2σ Guide

法人が受ける誹謗中傷への
企業としての対処法

企業の名誉、信用、業務、従業員の安全を守るため、証拠保全から削除、開示請求、損害賠償、刑事相談、広報、社内体制まで実務順に整理します。

24h初動の集中時間
5段階深刻度の分類
2025年新ガイドライン施行
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法人が受ける誹謗中傷への 企業としての対処法

企業の名誉、信用、業務、従業員の安全を守るため、証拠保全から削除、開示請求、損害賠償、刑事相談、広報、社内体制まで実務順に整理します。

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法人が受ける誹謗中傷への 企業としての対処法
企業の名誉、信用、業務、従業員の安全を守るため、証拠保全から削除、開示請求、損害賠償、刑事相談、広報、社内体制まで実務順に整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 法人が受ける誹謗中傷への 企業としての対処法
  • 企業の名誉、信用、業務、従業員の安全を守るため、証拠保全から削除、開示請求、損害賠償、刑事相談、広報、社内体制まで実務順に整理します。

POINT 1

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 全体像
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 証拠、分類、安全、説明を同時に進める
  • 削除前に保存
  • 法的類型へ分ける

POINT 2

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 全体像 ― 企業は「削除」だけを目的にしてはならない
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 法人が受ける誹謗中傷への企業としての対処法は、単に投稿を消す技術ではない。

POINT 3

  • 用語の定義 ― 誹謗中傷は法律上の単独概念ではない
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 2.1 誹謗中傷、名誉毀損、信用毀損、侮辱の違い
  • 2.2 法人にも「名誉」はあるのか
  • 2.3 法人にはプライバシー権は成立しにくいが、関係者個人の権利は別である

POINT 4

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 法的枠組み ― 民事・刑事・情報流通プラットフォーム対処法
  • 1. 発見:投稿URL、投稿者、媒体、拡散状況を確認します。
  • 2. 保存:画面、PDF、動画、検索結果、ログを残します。
  • 3. 危険判定:脅迫、個人情報晒し、営業秘密漏えいを確認します。
  • 4. 緊急対応:安全確保、警察相談、情報セキュリティ対応を検討します。
  • 5. 方針決定:削除、開示、広報、損害立証の優先順位を決めます。

POINT 5

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 初動対応 ― 発見から24時間以内に行うべきこと
  • 虚偽事実型
  • 行政処分歴、検査結果、監査報告、支払実績などで虚偽性を示します。
  • 意見・論評型
  • 正当な批判や公益通報まで封じる印象を避けます。

POINT 6

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 事案分類 ― どの投稿に、どの対応を選ぶか
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 5.1 レベル別トリアージ
  • 5.2 虚偽事実型
  • 5.3 意見・論評型

POINT 7

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 削除請求・送信防止措置の実務
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 6.1 任意削除依頼の基本構造
  • 6.2 法人投稿では、真偽判断が難しいことを前提にする
  • 6.3 削除仮処分

POINT 8

  • 法人の誹謗中傷対策 ― 発信者情報開示請求 ― 匿名投稿者を特定する
  • 重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 7.1 開示請求を検討すべき場面
  • 7.2 開示請求の一般的な流れ
  • 7.3 開示請求で問題になりやすい要件

まとめ

  • 法人が受ける誹謗中傷への 企業としての対処法
  • 法人の誹謗中傷対策 ― 全体像:重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 法人の誹謗中傷対策 ― 全体像 ― 企業は「削除」だけを目的にしてはならない:重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 用語の定義 ― 誹謗中傷は法律上の単独概念ではない:重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

法人の誹謗中傷対策 ― 全体像

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

次の重要ポイントは、企業対応の全体像を表します。削除だけに集中すると証拠や安全の確認が遅れるため、最初に何を守るのかを読み取ることが重要です。

証拠、分類、安全、説明を同時に進める

法人の誹謗中傷対応では、削除申請の前に証拠保全、投稿類型の整理、従業員保護、対外説明の設計を進めます。

次の一覧は、初動で同時に見る領域を整理したものです。法務、広報、現場、情報システムが分担する理由と、各領域から読み取るべきポイントが分かります。

証拠

削除前に保存

投稿本文、URL、日時、投稿者、拡散状況、被害状況を残します。

分類

法的類型へ分ける

名誉毀損、信用毀損、業務妨害、個人情報、営業秘密、なりすましを区別します。

安全

関係者を守る

脅迫や個人情報晒しがあれば従業員と顧客の安全を優先します。

説明

外部発信を整える

虚偽部分、確認中の事実、正当な批判への姿勢を整理します。

このページは一般的な情報提供であり、個別案件における法的意見ではない。削除請求、発信者情報開示請求、仮処分、損害賠償請求、刑事告訴、上場会社のIR対応、従業員保護、個人情報・営業秘密漏えい対応などは、事実関係、媒体、投稿内容、被害規模、証拠状態、投稿者属性、海外プラットフォームの有無により結論が変わる。重要案件では、早期に弁護士、危機管理広報、デジタルフォレンジック、情報セキュリティ、必要に応じて警察・法務局等の公的機関へ相談することが望ましい。

Section 01

法人の誹謗中傷対策 ― 全体像 ― 企業は「削除」だけを目的にしてはならない

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

法人が受ける誹謗中傷への企業としての対処法は、単に投稿を消す技術ではない。企業の名誉、取引上の信用、業務継続、従業員の安全、顧客・株主・取引先との信頼、採用ブランド、検索結果、SNS上の世論、将来の訴訟証拠を同時に扱う総合的な危機管理である。

実務上の最重要原則は、次の七つである。

  1. 最初に証拠を残す。 削除依頼より前に、URL、投稿本文、画像、動画、投稿日、投稿者アカウント、閲覧状況、検索結果、関連スレッド、拡散経路、社内外への影響を保存する。
  2. 投稿内容を法的類型に分ける。 単なる悪評か、虚偽事実の摘示か、法人の信用毀損か、従業員個人への攻撃か、脅迫か、営業秘密・個人情報の漏えいかを切り分ける。
  3. 初動対応を広報・法務・現場で統一する。 現場が感情的に反論すると、スクリーンショットが拡散され二次炎上になり得る。
  4. 削除請求発信者情報開示請求、損害賠償、刑事対応を別々に設計する。 投稿を消すことと、投稿者を特定することと、損害を回復することは、必要な証拠・手続・相手方が異なる。
  5. 正当な批判や公益通報を「誹謗中傷」と混同しない。 企業不祥事、労働問題、製品事故、消費者被害に関する真実性のある批判まで一律に削除しようとすると、法的にも広報上も逆効果になり得る。
  6. 従業員を守る。 店舗名・社員名・顔写真・勤務先・住所・電話番号等が晒されている場合、会社の信用問題であると同時に、従業員個人の人格権・プライバシー・安全の問題である。
  7. 弁護士に相談する場合は、証拠と目的を整理して持ち込む。 「消したい」「相手を特定したい」「謝罪させたい」「刑事処罰を求めたい」「取引先への説明をしたい」では必要な方針が異なる。

