2σ Guide

タームシートに
法的拘束力はあるのか

日本法における契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を踏まえ、タームシートの拘束力と非拘束条項、交渉破棄リスクを整理します。

3 拘束力類型
10 FAQ
90日 有効期間例
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タームシートに 法的拘束力はあるのか

日本法における契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を踏まえ、タームシートの拘束力と非拘束条項、交渉破棄リスクを整理します。

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タームシートに 法的拘束力はあるのか
日本法における契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を踏まえ、タームシートの拘束力と非拘束条項、交渉破棄リスクを整理します。
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  • タームシートに 法的拘束力はあるのか
  • 日本法における契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を踏まえ、タームシートの拘束力と非拘束条項、交渉破棄リスクを整理します。

POINT 1

  • タームシートに法的拘束力はあるのかをまず整理
  • 名称ではなく、条項ごとの拘束意思・文言・具体性・交渉経緯で判断します。
  • タームシートに法的拘束力があるかは、「タームシート」という名前だけでは決まりません。
  • 左から右へ読むことで、単に有無を問うのではなく、どの範囲にどの程度の拘束力を持たせるのかを確認できます。
  • 具体的な締結、交渉、撤回、紛争対応は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

POINT 2

  • タームシート、LOI、MOU、基本合意書の違いと拘束力
  • 名称よりも内容、拘束条項、非拘束条項、交渉過程が重要です。
  • 名称の違いは実務上の傾向を示すにとどまり、拘束力判断を決めるものではありません。
  • 法的拘束力という言葉も、複数の意味を含みます。
  • どの義務を議論しているかを読み取ることが、誤解を避ける出発点です。

POINT 3

  • 日本法でタームシートの拘束力を見る基本枠組み
  • 拘束力を高める事情
  • 非拘束性を示す事情

POINT 4

  • タームシートが拘束力を持つかを判断する主要要素
  • 1. 拘束力条項を読む:拘束条項と非拘束条項が列挙されているか確認します。
  • 2. 文言と具体性を見る:義務文言、価格、数量、対象、時期、条件の確定度を確認します。
  • 3. 最終契約条件を確認:最終契約締結、取締役会承認、投資委員会承認、DD満足が条件化されているかを見ます。
  • 4. 署名・承認・行動を見る:署名押印、電子署名、メール承諾、支払、情報提供、業務開始の有無を確認します。
  • 5. 交渉記録を残す:非拘束事項を合意済みと誤解させない表現で管理します。

POINT 5

  • 一部拘束型タームシートで拘束されやすい条項
  • 秘密保持、独占交渉、費用負担、公表制限、準拠法・管轄などを整理します。
  • 取引実行・価格
  • 表明保証・補償
  • ガバナンス権

POINT 6

  • 非拘束でも責任が生じ得る場面
  • 成約意思と費用支出
  • 成約意思がないのに相手に多額の費用を支出させた場合、信義則上の責任が問題になる可能性があります。
  • 重要前提の不告知
  • 重要な前提が崩れていることを知りながら説明しない場合、説明義務や不法行為責任が問題になる可能性があります。

POINT 7

  • 取引類型別に見るタームシートの拘束力
  • 1. 秘密保持を締結:未公表情報、内部情報、個人情報、営業秘密の利用目的と開示先を限定します。
  • 2. 段階的情報提供を設計:DDの深度に応じて閲覧範囲、複製、保存、返還・破棄、ログを管理します。
  • 3. 独占交渉と例外を調整:期間、禁止行為、既存交渉先、法令上・取締役義務上の例外を明記します。
  • 4. 公表・IRを一元管理:適時開示、SNS、取材対応、共同発表の手続を整理します。

POINT 8

  • タームシートの拘束力を限定・明確化するドラフティング
  • 一部拘束型、最終契約条件、承認・DD条件、独占交渉、秘密保持の書き分けを確認します。
  • 条項例は、そのまま使うためではなく、どの要素を明示すべきかを読むための素材です。
  • 非依拠・限定責任条項は、最終意思決定を各当事者の責任に置くために使われます。

