義務、裁量、条件、表明保証、補償、損害、準拠法、仲裁、定型条項を、単語の訳語ではなく契約上の機能として整理します。
義務、裁量、条件、表明保証、補償、損害、準拠法、仲裁、定型条項を、単語の訳語ではなく契約上の機能として整理します。
訳語ではなく、義務・条件・救済・紛争解決を作る機能として読みます。
英文契約で頻出する法律英語は、単なる英単語の暗記ではなく、契約上の義務、裁量、条件、リスク配分、救済、紛争解決、証拠構造を作る技術語として読むことが重要です。shallmayrepresentations and warrantiesindemnifyconsequential damagesnotwithstandingsubject togoverning lawarbitration は、訳語だけでは実務上の意味を取り違えやすい表現です。
日本語の契約書に慣れている場合ほど、英文契約を日本語訳へ引き寄せて理解しがちです。しかし、英米法系の概念、国際取引の標準実務、準拠法、裁判管轄、仲裁地、業界慣行、条項間の優先順位が複合的に作用するため、日本法の感覚だけで読むと、義務の強度や補償範囲、損害賠償の上限、終了後の効果、秘密情報・知財・データの取扱い、紛争解決コストを誤解しやすくなります。
次の一覧は、英文契約で特に読み違いが生じやすい観点をまとめたものです。単語の意味だけでなく、誰にどの義務や権利が発生し、違反時にどの救済へつながるかを読み取ることが重要です。
shallmustmaywill は似て見えても、義務、要件、権限、将来事実を作り分けます。
indemnifydefendconsequential damagescap は、金額上のリスクを左右します。
governing lawjurisdictionseat of arbitration は、紛争後の手続と費用に直結します。
次の重要ポイントは、英文契約レビューの目的を表しています。訳語を覚えるだけでなく、契約構造の中で各語が担う役割を見抜くことが、社内説明や交渉方針の精度につながります。
自社が負う義務を明確にし、受け取る権利を確保し、予見可能なリスクを契約上コントロールし、紛争時に説明可能な文書を残すために使います。
情報源、準拠法、日本法との違い、契約書の構成を先に整理します。
信頼できる情報源としては、米国SECのPlain English資料、米国政府系のPlain Language資料、Cornell Law School Legal Information Institute、Uniform Commercial Code、UNCITRAL、CISG、ニューヨーク条約、ICC・JCAAのモデル仲裁条項、日本法令外国語訳データベースシステムなどが挙げられます。これらは一般的な用語や制度、ドラフティング原則を確認するための土台になります。
ただし、英文契約の法律英語は、ニューヨーク法、デラウェア法、カリフォルニア法、英国法、シンガポール法、香港法、オーストラリア法、日本法などで解釈が異なり得ます。best efforts と reasonable efforts の強度、indemnify・defend・hold harmless の関係、consequential damages の範囲、liquidated damages と penalty の区別は、準拠法と判例に左右されます。
次の比較表は、典型的な英文契約の構成部分と、そこでよく使われる法律英語を整理したものです。どの位置に置かれた語かによって効き方が変わるため、読者は「見出し、定義、本文、救済、定型条項」のどこにある表現かを読み取ることが重要です。
| 構成部分 | 頻出する法律英語 | 実務上の読み方 |
|---|---|---|
| Title | Agreement, Contract, Terms and Conditions | 契約類型を示します。ただしタイトルだけで法的性質は決まりません。 |
| Introductory clause | This Agreement is entered into by and between... | 契約当事者、締結日、法人名、設立地、住所を特定します。 |
| Recitals | Whereas, Background, Purpose | 取引背景を説明します。拘束力を持たせるかは本文との関係で確認します。 |
| Definitions | means, includes, including without limitation | 用語を固定し、条文間の解釈を統一します。 |
| Operative provisions | shall, must, may, agrees to | 義務、禁止、権限、条件を定めます。 |
| Representations and warranties | represents, warrants, acknowledges | 事実の表明、保証、リスク配分、補償・解除の基礎を作ります。 |
| Covenants | covenants, undertakes, agrees | 将来の行為義務や不作為義務を定めます。 |
| Remedies | indemnify, damages, injunctive relief | 違反時の救済と費用負担を定めます。 |