警察庁は、インターネット上の誹謗中傷について、悪口や根拠のない嘘等により他人を傷つける行為であり、内容によって名誉毀損罪や侮辱罪等の刑事責任を問われる場合があると説明している。ただし、企業実務では「誹謗中傷」という日常語をそのまま請求原因にするのではなく、民法、刑法、情報流通プラットフォーム対処法、プラットフォーム規約、労務・個人情報・知財・不正競争・金融規制等に分解して検討する。

Section 03

法人の誹謗中傷対策 ― 法的枠組み ― 民事・刑事・情報流通プラットフォーム対処法

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

次の判断の流れは、発見から24時間以内の初動順序を表します。証拠保全と危険性判定を先に置くことで、削除後に立証できない事態を避ける読み方が重要です。

発見直後の初動

発見

投稿URL、投稿者、媒体、拡散状況を確認します。

保存

画面、PDF、動画、検索結果、ログを残します。

危険判定

脅迫、個人情報晒し、営業秘密漏えいを確認します。

緊急対応

安全確保、警察相談、情報セキュリティ対応を検討します。

方針決定

削除、開示、広報、損害立証の優先順位を決めます。

3.1 民事上の対処

民事上は、主に次の救済を検討する。

次の比較表は、民事上の手段、目的、実務上の留意点を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

民事上の手段目的実務上の留意点
削除請求・送信防止措置申出問題投稿を表示・流通させないプラットフォーム規約違反と法的権利侵害を併記する。削除前に証拠保全する。
削除仮処分裁判所を通じて迅速に削除を求める権利侵害と保全の必要性を具体的に示す。投稿内容・URL・媒体特性が重要。
発信者情報開示請求匿名投稿者の特定ログ保存期間に注意。削除とは別手続。権利侵害の明白性等が争点になりやすい。
損害賠償請求被った損害の回復売上減少、対応費用、調査費用、信用回復費用、無形損害、弁護士費用の一部等を検討。
名誉回復措置訂正、謝罪、広告掲載等民法723条に基づく余地があるが、裁判所は表現の自由との関係で慎重に判断する。
差止・再発防止条項継続投稿、再投稿、なりすましの防止和解条項や仮処分・訴訟上の請求として設計する。

民法上、不法行為による損害賠償は民法709条、財産以外の損害の賠償は民法710条、名誉毀損における名誉回復措置は民法723条が基礎となる。法人については、精神的苦痛ではなく、金銭評価可能な無形損害として構成するのが実務上の要点である。

3.2 刑事上の対処

刑事上は、投稿内容により次の犯罪が問題になり得る。

次の比較表は、犯罪類型、典型例、企業実務上の意味を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

犯罪類型典型例企業実務上の意味
名誉毀損罪「この会社は違法薬物を販売している」等の事実摘示法人・代表者・従業員の社会的評価低下が問題になる。
侮辱罪事実を摘示しない公然の侮辱罵倒型投稿、人格攻撃型投稿で検討される。
信用毀損罪「倒産する」「偽物を売っている」等の虚偽風説取引上の信用を害する投稿で重要。
偽計業務妨害罪虚偽予約、虚偽通報、虚偽口コミによる業務妨害企業の通常業務が妨げられる場合に検討。
威力業務妨害罪爆破予告、殺害予告、来店妨害、抗議殺到の扇動安全確保・警察相談を優先すべき場面。
電子計算機損壊等業務妨害罪システムに虚偽指令を与え業務を妨害口コミ荒らしを超えたIT攻撃では情報セキュリティ対応も必要。
脅迫罪・強要罪・恐喝罪「金を払わなければ晒す」「社員を殺す」直ちに警察相談、証拠保全、従業員安全確保。

刑法は、名誉毀損、侮辱、信用毀損及び業務妨害、威力業務妨害、電子計算機損壊等業務妨害等を定めている。警察庁も、誹謗中傷の書き込みは内容によって名誉毀損罪や侮辱罪等の刑事責任を問われる場合があると説明している。

刑事対応では、単に「悪質だから処罰してほしい」と述べるだけでは不十分である。投稿日時、投稿者情報、URL、投稿本文、拡散状況、業務への具体的影響、従業員の危険、被害届・告訴状の対象犯罪、処罰意思を整理する必要がある。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪として扱われるため、告訴期間や告訴権者の整理も重要である。

3.3 情報流通プラットフォーム対処法

インターネット上の投稿削除や投稿者特定では、情報流通プラットフォーム対処法が重要である。同法は、旧プロバイダ責任制限法として知られていた法律を基礎に、特定電気通信による情報流通によって権利侵害等があった場合の、プラットフォーム事業者等の損害賠償責任の制限、発信者情報開示請求権、発信者情報開示命令事件、大規模プラットフォーム事業者の義務等を定める。

警察庁の説明でも、情報流通プラットフォーム対処法は、SNSや掲示板の書き込み等により権利侵害があった場合について、プラットフォーム事業者等の損害賠償責任が免責される要件、発信者情報開示請求権、発信者情報開示命令事件、削除対応の迅速化・透明化に係る大規模プラットフォーム事業者の義務を定めた法律とされている。

同法に関するガイドラインは、プロバイダ等による迅速かつ適切な対応を促進し、申立者・発信者・プロバイダ等の利益を尊重しつつ、インターネットの円滑かつ健全な利用を促進することを目的としている。また、情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイトでは、2025年4月1日施行の総務省作成ガイドラインや発信者情報開示関係ガイドライン、送信防止措置手続、開示請求書式等が整理されている。

3.4 大規模プラットフォーム事業者の迅速化・透明化規律

2024年改正により、大規模なプラットフォーム事業者に対して、削除申出への対応手続の整備、受付方法の公表、申立者に過重な負担をかけない手続、判断結果の通知、運用状況の透明化等の規律が整備された。ガイドラインは、権利侵害情報に対する迅速化規律について、大規模事業者以外のプロバイダ等にとって法的義務でない場面でも、自主的に態勢を整えることが必要であると述べている。

企業実務上は、この改正により「プラットフォームに何を、どの形式で、どの窓口へ、どの根拠で申し出るか」がより重要になった。申出の質が低いと、投稿の真偽や権利侵害性をプラットフォーム側で判断できず、発信者への照会や不対応に回る可能性が高くなる。

