2σ Guide

建物の老朽化で建替えを理由に
立ち退きを迫られたら

普通借家の正当事由、6か月通知、定期借家、立退料、合意書、裁判例を整理し、退去合意の前に確認すべきポイントを解説します。

6か月 解約申入れで問題になる期間
1年前〜6か月前 更新拒絶・定期借家通知
500万円 最高裁判例で示された立退料
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

建物の老朽化で建替えを理由に 立ち退きを迫られたら

普通借家の正当事由、6か月通知、定期借家、立退料、合意書、裁判例を整理し、退去合意の前に確認すべきポイントを解説します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
建物の老朽化で建替えを理由に 立ち退きを迫られたら
普通借家の正当事由、6か月通知、定期借家、立退料、合意書、裁判例を整理し、退去合意の前に確認すべきポイントを解説します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 建物の老朽化で建替えを理由に 立ち退きを迫られたら
  • 普通借家の正当事由、6か月通知、定期借家、立退料、合意書、裁判例を整理し、退去合意の前に確認すべきポイントを解説します。

POINT 1

  • 建物の老朽化で建替えを理由に立ち退きを迫られたら最初に確認すること
  • 古い、建替える、6か月後という説明だけで退去義務が決まるわけではありません。
  • 契約類型を確認する
  • 正当事由を検証する
  • 条件を書面化する

POINT 2

  • 建物の老朽化による立ち退きで押さえる用語と法的枠組み
  • 1. 契約書と更新履歴を確認:普通借家か定期借家か、契約期間満了前か法定更新後かを見ます。
  • 2. 通知の種類を分ける:更新拒絶、解約申入れ、定期借家の期間満了、合意解約のどれかを確認します。
  • 3. 正当事由を確認:通知時期だけでなく、貸主・借主双方の事情と立退料を総合して見ます。
  • 4. 方式と終了通知を確認:更新がない旨の事前説明、契約書方式、期間満了前通知を確認します。

POINT 3

  • 建物の老朽化や建替えは正当事由になるのか
  • 建物の客観情報
  • 建築年月日、構造、建築確認、検査済証、登記情報、旧耐震かどうかを確認します。
  • 危険性の資料
  • 耐震診断報告書、構造耐震指標、建築士や構造設計者の意見書、写真を見ます。

POINT 4

  • 建物の老朽化による立ち退きで立退料をどう考えるか
  • 相場ではなく、正当事由の不足をどう補うかが中心です。
  • 立退料は「家賃何か月分」と機械的に決まるものではありません。
  • 立退料の交渉では、誤解を避けることも重要です。
  • 次の重要ポイントは、提示額や相場だけで結論を決めないための読み方をまとめています。

POINT 5

  • 建物の老朽化で立ち退きを迫られた借主の初動対応
  • 1. その場で署名・押印しない:退去合意書、明渡承諾書、解約合意書、覚書は持ち帰り、内容を確認します。
  • 2. 退去要求を書面で受け取る:法的根拠、終了日、老朽化資料、建替計画、立退料、回答期限を求めます。
  • 3. 契約書と通知時期を確認する:普通借家か定期借家か、満了日、更新条項、通知時期、6か月経過、終了通知を見ます。
  • 4. 家賃は原則として支払い続ける:勝手に止めると、契約解除の別根拠を与える可能性があります。
  • 5. 証拠を集める:契約書、支払記録、通知、建物写真、修繕依頼履歴、代替物件、引越見積り、店舗資料を整理します。

POINT 6

  • 建物の老朽化による立ち退き交渉と合意書の条項
  • 正当事由、借主側事情、支払時期、敷金、原状回復、明渡期限を詰めます。
  • 基本条項
  • 金銭条項
  • 移転支援条項

