2σ Guide

デッドロック条項
(コールオプション等)

合弁会社、株主間契約、共同創業、事業承継で意思決定が止まる場面に備え、協議手続、退出手段、価格算定、濫用防止、実行可能性を整理します。

4機能 経営停止・交渉秩序・退出・濫用防止
2回 同一議案否決を発動基準にする例
60日 経営層協議の期限例
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デッドロック条項 (コールオプション等)

合弁会社、株主間契約、共同創業、事業承継で意思決定が止まる場面に備え、協議手続、退出手段、価格算定、濫用防止、実行可能性を整理します。

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デッドロック条項 (コールオプション等)
合弁会社、株主間契約、共同創業、事業承継で意思決定が止まる場面に備え、協議手続、退出手段、価格算定、濫用防止、実行可能性を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • デッドロック条項 (コールオプション等)
  • 合弁会社、株主間契約、共同創業、事業承継で意思決定が止まる場面に備え、協議手続、退出手段、価格算定、濫用防止、実行可能性を整理します。

POINT 1

  • デッドロック条項(コールオプション等)の全体像
  • 経営停止を避け、協議、退出、支配権移転、濫用防止を一体で設計します。
  • よいデッドロック条項は会社価値を壊さないための設計です
  • 経営停止を避ける
  • 交渉秩序を作る

POINT 2

  • デッドロック条項(コールオプション等)が必要になる会社・契約
  • 事業停止
  • 予算未承認により投資、採用、借入、仕入、研究開発が止まります。
  • 統治不安
  • 代表者選任、役員報酬、決裁権限が不安定になります。

POINT 3

  • デッドロック条項(コールオプション等)の解消手段を比較する
  • 1. 通常協議:担当者または運営委員会で一定期間協議します。
  • 2. 経営層協議:代表者、取締役、CFO、法務責任者、外部専門家へ上げます。
  • 3. 一時的運営ルール:前年度予算、緊急支出、既存契約維持、法令遵守支出を定めます。
  • 4. 専門家決定または調停:価格、会計、技術、KPI評価など専門判断で解ける事項を委ねます。
  • 5. 最終的な出口:コール、プット、共同売却、第三者売却、清算へ進みます。

POINT 4

  • デッドロック条項(コールオプション等)の法的構造と発動事由
  • 1. 重要事項を限定列挙する:年次予算、設備投資、借入、代表者選定、主要 事業譲渡 などを具体化します。
  • 2. 否決回数と期間を定める:同一または実質的に同一の議案が2回否決され、60日以内に合意できないなど、客観化します。
  • 3. 行使不可:重大違反や不誠実行為で膠着を作った当事者は権利行使できない設計にします。
  • 4. 公正価値で処理:第三者評価、公正市場価値、合理的ディスカウントで価格紛争を抑えます。

POINT 5

  • デッドロック条項(コールオプション等)の日本法上の主要論点
  • 譲渡制限株式
  • 譲渡承認申請、会社が承認しない場合の指定買取人、価格決定申立て、株主名簿書換を確認します。
  • 種類株式・取得条項
  • 取得条項付株式や取得請求権付株式を使う場合、定款変更、種類株主総会、登記、対価を確認します。

POINT 6

  • デッドロック条項(コールオプション等)の価格算定・税務・会計・規制
  • 価格が最大の紛争ポイントです。公正価値、評価人、税務上の時価、会計処理、規制承認を設計します。
  • どの時点を評価するか
  • 支配権価値か少数株式価値か
  • 下落要因をどう扱うか

POINT 7

  • デッドロック条項(コールオプション等)のドラフティングとケース別設計
  • 定義、協議、行使、価格、クロージング、濫用防止、紛争解決を具体化します。
  • 読者にとって重要なのは、発動事由、価格、実行手続の3点が曖昧だと高い確率で紛争化する点です。
  • 各行では、リスクが高い例を避けるために何を明記すべきかを確認してください。
  • 各項目では、契約本文に入れるべき中核要素を確認してください。