| Boilerplate | governing law, jurisdiction, notices, waiver | 契約全体の運用、紛争処理、解釈ルールを定めます。 |
| Schedules / Exhibits | Schedule, Exhibit, Appendix, Annex | 仕様書、価格表、SOW、DPA、SLAなどを添付します。 |
Agreement と Contract の読み分けAgreement は合意そのもの、または合意文書を指す広い語です。商事契約のタイトルでは頻繁に使われます。Contract は法的拘束力を持つ契約をより直接に想起させますが、実務上は両者が近い意味で使われることもあります。重要なのは、文書名が Memorandum of UnderstandingLetter of IntentTerm SheetAgreement のいずれでも、拘束力条項、署名、当事者の意思、対価、準拠法、個別条項の文言によって効果が判断され得る点です。
PartyAffiliateRepresentativeParty は契約当事者です。Affiliate は親会社、子会社、兄弟会社、支配下の会社などを意味することが多いものの、定義によって範囲が大きく変わります。Representative は役員、従業員、代理人、アドバイザー、会計士、コンサルタントなどを含むことがあります。秘密保持契約では、誰に開示でき、開示後の責任を誰が負うかを確認します。
Effective Date と Execution DateEffective Date は契約の効力発生日で、Execution Date は署名日を意味することが多いです。支払開始日、サービス開始日、検収期間、解除可能期間、保証期間、秘密保持期間、SLA開始日、価格改定日、更新期限がどの日付を基準に計算されるかを確認します。
shall、must、will、mayを、義務者と権限の違いから読み分けます。
義務・裁量・禁止を作る法律英語では、同じように見える助動詞や動詞句が、契約上まったく異なる効果を持ちます。レビューでは「誰が、何を、いつまでに、どの程度の努力で、違反時にどの救済を伴って」行うのかを読む必要があります。
次の比較表は、義務・裁量・禁止を示す主要表現の読み方をまとめたものです。語の違いは権利行使や違反判断に直結するため、読者は各表現が義務者、権利者、禁止対象のどれを作っているかを読み取ってください。
| 表現 | 基本機能 | レビュー観点 |
|---|---|---|
shall | 多くの契約では義務を表します。 | 義務者が明確か、法的効果を述べるだけの誤用ではないかを確認します。 |
must | 義務や要件を明確に示します。 | 受動態で義務者が隠れていないかを確認します。 |
will | 将来の事実、予定、約束を表します。 | 義務として使われているか、将来事実として使われているかを確認します。 |
may | 許可、権限、裁量を示します。 | 解除権、監査権、差止請求権、相殺権、情報開示権などで強い権限を与えていないかを確認します。 |
shall not / must not / may not | 禁止を表します。 | 主語、禁止行為、例外、承諾取得の方法を確認します。 |
agrees to | 合意に基づく義務を表します。 | 義務の内容、期限、違反時の効果を明確にします。 |
undertakes to | 誓約・引受けのニュアンスがあります。 | 通常の義務より重い運用になっていないかを確認します。 |
covenants to | 契約上の誓約を表します。 | 金融契約、M&A契約、不動産契約で将来義務として機能します。 |
shall は未来形ではなく義務として読む場面が多いですSeller shall deliver the Products by June 30. は、売主が6月30日までに本製品を引き渡す義務を負うという意味になります。ただし、The term shall commence on the Effective Date. のように、当事者の義務ではなく契約期間の開始という法的効果を述べているだけの表現もあります。この場合は The term commences on the Effective Date. の方が明確です。
may を可能性と訳すと権利を見落としますEither Party may terminate this Agreement upon thirty days' prior written notice. は、いずれの当事者も30日前の書面通知により契約を終了できるという意味です。契約上の権利や裁量を付与している可能性があるため、解除権、監査権、再委託承認権、情報開示権では特に注意します。
次の注意点の一覧は、義務表現を読むときに確認すべきリスクを整理したものです。単語ごとの訳ではなく、義務の発生、例外、違反時の効果をセットで確認することが重要です。
受動態や抽象主語により、誰が履行するか不明確になる場合があります。
promptlyas soon as practicable などは、実務で争点になりやすい表現です。
best effortsreasonable effortscommercially reasonable efforts は法域と文脈で強度が変わります。