まとめ

  • タームシートに 法的拘束力はあるのか
  • タームシートに法的拘束力はあるのかをまず整理:名称ではなく、条項ごとの拘束意思・文言・具体性・交渉経緯で判断します。
  • タームシート、LOI、MOU、基本合意書の違いと拘束力:名称よりも内容、拘束条項、非拘束条項、交渉過程が重要です。
  • 日本法でタームシートの拘束力を見る基本枠組み:契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を分けて確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

タームシートに法的拘束力はあるのかをまず整理

名称ではなく、条項ごとの拘束意思・文言・具体性・交渉経緯で判断します。

タームシートに法的拘束力があるかは、「タームシート」という名前だけでは決まりません。実務上の結論は、どの条項について当事者が法的に拘束される意思を持っていたか、文言がどれだけ具体的か、署名・承認・交渉経緯・履行行為がどのようなものだったかによって判断される、という整理になります。

次の比較表は、タームシートの拘束力を三つの類型で整理したものです。左から右へ読むことで、単に有無を問うのではなく、どの範囲にどの程度の拘束力を持たせるのかを確認できます。

類型基本的な性質実務上の例
完全非拘束型どの条項も法的拘束力を持たせない趣旨初期検討用の条件メモ、ピッチ後の概算条件表
一部拘束型経済条件・取引実行義務は非拘束、秘密保持・独占交渉・費用負担等は拘束M&AのLOI、スタートアップ投資のタームシート、業務提携の基本条件書
実質的契約型主要条件が確定し、当事者が拘束意思を示している売買予約、株式譲渡の基本合意、ライセンス基本契約に近い文書
核心最初に確認すべき問いは、タームシート全体に拘束力があるかではなく、どの条項が、どの範囲で、どの程度拘束されるかです。

この記事は日本法を中心とする一般的な情報です。準拠法、当事者の属性、交渉経緯、文言、署名権限、取締役会・投資委員会承認、開示規制、税務・会計・労務・知財上の論点によって結論は変わります。具体的な締結、交渉、撤回、紛争対応は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Section 01

タームシート、LOI、MOU、基本合意書の違いと拘束力

名称よりも内容、拘束条項、非拘束条項、交渉過程が重要です。

タームシートとは、投資、M&A、業務提携、ライセンス、融資、共同開発などの取引について、最終契約を締結する前に主要条件を一覧化した文書です。取引当事者、対象、価格、評価額、スキーム、クロージング条件、DD、表明保証、誓約、秘密保持、独占交渉、費用負担、準拠法、有効期間、法的拘束力の有無などが記載されます。

名称の違いは実務上の傾向を示すにとどまり、拘束力判断を決めるものではありません。次の比較表は、名称ごとの一般的な意味と注意点を示します。右列を読むと、タイトルだけで機械的に判断できない理由が分かります。

名称一般的な意味拘束力判断の注意点
Term Sheet主要条件の一覧表一部拘束型が多く、投資・M&Aで頻出します。
LOI意向表明書、取引意思の表明非拘束を予定することが多い一方、独占交渉等は拘束され得ます。
MOU了解覚書国際取引では非拘束のこともありますが、文言次第で拘束され得ます。
基本合意書最終契約前の基本条件合意日本のM&Aでは一部拘束・実質拘束の争いが生じやすい文書です。
Heads of Terms主要条件書英米法系取引で使われ、subject to contract等の文言が重要です。
意向表明書買収・出資等の意向を示す文書初期文書として拘束力は限定的なことが多いものの、内容次第で変わります。

法的拘束力という言葉も、複数の意味を含みます。次の一覧は、最終契約締結義務、特定条項を守る義務、交渉過程の行動義務を分けたものです。どの義務を議論しているかを読み取ることが、誤解を避ける出発点です。

区別すべき概念意味
最終契約を締結する義務最終的な売買契約・投資契約等を締結しなければならない義務必ず株式譲渡契約を締結する義務
特定条項を守る義務秘密保持、独占交渉、費用負担等を守る義務90日間は他社と交渉しない義務
信義則上要求される行動義務虚偽説明、不合理な交渉引延ばし、情報濫用等を避ける義務成約意思がないのに相手に多額の費用を使わせる行為を避ける義務
Section 02