POINT 8

  • デッドロック条項(コールオプション等)のFAQ
  • 一般的な制度説明として、設計時によく問題になる疑問を整理します。
  • Q1. デッドロック条項は必ず入れるべきですか。
  • Q2. コールオプション条項があれば、相手の株式を確実に取得できますか。
  • Q3. 価格を額面または簿価にしてもよいですか。

まとめ

  • デッドロック条項 (コールオプション等)
  • デッドロック条項(コールオプション等)の全体像:経営停止を避け、協議、退出、支配権移転、濫用防止を一体で設計します。
  • デッドロック条項(コールオプション等)が必要になる会社・契約:50:50 JV、拒否権付き投資、共同創業、親族会社、クロスボーダーJVで特に重要です。
  • デッドロック条項(コールオプション等)の解消手段を比較する:協議、専門家決定、調停、仲裁、コール、プット、第三者売却、清算を段階的に検討します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

デッドロック条項(コールオプション等)の全体像

経営停止を避け、協議、退出、支配権移転、濫用防止を一体で設計します。

デッドロック条項(コールオプション等)とは、会社、合弁会社、株主間契約、投資契約、事業承継、共同創業、M&A後の共同支配関係で、重要事項について意見が対立し、通常の意思決定手続では前に進めなくなった場合に、あらかじめ定めた手順で膠着状態を解消する条項です。

コールオプションは、一定の事由が発生した場合に一方当事者が他方当事者の株式・持分を買い取る権利として設計されることが多い手段です。ただし、発動要件、価格算定、譲渡承認、会社法上の手続、税務、会計、規制、利益相反、少数株主保護、紛争解決を精密に設計しなければ、新たな紛争の火種になります。

次の重要ポイントは、デッドロック条項が持つ4つの機能をまとめたものです。なぜ重要かというと、条項の目的を「相手を排除すること」だけに置くと、会社価値を毀損し、税務・会社法・紛争上の問題を招くためです。各項目から、発動しないこと自体が交渉秩序を作るという点を読み取ってください。

よいデッドロック条項は会社価値を壊さないための設計です

協議の段階、暫定運営、最終的な退出、価格、濫用防止、実行手続がそろうことで、当事者は安易な対立ではなく合意形成を選びやすくなります。

次の4つの項目は、デッドロック条項に期待される機能を並べたものです。読者にとって重要なのは、経営停止の回避と退出設計だけでなく、濫用防止まで含めて初めて条項が機能する点です。各項目では、契約で何を明確にすべきかを確認してください。

Function 01

経営停止を避ける

取締役会、株主総会、JV運営委員会、予算承認、資金調達、重要契約、知財利用が止まることを防ぎます。

Function 02

交渉秩序を作る

誰が、どの資料に基づき、何日以内に、どのレベルまで協議するかを定めます。

Function 03

退出・支配権移転を設計する

コール、プット、第三者売却、共同売却、清算などを、事業継続可能性と合わせて選びます。

Function 04

濫用を抑える

意図的な膠着作り、安値での排除、高値での売り抜けを防ぐ価格・手続・権利制限を置きます。

Section 01

デッドロック条項(コールオプション等)が必要になる会社・契約

50:50 JV、拒否権付き投資、共同創業、親族会社、クロスボーダーJVで特に重要です。

企業法務におけるデッドロックとは、会社または事業体の意思決定に必要な賛成が得られず、経営上または契約上の重要事項について意思決定が停止する状態です。単なる意見の不一致ではなく、会社の機関決定、契約上の承認、資金繰り、役員人事、事業計画、事業継続、株主間関係の存続に影響する場合に問題になります。

次の比較表は、デッドロックが起きやすい構造と実務上の注意点を対応させたものです。なぜ重要かというと、どの会社類型かによって、協議を重視すべきか、価格算定を重視すべきか、規制や知財を重視すべきかが変わるためです。左から右へ、発生理由と設計上の注意を確認してください。