POINT 7

  • 建物の老朽化による立ち退きが調停・訴訟になった場合
  • 民事調停、明渡訴訟、強制執行、弁護士相談、法テラスを確認します。
  • 交渉で解決しない場合は、民事調停や明渡訴訟が問題になります。
  • 話合いで条件を調整する段階か、裁判所が正当事由を判断する段階か、強制執行の前提があるかを読み分けてください。
  • 裁判官または調停官と調停委員が関与し、立退料、明渡時期、敷金、原状回復、移転先確保を話し合います。

POINT 8

  • 建物の老朽化による立ち退きの裁判例から見た実務傾向
  • 老朽化、耐震性、立退料、借主側事情を証拠で検討する傾向があります。
  • 裁判例は個別事情ごとの判断ですが、実務傾向を読む手がかりになります。
  • 数字だけを相場として使わず、判断要素の組み合わせを読み取ることが重要です。

まとめ

  • 建物の老朽化で建替えを理由に 立ち退きを迫られたら
  • 建物の老朽化で建替えを理由に立ち退きを迫られたら最初に確認すること:古い、建替える、6か月後という説明だけで退去義務が決まるわけではありません。
  • 建物の老朽化による立ち退きで押さえる用語と法的枠組み:更新拒絶、解約申入れ、正当事由、立退料、定期借家を整理します。
  • 建物の老朽化や建替えは正当事由になるのか:築年数だけでなく、危険性、修繕可能性、建替計画、借主側事情を総合します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

建物の老朽化で建替えを理由に立ち退きを迫られたら最初に確認すること

古い、建替える、6か月後という説明だけで退去義務が決まるわけではありません。

建物の老朽化で建替えを理由に立ち退きを迫られたら、最初に確認すべきことは、その退去要求に法律上の根拠があるかです。普通建物賃貸借では、貸主が建物を建て替えたいと考えていても、それだけで当然に契約を終了させられるわけではありません。借地借家法では、貸主からの更新拒絶や解約申入れに正当事由が必要とされています。

初動では、次の3段階で整理することが重要です。次の一覧は、退去要求を受けた直後に確認する順番を示しています。上から順に、契約類型、貸主側の根拠、退去に応じる場合の条件を読み取ることで、署名前に何を確認すべきかが分かります。

Step 01

契約類型を確認する

普通借家か定期借家か、契約期間満了前か法定更新後か、通知の時期が適切かを見ます。

Step 02

正当事由を検証する

老朽化、耐震性、修繕可否、建替計画、貸主側の必要性を資料で確認します。

Step 03

条件を書面化する

立退料、転居費用、敷金返還、原状回復免除、支払時期、明渡時期を明確にします。

重要「6か月後に出ていってください」と言われた場合でも、6か月の経過だけで正当事由が不要になるわけではありません。個別事情により結論は変わるため、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Section 01

建物の老朽化による立ち退きで押さえる用語と法的枠組み

更新拒絶、解約申入れ、正当事由、立退料、定期借家を整理します。

立ち退き問題では、日常用語と法律用語が混在しやすく、用語を取り違えると交渉の出発点を誤ります。次の比較表は、主要用語の意味と確認資料を整理したものです。左から用語、意味、どの資料で確認するかを読み取ってください。

用語意味確認する資料
立ち退き・明渡し借主が建物から退去し、貸主に占有を戻すことです。退去要求書、合意書案、契約書、鍵返還条件。
更新拒絶期間の定めがある普通借家で、貸主が期間満了時の更新を拒むことです。契約期間満了日の1年前から6か月前までに通知されたか。
解約申入れ期間の定めがない普通借家で、貸主が契約終了を申し入れることです。申入れ日、6か月経過、正当事由の有無。
正当事由貸主が更新拒絶や解約申入れをするために必要な法律上の相当な理由です。貸主・借主の使用必要性、経過、利用状況、建物現況、立退料。
立退料借主の経済的不利益を緩和し、正当事由を補完するために支払われる金銭です。金額、内訳、支払時期、敷金、原状回復、移転支援。
法定更新一定の通知や異議がなく、法律上、従前契約と同一条件で更新された扱いになる制度です。過去の更新経過、通知、異議、使用継続状況。
定期建物賃貸借更新がなく、期間満了で終了することを予定する契約類型です。契約書、事前説明書、重要事項説明書、終了通知。

