実務書・専門家意見が英語で提供されることが多く、仲裁や外国裁判で英語が手続言語になることもあります。契約言語と手続言語の整合を確認する必要があります。

Q7. 第三国法を選ぶ条項だけ入れれば十分ですか。

一般的には、不十分と考えられます。準拠法条項に加えて、管轄・仲裁、仲裁地、手続言語、執行地、強行法規、CISG、抵触法除外、関連契約、担保、保証、知財、データ、労務、税務、規制対応を一体で設計する必要があります。具体的な条項設計は、契約類型と関連国によって変わります。

Reference

参考資料

公的資料と中立的な国際資料を中心に整理しています。

日本法・仲裁法

  • 法務省 日本法令外国語訳データベース 法の適用に関する通則法
  • 法務省 日本法令外国語訳データベース 仲裁法

国際私法・EU法

  • Hague Conference on Private International Law, Principles on Choice of Law in International Commercial Contracts
  • Regulation (EC) No 593/2008 on the law applicable to contractual obligations (Rome I)

国際仲裁・国際売買

  • UNCITRAL, Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards
  • UNCITRAL, United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods
  • CISG英語正文掲載資料

外国法内容の確定

  • 外国法内容の確定に関する学術解説