Section 04

法人の誹謗中傷対策 ― 初動対応 ― 発見から24時間以内に行うべきこと

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

次のポイント一覧は、投稿類型ごとの注意点を整理したものです。どの投稿かで根拠資料や相談先が変わるため、対応の違いを読み取ることが重要です。

虚偽事実型

行政処分歴、検査結果、監査報告、支払実績などで虚偽性を示します。

意見・論評型

正当な批判や公益通報まで封じる印象を避けます。

口コミ・レビュー型

利用実態の有無、個人攻撃、脅迫、差別表現、組織的投稿を確認します。

動画・切り抜き型

前後文脈、編集の有無、二次拡散、検索結果を分けて対応します。

営業秘密型

顧客リスト、認証情報、未公表情報は情報セキュリティ対応を並行します。

なりすまし型

商標、詐欺、規約違反、被害者保護を組み合わせます。

4.1 初動の優先順位

投稿を発見した直後の企業対応は、次の順序で行う。

  1. 安全確認 ― 殺害予告、爆破予告、来店予告、社員宅への言及、個人情報晒しがないか確認する。
  2. 証拠保全 ― 削除依頼・反論・問い合わせの前に、投稿と周辺情報を保存する。
  3. 社内連絡 ― 法務、広報、CS、情報システム、現場責任者、経営層の最小限チームを招集する。
  4. 影響評価 ― 閲覧数、拡散数、検索順位、取引先反応、顧客問い合わせ、社員安全、売上影響を確認する。
  5. 法的類型化 ― 名誉毀損、信用毀損、業務妨害、プライバシー、営業秘密、なりすまし等に分類する。
  6. 対応方針決定 ― 静観、事実確認、規約違反申告、削除請求、仮処分、開示請求、刑事相談、広報声明を選択する。
  7. 記録化 ― 誰が、いつ、何を判断し、何を実行したかを時系列で残す。

最初の数時間に感情的な返信を行うことは避けるべきである。企業公式アカウントが投稿者を罵倒したり、顧客を脅したり、未確認情報を断定したりすると、元投稿以上に問題化することがある。

4.2 証拠保全のチェックリスト

投稿を見つけたら、少なくとも以下を保存する。

次の比較表は、保存対象、具体例を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

保存対象具体例
投稿本文原文、改行、絵文字、ハッシュタグ、引用、添付画像・動画
URL投稿URL、スレッドURL、プロフィールURL、検索結果URL、短縮URLの展開先
時刻投稿日時、発見日時、保存日時、タイムゾーン
投稿者情報アカウント名、ID、プロフィール、過去投稿、フォロワー数、認証表示
媒体情報SNS名、掲示板名、口コミサイト名、レビュー店舗名、検索エンジン名
周辺文脈前後投稿、返信、引用、リポスト、まとめサイト、ニュース化の有無
拡散状況表示回数、いいね数、シェア数、コメント数、ランキング、検索順位
被害状況問い合わせ増加、予約キャンセル、取引先照会、社員への嫌がらせ、売上影響
社内対応担当者、対応時刻、判断理由、外部相談履歴

スクリーンショットだけでは足りない場合がある。ブラウザのアドレスバーと日時が分かる画面、投稿の全体、添付ファイル、プロフィール、リンク先、検索結果、ブラウザの開発者情報、PDF化、画面録画、第三者による確認、必要に応じた公証・弁護士による確認も検討する。動画やライブ配信は、URLだけでなく実際の映像・音声を保存する。

削除依頼を先に行うと、投稿が消えて証拠化が困難になることがある。さらに、投稿を消すことと、発信者情報の開示に必要なログを保全することは別問題である。開示請求を予定する場合には、削除と並行してログ保存・開示の方針を弁護士に相談する。

4.3 社内の「単独対応」を禁止する

誹謗中傷対応で多い失敗は、現場担当者、SNS担当者、店長、営業責任者、役員がそれぞれ別々に投稿者へ連絡してしまうことである。これにより、次の問題が生じる。

  • 投稿者に追加の材料を与える。
  • 会社の公式見解と異なる発言が拡散される。
  • 脅迫的・威圧的と評価される文面が残る。
  • 後日の訴訟で、会社の対応が不適切だったと主張される。
  • 正当な苦情申立てまで封じ込めようとした印象を与える。

社内規程として、ネット上の重大な誹謗中傷・信用毀損・炎上案件は、広報と法務の承認なく投稿者へ返信しない、削除依頼をしない、謝罪文を出さない、取引先へ説明しないというルールを設けるべきである。

Section 05

法人の誹謗中傷対策 ― 事案分類 ― どの投稿に、どの対応を選ぶか

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

5.1 レベル別トリアージ

企業は、すべての悪評に同じ強度で対応すべきではない。以下のようにリスクレベルを分類すると、判断が安定する。

次の比較表は、レベル、状況、典型対応を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

レベル状況典型対応
レベル0主観的な不満、低評価、感想にとどまる静観、CS改善、必要なら丁寧な返信
レベル1明らかな事実誤認、限定的な拡散事実確認、投稿者への任意連絡、プラットフォーム申告
レベル2虚偽事実により社会的評価・信用が低下証拠保全、削除請求、弁護士相談、訂正文検討
レベル3拡散が大きく、取引先・顧客・採用に影響危機管理チーム、仮処分、開示請求、対外説明、モニタリング
レベル4脅迫、業務妨害、個人情報晒し、営業秘密漏えい、株価・安全への影響警察相談、法的措置、従業員安全確保、IR・情報セキュリティ対応

5.2 虚偽事実型

最も典型的なのは、企業について虚偽の事実を述べる投稿である。

例 ―

  • 「この会社は反社会的勢力のフロント企業だ」
  • 「食中毒事故を隠蔽している」
  • 「顧客情報を売っている」
  • 「給与未払いをしている」
  • 「倒産寸前で支払い不能だ」
  • 「詐欺商法で行政処分を受けた」

この類型では、名誉毀損、信用毀損、業務妨害、場合により金融商品取引法上の風説の流布、景品表示法・特定商取引法・労働法令等に関する事実関係が争点になり得る。企業は、投稿が虚偽であることを示す資料を準備する。たとえば、行政処分歴がないこと、検査結果、監査報告、取引先確認、支払実績、社内調査結果、是正措置の有無などである。

注意すべきは、投稿の一部に真実が含まれる場合である。たとえば「過去に行政指導を受けた」という事実があり、その上で「現在も違法営業をしている」と書かれている場合、全体の意味、読者の通常の理解、真実部分と虚偽部分の関係を精査しなければならない。

5.3 意見・論評型

「対応が悪い」「不親切」「二度と使わない」「ブラックっぽい」など、主観的評価や意見に近い投稿は、直ちに違法とは限らない。企業は社会的存在であり、商品・サービス・労務環境・経営姿勢について一定の批判を受け得る。