類型起きる理由実務上の注意点
50:50合弁会社議決権が完全に拮抗します。取締役会・株主総会・予算承認が止まりやすくなります。
拒否権付き少数投資少数株主に重要事項拒否権があります。拒否権の範囲が広すぎると経営停止を招きます。
共同創業会社人間関係と経営判断が一体化しやすい構造です。退任、退職、競業、知財帰属も同時に設計します。
親族会社・事業承継会社相続、感情対立、役員人事が絡みます。株式分散と経営権対立が長期化しやすくなります。
技術・知財JV知財、データ、ノウハウ、開発費で対立しやすい構造です。株式だけでなくライセンス終了後の処理が重要です。
クロスボーダーJV法制度、文化、会計、コンプライアンス方針が異なります。外為法、制裁、輸出管理、仲裁地、準拠法を確認します。
上場会社・公開買付が絡む取引株式取得規制、情報開示、少数株主保護があります。TOB規制、適時開示、利益相反管理が不可欠です。

次の一覧は、デッドロックを放置した場合に起こり得るリスクを整理しています。読者にとって重要なのは、紛争が株式譲渡だけでなく、資金繰り、従業員、取引先、仮処分まで広がる点です。各項目では、予防的にどの条項を置くべきかを考えてください。

事業停止

予算未承認により投資、採用、借入、仕入、研究開発が止まります。

統治不安

代表者選任、役員報酬、決裁権限が不安定になります。

資金繰り悪化

追加出資や融資が受けられず、資金繰りが悪化します。

価値低下

取引先、金融機関、従業員が不安を感じ、事業価値が低下します。

紛争拡大

配当、情報開示、役員派遣、議決権行使、仮処分、清算へ拡大します。

Section 02

デッドロック条項(コールオプション等)の解消手段を比較する

協議、専門家決定、調停、仲裁、コール、プット、第三者売却、清算を段階的に検討します。

デッドロック条項は、いきなり強制買取へ進めばよいわけではありません。担当者協議、経営層協議、一時的運営ルール、専門家決定、調停、最終的な退出という段階を分けることで、コールオプションが過度に攻撃的に使われることを抑えられます。

次の比較表は、典型的な解消手段の長所、短所、向いている場面を整理したものです。なぜ重要かというと、コールオプションは強力ですが、事業継続に必要な知財・人材・許認可を同時に処理できない場合があるためです。各行で、手段と利用場面の相性を確認してください。

手段内容長所短所・リスク向いている場面
エスカレーション協議担当者から経営トップへ協議を上げます。関係を維持しやすいです。時間稼ぎに使われることがあります。長期JV、継続取引
専門家決定会計士、技術専門家等が特定論点を判断します。予算・価格・技術論点に有効です。経営判断そのものには不向きです。価格、会計、技術仕様
調停・メディエーション中立者が合意形成を支援します。柔軟で関係維持に向きます。拘束力が弱い場合があります。共同創業、親族会社
仲裁私的な紛争解決手続で最終判断を得ます。国際案件で執行可能性が高い場合があります。時間・費用がかかることがあります。クロスボーダーJV
コールオプション一方が他方株式を買い取る権利です。支配関係を明確にできます。濫用・価格紛争・資金問題があります。最終的な退出設計
プットオプション一方が他方に買い取らせる権利です。少数側の退出確保に有効です。買主に資金負担があります。投資家保護、創業者退出
ロシアン・ルーレット一方が価格を提示し、相手が売るか買うか選びます。価格提示に自己抑制が働きます。資金力差があると不公平です。同等の資金力がある50:50
第三者売却・清算会社または株式の第三者売却、または会社終了です。最終手段として明確です。許認可・競合・価値毀損が生じます。外部売却可能性が高い会社、継続価値が乏しい場合