貸主の退去要求は、契約類型によって見る順番が変わります。次の判断の流れは、普通借家の更新拒絶、期間の定めがない契約の解約申入れ、定期借家の確認を分けています。上から下に確認すると、どの法律構造で争うべきかを読み取れます。

退去要求を受けたときの法律関係の整理

契約書と更新履歴を確認

普通借家か定期借家か、契約期間満了前か法定更新後かを見ます。

通知の種類を分ける

更新拒絶、解約申入れ、定期借家の期間満了、合意解約のどれかを確認します。

普通借家
正当事由を確認

通知時期だけでなく、貸主・借主双方の事情と立退料を総合して見ます。

定期借家
方式と終了通知を確認

更新がない旨の事前説明、契約書方式、期間満了前通知を確認します。

Section 02

建物の老朽化や建替えは正当事由になるのか

築年数だけでなく、危険性、修繕可能性、建替計画、借主側事情を総合します。

老朽化は重要な事情ですが、築年数が古いだけで自動的に正当事由になるわけではありません。次の比較表は、裁判例紹介で示された代表的な判断材料を並べたものです。年数や金額だけを一般化せず、危険性、修繕可否、借主側事情、立退料がどのように組み合わされたかを読み取ることが重要です。

事案の特徴示された事情読み取るポイント
築後57年の木造住宅早急な耐震補強工事や建替工事が必要とはいえず、高齢・疾病など借主側の使用必要性が極めて高いとされました。古い、旧耐震という抽象論だけでは足りないことを示します。
築後45年のアパート老朽化が顕著で倒壊可能性が高く、修繕より取壊し・建替えの必要性が認められ、100万円の立退料で補完された例です。危険性と補修困難性が具体的に示されると貸主側事情が強まります。
特定緊急輸送道路沿道建築物耐震診断で倒壊・崩壊の危険性が高く、建替えまたは大規模耐震補強の必要性が高いとされ、53万円の立退料が検討されました。公共性や防災上の必要性があっても、借主側事情と立退料は検討されます。
最高裁昭和46年判決老朽化して建替えを要する店舗について、500万円の立退料支払いと引換えに明渡請求を認容することが相当とされました。立退料はそれだけで正当事由になるものではなく、他事情と総合されます。

貸主側が老朽化・建替えを主張する場合、抽象的な説明だけでは足りません。次の一覧は、貸主側の主張を検証するための資料をまとめたものです。提示された資料が少ないほど、建替え必要性が具体的に裏づけられているか慎重に読む必要があります。

建物の客観情報

建築年月日、構造、建築確認、検査済証、登記情報、旧耐震かどうかを確認します。

危険性の資料

耐震診断報告書、構造耐震指標、建築士や構造設計者の意見書、写真を見ます。

修繕との比較

修繕見積り、耐震改修見積り、建替費用見積り、修繕では足りない理由を確認します。

建替計画の具体性

設計図、スケジュール、資金計画、行政手続の進捗、他入居者の退去状況を見ます。

借主側の使用必要性

長年の居住、高齢、疾病、介護、通学、転居先確保困難、店舗の営業基盤を整理します。

貸主の修繕対応

貸主が長期間修繕を怠って老朽化を進行させた可能性も、交渉上の評価に影響し得ます。

Section 03

建物の老朽化による立ち退きで立退料をどう考えるか

相場ではなく、正当事由の不足をどう補うかが中心です。

立退料は「家賃何か月分」と機械的に決まるものではありません。次の比較表は、住宅と店舗・事務所で考慮されやすい費目を分けたものです。列ごとに、どの損失を金額化し、どの資料で裏づけるかを読み取ることが重要です。