日本法でタームシートの拘束力を見る基本枠組み

契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則を分けて確認します。

日本法では、契約自由、申込み・承諾、方式自由、信義則が基本枠組みになります。次の一覧は、それぞれがタームシートの拘束力判断にどう影響するかを整理したものです。左列で法的な出発点を確認し、右列で実務上の注意を読み取ります。

民法521条

契約自由

当事者は、完全非拘束、一部拘束、条件付き拘束などを法令の範囲で選べます。

民法522条

申込み・承諾

内容を示す申込みと承諾があれば契約成立が問題になり、タイトルだけでは決まりません。

方式自由

書面だけが契約ではない

メール、チャット、議事録、合意メモでも、内容と意思表示次第で拘束力が争われ得ます。

民法1条2項

信義則

交渉は自由でも、相手方に強い信頼や費用支出を生じさせた後の不誠実行為は責任を生む可能性があります。

方式自由の下では、簡易な文書でも実質的な合意文書と評価されるリスクがあります。次の重要ポイント一覧は、拘束力が争われやすくなる事情と、非拘束性を示す事情を対比して読むためのものです。

拘束力を高める事情

合意する、義務を負う、支払う、譲渡するなどの断定文言、具体的な価格・数量・時期、署名押印、承認済み表示、履行開始がある場合です。

非拘束性を示す事情

discussion draft、non-binding、for discussion purpose only、主要条件未確定、社内承認前、DD前、表明保証・補償未協議が明示されている場合です。

信義則上の注意

重要前提を隠す、相手に過大な費用を支出させる、情報を目的外利用する、交渉終了時の説明を欠く場合は、非拘束でも責任が問題になり得ます。

Section 03

タームシートが拘束力を持つかを判断する主要要素

拘束力条項、文言の強さ、具体性、最終契約条件、署名、交渉経緯を総合します。

拘束力判断は、単一の要素ではなく複数事情の総合評価です。次の比較表は、文言の強さを左右で対比したものです。左列の表現が多いほど拘束意思を主張されやすく、右列の表現は検討段階であることを示しやすい点を読み取ります。

強い文言弱い文言
するものとするを予定する
しなければならないを目標とする
を支払うを検討する
を譲渡するの譲渡を協議する
を保証するについて協議する
に合意するについて現時点の理解を確認する

判断要素は、文書の中だけでなく、署名や承認、履行行為にも及びます。次の判断の流れは、タームシートをレビューする順番を示します。上から下に確認し、どこで拘束力リスクが高まるかを読み取ります。

拘束力リスクを確認する順番

拘束力条項を読む

拘束条項と非拘束条項が列挙されているか確認します。

文言と具体性を見る

義務文言、価格、数量、対象、時期、条件の確定度を確認します。

最終契約条件を確認

最終契約締結、取締役会承認、投資委員会承認、DD満足が条件化されているかを見ます。

署名・承認・行動を見る

署名押印、電子署名、メール承諾、支払、情報提供、業務開始の有無を確認します。

交渉記録を残す

非拘束事項を合意済みと誤解させない表現で管理します。

最終契約締結を条件とする条項は、取引実行義務を限定するために重要です。たとえば、最終契約が締結されるまで、本取引の実行または最終契約の締結について法的義務を負わないと明示する設計が考えられます。

Section 04

一部拘束型タームシートで拘束されやすい条項

秘密保持、独占交渉、費用負担、公表制限、準拠法・管轄などを整理します。

一部拘束型では、最終取引の実行義務は負わせない一方、交渉過程を安全に進めるための周辺義務には拘束力を持たせます。次の比較表は、拘束されやすい条項とその理由を示します。理由の列を見ると、なぜ経済条件と扱いを分けるべきかが分かります。

条項拘束力を持たせる理由
秘密保持未公開情報、営業秘密、財務情報、顧客情報、技術情報の漏えいを防ぐためです。
情報利用制限デューデリジェンス情報を競争目的や引抜きに使わせないためです。
独占交渉・ノーショップ交渉費用を投下する当事者の機会を保護するためです。
スタンドスティル上場会社M&A等で同意なき株式取得やTOB開始等を制限するためです。
費用負担交渉、DD、専門家費用等を誰が負担するか明確にするためです。
公表制限リリース、IR、SNS、取材対応を統制するためです。
準拠法・管轄紛争時のルールと裁判所を確定するためです。
有効期間・終了独占交渉や秘密保持等の期間を明確にするためです。
反社会的勢力排除相手方の適格性を確保するためです。
損害賠償・差止め秘密保持違反等の救済を明確にするためです。