次の判断の流れは、一般的に推奨される解消手順を表します。読者にとって重要なのは、最終的な出口の前に、協議、暫定運営、専門家判断を置くことで、濫用と価値毀損を抑えられる点です。上から下へ、段階が進むほど強い手段になると読んでください。

段階的な解消手順

通常協議

担当者または運営委員会で一定期間協議します。

経営層協議

代表者、取締役、CFO、法務責任者、外部専門家へ上げます。

一時的運営ルール

前年度予算、緊急支出、既存契約維持、法令遵守支出を定めます。

専門家決定または調停

価格、会計、技術、KPI評価など専門判断で解ける事項を委ねます。

最終的な出口

コール、プット、共同売却、第三者売却、清算へ進みます。

Section 03

デッドロック条項(コールオプション等)の法的構造と発動事由

売買一方の予約、停止条件付売買、譲渡義務を組み合わせ、発動事由を客観化します。

コールオプションとは、一定の条件が満たされた場合に、一方当事者が他方当事者へ株式・持分の売渡しを求められる権利です。株主間契約上のコールオプションは、会社に対して株式交付を受ける新株予約権とは異なり、既存株主へ既存株式の譲渡を求める構成になることが多いです。

次の比較表は、コールオプションの法的構成を整理したものです。なぜ重要かというと、権利行使通知だけで何が起きるのか、売買契約がいつ成立するのか、譲渡書類への協力義務があるのかによって、実行時の争点が変わるためです。各行で、契約上どこまで具体化すべきかを確認してください。

構成考え方明確にすべき事項
売買一方の予約型権利行使通知により売買契約が成立する設計です。対象株式、予約完結権者、行使期間、発動事由、価格、クロージング日、株主名簿書換、譲渡承認、税費用負担
停止条件付売買型デッドロック発生と未解消を停止条件として売買を設計します。条件成就の客観的定義、否決回数、期間、重要事項、協議手続
譲渡義務・予約完結権併用型売買成立後に売主が書類交付、名義書換、譲渡承認申請に協力します。株券、担保権、第三者同意、チェンジ・オブ・コントロール、許認可

次の比較表は、コールオプションの発動事由と注意点を表します。読者にとって重要なのは、発動事由を広げすぎると相手方排除の道具になり、価格や手続の公正性が争われる点です。各行では、何を証明し、どの救済へつなげるかを確認してください。

発動事由内容注意点
継続的デッドロック重要事項について一定期間合意できない状態です。重要事項の範囲を限定します。
重大な契約違反株主間契約、JV契約、投資契約への重大違反です。治癒期間を置くか検討します。
不正・背信行為横領、競業、秘密漏えい、贈収賄、重大コンプライアンス違反です。立証基準、調査手続、暫定措置を定めます。
倒産手続倒産手続開始申立て、支払停止等です。破産法等との関係、否認リスクも確認します。
支配権変更・競業株主の親会社変更、競合会社による買収、競合事業開始です。定義と独禁法上の合理性に注意します。
キーパーソン離脱・規制問題創業者退職、外資規制、許認可、制裁、輸出管理違反です。労働法、公序良俗、当局対応と連動させます。

次の判断の流れは、発動事由を濫用させないための設計を示します。なぜ重要かというと、一方当事者が意図的に膠着を作り、安値取得を狙うことを防ぐ必要があるためです。上から下へ、客観的な事実、協議、権利制限、価格公正性の順に確認してください。

発動事由を絞り込む考え方

重要事項を限定列挙する

年次予算、設備投資、借入、代表者選定、主要事業譲渡などを具体化します。

否決回数と期間を定める

同一または実質的に同一の議案が2回否決され、60日以内に合意できないなど、客観化します。

自招あり
行使不可

重大違反や不誠実行為で膠着を作った当事者は権利行使できない設計にします。

自招なし
公正価値で処理

第三者評価、公正市場価値、合理的ディスカウントで価格紛争を抑えます。

Section 04

デッドロック条項(コールオプション等)の日本法上の主要論点

株主間契約、定款、譲渡制限、自己株式取得、取締役義務、信義則、強制履行を確認します。

デッドロック条項は、多くの場合、株主間契約、JV契約、投資契約、創業者間契約に置かれます。ただし、株主間契約は原則として当事者間の債権的効力にとどまり、会社、他の株主、第三者、将来の譲受人、取締役会、株主総会の決議効まで当然に拘束できるわけではありません。