区分考慮されやすい費目整理のポイント
住宅引越費用、荷造り、不用品処分、一時保管、敷金、礼金、仲介手数料、保証料、火災保険、鍵交換、家賃差額、交通費、高齢者等の移転支援、敷金返還、原状回復免除。一括金額だけでなく、何を含む金額かを明確にします。
店舗・事務所移転先初期費用、内装・造作・設備移設、看板、厨房設備、行政手続、休業損害、営業利益減少、固定客、従業員、在庫、原状回復免除、借家権価格。営業資料、内装費、移転費、休業見込みなどで損失を具体化します。
支払時期合意締結時の一部、転居先契約時の一部、明渡し・鍵返却と同時の残額、敷金の別途返還。退去後支払いだけでは資金繰りや減額主張のリスクがあります。
税務居住用か事業用か、営業補償か、資産譲渡対価的性質があるかで扱いが変わり得ます。高額な立退料では税理士または税務署への確認が必要です。

立退料の交渉では、誤解を避けることも重要です。次の重要ポイントは、提示額や相場だけで結論を決めないための読み方をまとめています。提示された金額が何を補うものか、正当事由との関係でどの程度意味を持つかを確認してください。

立退料立退料を提示されたからといって、合意前に必ず退去しなければならないわけではありません。貸主の一方的な提示額が最終額とは限らず、高額であっても借主側の使用必要性が極めて高い場合には正当事由が認められない可能性があります。
Section 04

建物の老朽化で立ち退きを迫られた借主の初動対応

署名せず、書面で受け取り、契約と通知時期を確認し、証拠を集めます。

退去要求を受けた直後は、条件交渉よりも先に権利関係を確認します。次の時系列は、借主が最初に取る対応を順番に整理したものです。上から順に実行することで、合意書への不用意な署名や家賃滞納による不利益を避けやすくなります。

最初

その場で署名・押印しない

退去合意書、明渡承諾書、解約合意書、覚書は持ち帰り、内容を確認します。

次に

退去要求を書面で受け取る

法的根拠、終了日、老朽化資料、建替計画、立退料、回答期限を求めます。

確認

契約書と通知時期を確認する

普通借家か定期借家か、満了日、更新条項、通知時期、6か月経過、終了通知を見ます。

継続

家賃は原則として支払い続ける

勝手に止めると、契約解除の別根拠を与える可能性があります。受領拒否時は供託の要否を相談します。

準備

証拠を集める

契約書、支払記録、通知、建物写真、修繕依頼履歴、代替物件、引越見積り、店舗資料を整理します。

契約書に建替え応諾条項や老朽化条項があっても、それだけで諦める必要はありません。次の重要ポイントは、普通借家で正当事由を不要にするような借主不利の特約が問題になり得ることを示します。条項文言、契約類型、通知、立退料、建物資料をあわせて読むことが重要です。

契約条項「建替えの通知があった場合、借主は明渡しに応じる」といった条項があっても、普通借家で借地借家法上の正当事由を不要化する内容であれば、借主に不利な特約として有効性が問題になる可能性があります。
Section 05

建物の老朽化による立ち退き交渉と合意書の条項

正当事由、借主側事情、支払時期、敷金、原状回復、明渡期限を詰めます。

交渉では、貸主の主張の強さと借主側の必要性を資料で照らし合わせます。次の比較表は、主要論点ごとに確認すべき資料と合意書で決める内容を整理したものです。左から論点、交渉で見る資料、合意書に落とす条件を読むことで、口約束のまま残してはいけない項目が分かります。

