IPO・投資契約・株主間契約で混同しやすいロックアップ期間と解除条件を、制度、契約、開示、社内確認の順に整理します。
IPO・投資契約・株主間契約で混同しやすいロックアップ期間と解除条件を、制度、契約、開示、社内確認の順に整理します。
IPO、プレIPO投資、株主間契約、M&A、株式報酬を横断して、最初に分けるべき論点を整理します。
ロックアップ期間と解除条件は、上場直後の株式売却を一定期間制限するだけの単純な約束ではありません。根拠が取引所規則なのか、主幹事証券会社との契約なのか、投資契約・株主間契約なのか、定款上の譲渡制限なのか、役職員向けインセンティブ契約なのかによって、期間、解除条件、違反時の効果、開示、社内承認の進め方が変わります。
この記事では、まず制度ロックアップと任意ロックアップを分け、次に期間満了、価格条件、同意、許容取引、株主間契約上の解除を分解します。特に、上場後6か月、払込期日から1年、90日、180日、公開価格又は発行価格の1.5倍という数字は、単独で覚えるのではなく、根拠資料と対象株式を結び付けて確認する必要があります。
次の重要ポイントは、ロックアップ期間と解除条件の判断で最初に押さえるべき二層構造と数字をまとめたものです。読者にとって重要なのは、同じ株主に複数の拘束が重なることがあるため、短い期間が終わっても別の制限が残り得る点を読み取ることです。
制度ロックアップ、任意ロックアップ、株主間契約、社内規程、インサイダー取引規制、大量保有報告を切り分けて確認することが、誤った売却判断を避ける出発点です。
次の一覧は、実務で最も混同しやすい根拠別の拘束を比較するものです。どの資料を見れば期間と解除条件が分かるかが異なるため、表の左から順に根拠、代表的な期間、確認資料を対応させて読むことが重要です。
| 区分 | 典型的な期間 | 主な根拠資料 | 確認すべき解除条件 |
|---|---|---|---|
| 制度ロックアップ | 上場日後6か月又は払込期日等から1年 | 東証規則、継続所有確約書、上場申請資料 | 継続所有期間、譲渡時の通知・報告、公衆縦覧への同意 |
| 任意ロックアップ | 上場日後90日、180日、360日など | 目論見書、有価証券届出書、ロックアップ契約、元引受契約 | 価格条件、主幹事証券会社の同意、許容取引、解除裁量 |
| 株主間契約上の拘束 | IPO、M&A、一定年数、投資家同意まで | 投資契約、株主間契約、定款、種類株式要項 | 投資家同意、譲渡承認、タグ・ドラッグ、買戻し、優先株式転換 |
売却禁止だけでなく、経済的処分、承継、同意、報告までを含めて定義を確認します。
ロックアップとは、株式、新株予約権、種類株式、取得株式、潜在株式、これらに連動する権利について、一定期間、売却、譲渡、担保設定、貸株、ヘッジ、デリバティブ取引、その他の経済的処分を制限する制度又は契約上の拘束をいいます。
日常的には売却禁止と説明されることがありますが、実効性を確保するには、名義上の譲渡だけでは足りません。貸株、譲渡担保、株式消費貸借、スワップ、カラー取引、先渡し取引、空売り、譲渡予約、信託設定、担保権実行に伴う処分など、経済的リスクを第三者へ移す取引も問題になります。
次の比較表は、ロックアップ期間の起算点、満了点、確認資料を類型別に整理したものです。読者にとって重要なのは、同じ「期間」という言葉でも、割当日、払込期日、元引受契約締結日、契約締結日など起算点が異なるため、満了日の計算が変わる点です。
| 類型 | 起算点 | 満了点の例 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|
| 制度ロックアップ ― 第三者割当株式 | 割当日又は払込期日等を基準に整理 | 上場日後6か月経過日。ただし払込期日等から1年未経過なら1年経過日まで | 東証規則、継続所有確約書、Ⅰの部 |
| 制度ロックアップ ― ストックオプション | 新株予約権の割当日 | 上場日の前日又は権利行使日のいずれか早い日 | 東証規則、継続所有確約書、SO契約 |
| 任意ロックアップ | 元引受契約締結日、届出書提出日、上場日等 | 上場日後90日、180日、360日、又は個別に定める日 | 目論見書、有価証券届出書、ロックアップ契約 |