次の一覧は、日本法上、株主間契約だけでなく定款や会社法上の手続との整合が必要な論点を表します。読者にとって重要なのは、契約上「譲渡する」と書いても、譲渡承認、自己株式取得、名簿書換、分配可能額、取締役義務が残る点です。各項目では、契約と会社法手続の両方を確認してください。

譲渡制限株式

譲渡承認申請、会社が承認しない場合の指定買取人、価格決定申立て、株主名簿書換を確認します。

種類株式・取得条項

取得条項付株式や取得請求権付株式を使う場合、定款変更、種類株主総会、登記、対価を確認します。

自己株式取得

会社が買主になる場合、決議機関、分配可能額、他株主の売主追加請求権、債権者保護、みなし配当を確認します。

取締役義務・利益相反

派遣元株主の利益だけで議決権行使や情報提供を行うと、善管注意義務や忠実義務の問題が生じます。

信義則・公序良俗・権利濫用

一方的な発動、簿価・額面での強制売却、些細な違反での大幅ディスカウントは争点化しやすいです。

強制履行の限界

勝訴しても時間がかかれば会社価値が毀損します。株券不発行化、書類事前差入れ、エスクローを検討します。

次の比較表は、実行可能性を高めるために事前に置くべき工夫を整理しています。なぜ重要かというと、相手方が書類交付や名簿書換に協力しない場合、裁判・仲裁だけでは時間がかかるためです。各行では、発動前に準備できる手当てを確認してください。

工夫目的確認事項
株券不発行会社への移行株券交付による実行障害を減らします。定款、株券発行状況、株主名簿を確認します。
株式質権・エスクロー回収可能性と書類交付の確実性を高めます。担保権、費用、解除条件を確認します。
譲渡書類の事前差入れ行使後の署名拒否を防ぎます。委任状、名簿書換請求書、譲渡承認申請書を整えます。
通知方法の明確化行使通知の到達争いを避けます。電子署名、書面、到達主義、住所変更通知を定めます。
関連義務の連動株式移転後の事業継続を守ります。秘密保持、競業避止、顧客・従業員引抜禁止、知財ライセンス終了後措置を連動させます。
Section 05

デッドロック条項(コールオプション等)の価格算定・税務・会計・規制

価格が最大の紛争ポイントです。公正価値、評価人、税務上の時価、会計処理、規制承認を設計します。

デッドロック条項で最も争われやすいのは価格です。発動事由が明確でも、価格が不明確であれば紛争は避けにくくなります。価格が明確でも、不当に低い・高いと評価されれば、信義則、公序良俗、税務、会計、少数株主保護、取締役責任の問題が生じます。

次の比較表は、価格算定方法の長所、短所、向いている場面を整理しています。なぜ重要かというと、会社の性質や発動事由に合わない算定方法を選ぶと、税務・会計・公正性の紛争につながるためです。各行では、対象会社の価値の源泉と算定方法が合っているかを確認してください。

算定方法内容長所短所向いている場面
固定価格契約時に価格を固定します。明確です。時間経過で不合理になりやすいです。短期契約、初期段階
簿価純資産や帳簿価額を基準にします。計算しやすいです。のれん・成長性を反映しにくいです。資産管理会社、不動産会社の一部
時価純資産法資産・負債を時価評価します。資産価値に強いです。収益力を反映しにくいです。資産保有会社
EBITDA倍率正常収益に倍率を乗じます。事業会社評価で分かりやすいです。正常化調整・倍率で争いやすいです。安定収益事業
DCF法将来キャッシュフローを割り引きます。成長性を反映しやすいです。事業計画・割引率で争いやすいです。成長企業、プロジェクト会社
類似会社比較法上場類似会社の倍率を参照します。市場データを使えます。類似会社選定が難しいです。業界比較可能な会社
第三者評価独立専門家が評価します。客観性を高めやすいです。費用・時間がかかります。重要取引全般