事前書面承諾、法令上の要請、グループ会社開示などの例外範囲を確認します。
契約成立、約因、条件、表明保証、誓約、確認を区別します。
契約成立、約因、条件、表明保証、誓約は、英文契約の入口とリスク配分を作る中核です。日本法の契約成立要件と英米法系の consideration を混同せず、条件が満たされる前後でどの義務や権利が発生するかを分けて読みます。
次の判断の流れは、条件や表明保証を読む順番を示しています。各段階で確認する論点が異なるため、読者は「成立、条件、事実表明、将来義務、承認」の順に、証明対象と救済の違いを読み取ってください。
offeracceptance、署名、発注書、SOW、利用規約の関係を確認します。
consideration は英米法系で拘束力を支える価値の交換として扱われます。
condition precedentcondition subsequentsubject to を参照先と合わせて読みます。
representation と warranty は、時点、知識限定、救済を確認します。
covenant は将来の行為義務や不作為義務を確認します。
offer と acceptanceoffer は申込み、acceptance は承諾です。契約本文への署名だけでなく、発注書、注文請書、クリックラップ、メール、利用規約、SOW、見積書などが契約成立の根拠になることがあります。どの文書が申込みで、どの行為が承諾なのか、また裏面約款や基本契約との優先順位を確認します。
considerationconsideration は英米法系で重要な約因です。一般には、契約を拘束力あるものにするための価値の交換を意味します。日本法では契約成立に同じ概念を必要としないため、in consideration of the mutual covenants contained herein のような定型句も、準拠法上の契約成立や拘束力の文脈で理解します。
condition precedentcondition subsequentsubject tocondition precedent は、ある権利・義務・請求が発生する前に満たされるべき条件です。condition subsequent は、いったん発生した権利・義務を消滅させる条件です。subject to は、条件、制限、優先順位を作る頻出表現です。Subject to Section 10, Supplier shall indemnify Customer... とあれば、第10条が責任上限条項かどうかを必ず確認します。
次の比較表は、表明保証、保証、誓約、確認の違いを整理したものです。似た見出しの下に置かれていても、過去・現在の事実を述べるのか、将来の行動を縛るのかで、証明対象と救済が変わる点を読み取ることが重要です。
| 表現 | 対象 | 実務上の確認点 |
|---|---|---|
representation | 締結時または特定時点の事実 | 虚偽時に補償、解除、損害賠償、クロージング拒絶へつながるかを確認します。 |
warranty | 品質、権利、性能、非侵害などの保証 | 違反時の救済が再履行に限定されるか、賠償まで含むかを確認します。 |
representations and warranties | 事実の正確性を前提にしたリスク配分 | 何について、いつ、誰の知識に基づき、どの重要性で述べているかを確認します。 |
covenant | 将来の行為または不作為 | 通常業務運営義務、競業避止、勧誘禁止、規制対応などで機能します。 |
acknowledges | 事実やリスクの承認 | as-is 提供や保証排除と組み合わさると、利用者側に不利になり得ます。 |
indemnify、defend、consequential damages、責任制限を金額リスクとして読みます。
補償、防御、損害賠償、責任制限は、英文契約で金額リスクが最も大きく動く領域です。第三者請求、知財侵害、秘密情報漏えい、個人情報事故、法令違反、製造物責任、税務、M&A表明保証違反などで、どの損失を誰が負うかを具体的に読みます。
次の比較表は、補償と損害賠償の主要表現をまとめたものです。似た語が並んでいても、訴訟防御の主導権、費用負担、責任上限の対象、第三者請求の範囲が変わるため、読者は各語がどの負担を移転しているかを読み取ってください。
| 表現 | 意味 | 確認すべき点 |
|---|---|---|
indemnify | 損害・損失を補填します。 | losses だけか、請求、賠償、責任、費用、合理的な専門家費用まで含むかを確認します。 |
defend | 第三者請求に対して防御します。 | 防御費用、主導権、和解承諾権、利益相反を確認します。 |
hold harmless | 相手方を責任から保護します。 | indemnify と重複するか、法域上の差があるかを確認します。 |
damages | 損害賠償金です。 | damage の物理的損傷と区別します。 |
consequential damages | 特別事情から生じる損害として扱われることが多い類型です。 | 逸失利益、代替調達費、データ復旧費、第三者請求が除外されるかを文言と準拠法で確認します。 |
incidental damages | 違反に付随して合理的に発生する費用です。 | 検査、受領、輸送、保管、代替取引などの費用を確認します。 |