論点交渉で確認すること合意書で定めること
貸主の正当事由危険性、耐震診断、修繕可否、建替計画、資金計画、他入居者、修繕履歴。退去理由、建替計画、資料確認済み事項。
借主の使用必要性居住年数、転居困難、家族、通院、介護、学校、職場、店舗の立地依存性。明渡期限、転居支援、店舗の移転告知や協力。
立退料の支払時期転居先初期費用、引越費用、退去前に必要な資金。合意時、転居先契約時、鍵返却時など具体的な支払日と方法。
原状回復と敷金建替えで解体予定か、残置物の扱い、未払賃料の有無。原状回復免除、敷金全額返還、退去日までの賃料精算。
明渡期限転居先探し、審査、契約、引越し、学校・仕事・営業への影響。実行可能な明渡日、延期条件、違約時の扱い。

退去に応じる場合は、合意書で後日の紛争を防ぎます。次の一覧は、合意書に入れるべき条項をまとまりごとに整理したものです。金銭、移転支援、紛争予防の各項目に抜けがあると、明渡し後に支払いや原状回復で揉めやすいと読み取れます。

Basic

基本条項

物件表示、契約の特定、合意解約日または明渡日、明渡条件、鍵返還、残置物の扱いを定めます。

Money

金銭条項

立退料の金額、内訳、支払時期、支払方法、敷金返還、賃料精算、原状回復免除を明記します。

Move

移転支援条項

代替物件紹介、入居審査協力、保証会社費用、高齢者等の転居支援、店舗移転協力を定めます。

Close

紛争予防条項

債権債務がないこと、秘密保持、違約時の扱い、管轄裁判所、反社会的勢力排除条項を確認します。

Section 06

建物の老朽化による立ち退きが調停・訴訟になった場合

民事調停、明渡訴訟、強制執行、弁護士相談、法テラスを確認します。

交渉で解決しない場合は、民事調停や明渡訴訟が問題になります。次の一覧は、手続ごとの役割と注意点を整理したものです。話合いで条件を調整する段階か、裁判所が正当事由を判断する段階か、強制執行の前提があるかを読み分けてください。

調

民事調停

裁判官または調停官と調停委員が関与し、立退料、明渡時期、敷金、原状回復、移転先確保を話し合います。

話合い

明渡訴訟

貸主が更新拒絶や解約申入れの有効性、正当事由、立退料、契約終了、明渡義務を主張立証します。

証拠重視

強制執行

判決などの手続なしに鍵交換、荷物搬出、ライフライン停止で退去を強制することは大きな法的問題を生じます。

自力救済注意

弁護士相談

契約書・通知書の確認、正当事由の見通し、立退料方針、回答書、交渉代理、調停・訴訟対応を相談できます。

早期整理

法テラス

収入・資産など一定条件を満たす場合、無料法律相談や費用立替制度を利用できる可能性があります。

費用面

弁護士に相談する際は、資料が揃っているほど見通しを立てやすくなります。次の重要ポイントは、相談時に持参すると効率的な資料をまとめたものです。不足資料がある場合は、相手方に資料開示を求めるか、取得方法を相談する必要があります。

持参資料賃貸借契約書、更新契約書、重要事項説明書、定期借家の事前説明書、通知書、内容証明郵便、家賃支払記録、建物写真、修繕依頼履歴、立退料提示書、退去合意書案、転居先資料、引越見積り、店舗の売上資料や営業許可証を整理します。
Section 07

建物の老朽化による立ち退きの裁判例から見た実務傾向

老朽化、耐震性、立退料、借主側事情を証拠で検討する傾向があります。

裁判例は個別事情ごとの判断ですが、実務傾向を読む手がかりになります。次の比較表は、金額、築年数、危険性、借主側事情がどのように扱われたかを整理したものです。数字だけを相場として使わず、判断要素の組み合わせを読み取ることが重要です。