| 株主間契約上のロックアップ | 投資実行日、契約締結日、株式取得日 | IPO、M&A、一定年数、投資家同意、優先株式転換等 | 投資契約、株主間契約、定款 |
| M&A・役職員インセンティブ | クロージング日、付与日、就任日等 | アーンアウト満了、退任、一定業績達成、買主同意等 | 株式譲渡契約、役員契約、譲渡制限株式契約 |
解除条件は、ロックアップによる処分制限が終了する、又は例外的に処分が許される条件をいいます。実務では、ロックアップ期間が終了する期間満了、契約であらかじめ許容された例外取引、主幹事証券会社・会社・投資家・取締役会等による同意又はウェーバーをまとめて解除と呼ぶことがあります。
市場需給、主要株主のコミットメント、情報の非対称性という三つの機能から確認します。
IPO直後は、公開時に投資家へ配分される株式数が限定される一方で、創業者、役員、従業員、ベンチャーキャピタル、事業会社、ファンドなどの既存株主が相当数の株式を持っています。これらの株式が上場直後に一斉に売却されれば、需給が急激に悪化し、価格形成が不安定になるおそれがあります。
次の三つの項目は、ロックアップがどの利害を調整しているかを整理したものです。読者にとって重要なのは、解除条件を緩くするほど流動性は高まる一方、市場への供給や投資家心理への影響も大きくなり得る点を読み取ることです。
上場直後に既存株主の大量売却が集中することを避け、供給ショックを時間的に分散させます。成長企業では将来見通しの不確実性が残りやすく、初値形成後の価格変動も大きくなりやすいため、投資者保護と市場秩序に関わります。
創業者や支配株主が一定期間売却しないことは、上場後も会社の成長に関与するというシグナルになります。ただし、過度に長い拘束は株主の流動性やファンドの投資回収にも影響します。
既存株主、とりわけ創業者、役員、大株主、VC、事業会社は、一般投資家より会社の内部事情を把握していることがあります。ロックアップは、内部者が短期的に売り抜ける懸念を抑える機能を持ちます。
ロックアップが長ければ常に良いわけではありません。ファンドには償還期限やLPへの説明責任があり、役職員には個人資産が株式に集中するリスクがあります。そのため、ロックアップ期間と解除条件は、投資者保護、株主の流動性、上場後の資本政策、株価形成、契約交渉力を総合して設計する必要があります。
東証上場制度上の継続所有確約では、第三者割当株式と新株予約権の扱いを分けて確認します。
制度ロックアップは、取引所規則上、上場前の第三者割当等による株式又は新株予約権の割当てについて、割当てを受けた者に一定期間の継続所有を求める仕組みです。趣旨は、特定の者が上場前に株式等を取得し、上場直後に売却して短期利得を得ることを抑制する点にあります。
次の判断の流れは、第三者割当株式の満了点を確認する順番を示しています。読者にとって重要なのは、上場日後6か月だけで終わらず、払込期日又は払込期間の最終日から1年を経過しているかを必ず重ねて見る点です。
取得日、払込期日、払込期間の最終日、株式数を台帳と確約書で照合します。
原則として上場日以後6か月を経過する日までの継続所有が問題になります。
上場日後6か月時点で1年未経過なら、1年経過日まで所有を確認します。
他の契約や社内規程が残らないかを別途確認します。
例えば、上場日の8か月前に第三者割当で普通株式を取得した投資家は、上場後6か月経過時点で払込期日から14か月が経過しているため、原則として上場後6か月が重要な満了点になります。他方、上場日の2か月前に第三者割当を受けた場合、上場後6か月経過時点では払込期日から8か月しか経過していないため、払込期日から1年を経過する日まで継続所有が必要になる可能性があります。
制度ロックアップでは、単に売らないと約束するだけでは足りません。譲渡等を行う場合の申請会社への事前通知、事後報告、東証への書類提出、所有状況照会への対応、公衆縦覧への同意などを求められることがあります。法務担当は、継続所有確約書、住所・氏名、取得日、払込期日、株式数、転換又は分割の履歴、名義変更の有無を管理する必要があります。