ただし、意見の形をとっていても、前提となる事実が虚偽である場合は別である。

例 ―

  • 「賞味期限切れの商品を出された。だから最低の店だ」
  • 「面接で違法な質問をされた。だからブラック企業だ」
  • 「返金を約束したのに無視された。詐欺会社だ」

この場合、単なる感想ではなく、前提事実の真偽が中心となる。企業は、事実関係を調査し、真実なら謝罪・是正、虚偽なら削除・訂正・法的措置を検討する。

5.4 口コミ・レビュー型

口コミサイトの低評価は、削除が難しいことが多い。低評価そのものは消費者の意見として保護されやすいからである。一方で、次のような投稿は対応余地がある。

  • 実際には来店・利用していない人物による投稿
  • 競合他社や元従業員による虚偽レビュー
  • 個人名・顔写真・住所等を含む投稿
  • 「虫が入っていた」「料金を二重請求された」等の虚偽事実
  • 同一人物・集団による大量投稿
  • 脅迫、差別、性的表現、個人攻撃を含む投稿

対応では、プラットフォームのポリシー違反と法的権利侵害を分けて記載する。たとえば、「当該投稿は実体験に基づかない虚偽の投稿であり、当社の取引上の信用を毀損している」と同時に、「当該サイトのレビュー投稿基準にも反する」と整理する。

5.5 動画・切り抜き・晒し型

店舗や窓口での対応をスマートフォンで撮影し、従業員の顔、名札、声、顧客情報、内部掲示物などを含む動画が投稿される事例が増えている。この場合、会社への批判だけでなく、従業員個人の肖像権、プライバシー、名誉感情、安全配慮義務が問題となる。

切り抜き動画では、前後の文脈が削られ、企業が一方的に悪質に見える編集がされることがある。企業は、監視カメラ、通話録音、対応履歴、現場メモ、関係者ヒアリングにより事実を確認する。ただし、監視カメラ映像や顧客情報を外部公開するには、個人情報・プライバシー・守秘義務上の制約がある。反論のために過剰な個人情報を出すことは避ける。

5.6 営業秘密・セキュリティ情報型

投稿が、顧客リスト、ソースコード、認証情報、未公表の脆弱性、内部通報内容、M&A情報、未公表決算情報、製品設計情報などを含む場合、通常の名誉毀損対応とは別に、情報セキュリティ、営業秘密、個人情報、インサイダー情報、取引所規則への対応が必要になる。

この類型では、削除より先に、または削除と同時に、被害拡大防止を行う。

  • パスワード・APIキー・認証情報の無効化
  • アクセスログ調査
  • 侵入経路の確認
  • 顧客・取引先・監督官庁への通知要否の検討
  • 個人情報保護委員会への報告要否の検討
  • 上場会社の場合は適時開示・IR対応
  • 不正アクセス・内部不正の刑事相談

5.7 なりすまし・偽サイト型

会社公式を装うSNSアカウント、偽キャンペーン、偽ECサイト、偽採用サイト、フィッシングメール、偽広告は、単なる誹謗中傷ではなく、詐欺、商標権侵害、不正競争、著作権侵害、個人情報詐取の問題になり得る。

この場合、プラットフォームへのなりすまし通報、ドメイン管理者・ホスティング事業者への通報、検索エンジンへの削除申請、警察相談、顧客向け注意喚起、公式サイトでの告知を組み合わせる。

Section 06

法人の誹謗中傷対策 ― 削除請求・送信防止措置の実務

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

6.1 任意削除依頼の基本構造

まずは、プラットフォームやサイト管理者に対する任意の削除依頼を検討する。警察庁も、各サイトの削除依頼方法を確認し、管理人や問い合わせフォーム等を通じて削除依頼する方法を案内している。

削除依頼には、次の要素を簡潔に記載する。

  1. 申立者情報 ― 法人名、担当部署、連絡先、権限者名
  2. 対象投稿 ― URL、投稿日時、投稿者名、スクリーンショット
  3. 問題箇所 ― 本文のどの部分が問題か
  4. 権利侵害 ― 名誉、信用、業務、従業員のプライバシー等
  5. 虚偽性・違法性 ― どの事実が虚偽か、なぜ社会的評価を低下させるか
  6. 規約違反 ― プラットフォームの禁止事項との対応
  7. 求める措置 ― 削除、非表示、検索除外、アカウント停止、再投稿防止等
  8. 緊急性 ― 拡散、顧客被害、従業員安全、営業秘密、個人情報等
  9. 証拠 ― 必要最小限の根拠資料

削除依頼では、「違法だから全部消せ」「名誉毀損だ」「法的措置を取る」といった抽象的な表現だけでは不十分である。プラットフォーム担当者が、対象箇所と権利侵害を短時間で判断できるよう、具体化する。

6.2 法人投稿では、真偽判断が難しいことを前提にする

企業その他法人の名誉・信用を毀損する表現では、投稿で摘示された事実の真偽について、プラットフォーム側が判断できない場合が多い。ガイドラインも、特定の政党、企業その他法人、地方公共団体の名誉又は信用を毀損する表現について、一般的には照会手続等を経て対応するのが妥当であると述べている。

このため、企業側は、プラットフォームが判断しやすい資料を出す必要がある。たとえば、次のような資料である。

  • 「行政処分を受けた」と書かれた場合 ― 行政処分の有無、対象期間、対象事業者、現在の状態
  • 「食中毒を出した」と書かれた場合 ― 保健所対応、検査結果、事故報告、社内調査
  • 「倒産寸前」と書かれた場合 ― 決算公告、支払実績、信用不安を否定する客観資料
  • 「顧客情報を売った」と書かれた場合 ― 調査結果、漏えい有無、第三者調査、監査資料
  • 「反社とつながっている」と書かれた場合 ― 取引審査、反社チェック体制、具体的否定資料

ただし、機密資料をそのままプラットフォームに送ることは避ける。外部提出可能な範囲に整理し、必要に応じて弁護士名で提出する。

6.3 削除仮処分

任意削除に応じない場合、裁判所に削除の仮処分を申し立てることを検討する。仮処分は、通常訴訟より迅速な救済を目的とする手続であり、投稿が継続表示されることで回復困難な損害が生じる場合に有効である。

削除仮処分で重要なのは、次の点である。

  • 対象投稿をURL単位で特定すること
  • 投稿の通常の読者がどのような意味に受け取るかを説明すること
  • その意味内容が社会的評価・信用を低下させること
  • 投稿内容が虚偽、又は違法性阻却事由がないことを示すこと
  • 投稿が残ることによる損害・緊急性を示すこと
  • 管轄、相手方、海外法人対応、翻訳、送達を検討すること