punitive damages / exemplary damages | 懲罰的または見せしめ的な賠償です。 | 通常は責任制限条項で除外されることが多いです。 |
limitation of liability は三層で読みます責任制限条項では、まず一定種類の損害を除外し、次に損害賠償総額に上限を設け、最後に例外として秘密保持違反、知財侵害、補償義務、支払義務、故意・重過失、法令違反、データ保護違反などを上限から除外する構造がよく使われます。
次の判断の流れは、責任制限条項を読む順番を表しています。損害の種類、上限金額、例外の順に追うことで、読者は一見強い補償条項が実際には上限で制限されていないかを読み取れます。
indirectincidentalspecialconsequentialpunitive の列挙を確認します。
paid or payablepreceding twelve monthsaggregate liability の意味を読みます。
秘密保持、知財、補償、支払、故意・重過失、データ保護違反が例外かを見ます。
通知期限、防御主導権、和解承諾、費用負担と矛盾しないかを確認します。
liquidated damages と penaltyliquidated damages は損害額の予定です。納期遅延、SLA違反、秘密保持違反、競業避止違反などで使われます。予定損害額が合理的な事前見積りであること、実損害の算定が困難であること、過度に懲罰的でないこと、準拠法上の有効性を確認します。
injunctive relief と specific performanceinjunctive relief は差止め救済です。秘密情報漏えい、知財侵害、競業避止、勧誘禁止、データ不正利用で重要です。specific performance は金銭賠償ではなく契約上の行為そのものを履行させる救済です。without the necessity of proving actual damages や without posting a bond があっても、裁判所や仲裁廷が必ずその通りに命じるとは限りません。
終了事由、治癒期間、存続条項、準拠法、裁判管轄、仲裁地を確認します。
解除・終了・違反・存続条項と、準拠法・裁判管轄・仲裁条項は、紛争が起きた後の費用、時間、証拠、執行可能性を左右します。軽微な違反でも終了できるのか、重大違反だけなのか、治癒期間があるのか、どの国・地域で争うのかを具体的に読みます。
次の時系列は、契約違反から終了または紛争処理へ進む典型的な順番を示しています。読者にとって重要なのは、通知、治癒期間、終了権、存続条項、紛争地が連動している点を読み取ることです。
breach または defaultany breach と material breach は大きく異なります。金融契約では Event of Default が期限の利益喪失などを招くことがあります。
notice と通知要件解除通知、違反通知、補償請求通知、仲裁通知は、通知条項の方式・宛先・効力発生時点を満たす必要があります。
cure period重大違反、書面通知、通知受領、30日以内の治癒失敗が揃ってから終了権が発生する設計があります。
terminationexpirationsurvival将来効の終了か、期間満了か、終了後も秘密保持・知財・支払・補償・責任制限・紛争解決が存続するかを確認します。
terminatecancelrescindterminate は契約を将来に向かって終了する意味で広く使われます。cancel は注文や契約を取り消す意味で使われることがあります。rescind は契約を遡及的に取り消す、または解除する意味で使われることがあり、法域によって技術的な意味を持ちます。
termination for cause と termination for conveniencetermination for cause は、相手方の違反、破産、法令違反、支配権変更、輸出規制違反などの理由に基づく終了です。termination for convenience は、理由を問わない任意終了です。自社がサービス提供者の場合、広い任意終了権を認めると投資回収前に契約を終了されるリスクがあるため、最低利用期間、早期終了料、未払費用、移行支援費、既発注分の支払、在庫・専用設備の買取りを設計します。
次の比較表は、準拠法、裁判管轄、仲裁で確認する主要語を整理したものです。短い条項でも紛争時の戦略と費用に大きく影響するため、読者は法律、場所、機関、言語、執行可能性を分けて読み取ってください。
| 表現 | 意味 | 確認すべき点 |
|---|---|---|
governing law | 準拠法です。 | 契約の解釈、成立、有効性、違反、救済、時効、損害、補償、責任制限に影響します。 |
without regard to its conflict of laws principles | 抵触法による別法域への移動を避ける趣旨です。 | 実際の効果は法域により異なります。 |
jurisdiction | 裁判所の管轄権です。 | 専属か非専属か、相手国裁判所で争う費用を確認します。 |
venue / forum | 裁判地や紛争解決の場です。 | 証拠開示、言語、陪審、執行の負担を確認します。 |