役職員向けのストックオプションについても、制度ロックアップの対象になり得ます。新株予約権の割当てを受けた者は、原則として、割当日から上場日の前日又は当該新株予約権の行使日のいずれか早い日まで所有することが求められる場合があります。役員又は従業員等の範囲、外部協力者への付与、RSUやPSUの取扱いは、報酬設計・人事・税務・会計とあわせて確認します。
主幹事証券会社等との私的契約では、対象者、対象行為、1.5倍条項を文言で確認します。
任意ロックアップは、既存株主や発行会社が、主幹事証券会社又は引受人に対して、一定期間、株式の売却等を行わない旨を約束する契約です。対象者は、創業者、代表取締役、取締役、監査役、執行役員、主要株主、支配株主、親会社、役員持株会、VC、事業会社、投資事業有限責任組合、売出人、オーバーアロットメントの貸株人、ストックオプションを保有する役職員、発行会社自身などです。
任意ロックアップの期間は契約で決まります。日本のIPO実務では、元引受契約締結日から上場日後90日又は180日が設定されることが多いと整理されています。ただし、90日・180日は絶対的なルールではなく、対象者の属性、上場市場、オファリングサイズ、グローバル・オファリングの有無、支配株主の存在、ファンドの売却方針、会社の成長ステージにより変わります。
次の表は、任意ロックアップで制限対象になり得る行為を整理したものです。読者にとって重要なのは、市場売却だけでなく、経済的リスク移転や売却意図の公表まで対象になる場合があるため、表の右列で契約上の確認点を読み取ることです。
| 区分 | 典型例 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 処分 | 売却、譲渡、交換、贈与 | 市場外取引、相対取引も含めるかを明確にします。 |
| 契約上の処分 | 売却予約、先渡し、オプション付与 | 経済的リスク移転の有無を確認します。 |
| 担保・貸借 | 担保設定、質権、譲渡担保、貸株 | 所有権移転型の貸株は制度ロックアップ上も問題になり得ます。 |
| ヘッジ | スワップ、カラー、デリバティブ、空売り | 価格変動リスクの実質移転を制限する必要があります。 |
| 発行体側行為 | 新株発行、新株予約権発行、CB発行 | 発行会社ロックアップでは希薄化防止が中心です。 |
| 情報開示 | 売却意図の公表 | 売却予定の公表自体が市場に影響し得ます。 |
日本のIPO実務では、一定の任意ロックアップについて、売却価格が公開価格又は発行価格の1.5倍以上であれば、ロックアップ期間中でも売却可能とする条項が置かれることがあります。この条項は対象株主に一定の流動性を与える一方、価格が上昇したときこそ既存大株主が売却できることになり、投資者保護機能と緊張関係に立ちます。
次の重要ポイントは、1.5倍条項を検討するときに見るべき条件をまとめたものです。読者にとって重要なのは、価格条件だけでなく、初値形成後か、主幹事証券会社を通すか、東証での売却か、数量制限があるかを組み合わせて読む点です。
公開価格、発行価格、売出価格のどれを基準にするかを確認します。
約定価格、終値、初値、気配値、取引所価格のどれで1.5倍を判断するかを確認します。
主幹事証券会社を通じた売却に限定されるか、別証券会社や市場外取引が除外されるかを確認します。
1.5倍到達時に市場へ出る可能性のある株式数と、対象者間の公平性を検討します。
期間満了、価格条件、同意、許容取引、株主間契約上の解除を順番に確認します。
最も基本的な解除条件は、ロックアップ期間の満了です。制度ロックアップでは、取引所規則に基づく継続所有期間が満了すれば、制度上の継続所有義務は終了します。任意ロックアップでは、契約で定めた満了日を経過すれば、契約上の処分制限は原則として終了します。
もっとも、期間満了は常に自由な売却を意味しません。満了後であっても、未公表の重要事実を知っている場合のインサイダー取引規制、社内の役職員売買規程、ブラックアウト期間、5%超保有者に関する大量保有報告書、保有割合1%以上の増減に関する変更報告書、株主間契約、投資契約、定款上の譲渡制限、優先買取権、共同売却権、IR上の説明が残る可能性があります。
次の比較表は、期間満了以外の解除条件を整理したものです。読者にとって重要なのは、条件名だけでなく、誰が判断し、どの資料で確認し、譲受人へ義務を承継させる必要があるかまで読むことです。