一方で、最終契約交渉やDDで変動しやすい事項は、非拘束とされることが多い領域です。次の一覧は、非拘束としやすい項目をまとめています。これらを拘束させるなら、条件・承認・解除・責任範囲まで慎重に設計する必要があります。

Deal Terms

取引実行・価格

最終的な株式譲渡、事業譲渡、出資の実行、取引価格、バリュエーション、クロージング日は非拘束とされやすい事項です。

Risk Allocation

表明保証・補償

表明保証の詳細、補償上限、補償期間、免責金額、誓約事項は最終契約で詰めることが多い領域です。

Control Rights

ガバナンス権

役員派遣、拒否権、優先株式、IPO努力義務、ドラッグアロング、長期発注量は詳細設計が必要です。

Section 05

非拘束でも責任が生じ得る場面

契約締結上の過失、不法行為、信義則、秘密情報の目的外利用に注意します。

非拘束タームシートでも、交渉過程の行動が責任を生む場合があります。次の重要ポイント一覧は、交渉を打ち切る自由の限界として問題になりやすい事情を整理しています。どの行為が相手方の信頼や費用支出と結び付くかを読み取ります。

成約意思と費用支出

成約意思がないのに相手に多額の費用を支出させた場合、信義則上の責任が問題になる可能性があります。

重要前提の不告知

重要な前提が崩れていることを知りながら説明しない場合、説明義務や不法行為責任が問題になる可能性があります。

情報取得目的の交渉

相手方の秘密情報、従業員、顧客、技術情報を取得・利用する目的で交渉を装うことは高リスクです。

独占交渉違反

独占交渉期間中に第三者と実質的交渉を行うと、拘束条項違反として争われ得ます。

最高裁平成23年4月22日判決は、契約締結前の説明義務違反が不法行為責任を生じ得ることを示したものとして参照されます。タームシートに直接関する事案ではありませんが、交渉段階でも情報提供や説明の誠実さが重要であることを読み取れます。

損害賠償の範囲は、常に取引成立時の利益まで広がるとは限りません。一般的には、交渉に信頼して支出した費用、DD費用、設計変更費用、専門家費用の一部、機会損失に関連する損害などが問題になり得ます。ただし、義務違反の内容、予見可能性、因果関係、責任割合、責任制限条項、違約金条項、費用負担条項によって変わります。

注意非拘束条項は、通常、最終取引の実行義務や最終契約締結義務を否定するための条項です。秘密保持義務違反、独占交渉義務違反、虚偽説明、情報濫用、強行法規違反まで当然に免れるものではありません。
Section 06

取引類型別に見るタームシートの拘束力

M&A、スタートアップ投資、共同開発、ライセンス、金融取引で重点が異なります。

取引類型が変わると、拘束力を持たせるべき条項と非拘束にすべき条項が変わります。次の比較表は、各類型で特に注意すべき論点を並べたものです。どの文脈でどの条項のリスクが高いかを読み取ります。

取引類型主な拘束力リスク実務上の推奨
M&A最終契約締結義務、価格、独占交渉、スタンドスティル、DD情報、公表・IR、フィデューシャリー・アウト取引実行義務は非拘束とし、秘密保持・情報利用制限・独占交渉・費用負担・公表制限・準拠法を拘束条項として明示します。
スタートアップ投資投資実行条件、投資委員会承認、DD満足、優先株式、創業者ロックアップ、独占交渉、費用負担投資契約、株主間契約、定款変更、払込まで投資確定ではないことを明確にします。
業務提携・共同開発技術情報開示、成果物、データ利用、顧客紹介、API接続、共同発表、競合制限NDA、PoC契約、共同研究契約を早期に締結し、知財とデータの利用権限を分けます。
ライセンス独占性、地域、期間、対象権利、ロイヤルティ、改良発明、終了後在庫販売最終契約で決める未確定事項を列挙し、権利範囲の曖昧さを残さないようにします。
融資・金融取引条件提示か融資実行義務を伴うコミットメントか、担保、コベナンツ、シンジケーション、与信承認稟議承認、DD、担保設定、最終契約締結、重大な悪影響なし等を条件化します。