仮処分は法的主張と証拠の精度が求められるため、企業担当者だけで進めるのではなく、インターネット上の権利侵害案件に詳しい弁護士へ相談するのが現実的である。

6.4 検索結果・サジェスト・まとめサイトへの対応

元投稿を削除しても、検索結果、キャッシュ、まとめサイト、引用投稿、スクリーンショット投稿が残ることがある。企業は、情報の流通経路を分けて対応する。

次の比較表は、対象、対応を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

対象対応
元投稿プラットフォーム削除、仮処分、開示請求
引用・転載個別URLごとに削除申請、著作権・名誉・信用の主張
まとめサイト運営者・サーバ管理者・広告配信事業者への申入れ
検索結果検索エンジンへの削除・非表示申請、法的手続
サジェスト検索事業者のポリシー申請、権利侵害の説明
キャッシュキャッシュ削除申請、元ページ削除との連動確認

検索結果の削除は、元ページ削除と同じではない。検索事業者には検索結果表示の社会的役割があり、削除判断は慎重になりやすい。元投稿の違法性、検索結果により生じる独自の被害、現在も表示される必要性の有無を整理する必要がある。

Section 07

法人の誹謗中傷対策 ― 発信者情報開示請求 ― 匿名投稿者を特定する

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

7.1 開示請求を検討すべき場面

次のような場合、発信者情報開示請求を検討する。

  • 投稿が悪質で、削除だけでは再発が止まらない。
  • 損害賠償請求や謝罪・再発防止合意を求めたい。
  • 競合他社、元従業員、退職者、取引先、組織的投稿の可能性がある。
  • 脅迫・業務妨害・情報漏えいと関連している。
  • 同一人物による継続投稿がある。
  • 社内関係者による内部情報漏えいの疑いがある。

警察庁は、情報流通プラットフォーム対処法上、自己の権利を侵害されたとする者が、プラットフォーム事業者等に対し、保有する発信者情報の開示を請求できると説明している。また、同法は一体的な手続による開示を可能とする発信者情報開示命令事件の手続も定めている。

7.2 開示請求の一般的な流れ

一般的な流れは次のとおりである。

  1. 問題投稿の証拠保全
  2. 法的類型の整理
  3. コンテンツプロバイダに対する任意開示又は開示命令申立て
  4. IPアドレス、タイムスタンプ等の取得
  5. アクセスプロバイダの特定
  6. アクセスプロバイダへのログ保存・開示請求
  7. 契約者情報の取得
  8. 投稿者への通知、交渉、損害賠償請求、刑事対応等

旧来は、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダに対し複数段階の手続が必要となり、時間がかかることが多かった。現在は、発信者情報開示命令事件により、一定の場合に一体的な手続設計が可能である。ただし、どの手続を選ぶべきかは、媒体、相手方、ログ保存状況、海外事業者、投稿時期、求める情報により異なる。

7.3 開示請求で問題になりやすい要件

開示請求では、主に次の点が争われる。

  • 権利侵害が明白か
  • 投稿の意味内容が社会的評価・信用を低下させるか
  • 真実性・相当性・公共性・公益性等により違法性が阻却されないか
  • 開示を受ける正当な理由があるか
  • 対象情報が法令上開示対象となる発信者情報か
  • 投稿者の表現の自由・プライバシーとの均衡
  • ログが保存されているか
  • 投稿者と契約者が同一といえるか

特に法人に対する投稿では、「企業は公的存在であり、批判を受ける余地がある」「公共の利害に関する投稿である」「投稿者は真実と信じる相当な理由があった」といった反論が想定される。企業は、感情的に不快であることではなく、社会的評価・信用の低下と違法性を客観的に示す必要がある。

7.4 開示請求と削除請求の順序

削除を急ぐべき場合と、開示を優先すべき場合がある。たとえば、従業員の住所や殺害予告が投稿されている場合は、削除・警察相談を優先する。他方で、投稿者特定を強く希望する場合、削除によって証拠やログ取得が難しくならないよう、証拠保全とログ保存を先行させる必要がある。

実務では、次のような組み合わせを検討する。

  • 証拠保全後、直ちに削除依頼
  • 削除依頼と同時にログ保存依頼
  • 削除仮処分と発信者情報開示命令申立てを並行
  • 脅迫・業務妨害では警察相談と民事手続を並行
  • 広報声明は、開示請求や刑事手続への影響を確認してから出す
Section 08

法人の誹謗中傷対策 ― 損害賠償・名誉回復・再発防止

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

8.1 企業が請求し得る損害

法人が受ける被害は、単純な売上減少だけではない。次のような損害を検討する。

次の比較表は、損害項目、内容を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

損害項目内容
売上減少・逸失利益予約キャンセル、契約解除、受注減、来店減少
信用回復費用広報対応、広告出稿、顧客説明、FAQ作成、コールセンター増強
調査費用デジタル調査、フォレンジック、外部専門家、社内調査
削除・開示対応費用弁護士費用、翻訳費、証拠作成費、裁判費用
無形損害ブランド価値、取引信用、採用信用、従業員士気への影響
業務妨害による損害通常業務停止、警備費、店舗閉鎖、問い合わせ対応負荷
従業員保護費用配置転換、相談窓口、メンタルケア、安全対策
再発防止費用モニタリング体制、教育、システム対応

法人には精神的苦痛はないが、名誉・信用が毀損された場合、金銭評価可能な無形損害が問題となり得る。ガイドラインが引用する最高裁昭和39年1月28日判決は、会社その他の法人も一定の社会的評価がある限り名誉として法的保護の対象になるとの実務理解の基礎として参照されている。

8.2 損害立証の実務

損害賠償を現実に回収するには、損害の発生と因果関係の立証が重要である。企業は次のデータを保存する。

  • 投稿前後の売上、予約数、問い合わせ件数
  • キャンセル理由、取引先からの照会メール
  • 採用辞退、内定辞退、応募数変化
  • 検索順位、SNS拡散数、アクセス解析
  • コールセンター対応時間、追加人員費
  • 広告・広報・危機管理費用
  • 社内調査・外部調査費用
  • 従業員被害の記録
  • 役員会・危機管理会議の議事メモ

単に「評判が落ちた」と述べるだけでは不十分である。投稿によって何が起き、どの費用が必要となり、どの機会が失われたのかを、日付と数値で説明する。

8.3 謝罪・訂正・再発防止合意

投稿者が特定された後は、訴訟だけでなく、交渉による解決も選択肢となる。

和解条項の例 ―

  • 問題投稿の削除
  • 同一又は類似投稿をしないこと
  • 虚偽であったことの確認
  • 謝罪文又は訂正文の掲載
  • 損害賠償金の支払い
  • 秘密保持
  • 違反時の違約金
  • 会社・役員・従業員・取引先への接触禁止