| 解除の類型 | 内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 価格条件 | 公開価格又は発行価格の1.5倍以上など | 基準価格、判定方法、主幹事経由、市場売却限定、数量制限を確認します。 |
| 同意・ウェーバー | 主幹事証券会社、会社、投資家、取締役会等の事前同意 | 解除申請者、対象株式数、解除理由、売却予定日、同意書の権限と保存を記録します。 |
| 許容取引 | IPO売出し、OA貸株、相続、合併、ファンド内移管など | 形式だけでなく、経済的所有者や市場流出の有無を確認します。 |
| 株主間契約上の解除 | IPO、M&A、一定年数、投資家多数同意、優先株式転換など | 会社法、定款、株主名簿、優先株主の拒否権、契約違反時の効果を分けて確認します。 |
次の表は、期間中でも許容されることがある取引と、その条件例を整理したものです。読者にとって重要なのは、例外として列挙されていても無条件ではなく、目的限定、同意、承継、担保実行時の処分制限などが併せて問題になる点です。
| 例外類型 | 内容 | 実務上の条件例 |
|---|---|---|
| IPO売出し | 売出人として公開時に売却する | 目論見書記載、引受契約に従う |
| オーバーアロットメント | 貸株人が主幹事へ貸し渡す | OA目的に限定し、返還・グリーンシュー条件を確認する |
| 相続・一般承継 | 死亡、合併、組織再編による承継 | 承継人へのロックアップ承継が必要な場合があります。 |
| グループ内移管 | ファンド内、関連会社間の移管 | 経済的所有者が実質的に同一か確認します。 |
| 担保権設定 | 借入に伴う担保提供 | 担保実行時の処分制限をどう扱うかが重要です。 |
| 株式分割等 | 株式分割、無償割当て、転換 | 取得株式等を対象に含めます。 |
| TOB・M&A | 公開買付け、合併、株式交換等への応募 | すべての株主に同条件で機会があるか確認します。 |
未上場会社の投資契約や株主間契約では、創業者の一定期間の譲渡禁止、投資家の事前承認、退職・競業・重大違反時の買戻権、IPO又はM&A完了による終了、共同売却権又はドラッグ・アロング権の発動、優先株式の普通株式転換による制限消滅などが問題になります。契約上の譲渡禁止、会社法上の譲渡効、会社への対抗要件、損害賠償、差止め、買戻し、議決権行使制限は別の問題として整理します。
対象証券、対象行為、期間、同意権者、違反時の効果を条項として落とし込みます。
契約で最初に詰めるべきは、対象証券の定義です。普通株式だけでなく、種類株式、新株予約権、取得請求権付株式、取得条項付株式、転換社債型新株予約権付社債、RSU、PSU、ストックオプション、信託受益権、株式連動型報酬、将来取得する株式を含めるかを明確にします。
次の一覧は、契約設計で必ず検討したい条項項目を整理したものです。読者にとって重要なのは、対象証券の範囲が狭いと転換、行使、分割、無償割当て、組織再編後の株式が漏れ、対象行為の範囲が狭いと実質的な経済的リスク移転を止められない点です。
普通株式、種類株式、新株予約権、RSU、PSU、将来取得株式、転換・分割後の株式まで含めるかを定義します。
範囲売却、譲渡、担保設定、質入れ、貸付け、売却予約、オプション付与、スワップその他の経済的効果の移転を含めるかを確認します。
行為カレンダー日、営業日、上場日を含むか、時刻、タイムゾーン、休日の扱いまで明確にします。
日付主幹事証券会社、共同主幹事、発行会社、取締役会、優先株主多数など、誰が同意権者かを定めます。
承認損害賠償、差止め、買戻権、譲渡承認拒否、報酬返還、権利失効、報告義務などを過不足なく定めます。
効果対象行為は「売却」とだけ書くのではなく、売却、譲渡、移転、担保設定、質入れ、貸付け、売却予約、譲渡予約、オプション付与、スワップその他対象証券の所有又は経済的効果を直接又は間接に移転する取引、というように広く定義することがあります。ただし、包括的に定めるだけでは、合理的な許容取引まで不明確になるため、禁止行為を広く定め、例外を個別列挙するのが基本です。