M&Aや上場会社案件では、情報提供と公正性の管理が特に重要です。次の判断の流れは、秘密保持契約、スタンドスティル、段階的情報提供、独占交渉例外を確認する順番を示します。

M&Aタームシートの拘束条項を確認する順番

秘密保持を締結

未公表情報、内部情報、個人情報、営業秘密の利用目的と開示先を限定します。

段階的情報提供を設計

DDの深度に応じて閲覧範囲、複製、保存、返還・破棄、ログを管理します。

独占交渉と例外を調整

期間、禁止行為、既存交渉先、法令上・取締役義務上の例外を明記します。

公表・IRを一元管理

適時開示、SNS、取材対応、共同発表の手続を整理します。

Section 07

タームシートの拘束力を限定・明確化するドラフティング

一部拘束型、最終契約条件、承認・DD条件、独占交渉、秘密保持の書き分けを確認します。

条項例は、そのまま使うためではなく、どの要素を明示すべきかを読むための素材です。次の一覧は、拘束力を限定する条項と拘束させる条項で、何を列挙すべきかを整理しています。

条項類型明示すべきポイント
一部拘束型の基本条項秘密保持、独占交渉、費用負担、公表制限、準拠法・管轄など拘束条項を列挙し、それ以外は非拘束とします。
最終契約締結を条件とする条項最終契約書の作成、権限ある代表者による締結、前提条件の充足または放棄まで、実行義務がないことを明示します。
社内承認・DD条件法務、財務、税務、事業、労務、知財、IT、コンプライアンスDDと、取締役会・投資委員会承認を条件化します。
独占交渉条項60日間などの期間、禁止行為、第三者提案、情報提供、法令上・取締役義務上の例外、事前通知を定めます。
秘密保持条項非公開情報、利用目的、開示可能者、専門家への開示条件、返還・破棄、存続期間、差止めを定めます。
費用負担・有効期間取引不成立時の費用、90日間などの有効期間、期間満了後も存続する条項を明確にします。

非依拠・限定責任条項は、最終意思決定を各当事者の責任に置くために使われます。ただし、詐欺、故意の虚偽説明、秘密保持違反、個別の拘束条項違反、強行法規違反まで当然に免責できるわけではない点を読み取る必要があります。

条項設計非拘束としたい経済条件では「予定」「意向」「協議」「検討」「現時点の理解」を使い、拘束させる周辺義務では「義務を負う」「遵守する」「してはならない」と明確に書き分けます。
Section 08

タームシートの拘束力チェックリストとFAQ

締結前、交渉中、破談・撤回時の確認と、よくある質問を一般情報として整理します。

締結前チェックリストは、タームシートにサインする前に、文書の目的・拘束範囲・未確定事項・承認・専門領域を一度に確認するための表です。左列で論点を特定し、右列で確認内容を読み取ります。

確認項目確認内容
文書の目的条件整理か、基本合意か、拘束的契約かを確認します。
拘束条項・非拘束条項どの条項が拘束され、最終契約締結義務・取引実行義務が否定されているかを確認します。
主要条件・未確定事項価格、対象、期間、数量、スキームが確定か暫定か、最終契約で協議する事項が列挙されているかを確認します。
社内承認・権限取締役会、投資委員会、親会社、金融機関等の承認と署名権限を確認します。
DD・独占交渉DD結果により撤回できるか、独占期間・範囲・例外・違反時効果が明確かを確認します。
秘密保持・公表制限情報範囲、利用目的、開示先、返還・破棄、IR、適時開示、SNS、プレス対応の例外を確認します。
税務・会計・知財・労務・個人情報・規制法取引スキームへの重大影響、成果物・既存知財・データ、人員移籍、個人情報提供、外為法・競争法・業法を確認します。

簡易スコアリングは、拘束力リスクの高低を初期評価するための一覧です。各行で低・中・高のどこに近いかを見て、高リスク項目が複数ある場合は締結前レビューを優先する必要があります。