ただし、謝罪文の強制や公表は表現の自由との関係で問題になる場合がある。交渉上も、過度に攻撃的な条項は再炎上を招くことがある。法的有効性と広報上の合理性を両方検討する。

Section 09

法人の誹謗中傷対策 ― 刑事告訴・警察相談の実務

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

9.1 警察相談を優先すべき場面

次の場合は、企業内で抱え込まず、警察相談を優先する。

  • 役員・従業員・顧客への殺害予告、暴行予告、来店予告
  • 店舗・工場・オフィスへの爆破予告、放火予告
  • 「個人情報を晒す」「内部資料をばらまく」といった恐喝的投稿
  • 大量の虚偽予約、業務妨害、電話攻撃の呼びかけ
  • 実名、住所、電話番号、家族情報の晒し
  • 児童、医療、金融、公共交通、食品安全等、人命・安全への影響がある投稿
  • サイバー攻撃、不正アクセス、認証情報流出

警察庁は、サイバー事案に関する通報・相談・情報提供のオンライン受付窓口を設けている。また、身の危険を感じている、脅迫されている、犯人の捜査・処罰を求めたい場合の相談先として、最寄りの警察署又は警察相談専用電話が案内されている。

9.2 被害届と告訴の違い

一般に、被害届は「犯罪被害があったことを警察に申告する」書面であり、告訴は「犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める」意思表示である。名誉毀損罪・侮辱罪など親告罪が問題となる場合、告訴の要否・期限・告訴権者の確認が重要である。

企業が告訴を検討する場合、次の資料を準備する。

  • 会社の登記事項証明書又は権限確認資料
  • 代表者又は権限者の委任状
  • 投稿証拠一式
  • 被害状況の時系列
  • 業務妨害・信用毀損の具体的影響
  • 投稿者特定情報がある場合はその資料
  • 類似投稿・継続投稿の一覧
  • 処罰意思を示す文書

刑事事件化は、企業の広報戦略にも影響する。「警察に相談中」と公表するかどうかは、捜査への影響、相手方の刺激、顧客不安、株価・取引先対応を踏まえて慎重に決める。

Section 10

法人の誹謗中傷対策 ― 広報・レピュテーション対応

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

10.1 法務対応と広報対応は目的が異なる

法務対応の目的は、違法投稿の削除、投稿者特定、損害回復、再発防止である。広報対応の目的は、顧客・取引先・従業員・株主・地域社会に対して、事実、姿勢、再発防止、問い合わせ窓口を明確にし、不安と憶測を抑えることである。

法務的に強い文章が、広報的に適切とは限らない。たとえば、企業が「法的措置を取る」とだけ発表すると、正当な批判や消費者の声まで封じる会社だと受け止められる場合がある。一方で、曖昧な謝罪だけを出すと、虚偽投稿を事実上認めたように見えることがある。

10.2 対外コメントの基本構造

事案に応じて、次の要素を組み合わせる。

  1. 事実確認中であること
  2. 判明している事実と、未確認事項の区別
  3. 虚偽又は誤解を招く点の訂正
  4. 顧客・従業員・取引先への影響
  5. 安全・品質・個人情報保護への対応
  6. 問い合わせ窓口
  7. 必要に応じた法的措置への言及
  8. 正当な意見・苦情には誠実に対応する姿勢

例文 ―

現在、当社に関する一部投稿がSNS上で拡散されています。当社が確認している限り、当該投稿には事実と異なる内容が含まれています。詳細については、関係資料を確認のうえ、必要に応じて訂正情報を公表いたします。お客様、取引先様、従業員の安全とプライバシーを守るため、個人情報を含む投稿の拡散はお控えください。正当なご意見・お問い合わせについては、当社窓口にて誠実に対応いたします。

このように、断定しすぎず、隠蔽とも見えず、関係者保護と正当な批判への尊重を両立する表現が望ましい。

10.3 反論のリスク

企業が反論すべきかは、次の観点で判断する。

  • 投稿の拡散規模はどの程度か
  • 反論により投稿を再拡散してしまわないか
  • 反論に必要な証拠を公開できるか
  • 顧客・取引先がすでに不安を抱いているか
  • 企業側にも不備がないか
  • 従業員や顧客の個人情報を守れるか
  • 法的手続への影響はないか

事実誤認が限定的で、拡散も小さい場合は、静観や個別説明が適切なこともある。重大な虚偽情報が広く拡散し、顧客の安全や取引に影響する場合は、迅速な訂正が必要になる。

10.4 正当な告発・内部通報との区別

企業にとって不都合な投稿がすべて違法な誹謗中傷ではない。労働問題、ハラスメント、食品安全、製品事故、個人情報管理、粉飾、不正取引、公益通報に関する投稿は、公共性・公益性が認められ得る。

投稿が真実又は真実相当で、公共の利害に関わり、公益目的で行われたと評価される場合、名誉毀損の違法性が否定される可能性がある。企業は、批判を受けた場合に、まず「虚偽か」「真実か」「一部真実か」「調査が必要か」を確認しなければならない。

もし投稿が真実に基づく内部告発であれば、削除請求よりも、社内調査、是正、謝罪、再発防止、通報者保護を優先すべきである。誤った法的威圧は、二次被害、公益通報者保護法上の問題、労務紛争、炎上拡大につながる。

Section 11

法人の誹謗中傷対策 ― 従業員保護と安全配慮

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

11.1 会社の評判問題と従業員個人被害を分ける

企業への投稿であっても、実際には従業員個人が攻撃されることがある。

  • 店員の顔写真が投稿される
  • 名札から実名が晒される
  • 住所、家族、SNSアカウントが特定される
  • 電話・DM・メールで嫌がらせが来る
  • 「この店員を辞めさせろ」と拡散される
  • 役員や広報担当者が個人攻撃を受ける

この場合、会社は「法人の信用」だけでなく「従業員の安全」を守らなければならない。労働契約上の安全配慮、ハラスメント対応、メンタルヘルス、警備、勤務シフト、社内連絡体制を検討する。

11.2 従業員に直接対応させない

炎上投稿に対し、従業員本人にSNSで弁明させたり、顧客に謝罪DMを送らせたりすることは避けるべきである。本人がさらに攻撃される可能性がある。

会社が行うべき対応は次のとおりである。

  • 本人から事情聴取するが、責任追及ではなく保護を目的にする
  • 個人情報晒しは速やかに削除申請する
  • 会社公式窓口に問い合わせを集約する
  • 本人のSNS利用・報道対応を支援する
  • 必要に応じて勤務場所・シフト・連絡先を変更する
  • 警察相談や弁護士相談を会社が支援する
  • メンタルヘルス相談を案内する
Section 12