期間条項では、単に上場後180日間と書くのではなく、起算点、満了点、時刻、売買開始日を含むかまで具体化します。例えば、対象者は、元引受契約締結日から、東京証券取引所における当社普通株式の上場日(売買開始日をいい、当日を含む。)後180日目の日の午後3時まで、主幹事証券会社の事前の書面による同意なく、対象証券の売却等を行わない、というように書くと、いつまで制限されるかを読み取りやすくなります。
ロックアップ違反の効果として、損害賠償、差止め又は仮処分申立て、買戻権又はコールオプション、譲渡承認拒否、譲受人への承継義務違反、期限の利益喪失、役職員の場合の報酬返還・権利失効・退職時処理、発行会社による公表、東証又は主幹事証券会社への報告などが考えられます。違約金や強制買戻しが過度に制裁的な内容になると、有効性、公序良俗、労働法、税務、会計上の問題が生じる可能性があります。
目論見書、EDINET、取引所提出資料、インサイダー取引防止を一体で確認します。
IPOのロックアップは、通常、有価証券届出書、目論見書、訂正目論見書、上場申請のための有価証券報告書、上場承認時の開示資料、適時開示資料に記載されます。ニュース記事や証券会社の要約だけでなく、一次資料で対象者、株式数、期間、例外、主幹事証券会社の解除裁量を確認することが重要です。
次の一覧は、ロックアップ期間と解除条件を確認する資料を役割別に整理したものです。読者にとって重要なのは、同じ事実でも投資家向け開示、上場審査資料、社内管理資料で確認目的が異なるため、どの資料に何が書かれるかを読み分ける点です。
対象株主、保有株数、期間、1.5倍条項、主幹事証券会社による解除裁量、オーバーアロットメントの貸株などを確認します。
大株主が申請会社、役員、他の大株主との間で株式譲渡、ロックアップ、アーンアウト、業務運営に関する契約を結んでいるかを整理します。
未公表重要事実、ブラックアウト期間、役職員売買規程、知る前契約・計画、IR上の説明を確認します。
ロックアップは、証券実務の問題だけではなく、株主構成、支配関係、ガバナンス、業務運営、M&A、アーンアウト、取締役候補の選定、株主の事前承認権などと密接に関わります。IPO準備会社は、株主間契約や投資契約を締結した段階で、将来の上場審査資料にどのように記載されるかを意識する必要があります。
ロックアップが解除されても、インサイダー取引規制は解除されません。役員や内部者が満了後に売却する場合、未公表の重要事実を知っていないか、決算発表前など社内ブラックアウト期間に該当しないか、役職員売買規程上の事前申請・承認を取得したか、知る前契約・計画を利用する場合に要件を満たすか、売却予定をIR上どのように説明するかを確認します。
満了日だけで判断せず、対象者、対象証券、文言、内部情報、報告義務、市場影響を順番に確認します。
ロックアップ解除前の実務は、単に満了日をカレンダーで見る作業ではありません。次の判断の流れは、解除前に標準化したい確認手順を示しています。読者にとって重要なのは、前の段階で問題が残る場合、次の段階に進む前に資料や承認を補う必要がある点です。
対象者名、属性、保有株式数、潜在株式数、取得日、割当日、払込期日、根拠契約、満了日を台帳化します。
短い方が終わっても長い方が残ることがあるため、複数の拘束を別々に管理します。
価格条件、主幹事経由、東証での売却、事前の書面同意、全部又は一部解除の違いを確認します。
決算、M&A、資金調達、大型契約、訴訟、不祥事、サイバー事故などを確認します。
5%超保有、1%以上の増減、共同保有者、ブロックトレードや相対譲渡のタイミングを確認します。
出来高、売却主体、支配関係、任意開示、想定問答を検討し、判断過程を文書化します。
次の表は、解除条件の文言によって実務上の意味が変わる例を整理したものです。読者にとって重要なのは、同じ売却可能性の話でも、価格、経路、市場、同意形式、解除範囲、対象行為が少し違うだけで結論が変わり得る点です。
| 文言 | 意味の違い |
|---|---|
| 売却価格が発行価格の1.5倍以上 | 約定価格の判定か、終値判定かを確認します。 |
| 主幹事会社を通して行う | 別の証券会社での売却は不可となる可能性があります。 |
| 東証での売却等 | 市場外相対取引は含まれない可能性があります。 |