arbitration | 仲裁です。 | 機関、規則、仲裁地、仲裁人の人数、仲裁言語、緊急仲裁、守秘義務を確認します。 |
seat of arbitration | 仲裁手続を支える法的な場所です。 | 会議場所とは異なり、仲裁合意の有効性や取消しの管轄に影響します。 |
ニューヨーク条約は、外国仲裁判断の承認・執行を支える重要な条約です。国際取引で仲裁を選ぶ意味は、中立地で争えることだけではありません。相手方の資産が複数国にある場合、仲裁判断の執行可能性が現実的に重要になります。
entire agreement、waiver、assignment、notwithstandingなどを条項間の優先順位から読みます。
ボイラープレート条項は定型的に見えますが、契約全体の運用、変更、通知、権利放棄、譲渡、不可抗力、優先順位を決めます。また、日本企業が誤解しやすい notwithstandingwithout prejudice toto the extent などは、短い一語で条項の力関係を変えます。
次の一覧は、定型条項でよく問題になる項目をまとめたものです。読者にとって重要なのは、定型的に見える条項でも、契約前の説明、変更手続、通知の有効性、譲渡可否、不可抗力の免責範囲に直接影響する点を読み取ることです。
entire agreement契約書が当事者間の完全な合意であり、締結前の交渉、説明、メール、提案書、口頭合意に優先する旨を定めます。
完全合意amendment と modification契約変更に書面と署名が必要か、電子署名、メール、SOW、変更注文が要件を満たすかを確認します。
変更手続waiver と no waiver一度権利を行使しなかったことが将来の権利放棄にならないかを定めます。長期の黙認には注意します。
権利管理severability一部条項が無効または執行不能でも、契約の残部を有効に存続させる構造です。
一部無効notices通知の方法、宛先、効力発生時点、メール通知の可否、法的通知と運用通知の区別を定めます。
通知force majeure自然災害、戦争、テロ、感染症、政府命令、輸出入規制、通信障害などを対象にするかを確認します。
免責範囲further assurances目的実現に必要な追加書類の作成、署名、協力を行う義務を定めます。
追加協力次の比較表は、日本企業が特に誤解しやすい表現を整理したものです。短い接続表現が優先順位、責任範囲、努力義務、単独裁量を変えるため、読者は文全体と参照先条項を合わせて読み取ってください。
| 表現 | 読み方 | 注意点 |
|---|---|---|
notwithstanding | 他の条項に優先する例外を作ります。 | 責任制限、解除、補償、秘密保持、支払、知財で特に注意します。 |
without prejudice to | 他の権利や救済を保持します。 | ある措置を取っても別の権利を失わない設計になります。 |
to the extent | 範囲を限定します。 | if と同じではありません。割合、因果関係、共同過失を確認します。 |
including without limitation | 列挙を例示にとどめます。 | 無限定にリスクを広げたくない場合は、限定列挙やカテゴリー明確化を検討します。 |
commercially reasonable efforts | 商業的に合理的な努力です。 | 結果保証ではありません。提出書類、期限、費用負担、当局対応、報告を具体化します。 |
sole discretion | 単独裁量です。 | 相手方に広い判断権を与えます。長期供給や承認条項では注意します。 |
as is | 現状有姿です。 | 保証排除と組み合わされることが多く、品質、稼働率、サポート、非侵害の排除を確認します。 |
time is of the essence | 期限遵守が本質的要素であることを示します。 | 納期、クロージング日、支払期限、オプション行使期限で重要です。 |
hereby / hereto / hereunder / thereof | 古典的な指示表現です。 | 契約全体、特定条項、前の名詞のどれを指すかを確認します。 |
定義、義務、条件、救済、紛争、定型条項まで横断して確認します。
ここでは、英文契約で頻出する主要法律英語100語を、典型訳と実務上の読み方に分けて整理します。数が多い一覧ですが、読者は「定義、義務、条件、救済、知財・秘密保持、譲渡、紛争、定型条項」のどの領域に属する語かを意識して読むことが重要です。
| No. | 法律英語 | 典型訳 | 実務上の読み方・注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Agreement | 契約、合意 | 文書名だけで拘束力は決まりません。本文の義務、署名、準拠法を確認します。 |
| 2 | Contract | 契約 | 法的拘束力のある約束です。英米法では成立要素の確認が重要です。 |
| 3 | Party / Parties | 当事者 | 単数か複数か、Affiliateを含むかを確認します。 |
| 4 | Affiliate | 関係会社 | 定義次第で親会社、子会社、兄弟会社、支配会社まで含まれます。 |