法人の誹謗中傷対策 ― 企業内体制 ― 平時に準備すべき規程と運用

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

12.1 ネット誹謗中傷対応規程

平時から、次の内容を規程化する。

次の比較表は、項目、内容を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

項目内容
監視範囲公式SNS、口コミ、検索結果、掲示板、ニュース、動画サイト
通報窓口社員が発見した場合の社内連絡先
初動責任者法務、広報、CS、情報システム、現場責任者
証拠保全方法スクリーンショット、URL、PDF、動画、ログ、保管場所
レベル分類レベル0から4までの判断基準
承認権限削除依頼、法的措置、対外発表、警察相談の承認者
弁護士相談基準開示請求、仮処分、刑事告訴、従業員個人被害、上場会社案件
広報方針コメントテンプレート、問い合わせ対応、SNS返信方針
従業員保護個人情報晒し、脅迫、メンタルケア、警備対応
事後検証対応記録、再発防止、教育、経営報告

12.2 監視とプライバシー

ネットモニタリングは有効だが、過剰監視は避けるべきである。公開情報の確認は一般に可能であるが、従業員の私的SNSを無断で監視する、偽アカウントで接触する、投稿者を個人的に追跡する、違法な情報取得を行うことは問題になり得る。

企業は、合法的な範囲で公開情報を収集し、必要な範囲でのみ個人情報を取り扱い、アクセス権限・保存期間・利用目的を定める。

12.3 社内教育

CS、広報、店舗、営業、人事、採用担当者には、次の教育を行う。

  • SNS上で顧客と口論しない
  • 問題投稿を見つけたら削除依頼前に証拠保存する
  • 個人判断で投稿者へ連絡しない
  • 正当な苦情と誹謗中傷を区別する
  • 従業員の個人情報を守る
  • メディア問い合わせは広報へ集約する
  • 法務相談が必要な基準を理解する
Section 13

法人の誹謗中傷対策 ― 弁護士に相談する際の実務ガイド

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

13.1 弁護士へ相談すべきタイミング

次の場合は、早期に弁護士へ相談する。

  • 投稿者を特定したい
  • 削除仮処分を検討している
  • プラットフォームが任意削除に応じない
  • 投稿が急速に拡散している
  • 取引先・株主・行政・メディアが関心を示している
  • 従業員の個人情報・顔写真・住所が晒されている
  • 脅迫、業務妨害、恐喝が含まれる
  • 海外プラットフォームや匿名掲示板が関係する
  • 投稿の一部が真実で、広報上の判断が難しい
  • 損害賠償、刑事告訴、謝罪文、再発防止合意を求めたい

弁護士相談は、投稿が拡散しきった後では遅いことがある。特に発信者情報開示では、アクセスログが保存されている期間が限られるため、早期対応が重要である。

13.2 弁護士へ持参すべき資料

初回相談時には、次を整理する。

次の比較表は、資料、内容を整理したものです。各列の違いを確認すると、この章で重要な判断材料を読み取れます。

資料内容
投稿一覧URL、投稿日時、投稿者、媒体、問題箇所
証拠スクリーンショット、PDF、動画、検索結果、拡散状況
事実関係投稿内容が虚偽か、一部真実か、調査中か
被害売上、問い合わせ、キャンセル、社員被害、取引先反応
希望削除、投稿者特定、損害賠償、謝罪、刑事告訴、広報声明
緊急性いつまでに何を止めたいか
過去対応投稿者への連絡、削除申請、警察相談、社内調査
会社情報登記、担当者権限、代理人委任の可否

13.3 弁護士選定の観点

弁護士を選ぶ際は、単に「インターネットに詳しい」だけでなく、次の観点を確認する。

  • 発信者情報開示請求・削除仮処分の経験
  • 法人の名誉毀損・信用毀損・業務妨害案件の経験
  • SNS、口コミ、掲示板、動画、検索結果への対応経験
  • 海外プラットフォーム対応、翻訳、送達の経験
  • 危機管理広報やIRとの連携経験
  • 刑事告訴・警察相談の経験
  • 営業秘密、個人情報、情報セキュリティの理解
  • 費用・期間・成功可能性の説明が現実的か
  • 正当な批判を無理に消そうとしない倫理性

削除代行業者、風評被害対策会社、SEO会社は、モニタリング、検索対策、広報支援では有用な場合がある。しかし、法的な削除交渉、代理人としての請求、損害賠償交渉、裁判手続は弁護士業務に該当し得る。企業は、非弁リスクを避けるため、法的判断や交渉は弁護士に依頼し、技術・広報支援と役割分担するべきである。

Section 14

法人の誹謗中傷対策 ― 実務テンプレート

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

14.1 社内初動メモ

次のひな形は、社内で初動情報をそろえるための記録項目を表します。担当者ごとに記録が散ると判断が遅れるため、同じ項目で事実、証拠、被害、緊急性を読み取れる形にすることが重要です。

発見日時 ―
発見者 ―
媒体名 ―
投稿URL ―
投稿者情報 ―
問題となる表現 ―
想定される権利侵害 ―
拡散状況 ―
被害状況 ―
安全上の懸念 ―
保存済み証拠 ―
外部相談の要否 ―

14.2 プラットフォーム削除申請文の骨子

次の骨子は、削除申請で伝えるべき要素を整理したものです。抽象的な抗議ではなく、対象投稿、侵害される権利、虚偽性や被害、求める措置を読み取れる形にすることが重要です。

申請者 ― 会社名、担当部署、権限者
対象投稿 ― URL、投稿日時、投稿者名、問題箇所
侵害される権利 ― 名誉、信用、営業上の利益、従業員個人の権利
問題となる事実 ― 虚偽である理由、証拠資料、被害状況
規約上の根拠 ― 誹謗中傷、なりすまし、個人情報、脅迫、営業秘密
求める措置 ― 削除、非表示、検索除外、アカウント停止、再投稿防止

14.3 弁護士相談時の質問例

次の質問例は、相談時に優先順位を決めるための確認項目です。削除、開示、損害賠償、刑事相談、広報対応のどれを急ぐべきかを読み取るために重要です。

  • 削除と発信者情報開示のどちらを優先すべきですか。
  • ログ保存のために今日中に必要な対応はありますか。
  • 投稿内容に一部真実がある場合、どのように主張を整理しますか。
  • 警察相談や刑事告訴を検討すべき事情はありますか。
  • 広報声明を出す場合、どこまで証拠を示すべきですか。
Section 15