| 事前の書面による同意 | 事後承諾や口頭承認では足りない可能性があります。 |
| 当該合意を解除できる | 全部解除か一部解除か、誰に対する解除かを確認します。 |
| 譲渡等 | 担保、貸株、デリバティブを含むかを確認します。 |
実務では、売却数量が市場出来高に対して過大でないか、ブロックトレード又は立会外取引の利用が適切か、売却主体が創業者・代表者の場合に説明が必要か、成長戦略や資本政策に変化があるか、適時開示や任意開示が必要か、株主との対話で想定問答を用意するかも検討します。
第三者割当、1.5倍条項、創業者売却、SO行使、株主間契約の場面で考え方を確認します。
次の事例一覧は、実務で判断を誤りやすい場面を、事案、分析、対応の順に整理したものです。読者にとって重要なのは、どの事例でも「期間が終わったか」だけでは足りず、制度・契約・社内規程・開示を重ねて確認する必要がある点です。
上場日の3か月前に第三者割当を受け、任意ロックアップが90日で満了しても、制度ロックアップにより払込期日から1年を経過する日まで継続所有が必要となる可能性があります。任意満了日と制度満了日を別々に管理します。
公開価格の1.5倍以上、主幹事証券会社経由、東証での売却という条件が組み合わされている場合、価格だけで判断しません。契約上の例外該当性を文書で残します。
代表取締役は未公表重要事実を知る可能性が高いため、決算発表前、M&A交渉中、大型契約交渉中、資金調達検討中の売却は特に慎重に確認します。社内承認、大量保有報告、IR説明も検討します。
新株予約権の割当日から上場日の前日又は権利行使日までの所有、行使で交付された株式の規制、源泉徴収、税務申告、従業員説明を人事・法務・税務・証券代行で確認します。
未上場会社の創業者がM&Aで一部売却を希望する場合、投資家多数同意、ドラッグ・アロング、タグ・アロング、優先株主の拒否権、定款上の譲渡承認、税務を一体で確認します。
法務だけで抱え込まず、証券、会計、税務、登記、人事、IR、内部監査と連携します。
ロックアップ期間と解除条件の管理は、単独の法務担当者だけでは完結しません。次の表は、専門職・社内部門ごとの主な役割を整理したものです。読者にとって重要なのは、契約レビュー、台帳、開示、売却規制登録、税務、IR、証跡保存がそれぞれ別部門にまたがるため、責任分担を先に決める必要がある点です。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 企業内弁護士・法務担当 | 契約レビュー、解除条件の判断、社内承認、証拠保存 |
| 外部弁護士 | 上場規則、金商法、会社法、契約法、紛争リスクの助言 |
| 商事法務担当 | 株主名簿、取締役会・株主総会、Ⅰの部・Ⅱの部資料整備 |
| 主幹事証券会社・証券法務 | 任意ロックアップ契約、引受審査、売却規制登録 |
| 司法書士 | 商業登記、種類株式、譲渡制限、資本政策に関する登記実務 |
| 公認会計士 | 資本政策、株式報酬、IPO審査資料、内部統制の確認 |
| 税理士 | ストックオプション、株式譲渡、役員報酬、組織再編税制 |
| コンプライアンス担当 | インサイダー取引防止、役職員売買管理、研修 |
| 内部監査担当 | ロックアップ台帳、証跡、社内規程運用の監査 |
| IR担当 | 投資家説明、想定問答、市場影響への対応 |
| リーガルオペレーション担当 | 契約管理、満了日アラート、ナレッジ管理 |
| 経営者・取締役会 | 資本政策、ガバナンス、レピュテーション判断 |
IPO準備会社では、株式分割、種類株式の転換、ストックオプション発行、従業員持株会、VCの追加投資、M&A、組織再編が重なり、対象者と期間の管理が複雑化します。早い段階から、ロックアップ台帳、株主間契約台帳、ストックオプション台帳を統合して管理することが望まれます。