| 5 | Representative | 代表者、関係者 | 役員、従業員、専門家、委託先を含む場合があります。 |
| 6 | Effective Date | 効力発生日 | 署名日と異なることがあります。期間計算の起算点として確認します。 |
| 7 | Execution Date | 署名日 | 契約締結日を示します。効力発生日とは区別します。 |
| 8 | Term | 契約期間、条件 | 期間の意味か条項の意味かを文脈で判断します。 |
| 9 | Renewal | 更新 | 自動更新か、更新通知が必要かを確認します。 |
| 10 | Expiration | 期間満了 | 中途終了とは異なります。存続条項との関係を確認します。 |
| 11 | Recitals | 前文、背景説明 | 拘束力を持たせるか、本文で明確にします。 |
| 12 | Whereas | 前文の背景表現 | 古典的な前文表現です。背景事実を示します。 |
| 13 | Definitions | 定義 | 大文字定義語は必ず定義条項を確認します。 |
| 14 | Means | 意味する | 限定定義になりやすい語です。 |
| 15 | Includes | 含む | 例示か限定かに注意します。 |
| 16 | Including without limitation | 含むが限定されない | 範囲を広げる表現です。過度に広い定義に注意します。 |
| 17 | Shall | 義務を負う | 伝統的な義務表現です。義務者と行為内容を読みます。 |
| 18 | Must | 義務を負う | 義務を明確に示す現代的表現です。 |
| 19 | Will | する、となる | 将来事実か義務表現か、契約全体で使い方を確認します。 |
| 20 | May | できる | 権利、裁量、許可として読みます。単なる可能性と誤解しないことが重要です。 |
| 21 | Shall not | 禁止される | 禁止義務を示します。対象行為と例外を確認します。 |
| 22 | Agrees to | 合意する | 一般的な義務表現です。内容、期限、救済を確認します。 |
| 23 | Undertakes to | 引き受ける | 誓約や引受けのニュアンスがあります。 |
| 24 | Covenants to | 誓約する | 金融契約やM&Aで重要です。将来義務を示します。 |
| 25 | Representation | 表明 | 現在または過去の事実表明です。虚偽時の救済に注意します。 |
| 26 | Warranty | 保証 | 品質、権利、非侵害、性能など、文脈で内容が変わります。 |
| 27 | Represents and warrants | 表明し保証する | 表明保証条項の定型表現です。時点、知識限定、救済を確認します。 |
| 28 | Acknowledges | 認める、確認する | リスク認識や事実承認として使われます。 |
| 29 | Disclaimer | 免責、否認 | 保証排除や責任否認です。大文字や太字で置かれることがあります。 |
| 30 | As is | 現状有姿 | 保証なしの提供を示します。買主や利用者側は保証排除を確認します。 |
| 31 | Condition precedent | 前提条件、停止条件 | 義務や権利が発生する前に満たす条件です。 |
| 32 | Subject to | 条件として、従い | 参照先条項が優先や制限を作ることがあります。 |
| 33 | Provided that | ただし | 条件、例外、但書を作ります。 |
| 34 | Notwithstanding | にもかかわらず | 他条項に優先する強い表現です。 |
| 35 | Without prejudice to | 害することなく | 他の権利を保持したまま別の措置を取れる表現です。 |
| 36 | To the extent | 範囲で | ifと同じではありません。割合や因果関係を確認します。 |
| 37 | Material | 重要な | 解除、表明保証、開示で重要です。定義が必要な場合があります。 |
| 38 | Material breach | 重大な違反 | 解除、補償、デフォルトのトリガーになります。 |
| 39 | Default | 債務不履行 | 金融契約では重大な効果を持ちます。 |
| 40 | Event of Default | デフォルト事由 | 期限の利益喪失などの引き金になります。 |
| 41 | Cure period | 治癒期間 | 違反是正の猶予期間です。通知日と起算点を確認します。 |
| 42 | Notice | 通知 | 方式、宛先、効力発生日を確認します。 |
| 43 | Prior written notice | 事前書面通知 | 何日前か、電子メールが使えるかを確認します。 |
| 44 | Termination | 終了 | 通常は将来効です。存続条項に注意します。 |
| 45 | Termination for cause | 理由ある終了 | 違反、破産、法令違反などを理由とする終了です。 |
| 46 | Termination for convenience | 任意終了 | 理由なし終了です。受注者側は投資回収に注意します。 |