次の一覧は、公正市場価値を定義する際に検討すべき観点を示します。読者にとって重要なのは、FMVという言葉だけでは、支配権価値、少数株式価値、非流動性ディスカウント、シナジー価値の扱いが決まらない点です。各項目では、契約に明記すべき評価前提を確認してください。

基準日

どの時点を評価するか

発動事由発生日、通知日、クロージング日、直近決算日、膠着前の正常時点のいずれかを定めます。

価値前提

支配権価値か少数株式価値か

支配権取得を前提とする価値か、少数持分としての価値か、譲渡制限を反映するかを定義します。

調整項目

下落要因をどう扱うか

膠着や違反行為による一時的価値低下、簿外債務、偶発債務、配当、漏出価値を調整します。

次の比較表は、税務・会計・規制上の注意点を整理しています。なぜ重要かというと、契約価格が有効でも税務上の時価として当然に認められるとは限らず、株式取得が規制手続で止まることもあるためです。各行では、発動前に専門家確認が必要な論点を読み取ってください。

領域主なリスク契約での確認事項
税務上の時価親族間、同族会社間、関係会社間、役員・会社間、クロスボーダー取引で時価認定が問題になります。評価目的、評価基準日、評価資料、税務申告、納税資金を確認します。
自己株式取得みなし配当、分配可能額、源泉徴収、財務制限条項が問題になります。買主を会社にするか、他株主・第三者SPCにするかを検討します。
会計・監査株式取得義務、プットオプション、条件付対価、連結範囲、注記が問題になります。監査人への説明、会計処理、内部統制、取締役会承認を確認します。
上場・M&A公開買付、大量保有、インサイダー、適時開示、少数株主保護が問題になります。公正性担保措置、特別委員会、外部評価、開示を検討します。
独禁法・外為法・業法議決権比率上昇、外国投資家、重要技術、規制業種、許認可が問題になります。承認・届出・待機期間・第三者同意をクロージング条件にします。
Section 06

デッドロック条項(コールオプション等)のドラフティングとケース別設計

定義、協議、行使、価格、クロージング、濫用防止、紛争解決を具体化します。

ドラフティングでは、デッドロックの定義、協議手続、コールオプションの主体・対象、行使方法、価格算定、クロージング、規制・第三者同意、膠着中の会社運営、濫用防止、紛争解決を、発動時に使える粒度で定めます。

次の比較表は、条項設計で最初に確認すべきチェック項目を整理しています。読者にとって重要なのは、発動事由、価格、実行手続の3点が曖昧だと高い確率で紛争化する点です。各行では、リスクが高い例を避けるために何を明記すべきかを確認してください。

項目確認事項リスクが高い例
定義対象事項、否決回数、期間が明確か。「経営方針の不一致」だけ
協議エスカレーションと協議期間があるか。直ちに強制買取
発動者誰がコール・プットを行使できるか。違反当事者も行使可能
対象株式種類、数、将来取得株式を含むか。「保有株式」とだけ記載
価格評価基準日、方法、評価人が明確か。簿価・額面のみ
会社法・税務・会計譲渡制限、自己株式、時価、監査、注記を確認したか。株主間契約だけで完結
規制・実行TOB、独禁法、外為法、業法、名簿書換、承認があるか。行使通知だけで終了
濫用防止・紛争解決自招デッドロック排除、専門家決定、管轄・仲裁があるか。意図的反対で安値取得可能