裁判例・資料主な事情実務上の示唆
最高裁昭和46年11月25日判決老朽化して建替えを要する店舗について、500万円の立退料支払いと引換えの明渡しが相当とされました。立退料は他の諸事情と総合考慮され、単独で正当事由になるわけではありません。
築後45年のアパート老朽化が顕著で倒壊可能性が高く、修繕・耐震補強費用も高額とされ、100万円の立退料で補完された例です。建替え必要性が具体的に強い場合でも、借主側保護と立退料が検討されます。
築後57年の木造住宅早急な建替え必要性が否定され、高齢・疾病による借主側の自己使用必要性が極めて高いとされました。築年数や旧耐震だけではなく、専門家意見と借主側事情が重視されます。
特定緊急輸送道路沿道建築物耐震診断で倒壊・崩壊危険が高いとされ、立退料53万円により正当事由が補完されたとされています。防災上の必要性があっても、関係当事者ごとの事情を分けて評価します。
Section 08

建物の老朽化で建替えを理由に立ち退きを迫られた場合のFAQ

個別事情で結論が変わるため、一般的な制度説明として確認してください。

Q1. 老朽化で危ないから退去してくださいと言われたら、すぐ出なければなりませんか。

一般的には、普通借家では貸主からの更新拒絶や解約申入れに正当事由が必要とされています。ただし、建物の危険性、耐震診断、修繕可能性、借主側事情によって結論が変わる可能性があります。安全に関わる危険が切迫している場合の一時避難を含め、具体的な対応は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 6か月前に通知されたら契約は終わりますか。

一般的には、期間の定めのない普通借家では解約申入れから6か月の経過が問題になりますが、正当事由も必要とされています。期間のある普通借家では、期間満了の1年前から6か月前までの更新拒絶通知と正当事由が問題になります。通知時期や契約類型により結論が変わるため、契約書と通知を確認する必要があります。

Q3. 定期借家なら必ず退去しなければなりませんか。

一般的には、有効な定期建物賃貸借で期間満了により終了する場合、普通借家の正当事由とは異なる扱いになります。ただし、契約時の方式、事前説明、契約書、終了通知などで結論が変わる可能性があります。契約書に定期とあるだけで判断せず、資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q4. 契約書に建替えのときは退去とあります。

一般的には、普通借家で借主に不利に正当事由を不要化する条項は、借地借家法との関係で有効性が問題になる可能性があります。ただし、契約類型、条項文言、説明経過、通知内容によって結論が変わります。契約書だけで諦めず、具体的には弁護士等に相談する必要があります。

Q5. 立退料はいくら請求できますか。

一般的には、一律の相場はなく、住宅か店舗か、建物の危険性、貸主の必要性、借主の生活・営業上の必要性、転居費用、家賃差額、営業損失、代替物件の有無などで変わります。見積書や市場資料を集め、合理的に積み上げる必要があります。

Q6. 家賃を払わないことで抵抗してよいですか。

一般的には、家賃滞納は貸主に契約解除の別根拠を与える可能性があるため慎重な対応が必要です。貸主が受領を拒む場合は供託などの対応が問題になります。具体的な方法は契約関係や支払状況により変わるため、弁護士等へ相談する必要があります。

Q7. 退去合意書に署名してしまいました。

一般的には、署名後は交渉が難しくなる可能性があります。ただし、説明不足、錯誤、強迫、著しく不合理な条件などが問題になる場合もあります。合意書、署名時の状況、録音、メッセージ、交渉経過を整理して、速やかに専門家へ相談する必要があります。

Q8. 建物が売却され、新所有者から退去を求められました。

一般的には、所有者が変わっても借主の賃借権が当然に消えるわけではありません。建物の引渡しを受けている借主は、借地借家法上の対抗関係が問題になります。新所有者の更新拒絶や解約申入れにも、普通借家であれば正当事由が問題になる可能性があります。

Q9. 店舗営業をしています。住宅と違う点は何ですか。

一般的には、店舗では営業損失、内装・造作、営業許可、固定客、立地、従業員、休業期間などが重要になります。立退料の検討も住宅より複雑になりやすいため、売上資料、内装費、移転費用、休業見込みを整理する必要があります。