FAQ

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

次の横棒グラフは、法人の誹謗中傷対応で初動優先度が高い領域を割合で表します。横棒の長さが大きい項目ほど遅らせにくい領域を示し、最初にどこへリソースを置くべきかを読み取れます。

証拠保全
95%
安全確認
90%
投稿分類
80%
削除方針
70%
広報設計
55%
損害立証
45%
割合はこのページの実務整理上の優先度の目安であり、個別案件の緊急度は投稿内容と被害状況で変わります。

Q1. 法人でも名誉毀損の被害者になれますか。

一般的には、会社その他の法人にも社会的評価や取引上の信用があるため、名誉や信用が法的保護の対象になる場合があるとされています。ただし、投稿内容、媒体、事実摘示の有無、公共性や公益性などによって判断は変わります。具体的な対応は、証拠を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 事実を書かれた場合でも名誉毀損になりますか。

一般的には、事実摘示が社会的評価を低下させる場合でも、公共性、公益目的、真実性や相当性が問題になるとされています。投稿の一部が真実でも、文脈、表現、個人情報、営業秘密、業務妨害の有無で判断が変わります。具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q3. 低評価レビューを削除できますか。

一般的には、単なる低評価や主観的感想は削除が難しいことがあります。一方で、利用実態のない虚偽レビュー、具体的な虚偽事実、個人情報、差別表現、脅迫、組織的投稿などは、削除申請や法的措置の検討対象になる可能性があります。

Q4. 投稿者を必ず特定できますか。

一般的には、発信者情報開示請求により特定を目指す制度があります。ただし、ログ保存期間、投稿媒体、権利侵害の明白性、保有情報、海外事業者の有無などで結果は変わります。具体的な見通しは早期に専門家へ確認する必要があります。

Q5. 投稿が削除された後でも損害賠償請求できますか。

一般的には、削除されたことだけで損害賠償請求の余地が当然になくなるわけではありません。ただし、投稿内容、保存済み証拠、損害との因果関係、投稿者特定の可否で判断が変わります。削除前の証拠保全が重要です。

Q6. 法務局や警察には何を相談できますか。

一般的には、人権擁護機関では削除依頼方法の助言や任意の削除要請が案内される場合があります。脅迫、業務妨害、処罰を求めたい場面では警察相談が検討されます。相談先は目的によって変わるため、被害内容を整理する必要があります。

Q7. 企業が「法的措置を取る」と公表してよいですか。

一般的には、公表が必要な場合はあります。ただし、正当な批判や公益通報まで威圧する印象を与えると逆効果になる可能性があります。事実誤認の訂正、関係者保護、正当な意見への尊重、必要な範囲の措置という構成で慎重に検討します。

Q8. 投稿者が元従業員らしい場合はどう対応しますか。

一般的には、労務、秘密保持、個人情報、退職時合意、内部通報、ハラスメント、名誉・信用の問題を分けて確認します。推測だけで断定すると紛争が拡大する可能性があるため、証拠と社内記録を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q9. 広報声明で証拠を公開すべきですか。

一般的には、証拠公開には信用回復の効果がある一方、個人情報、営業秘密、捜査や裁判への影響、再拡散のリスクがあります。どこまで公表するかは、法務、広報、情報セキュリティの観点から慎重に判断する必要があります。

Q10. 最も重要な一手は何ですか。

一般的には、削除前の証拠保全と危険性の切り分けが初動の中心とされています。ただし、脅迫や個人情報晒し、営業秘密漏えいなどでは安全確保や警察相談が優先される場合があります。具体的な対応順序は個別事情によって変わります。

Section 16

法人の誹謗中傷対策 ― まとめ

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

法人が受ける誹謗中傷への企業としての対処法は、法律、広報、情報セキュリティ、労務、ガバナンスを横断する実務である。企業が守るべきものは、投稿の削除だけではない。社会的評価、取引信用、従業員の安全、顧客の信頼、証拠、将来の再発防止、そして正当な批判を受け止める企業倫理である。

実務上は、次の順序で進める。

  1. 投稿を発見したら、まず証拠を保存する。
  2. 法務・広報・現場の対応窓口を一本化する。
  3. 投稿内容を名誉毀損、信用毀損、侮辱、業務妨害、プライバシー、営業秘密、なりすまし等に分類する。
  4. 削除請求、発信者情報開示請求、仮処分、損害賠償、刑事相談、広報対応を目的別に設計する。
  5. 正当な批判や内部告発を誹謗中傷と混同せず、必要な社内調査と是正を行う。
  6. 従業員個人が攻撃されている場合は、安全配慮と個人の権利保護を優先する。
  7. 重大案件では早期に弁護士へ相談し、証拠、目的、期限、被害状況を整理して進める。

企業の信用は、長い時間をかけて形成されるが、インターネット上では短時間で毀損され得る。だからこそ、平時の体制整備と初動の冷静さが、最終的な被害規模を大きく左右する。

Reference

この記事の参考資料

重要な判断材料を、一般読者にも追いやすい順番で整理します。

  • 警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」。誹謗中傷の説明、刑事責任の可能性、相談先、削除方法等が整理されている
  • 警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」内「問題ある書き込みを削除する方法」
  • 警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」内「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)」
  • 警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」
  • 警察庁「その書き込み、一人で悩んでいませんか。」サイバー警察局便り2024(R6) Vol.14
  • e-Gov法令検索「民法」。民法709条、710条、723条等
  • e-Gov法令検索「刑法」。刑法230条、231条、233条、234条、234条の2等
  • e-Gov法令検索「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」
  • 情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト。ガイドライン、手引き、書式、送信防止措置手続、発信者情報開示請求関係資料が整理されている
  • 情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会「情報流通プラットフォーム対処法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン(第7版、令和7年5月)」
  • 同ガイドライン「II-4 企業その他法人等の権利を侵害する情報の侵害情報送信防止措置等」。特定の政党、会社その他の法人、権利能力なき社団の社会的評価・名誉に関する整理
  • 同ガイドライン「企業その他法人等の権利を侵害する情報への対応」。経済的取引における信用と信用毀損罪、民事法上の名誉の一形態に関する整理
  • 同ガイドライン「III 侵害情報送信防止措置等を講じるための対応手順」。大規模特定電気通信役務提供者の迅速化・透明化規律、申立受付方法、申立者に過重な負担をかけない手続等
  • 法務省人権擁護局・調査救済課「法務省の人権擁護機関が行うインターネットでの誹謗中傷被害に対する支援」。削除依頼方法の助言、法務局による任意の削除要請、仮処分申立て案内等
  • 同資料「各種相談窓口について」。削除、処罰、損害賠償、削除方法に応じた相談先の整理