次の一覧は、モデル条項例に含めるべき要素を読みやすく整理したものです。なぜ重要かというと、条文例をそのまま使うのではなく、案件の会社法・税務・資金力・既存契約に合わせて修正する必要があるためです。各項目では、契約本文に入れるべき中核要素を確認してください。

01

デッドロック定義

重要事項を列挙し、同一または実質的に同一の議案が2回連続して否決され、最初の否決日から60日以内に経営層協議で合意できない場合など、客観的に定めます。

2回否決60日
02

経営層協議

通知到達日から10営業日以内に、代表者または準ずる権限者が出席し、必要資料を提供して誠実に協議する設計にします。

10営業日
03

コールオプション

行使通知の到達時点で売買契約が成立し、売主が譲渡承認申請、名簿書換請求、必要書類交付に協力する義務を定めます。

行使通知自招排除
04

価格算定

買取価格を公正市場価値とし、評価基準日、評価人、DCF法・類似会社比較法・時価純資産法の総合評価、明白な誤りの扱いを定めます。

FMV
05

クロージング

買取価格確定日から20営業日後などを基準にしつつ、法令上の承認・届出・待機期間や第三者同意がある場合は手続完了後へ延ばします。

20営業日承認条件
06

紛争解決

価格算定は評価人の専門家決定に委ね、権限・手続違反・詐欺・明白な誤りに関する争いは裁判または仲裁へつなげます。

専門家決定

次の比較表は、ケース別にどの設計が向きやすいかを表します。読者にとって重要なのは、同じコールオプションでも、50:50製造JV、共同創業、親族会社、クロスボーダーJVでは、守るべき資産や規制が異なる点です。各行で、株式移転と同時に処理すべき関連資産を確認してください。

ケース主な問題推奨される設計
50:50製造JV予算未承認、技術ライセンス、販売網、設備投資が絡みます。重要事項を限定し、暫定予算、専門家決定、対称的なコール・プット、技術・販売契約処理を置きます。
共同創業スタートアップ人的資産、技術資産、将来成長性、資金力差、知財が絡みます。創業者間契約、役割、退職、ベスティング、知財帰属、第三者評価または直近資金調達価格を使います。
親族会社・事業承継会社感情対立、親族間税務、情報非対称、評価方法の差が問題になります。情報提供義務、定期報告、第三者評価、資金調達期間、他株主または第三者への売却余地を置きます。
クロスボーダーJV外為法、輸出管理、制裁、仲裁地、技術情報、データ越境移転が問題になります。契約時点で規制確認を行い、コール行使を当局承認にかからせ、代替措置、知財・データ終了後処理、精密な仲裁条項を置きます。
Section 07

デッドロック条項(コールオプション等)のFAQ

一般的な制度説明として、設計時によく問題になる疑問を整理します。

Q1. デッドロック条項は必ず入れるべきですか。

一般的には、50:50のJV、拒否権付き投資、共同創業、親族会社、クロスボーダーJVでは検討すべき条項とされています。ただし、会社の性質、株主の関係、資金力、知財、許認可、税務によって適切な内容は変わります。具体的な設計は、定款や既存契約を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. コールオプション条項があれば、相手の株式を確実に取得できますか。

一般的には、契約上の権利だけで取得が完了するとは限りません。譲渡制限株式の承認、株主名簿書換、株券、担保権、第三者同意、金融商品取引法、独禁法、外為法、業法、税務、資金調達、裁判・仲裁の問題が残る可能性があります。具体的には、実行手続まで含めて専門家へ相談する必要があります。

Q3. 価格を額面または簿価にしてもよいですか。

一般的には、契約自由の範囲で一定の算定方法を定めることは可能とされています。ただし、額面または簿価が会社価値と大きく乖離する場合、紛争、税務、会計、公正性の問題が生じる可能性があります。具体的な価格設計は、評価資料を整理したうえで税理士・会計士・弁護士等へ相談する必要があります。