Q10. 裁判になったら必ず負けますか。

一般的には、老朽化・建替えの事案では貸主側が認められる例も、借主側の主張が認められる例もあります。築45年で立退料100万円により明渡しが認められた例がある一方、築57年で正当事由が否定された例もあります。具体的な見通しは、個別事情と証拠により変わります。

Section 09

建物の老朽化で立ち退きを迫られたときのチェックリストと回答文

初動確認と貸主への回答は、退去を承諾しない前提で慎重に作ります。

退去を求められたら、次の確認項目を順番に見ます。次の比較表は、契約、通知、建物資料、条件、相談の各項目を整理したものです。未確認の項目があるほど、退去合意書への署名前に追加確認が必要だと読み取れます。

確認分野チェック項目
退去要求書面で届いているか、理由は老朽化・建替え・耐震性・自己使用・売却のどれか。
契約類型普通借家か定期借家か、契約期間満了日、更新拒絶通知の時期、解約申入れ日、終了通知。
建物資料危険性資料、耐震診断、建替計画、修繕可否、行政手続の進捗。
条件立退料、転居先支援、敷金返還、原状回復免除、家賃滞納の有無、署名の有無。
相談内容証明、調停申立書、訴状、強い圧力がある場合は早めに相談予約を検討します。

貸主に送る初期回答は、退去を承諾するものではないことを明確にし、資料提示を求める内容にします。次の文例は、どの資料を求めるかを整理したものです。個別事情により文面は変わるため、内容証明や訴状が届いている場合は、送付前に弁護士等へ確認する必要があります。

回答文例貴殿より、建物の老朽化及び建替えを理由として退去を求める旨の連絡を受けました。現時点で直ちに退去に応じるとの回答はできません。今回の退去請求の法的根拠、契約終了日として主張される日付及び根拠、老朽化・耐震性・危険性を示す客観的資料、修繕ではなく建替えが必要である理由、建替計画、立退料・転居費用・敷金返還・原状回復免除等の具体的条件をご提示ください。本書面は退去を承諾するものではありません。

最後に重要なのは、退去するかどうかを急いで決めるのではなく、権利関係と条件を確認することです。次の重要ポイントは、このページ全体の結論をまとめたものです。契約書、通知、建物資料、生活・営業事情、交渉経過をそろえてから判断する必要があります。

焦って退去合意をしないことが最重要です

普通建物賃貸借では、老朽化や建替えだけで結論は出ません。退去に応じる場合でも、立退料、転居費用、敷金返還、原状回復免除、支払時期、明渡時期を合意書で明確にする必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令・公的機関・実務資料

  • e-Gov法令検索「借地借家法」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 国土交通省「定期建物賃貸借 Q&A」
  • 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」
  • 日本司法支援センター(法テラス)「自宅の立ち退きを求められている」
  • 日本司法支援センター(法テラス)「民事法律扶助業務」「無料法律相談のご利用の流れ」
  • 日本弁護士連合会「よくある相談内容」
  • 裁判所「民事調停」
  • 公益財団法人不動産流通推進センター「老朽建物の賃貸借契約における建替応諾条項の有効性」
  • 一般財団法人不動産適正取引推進機構 RETIO掲載資料「昭和41(オ)1005 最高裁判所第一小法廷 昭和46年11月25日 店舗明渡請求」
  • 一般財団法人不動産適正取引推進機構 RETIO「築後45年を経過し老朽化したアパートに係る正当事由補完事例」
  • 一般財団法人不動産適正取引推進機構 RETIO「築後57年を経過した木造平屋戸建て住宅の正当事由否定事例」
  • 一般財団法人不動産適正取引推進機構 RETIO「特定緊急輸送道路沿道建築物の建物明渡請求事例」
  • 一般財団法人土地総合研究所「建替えを前提とする賃貸人の建物明渡請求訴訟に係る立退料」
  • 法務省「借地借家法の更新拒絶等要件に関する調査研究報告書」