誤解されやすい論点を、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、期間満了は当該ロックアップ義務の終了を意味するにとどまるとされています。ただし、インサイダー取引規制、大量保有報告制度、社内売買規程、株主間契約、定款上の譲渡制限、主幹事証券会社との別契約などによって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、契約文言によって判断されるとされています。売却価格、初値形成後かどうか、主幹事証券会社を通すか、東証での売却か、事前通知が必要かなどの条件が組み合わされることがあります。具体的な売却可否は、契約と開示資料を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、制度ロックアップは取引所規則に基づく継続所有確約であり、上場審査と直接関係するとされています。任意ロックアップは主幹事証券会社等との私的契約であり、対象者、期間、解除条件は契約で決まります。両者が重なる場合、双方を満たす必要がある可能性があります。
一般的には、制度ロックアップでは継続的な所有が重視されるため、所有権移転を伴う貸株や譲渡担保は問題となり得ます。任意ロックアップでは契約文言により判断が変わります。担保設定が許される場合でも、担保権実行に伴う処分が制限される可能性があります。
一般的には、家族、資産管理会社、信託、ファンド内移管が例外として認められるかは契約文言によるとされています。譲受人が同等のロックアップ義務を承継すること、主幹事証券会社又は会社の事前同意、税務、大量保有報告、名義書換えが問題になる可能性があります。
一般的には、法定開示又は適時開示の要否は売却数量、役職、支配関係への影響、主要株主異動、投資家への影響など個別事情で変わるとされています。法定開示が不要でも、IR上の説明が望ましい場合があります。具体的な開示判断は、関係資料を整理して専門家に相談する必要があります。
一般的には、期間満了まで解除されないと解釈される可能性があります。ただし、契約全体、当事者の合理的意思、慣行、同意権者の裁量、不可抗力、組織再編、法令上の制約によって結論が変わる可能性があります。解除条件は契約締結時に明確化することが重要です。
一般的には、対象株主、保有株数、期間、1.5倍条項の有無、主幹事証券会社の解除裁量、オーバーアロットメントの貸株、制度ロックアップ対象株式、解除後に市場へ出る可能性のある株数に注目するとされています。具体的な投資判断は、開示資料を確認したうえで専門家の助言も踏まえる必要があります。
発行会社、株主・投資家、契約レビュー担当者ごとに確認項目を分けます。
次の一覧は、ロックアップ期間と解除条件を実務で確認する項目を立場別にまとめたものです。読者にとって重要なのは、同じ論点でも発行会社は台帳と開示、株主・投資家は売却可否と報告義務、契約レビュー担当者は条項の範囲と効果を見る点です。
全株主・新株予約権者の取得日、払込日、割当日を把握し、制度ロックアップ対象者と任意ロックアップ対象者を抽出します。満了日を台帳化し、分割、転換、行使、無償割当て後の取得株式も管理し、継続所有確約書、目論見書、有価証券届出書、Ⅰの部・Ⅱの部、売却規制登録、インサイダー取引防止規程を確認します。
台帳開示自分が制度ロックアップ対象か任意ロックアップ対象かを確認し、満了日だけでなく例外取引と解除条件を確認します。1.5倍条項の基準価格、売却経路、数量制限、主幹事証券会社又は会社の事前同意、大量保有報告・変更報告、未公表重要事実、税務、ファンド契約、LPへの報告を確認します。
売却可否報告対象証券の定義が十分広いか、対象行為に貸株、担保、ヘッジ、デリバティブが含まれるか、期間の起算点・満了点が明確か、例外取引が具体的に列挙されているか、譲受人の義務承継、同意権者、同意形式、回答期限、違反時の効果、開示資料、会社法・金商法・税務・労務・会計との整合性を確認します。
条項整合性日付だけではなく、資本政策・ガバナンス・開示・コンプライアンスを束ねて判断します。
ロックアップ期間と解除条件は、単なるカレンダー上の満了日ではありません。IPOの公正性、投資者保護、経営陣のコミットメント、株主の流動性、資本政策、開示、インサイダー取引防止、大量保有報告、株主間契約、M&A戦略を束ねる制度設計です。
実務上の大きな失敗は、上場後90日、上場後180日、公開価格の1.5倍という断片的な言葉だけで判断することです。正しい判断には、次の順序が必要です。
制度・開示・市場実務を確認するための中立的な資料名を整理しています。