Q4. 意図的にデッドロックを作ってコールオプションを使われることを防げますか。

一般的には、完全に防ぐことは難しいものの、対象事項の限定、客観的な発生手続、自らの重大違反や信義則違反で膠着を作った当事者の行使排除、第三者評価、協議・治癒期間によってリスクを下げられるとされています。具体的な濫用防止策は、契約構造に応じて専門家へ相談する必要があります。

Q5. 仲裁条項は必要ですか。

一般的には、国内の非上場中小企業では専属管轄条項で足りる場合もあります。一方、クロスボーダーJV、外国株主、海外資産、秘密性の高い技術紛争、国際執行が必要な案件では仲裁条項が検討されます。具体的には、仲裁機関、仲裁地、仲裁人の数、言語、準拠法を専門家と確認する必要があります。

Q6. 株主間契約と定款のどちらに書くべきですか。

一般的には、両方の検討が必要です。株主間契約は柔軟ですが、当事者間の効力にとどまることが多く、定款、種類株式、登記、会社の機関決定が必要な事項もあります。具体的な記載場所は、会社法上の手続と既存株主の権利を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q7. 会社が買い取るプットオプションを置けば十分ですか。

一般的には、会社による自己株式取得には会社法上の手続、分配可能額規制、みなし配当、会計処理、金融機関との財務制限があるため、将来必ず買えるとは限りません。具体的には、他株主買取、第三者売却、分割払い、担保、親会社保証、資金調達条件と合わせて、弁護士等の専門家へ相談しながら検討する必要があります。

Q8. デッドロック条項はM&AやIPOで問題になりますか。

一般的には、既存株主間契約にコール、プット、拒否権、共同売却権、先買権、ドラッグ・アロング、タグ・アロングがある場合、M&Aのクロージング条件やIPO前の資本政策に影響する可能性があります。具体的には、資本政策と既存契約を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q9. デッドロック条項とドラッグ・アロング条項は何が違いますか。

一般的には、デッドロック条項は意思決定の膠着を解消するための条項で、ドラッグ・アロング条項は一定多数または特定株主が第三者売却を決めた場合に他の株主にも売却参加を求める条項とされています。両者を併用する設計もありますが、発動条件、第三者売却手続、少数株主保護、価格の公正性によって結論は変わります。具体的な組み合わせは、株主構成と出口戦略を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q10. デッドロック条項のレビューで最初に見るべき箇所はどこですか。

一般的には、発動事由、価格、実行手続の3点を最初に確認するとされています。発動事由が広すぎないか、価格が不当に低い・高い・曖昧ではないか、譲渡承認、規制承認、資金、クロージング書類が実行可能かを確認します。ただし、会社の種類、株式の譲渡制限、既存契約、税務、資金調達によって確認範囲は変わるため、具体的なレビューは弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「独占禁止法」
  • e-Gov法令検索「金融商品取引法」
  • e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法」
  • e-Gov法令検索「仲裁法」

公的機関・ガイドライン

  • 経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」
  • 経済産業省「企業買収における行動指針」
  • 金融庁「公開買付制度・大量保有報告制度等の見直し」関連資料
  • 公正取引委員会「株式取得に関する届出」
  • 公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
  • 財務省「対内直接投資審査制度」
  • 経済産業省「外国為替及び外国貿易法に基づく対内直接投資管理」
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「みなし譲渡収入が生じる場合」
  • 日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」関連情報
  • 日本商事仲裁協会「仲裁条項の書き方」

判例・海外実務

  • 最高裁平成28年7月1日決定・株式取得価格決定申立て関連決定
  • 最高裁平成27年3月26日決定・株式買取価格決定申立事件関連決定
  • 最高裁令和5年5月24日決定・株式売買価格決定に関する許可抗告事件
  • 海外実務解説(Joint ventures and deadlock)
  • 海外実務解説(Russian-Roulette and Texas-Shoot-Out)
  • 海外実務解説(Shotgun Clause)