| 47 | Rescission | 取消し、解除 | 遡及効が問題になることがあります。法域に依存します。 |
| 48 | Survival | 存続 | 終了後も条項が残ることを示します。 |
| 49 | Indemnify | 補償する | 損失補填です。対象損害、手続、上限を確認します。 |
| 50 | Indemnity | 補償 | 第三者請求、知財、税務、M&Aで頻出します。 |
| 51 | Defend | 防御する | 訴訟対応義務です。補償とは別に重い義務になることがあります。 |
| 52 | Hold harmless | 責任から保護する | 法域により意味差があります。重複表現に注意します。 |
| 53 | Claim | 請求、クレーム | 第三者請求か当事者間請求かを確認します。 |
| 54 | Losses | 損失 | damages、liabilities、costs、expensesを含むか定義を確認します。 |
| 55 | Damages | 損害賠償金 | 複数形では法的救済としての賠償を意味します。 |
| 56 | Direct damages | 直接損害 | 定義されないことが多く、準拠法に注意します。 |
| 57 | Indirect damages | 間接損害 | consequential damagesとの関係が不明確なことがあります。 |
| 58 | Consequential damages | 結果損害 | 単純に間接損害と訳すだけでは足りません。 |
| 59 | Incidental damages | 付随損害 | 検査、輸送、保管、代替調達費などが問題になります。 |
| 60 | Special damages | 特別損害 | 法域により範囲が異なります。 |
| 61 | Punitive damages | 懲罰的損害賠償 | 責任制限で除外されることが多い損害類型です。 |
| 62 | Lost profits | 逸失利益 | 除外対象か例外かを確認します。 |
| 63 | Limitation of liability | 責任制限 | 損害類型の除外と総額上限を分けて読みます。 |
| 64 | Cap | 上限 | 金額、期間、請求単位、例外を確認します。 |
| 65 | Aggregate liability | 累積責任 | 契約全体の総額上限を示します。 |
| 66 | Exclusion | 除外 | どの損害や義務が除外されるかを確認します。 |
| 67 | Liquidated damages | 予定損害賠償 | 過大だとpenalty問題になる可能性があります。 |
| 68 | Penalty | 違約罰、制裁 | 法域により執行不能リスクがあります。 |
| 69 | Injunctive relief | 差止め救済 | 秘密保持、知財、競業避止で重要です。 |
| 70 | Specific performance | 特定履行 | 金銭賠償ではなく履行そのものを求める救済です。 |
| 71 | Equitable relief | 衡平法上の救済 | 差止めや特定履行を含みます。 |
| 72 | Confidential Information | 秘密情報 | 定義、除外、開示許容範囲を確認します。 |
| 73 | Non-disclosure | 非開示 | NDAの中核義務です。 |
| 74 | Proprietary rights | 所有権、専有的権利 | 知財、データ、成果物で重要です。 |
| 75 | Intellectual Property Rights | 知的財産権 | 著作権、特許、商標、営業秘密などを含みます。 |
| 76 | License | ライセンス、使用許諾 | 独占性、譲渡、サブライセンス、地域、期間を確認します。 |
| 77 | Royalty | ロイヤルティ | 計算基礎、監査、税、為替に注意します。 |
| 78 | Assignment | 譲渡 | 契約上の地位や権利譲渡の制限を確認します。 |
| 79 | Delegation | 履行委任 | 義務履行を第三者に委ねることです。 |
| 80 | Subcontractor | 再委託先 | 承諾要否、責任、情報管理を確認します。 |
| 81 | Successors and assigns | 承継人、譲受人 | 契約拘束の及ぶ範囲を示します。 |
| 82 | Change of Control | 支配権変更 | M&A時の解除や同意トリガーになります。 |
| 83 | Governing law | 準拠法 | 解釈、救済、時効、有効性に影響します。 |
| 84 | Jurisdiction | 管轄 | 裁判所の権限です。専属か非専属かを確認します。 |
| 85 | Venue | 裁判地 | どの場所の裁判所かを示します。 |
| 86 | Forum selection clause | 法廷地選択条項 | 紛争解決の裁判所や場所を指定します。 |
| 87 | Arbitration | 仲裁 | 機関、規則、仲裁地、言語を確認します。 |