評価項目低リスク中リスク高リスク
拘束力条項拘束・非拘束が明確に列挙一部曖昧記載なし又は矛盾あり
文言予定・協議・検討中心一部断定表現合意・義務・支払・譲渡等が多数
主要条件未確定事項が明示多くは確定、一部未確定価格・対象・時期・条件が具体的に確定
最終契約条件明確に条件化条件文言が弱い条件なし又は形式的
社内承認・署名未承認・承認条件が明示承認状況が不明、メール承諾あり承認済みと読める、正式署名・押印あり
履行行為・情報提供なし、一般情報のみ一部準備、一部非公開情報支払・業務開始、重要な営業秘密・個人情報・未公表情報

よくある質問

Q1. タームシートに署名したら、必ず最終契約を締結しなければなりませんか。

一般的には、非拘束条項、最終契約締結条件、社内承認条件、DD満足条件が明確であれば、最終契約締結義務までは発生しにくいと考えられます。ただし、文言、具体性、署名、交渉経緯、履行行為によって判断が変わります。具体的な見通しは専門家へ相談する必要があります。

Q2. 法的拘束力を有しないと書けば完全に安全ですか。

一般的には、非拘束条項は重要ですが、秘密保持、独占交渉、費用負担、準拠法、管轄などを拘束条項として定めている場合、それらには拘束力が生じ得ます。虚偽説明や情報濫用なども別途問題になり得るため、個別事情を確認する必要があります。

Q3. メールで合意したタームシートに拘束力はありますか。

一般的には、メールやチャットでも、内容が特定され、申込みと承諾があり、拘束意思が認められれば、契約成立が問題になり得ます。交渉段階では、正式な最終契約締結までは拘束力を生じないことや社内承認前であることを明確にする必要があります。

Q4. LOIやMOUなら拘束力はありませんか。

一般的には、名称だけでは判断できません。LOIやMOUでも、秘密保持、独占交渉、費用負担、準拠法、管轄などは拘束条項として定められることがあります。内容と交渉経緯を確認する必要があります。

Q5. 独占交渉条項は本当に拘束されますか。

一般的には、期間、範囲、例外、違反時効果が明確であれば、拘束力が認められ得る条項です。ただし、損害の立証や上場会社での例外設計など、具体的事情によって結論は変わります。

Q6. タームシート締結後に一方的に交渉を打ち切ると違法ですか。

一般的には、非拘束タームシートであれば交渉終了は可能です。ただし、相手方に強い成約期待を与え、多額の費用を支出させた後に合理的理由なく撤回する場合などは、信義則上の責任や不法行為責任が問題になる可能性があります。

Q7. タームシートに価格を書いたら、その価格で契約しなければなりませんか。

一般的には、価格が暫定条件で、DDや最終契約交渉を条件としている場合、その価格で契約する義務までは発生しにくいです。ただし、価格確定や譲渡義務を示す文言がある場合は、拘束力が争われる可能性があります。

Q8. タームシートに違約金を入れることはできますか。

一般的には、独占交渉義務違反、秘密保持義務違反、費用負担義務違反などに対する違約金は設計し得ます。ただし、最終契約を締結しなかった場合の違約金は非拘束設計と矛盾し得るため、対象行為を慎重に整理する必要があります。

Q9. スタートアップ投資でタームシートにサインしたら、投資は確定ですか。

一般的には、投資契約、株主間契約、定款変更、払込、投資家側の承認、DDなどが必要であり、タームシート署名だけで投資確定とは限りません。条件と手続を文書上で明確に確認する必要があります。

Q10. タームシートを作らずに最終契約へ進んだ方が安全ですか。

一般的には、タームシートは主要条件の整理、交渉コストの低減、論点の可視化に役立ちます。問題は作成自体ではなく、拘束力の範囲を曖昧にしたまま署名することです。

Reference

参考資料

法令・裁判例・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 経済産業省「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」
  • 経済産業省「スタートアップ投資契約ガイドライン」
  • 経済産業省「企業買収における行動指針」
  • 最高裁判所平成23年4月22日第二小法廷判決
  • 最高裁判所昭和59年9月18日第三小法廷判決に関する不動産取引紛争事例資料

実務上の参考資料

  • M&A基本合意書の独占交渉義務・誠実協議義務に関する法律実務解説