| 88 | Seat of arbitration | 仲裁地 | 仲裁手続法や取消裁判所に影響します。 |
| 89 | Award | 仲裁判断 | 承認と執行の対象になります。 |
| 90 | Waiver | 権利放棄 | 書面か黙示か、将来効への影響に注意します。 |
| 91 | No waiver | 権利不放棄 | 不行使が放棄にならない旨を定めます。 |
| 92 | Entire agreement | 完全合意 | 事前説明やメールの扱いに影響します。 |
| 93 | Severability | 分離可能性 | 一部無効でも残部を維持する構造です。 |
| 94 | Amendment | 修正 | 書面署名要件を確認します。 |
| 95 | Counterparts | 副本、別個署名 | 複数の署名ページを一体化します。 |
| 96 | Further assurances | 追加協力 | 追加書類、署名、協力義務を定めます。 |
| 97 | Force majeure | 不可抗力 | 事象、通知、軽減、長期化時の終了権を確認します。 |
| 98 | Act of God | 天災 | 不可抗力の一種です。範囲は条項次第です。 |
| 99 | Compliance with laws | 法令遵守 | 輸出管理、制裁、贈収賄、個人情報などを確認します。 |
| 100 | Audit rights | 監査権 | 監査範囲、頻度、費用、秘密保持を確認します。 |
法律英語の意味を、社内説明・交渉・リスク管理へ接続します。
契約レビューでは、法律英語の意味だけでなく、事業、経理、税務、情報システム、セキュリティ、知財、人事、輸出管理、内部監査、経営陣と接続して確認する必要があります。英文契約を受け取ったら、下記の観点を順に確認すると論点の抜け漏れを減らせます。
次の一覧は、英文契約レビューで確認する実務項目を領域別に整理したものです。読者にとって重要なのは、各項目を単独で見るのではなく、定義、義務、救済、責任上限、終了、紛争解決が互いに矛盾していないかを読み取ることです。
当事者名、法人番号、所在地、署名権限者、Effective Date、契約期間、更新、終了、存続条項、定義語、SOW、価格表、DPA、SLA、注文書、利用規約との優先順位を確認します。
義務者、履行内容、期限、品質、場所、結果保証か努力義務か、顧客側の協力義務、前提条件、治癒期間、SLAやサービスクレジットの位置づけを確認します。
義務時点、knowledge 限定、material 限定、開示資料による例外、違反時の救済、存続期間、責任上限を確認します。
第三者請求だけか、当事者間損害も含むか、defend や hold harmless の有無、専門家費用、調査費用、和解金、行政罰、通知期限、防御主導権、和解同意、責任上限との関係を確認します。
除外される損害類型、lost profits、データ復旧費、代替調達費、第三者請求、上限金額、対象期間、秘密保持違反、知財侵害、個人情報漏えい、支払義務、故意・重過失、補償義務の例外を確認します。
任意終了権、重大違反時の治癒期間、支払遅延時の停止権、破産、支配権変更、規制違反、制裁対象化、終了後のデータ返還・削除、移行支援、在庫処理、未払費用、前払金返還を確認します。
終了準拠法、裁判か仲裁か、専属管轄か非専属管轄か、仲裁機関、規則、仲裁地、仲裁言語、仲裁人の人数、相手方資産の所在国での執行可能性、緊急差止めの余地を確認します。
紛争価格・支払条件は経理、税務、財務、個人情報・データはプライバシー担当と情報セキュリティ、知財・成果物は知財部や研究開発部門、再委託は人事・労務・調達、輸出管理や制裁はコンプライアンス部門と確認します。
連携訳語から一歩進み、契約上の機能とリスク配分を説明できる状態を目指します。
英文契約で頻出する法律英語は、単語帳として覚えるだけでは実務に耐えません。重要なのは、各語が契約構造の中でどのような法的機能を持つかを理解することです。
shallmustmay は義務と裁量を作ります。representationwarrantycovenant は、事実、保証、将来義務を分けます。condition precedentsubject toprovided that は、義務発生や優先順位を制御します。indemnifydefendhold harmless は、第三者請求と損失補填の責任を配分します。consequential damageslimitation of liabilityliquidated damages は、損害賠償の範囲と上限を設計します。governing lawjurisdictionarbitration は、紛争が起きた後の場を決めます。
企業法務の現場では、一般的な日本語訳がある用語ほど誤解が生じやすくなります。訳語を出発点にしながら、準拠法、条項構造、定義、例外、救済、手続、証拠、執行可能性まで読むことが、英文契約レビューの中核です。
次の重要ポイントは、このページ全体の結論をまとめたものです。読者は、法律英語の理解を知識の蓄積ではなく、契約上のリスクを説明可能にする実務手順として読み取ってください。
自社が負う義務を明確にし、受け取る権利を確保し、予見可能なリスクをコントロールし、紛争時に説明可能な文書を残すために、用語と条項構造を一体で確認します。